説明

センサアレイを有するマイクロエレクトロニクスセンサデバイス

本発明は、試料室SCに隣接して互いに関して位置合わせされる加熱素子HEのアレイ及びセンサ素子SEのアレイを有するマイクロエレクトロニクスセンサデバイスのさまざまな異なる設計に関する。適当な電流を加熱素子HEに印加することによって、試料室は、所望の温度プロファイルに従って加熱されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料室内の試料を調べる(investigate)ためのセンサ素子のアレイを有するマイクロエレクトロニクスセンサデバイスに関する。更に、本発明は、バイオセンサとしてのこのようなマイクロエレクトロニクスセンサデバイスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサは、多くの場合、動作させるために良好に制御された温度を必要とする。これは、例えば、多くの生体分子は、小さい温度ウィンドウ内(通常37℃付近)でのみ安定しており、すなわち温度がこの温度ウィンドウ外にあるときには、非活性になるからである。温度調節は、特にハイブリダイゼーションアッセイにとって非常に重要である。これらのアッセイにおいて、温度は、DNA鎖をその相補ストランドに結合するストリンジェンシを調整するためにしばしば使用される。例えば単一の点変異に関心がある場合、高いストリンジェンシが要求される。単一の点変異ハイブリダイゼーションのための融解温度レンジ(すなわちDNA鎖の変性)は、野生型と比較して、5℃以下しか異ならないことがある。ハイブリダイゼーションの最中のストリンジェンシの制御は、例えばDNAマイクロアレイにおいて、DNAハイブリダイゼーションの特にマルチパラメータテストに追加の柔軟性を与えることができる。これらのアッセイにおいて、更に、多重化された形式で変異を区別するために良好に制御されたやり方で温度をランプアップすることが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
米国特許第6,864,140B2号明細書において、上述した問題のいくつかが、(生)化学反応が起こる試料室に隣接する基板上の多結晶シリコン上に形成された薄膜トランジスタの形の局所的な加熱素子によって対処される。しかしながら、試料室内の試料の他の検査は、この知られているデバイスによっては可能でない。更に、米国特許第6,867,048B2号明細書は、センサ素子のアレイを有するマイクロチップが、加熱素子を有するメンブレン上に配置されるマイクロエレクトロニクスバイオセンサを開示している。メンブレンは、すべてのセンサ素子に関して同じやり方で、隣接する試料室内の温度を制御することを可能にする。
【0004】
国際公開第93/22678号公報から、基板上に形成されるテスト部位のモノリシックアレイを使用して試料内の分子構造を識別する方法及び装置が知られている。各々のテスト部位は、予め決められた分子ターゲットと結合するプローブを有し、前記プローブは、レーザビームによって又は組み込まれた加熱素子によって、テスト部位を選択的に加熱することによって装置の製造中に固定される。
【0005】
この状況に基づいて、本発明の目的は、マイクロエレクトロニクスセンサデバイスにおいて、試料の一層汎用的な温度制御された検査のための手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス及び請求項36に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスの使用によって達成される。好適な実施形態は、従属請求項に開示される。
【0007】
本発明によるマイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、試料、特に、粒子を含みうる生物学的体液のような液状又はガス状の化学物質、を調べることを目的とする。マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、以下の構成要素を有する:
【0008】
a)調べられるべき試料が供給されうる試料室。試料室は、一般に、空のキャビティ、又は試料物質を吸収することができるゲルのようななんらかの物質で満たされたキャビティである。試料室は、オープンなキャビティ、閉じたキャビティ、又は流体接続チャネルによって他のキャビティに接続されるキャビティでありうる。
【0009】
b)例えば流体中の特定のターゲット分子の濃度のような、試料室内の試料の特性を検知する複数のセンサ素子を有する「検知アレイ」。最も一般の意味において、「アレイ」なる語は、本発明のコンテクストにおいて、複数の素子(例えばセンサ素子)の任意の3次元配列を意味する。一般に、このようなアレイは、2次元であり、好適には平面でもあり、(センサ)素子は、例えばグリッド又はマトリックスパターンのような規則的なパターンに配置される。
【0010】
更に、「試料室のサブ領域との熱交換」は、このような交換が、サブ領域において、試料の所望の/観測できる反応を引き起こすに十分な強さである場合に想定される。この規定は、例えば電流のような、任意のアクティブなプロセスに必然的に関連付けられる小さい「寄生の」熱効果を除外すべきである。一般に、本発明の意味における熱フローは、0.01W/cmより大きく、1ミリ秒を超える持続時間を有する。
【0011】
c)電気エネルギーを用いて駆動されると、試料室の少なくともサブ領域と熱を交換する複数の加熱素子を有する「加熱アレイ」。加熱素子は、好適には、電気エネルギーを熱に変換することができ、熱は、試料室に伝えられる。しかしながら、加熱素子は、試料室から熱を吸収し、電気エネルギーの消費下でそれを他のどこかに伝えることも可能である。
【0012】
d)試料室内の試料の検知の最中又は検知の前に、加熱素子を選択的に駆動する(すなわちそれらに電気エネルギーを供給する)制御ユニット。
【0013】
上述したマイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、試料室が、センサ素子によって調べられ、加熱素子を介して温度制御されることが同時に可能であるという利点を有する。これは、測定中、試料室内の最適な温度状態を確立することを可能にし、テストの精度を大幅に改善し又は特定のテストをともあれ可能にさえする。
【0014】
制御ユニットは、所望の空間的な及び/又は時間的な温度プロファイルが試料室内で達成されるように、加熱素子を駆動するように適応されることが好ましい。これは、例えば感受性がある生物学的サンプルの操作のために最適な(特に一様でない及び/又はダイナミックな)状態を提供することを可能にする。
【0015】
マイクロエレクトロニクスセンサデバイスの好適な実施例によれば、加熱アレイは、センサ素子に対して位置合わせされる。この「位置合わせ」は、固定(並進不変)の関係が、加熱アレイの加熱素子及び検知アレイのセンサ素子の位置の間にあることを意味する。加熱素子及びセンサ素子は、例えば対で配置されることができ、又は各々の加熱素子は、いくつかのセンサ素子のグループに関連付けられてもよい(又は逆でもよい)。位置合わせは、加熱素子及びセンサ素子が、それぞれ異なる位置で同様に作用しあうという利点を有する。こうして一様な/周期的な条件が、アレイ全体に与えられる。
【0016】
検知アレイ及び加熱アレイのそれらの配列のパターンがそれぞれ同一である場合、センサ素子及び加熱素子の間の好適な種類の位置合わせが達成される。この場合、各々のセンサ素子は、ただ1つの加熱素子に関連付けられる。
【0017】
代替の実施例において、2以上の加熱素子が、各々のセンサ素子に関連付けられる。これは、空間的に一様でない加熱プロファイルを生成することを可能にし、これは、1つのセンサ素子の領域において、空間的に一様でない温度プロファイル又は空間的に一様な温度プロファイルのいずれも生じさせることができ、こうしてより良好な温度制御をもたらすことができる。付加的に、上述の種類の位置合わせが、加熱素子及びセンサ素子の間にあることが好ましい。
【0018】
センサアレイは、例えば光学的、磁気的、機械的、音響、熱及び/又は電気的なセンサ素子を有しうる。磁気センサ素子を有するマイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、例えば、国際公開第2005/010543A1号公報及び同第2005/010542A2号公報に記述されている(それらの内容は、参照によって本願明細書に盛り込まれるものとする)。前記デバイスは、磁気ビーズによりラベリングされた生物学的分子の検出用のマイクロフルイディックバイオセンサとして使用される。前記デバイスは、磁界を生成するためのワイヤ、及び磁化されたビーズによって生成される漂遊磁界を検出するための巨大磁気抵抗デバイス(GMR)を有するセンサユニットのアレイを備える。更に、光学的、機械的、音響及び熱センサの概念は、国際公開第93/22678号公報に記述されており、その内容は、参照によって本願明細書に盛り込まれるものとする。
【0019】
マイクロエレクトロニクスセンサデバイスの1つの実施例において、加熱アレイ及び検知アレイは、試料室の互いに対向する側に配置される。試料室のカバーが加熱アレイと置き換えられるだけでよいので、このような配置は、バイオセンサの知られている設計と直ちに組み合わせられることができる。
【0020】
代替の実施例において、加熱アレイ及び検知アレイは、試料室の同じ側に配置される。この例では、アレイは、1つのアレイの上に他のアレイがおかれる階層化構造で配置されることができ、又はそれらは、1つの層にマージされることができる。
【0021】
階層化構造を有する上述の実施例において、検知アレイは、試料室及び加熱アレイの間に配置されることが好ましい。こうして、検知アレイは、試料室に可能な限り近くなり、これは、試料への最適アクセスを保証する。
【0022】
加熱アレイが、試料室のそれぞれ異なる(特に互いに対向する)側に配置される2つの部分を有する場合、試料室に対する加熱アレイ及び検知アレイの上述の配列は、一緒にされることができる。互いに対向する側から試料室を加熱することは、より均一な温度を生成することに加えて、一方の側から他方の側に向かう温度勾配を意図的に生成することも可能にする。
【0023】
マイクロエレクトロニクスセンサデバイスの他の実施例によれば、制御ユニットは、加熱素子のアレイの外側に位置しており、加熱素子に電気エネルギーを選択的に伝える(又は加熱素子から電気エネルギーをそらせる)ことができる電源ラインによって加熱素子に接続される。伝送される電気エネルギーの量又はレートは、熱が試料室と交換される程度を決定するので、制御ユニットは、試料室内の所望の温度プロファイルを達成するために伝送される電気エネルギーを適切に割り当てなければならない。加熱素子は、他の処理なしにただ電気エネルギーを熱に変換すればよいので、加熱アレイは、このアプローチにおいて最も簡単に保たれることができ、すなわち、それらは、例えば簡単な抵抗器によって実現されることができる。
【0024】
上述した実施例の他の展開例において、制御ユニットは、制御ユニットを電源ラインに結合するためのデマルチプレクサを有する。これは、いくつかの電源ラインに(のちに)電気的なパワーを供給するために1つの回路を使用することを可能にする。
【0025】
マイクロエレクトロニクスセンサデバイスの別の実現例によれば、各々の加熱素子は、局所駆動ユニットに関連付けられ、前記駆動ユニットは、幾何学的に加熱素子のところに(すなわち近傍に)位置し、加熱素子に結合される。このような局所駆動ユニットは、或る制御タスクを支配して、制御ユニットの負担を軽減することができる。
【0026】
本発明の他の展開例において、局所駆動ユニットは、共通電源ラインに結合され、加熱素子は、別の共通電源ライン(例えばグラウンド)に結合される。この例では、各々の局所駆動ユニットが、共通電源ラインから得られる電気エネルギー又は電力の量を決定する。これは、電気エネルギーの適切に割り当られた量が、アレイ全体を通じて特定の加熱素子に伝えられる必要がない限り、設計を簡略化する。
【0027】
マイクロエレクトロニクスセンサデバイスの別の実施例において、制御ユニットの少なくとも一部は、加熱素子のアレイの外側に位置しており、制御信号を伝えるために制御ラインを介して(制御ユニットの残りの部分を構成する)局所駆動ユニットに接続される。この例では、制御ユニットの外側の部分は、或る加熱素子がどれくらい多くの電気エネルギー又は電力を受け取るべきかを決定することができる。しかしながら、このエネルギー/電力は、外側の制御ユニットから加熱素子に直接に伝送される必要がない。その代わりに、関連する情報のみが、制御信号を介して局所駆動ユニットに伝送されればよく、局所駆動ユニットは、例えば共通電源ラインから、必要なエネルギー/電力を抽出することができる。
【0028】
上述の実施例の好適な実現例において、制御信号は、パルス幅変調(PWM)される。このようなPWM信号により、局所駆動ユニットは、選択可能なレート及びデューティサイクルによって、スイッチをオフ及びオンにされることができる。これらのパラメータは、共通電源ラインからの平均電力抽出を決定する。オン/オフ挙動だけが必要とされるので、局所駆動ユニットの個別の特性は重要さが比較的低い。
【0029】
局所駆動ユニットを有する他の展開例において、前記局所駆動ユニットは、制御ユニットの外側部分によって送信される制御信号の情報を記憶するメモリを有する。このようなメモリは、例えば、制御信号の電圧を記憶するキャパシタによって、実現されることができる。メモリは、加熱素子の要求された動作を継続することを可能にする一方で、関連する制御ラインは、駆動ユニットから再び切り離され、他の駆動ユニットを制御するために使用される。
【0030】
局所駆動ユニットを有する実施例において、実際に、多くの場合、駆動ユニットの同一の設計を有する場合でも、それらを形成する構成要素及び回路は、駆動ユニットの挙動のバリエーションをもたらすそれらの特性の統計的なバリエーションを有することが分かる。同じ電圧により異なる駆動ユニットを指揮することは、例えば加熱素子への異なる電流出力のような、異なる結果をもたらすことがある。これは、不可能ではないとしても、試料室内の温度の正確な制御を難しくする。従って、マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、駆動ユニットの個別の特性値のバリエーションを補償する手段を組み込むことができる。これは、ずっと高い精度を伴う制御を可能にする。
【0031】
マイクロエレクトロニクスセンサデバイスの一般的な設計において、少なくとも1つの駆動ユニットがトランジスタを有し、このトランジスタは、以下の式に従って、そのゲートにおける所与の入力電圧Vに対して、(加熱素子に供給される)出力電流Iを生成する。

【0032】
ここで、m及びVthresは、トランジスタの個別の特性値である。上式は、m及びVthresのそれぞれ異なる値を有する局所駆動ユニットが、同じ電圧によって制御されるとき、それぞれ異なってふるまうことを説明する。
【0033】
上述の例において、駆動ユニットの各々は、好適には、キャパシタを有し、キャパシタは、前記トランジスタの制御ゲートと、Vthresを補償し又は予め決められた電流Iを生成するようにトランジスタを駆動する電圧にこのキャパシタをチャージする回路と、に結合される。こうして、簡単なキャパシタの適用は、上述の種類のトランジスタに基づく駆動ユニットの非常に重要な例において個別のバリエーションを補償するに十分でありうる。関連する回路に関する更なる詳細は、図面に関連して後述される。
【0034】
加熱素子は、特に、抵抗ストリップ、透明電極、ペルティエ素子、高周波加熱電極又は放射加熱(IR)素子を有する。すべてのこれらの素子は、電気エネルギーを熱に変換することができ、ペルティエ素子は、加えて、熱を吸収して、冷却機能を提供することも可能である。
【0035】
マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、加熱アレイ及び/又は試料室と熱接触する、ペルティエ素子又は冷却された塊体のような冷却ユニットを任意に有してもよい。これは、必要に応じて、試料室の温度を低下させることを可能にする。従って、冷却ユニットは、熱の生成用の加熱アレイと組み合わされて、両方向で温度の完全な制御を可能にする。
【0036】
加熱素子は、最も実際的な例において、熱を生成する能力(のみ)をそなえるが、それらの少なくとも1つは、試料室から熱を除去するようにも任意に適応されることもできる。このような除去は、例えば、ペルティエ素子によって、又は加熱素子をヒートシンク(例えばファンによって冷却される塊体)に結合することによって、達成されることができる。
【0037】
マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、試料室内の温度をモニタすることを可能にする少なくとも1つの温度センサを任意に有することができる。(複数の)温度センサが、好適には、加熱アレイに組み込まれることができる。特定の実施例において、加熱素子の少なくとも1つは、それが温度センサとして動作されることができるように設計され、かかるセンサは、付加的なハードウェアなく、温度を測定することを可能にする。
【0038】
温度センサが利用可能である例において、制御ユニットは、好適には、前記温度センサに結合され、試料室内の予め決められた(時間的及び/又は空間的な)温度プロファイルに従って、閉ループにおいて加熱素子を制御するように適応される。これは、例えば感受性のある生物学的試料の操作にとって最適条件をロバストに与えることを可能にすることもできる。
【0039】
マイクロエレクトロニクスセンサデバイスは、試料室における流体のフロー及び/又は粒子の移動を制御するために、ポンプ又はバルブのようなマイクロメカニカルな又は電気的な装置を更に有することができる。試料又は粒子のフローを制御することは、マイクロフルイディックデバイスにおける試料の汎用性のある操作のための非常に重要な能力である。
【0040】
特定の実施例において、加熱素子の少なくとも1つは、熱毛管効果によって、試料室内に流体のフローを生成するように適応されることができる。このように、その加熱能力は、試料を移動させるために利用されることができる。
【0041】
試料室内に異なる温度のサブ領域を有することが必要であり又は望まれる場合、これは、熱絶縁によって、試料室を少なくとも2つのコンパートメントに分割することによって、任意に達成されることができる。このアプローチの特定の実施例は、図面に関連してより詳しく後述される。
【0042】
電気的絶縁層及び/又は生体適合層が、試料室と、加熱及び/又は検知アレイとの間に配置されてもよい。このような層は、例えば二酸化ケイ素SiO又はフォトレジストSU8からなりうる。
【0043】
本発明の別の実施例において、制御ユニットは、選択可能な強度及び/又は周波数の交流により、加熱素子を駆動するように適応される。加熱素子のこのような動作に伴う電界は、或る例において、例えば誘電泳動の例において、それらが適当な強度及び周波数を有する場合、試料内に動きを生成することができる。他方、交流の強度及び周波数は、熱生成の平均レートを決定する。このように、印加される電流の強度及び/又は周波数を適切に変更することによって、このような加熱素子により加熱及び操作機能を簡単に実行することが可能である。
【0044】
(複数の)加熱素子及び/又は(複数の)フィールド電極は、好適には、薄膜エレクトロニクスにおいて実現されることができる。
【0045】
本発明によりマイクロエレクトロニクスセンサデバイスを実現する場合、好適にはアクティブマトリックスアプローチである大面積エレクトロニクス(LAE)マトリックスアプローチが、加熱素子及び/又はセンサ素子と接触するために使用されることができる。大面積エレクトロニクスの技法、特に例えば薄膜トランジスタ(TFT)を使用するアクティブマトリックス技術は、例えばLCD、OLED及び電気泳動ディスプレイのようなフラットパネルディスプレイの製造において適用される。
【0046】
上述した実施例において、行単位アドレッシングアプローチが、制御ユニットによって加熱素子をアドレスするために使用されることができる。
【0047】
マイクロエレクトロニクセンサスデバイスの他の展開例によれば、試料室と、加熱及び/又は検知アレイとの間のインタフェースは、それぞれ加熱素子及び/又はセンサ素子のパターンに対応するパターンで、化学的にコーティングされる。こうして、これらの素子の効果は、例えばインタフェースに付着される結合分子における試料溶液からのターゲット分子の固定化のような、化学的効果と組み合わせられることができる。
【0048】
本発明は、分子診断、生物学的試料解析、化学的試料解析、食品解析及び/又は法科学解析のための、上述したマイクロエレクトロニクスセンサデバイスの使用に関する。分子診断は、例えばターゲット分子に直接的に又は間接的に付着される磁気ビーズ又は蛍光粒子を用いて、達成されることができる。
【0049】
本発明のこれら及び他の見地は、以下に記述される(複数の)実施例から明らかであり、それらを参照して説明される。これらの実施例は、添付の図面を用いて例示によって記述される。
【0050】
図面において同様の参照数字/文字は、同一の又は同様の構成要素をさす。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
分子診断のような(生)化学的解析のためのバイオチップは、さまざまな、医用、法科学及び食品アプリケーションのための重要なツールになる。一般に、バイオチップは、バイオセンサを有し、その多くにおいて、ターゲット分子(例えばタンパク質、DNA)は、捕獲分子によって生化学的表面上に固定され、次いで、例えば光学的、磁気的又は電気的な検出スキームを使用して検出される。磁気バイオチップの例は、国際公開第2003/054566号公報、同第2003/054523号公報、同2005/010542A2号公報、同2005/010543A1号公報及び同2005/038911A1号公報に記述されており、それらの内容は、参照によって本願明細書に盛り込まれるものとする。
【0052】
バイオセンサの特定性を改善する1つのやり方は、温度の制御による。温度制御は、ハイブリダイゼーションアッセイの間、例えばDNA鎖のその相補ストランドへの結合のような、ターゲット生体分子の機能化された表面への結合のストリンジェンシを調整するために使用されることが多い。例えば単一の点変異に関心があるとき、高いストリンジェンシが要求される。バイオセンサの温度制御は、ハイブリダイゼーションアッセイにとって非常に重要であることのほかに、一般にも必要とされる。より一般的に、バイオチップ上で温度及び流体を制御する能力は、不可欠である。一般的な温度又はフロー管理のほかに、温度制御と組み合わせて局所的に流体伝達を制御する能力は、反応物の溶解を高め、(生)化学物質の混合を高め、温度均一性を高めるためのオプションを提供する。従って、バイオセンサの性能を最適化するために、バイオセンサに温度処理アレイを組み込むことがここで提案される。任意に、これは、混合又はポンピング素子と組み合わせられることもできる。
【0053】
プログラマブルな温度処理アレイ又は「加熱アレイ」は、センサ領域全体にわたって一定の温度を維持するために使用されることができ、又は代替として、バイオセンサがアレイの形で構成され、バイオセンサのそれぞれ異なる部分が、それぞれ異なる温度で最適に動作する場合、規定された温度プロファイルを生成するためにも使用されることができる。すべての例において、加熱アレイは、多数の個別にアドレス可能且つ駆動可能な加熱素子を有し、任意には、例えば温度センサ、混合又はポンピング素子のような付加的な素子及び検知素子(例えばフォトセンサ)自体さえ有することができる。好適には、加熱アレイは、薄膜エレクトロニクスを使用して実現され、任意には、アレイは、マトリックスアレイの形で、特にアクティブマトリックスアレイの形で、実現されることができる。本発明は、いかなる特定のタイプのバイオセンサにも制限されないが、光学的(例えば蛍光)、磁気的又は電気的な検知(例えば、容量性、誘導性...)原理に基づくバイオセンサに有利に適用されることができる。以下、このようなバイオセンサのさまざまな設計が、更に詳しく記述される。
【0054】
図1は、上面図(左)及び断面図(右)において、加熱素子HEのアレイがどのように既存のバイオセンサモジュールに加えられることができるかを示している。それによって、アレイ全体にわたって予め規定された温度プロファイルを生成することが可能になる。本実施例において、バイオセンサモジュールは、センサ素子SEのアレイ及び加熱素子HEのディスクリートのアレイを有するディスクリートのバイオセンサデバイスを有する。加熱素子HEの加熱アレイ及びセンサ素子SEの検知アレイは、調べられるべき試料を受けることができる試料室SCの互いに対向する側に位置する。各個別の加熱素子HEは、例えば抵抗ストリップ、ペルティエ素子、高周波加熱素子、放射加熱素子(例えば赤外線源又はダイオード)等の、熱生成のためのよく知られている概念のいかなるものをも含むことができる。各々の加熱素子は、個別に駆動可能であり、それによって、多数の温度プロファイルが、生成されることができる。
【0055】
必要とされる熱処理に依存して、バイオセンサモジュールを構成するためのいくつかのオプションがある。図2に示す実施例において、バイオセンサは、熱絶縁手段IN(例えば空気のようなガスの類の低熱伝導率材料)によって隔てられる一連のコンパートメントに構成される。このように、異なる温度(プロファイル)を有するコンパートメントを同時に生成することが可能であり、これは、例えばDNAハイブリダイゼーションのマルチパラメータテストに特に適切でありうる。
【0056】
別の実施例において、バイオセンサは、各々の大きいコンパートメント内に多数の加熱素子を有する複数のより大きいコンパートメント(又は単一のコンパートメントさえ)で構成されることができる。このように、コンパートメント全体にわたって良好に制御された温度(プロファイル)、特に一定の温度、を実現することが可能であり、これは、特に、例えば小さい温度ウィンドウ内(通常37℃付近)で安定である生体分子を解析するのに特に適切でありうる。この実施例において、バイオセンサは更に、コンパートメント中に試料のフローを提供する手段をも備えることができ、それによって、試料は、局所的な温度プロファイルをたどる。このように、検知動作の最中又は動作と動作の間の温度サイクルを通して試料を得ることが可能である。
【0057】
図3に示すように、バイオセンサは、フローチャネルを任意に含むことができ、それによって、試料は、(複数の)解析室SCに導かれることができ、その後、解析が完了されると除去されることができる。更に、バイオセンサは、特定の時間期間に、バイオセンサ又はバイオセンサのコンパートメント内に流体を含めるための機械的な又は電気的なバルブを有することができる。
【0058】
図4に示される実施例において、個別に駆動可能な加熱素子HEのアレイ及び少なくとも1つの温度センサTSの両方が、既存のバイオセンサモジュールに加えられ、それによって、アレイ全体にわたって予め規定された温度プロファイルを生成し、制御することが可能になる。温度センサTSは、温度が所与のレンジを越えることを防ぐために使用されることができ、好適には、所望の温度プロファイルを規定し制御するために使用されることができる。好適な実施例において、温度センサTSは、例えばこの素子が、例えば低温ポリシリコンのような大面積薄膜エレクトロニクス技術を使用して製造されることができる場合、加熱アレイに組み込まれることができる。別の実施例において、加熱素子HEのアレイ及び(複数の)温度センサTSは、フォトセンサ(例えばフォトダイオード)又はディスクリートのフォトセンサアレイを有することもできる。その場合、バイオセンサ内のバイオセンシング素子は、単に特異的(蛍光)DNA鎖のハイブリダイゼーションが生じる層でありうる。
【0059】
図5に示す実施例において、個別に駆動可能な加熱素子HEのアレイ及び少なくとも1つの混合又はポンピング素子PEの両方が、既存のバイオセンサモジュールに加えられ、それによって、アレイ全体にわたってより一様な温度プロファイルを生成することが可能になる。これは、一定の温度がバイオセンサ全体について必要とされる場合に特に有利である。多くのタイプの混合又はポンピング素子が、従来技術から知られており、それらの多くは、例えば電気泳動、誘電泳動、電子流体力学又は電気浸透ポンプのような電気的な原理に基づくものである。好適な実施例において、混合又はポンピング素子PEは、例えばこの素子が、低温ポリシリコンのような大面積薄膜エレクトロニクス技術を使用して製造されることできる場合、加熱素子アレイに組み込まれることができる。図4の例において、バイオセンサは、フォトセンサ(例えばフォトダイオード)又はディスクリートのフォトセンサアレイを更に有することができる。
【0060】
図6に示す実施例において、個別に駆動可能な加熱素子HEのアレイ及び/又は温度センサTS及び/又はポンピング又は混合素子PEが、バイオセンサ又はバイオセンサのアレイと共に単一の素子に組み込まれており、それによって、アレイ全体にわたって予め規定された温度プロファイルを生成し、任意には制御することが可能になる。このような1又は複数のバイオセンサは、低温ポリシリコンのような大面積薄膜エレクトロニクス技術を使用して製造されることができる。大面積エレクトロニクス技術でフォトダイオードを製造することは特に適切であるので、これは、バイオセンサが光学的な原理に基づくものである場合に好適に実現されることができる。
【0061】
特に熱サイクリングのような温度制御を高めるために、動作中、バイオセンサを冷却する手段が設けられてもよく、これは、例えばアクティブな冷却素子(例えば薄膜ペルティエ素子)、ヒートシンク又は冷たい塊体と熱接触する熱伝導層、及びファンでありうる。
【0062】
加熱素子HEの位置付けは、加熱素子が試料室SCの検知素子SEと反対側に配置される図1−図5に示される実施例に限定されないことに注意すべきである。加熱素子は、流体の検知素子と同じ側に、例えば室の下に位置してもよく、又は室の両方の側に位置してもよい。
【0063】
既に示したように、加熱素子のアレイは、マトリックスデバイスの形で、好適には(代替として多重化された態様で駆動される)アクティブマトリックスデバイスの形で、実現されることができる。アクティブマトリックス又は多重化されたデバイスにおいて、各々のヒータが、2つのコンタクト端子によって外界に接続されることを要求することなく、1つのドライバから多数のヒータに駆動信号をリダイレクトすることが可能である。
【0064】
図7に示す実施例において、アクティブマトリックスは、ヒータに必要な電気信号を、中央ドライバCUから個別の電源ラインiPLを介してヒータ素子HEにルーティングするための配電網として使用される。この例において、ヒータHEは、同一のユニットの規則的なアレイとして設けられており、ヒータは、アクティブマトリックスのトランジスタT1を介して、ドライバCUに接続される。トランジスタのゲートは、(アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(AMLCD)の場合に使用される標準のシフトレジスタゲートドライバとして構成されることができる)選択ドライバに接続され、ソースは、例えば一組の電圧又は電流ドライバである、ヒータドライバに接続される。このアレイの動作は、次の通りである:
【0065】
−所与のヒータ素子HEを活性化するために、要求されるヒータを組み込んでいるコンパートメントの行全体のトランジスタT1が、(例えば選択ドライバからゲートに正電圧を印加することによって)導通状態に切り替えられる。
【0066】
−ヒータが位置する列の個別の電源ラインiPL上の信号(電圧又は電流)が、その所望の値にセットされる。この信号は、導通TFTを通じて加熱素子に送られ、その結果、局所的な温度増加をもたらす。
【0067】
−他の全ての列の駆動信号は、加熱をもたらさない電圧又は電流(これは、一般に0V又は0Aである)に保たれる。
【0068】
−温度増加が実現されたのち、ライン内のトランジスタは、再び非導通状態にセットされ、他のヒータ活性化を防ぐ。
【0069】
このように、マトリックスは、CMOSベースのデバイスによって取られる通常のランダムアクセスアプローチとは対照的に、好適には「行単位(line-at-a- time)」アドレッシング原理を使用して動作する。
【0070】
更に、アレイ内の2以上の列に信号を印加することによって、所与の行における2以上のヒータHEを同時に活性化することも可能である。(ゲートドライバを使用して)別のラインを活性化し、アレイの1又は複数の列に信号を印加することによって、逐次的にそれぞれ異なる行のヒータを活性化することも可能である。
【0071】
図7の実施例において、アレイのすべての列に個別の信号を同時に(必要な場合)供給することができるドライバが考慮されているが、デマルチプレクサの機能を有するより簡単なドライバを考慮することも実現可能である。これは、図8に示されており、単一の出力ドライバSDのみが、加熱信号(例えば電圧又は電流)を生成するために要求される。デマルチプレクス回路DXの機能は、単に、列のうちの1つにヒータ信号をルーティングすることであり、それによって、当該列の中の選択された行のヒータのみが活性化される。代替として、デマルチプレクサDXは、複数の加熱素子に直接つなげられることができる(図8のただ1つの行の例に対応する)。デマルチプレクス回路の機能は、単に、その出力のうちの1つにヒータ信号をルーティングすることであり、それによって、所望のヒータのみが活性化される。
【0072】
2つの接触端子を通じて各々の加熱素子を個別に駆動する簡単なアプローチに関する問題は、外部ドライバが、電気信号を各々のヒータ(すなわち抵抗性ヒータ用の電流源)に供給するために必要とされることである。結果として、各々のドライバは、一度に単一のヒータを活性化することができるだけであり、これは、同じドライバにつなげられるヒータが、逐次的に活性化されなければならないことを意味する。これは、安定した状態の温度プロファイルを維持することを難しくする。更に、駆動電流が要求される場合、リーク効果により、電流の損失なくドライバからヒータに電流を運ぶことは必ずしも可能でない。
【0073】
この理由のため、加熱素子ごとに組み込まれた局所ヒータドライバを生成するために、アクティブマトリックス技術を使用することが好適でありうる。図9は、アレイ全体について制御ユニットの一部を形成するこのような局所的なドライバCU2を示している;前記制御ユニットの他の部分CU1は、加熱素子HEのアレイの外側に位置する(アレイ全体のただ1つの加熱素子HEだけが図9に示されていることに注意されたい)。ここで、あらゆる加熱素子HEが、選択トランジスタT1だけでなく、局所電流源をも有する。このような局所電流源を実現するための多くの方法があるが、最も簡単な実施例は、単に第2のトランジスタT2の付加を必要とし、このトランジスタを流れる電流は、ゲートにおける電圧によって規定される。ここで、ヒータ電流のプログラミングは、単に、外部電圧ドライバCU1から、個別の制御ラインiCL及び選択トランジスタT1を介して、電流源トランジスタT2のゲートに、特定された電圧を供給することであり、電流源トランジスタT2は、共通電源ラインcPLから必要な電力を取り出す。
【0074】
図10に示される他の実施例において、局所ドライバCU2は、局所メモリ機能を備えることができ、それによって、コンパートメントがアドレスされる時間を越えて駆動信号を与えることが可能である。多くの場合、メモリ素子は、簡単なキャパシタC1でありえる。例えば、電流信号の場合、追加のキャパシタC1が、電流源トランジスタT2のゲート上の電圧を記憶するとともに、例えば加熱素子の別のラインがアドレスされている間、ヒータ電流を維持するために配置される。メモリの付加は、加熱信号が一層長い時間期間、印加されることを可能にし、それによって、温度プロファイルは、より良好に制御されることができる。
【0075】
すべての上述の実施例は、加熱素子を活性化するために薄膜エレクトロニクス(及びアクティブマトリックスアプローチ)を使用することを考慮しているが、最も簡単な実施例において、個別の加熱素子は、すべて個別に駆動されることができ、例えば抵抗加熱素子の場合、2つの接触端子を介して規定された電流を素子に通すことによって駆動できる。これは、相対的に少ない数の加熱素子にとっては効果的な解決法であるが、このようなアプローチに関する1つの問題は、個別に駆動されうる各々の付加の加熱素子について、少なくとも1つの付加の接触端子が必要とされることである。結果として、(より複雑な又はより一様な温度プロファイルを生成するために)より多くの加熱素子が必要とされる場合、接触端子の数は極端に多くなることがあり、デバイスを許容できないほど大きく扱いにくくすることがある。例えばダイオード及びMIM(金属−絶縁体−金属)デバイスのような他のアクティブマトリックス薄膜スイッチング技術を使用して、実施例のいくつかを実現することも可能である。
【0076】
大面積エレクトロニクス、及び特に、例えば薄膜トランジスタ(TFT)を使用するアクティブマトリックス技術は、例えばLCD、OLED、及び電気泳動のような多くのディスプレイ効果の駆動のために、フラットパネルディスプレイの分野において一般に使用される。本発明のいくつかの実施例において、バイオセンサアプリケーションの分野に関して、アクティブマトリックスに基づく加熱アレイを使用することが提案される。
【0077】
しかしながら、温度検知及び制御フィーチャのない実施例における、大面積エレクトロニクスに基づく加熱アレイの問題は、大面積エレクトロニクスが、基板全体にわたる能動素子の性能の不均一性に苦しむことである。好適なLTPS技術の場合、トランジスタの移動性m及びスレッショルド電圧Vthresの双方は、デバイスごとに(互いに近くに位置するデバイスの場合も)ランダムに異なることが知られている。例えば、LTPSトランジスタT2が、アクティブマトリックスアレイの局所電流源として、図10に示すように使用されることができる場合、電流源の最も簡単な形式は、2つのトランジスタを有する相互コンダクタンス回路である。この場合、各々の電流源の出力電流Iは、下式によって規定される。

【0078】
上式で、Vpowerは、電源ライン電圧であり、Vは、局所的な温度を規定するプログラムされた電圧であり、定数は、トランジスタのディメンションによって規定される。この理由のため、移動性m又はスレッショルドVthreのいかなるランダムなバリエーションも、供給される電流の不所望のバリエーションを直接的にもたらし、従って、不正確な温度値をもたらす。僅かに不正確な温度は、検知の特定性を低下させうるので、これは、特有の問題である。
【0079】
従って、以下において、本質的に可変のトランジスタ特性を有するアクティブマトリックスアレイの素子(セル)のアレイ全体にわたって均一な温度を実現するための方法及び回路が、提供される。具体的には、移動性、スレッショルド電圧又はそれらの両方のトランジスタバリエーションが(部分的に)補償される局所電流源を設けることが提案される。これは、結果的に、アレイ全体にわたるプログラムされた電流のより高い均一性をもたらす。アプローチは、標準シリコンCMOSではなく、低温ポリシリコン(LTPS)のような大面積ガラス基板技術に適している。この理由は、関係する面積が大きく、LTPSを高度に価格競争力のあるものにするからである。
【0080】
第1の実施例において、プログラム可能な加熱アレイのアプリケーションのために、スレッショルド電圧補償回路を局所電流源に組み込むことが提案される。スレッショルド電圧バリエーションを補償するための多種多様な回路が、利用可能である(例えば、R.M.A.Dawson及びM.G. Kaneによる「Pursuit of Active Matrix Light Emitting Diode Displays」(2001 SID conference proceeding 24.1, p.372)を参照)。明確にするため、この実施例は、図11に示される局所電流源回路を使用して説明される。この回路は、データライン上に例えばVDDのような基準電圧を保持することによって動作され、トランジスタT1及びT3、T4がパルスされると、T2をオンにする。パルスの後、T2は、キャパシタC2をT2のスレッショルドにチャージする。T3はオフにされ、C2上にスレッショルドを記憶する。データ電圧が印加され、キャパシタC1が、この電圧にチャージされる。T2のゲート−ソース電圧は、データ電圧にそのスレッショルドをプラスしたものである。従って、電流(ゲート−ソース電圧からスレッショルド電圧の二乗を引いたものに比例する)は、T2のスレッショルド電圧から独立するようになる。こうして、均一な電流が、ヒータのアレイに印加されることができる。
【0081】
このクラスの回路の利点は、アクティブマトリックスディスプレイアプリケーションにおいて標準的であるように、局所電流源のプログラミングが、なお電圧信号によって実行可能であることである。不利益は、TFTの移動性のバリエーションが、不正確にプログラムされた温度をなお生じさせることである。
【0082】
後者の問題に対処するために、プログラマブルな加熱アレイのアプリケーションのために、局所電流源に、移動性及びスレッショルド電圧の両方を補償する回路を組み込むことが更に提案される。特に電流ミラー原理に基づいて、移動性及びスレッショルド電圧の両方のバリエーションを補償する多種多様な回路が、利用可能である(例えば、A. Yumoto他による「Pixel-Driving Methods for Large-Sized Poly-Si AmOLED Displays」(Asia Display IDW01, p.1305)参照)。明確にするため、この実施例が、図12に示される局所電流源回路を使用して説明される。この回路は、トランジスタT1及びT3がオンであり、T4がオフのとき電流によってプログラムされる。これは、プログラムされた電流をT2に送るに十分な電圧に、キャパシタC1をチャージする。T2は、ダイオード構成において動作し、そのゲートは、導通したトランジスタT1を介してドレインにつなげられる。T1及びT3は、C1上に電荷を記憶するためにオフにされ、T2は、ここで電流源トランジスタとして働き、T4は、ヒータに電流を送るためにオンにされる。これは、単一のトランジスタ電流ミラー回路の例であり、同じトランジスタ(T2)が、電流ミラーの(ダイオード構成の)プログラム部分及び(電流源構成の)駆動部分の両方として逐次的に働く。T2のスレッショルド及び移動性の両方のバリエーションの補償が達成され、従って、均一な電流が、ヒータのアレイに送り出されることができる。
【0083】
このクラスの回路の利点は、TFTの移動性のバリエーションが回路によって更に補償されることである。このクラスの回路の不利益は、局所電流源のプログラミングが、アクティブマトリックスディスプレイアプリケーションにおいて標準的であるような、電圧信号によってはもはや実行されることができないことである。
【0084】
別の実施例において、プログラマブルな加熱アレイにおけるアプリケーションのために、デジタル電流駆動回路を局所電流源に組み込むことが提案される。本質的に、回路は、加熱素子HEを電源ライン電圧に直接に接続し、それによって、TFTの特性は、重要さが低い。温度は、パルス幅変調(PWM)スキームを使用することによってプログラムされる。デジタル電流駆動を補償するための多種多様な回路が、利用可能である(例えば、H. Kageyama他による「OLED Display using a 4 TFT pixel circuit with an innovative pixel driving scheme」(2002 SID conference proceeding 9.1, p.96)参照)。明確にするために、本発明のこの実施例が、図13に示される局所電流源回路を使用して説明される。この場合、T2をその線形領域にもっていくに十分な電圧が、キャパシタC1に印加される。T2の抵抗は、ヒータの抵抗よりずっと少ないので、非常にわずかな電圧が、T2において下がるだけであり、従って、スレッショルド及び移動性のそのバリエーションは、もはや重要でない。電流及び電力は、T2がオン状態に保たれる時間長によって制御される。このクラスの回路の利点は、局所電流源のプログラミングが、アクティブマトリックスディスプレイアプリケーションにおいて標準的であるように、電圧信号によってなお実行されることができることである。
【0085】
図面の上述の記述において、一般にトランジスタについて言及されている。実際、温度制御されるセルアレイは、低温ポリシリコン(LTPS)の薄膜トランジスタ(TFT)を使用して製造されるのに適している。従って、好適な実施例において、上記で言及されたトランジスタは、TFTでありうる。特に、LTPSは特に、大面積のために使用される場合に費用効果的であるので、アレイは、LTPS技術を使用して大面積ガラス基板上に製造されることができる。
【0086】
更に、本発明は、低温ポリシリコン(LTPS)に基づくアクティブマトリックスデバイスに関して記述されたが、アモルファスシリコン薄膜トランジスタ(TFT)、微結晶性又はナノ結晶性シリコン、高温ポリシリコンTFT、例えばCdSe、SnOに基づく他の無機TFT、又は有機TFTが、同様に使用されることができる。同様に、例えば当分野に知られているようなダブルダイオードウィズリセット(double diode with reset;D2R)アクティブマトリックスアドレッシング方法を使用する、MIMすなわち金属−絶縁体−金属デバイス又はダイオードデバイスが、ここに開示された本発明を展開するために同様に使用されることができる。
【0087】
最後に、本願において、「有する、含む」なる語は、他の素子又はステップを除外せず、単数で表されている構成要素は、その複数の存在を除外せず、単一のプロセッサ又は他のユニットが、いくつかの手段の機能を果たすことができることに注意されたい。本発明は、あらゆる各々の新しい特徴的なフィーチャ及び特徴的なフィーチャのあらゆる各々の組み合わせに存在する。更に、請求項の参照符号は、それらの範囲を制限するものとして解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】センサ素子の反対側に加熱素子を有するバイオセンサの上面図(左側)及び断面図(右側)。
【図2】熱絶縁を有する図1によるバイオセンサを示す図。
【図3】フロー室を有する図1によるバイオセンサを示す図。
【図4】付加の温度センサを有する図1によるバイオセンサを示す図。
【図5】付加の混合/ポンピング素子を有する図1によるバイオセンサを示す図。
【図6】加熱素子、温度センサ及び混合/ポンピング素子の統合されたアレイを有するバイオセンサを示す図。
【図7】アレイの外側にヒータドライバ回路を有するアクティブマトリックスヒータアレイを概略的に示す図。
【図8】単一のヒータドライバがデマルチプレクサを介して加熱素子のアレイに接続される図7の変形例を示す図。
【図9】局所駆動ユニットを有するアクティブマトリックスヒータシステムの回路を概略的に示す図。
【図10】付加のメモリ素子を有する図9の設計を示す図。
【図11】スレッショルド電圧バリエーションを補償する手段を有する局所駆動ユニットの回路を示す図。
【図12】移動性及びスレッショルド電圧のバリエーションを補償する手段を有する局所駆動ユニットの回路を示す図。
【図13】デジタル電流源を有する局所駆動ユニットの回路を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)試料室と、
b)前記試料室内の試料の特性を検知する複数のセンサ素子を有する検知アレイと、
c)電気エネルギーにより駆動されると、前記試料室の少なくともサブ領域と熱を交換する複数の加熱素子を有する加熱アレイと、
d)前記試料室内の試料の検知の最中又は前に、前記加熱素子を選択的に駆動する制御ユニットと、
を有するマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項2】
前記制御ユニットは、所望の空間的な及び/又は時間的な温度プロファイルが前記試料室において達成されるように、前記加熱素子を駆動するように適応される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項3】
前記加熱素子は、前記センサ素子に対して位置合わせされる、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項4】
前記検知アレイ及び前記加熱アレイにおける前記素子の配列が同一である、請求項3に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項5】
2以上の加熱素子が、各々のセンサ素子に関連付けられる、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項6】
前記検知アレイは、少なくとも1つの光学的、磁気的、機械的、音響、熱又は電気的なセンサ素子を有する、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項7】
前記加熱アレイ及び前記検知アレイは、前記試料室の互いに対向する側に配される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項8】
前記加熱アレイ及び前記検知アレイは、前記試料室の同じ側に配され、前記アレイは、1つのアレイが他のアレイ上におかれるように配され、又は1つの層にマージされる、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項9】
前記検知アレイは、前記加熱アレイと前記試料室との間に配される、請求項8に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項10】
前記加熱アレイは、前記試料室のそれぞれ異なる側に配される2つの部分を有する、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項11】
前記制御ユニットは、前記加熱アレイの外側に位置しており、電気エネルギーを選択的に伝える電源ラインによって前記加熱素子に接続される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項12】
前記制御ユニットは、前記制御ユニットを前記電源ラインに結合するデマルチプレクサを有する、請求項11に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項13】
各々の前記加熱素子は、局所駆動ユニットに関連付けられ、前記駆動ユニットは、前記加熱素子のところに位置し、前記加熱素子に結合される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項14】
すべての前記局所駆動ユニットは、共通電源ラインに結合され、すべての前記加熱素子は、別の共通電源ラインに結合される、請求項13に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項15】
前記制御ユニットの一部は、前記加熱アレイの外側に位置しており、制御信号を伝えるために制御ラインを介して前記局所駆動ユニットに接続される、請求項13に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項16】
前記制御信号は、パルス幅変調される、請求項15に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項17】
前記局所駆動ユニットは、前記制御信号の情報を記憶するメモリを有する、請求項15に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項18】
前記局所駆動ユニットは、それらの個別の特性のバリエーションを補償する手段を有する、請求項13に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項19】
少なくとも1つの局所駆動ユニットは、

に従って、所与の入力電圧Vに対して、出力電流Iを生成するトランジスタを有し、上式で、m及びVthresは、前記トランジスタの個別の特性である、請求項18に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項20】
前記局所駆動ユニットの各々は、キャパシタを有し、前記キャパシタは、前記トランジスタの制御ゲート、及びVthresを補償し及び/又は予め決められた電流Iを生成するように前記トランジスタを駆動する電圧に前記キャパシタをチャージする回路に結合される、請求項19に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項21】
前記加熱素子は、抵抗ストリップ、透明電極、ペルティエ素子、高周波加熱電極又は放射加熱電極を有する、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項22】
好適にはペルティエ素子又は冷却された塊体である、前記加熱アレイ及び/又は前記試料室と熱接触する冷却ユニットを有する、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項23】
前記加熱素子の少なくとも1つは、前記試料室から熱を除去するように適応される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項24】
好適には前記加熱アレイに組み込まれる、少なくとも1つの温度センサを有する、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項25】
少なくとも1つの前記加熱素子は、前記温度センサとして動作されることができる、請求項24に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項26】
前記制御ユニットは、前記温度センサに結合されており、前記試料室内の予め決められた温度プロファイルに従って、閉ループで前記加熱素子を制御するように適応される、請求項24に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項27】
好適にはポンプ又はバルブである、前記試料室内の流体のフロー及び/又は粒子の移動を制御するマイクロメカニカルな又は電気的な装置を有する、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項28】
前記加熱素子のうち少なくとも1つは、熱毛管によって、前記試料室内に流体のフローを生成するように適応される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項29】
前記試料室は、熱絶縁によって、少なくとも2つのコンパートメントに分けられる、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項30】
電気的絶縁層及び/又は生体適合層が、前記試料室と前記加熱アレイ及び/又は前記検知アレイとの間に配される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項31】
前記制御ユニットは、選択可能な強度及び/又は周波数の交流によって、前記加熱素子を駆動するように適応される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項32】
薄膜エレクトロニクスにおいて実現される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項33】
好適にはアクティブマトリックスアプローチである大面積エレクトロニクスマトリックスアプローチが、前記加熱素子及び/又は前記センサ素子と接触するために使用される、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項34】
行単位アドレッシングアプローチが使用される、請求項33に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項35】
前記試料室と前記加熱アレイ及び/又は前記検知アレイとの間のインタフェースが、前記アレイの前記素子のパターンに合わせて調整されるパターンで化学的にコーティングされる、請求項1に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイス。
【請求項36】
請求項1乃至請求項35のいずれか1項に記載のマイクロエレクトロニクスセンサデバイスの、分子診断、生物学的試料解析、化学的試料解析、食品解析又は法科学解析のための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図8e】
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【図8f】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図9e】
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【図9f】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2009−529908(P2009−529908A)
【公表日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500970(P2009−500970)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際出願番号】PCT/IB2007/050665
【国際公開番号】WO2007/107892
【国際公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】