説明

センサ測定システム

【課題】センサ測定システムの構成を簡単にする。
【解決手段】コントローラ10の送信部11は、起動電力信号を、測定させる燃料センサ20に対応した識別IDを含むように変調させて送信し、燃料センサ20は、起動電力信号に基づいて、起動電力信号が自身の識別IDを含むか否かを判定する受信部25と、測定を行うセンシング部29と、を有し、センシング部29は、受信部25により、起動電力信号が自身の識別IDを含むと判定されたときに、測定を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサが受信した識別IDに応じて測定を行うか否かを判定するセンサ測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コントローラが電磁誘導を介して識別IDをセンサに送信し、センサは、コントローラから受信した識別IDが自身の識別IDと照合できた場合に測定を行うセンサ測定システム(例えば、特許文献1)が知られている。
【0003】
このセンサ測定システムにおいては、システムコントローラから送信される識別IDを、センサ近傍のリーダ/ライタが受信し、リーダ/ライタに接続されたコイルアンテナを介してセンサに識別IDを送信する。センサに内蔵されたトランスポンダは、リーダ/ライタから受信した識別IDと自身の識別IDが一致したときに、リーダ/ライタに接続されたコイルアンテナから電力を得て、測定を開始する。
【0004】
【特許文献1】特開2006−85411号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のセンサ測定システムが複数のセンサを有する場合、電力信号を変調させるための変調器(リーダ/ライタ)を少なくともセンサと同数設けなくてはならず、システムの構成が複雑になるという問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、システムの構成を簡単にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるセンサ測定システムは、複数のセンサと、前記複数のセンサに対して、センサを起動させるための起動電力信号を送信するコントローラと、を備え、前記複数のセンサは、前記コントローラからの起動電力信号を電磁誘導を介して受信し、測定を開始するセンサ測定システムであって、前記コントローラは、前記起動電力信号を、測定させるセンサに対応した識別IDを含むように変調させて送信することを特徴とする。
【0008】
本発明におけるセンサ測定システムによれば、コントローラが起動電力信号を変調して、測定させるセンサを特定するため、複数のセンサを一つの変調器で作動させることができ、システムの構成を簡単にすることができる。
【0009】
また、前記複数のセンサは、前記起動電力信号に基づいて、前記起動電力信号が自身の識別IDを含むか否かを判定する判定部と、測定を行うセンシング部と、を有し、前記センシング部は、前記判定部により、前記起動電力信号が自身の識別IDを含むと判定されたときに、測定を開始することが好適である。
【0010】
識別IDが起動電力信号に含まれない場合には、センサがデータの測定を行わないため、センサが消費する電力を低減することができる。
【0011】
また、前記複数のセンサは、電力信号を、自身の識別IDを含むように変調させて送信し、前記コントローラは、前記複数のセンサからの電力信号を電磁誘導を介して受信し、前記電力信号に含まれる識別IDに基づいて、電力信号を送信したセンサを判別することが好適である。
【0012】
識別IDに基づいて、センサを判別することができるので、同時に複数のセンサと通信をしていても、電力信号を送信したセンサを誤認識することがない。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、センサ測定システムの構成を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、本実施形態におけるセンサ測定システムのシステム構成を示すブロック図である。センサ測定システム1は、コントローラ10、燃料センサ20、空気圧センサ30、油圧センサ40、水温センサ50を含む各センサ、コイルアンテナ62〜65、及びコントローラと各コイルアンテナ62〜65を接続する回路を有する。
【0016】
コントローラ10は各ECUからの制御命令に応じて、燃料センサ20、空気圧センサ30、油圧センサ40、水温センサ50を含む各センサを制御する。コントローラ10は、車内LANを介して、エンジンECU(Electronic Control Unit)等の各ECUに接続され、回路と各コイルアンテナ62〜65等を介して、各センサに接続されている。
【0017】
燃料センサ20は、車両の燃料タンク内の燃料量を検出する。
【0018】
空気圧センサ30は、タイヤ内の空気圧を検出する。
【0019】
油圧センサ40は、車両のブレーキ液の油圧を検出する。
【0020】
水温センサ50は、車両のエンジンを冷却する冷却水の水温を検出する。
【0021】
次に、センサ測定システム1のコントローラ10と各センサの内部構成について、図面を参照して説明する。
【0022】
コントローラ10は、送信部11、受信部13、及び記憶部15を有する。
【0023】
記憶部15は、各センサに対応した識別IDを記憶している。
【0024】
送信部11は、コイルアンテナ62〜65を介して、各センサに起動電力信号を送信する。起動電力信号は、各センサを動作させるための電力を含む搬送波を識別IDに応じて変調させたものである。すなわち、送信部11は、測定させるセンサの識別IDを記憶部15から読み出し、識別IDを有するよう変調信号により搬送波を変調させ、起動電力信号として送信する。変調方式としては、FSK(Frequency Shift Keying)やPSK(Phase Shift Keying)等が用いられる。
【0025】
受信部13は、各センサから送信されたセンサ信号を受信し、受信したセンサ信号に基づいて、ここに含まれる情報を読み出す。すなわち、受信したセンサ信号から搬送波を除去してベースバンド信号に復調して、センサ信号に含まれる、センサ毎に設定された識別IDとセンサの測定結果を認識する。
【0026】
各センサの例として、燃料センサ20の内部構成について説明する。燃料センサ20は、コイルアンテナ21、記憶部22、送信部23、受信部25、電源生成部27、センシング部29を有する。送信部23、受信部25、及びセンシング部29は、電源生成部27から供給される電力により動作することができる。
【0027】
コイルアンテナ21は、コントローラ10から回路側のコイルアンテナ62を介して送信された起動電力信号を受信し、受信した起動電力信号は受信部25及び電源生成部27に供給される。また、コイルアンテナ21は、送信部23から送信されたセンサ信号を、回路側のコイルアンテナ62を介してコントローラ10に送信する。
【0028】
記憶部22は、燃料センサ20の識別IDと、センシング部により測定されたデータを記憶している。
【0029】
電源生成部27は、コイルアンテナ21を介して受信した起動電力信号を整流して、コンデンサに蓄えることで電池と同様の電源となり、この電力をセンサの各構成部に供給する。電源生成部27は、受信部25に最初に電力を供給する。
【0030】
受信部25は、コイルアンテナ21から起動電力信号を受信し、受信した起動電力信号に基づいて、センサが測定を行うか否かを判定する。具体的には、起動電力信号を復調し、復調されたベースバンド信号に含まれる識別IDと記憶部22に記憶された識別IDを比較して、起動電力信号に燃料センサ20の識別IDが含まれるか否かを判定する。すなわち、受信部25は、判定部としても機能する。
【0031】
起動電力信号に燃料センサ20の識別IDが含まれる場合には、受信部25は、送信部23及びセンシング部29に電力を供給するよう、電源生成部27を制御する。一方、起動電力信号に燃料センサ20の識別IDが含まれない場合には、受信部25は、送信部23及びセンシング部29に電力を供給しないよう、電源生成部27を制御する。この制御は、受信部25が単に動作または不動作を示す信号を送ることで、電源生成部27が受信部25から送られてきた信号に応じて動作すればよい。
【0032】
センシング部29は、燃料の質量を測定し、測定したデータを記憶部22に記憶させる。
【0033】
送信部23は、コイルアンテナ21を介して回路側のコイルアンテナ62にセンサ信号を送信する。すなわち、送信部23は、燃料センサ20の識別IDと、センシング部29の測定結果を記憶部22から読み出し、読み出した識別IDと測定結果を有するよう変調信号により搬送波を変調させて、電力信号を送信する。変調方式としては、例えばFSK等が用いられる。この場合の搬送波は、例えば自己の発振器によって発振されたものを利用する。
【0034】
次に、コントローラ10の送信部11及び燃料センサ20の送信部23が行う、電力信号の変調と、コントローラ10の受信部13及び燃料センサ20の受信部25が行う、電力信号の復調についてより詳細に説明する。
【0035】
コントローラ10の送信部11は、搬送波を、ヘッダと測定させるセンサの識別IDを有する変調信号で変調し、起動電力信号として送信する。例えば、送信するデータは、「111101」等の開始を示すデータの後を識別ID、センサへのリクエストを示すデータ等とする。なお、識別IDは、測定させるセンサ毎に異なるように設定されている。
【0036】
燃料センサ20の受信部25は、コントローラ10から送信された起動電力信号を復調し、起動電力信号に含まれるヘッダと識別IDを認識する。具体的には、受信部25は、復調された起動電力信号から「111101」を読み取ると、これをヘッダと認識し、その後のデータを識別IDと認識する。
【0037】
そして、受信部25は、受信した識別IDが燃料センサ20の識別ID(自身の識別ID)と一致するか否か判定する。受信部25は、記憶部22に記憶された燃料センサの識別IDを読み出し、受信した識別IDが記憶部22に記憶された識別IDと一致するか否か判定する。識別IDが一致するときには、受信部25は、送信部23及びセンシング部29に電力を供給するよう、電源生成部27を制御する。一方、識別IDが一致しないときには、受信部25は、送信部23及びセンシング部29に電力を供給しないよう、電源生成部27を制御する。
【0038】
燃料センサ20の送信部23は、搬送波を、燃料センサ20の識別IDと測定データを有する変調信号により変調し、センサ信号として送信する。例えば、「101101」をヘッダとし、その後のデータを識別ID及び測定データとする。なお、燃料センサ20の送信部23がセンサ信号の送信に用いる搬送波は、コントローラ10の送信部13が起動電力信号の送信に用いる搬送波と異なる周波数を持つことが好適である。燃料センサ20とコントローラ10の搬送波の周波数が異なることによって、コントローラ10と燃料センサ20間で、全二重通信も行うことができる。
【0039】
コントローラ10の受信部13は、燃料センサ20から送信されたセンサ信号を復調し、センサ信号に含まれるヘッダ、識別ID、及び測定データを認識する。具体的には、受信部13は、復調されたセンサ信号から「101101」を読み取ると、その後のデータを識別ID及び測定データと認識する。
【0040】
そして、受信部13は、受信した識別IDがどのセンサの識別IDと一致するか判定する。そして、受信部13は、測定データが識別IDが一致するセンサのデータであると認識する。本実施形態においては、受信部13は、受信したIDが燃料センサ20の識別IDであると判定し、測定データは燃料センサの測定した燃料量データであると判別し、これを記憶する。なお、識別IDが予め記憶している識別IDと一致するか否かの判定を省略して、受信したデータを記憶してもよい。
【0041】
次に、本実施形態におけるコントローラ10の動作について、図2のフローチャートを参照して説明する。
【0042】
まず、S11において、コントローラ10は、測定させるセンサの識別IDを、記憶部15から選択して読み出す。
【0043】
次に、S12において、コントローラ10は、起動電力信号の送信を行う。コントローラ10は、S11で読み出した測定させるセンサの識別IDを用いて、起動電力信号を変調させて送信する。
【0044】
S12において送信された起動電力信号により、対応するセンサ20〜50のいずれかから返信があると予想されるため、コントローラ10はこの返信を待つ。そして、S13において、コントローラ10は、各コイルアンテナ62〜65を介してセンサ20〜50から送信されるセンサ信号を受信すると、S14に進む。
【0045】
次に、S14において、コントローラ10は、センサ信号を送信したセンサの特定を行う。すなわち、コントローラの受信部13は、受信したセンサ信号を復調して、センサ信号に含まれる識別IDを認識し、識別IDに基づいて、センサ信号を送信したセンサを特定する。
【0046】
次に、S15では、コントローラ10は、受信したセンサ信号に含まれる測定データを、エンジンECU等の各ECUに送信する。測定データを送信すると、コントローラ10は今回の処理を終了する。
【0047】
次に、本実施形態におけるセンサ20〜50の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。以下では、センサ20〜50の例として燃料センサ20を挙げる。
【0048】
まず、S21において、燃料センサ20は、コントローラ10からコイルアンテナ62を介して起動電力信号を受信する。
【0049】
次に、S22において、電源生成部27は、起動電力信号に含まれる電力を用いて、受信部25に電力を供給する。受信部25に電力が供給されると、受信部25が起動し、S23に進む。
【0050】
次に、S23において、受信部25は、起動電力信号に含まれる識別IDが燃料センサ20の識別IDと一致するか否か判定する。識別IDが一致する場合には、S24に進む。識別IDが一致しない場合には、S34に進む。
【0051】
S24において、電源生成部27は、起動電力信号に含まれる電力を用いて、送信部23及びセンシング部29に電力供給を供給する。これによって、送信部23及びセンシング部29が起動する。そして、S25に進む。
【0052】
一方、S34においては、電源生成部27は、送信部23及びセンシング部29には電力を供給せず、送信部23及びセンシング部29は起動しない。そして、燃料センサ20は今回の処理を終了する。
【0053】
S25において、センシング部29は、燃料の質量の測定を行う。センシング部29は、測定を行うと、送信部23に測定データを送信する。
【0054】
次に、S26において、送信部23は、コイルアンテナ21を介して、コントローラ10に電力信号を送信する。このとき、送信部23は、燃料センサ20の識別IDと、センシング部29から受信した測定データを含むよう、電力信号を変調させて送信する。燃料センサ20は、電力信号の送信を終えると、今回の処理を終了する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、コントローラが起動電力信号を変調させて、測定させるセンサを示すため、電力信号を変調してセンサに送信するための変調器(リーダ/ライタ)を、センサと同数設ける必要がなく、システムの構成を簡単にすることができる。
【0056】
また、起動電力信号によって起動したセンサでも、コントローラから送信された識別IDと自身の識別IDとが一致しないセンサは、データの測定とコントローラへの電力信号の送信を行わないため、センサが消費する電力を低減することができる。
【0057】
また、コントローラは、センサから送信されたセンサ信号に含まれる識別IDに基づいて、センサを判別することができるので、同時に複数のセンサと通信をしていても、センサ信号を送信したセンサを誤認識することがない。
【0058】
また、本実施形態におけるセンサとして、燃料センサ、空気圧センサ、油圧センサ、及び水温センサといった、常時測定を行う必要のないセンサを選択して接続することによって、必要なときだけコントローラが起動電力信号を送信してセンサに測定を行わせることができるので、システムとして消費する電力を低減することができる。なお、常時測定を行う必要がなければ、上記したセンサに限らなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施形態におけるセンサ測定システムのシステム構成を示すブロック図である。
【図2】本実施形態におけるコントローラの動作を示すフローチャートである。
【図3】本実施形態におけるセンサの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0060】
1 センサ測定システム、10 コントローラ、11 送信部、13 受信部、15 記憶部、20 燃料センサ、22 記憶部、23 送信部、25 受信部、27 電源生成部、29 センシング部、30 空気圧センサ、40 油圧センサ、50 水温センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の状態を測定する複数のセンサと、
前記複数のセンサに対して、センサを起動させるための起動電力信号を送信するコントローラと、
を備え、
前記複数のセンサは、前記コントローラからの起動電力信号を電磁誘導を介して受信し、測定を開始するセンサ測定システムであって、
前記コントローラは、前記起動電力信号を、測定させるセンサに対応した識別IDを含むように変調させて送信することを特徴とする、
センサ測定システム。
【請求項2】
前記複数のセンサは、前記起動電力信号に基づいて、前記起動電力信号が自身の識別IDを含むか否かを判定する判定部と、
測定を行うセンシング部と、
を有し、
前記センシング部は、前記判定部により、前記起動電力信号が自身の識別IDを含むと判定されたときに、測定を開始することを特徴とする、
請求項1に記載のセンサ測定システム。
【請求項3】
前記複数のセンサは、電力信号を、自身の識別IDを含むように変調させて送信し、
前記コントローラは、前記複数のセンサからの電力信号を電磁誘導を介して受信し、
前記電力信号に含まれる識別IDに基づいて、電力信号を送信したセンサを判別することを特徴とする、
請求項1または2のいずれか1項に記載のセンサ測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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