説明

センサのヒータ制御装置

【課題】 センサ素子を加熱するヒータへの印加電圧の制御を行うための構成を簡易化することができるセンサのヒータ制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 ワンチップマイコンの出力ポート(P1,P2,P3,P4)のそれぞれに、抵抗値がそれぞれ140,140,430,430(Ω)の各抵抗器31,32,33,34の一端を接続する。抵抗器31〜34の他端は、一端が接地された抵抗値Rzのヒータ30の他端に接続する。ガスセンサを駆動させてから30秒間、すべての出力ポート(P1〜P4)からHiレベル(5V)の信号出力を行うと、抵抗器31〜34の合成抵抗値とヒータ30の抵抗値との分圧として4.2Vの電圧がヒータ30に印加される。その後、出力ポート(P3,P4)をLoレベル(GND)に切り替えると、ヒータ30には分圧として3.2Vの電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ素子のクリーニングや活性化のための加熱を行うヒータを備えたセンサのヒータ制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、空気中の特定ガスの濃度に応じて電気的特性(例えば抵抗値)が変化する酸化物半導体を用いたセンサ素子が知られている。例えば、SnOやWO等の金属酸化物半導体を用いた自動車の排気ガスの濃度変化を検出するためのセンサ素子は、排気ガス中に含まれるCO、HC等の還元性ガスあるいはNOx等の酸化性ガスといった特定ガスの濃度変化に基づいて、抵抗値が変化する。
【0003】
このような金属酸化物半導体は、常温では特定ガスに反応せず、約200〜400℃に加熱することによって活性化されて特定ガスに反応する。また、金属酸化物半導体は湿度の影響を受けやすく、測定雰囲気中の水分としての水酸基OHが金属酸化物半導体表面に吸着した状態になると、金属酸化物半導体表面への特定ガスの分子吸着を阻害してしまうことにより、センサ素子の感度が低下する。
【0004】
そこで、センサ素子の近傍にヒータを設け、通電によりヒータを発熱させてセンサ素子を加熱することで、金属酸化物半導体の活性化が行われる。また、金属酸化物半導体部表面に吸着したOHを加熱により強制的に脱離させ、センサ素子の特性を初期状態に回復させるヒートクリーニングも行われる。
【0005】
このようなヒータへの通電は、一般に、バッテリや電源ICの出力ポートから印加電圧を供給することにより行われる。その際のヒータへの印加電圧の制御は、マイコンでスイッチング部品のON−OFFの制御を行って分圧回路の抵抗を切り替えることで印加電圧を切り替えたり、PWM制御により印加電圧に相当する電力を発生させたりする方法が用いられる(例えば特許文献1参照。)。
【0006】
なお、ヒータを発熱させることで、金属酸化物半導体の活性化を促したり、ヒートクリーニングを行ったりする際には、電源投入直後に通常のヒータ印加電圧よりも高い電圧を印加して、その後に通常のヒータ印加電圧に切り替えるといった通電制御が行われる。これにより、ヒータの耐久性を良好に維持しつつ、金属酸化物半導体の早期活性化や効率の良いヒートクリーニングを実現することができる。
【特許文献1】特開2002−156350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようなヒータへの印加電圧の制御を行うためにはスイッチング部品が必要であり、製品コストの低減を図ることが難しいという問題があった。また、スイッチング部品を搭載するためのスペースの確保しなければならず、小型化を図ることが難しいという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、センサ素子を加熱するヒータへの印加電圧の制御を行うための構成を簡易化することができるセンサのヒータ制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明のセンサのヒータ制御装置は、センサ素子に付設されたヒータへの通電を制御するセンサのヒータ制御装置であって、各々電圧を出力可能な複数のポートを有する電圧出力部と、前記複数のポートの少なくとも2つ以上を駆動して、前記複数のポートに電気的に接続される前記ヒータに第1の電圧を印加する第1電圧印加手段と、前記ヒータに前記第1の電圧が所定時間印加された後、駆動中の前記複数のポートのうち一部のポートを接地し、前記第1の電圧より小さい第2の電圧を前記ヒータに印加する第2電圧印加手段とを備えている。
【0010】
また、請求項2に係る発明のセンサのヒータ制御装置は、センサ素子に付設されたヒータへの通電を制御するセンサのヒータ制御装置であって、各々一定の電圧を出力可能な複数のポートを有する電圧出力部と、前記複数のポートの各々と、前記ヒータの一端とを結ぶ通電経路それぞれに設置される複数の抵抗器と、前記複数のポートの少なくとも2つ以上を駆動して、前記ヒータに第1の電圧を印加する第1電圧印加手段と、前記ヒータに前記第1の電圧が所定時間印加された後、駆動中の前記複数のポートのうち一部のポートを接地し、前記第1の電圧より小さい第2の電圧を前記ヒータに印加する第2電圧印加手段とを備えている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明のセンサのヒータ制御装置では、電圧出力部の複数のポートの少なくとも2つ以上のポートを駆動してヒータに電圧を印加し、所定時間後に、駆動中のポートのうち一部のポートを接地することで、ヒータに印加される電圧を小さくすることができる。つまり、電圧出力部のポートの切り替えのみでヒータへの印加電圧の切り替えを行うことができる。このため、スイッチング素子等の電子部品が不要であり、また、それらの電子部品を取り付けるためのスペースも不要となることから、製品コストの削減と、センサの小型化を図ることができる。さらに、ヒータに印加する電圧の制御についても簡易化することができる。また、電圧の印加を電圧出力部の複数のポートから行うことによって、負荷が大きいヒータの駆動に必要な電流を得ることができる。
【0012】
また、請求項2に係る発明のセンサのヒータ制御装置では、電圧出力部の複数のポートとヒータとを結ぶ通電経路のそれぞれに抵抗器を設置し、少なくとも2つ以上のポートを駆動してヒータに電圧を印加することで、抵抗器の合成抵抗値とヒータの抵抗値とでポートから印加される電圧の分圧をヒータに印加することができる。そして所定時間後に、駆動中のポートのうち一部のポートを接地することで、ヒータに印加される電圧の分圧比率を切り替え、印加電圧を小さくすることができる。つまり、電圧出力部のポートの切り替えのみでヒータへの印加電圧の切り替えを行うことができる。さらに、各抵抗器の抵抗値やヒータの抵抗値を予め調整すれば、ヒータに印加する分圧を容易に調整することができる。このような構成とすることで、スイッチング素子等の電子部品を不要とすることができ、また、それらの電子部品を取り付けるためのスペースも不要となることから、製品コストの削減と、センサの小型化を図ることができる。さらに、ヒータに印加する電圧の制御についても簡易化することができる。また、電圧の印加を電圧出力部の複数のポートから行うことによって、負荷が大きいヒータの駆動に必要な電流を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を具体化したセンサのヒータ制御装置の一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1を参照し、ヒータ制御装置を備えたセンサの一例としてのガスセンサ100の構成の概略について説明する。図1は、ガスセンサ100構成の概略を示す図である。
【0014】
図1に示すガスセンサ100は、ガスセンサ素子10、ガスセンサ素子20、ヒータ30、およびワンチップマイコン50を有する。ガスセンサ素子10,20は、ヒータ30とともに単一の矩形板状をなす絶縁性セラミック基板上のパターンとして一体に形成されている。
【0015】
ガスセンサ素子10は、SnOを主成分とする酸化物半導体であり、主としてCO、HCなどの還元性ガスに反応し、その濃度に応じて抵抗値Rgが変化する。また、ガスセンサ素子20は、WOを主成分とする酸化物半導体で、主としてNOxなどの酸化性ガスに反応し、その濃度に応じて抵抗値Rdが変化する。ガスセンサ素子10,20の各一端には、それぞれ固有抵抗値Ra,Rbを有する抵抗器11,21の各一端が各々直列に接続されて分圧回路を形成しており、ガスセンサ素子10,20の各他端は接地されている。そして、抵抗器11,21の各他端には、電圧Vcc(本実施の形態の例では5V)が印加されるようになっている。
【0016】
ガスセンサ素子10,20と抵抗器11,21とのそれぞれの分圧点Pg,Pdは、それぞれワンチップマイコン50のAD変換入力端子53,54(AD1,AD2)に接続されており、各ガスセンサ素子10,20の抵抗値Rg,Rdの大きさに基づいて変化する出力電位Vg,Vdが、それぞれ信号として入力されるようになっている。抵抗器11,21の抵抗値Ra,Rbがそれぞれ一定であることから、還元性ガスや酸化性ガスの濃度変化に伴いガスセンサ素子10,20の抵抗値Rg,Rdが変化すると、AD1,AD2に入力される出力電位Vg,Vdが変化するように構成されている。
【0017】
また、ワンチップマイコン50の出力ポート61,62,63,64(P1,P2,P3,P4)には、それぞれ固有抵抗値Rx,Rx,Ry,Ryを有する抵抗器31,32,33,34の各一端が接続されている。ヒータ30は抵抗値Rzを有し、その一端は接地され、他端には抵抗器31,32,33,34の各他端が接続されている。このヒータ30は、ガスセンサ100の使用時にガスセンサ素子10,20を昇温させることで、ガスセンサ素子10,20に吸着、付着した他のガス分子や水分を解離、蒸発させるヒートクリーニングを行うとともに、ガスセンサ素子10,20を活性化させるために使用される。なお、本実施の形態では、抵抗器31,32の固有抵抗値Rxが140Ω、抵抗器33,34の固有抵抗値Ryが430Ω、ヒータ30の抵抗値Rzが280Ωに設定されている。なお、ワンチップマイコン50、抵抗器31〜34およびヒータ30が、本発明における「ヒータ制御装置」に相当する。また、P1〜P4を備えたワンチップマイコン50が、本発明における「電圧出力部」に相当する。
【0018】
ワンチップマイコン50はCPU55、ROM56、RAM57を備え、ROM56の所定の記憶エリアに、後述するヒータ制御プログラムや、ヒータ制御プログラムで使用される変数の初期値等が記憶されている。RAM57の所定の記憶エリアには、後述するヒータ制御プログラムの実行時に使用される各種変数やカウンタ等が一時記憶され、ヒータ制御プログラムも所定の記憶エリアに読み込まれて実行される。ワンチップマイコン50の信号出力端子51(out)には、図示外の電子制御アセンブリに接続されており、ガスセンサ100の出力に基づく各種制御が行われる。また、ワンチップマイコン50には、Vcc端子52(Vcc)を通じて駆動電圧Vccが供給される。
【0019】
このような構成のガスセンサ100は、例えば自動車の外気導入と内気循環とを切り替えるオートベンチレーションシステム等に使用される。その始動時にガスセンサ100に駆動電圧Vccが供給されると、ヒータ制御プログラム(図2参照)が実行され、ヒータ30への通電が行われる。ところで、ガスセンサ素子10,20が活性化し、その出力が安定化するまで、通常、数十秒〜数百秒の時間がかかる。ガスセンサ素子10,20のヒートクリーニングや早期活性化を図るため、ヒータ制御プログラムでは、ヒータ30の加熱当初に通常の作動時よりも大きな電圧の印加を行っている。
【0020】
以下、図2〜図5を参照して、ヒータ制御プログラムの動作について説明する。図2は、ヒータ制御プログラムのフローチャートである。図3〜図5は、ヒータ30への印加電圧について説明するための回路図である。なお、フローチャートの各ステップを「S」と略記する。
【0021】
ヒータ制御プログラムは、ガスセンサ100の駆動時にROM56から読み出され、実行される。図2に示すように、ヒータ制御プログラムが実行されると、まず、タイマが作動される(S1)。RAM57の所定の記憶エリアにタイマ変数の初期値として「0」が記憶される。タイマ変数は、図示外のタイマカウントプログラムにより経過時間に比例して数値が加算される。
【0022】
次に、各出力ポート61〜64(P1,P2,P3,P4)からHiレベルの出力信号が出力され、抵抗器31〜34に5Vの電圧が印加される(S2)。このとき、図3に示すように、ヒータ30に印加される電圧、すなわち分圧点Pzにおける電位Vzは、抵抗器31〜34の抵抗値Rx,Ryの合成抵抗値と、ヒータ30の抵抗値Rzとで出力ポート61〜64の電圧を分圧した電位となる。ここで抵抗器31〜34の合成抵抗値を求めると52.8Ωとなる。従って、分圧点Pzにおける電位Vzを求めると4.2Vとなり、ヒータ30には4.2Vの電圧が印加される。
【0023】
次いで、図2に示すように、タイマスタート後、30秒が経過したか確認される(S3)。タイマ変数の値に基づき、30秒が経過したと判断されなければ待機される(S3:NO)。
【0024】
タイマスタート後30秒が経過したと判断されると(S3:YES)、出力ポート63,64(P3,P4)の出力信号が、HiレベルからLoレベルに切り替えられる(S4)。図4に示すように、P1,P2の電位は5Vのまま維持され、P3,P4の電位は0V(接地電位)となる。すなわち、図5に示すように、抵抗器33,34がヒータ30と並列に、分圧点Pzに接続された状態と同様となる。分圧点Pzにおける電位Vzは、抵抗器31,32抵抗値Rxの合成抵抗値と、ヒータ30の抵抗値Rzおよび抵抗器33,34の抵抗値Ryの合成抵抗値とで出力ポート61,62に印加される電圧を分圧した電位となる。ここで抵抗器31,32の合成抵抗値を求めると70Ωとなる。また、ヒータ30および抵抗器33,34の合成抵抗値を求めると、121.6Ωとなる。従って、分圧点Pzにおける電位Vzを求めると3.2Vとなり、ヒータ30には3.2Vの電圧が印加される。
【0025】
そして、図2に示すように、P1〜P4の電位(出力信号)が維持されたまま、ヒータ制御プログラムが終了される。すなわち、ガスセンサ100では、駆動開始から30秒間ヒータ30に4.2Vの電圧が印加され、その後、3.2Vの電圧が印加された状態で維持されることとなる。
【0026】
なお、本発明は上記実施の形態に限られず、各種の変形が可能である。例えば、本実施の形態では、P1とP2と、P3とP4との2つの出力ポートずつを組として出力ポートの信号出力の切り替えを行ったが、組となる出力ポートは1つでも、3つ以上であってもよい。
【0027】
また、本実施の形態の抵抗器31〜34の抵抗値Rx,Ry、およびヒータ30の抵抗値Rzは一例であり、ヒータ30の発熱温度が所望の温度となる分圧された印加電圧が得られるように任意に設定してもよい。
【0028】
また、ヒータ制御プログラムのS3で、ヒータ30へ初期電圧(4.2V)を印加する期間としての待ち時間を30秒としたが、これに限らず、任意の待ち時間を設定してもよい。
【0029】
また、本実施の形態ではヒータ制御装置により通電制御されるヒータが加熱するセンサ素子として、特定ガスを検知するためのガスセンサ素子を例に説明したが、例えば流量センサに使用されるセンサ素子であっても、湿度センサに使用されるセンサ素子であってもよい。さらに、ガスセンサ素子10,20およびヒータ30は、矩形板状の絶縁性セラミック基板に形成したものに限られず、ダイヤフラム構造の絶縁性セラミック基板上にガスセンサ素子を形成し、ヒータを同基板内に埋設させるように形成したものに本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、ガスセンサ、流量センサ、湿度センサ等、ヒータによる加熱を必要とするセンサ素子を備えたセンサのヒータ制御装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】ガスセンサ100構成の概略を示す図である。
【図2】ヒータ制御プログラムのフローチャートである。
【図3】ヒータ30への印加電圧について説明するための回路図である。
【図4】ヒータ30への印加電圧について説明するための回路図である。
【図5】ヒータ30への印加電圧について説明するための回路図である。
【符号の説明】
【0032】
10,20 ガスセンサ素子
30 ヒータ
31〜34 抵抗器
50 ワンチップマイコン
61〜64 出力ポート(P1,P2,P3,P4)
100 ガスセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ素子に付設されたヒータへの通電を制御するセンサのヒータ制御装置であって、
各々電圧を出力可能な複数のポートを有する電圧出力部と、
前記複数のポートの少なくとも2つ以上を駆動して、前記複数のポートに電気的に接続される前記ヒータに第1の電圧を印加する第1電圧印加手段と、
前記ヒータに前記第1の電圧が所定時間印加された後、駆動中の前記複数のポートのうち一部のポートを接地し、前記第1の電圧より小さい第2の電圧を前記ヒータに印加する第2電圧印加手段と
を備えたことを特徴とするセンサのヒータ制御装置。
【請求項2】
センサ素子に付設されたヒータへの通電を制御するセンサのヒータ制御装置であって、
各々一定の電圧を出力可能な複数のポートを有する電圧出力部と、
前記複数のポートの各々と、前記ヒータの一端とを結ぶ通電経路それぞれに設置される複数の抵抗器と、
前記複数のポートの少なくとも2つ以上を駆動して、前記ヒータに第1の電圧を印加する第1電圧印加手段と、
前記ヒータに前記第1の電圧が所定時間印加された後、駆動中の前記複数のポートのうち一部のポートを接地し、前記第1の電圧より小さい第2の電圧を前記ヒータに印加する第2電圧印加手段と
を備えたことを特徴とするセンサのヒータ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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