説明

センサノイズ除去方法および制御装置

【課題】ノイズの影響を可及的に除去し得るセンサノイズ除去方法および制御装置を提供することにある。
【解決手段】本発明のセンサノイズ除去方法は、物理量を検出するセンサ2の出力値xのノイズを除去するセンサノイズ除去方法であって、センサ2のサンプリングされた出力値xを複数取得し、該複数取得したサンプル出力値xiを昇順または降順に並べた際に順位が中央の値X1、X2を選択している。
また、本発明のセンサノイズ除去方法は、物理量を検出するセンサ2の出力値xのノイズを除去するセンサノイズ除去方法であって、センサ2のサンプリングされた出力値xを複数取得し、該複数取得したサンプル出力値xiのうちの発生頻度aが高いものほど重み付け量a0を大きくし、該重み付け量a0を付したサンプル出力値xiの平均値X3を選択している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理量を検出するセンサから制御装置に入力される入力信号のノイズを除去するセンサノイズ除去方法および制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前輪の操舵に応じて後輪を操舵する四輪操舵車の後輪操舵装置は、例えば、特許文献1に記載されるように、車速センサで検出される車速とハンドル操舵角センサで検出されるステアリングハンドルの操舵角に応じて目標後輪舵角を決定し、この目標後輪舵角に後輪を操舵するように制御している。
しかし、この特許文献1の装置においては、車両の振動によって操舵ハンドルにブレが生じると、検出した操舵角が微変動し、この操舵角の変動が目標後輪舵角に影響し後輪が不必要に小刻みに操舵されてしまうという問題があった。
【0003】
そこで、この特許文献1における後輪の不必要な小刻みの操舵という問題を解消し、車両の操舵安定性を向上するため、特許文献2には、図6に示すように、四輪車等におけるセンサの検出信号をサンプリングし制御装置に入力されるサンプル入力信号n10のノイズを除去することを目的に、サンプル入力信号n10の移動平均した値の平均値h10を制御に用いる方法が記載されている。
なお、図6(a)は、大きなノイズがない場合のサンプル入力信号n10と該サンプル入力信号n10の平均値h10との関係を示すグラフであり、図6(b)は、大きなノイズNが発生した場合のサンプル入力信号n20と該サンプル入力信号n20を平均して算出した平均値h20との関係を示すグラフであり、それぞれ横軸に経過時間をとり、縦軸に信号の大きさをとっている。
【特許文献1】特開昭63−41282号公報(明細書3頁左上欄〜右下欄5行目、第2図〜第4図等)
【特許文献2】特開平07−25349号公報(段落0010〜0012、図1、図2等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献2の技術は、センサの検出信号をサンプリングしたサンプル入力信号の平均値を制御に用いる方法なので、図6(a)に示すように、サンプリングしたサンプル入力信号n10に大きなノイズがない場合には、ノイズの影響が、サンプル入力信号n10を平均して算出した平均値h10に大きく及ぶことがなく問題とならない。
【0005】
これに対して、図6(b)に示すように、サンプル入力信号n20に1回でも大きなノイズNが発生した場合、大きなノイズNが所定時間経過する間、平均値h20の算出に用いられることになる。
そのため、大きなノイズがのったサンプル入力信号n20の影響がそのサンプリング後の平均値h20に一定時間引きずってしまい、結果的に大きなノイズNの影響が平均値h20の値に大きく及んでしまうという問題がある。
本発明は上記実状に鑑み、ノイズの影響を可及的に除去し得るセンサノイズ除去方法および制御装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の請求項1に関わるセンサノイズ除去方法は、物理量を検出するセンサの出力値のノイズを除去するセンサノイズ除去方法であって、センサのサンプリングされた出力値を複数取得し、該複数取得したサンプル出力値を昇順または降順に並べた際に順位が中央の値を選択している。
【0007】
本発明の請求項2に関わるセンサノイズ除去方法は、物理量を検出するセンサの出力値のノイズを除去するセンサノイズ除去方法であって、センサのサンプリングされた出力値を複数取得し、該複数取得したサンプル出力値のうちの発生頻度が高いものほど重み付け量を大きくし、該重み付け量を付したサンプル出力値の平均値を選択している。
【0008】
本発明の請求項3に関わる制御装置は、物理量を検出するセンサのサンプリングされた出力値を複数取得したサンプル出力値を昇順または降順に並べた際に順位が中央の値に応じて制御している。
【0009】
本発明の請求項4に関わる制御装置は、物理量を検出するセンサのサンプリングされた出力値を複数取得したサンプル出力値のうちの発生頻度が高いものほど重み付け量を大きくし、該重み付け量を付したサンプル出力値の平均値に応じて制御している。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1に関わるセンサノイズ除去方法によれば、センサのサンプリングされた出力値を複数取得し、該複数取得したサンプル出力値を昇順または降順に並べた際に順位が中央の値を選択するので、ノイズが大きくのったサンプル出力値を除くことができ、ノイズの影響を除去できる。
【0011】
本発明の請求項2に関わるセンサノイズ除去方法によれば、センサのサンプリングされた出力値を複数取得し、該複数取得したサンプル出力値のうちの発生頻度が高いものほど重み付け量を大きくし、該重み付け量を付したサンプル出力値の平均値を選択するので、ノイズが大きくのった発生頻度が低いサンプル出力値の影響が抑えられ、ノイズの影響を抑制できる。
【0012】
本発明の請求項3に関わる制御装置によれば、センサのサンプリングされた出力値を複数取得したサンプル出力値を昇順または降順に並べた際に順位が中央の値に応じて制御するので、ノイズが大きくのったサンプル出力値を除くことができ、ノイズの影響を除去できる。
【0013】
本発明の請求項4に関わる制御装置によれば、センサのサンプリングされた出力値を複数取得したサンプル出力値のうちの発生頻度が高いものほど重み付け量を大きくし、該重み付け量を付したサンプル出力値の平均値に応じて制御するので、ノイズが大きくのった発生頻度が低いサンプル出力値の影響が抑えられ、ノイズの影響を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。
<<ECU1の構成>>
図1は、本発明の実施形態の四輪車のECU(Electronic Control Unit)1の一部を示す図である。
実施形態のECU1は、格納される制御プログラムを実行し種々のセンサ2で検出した信号に応じて制御を行なうマイコン3と、センサ2で検出された検出信号をマイコン3に適合したデジタル信号のサンプル入力信号xにする増幅回路、A/D変換回路等の入力インターフェース4と、マイコン3からの制御信号である出力信号に応じてアクチェータ(図示せず)等を駆動するための駆動回路、リレー駆動回路等の出力インターフェース5とを備え構成されている。
【0015】
なお、センサ2としては、ステアリングハンドルの操舵角、車速等を検出する各種のセンサがある。
図1に示すように、センサ2からの検出信号が入力インターフェース4でサンプリングされ、このサンプリングされたサンプル入力信号xが、マイコン3に入力され、マイコン3において、サンプル入力信号xを複数回取得したサンプル入力値xiを昇順または降順に並べた際に順位が中央の中央値、または、サンプル入力値xiの発生頻度によって重み付けしたサンプル入力値xiの平均値を求める。
そして、該中央値または該平均値に応じて制御を行ない、或いは、該中央値または該平均値を用いて制御を行なうことにより、センサ2の出力のサンプル入力信号xのノイズの制御への影響を除去している。
【0016】
<<サンプル入力値xiの中央値の導出>>
次に、図1に示すように、マイコン3に入力されるセンサ2出力のサンプル入力信号xから取得され制御に使用されるサンプル入力値xiの中央値の導出法ついて、図2に従って説明する。
なお、図2は、マイコン3におけるアクチェータ等の制御に使用されるサンプル入力値xiの中央値の導出フローを示す図である。
ここで、サンプル入力信号xとは、センサ2の検出信号を入力インターフェース4のA/D変換回路でデジタル信号にサンプリングしたものであり、サンプル入力信号xを複数回取得したサンプル入力値xiの中央値の導出は、マイコン3における処理において行われるものである。
【0017】
図2に示すように、まず、センサ2の検出信号がインターフェース4を介してサンプリングされマイコン3にサンプル入力信号xとして入力される(図2のS01)。
続いて、サンプル入力信号xから、0(現時点)からn回前の複数回のサンプル入力値xi(i=0、1、…、n)を取得する(図2のS02)。なお、(n+1)は、サンプル入力信号xからサンプル入力値xiを取得する回数の頻度を表しており、(n+1)の値は、さまざまなケースによって適宜選択され設定され得る。
【0018】
続いて、サンプル入力値xiを小さいものから昇順に並び替えたものを、yiとする(図2のS03)。例えば、サンプル入力値xiが、x0、x1、x2、x3であり、x0<x2<x3<x1の関係にある場合、x0〜x3を小さいものから昇順に並べると、x0→x2→x3→x1であり、y=x0、y1=x2、y2=x3、y3=x1となる。
続いて、nが偶数か奇数か判断する(図2のS04)。
【0019】
図2のS04において、nが偶数と判断された場合、
X1=yn/2 ……(1)
を制御に用いる真の入力値Xとする (図2のS05)。 一方、図2のS04において、nが奇数と判断された場合、
X2=(y(n−1)/2+y(n+1)/2))/2 ……(2)
を制御に用いる真の入力値Xとする(図2のS06)。
なお、予めnが偶数か奇数か定まっている場合には、偶数か奇数かの判別ロジックの図2のS04は不要である。
【0020】
<例1>
図2の導出フローに従って、取得数nが偶数の場合の中央値の導出を例示する。
例えば、サンプル数が5個、x0、x1、x2、x3、x4であり、x0<x2<x3<x1<x4の関係にある場合、サンプル数が5個で、n=4であり偶数である。
図2のS03より、x0〜x4を小さいものから昇順に並べると、x0→x2→x3→x1→x4であり、y=x0、y1=x2、y2=x3、y3=x1、y=x4となる。
続いて、図2のS04において、この場合、nが4で偶数と判断されるので、
図2のS05に移行し、(1)式より入力値Xは、
X1=yn/2=y4/2=y2=x3
となり、制御に使用される入力値Xとして、x3が求められる。
【0021】
<例2>
図2の導出フローに従って、サンプル数が奇数の場合の中央値の導出を例示する。
例えば、サンプル数が4個、x0、x1、x2、x3であり、x0<x2<x3<x1の関係にある場合、サンプル数が4個で、n=3で奇数である。
図2のS03より、x0〜x3を小さい順に並べると、x0→x2→x3→x1であり、
=x0、y1=x2、y2=x3、y3=x1である。
続いて、図2のS04において、nが3であり奇数と判断されるので、
図2のS06に移行し、(2)式より、
X2=(y(n−1)/2+y(n+1)/2))/2=(y(3−1)/2+y(3+1)/2))/2=(y2/2+y4/2)/2
=(y1+y)/2=(x2+x3)/2
と算出される。
従って、制御に用いられる入力値Xとして、(x2+x3)/2が求められる。
【0022】
<制御に使用される入力値XへのノイズNの影響>
図3は、センサ2の検出信号が入力インターフェース4でサンプリングされ、マイコン3に入力されたサンプル入力信号x(図3中、細い実線で示す)に大きなノイズNが発生した場合のサンプル入力信号xを平均した平均値h1(図3中、破線で示す)と、サンプル入力信号xを複数回取得したサンプル入力値xiの中央値である入力値X(図3中、太い実線で示す)との関係を示すグラフである。
図3から分るように、複数回のサンプル入力値xiのうちの中央値を、制御に用いる真の入力値Xとすることにより、大きなノイズNがサンプル入力信号xにのる場合、サンプル入力信号xの平均値h1と比較しノイズNの影響を受けることなく、制御を行うことができる。
【0023】
<<頻度により修正したサンプル入力値xiの平均値の導出>>
次に、マイコン3の制御に使用されるサンプル入力信号xの発生頻度によって修正したサンプル入力値xiの平均値の導出について、説明する。
ここで、前記したように、サンプル入力信号xとは、センサ2の検出信号を入力インターフェース4のA/D変換回路でデジタル信号にサンプリングしたものであり、発生頻度により修正したサンプル入力値xiの平均値の導出は、マイコン3における処理において行われるものである。
【0024】
この処理は、サンプル入力信号x、すなわちサンプル入力値xiの発生頻度に応じて重み付けフィルタを設けるものであり、発生頻度の高いサンプル入力値xiほど重み付けを大きくする一方、発生頻度の低いサンプル入力値xiほど重み付けを小さくするものである。なお、発生頻度に応じた重みであれば、発生頻度の低いものの重みを変えず、つまり、発生頻度の低いものの重みを1とし、発生頻度に応じて重みを大きくしてもよいし、その逆にしてもよい。
【0025】
図4、図5は、センサ2の検出信号をサンプリングしたサンプル入力信号x (サンプル入力値xi)と、サンプル入力信号x (サンプル入力値xi(i=0、1、…、n))が発生する頻度aとの関係を示したグラフであり、横軸にサンプル入力信号x(サンプル入力値xi)をとり、縦軸に各サンプル入力信号x(サンプル入力値xi)が発生する頻度aをとっている。
図4、図5に示す各サンプル入力値xiの頻度aに応じた重み関数a0をそれぞれの対応するサンプル入力値xiに換算し、制御に使用する真の入力値Xを求める。
すなわち、通常あり得るレベルのノイズに対して、特に大きなノイズの頻度は少ないので、頻度aに応じて重み関数a0を設け、平均値を修正し制御に使用する入力値Xを求める。
【0026】
センサ2の出力であるサンプル入力信号xを複数回取得したサンプル入力値xiの頻度aに応じた重み関数a0とすると、修正入力値yi=xi×a0 となる。
0からn回前の修正入力値yi(i=0、1、…、n)に対して、(4)式に示す平均化した値のX3を真の入力値Xとし、制御に使用する。なお、修正入力値yiは、(n+1)個あるので、
【数1】

この構成によれば、図4、図5に示すように、サンプル入力信号xを複数回取得したサンプル入力値xiの頻度aに基づいて修正した値yiの平均値を真の入力値Xとすることにより、大きなノイズNがサンプル入力信号xiにのっている場合も、その頻度aが少ないことから無視することができ、ノイズNの影響を可及的に抑制できる。
【0027】
<<効果>>
従って、センサ2からの出力のサンプル入力信号xを複数回取得したサンプル入力値xiの中央値または頻度aによる重み付けを用いた平均値に応じて制御を行い、或いは、該中央値または該平均値を用いて制御を行うことにより、ノイズの影響が除去された制御を行なうことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の四輪車のECUの一部を示す図である。
【図2】実施形態のマイコンにおけるアクチェータ等の制御に使用されるサンプル入力値の中央値の導出フローを示す図である。
【図3】実施形態のサンプル入力信号に大きなノイズが発生した場合のサンプル入力信号の平均値と、サンプル入力信号を複数回取得したサンプル入力値の中央値である入力値との関係を示すグラフである。
【図4】実施形態のセンサの検出信号をサンプリングしたサンプル入力信号 (サンプル入力値)と、サンプル入力信号 (サンプル入力値)が発生する頻度との関係の1例を示したグラフである。
【図5】実施形態のセンサの検出信号をサンプリングしたサンプル入力信号 (サンプル入力値)と、サンプル入力信号 (サンプル入力値)が発生する頻度との関係の1例を示したグラフである。
【図6】(a)は、従来の大きなノイズがない場合のサンプル入力信号と該サンプル入力信号の平均値との関係を示すグラフであり、(b)は、従来の大きなノイズが発生した場合のサンプル入力信号と該サンプル入力信号を平均して算出した平均値との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0029】
1…ECU(制御装置)、
2…センサ
a…頻度(発生頻度)、
a0…重み関数(重み付け量)、
X…真の入力値(中央の値、重み付け量を付したサンプル出力値の平均値)
X1、X2…請求項1、3の中央の値、
X3…請求項2、4の重み付け量を付したサンプル出力値の平均値、
x…サンプル入力信号(センサの出力値)
xi…サンプル入力値(サンプル出力値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理量を検出するセンサの出力値のノイズを除去するセンサノイズ除去方法であって、
前記センサのサンプリングされた出力値を複数取得し、該複数取得したサンプル出力値を昇順または降順に並べた際に順位が中央の値を選択する
ことを特徴とするセンサノイズ除去方法。
【請求項2】
物理量を検出するセンサの出力値のノイズを除去するセンサノイズ除去方法であって、
前記センサのサンプリングされた出力値を複数取得し、該複数取得したサンプル出力値のうちの発生頻度が高いものほど重み付け量を大きくし、該重み付け量を付した前記サンプル出力値の平均値を選択する
ことを特徴とするセンサノイズ除去方法。
【請求項3】
物理量を検出するセンサのサンプリングされた出力値を複数取得したサンプル出力値を昇順または降順に並べた際に順位が中央の値に応じて制御する
ことを特徴とする制御装置。
【請求項4】
物理量を検出するセンサのサンプリングされた出力値を複数取得したサンプル出力値のうちの発生頻度が高いものほど重み付け量を大きくし、該重み付け量を付した前記サンプル出力値の平均値に応じて制御する
ことを特徴とする制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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