説明

センサ付き継手部材

【課題】 部品数の増加を抑えるとともに、より一層のコンパクト化が果たされた集積化流体制御装置を可能とする継手部材を提供する。
【解決手段】 センサ付き継手部材10は、隣り合う流体制御機器16,20の下端開口同士を接続するV字状通路41aが形成された通路ブロック41と、通路ブロック41の側面に設けられた圧力センサ42とを備えている。通路ブロック41には、V字状通路41aから分岐して圧力センサ42に通じる分岐通路41bが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体製造装置などに使用され、保守点検時に流体制御機器を単独で上方に取り出すことができるように組み立てられた集積化流体制御装置において好適に使用される継手部材に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置に使用される流体制御装置は、マスフローコントローラや開閉弁などの流体制御機器が複数列に配置されるとともに、隣り合う列の流体制御機器の流路同士が所定箇所において機器接続手段により接続されることにより構成されているが、近年、この種の流体制御装置では、複数の流体制御機器を上段に配置するとともに、これらを下段に配置されたブロック状継手部材により接続する集積化が進められている(特許文献1および特許文献2)。
【0003】
図4は、特許文献1に開示されている集積化流体制御装置を示しており、この流体制御装置の1つのライン(C)は、複数の上段部材および複数の下段部材からなり、上段部材として、逆止弁(11)、プレッシャレギュレータ(16)、圧力センサ(12)、逆V字状通路ブロック(20)、遮断開放器(13)、マスフローコントローラ(14)、開閉弁(15)、逆V字状通路ブロック(20)およびフィルタ(17)が配置されるとともに、下段部材として、左から順に、逆止弁(11)に接続されかつ入口継手(31)が取り付けられたL字状通路ブロック継手(32)と、逆止弁(11)とプレッシャレギュレータ(16)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、プレッシャレギュレータ(16)と圧力センサ(12)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、圧力センサ(12)と逆V字状通路ブロック(20)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、逆V字状通路ブロック(20)と遮断開放器(13)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、遮断開放器(13)とマスフローコントローラ(14)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、マスフローコントローラ(14)と開閉弁(15)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、開閉弁(15)と逆V字状通路ブロック(20)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、逆V字状通路ブロック(20)とフィルタ(17)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、フィルタ(17)に接続されかつ出口継手(34)が取り付けられたL字状通路第ブロック継手(32)とが配置されている。そして、下段部材としての各種継手部材(31)(32)(33)(34)が1つの細長い副基板(3)上に載せられるとともに、これらの下段部材(31)(32)(33)(34)にまたがって上段部材としての各種流体制御機器(11)(16)(12)(20)(13)(14)(15)(20)(17)が取り付けられることで1つのライン(C)が形成され、このライン(C)と類似の構成とされた複数のラインが主基板(2)上に並列に配置されるとともに、各ライン(C)の遮断開放器(13)同士が、3つのI字状通路ブロック継手(51)およびI字状通路ブロック継手(51)同士を接続するチューブ(52)からなる通路接続手段(50)により接続されることにより、集積化流体制御装置が形成されている。
【0004】
特許文献2には、図示省略するが、特許文献1ではそれぞれ分離されているプレッシャレギュレータ(16)と圧力センサ(12)とを1つのブロック状本体に取り付けることで新たな流体制御機器を形成することが提案されている。
【特許文献1】特開2001−254900号公報
【特許文献2】特開平11−118054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種の集積化流体制御装置では、より一層のコンパクト化が望まれており、特許文献2のものは、コンパクト化という点において、特許文献1のものに比べて優れているが、新たにブロック状本体が必要となるために、部品数が増加するという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、部品数の増加を抑えるとともに、より一層のコンパクト化が果たされた集積化流体制御装置を可能とする継手部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明によるセンサ付き継手部材は、隣り合う流体制御機器の下端開口同士を接続する通路が形成された通路ブロックと、通路ブロックに設けられたセンサとを備えているものである。
【0008】
流体制御機器は、例えば、プレッシャーレギュレータ、開閉弁、通路ブロック、フィルターなどとされ、例えば、プレッシャーレギュレータと開閉弁または通路ブロックとがこのセンサ付き継手部材によって接続される。
【0009】
通路ブロックの形状は、直方体または略直方体とされ、通路は、流体制御機器の下端開口に連通する上端開口を有するものとされる。
【0010】
センサとしては、圧力センサ、温度センサ、流量センサなどの種々のセンサを使用することができる。
【0011】
センサは、通路ブロックの側面に設けられていることが好ましい。通路ブロックは、その上面に流体制御機器が設けられるとともに、その下面が基板の上面に載置されて固定される。通路ブロック内の流体の流れ方向を基準にした場合、センサは、通路ブロックの上流側の側面に設けられてもよく、また、通路ブロックの下流側の側面に設けられてもよい。また、流れ方向に対して平行な側面に設けられてもよい。センサ付き継手部材は、他の継手部材とともに流体の流れ方向が一方向を向いた1つのラインを形成し、これらのラインが並列に配置されて1つの流体制御装置が構成される。この場合に、流体制御装置のスペースをできるだけ少なくするという点から、センサは、通路ブロックの上流側の側面および/または通路ブロックの下流側の側面に設けられることがより好ましい。
【0012】
センサは、流体の流れ方向に垂直となる側面に設けられていることがある。
【0013】
センサには、非接触で情報の読み出し、書き込みが可能なRFIDタグが配置されていることがある。この場合に、RFIDタグは、単品に関する情報が書き込まれており、組み立て時には組み立てに関する情報を追加で書き込むことができることが好ましい。
【0014】
RFID(Radio Frequency IDentification)タグは、データを格納するためのメモリ(ICチップ)と無線を拾うためのアンテナが一体化されたものである。センサにRFIDタグを配置するには、センサまたは通路ブロックにRFIDタグを接着すればよい。また、センサは、圧力、温度等のデータ取得のためのセンサ部分、センサ部分または外部からの情報を格納するICチップおよび通信用のアンテナを1つのブロック状保持部材内に一体化的に組み込んだ構成とすることにより、RFIDタグ機能を有するセンサとすることもできる。
【0015】
センサ付き継手部材にRFIDタグを取り付けることによって、単品出荷時には、単品に関する情報(品番やコードナンバー、製造日、製造ロットナンバー、検査成績結果など)を書き込んだ状態で出荷を行ない、出荷先でその情報を読み出す事によって簡単に取得することが出来るようにし、また、組み立て等を行なう場合には、組み立てに関する情報(使用する流体名、ライン名称、組み立て記録、検査記録等)を追加して書き込むことにより、組み立てが完了した後に製品の出荷から組み立てまでの全ての情報(トレーサビリティ)を得ることが出来る。
【0016】
なお、RFIDタグに書き込む内容は、上記記載の内容の他にも関連する全ての情報を保存することが可能であるし、RFIDタグの設置場所は、組み立て等で影響が出ない場所にならどの位置に設置しても良い。
【0017】
さらに、RFIDタグに書き込み機能を持たせる(一体化する)ことにより、外部から書き込む情報の他に、センサから発せられる情報(圧力、温度等の測定結果等)もRFIDタグに定期的に書き込み、外部から読み出すことによってセンサからの情報も合わせて確認することが出来る。
【0018】
また、センサとRFIDタグを別々にするのではなく、一体化したセンサ回路として継手部材に取り付けることにより、センサからの出力をRFIDタグに書き込んで保存し、必要な時に外部へ読み出しすることが可能なセンサ回路を形成することも可能である。
【0019】
センサは、圧力センサであり、通路ブロックに、隣り合う流体制御機器の下端開口同士を接続するV字状またはU字状接続通路と、接続通路から分岐して圧力センサに通じる分岐通路とが形成されていることがある。圧力センサは、従来の流体制御装置では、上段に配置される流体制御機器の1つとして扱われており、これが下段に配置される継手部材に取り付けられることで、圧力センサ設置用スペースが不要となり、圧力センサ付き流体制御装置の設置スペースを減少することができる。
【0020】
この発明による流体制御装置は、複数の流体制御機器と、隣り合う流体制御機器の下端開口同士を接続する通路が形成された複数のブロック状継手部材とを有し、少なくとも1つの継手部材が上記のセンサ付き継手部材とされているものである。
【発明の効果】
【0021】
この発明のセンサ付き継手部材によると、公知の継手部材をこのセンサ付き継手部材で置き換えることにより、複数の流体制御機器および複数の継手部材を備えかつ流体制御機器としてセンサを含んでいる流体制御装置をコンパクト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この発明の実施の形態を、以下図面を参照して説明する。
【0023】
以下の説明において、上下・左右については、図の上下を上下、左右を左右というものとするが、この上下・左右は便宜的なもので、上下が左右になったりして使用されることもある。
【0024】
図1および図2は、この発明によるセンサ付き継手部材(10)が流体制御機器(16)に取り付けられた状態を示し、図3は、この発明によるセンサ付き継手部材(10)が使用されている流体制御装置の1つのライン(C)を示している。
【0025】
図1および図2において、流体制御機器としてのプレッシャーレギュレータ(16)の下方には、左方に隣り合う流体制御機器(図示略)との接続用のブロック継手(33)と、右方に隣り合う流体制御機器(20)との接続用の継手部材(10)とが設けられている。
【0026】
ブロック継手(33)は、公知のもので、直方体ブロック状本体(33a)にV字状通路(33b)が形成されたものである。
【0027】
右の継手部材(10)は、この発明のセンサ付き継手部材で、左右に隣り合う流体制御機器(16)(20)の下端開口同士を接続する接続通路(41a)が形成された通路ブロック(41)と、通路ブロック(41)の左側面に設けられたセンサ(42)とを備えている。
【0028】
センサ(42)は、ダイアフラム(42a)を有する圧力センサとされており、通路ブロック(41)には、左右に隣り合う流体制御機器(16)(20)の下端開口同士を接続するV字状接続通路(41a)と、接続通路(41a)の下端部から分岐して左方にのび圧力センサ(42)に通じる分岐通路(41b)とが形成されている。通路ブロック(41)は、ブロック継手(33)に分岐通路(41b)と圧力センサ取付用凹部(41c)とが追加加工されることにより形成されており、これにより、部品数の増加が抑えられている。
【0029】
プレッシャレギュレータ(16)内における流路方向は、矢印で示すように左から右とされており、右のセンサ付き継手部材(10)圧力センサ(42)により、プレッシャレギュレータ(16)の出口側の圧力がモニターされている。
【0030】
図3において、流体制御装置の1つのライン(C)は、複数の上段部材および複数の下段部材からなり、上段部材として、逆止弁(11)、プレッシャレギュレータ(16)、逆V字状通路ブロック(20)、遮断開放器(13)、マスフローコントローラ(14)、開閉弁(15)、逆V字状通路ブロック(20)およびフィルタ(17)が配置されるとともに、下段部材として、左から順に、逆止弁(11)に接続されかつ入口継手(31)が取り付けられたL字状通路ブロック継手(32)と、逆止弁(11)とプレッシャレギュレータ(16)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、プレッシャレギュレータ(16)と逆V字状通路ブロック(20)とを連通するセンサ付き継手部材(10)と、逆V字状通路ブロック(20)と遮断開放器(13)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、遮断開放器(13)とマスフローコントローラ(14)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、マスフローコントローラ(14)と開閉弁(15)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、開閉弁(15)と逆V字状通路ブロック(20)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、逆V字状通路ブロック(20)とフィルタ(17)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)と、フィルタ(17)に接続されかつ出口継手(34)が取り付けられたL字状通路第ブロック継手(32)とが配置されている。そして、下段部材としての各種継手部材(31)(32)(33)(10)(34)が1つの細長い副基板(3)上に載せられるとともに、これらの下段部材(31)(32)(33)(10)(34)にまたがって上段部材としての各種流体制御機器(11)(16)(20)(13)(14)(15)(20)(17)が取り付けられることで1つのライン(C)が形成され、このライン(C)と類似の構成とされた複数のラインが主基板(2)上に並列に配置されるとともに、各ライン(C)の遮断開放器(13)同士が、3つのI字状通路ブロック継手(51)およびI字状通路ブロック継手(51)同士を接続するチューブ(52)からなる通路接続手段(50)により接続されることにより、集積化流体制御装置が形成されている。
【0031】
図3と図4の比較から容易に分かるように、図3においては、図4に示されている圧力センサ(12)のためのスペースが完全に省略されており、左右の長さが短くなり、極めてコンパクトな流体制御装置が得られている。また、新部品であるセンサ付き継手部材(10)の通路ブロック(41)は、ブロック継手(33)に追加加工することで製作可能であり、部品数および加工の手間の増加が極力抑えられている。
【0032】
なお、上記において、センサ付き継手部材(10)は、プレッシャーレギュレータ(16)の右側のみに配置されているが、プレッシャーレギュレータ(16)の左側の継手部材(33)もセンサ付き継手部材(10)としてプレッシャーレギュレータ(16)の出口側だけでなく入口側の圧力もモニターするようにしてよく、また、プレッシャーレギュレータ(16)以外の箇所、例えば逆V字状通路ブロック(20)と遮断開放器(13)とを連通するV字状通路ブロック継手(33)をこのセンサ付き継手部材(10)としてもよい。また、センサ(42)は圧力センサに限られるものではない。また、センサ付き継手部材(10)の接続通路(41a)は、V字状ではなく、U字状であってもよい。また、図示省略するが、センサ(42)は、非接触で情報の読み出し、書き込みが可能なRFIDタグが配置されている構成とするとともに、RFIDタグは、単品に関する情報が書き込まれており、組み立て時には組み立てに関する情報を追加で書き込むことができるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明によるセンサ付き継手部材の1実施形態を示す側面図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】この発明によるセンサ付き継手部材を使用した流体制御装置を示す側面図である。
【図4】従来の流体制御装置を示す側面図である。
【符号の説明】
【0034】
(10) センサ付き継手部材
(16)(20) 流体制御機器
(41) 通路ブロック
(41a) 接続通路
(41b) 分岐通路
(42) 圧力センサ(センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣り合う流体制御機器の下端開口同士を接続する通路が形成された通路ブロックと、通路ブロックに設けられたセンサとを備えているセンサ付き継手部材。
【請求項2】
センサは、通路ブロックの側面に設けられている請求項1のセンサ付き継手部材。
【請求項3】
センサは、流体の流れ方向に垂直となる側面に設けられている請求項1のセンサ付き継手部材。
【請求項4】
センサには、非接触で情報の読み出し、書き込みが可能なRFIDタグが配置されている請求項1から3までのいずれかのセンサ付き継手部材。
【請求項5】
RFIDタグは、単品に関する情報が書き込まれており、組み立て時には組み立てに関する情報を追加で書き込むことができる請求項4のセンサ付き継手部材。
【請求項6】
センサは、圧力センサであり、通路ブロックに、隣り合う流体制御機器の下端開口同士を接続するV字状またはU字状接続通路と、接続通路から分岐して圧力センサに通じる分岐通路とが形成されている請求項1から3までのいずれかのセンサ付き継手部材。
【請求項7】
複数の流体制御機器と、隣り合う流体制御機器の下端開口同士を接続する通路が形成された複数のブロック状継手部材とを有し、少なくとも1つの継手部材が請求項1から6までのいずれかのセンサ付き継手部材とされている流体制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−83959(P2006−83959A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270016(P2004−270016)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(390033857)株式会社フジキン (148)
【Fターム(参考)】