説明

センシング用アモルファス薄膜

【課題】低電力応用のために、室温または環境温度で動作する敏感で選択性のあるセンサが必要とされる。
【解決手段】気相または液相中の、化学的またはバイオ化学的な検体をセンシングするための、低電力センシングに関し、所定の検体をセンシングするために、デバイス中でのセンシング層40としての、粒界の無い薄い連続した膜の使用に関する。使用において、センシング層は検体に露出した表面を有する。センシング層の電気的なインピーダンスは、センシング層の露出表面上の、所定の検体の吸収に応じて変化する。センシング層は、好適には約1nmと約30nmの間の範囲、例えば約1nmと約30nmの間の膜厚を有する。好適には、センシング層はアモルファス層である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センシングデバイス、その応用、および製造方法のセンシング層として幅広く使用できる薄膜に関する。特に、本発明は、例えば、気相または液相中の化学的および生化学的なセンシングのような、低電力のセンシングに関する。
【背景技術の説明】
【0002】
低電力の化学センシングは、新たな無線自律変換器応用(emerging wireless autonomous transducer application)を可能にする。それらの応用は、長時間、自律動作を確実にするエネルギースカベンジャー(energy scavenger)を含む。それゆえに、環境から得られるエネルギにより発生する電力は限定的であるため、低電力回路が必要となる。低電力のRF通信、デジタル処理、およびAD変換に加えて、それらの応用は、環境と影響しあう低電力センサおよびアクチュエータを含む。
【0003】
低電力動作および低動作電圧の必要性に加えて、センサは、目標とされた応用に必要とされるように、高感度で選択的であるべきである。
【0004】
特定の検体の検出は、例えばセンシング材料のインピーダンス(コンダクタンス、キャパシタンス)、誘電率、および/または仕事関数のような物理的特性の変化をモニタすることでしばしば達成される。ポリマーから例えば酸化物、窒化物、および半導体のような無機材料までの範囲で、多くの異なる材料がセンシングのために使用される。
【0005】
例えば、気体の敏感で選択的な検出のために、半導体材料や絶縁性材料を含む金属酸化物が、気体センシングデバイス中の気体に敏感な層としてしばしば使用される。それらのデバイスは、気体の吸着や脱着を高めるために、100℃より高く、一般には400℃まで加熱する必要がある。高い温度でのセンシングデバイスの動作は、また、金属酸化物層中への気体の拡散を高めることが要求される。それは、例えば材料の電力消費や耐久性に関して、欠点である。
【0006】
米国特許出願2005/0235735には、気体の吸着確率が、電場の手段により制御可能なガスセンサが記載されている。そのようなガスセンサは、それゆえに、様々な気体についてそれらの感度が電気的に変調するように形成される。目的の気体の改良された選択性が得られ、動作温度は200℃より低くまで低減できる。それらのデバイスは、適当な動作のために加熱する必要がある。
【0007】
しかしながら、加熱のための電力消費は、無線、自律変換器システムにより決定づけられる電力量に比較して過大である。このように、低電力応用のために、室温または環境温度で動作する敏感で選択性のあるセンサが必要とされる。
【0008】
金属酸化物ナノワイヤは、気体のセンシングに用いられてきた。それらの高い表面積対体積率(surface-to-volume ratio)のために、ナノワイヤデバイスの感度は高い。ナノワイヤデバイスの場合、電場は、表面特性および分子吸着に影響する。高い活性エネルギを有する所定の化学反応は、室温や環境温度において、電場を用いて、強化や逆転さえも可能であり、これは低電力ガスセンサにとって非常に重要な特性である。電場は、デバイス中で、センシング材料の表面状態を変えることにより、ガス吸着(センシング)と脱着(リフレッシング)の双方の強化を可能にする。これは、電場が、ナノワイヤセンサのセンシングとリフレッシングの双方において、温度の代わりになることを暗示する。更に、特定の種類の分子の吸着は、所定の活性化エネルギにより特徴付けられ、これは電場の適用により低減することができ、デバイスの選択性を改良する。
【0009】
例えば、Z. Fan らにより、"Gate-refreshable nanowire chemical sensors", Appl. Phys. Lett. 86, 123510 (2005)において、500nm膜厚のゲート酸化層の上の60nmZnOナノワイヤを含むデバイスは、10ppmのNOに露出させた後に、リフレッシュするために、60Vのゲート電圧が必要であることが報告されている。この場合、必要な電場は、おおよそ1.2MV・cm−1である。自律システムの要求中にある、より低電圧は、より薄いゲート酸化物を用いることにより達成できる。
【0010】
しかしながら、半導体作製プロセス中のナノワイヤの集積化は、例え不可能でなくても、ナノワイヤの成長中の熱的な制約により、およびチップ上の個々のナノワイヤの配置に関連する問題により、複雑である。
【発明の概要】
【0011】
第1の形態では、本発明は、特定の検体をセンシングするための低電力デバイスに関し、このデバイスは、使用時に検体に露出する表面を有するセンシング層を含み、センシング層の電気インピーダンスは、センシング層の露出した表面上への特定の検体の吸着に依存して変化し、センシング層は粒界の無い連続した薄膜である。センシング層は、例えば、約1nmと約30nmの間のような、約1nmと約100nmの間の膜厚を有するのが好ましい。センシング層は、アモルファス層または単結晶層でも良い。センシング層は、誘電体層または半導体層でも良い。
【0012】
センシング層は、例えば、1またはそれ以上のポリマー、無機材料、例えば酸化物、窒化物、及び半導体、例えばSiO、Al、HfO、Ta、ZrO、酸化チタン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化イリジウム、ランタニド系酸化物、貴金属触媒粒子、SiN、SiC、n型またはp型ドープシリコン、III−V2元系、3元系、及び4元系合金、例えばGaN、およびII−VI化合物から形成されても良い。
【0013】
本発明のデバイスは、センシング層の電気インピーダンスを測定するために取り付けられた、少なくとも1つの第1測定電極と、少なくとも1つの第2測定電極とを含み、これにより、電気インピーダンスの変化の検出に基づいて特定の検体をセンシングしても良い。
【0014】
デバイスは、更に、センシング層の上に電場を与えるために取り付けられた、少なくとも1つのフィールド電極を含み、これによりセンシング層の露出表面において、特定の検体の吸着および/または脱着を電気的に制御しても良い。
【0015】
第1測定電極と第2測定電極の一方が、センシング層の上に電場を与えるために取り付けられたフィールド電極として使用され、これによりセンシング層の露出表面において、特定の検体の吸着および/または脱着を電気的に制御しても良い。
【0016】
デバイスは、例えばキャパシタであり、センシング層は、第1測定電極と第2測定電極の間に形成された電気絶縁層であっても良い。
【0017】
デバイスは、例えばトランジスタであり、センシング層はゲート誘電体層であり、第1測定電極はソース電極であり、第2測定電極はドレイン電極であり、フィールド電極はゲート電極であっても良い。
【0018】
デバイスは、例えばトランジスタであり、センシング層は半導体チャネル層であり、第1測定電極はソース電極であり、第2測定電極はドレイン電極であり、そしてフィールド電極はゲート電極であっても良い。
【0019】
センシング層は、例えば好ましくは検体へのアクセスを容易にするのに適したアスペクト比を有する線、ドット、トレンチ、または孔のようなナノスケールおよび/またはマイクロスケールの構造、増加した実効表面積を有するような複雑な3D構造、ピラミッドまたはピラミッド状の構造のアレイのような分子が容易にそこを通過することができるオープン構造、周期的アレイ構造、および好適には周期的に現れる鋭いエッジを含む構造表面の上に形成されても良い。
【0020】
第2の形態では、本発明は、特定の検体をセンシングするための、デバイス中のセンシング層としての、粒界の無い連続薄膜の使用に関し、センシング層は、約1nmと約30nmの間のような、約1nmと約100nmの間の範囲の膜厚を有する。センシング層は、アモルファス層または単結晶層でも良い。センシング層は誘電体層または半導体層でも良い。センシングは、環境温度で行われても良い。
【0021】
センシング層は、例えば1またはそれ以上のポリマー、無機材料、例えば酸化物、窒化物、及び半導体、例えばSiO、Al、HfO、Ta、ZrO、酸化チタン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化イリジウム、ランタニド系酸化物、貴金属触媒粒子、SiN、SiC、n型またはp型ドープシリコン、III−V2元系、3元系、及び4元系合金、例えばGaN、およびII−VI化合物から形成されても良い。
【発明の詳細な説明】
【0022】
1つの発明の形態は、低電力消費、良好な選択性、良好な感度、および速い応答を有する幅広いセンシングデバイス中でセンシング膜として使用できる薄膜に関し、センシングデバイスは、室温または環境温度で動作し、センシングデバイスは標準的な半導体製造技術を用いて作製できる。本発明の所定の具体例では、薄いセンシング膜は連続的な、粒界の無い超薄膜であり、例えばアモルファス膜である。本発明の文脈では、センシングは、気相中または液相中の、原子、分子、および/またはイオン、例えば化学的および/またはバイオ化学的な検体、のセンシングをいう。
【0023】
1つの発明の形態は、センシングデバイス中でセンシング層として使用できる薄膜と、そのような薄膜を含むセンシングデバイスに関し、薄膜は粒界の無い連続した超薄膜である。所定の具体例では、センシング膜は、例えば約1nmと約30nmの間のような約1nmと約100nmの間の範囲の膜厚を有する、例えばアモルファス膜である。そのような薄膜の使用は、高い感度、速い応答、低い動作電圧、および吸着と脱着を制御するための電場の使用の可能性となり、これにより室温または環境温度での使用を可能にする。
【0024】
1つの発明の形態にかかる、特定の検体をセンシングするためのセンシングデバイスは、センシング層を含み、センシング層の電気インピーダンスは、センシング層の露出表面上での特定の検体の吸着に依存して変化し、センシング層は、粒界の無い連続薄膜である。好適な具体例では、センシング層は、例えば約1nmと約30nmの間の範囲のような約1nmと約100nmの間の範囲の膜厚を有するアモルファス膜である。センシング層の露出した表面は、例えばセンシングされる特定の検体を含む液体または気体のような局所環境に露出した表面である。
【0025】
例では、センシングデバイスは、更に、センシング層の電気インピーダンスを測定するための第1測定電極と第2測定電極を含み、これにより、センシング層の電気インピーダンスの変化の検出に基づいて特定の検体をセンシングしても良い。電気インピーダンスの測定は、例えば、電気コンダクタンスの測定を含んでも良く、電気キャパシタンスの測定を含んでも良い。第1測定電極と第2測定電極は、センシング層の同じ側面に形成されても良く、または第1測定電極と第2測定電極は、センシング層の対向する側面に形成されても良い。
【0026】
例では、センシングデバイスは、更に、センシング層の上に電場を供給するための、少なくとも1つのフィールド電極を含み、これによりセンシング層の露出した表面で、特定の検体の吸着および/または脱着を電気的に制御しても良い。吸着の電気的制御は、センシングデバイスの感度および/または選択性を改良するために使用しても良い。脱着の電気的制御は、デバイスをリセットまたは再生するために使用され、これによりデバイスを加熱する必要を回避しても良い。電場は、例えば少なくとも1つのフィールド電極において、電圧パルスを与えることにより形成される。
【0027】
本発明の所定の具体例では、第1および第2の測定電極の一方が、フィールド電極として使用されても良い。
【0028】
センシングデバイスは、例えばキャパシタ構造を含み、センシング層は、第1測定電極と第2測定電極との間に形成された、電気的な絶縁層でも良い。
【0029】
センシングデバイスは、例えばトランジスタ構造を含み、センシング層はゲート誘電体層でも良く、またはセンシング層は半導体チャネル層でも良い。そのような具体例では、フィールド電極は、ゲート電極として機能しても良く、第1測定電極は、例えばソース電極として機能し、第2測定電極は、例えばドレイン電極として機能しても良い。
【0030】
所定の発明の形態と、従来技術を越えて達成される長所を示すために、所定の目的や長所が、これまでに記載された。もちろん、本発明のいずれかの特定の具体例に関して、そのような目的または特徴の全てが達成される必要がないことが、理解されるであろう。このように、例えば当業者は、ここで教示または示唆された他の目的や長所を達成する必要無しに、ここで教示された1つの長所または長所の組を、達成または最適化する方法で、本発明を具体化または実施しても良いことを認識するであろう。更に、この概要は単に例であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるであろう。本発明は、特徴とその長所とともに、構成と動作の方法の双方は、添付された図面と関連して読むことにより、以下の詳細な説明を参照して最も理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】一の具体例に従って、アモルファス薄膜を用いて検体をセンシングするための例示の構造の模式的なレイアウトを示す。
【図2】MIS構造を有するセンシングデバイスを示す。
【図3】MIM構造を有するセンシングデバイスを示す。
【図4】ゲート誘電体層の機能を有するセンシング層を備えたFET構造を有するセンシングデバイスを示す。
【図5】ゲート誘電体層の機能を有するセンシング層の上にギャップを備えたFET構造を有するセンシングデバイスを示す。
【図6】トランジスタチャネルの機能を有するセンシング層を備えたTFT構造を有するセンシングデバイスを示す。
【図7】一の具体例にかかる原子層堆積された金属酸化物誘電体センシング層を備えたMISデバイスの容量−電圧測定を用いた、室温CO検出の測定結果を示す。
【図8】センシングデバイスのセンシングとリセットのプロセスを強化するために使用できる、シリコン中にエッチングされた構造を示す。
【図9】構造化された基板を有し、実効センシング面積が増加されたセンシングデバイスを模式的に示す。
【所定の具体例の詳細な説明】
【0032】
以下の詳細な説明では、発明の全体の理解と特定の具体例で発明がどのように実施されるかを提供するために、多くの特定の細部が説明される。しかしながら、本発明は、それらの特定の細部無しに実施できることが理解されるであろう。他の例では、本発明を不明確にしないための、公知の方法、手順、および技術については述べない。本発明は特定の具体例に関して、所定の図面を参照しながら説明されるが、本発明はこれに限定されない。ここに含まれ、記載された図面は模式的であり、本発明の範囲を限定するものではない。なお、図面において、幾つかの要素の大きさは誇張されて、それゆえに、図示目的のため寸法通りには描かれていない。
【0033】
更に、説明中の、第1、第2、第3等の用語は、類似の要素の間で区別するために使用され、序列や他の方法による、一時的、空間的な順序を表す必要はない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる順序によっても動作できることを理解すべきである。
【0034】
また、説明中の、上、下、上に、下に、等の用語は、記載目的のために使用され、相対的な位置を示すものではない。そのように使用される用語は、適当な状況下で入替え可能であり、ここに記載された発明の具体例は、ここに記載や図示されたものと異なる位置でも動作可能であることを理解すべきである。
【0035】
「膜(film)」および「層(layer)」の用語の双方は、比較的薄い2次元の同質の構造に関する。
【0036】
なお、「含む(comprising)」の用語は、それ以降に示される要素に限定して解釈すべきではなく、他の要素や工程を排除しない。このように、言及された特徴、数字、工程、または成分は、その通りに解釈され、1またはそれ以上の他の特徴、数字、工程、または成分、またはこれらの組み合わせの存在または追加を排除しない。このように、「手段AおよびBを含むデバイス」の表現の範囲は、構成要素AとBのみを含むデバイスに限定されるべきではない。
【0037】
所定の具体例は、低電力消費、高感度、高い選択性、および速い応答を有する、幅広いセンシングデバイスの、センシング膜またはセンシング層に使用できる薄膜に関し、センシングデバイスは、室温または環境温度で動作可能であり、センシングデバイスは、標準的な半導体作製技術を用いて形成できる。1つの具体例では、薄いセンシング膜は、粒界の無い、連続の超薄膜である。それらのセンシング膜の膜厚は、約1nmと約100nmの間の範囲でも良い。例えば、1つの具体例のセンシングデバイスは、気相または液相中の化学および/またはバイオ化学の検体をセンシングするために、有利に使用できる。
【0038】
1つの具体例にかかる薄いセンシング膜は、粒界の無い、連続な超薄膜であり、様々なセンシングデバイスに使用可能である。センシングデバイスでは、1つの具体例にかかる薄いセンシング膜は、検出される検体を含む局所環境に露出される。局所環境は、化学的またはバイオ化学的な検体のような、検出される所定の原子、分子、またはイオンを含む気体または液体でも良い。1つの具体例にかかるセンシングデバイスは、更に、例えばコンダクタンス測定やキャパシタンス測定のようなインピーダンス測定に基づいて、特定の検体をセンシングするための、少なくとも2つの測定電極を含む。コンダクタンス測定は、センシング膜中の電荷キャリア密度の変化の検出を含む。キャパシタンス測定は、その間にセンシング膜を有する2つの電極間のキャパシタンスの測定を含む。導電性測定に基づくセンシングの場合、4つの測定電極が、コンタクト抵抗を除去するために用いられる。1つの具体例にかかるセンシングデバイスは、更に、フィールド電極を含み、フィールド電極は誘電体層と接触する。フィールド電極は、センシング膜の露出した表面で、吸着および/または脱着を電気的に制御するための電場を与えるために使用しても良い。フィールド電極は、また、センシングデバイスの選択性を改良するための電場を与えるために使用しても良い。本発明の具体例では、測定電極の1つがフィールド電極として使用でき、または分離フィールド電極(separate field electrode)が、測定電極に加えて提供されても良い。
【0039】
電気的特性がバルク材料と外部表面により決定されることは、センシング層として粒界の無い連続した膜を使用する利点である。それらの膜の中に粒界が存在しないことにより、バルクの電気的特性は、インピーダンス測定に重要な影響を与える。半導体センシング膜の場合、センシング膜(またはセンシング層)の導電性は、センシング膜中の電荷キャリア密度に比例し、これは、表面上に吸着した分子の量に従って変化する。粒界は静電バリアを形成し、電荷キャリア密度に比例しない導電性に繋がる。更に、膜の中および外への分子の拡散は、粒界に強く影響される。それゆえに、粒界の不存在は、電荷キャリア密度に比例する導電性に繋がり、吸着とコンダクタンスとの間に直接的な関係となる。これは、センサ出力の解釈をより簡単にする。キャパシタンス測定のために、アモルファス膜の使用もまた有益であり、例えばこれは、ピンホールの量が減り、これにより粒界を含む膜に比較して、電気ブレイクダウン電圧が高くなるためである。
【0040】
ナノスケールの超薄膜のセンシング膜を使用する長所は、ナノワイヤの場合と同様の(またはより良好な)体積に対する表面の比が得られ、特に高い感度と速い応答において、良好な性能となることである。超薄膜は、センシング層の全膜厚を通って検体の速い拡散を可能にする。加えて、低い動作電圧を可能にする。例えば、センシング膜がTFT(薄膜トランジスタ)のチャネルを形成する具体例では、センシング膜が薄くなるほど、これによりセンサを再生するために必要な電場が低くなる。例えば、MIS(金属絶縁体半導体)構造やMIM(金属絶縁体金属)構造を有するセンサのような容量センサでは、センシング膜がより薄くなれば、デバイスを再生するために十分に大きい電場の形成に必要な動作電圧はより低くなる。
【0041】
粒界の無い超薄膜は、単結晶膜またはアモルファス膜でも良い。とくに低温で、大面積の単結晶薄膜を形成することは困難であるため、本発明の所定の具体例ではアモルファス膜が使用される。本発明の所定の具体例では、ALD(原子層堆積)の手段により、薄いセンシング膜が形成される。
【0042】
本発明の所定の具体例では、絶縁体センシング材料と半導体センシング材料の双方が、センシング膜を形成するために使用される。使用可能なセンシング材料は、SiO、Al、HfO、Ta、ZrO、酸化チタン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化イリジウム、ランタニド系酸化物、それらの酸化物の混合物、それらの酸化物と貴金属触媒粒子との混合物である。酸化物の他に、センシング材料は、窒化物(例えばSiN)、および/または炭化物(例えばSiC)を含んでも良い。絶縁性センシング材料は、キャパシタンス測定に基づくセンシングのために使用できる。半導体センシング材料は、コンダクタンス測定に基づくセンシングのために使用できる。GaNのような窒化物を含む、例えばII−VI化合物やIII−V化合物のような半導体は、コンダクタンス測定に基づくセンシングのために使用できる。
【0043】
1つの具体例にかかる、粒界の無い、連続した非常に薄いセンシング膜を用いる利点は、室温や環境温度で厳密に動作するセンシングデバイスを得ることであり、即ち、(センシングと再生の双方で)加熱が不要なセンシングデバイスを得ることである。センシング層のナノスケールの膜厚のために、電場は吸着と脱着を制御するために使用でき、これによりデバイスの加熱が不要となる。室温または環境温度での動作は、多くの利点を有する。第1に、センシング材料の加熱が不要であるため、電力消費が低減でき、これは携帯用で埋め込まれた応用のためにより魅力的になる。第2に、室温または環境温度(またはそれらより少しだけ高温)で動作する、センシングデバイスまたは低電力のCMOSベースの駆動回路を有するセンシング構造の集積を容易にする。これは、薄いセンシング膜のモフォロジが影響を受けないことを確実にし、安定で再現性のあるセンシングを可能にする。センシング材料の安定性は、再現性のあるセンシングのための必須条件であり、相変化のような不可逆的なモフォロジの変化を避けるために、室温または十分に低い温度でセンシング構造が動作することを暗示する。センシングデバイスは、約100℃より低い温度、好適には約−40℃と約50℃の間の温度、例えば約0℃と約50℃の間の温度、より好適には、デバイスの加熱が不要な室温または環境温度で動作しても良い。
【0044】
分子またはイオンの脱着は、室温または環境温度において制限されるようになり、結局は、更なる測定を不可能にする飽和したセンシング膜の表面に繋がる。しかしながら、(例えばフィールド電極の手段により)与えられた電場は、室温または環境温度において、イオン吸着(ionosorbed)した分子の脱着となる。それゆえに、1つの具体例の薄いセンシング膜は、電気吸着効果の手段により、即ちセンシング層の表面上の分子の吸着に影響する電場を与えることにより、再生(分子の吸着後の表面再生)することができる。再生は、例えばフィールド電極に、そのパルスパラメータがデバイス形状や材料の型に依存する電圧パルスを与えるような、電場を与えることにより得られる。電気吸着効果に基づく薄いセンシング膜の表面を再生できることの利点は、室温または環境温度で動作可能であることである。しかしながら、むしろ、分極によるヒステリシス効果は避けられる。
【0045】
所定の具体例は、センシングデバイス中の、例えばアモルファス膜のような連続した非常に薄いセンシング膜の使用に関し、センシングデバイスは、例えばフィールド電極により与えられる電場に露出させることにより、リセットおよび校正できる。電場は、センシング膜表面上の分子の吸着を高める。結果として、電場を用いて感度が増加する。更に、それぞれの分子検体に対して、吸着の始まりの電場が異なるため、電場は選択性を増加させる。電場は、例えばフィールで電極により与えることができる。電場は、(増加された感度のために)吸着を増加させ、与えられた電場の極性に依存して、室温または環境温度で、センシング層の表面上の分子を(再生のために)脱着させる。
【0046】
例えばアモルファスセンシング膜のような、薄いセンシング膜は、数ナノメータから数10ナノメータの範囲である。ナノスケールの膜厚を有する膜は、センシングのために多くの有利な性質を有する。そのような薄膜に対して得られた体積に対する表面の比は、ナノワイヤの体積に対する表面の比に匹敵するが、ナノワイヤとは対照的に、薄膜は標準的な半導体作製技術を用いて形成できる。ナノスケール膜厚を有する膜の応答は、より短い拡散長のために、より厚い膜の応答に比較して速くなる。従来技術の解決でしばしば使用される比較的厚い膜は、応答をかなり遅くする。理想的には、瞬時の応答は、様々な検体濃度に従って得られる。しかしながら、吸着動態と脱着動態は、応答に時間の尺度を与える。
【0047】
センシング膜として半導体薄膜を用いた場合、例えばセンシング膜がバックゲートの上のTFTデバイスのチャネルを形成する具体例では、センシング層表面の初期状態(即ち、吸着した分子の無い状態)が達成される前に、全体のセンシング膜で、電荷キャリアを涸渇させる(deplete)必要がある。図6に示された例の具体例では、半導体センシング膜40が使用され、検出される検体を含む局所環境30に第1側面が露出され、(第1側面に対向する)第2側面において、絶縁膜20により(例えば、センシングデバイスの再生に使用される)フィールド電極50から分離され、センシング膜40中の電荷キャリアは、フィールド電極50の側面において、即ちセンシング膜の第2側面で、最初に涸渇される。フィールド電極により与えられた電場が十分に大きい場合のみ、電荷キャリアはセンシング膜の第1側面から涸渇し、最終的に、局所環境30に露出したセンシング膜の表面(第1側面)から分子の脱着を行う。フィールド電極50と薄いセンシング膜40との間の誘電体媒体20は、破壊電界(breakdown field)により特徴づけられる。センシング膜中で涸渇させるのに必要な電荷キャリアの量が大きいほど、必要とされる電場はより高くなる。1つの具体例にかかるナノスケールの膜厚を有するセンシング膜は、涸渇させる必要がある電荷キャリアの量を制限し、電界を誘電体媒体の破壊電界より十分に低く保ことがで、動作電圧は低く保たれる。
【0048】
図6に示すように、フィールド電極と薄い半導体センシング膜は、誘電体媒体により分離できる。しかしながら、フィールド電極50と半導体センシング膜40は、ギャップにより分離することもできる。そのようなデバイスをセンシングに用いた場合、ギャップが局所環境に、即ち検出する検体を含む気体や液体に晒される。この場合、センシング膜40の露出した表面は、フィールド電極50に向かって配置され、フィールド電極により与えられる電場は、分子が吸着する表面に直接働きかけ、センシングデバイスをリセットするためにセンシング膜を完全に涸渇させる必要は無い。
【0049】
1つの具体例にかかるセンシングデバイスは、薄膜堆積技術やリソグラフィパターニング技術のような先端技術の半導体作製プロセスを用いて形成できる。最先端の半導体作製技術を用いた場合、バックエンドオブラインやウエハレベルパッケージの1つのウエハ上に、センシング構造とCMOSエレクトロニクスを集積することが可能である。もし、センシング材料がCMOSエレクトロニクスの汚染源である場合、センシング構造とCMOSエレクトロニクスは、別々のクリーンルーム内で作製できる。なぜならば、センサ作製は、一般的には、全ての作製プロセスの最終工程だからである。代わりに、別々のウエハ上にセンシング構造を作製し、チップ/ウエハボンディング技術や3D集積技術(システム・イン・パッケージ:SiP)を用いてそれをCMOSエレクトロニクスにボンディングすることが可能である。室温や環境温度で動作する、1つの具体例にかかるセンシング構造は、殆ど熱を発生しない低電力CMOS回路を用いた集積にために、特に適している。本発明の所定の具体例では、薄いセンシング膜が、現存する半導体作製プロセスで共通の低温堆積技術を用いて形成される。例えばアモルファスのような、薄いセンシング膜は、(例えばプラズマ誘起)化学気相堆積(CVD)、スパッタ堆積、および(例えばプラズマ強化)原子層堆積(ALD)のような低温堆積技術を用いて得ることができる。アモルファスの薄いセンシング膜を、フィールド電極から分離するために使用される誘電体膜も、CVDまたはALDを用いて堆積できる。更に、CVDやALDは、標準的な半導体作製技術である。前駆体の交互の、自己制御の表面反応の結果としての、非常に良好な膜厚制御のために、ALDは、特に、ナノスケールの膜厚を有する連続した均一な膜の堆積に適している。膜厚のナノスケール制御は、基板の表面上で自己制御の方法で反応する、2つの異なる前駆体ガスのパルスとパージにより、自然に得ることができる。ALDは、また、ナノメータの正確さで層のスタックを制御的に成長するために有益である。更に、プラズマ誘起プロセスとオゾンのような他のラジカル源を用いた場合、欠陥とおよび電荷キャリア密度を扱い、更に堆積温度を下げることが可能である。
【0050】
本発明の所定の具体例では、予めパターニングされた基板が、センシングデバイスの実効面積を増やし、センシングとリセットのプロセスを強化するために使用できる。ラインやドットのようなナノ/マイクロの構造を基板の上に形成することができ、次に、1つの具体例にかかる薄いセンシング層がその上に形成できる。そのような構造は、選択エッチングのよりシリコン中に形成できる。
【0051】
例えば、異なる形状や寸法のトレンチや孔をシリコン中に形成する。そのような構造のアスペクト比は、好適には検体にアクセスしやすいように選択される。シリコン上の単純な構造からより複雑な3D構造まで、形成することができる。そのような構造化された基板の例を図8に示す。基板中にエッチングされた3D構造の利点は、非常に大きい実効表面積を形成し、開放構造がそれを通って分子が容易に通過できるようにすることである。結果として、デバイスの感度は、所定の占有(footprint)面積に対して増加する。ALDは、それらの3D表面の上で、1つの具体例にかかるセンシング層を均一に覆うために使用できる。
【0052】
例えば、ピラミッドのような構造のアレイが、(111)平面上の(100)面の優先的エッチングにより、シリコン表面の上に化学的にエッチングされる。そのような構造の周期的なアレイは、センサの所定の占有面積に対して、実効面積を大きくする。大きくされた実効面積を有するセンサの例が、図9に模式的に示される。そのような予め構造化された基板を使用する利点は、表面に周期的に現れる鋭いエッジが強化された電場を形成し、これはデバイスのリセットに有益である。電流は、電極形状に依存して、構造化された基板のエッジに対して垂直または水平のいずれかに流れることができる。
【0053】
1つの具体例にかかるセンシング層を含むセンシングデバイスの模式的な図面を、図1に示す。図1は、一般的なセンシング構造を示し、この図からは、(例えば層、電極のような)要素を省略しても良く、または他の要素を特定の具体例に加えても良い。図1に示される一般的な構造では、センシングデバイスは、1つの具体例にかかる薄いセンシング膜40を含む。センシングデバイスは、更に、第1媒体により薄いセンシング層40から分離されたフィールド電極50を含み、第1媒体20は、例えば膜であり、または第1媒体20は、例えば検出される検体を含む気体または液体のような局所環境である。センシング層40が半導体層である本発明の所定の具体例では、第1媒体20は絶縁媒体である。センシング層40が絶縁層である本発明の所定の具体例では、第1媒体20は省略できる。図1に示される構造は、第1媒体20が存在する側面に対向する側面で、センシング層40に隣り合う半導体層60を含む。更に記載されるように、半導体層60は任意的であり、幾つかの特定の具体例では省略できる。
【0054】
センシング構造は、更に、フィールド電極50と隣り合った第2媒体10、および/または第2媒体10の側面に対向するデバイスの側面の第3媒体30を含む。第2媒体10と第3媒体30は、好適には誘電体媒体であり、例えば誘電体基板または誘電体サポートまたは検出する検体を含む気体又は液体のような局所環境であることが好ましい。本発明の所定の具体例では、第1媒体20、第2媒体10、および第3媒体30の少なくとも1つが検出される検体を含む局所環境である。センシング層40の表面は、局所環境に露出しても良い。センシングデバイスは、更に、少なくとも2つの測定電極80、90を含む。図1に示される一般的な構造では、測定電極80、90の双方が、半導体層60と接続される。しかしながら、例えば半導体層60が存在しない具体例では、測定電極は、例えば薄いセンシング膜40のように、他の層と接続されても良い。本発明にかかるセンシングデバイスの他の具体例では、測定電極の数は異なってもよく、および/または測定電極はまたフィールド電極として使用されても良い。
【0055】
局所環境に露出したセンシング層40の表面の、吸着の結果として変化する電気的特性(センシング層40のインピーダンス)は、インペディメトリック技術(impedimetric techniques)を用いて測定しても良い。センシング層40の露出した表面での吸着は、電場により影響され、これは感度および/または選択性に影響を及ぼし、薄膜を初期状態にリセットするために使用できる。この目的のために、薄いセンシング層40の近くに直接フィールド電極50を形成しても良い。特に、センシング層40が半導体層である具体例では、フィールド電極50は、第1誘電体媒体20によりセンシング層40から分離されても良い。センシング層40が電気的な絶縁層の具体例では、フィールド電極50は、センシング層40に直接接続しても良い。図1に示した例示の構造では、センシングデバイスは、1つのフィールド電極50を含む。しかしながら、1つの具体例にかかるセンシングデバイスは、1つより多くのフィールド電極を含んでも良い。
【0056】
測定電極とフィールド電極は、様々な物理的形状をとっても良く、センシング膜40を組み込む構造に依存して、キャパシタ電極、ソース/ドレイン電極、ゲート電極(金属トップゲート、多孔質トップゲート、バックゲート)のように、センシングデバイス中で異なる機能を有しても良い。測定電極は、センシング層40の電気的インピーダンス(コンダクタンス、キャパシタンス)中の変化を測定するために形成され、一方、フィールド電極は、センシング層中に電場を形成するために形成される。例えば、測定電極はトランジスタ構造を有するセンシングデバイスの、ソース電極およびドレイン電極でも良く、および/またはフィールド電極は、トランジスタ構造を有するセンシングデバイスの、ゲート電極でも良い。キャパシタンス測定の場合、例えばMIS(金属絶縁体半導体)構造(図2に示す)またはMIM(金属絶縁層金属)構造(図3に示す)を有するセンシングデバイスでは、測定電極とフィールド電極の機能が組み合わされ、即ち、測定電極の1つがフィールド電極として使用される。
【0057】
1つの具体例にかかる薄いセンシング膜40を含む他のセンシング構造は、例えばゲート誘電体センシング層を有するFET(電界効果トランジスタ)(図4)、フィールド電極とゲート誘電体センシング層との間にギャップを有するFET(図5)、センシングチャネルおよびバックゲートを有するTFT(薄膜トランジスタ)(図6)、ゲートとセンシングチャネルとの間にトップゲートとギャップとを有するTFT(図6)を含んでも良い。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。当業者に知られた他の適したセンシング構造またはセンシングデバイスは、1つの具体例にかかる、粒界の無い、連続した非常に薄いセンシング層を含んでも良い。
【0058】
薄いセンシング膜がTFT構造中の半導体チャネルを形成する場合、センシング材料は、センシング層とトランジスタチャネルの機能を組み合わせた活性材料であり、これは吸着から電流に、最も直接的な変換を与える。他のデバイス構造では、薄いセンシング膜は、検体に露出した後にインピーダンスを変える、受動材料を形成する。
【0059】
図2は、薄いセンシング膜40を含むセンシングデバイスであって、MIS構造を有するセンシングデバイスの具体例を示す。センシング膜40(絶縁体)は、第1側面で、局所環境にある第2媒体10に接触し、第2側面で、(例えば、n型またはp型ドープのシリコン、またはIII−V2元、3元、または4元合金のような)半導体層60と接触する。それは、測定電極80とフィールド電極50とを含み、フィールド電極50は、示された形状中で測定電極として使用される。センシング膜40の第1側面で分子を吸着した場合、吸着した分子は、センシング膜40の表面からバルクに拡散し、センシング膜40のバルクの物理的特性(例えば、仕事関数、誘電率、固定電荷密度、移動電荷密度)を変える。物理的特性の変化は、インペディメトリック技術を用いて測定できる。第3媒体30は、例えば誘電体基板や局所環境のような誘電体媒体である。デバイスの再生は、フィールド電極50に電圧パルスを与えることにより得られる。
【0060】
図7は、図2に示すようなMIS構造を用いて行われるガス測定の結果を示す。ALDで堆積された、アモルファスの薄いセンシング膜を有するMIS形状のデバイスのキャパシタンス−電圧(C−V)カーブが分析された。MIS(金属−絶縁層−半導体)デバイスは、ALDを用いて、p型シリコン(半導体層60)の上に堆積させた14nm膜厚La層(誘電体センシング膜40)を含む。Alが堆積されて、電極50、80が形成された。COに露出された場合、飽和キャパシタンス、フラットバンド電圧、およびCVカーブのヒステリシスのような、このデバイスの多くのパラメータが変化する。それらのパラメータは、誘電体センシング層中で形成された電荷量についての情報を与え、これはデバイスが露出したガスの量と比例する。このように、MIS構造を用いた場合、CO濃度を正確かつ可逆的に測定することが可能となる。
【0061】
図3は、薄いセンシング膜40を含むセンシングデバイスであって、MIMキャパシタ構造を有するセンシングデバイスの具体例を示す。センシング膜40(絶縁体)は、第1側面で、局所環境にある第3媒体30に接触する。第1インピーダンス測定電極80が、薄いセンシング膜40の第1側面に形成される。第1側面に対向するセンシング膜40の第2側面にフィールド電極50が形成され、フィールド電極は、また、インピーダンス測定電極の機能も有する。センシング膜40の第1側面で、分子が吸着した場合、吸着した分子は、センシング膜40の表面からバルクに拡散し、バルクの物理的特性(例えば、仕事関数、誘電率、固定電荷密度、移動電荷密度)を変える。物理的特性の変化は、例えば、キャパシタンス−電圧測定のようなインペディメトリック技術を用いて測定できる。第2媒体10は、例えば誘電体基板のような誘電体媒体である。デバイスの再生は、フィールド電極50に電圧パルスを与えることにより得られる。
【0062】
図4は、薄いセンシング膜40を含むセンシングデバイスを示し、このセンシングデバイスは、FET構造を有し、センシング膜40(絶縁体)はFETのゲート誘電体層を形成する。この具体例では、センシング膜40は、第1側面で、局所環境である第2媒体10と接触する。フィールド電極50は、FETのゲート電極であり、薄いセンシング膜40は、(例えばn型またはp型ドープシリコン、III−V2元系、3元系、及び4元系合金のような)半導体層60の上に形成されたゲート誘電体である。第3媒体30は、例えば、誘電体基板または局所環境のような誘電体媒体である。デバイスは、半導体層60に接触した第1測定電極80と第2測定電極90とを含み、これらの電極は、トランジスタ構造のソース電極およびドレイン電極の機能を有する。センシング膜40の第1側面で分子を吸着した場合、例えば仕事関数または固定電荷密度のようなゲート誘電体層(センシング膜40)の電気的特性が変化し、トランジスタチャネルの導電性の変化に繋がる。
【0063】
図5は、薄いセンシング膜40を含むセンシングデバイスの具体例を示し、センシングデバイスはFET構造を有し、センシング膜40(絶縁体)はFETのゲート誘電体を形成し、FETのセンシング膜40とフィールド電極50との間にギャップを有する。そのような形状では、第1媒体20は、検出される検体を含む局所環境である。第2媒体10は、例えば誘電体サポートである。デバイスは、半導体層60に接触した第1測定電極80と第2測定電極90とを含み、これらの電極は、トランジスタ構造のソース電極およびドレイン電極の機能を有する。第3媒体30は、例えば誘電体基板である。センシング膜40の表面に分子が吸着した場合、センシング膜40中の電荷キャリア密度が変化し、トランジスタチャネルの導電性の変化に繋がる。デバイスの再生は、フィールド電極50に電圧パルスを与えることにより得られる。
【0064】
図6は、薄いセンシング膜40を含むセンシングデバイスの具体例を示し、センシングデバイスはTFT構造を有し、センシング膜40はトランジスタのチャネルを形成する半導体膜を有する。薄いセンシング膜40は、第1側面で、局所環境にある第3媒体30に接触し、第1側面に対向する第2側面で、誘電体媒体20である第1媒体20に接触する。センシングデバイスは、フィールド電極50(TFTのゲート電極)と、2つの測定電極80、90(TFTのソース電極およびドレイン電極)とを含む。センシング膜40の第1表面に分子が吸着した場合、半導体の薄いセンシング膜40の特性が変化する。特に、仕事関数と電荷キャリア密度が、吸着の結果として変化する。仕事関数よりずっと高い電気ポテンシャルが、一般に、電荷キャリア密度を顕著に涸渇するために必要であるため、仕事関数の変化は、導電性を大きく変えることは気体されない。電荷キャリア密度は、分子の吸着に依存して変化する。メカニズムの例は、酸素原子と他の酸化力のある分子がイオン吸着され、(トランジスタのチャネルを形成する)センシング材料から自由電子を受け取る。結果として、酸化力のある分子は、センシング材料のバルク中のキャリア密度を減少させる。一方、還元性分子は、表面上に吸着した酸素や他の酸化性分子と反応し、センシング材料のバルクに束縛電子(bound electron)を与え、これにより導電性を増加させる。
【0065】
この場合、TFTチャネル(センシング膜40)中の電荷キャリア密度は、その膜厚に制限を加える。バックゲートが表面特性に影響するには、即ち、電気吸着効果が役割を果たすには、半導体の薄いセンシング膜の全体の涸渇が必要とされる。全体の涸渇が達成される電場は、面積電荷密度に比例する。固体デバイスでは、電場が半導体層から誘電体により分離される。与えられた電圧を用いたデバイスの安定した長期間の動作のためには、ゲート酸化物の信頼性は重要である。それゆえに、ゲート酸化物のトンネル効果と磁場誘起劣化(field-induced degradation)を避けるために、ゲート酸化物中の電場は、1〜3MV/cm−1の範囲を超えるべきでは無い。センシング材料中の電荷キャリア濃度は、10−20cm−3のオーダーでも良い。この場合、面積電荷密度と電場を所定の制限以下に保持するために、半導体の薄いセンシング膜は、10nmより小さい膜厚を有することが要求される。
【0066】
図6に示されるセンシング構造は、センシング膜40が第2側面で第2媒体20と接触し、第2媒体が局所環境であるTFT構造を表す。第2側面に対向する第1側面では、センシング膜40が第1測定電極80と第2測定電極90とに接触する。第3媒体30は、例えば誘電体基板や誘電体サポートのような誘電体媒体でも良い。誘電体サポート10(第2媒体)の上に、フィールド電極50が形成される。半導体センシング膜40の第2側面で、分子が吸着した場合、センシング膜の特性が変化し、例えば薄いセンシング膜40中の電荷キャリア密度が変化し、これによりその導電性が変化する。
【0067】
センシングデバイス中の1つの具体例にかかる、粒界の無い、連続した非常に薄いセンシング膜を用いた場合、電気吸着効果により可能になる室温または環境温度での動作の結果として、低電力消費が達成できる。例えば、ALDで形成されたナノスケール膜厚の誘電体センシング膜は、室温または環境温度で、電気吸着効果を用いた、分子表面反応を逆転させるのに必要な電圧を低減できる。薄いセンシング膜のナノスケールの膜厚による、高い表面の体積に対する比のために、高い感度および速い応答が得られる。平坦な膜堆積とリソグラフィ技術は、大量生産とともに、強力な小型化と臨界寸法制御を可能にする。CMOSとの集積化は、製造プロセスのバックエンドオブライン(BEOL)で可能である。なぜならば、400℃より低い温度での化学気相堆積(CVD)、原子層堆積(ALD)、および高速熱アニール(RTA)のような低温製造技術が、1つの具体例にかかる薄いセンシング膜を含むセンシングデバイスの製造に使用できるからである。最先端の半導体作製技術を用いたSoC/SiP解決は、無線、自律、変換器システム中で、それらの異種の機能を集積するための有利な方法である。
【0068】
図9は、結果として改良された実効センシング面積となる、構造化された基板を有するセンシングデバイスを模式的に示す。その中にトレンチを示す。同様の方法でピット(pit)を形成しても良い。トレンチは、第1媒体20とセンシング膜40により覆われる。また、電極80、90が示される。それらの電極の典型的な細部は上述の通りである。
【0069】
上述の説明は、本発明の所定の具体例を詳しく述べる。しかしながら、上述の記載がテキスト中でいかに詳しく示されても、本発明は多くの方法で実施できることが理解できるであろう。本発明の所定の特徴や形態を記載する際の、特定の専門用語の使用は、その専門用語が関連する発明の特徴や形態の特定の特徴を含むように、その専門用語をここで再定義することを暗示するものと取るべきではない。
【0070】
上記詳細な説明は、様々な具体例に適用された本発明の新規な特徴を示し、記載し、および指摘したが、記載されたデバイスまたはプロセスの形態および細部における様々な省略、代替え、および変化は、本発明の精神から離れること無く、この分野の当業者により行えることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の検体をセンシングするための低電力デバイスであって、このデバイスは、使用中に検体に露出する表面を有するセンシング層を含み、
センシング層の電気的インピーダンスは、センシング層の露出した表面上の、所定の検体の吸着により変化し、
センシング層は、粒界の無い薄い連続した膜であるデバイス。
【請求項2】
センシング層は、約1nmと約100nmの間の範囲、例えば約1nmと約30nmの間の膜厚を有する請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
センシング層は、アモルファス層である請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
センシング層は、1またはそれ以上のポリマー、無機材料、例えば酸化物、窒化物、及び半導体、例えばSiO、Al、HfO、Ta、ZrO、酸化チタン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化イリジウム、ランタニド系酸化物、貴金属触媒粒子、SiN、SiC、n型またはp型ドープシリコン、III−V2元系、3元系、及び4元系合金、例えばGaN、およびII−VI化合物から形成される請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
センシング層の電気インピーダンスを測定するために取り付けられた、第1測定電極と第2測定電極とを含み、これにより、電気インピーダンスの変化の検出に基づいて所定の検体をセンシングする請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
更に、センシング層の上に電場を与えるために取り付けられた、少なくとも1つのフィールド電極を含み、これによりセンシング層の露出表面において、所定の検体の吸着および脱着を電気的に制御する請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
第1測定電極と第2測定電極の一方が、センシング層の上に電場を与えるために取り付けられたフィールド電極として使用され、これによりセンシング層の露出表面において、所定の検体の吸着および脱着を電気的に制御する請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
デバイスはキャパシタであり、センシング層は、第1測定電極と第2測定電極の間に形成された電気的な絶縁層である請求項5にかかるデバイス。
【請求項9】
更に、第1測定電極とセンシング層との間に、半導体層を含む請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
デバイスはトランジスタであり、センシング層はゲート誘電体層である請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
デバイスはトランジスタであり、センシング層は半導体チャネル層である請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
センシング層は、好ましくは検体へのアクセスを容易にするのに適したアスペクト比を有する線、ドット、トレンチ、または孔のようなナノスケールおよび/またはマイクロスケールの構造、増加した実効表面積を有するような複雑な3D構造、ピラミッドまたはピラミッド状の構造のアレイのような分子が容易にそこを通過することができるオープン構造、周期的アレイ構造、および好適には周期的に現れる鋭いエッジ、を含む構造化された表面上に形成される請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
請求項1にかかるデバイスを含むCMOS装置のような半導体装置。
【請求項14】
所定の検体をセンシングするために、デバイス中での、約1nmと約100nmの間の範囲、例えば約1nmと約30nmの間の厚さを有するセンシング層としての、粒界の無い薄い連続した膜の使用。
【請求項15】
膜がアモルファス膜である、請求項14にかかる粒界の無い薄い連続した膜の使用。
【請求項16】
センシングが環境温度で行われる、請求項14にかかる粒界の無い薄い連続した膜の使用。
【請求項17】
センシング層は、1またはそれ以上のポリマー、無機材料、例えば酸化物、窒化物、及び半導体、例えばSiO、Al、HfO、Ta、ZrO、酸化チタン、酸化鉄、酸化マンガン、酸化クロム、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化錫、酸化モリブデン、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化イリジウム、ランタニド系酸化物、貴金属触媒粒子、SiN、SiC、n型またはp型ドープシリコン、III−V2元系、3元系、及び4元系合金、例えばGaN、およびII−VI化合物から形成される、請求項14にかかる粒界の無い薄い連続した膜の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−203256(P2011−203256A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−67179(P2011−67179)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(508223789)
【氏名又は名称原語表記】Stichting IMEC Nederland
【Fターム(参考)】