説明

ゼリー飲料及びその製造方法

【課題】高カロリーでも瑞々しい食感が楽しめるゼリー飲料であって、且つ適度なゲル性状と崩壊性を有し、例えば、容器を振って容器内のゼリー飲料のゲルを振り崩して容器から直接飲用する製品形態とすることにも適したゼリー飲料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を該澱粉糖の固形分換算にして10質量%以上含有するゼリー飲料のゲル化剤として脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムとの組合せを用いる。ゼリー飲料は、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ボトル缶容器、アルミニウム缶容器、及びスチール缶容器から選ばれた1種に充填され、これを振って該容器内のゼリー飲料のゲルを崩して飲むように調製されていることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高カロリーでも瑞々しい食感が楽しめるゼリー飲料であって、且つ適度なゲル性状と崩壊性を有し、例えば、容器を振って容器内のゼリー飲料のゲルを振り崩して容器から直接飲用する製品形態とすることにも適したゼリー飲料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運動後のエネルギー補給や、また、小腹がすいた時、あるいは、腹持ちを良くするために、手軽に喫食することができる高エネルギー補給用のゼリー飲料が知られている。このようなゼリー飲料はスマートな喫食形態を好む消費者の要請に合致し、市場で良好な支持を得ている。
【0003】
高エネルギー補給用のゼリー飲料には、糖質をカロリー源として使用するのが一般的であり、甘みを抑える為、デキストリン等の甘味度の低い澱粉糖等を使用する必要がある。しかしながら、デキストリン等の平均加重重合度の高い糖類と、ゲル化剤とを溶解させて得られるゲル状食品は、液の粘度が高くなる結果、口当りが厚く、ゼリーの瑞々しさが損なわれる傾向があり、良好な食感が得られにくかった。
【0004】
一方、近年、新規な形態の飲食物を求める傾向が広まっており、その例として、容器を開封する前に容器を振って容器内のゼリーを破砕した後、容器を開封してゼリーを飲用することができるゼリー飲料が知られている。
【0005】
このようなゼリー飲料に関して、例えば、下記特許文献1には、キサンタンガム、コンニャク芋抽出物及び/又はローカストビーンガム、紅藻類由来のガム質からなる3成分を含み、ゲル化点が25〜50℃となるように調整されたゲル化剤を含むことを特徴とするドリンクゼリーが開示されており、常温流通でもゲルの性状の保存安定性が高く、なおかつ弾力のある食感を有し、ゼリーの容器への付着が少ないドリンクゼリーであることが記載されている。
【0006】
また、下記特許文献2には、2価金属イオン反応性ゲル化剤と、2価金属イオン非反応性ゲル化剤とを含む系に、水溶性高分子結合型2価金属イオン組成物を反応させて得られるゼリー組成物が開示されており、粘弾性に富んだゼリーとゲル強度が弱いゼリーを混在させることにより、振動を加えることによりゲル強度が弱いゼリー組成物が崩壊状態となり、ゲル強度が強く弾力性に富んだゼリーが細かく切断された状態となることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−125715号公報
【特許文献2】特開2005−168459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、高エネルギー補給用のゼリー飲料は、一般に、デキストリン等の平均加重重合度の高い糖類と、ゲル化剤とを溶解させて得られるゲル状食品であるので、液の粘度が高くなる結果、口当りが厚く、ゼリーの瑞々しさが損なわれる傾向があった。
【0009】
この点、上記特許文献1に開示されているドリンクゼリーや上記特許文献2に開示されているゼリー組成物は、デキストリン等の平均加重重合度の高い糖類と、ゲル化剤とを溶解させて得られるゼリー飲料の食感の問題を解決するものではなかった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、高カロリーでも瑞々しい食感が楽しめるゼリー飲料であって、且つ適度なゲル性状と崩壊性を有し、例えば、容器を振って容器内のゼリー飲料のゲルを振り崩して容器から直接飲用する製品形態とすることにも適したゼリー飲料及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、種々の検討の結果、ゲル化剤として脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムとの組合せを用いることによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明のゼリー飲料は、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を該澱粉糖の固形分換算にして10質量%以上含有し、ゲル化剤として脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムを配合してなることを特徴とする。
【0013】
本発明のゼリー飲料によれば、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を該澱粉糖の固形分換算にして10質量%以上含有しているので、高エネルギー補給用として好適である。そして、ゲル化剤として脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムとの組合せを用いるので、高カロリーでも、口当りが厚くなることがなく、ゼリーの瑞々しい食感が得られる。また、適度なゲル性状と崩壊性を有するので、例えば、容器を振って容器内のゼリー飲料のゲルを振り崩して容器から直接飲用する製品形態とすることにも適している。
【0014】
本発明のゼリー飲料においては、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ボトル缶容器、アルミニウム缶容器、及びスチール缶容器から選ばれた1種に充填され、これを振って該容器内のゼリー飲料のゲルを崩して飲むように調製されていることが好ましい。
【0015】
また、前記脱アシルジェランガムと前記ネイティブジェランガムの合計の配合量が、0.06質量%以上0.2質量%以下であることが好ましい。
【0016】
また、前記脱アシルジェランガムと前記ネイティブジェランガムの配合量の比が、3:7〜7:3であることが好ましい。
【0017】
一方、本発明のゼリー飲料の製造方法は、上記ゼリー飲料の製造方法であって、得られるゼリー飲料中に、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を該澱粉糖の固形分換算にして10質量%以上含有するように、該澱粉糖を含むベース原料を調製し、これに、脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムを含むゲル化剤原料を加熱溶解したものを添加し、加熱下に混合溶解して、これを容器に充填し、冷却固化することを特徴とする。
【0018】
本発明のゼリー飲料の製造方法によって得られるゼリー飲料は、高カロリーでも瑞々しい食感が楽しめるゼリー飲料であって、且つ適度なゲル性状と崩壊性を有し、容器を振って容器内のゼリー飲料のゲルを振り崩して容器から直接飲用する製品形態とすることに適している。
【0019】
本発明のゼリー飲料の製造方法においては、前記冷却固化する工程において、40℃以下の水温にて水冷処理することが好ましい。これによれば、ゼリー飲料の容器内壁からの剥離性が良好となり、ゼリー飲料のゲルを崩したときに容器内壁に付着したまま残渣となってしまう量を軽減することができる。
【0020】
本発明のゼリー飲料の製造方法においては、前記容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ボトル缶容器、アルミニウム缶容器、及びスチール缶容器から選ばれた1種であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高カロリーでも瑞々しい食感が楽しめるゼリー飲料であって、且つ適度なゲル性状と崩壊性を有し、例えば、容器を振って容器内のゼリー飲料のゲルを振り崩して容器から直接飲用する製品形態とすることにも適したゼリー飲料及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】処方1〜処方14のゼリー組成物の各評価点数を棒グラフに表しその合格ラインとともに図示した図表である。
【図2】処方2と処方13のゼリー組成物の離水を比較した図表である。
【図3】処方2と処方13のゼリー組成物のゲル強度(破断強度)及び破断距離を比較した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明のゼリー飲料は、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を、その澱粉糖の固形分に換算にして、ゼリー飲料中に10質量%以上含有する。澱粉糖は、その澱粉糖の固形分に換算にして、ゼリー飲料中に10〜30質量%含有することが好ましく、10〜20質量%含有することがより好ましい。澱粉糖の含有量が、その澱粉糖の固形分に換算にして、ゼリー飲料中に10質量%未満であると、高カロリーのものとすることができないので好ましくない。
【0024】
澱粉糖は、澱粉に酸や酵素を作用させて製造される糖であり、水飴、ブドウ糖、異性化液糖、果糖、オリゴ糖、糖アルコールなどに分類されるが、本発明においては、デキストロース当量(DE)が35以下、好ましくは20以下のものを用いる。澱粉糖のデキストロース当量(DE)が35を超えると、高エネルギー補給用のカロリー源としたとき、甘味が強くなりすぎるので、好ましくない。
【0025】
デキストロース当量(DE)とは、澱粉糖類の加水分解度(糖化度)の指標となる単位であり、下式(1)によって求められる。
【0026】
【数1】

【0027】
直接還元糖のグルコース換算質量(還元糖量)を定量する方法としては、レインエイノン法、ベルトラン法、ウイルシュテッターシューデル法などが知られている。レインエイノン法は、硫酸銅溶液に加熱状態で糖液を加え、亜酸化銅を生じさせる反応に基づく方法であり、正確にCu2+量のわかった硫酸銅溶液にCu2+が完全に還元されるまで糖液を加えて、その糖液量から還元糖量を求める方法である。ベルトラン法も、レインエイノン法と同様に、硫酸銅溶液に加熱状態で糖液を加え、亜酸化銅を生じさせる反応に基づく方法であり、生じた亜酸化銅の定量に、モール法を利用する方法である。また、ウイルシュテッターシューデル法は、アルドースがアルカリ性ヨード溶液(NaIO)によって定量的に酸化されてアルドン酸となる反応を利用する方法であり、還元糖の酸化に消費されたI量から還元糖量を求める方法である。なお、本発明では、上記のようにDEの測定方法には種々の定量原理があることにかんがみ、ウイルシュテッターシューデル法で測定したDEを基準にするものとする。
【0028】
澱粉糖としては、高エネルギー補給用のカロリー源となるものであれば特に制限はないが、糖シラップのように単糖や二糖が比較的含有量高く含まれている複合的多糖組成物であると、甘みを抑えることができないので好ましくない。よって、好ましくは、そのDEが所定値に調製された澱粉糖を用いる。これにより、澱粉糖自体の甘味を抑えることができ、他の甘味料を配合する余地が広がり、ゼリー飲料の全体の甘味を調節しやすくなる。例えばマルトデキストリン、デキストリン、粉飴などが市販されているので、これらを用いることができる。
【0029】
本発明のゼリー飲料は、ゲル化剤として脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムを配合してなる。
【0030】
ジェランガムは、その産生微生物であるSphingomonas.elodea S60 株に由来する多糖であり、グルコース、グルクロン酸、グルコース、L−ラムノースの4糖が反復して直鎖状に結合して構成される多糖である。一般にゲル化剤として用いられるジェランガムとは、産生微生物に由来する多糖を脱アシル化して得られる脱アシルジェランガムのことを意味し、脱アシル化されていないネイティブジェランガムと区別される。本発明においては、ゲル化剤として脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムとを併用して用いる。
【0031】
下記化学式(1)には、脱アシルジェランガムの有する構造を示す。
【0032】
【化1】

【0033】
また、下記化学式(2)には、ネイティブジェランガムの有する構造を示す。
【0034】
【化2】

【0035】
上記ジェランガムは、種々のカチオンの存在下でゲル形成能を示すが、特に二価カチオンの存在下でゲル化が促進される。したがって、本発明のゼリー飲料においては、二価カチオンを含有せしめることが好ましい。二価カチオンの原料としては、例えば乳酸カルシウムを挙げることができる。
【0036】
本発明のゼリー飲料は、例えば、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を含むベース原料に、脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムを含むゲル化剤原料を加熱溶解したものを添加し、加熱下に混合溶解して、これを容器に充填し、冷却固化することにより得ることができる。すなわち、得られるゼリー飲料中に、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を、その澱粉糖の固形分に換算にして、10質量%以上含有するように、上記ベース原料を調製し、これに、上記ゲル化剤原料を加熱溶解したものを添加するようにして得ることができる。上記ベース原料は、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を、その澱粉糖の固形分に換算にして、得られるゼリー飲料中に10〜30質量%含有するように調製することが好ましく、10〜20質量%含有するように調製することがより好ましい。
【0037】
ゼリー飲料を充填する容器の材質に、特に制限はないが、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ボトル缶容器、アルミニウム缶容器、スチール缶容器などを好ましく例示できる。本発明のゼリー飲料は、これらの容器に充填され、これを振って容器内のゼリー飲料のゲルを崩して飲むように調製されていることが好ましい。これによれば、喫食形態をより楽しむことができるゼリー飲料を提供できる。
【0038】
また、本発明のゼリー飲料は、その製造の際、ゲルを冷却固化する工程において、40℃以下の水温にて水冷処理することが好ましい。これによれば、後述の実施例で示されるように、ゼリー飲料の容器内壁からの剥離性が良好となり、ゼリー飲料のゲルを崩したときに容器内壁に付着したまま残渣となってしまう量を軽減することができる。
【0039】
本発明のゼリー飲料は、その製造の際、ゼリー飲料に必要な他の原料を、上記ベース原料及び/又はゲル化剤原料に混合溶解させることができる。
【0040】
他の原料としては、例えば、糖類、酸味料、ビタミン類、アミノ酸、ミネラル、タンパク質、コラーゲン、コラーゲンペプチド、果汁、香料、色素等が挙げられる。これらの他の原料は、予め、水等の溶媒に溶解させて用いることが好ましい。これら他の原料を、溶液に調製して用いることで、速やかに混合させることができる。
【0041】
上記糖類としては、単糖、二糖、オリゴ糖、糖アルコール等いずれの糖類も使用できる。これらの糖類は単独又は2種類以上を使用できる。
【0042】
上記酸味料としては、特に限定はなく、種々のものを用いることができ、例えば、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、酒石酸、アスコルビン酸、グルコン酸、リン酸及びそれらの塩等が挙げられる。これらの酸味料は単独又は2種類以上を使用できる。
【0043】
上記ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンF、ビタミンH、ビタミンK、ビタミンP、パントテン酸、コリン、葉酸、イノシトール、ナイアシン、パラアミノ安息香酸(PABA)等が挙げられる。これらのビタミン類は単独又は2種類以上を使用できる。
【0044】
上記アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン等が挙げられる。これらのアミノ酸は単独又は2種類以上を使用できる。
【0045】
上記ミネラルとしては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム等が挙げられる。これらのミネラルは単独又は2種類以上を使用できる。
【0046】
上記タンパク質としては、乳由来のたんぱく質であるホエイたんぱく質分離物(WPI)、ホエイたんぱく質濃縮物(WPC)、大豆由来のたんぱく質である、分離大豆たんぱく質(SPI)、あるいはそれらの加水分解物等が挙げられる。これらを単独又は2種類以上を使用できる。
【0047】
本発明においては、ゼリー飲料中の脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムの合計の配合量が、0.06質量%以上0.2質量%以下であることが好ましい。また、脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムの配合量の比が、3:7〜7:3であることが好ましい。ゲル化剤の含有量が上記範囲内であれば、後述の実施例で示されるように、高カロリーでも瑞々しい食感が楽しめるゼリー飲料であって、且つ適度なゲル性状と崩壊性を有するものを、容易に得ることができる。
【0048】
以上のようにして得られる、本発明の酸性ゲル状食品は、必要に応じて殺菌処理等が行なわれ、流通、販売される。
【0049】
殺菌方法としては、加熱殺菌しながら容器に充填する方法、容器に充填密封後、加熱殺菌する方法、容器に充填する前に加熱殺菌し、その後無菌条件下で充填する無菌充填等いずれの方法も可能である。
【実施例】
【0050】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(試験例1)
下記表1に示す処方のゼリー組成物を金属製ボトル缶に充填したものを調製した。なお、マルトデキストリンは松谷化学工業株式会社製の「TK−16」(デキストロース当量(DE):18)を用いた。
【0052】
【表1】

【0053】
すなわち、以下のようにしてボトル缶入りゼリー組成物を調製した。
【0054】
上記表1に示す配合のゲル化剤原料を約30質量部の水に分散させ、90℃で10分攪拌溶解した。また、上記表1に示す配合のベース原料を約60質量部の水に溶解させたものを別途調製した。これらを混合しながら95℃に昇温させ溶解し、100質量部に全量補正してゼリー組成物を得た。95℃に昇温させた状態で、このゼリー組成物の180gを200ml容量の金属製ボトル缶(商品名「TEC200」、東洋製罐株式会社製)に充填し、30秒の転倒殺菌の後、各処方の冷却方法に従って、缶口を上方に向けた状態で冷却した。冷却処理後は、20℃の恒温室にて一晩静置した。
【0055】
上記のように調製した処方1〜処方14のボトル缶入りゼリー組成物について、(1)缶を振って崩す際の崩壊性、(2)振り崩して飲んだ後の缶内面への付着性、(3)ゼリー食感、を下記表2の評価基準に従い点数化した。
【0056】
【表2】

【0057】
なお、崩壊性の評価は、同一人によって、缶を振って崩す際の振り方が各処方間で同じになるように心がけてもらい、振幅が缶の縦方向に10〜15cm、速度が毎秒2〜3往復になるようにして、実施した。そして、5回、10回、15回、20回のうち何回振ればボトル缶口(内径約30mm)よりゼリー組成物が崩れ出るかを評価した。また、付着性とゼリー食感についての評価は、崩壊性の評価を行ったもので実施した。すなわち、ボトル缶内のゼリー組成物が崩れるのに必要な回数だけ振って崩した後に蓋を開けて、ボトル缶口を斜め下方向45度に5秒間傾けてゼリー組成物を缶から出した後の残渣量を測定して、付着性を評価した。また、ゼリー食感についての官能評価は5名のパネラーにより実施し、その平均点を求めた。
【0058】
その結果を下記表3に示す。また、図1には、各処方1〜処方14の点数を棒グラフに表し、崩壊性、付着性、ゼリー食感について、それぞれの合格点をいずれも2.5点と設定したときの、その合格ラインとともに図示した。
【0059】
【表3】

【0060】
その結果、処方1〜7、9、10の結果にみられるように、ゲル化剤として脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムとを併用することで、DE値18のマルトデキストリンが10質量%以上配合されていても、瑞々しいゼリー感があり、振って飲むドリンク形態としてふさわしい崩壊性を有するものが得られた。
【0061】
また、処方2、4、5の結果にみられるように、ゲルの冷却固化を20℃10分の水冷処理で行った処方2や40℃10分の水冷処理で行った処方4では、ゼリー組成物を缶から出した後の残渣量はそれぞれ5.6g、4.52gであったのに対して、20℃の空気で空冷した処方5では、残渣量が16gであった。したがって、ゼリー飲料が容器内壁に付着したまま残渣となってしまう量を軽減することができる点で、ゲルの冷却固化は40℃以下の水温にて水冷処理することが好ましいと考えられた。
【0062】
また、処方6、7の結果にみられるように、脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムの配合量の比が3:7又は7:3の場合にも、結果は良好であった。
【0063】
なお、脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムの合計の配合量が0.04質量%と少ない処方8では、わずかにゲル化している程度で、振ると液状になってしまった。また、脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムの合計の配合量が0.3質量%と多い処方11では、振っても崩れないほど硬くゲル化してしまった。
【0064】
これに対して、処方12〜14の結果にみられるように、脱アシルジェランガムに組み合わせるゲル化剤として、ネイティブジェランガムのかわりにκ‐カラギナン及びローカストビーンガムを用いた場合、それらゲル化剤の合計の配合量が0.15質量%である処方12では、わずかにゲル化している程度で、振ると液状になってしまった。また、それらゲル化剤の合計の配合量が0.3質量%である処方13では、カドのある硬く脆いゲルとなった。食感としても粘性が強く感じられるものであった。また、それらゲル化剤の合計の配合量が0.45質量%である処方14では、振っても崩れないほど硬くゲル化してしまった。したがって、DE値18のマルトデキストリンを配合する場合、脱アシルジェランガムに組み合わせるゲル化剤として、ネイティブジェランガム以外のゲル化剤を用いると、ゼリー感が良好であり、振って飲むドリンク形態としてふさわしい崩壊性を有するゼリー飲料を得るのが、きわめて難しかった。
【0065】
(試験例2)
ゲル化剤の組合せとして、脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムの併用が最適である理由を、離水及びゲル強度の観点から検討した。具体的には、試験例1の各処方のうち、同程度のゲル強度を有する処方2と処方13を選び、それぞれ調製したゼリー原液の80gを、100mL容量のプラスチック製円筒容器(直径約40mm)に充填し、蓋をして密閉した後に20℃10分の水冷処理で冷却した。このプラスチック容器入りゼリー組成物を20℃にて1週間保管し、離水、ゲル強度についての評価を行った。
【0066】
[離水測定]
サンプルの入った容器の蓋を開けボウル上で倒置させ、1分間保持し、ボウルに落ちた水分を測ることで、ゲル表面に生じた離水を測定した。その結果を図2に示す。
【0067】
[ゲル強度測定]
ゲル強度の測定は、レオメーター(サン科学製:CR−500DX)を用いて圧縮試験を行い、ゲルが破断したときの破断強度(N)をゲル強度とし、ゲルが破断するまでに要した距離を破断距離(mm)とした。なお、圧縮試験は、プランジャー直径10mmを用い、移動速度60mm/分、進入距離10mm、測定品温20℃の測定条件で行った。また、測定は同一サンプルにつき3回行い、その測定値を平均化した。その結果を図3に示す。
【0068】
その結果、処方2と処方13を比較すると、ゲル強度の値は近い値を示していたが、処方2のほうが、離水が多く、また、破断距離も長くなる傾向がみられた。したがって、脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムを併用することで、離水が多くなりゼリーの収縮が生じて、ゼリーと容器の間に水が入るため、振って崩す際、ゼリーが動きやすく、崩壊性の向上に繋がり、同時に、瑞々しい食感が得られると考えられた。また、破断距離が長くなり、振って崩す際のゼリーの過剰な崩れを防ぎ、よりゼリー感を感じられると考えられた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を該澱粉糖の固形分換算にして10質量%以上含有し、ゲル化剤として脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムを配合してなることを特徴とするゼリー飲料。
【請求項2】
ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ボトル缶容器、アルミニウム缶容器、及びスチール缶容器から選ばれた1種に充填され、これを振って該容器内のゼリー飲料のゲルを崩して飲むように調製されている、請求項1記載のゼリー飲料。
【請求項3】
前記脱アシルジェランガムと前記ネイティブジェランガムの合計の配合量が、0.06質量%以上0.2質量%以下である請求項1又は2記載のゼリー飲料。
【請求項4】
前記脱アシルジェランガムと前記ネイティブジェランガムの配合量の比が、3:7〜7:3である請求項1〜3のいずれか1つに記載のゼリー飲料。
【請求項5】
請求項1〜4に記載のゼリー飲料の製造方法であって、得られるゼリー飲料中に、デキストロース当量(DE)が35以下の澱粉糖を該澱粉糖の固形分換算にして10質量%以上含有するように、該澱粉糖を含むベース原料を調製し、これに、脱アシルジェランガムとネイティブジェランガムを含むゲル化剤原料を加熱溶解したものを添加し、加熱下に混合溶解して、これを容器に充填し、冷却固化することを特徴とするゼリー飲料の製造方法。
【請求項6】
前記冷却固化する工程において、40℃以下の水温にて水冷処理する請求項5記載のゼリー飲料の製造方法。
【請求項7】
前記容器は、ポリエチレンテレフタレート(PET)容器、ボトル缶容器、アルミニウム缶容器、及びスチール缶容器から選ばれた1種である請求項5又は6記載のゼリー飲料の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−24055(P2012−24055A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168388(P2010−168388)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000006116)森永製菓株式会社 (130)
【Fターム(参考)】