説明

ソケットレンチ

【課題】磁力を使用せずソケット先端に設けた開閉自在のアームによってボルトやナットなどの締具の脱落を防止した上で、ボルトやナットなどの締具の保持が確実になされたかの確認が可能で、且つボルトやナットなどの締具及びソケットレンチ本体の自重によって前記アームが開口しないためのストッパーを有するソケットレンチの提供
【解決の手段】ソケット先端にバネ力によって開口するアームを取り付け、軸方向へのスライドにより筒状本体にソケットを収容し筒状本体口元でアームを筒状本体内側に押し込み閉口させる機構と、ノッチによりアームの閉口確認とスライド位置の固定ができる機構を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締具の着脱時において締具の脱落を防止するソケットレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のソケットレンチは、一つのハンドルに締具のサイズや形状に応じたソケットを組み合わせる事ができる、利便性の高い工具であり。ハンドル側に設けられた凸型軸とソケット側に設けた凹型受口孔とを嵌合することで連結され、受口孔の反対側に設けた収容孔にボルトやナットなどの締具を収容しハンドルを回転させることにより、ボルトやナットを締め付けたり、緩めたりできる。
【0003】
上記のソケットレンチを用いボルトやナットなどの締具を着脱する際、これらの締具が脱落することがあり特に狭く離れた箇所の作業において脱落した締具の回収は困難であるため、ソケット内にボルトやナットなどの締具を保持できるソケットレンチが考えられている。
【0004】
特開平9−109045号公報では、「ソケットレンチ」とし「ソケットレンチの先端に設けられた頭付ボルトのボルト穴収容部に、外方から肉厚部を貫通してこのボルト頭収容部の内側に連通する1以上の第1磁石嵌着孔を設け、この第1磁石嵌着孔に第1永久磁石を嵌着したことを特徴とする」発明を開示している。この109045号公報で開示された発明では、磁力によってソケット内にボルトやナットなどの締具を保持することができる。
【0005】
そして、特願平11−195493号公報では、「ソケットレンチ」とし「操作ハンドルの先端固定子が入る取付穴を備えたレンチ本体に固定用ボルトの多角形頭部またはボルトに螺合したナットが挿入する接続角穴を設け、接続角穴の周面に形成した円周溝に係離して前記多角形頭部またはナットの脱落を防ぐ欠円ばね線を添設したソケットレンチ」発明を開示している。この195493号公報で開示された発明では、欠円ばね線を設けるという単純な方法でボルトなどの締具の脱落を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−109045号 公報
【特許文献2】特願平11−195493号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に述べた従来のソケットレンチにおいて、マグネットを使用したものについてはステンレスやアルミニウムなど磁力によって吸着しない素材の締具に対しては効果が無く、また、磁力を嫌う使用環境、例えば精密電子部品付近などでは使用自体が不可能となる。他にバネにより締具を保持するソケットレンチも存在するが確実に保持しているか不明瞭であり、保持する力もバネ力次第であるため他物との接触など外力で脱落しやすい。
【0008】
前記問題に対処し、ソケット先端に作業手元で開閉を自在に操れて閉口が確認可能なアームを備え、且つ既存のソケットレンチハンドルが嵌合可能なソケットレンチの提供。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第一の解決の手段として、頭部キャップ4の端面部に軸方向と垂直に設けた止まり孔13を設けることで既存のソケットレンチハンドルとの嵌め合を可能とし、ボルトやナットなどの締具の形状や寸法によって取替え可能なソケット5の外径面先端側溝にバネ力によって開口するアーム6を取り付け、軸2に軸方向と直角に設けたハンドル用貫通孔8に軸方向と直角方向に抜き差し及び固定が可能なハンドル3をソケット5と反対の軸方向へスライドさせることにより筒状本体1内側に軸2に取り付けたソケット5を収容し筒状本体1口元でアーム6を筒状本体1内側に押し込み閉口させる機構と共に、締込み作業においてボルトやナットなどの締具がねじ込まれアーム6及びソケット5をボルトやナットなどの締具を取り付ける相手物方向に引き込む力が働いた際に筒状本体1の突出部16と前記相手物とが接触し締具がアーム6及びソケット5を引き込む際の反力によって筒状本体1を軸方向に押し上げ、ストッパーを外してアーム6が開口する機構を備え、且つハンドル3を軸方向ソケット5側へスライドさせることで任意の位置での開口が可能な機構を備えたものである。
【0010】
第二の解決手段として、ボルトやナットなどの締具の保持が確実になされたかを確認し、且つボルトやナットなどの締具の自重や軸2及びソケット5の自重によりスライドしアーム6が開口しないために、筒状本体1にボール9の外径及びスプリング10の外径より小さい貫通孔11、軸2にボール9の外径及びスプリング10の外径より大きい孔12を筒状本体1に開けたハンドル3のスライドをガイドする長孔7の両端に対し距離や位相を合わせた位置に長手方向と直角にそれぞれ設け、この軸孔12にスプリング10とボール9を嵌め込んだ後に筒状本体1に差込み、軸孔12と筒状本体孔11の位置を合わせ軸孔12のボール9と反対側の軸2外径側よりボール9へ向け前後に可動可能な固定具を取り付けることで圧力調整が可能で、且つ容易に解除のできるノッチ式のストッパー機能も備える。
【0011】
上記第一の解決手段による作用は次の通りである。アームの開閉によりボルトやナットなどの締具を保持する為、手の届かない箇所の作業において確実に締具の脱落を防ぐと共に多少の外力では脱落しない。また、通常の鉄材の締具の他に磁力に吸着されない素材の締具でも保持でき、磁力を嫌う作業環境においても使用することができる。
【0012】
また、上記第二の解決手段による作用としては、ボールが孔に嵌ることによりアームの開閉が音や振動又は目視で確認できると共に、手の届かない作業箇所へボルトやナットなどの締具を移動する時アームの緩みによる脱落を防ぐことが出来る。
【発明の効果】
【0013】
上述したように本発明のソケットレンチは、手の入らない箇所で磁力での吸着が不可能な素材の締具や磁力の使えない環境においても着実に締具の保持が可能であり、外力による脱落の恐れが極端に少ない為に多様な使用環境で活用でき、且つ作業効率を上げるソケットレンチの提供が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のソケットレンチの断面図
【図2】筒状本体の正面図
【図3】軸にソケットを組み付けた状態の正面図
【図4】ソケット部拡大図
【図5】ハンドル断面図
【図6】キャップ正面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1〜5に基づいて説明する。
【0016】
図においては、1は筒状本体で、ハンドルのスライドをガイドする孔7、ボール9を嵌め合せてノッチ式ストッパーとする孔11、ソケットの簡易取り外し用孔15を有する。2は軸で軸方向と直角方向のハンドル差込孔8、筒状本体1の孔7と位相や距離を合わせたストッパー用孔12、軸方向垂直にハンドル固定用孔13を有する。14はキャップで、既存のソケットレンチハンドルが使用可能な軸方向に垂直な孔13、筒状本体1との固定用孔18を有する。
【0017】
図3のように、ボルトやナットを収容するソケット5は、軸2の先端をソケット5側に設けた受口孔に差込んだ後に固定具で固定されており、バネ力によって外側へ開くアーム6がソケット5のボルトなど締具の収容口の先端外径にある溝に固定されている。前記のソケット5やアーム6は付け替え可能でボルトやナットなどの締具の形状や作業環境の特性によって交換することができる。
【0018】
図1のようにソケット5を取り付けた軸2は筒状本体1内部に収容し、キャップ4を筒状本体1のソケット5と反対側の内径と嵌め合わせて蓋をし、筒状本体1とキャップ4を固定することでキャップ4の回転を固定している。また、軸2を筒状本体1に収容する前に、軸2の12孔2箇所にボール9及びスプリング10をそれぞれ嵌め入れ、筒状本体1及び軸2の内部に納め、ボール9位置と筒状本体1の孔11の位置を合わせ、孔12のボール9と反対側より固定具で固定することでノッチ式のストッパーとなる。この孔12は孔途中より螺子孔にすることで、螺子による固定が可能であり、螺子による固定の場合は締め込みの度合いによりストッパーの固定力を調節することが出来る。
【0019】
図1のように軸2の孔8と筒状本体1の孔7の位相を合わせ、孔8及び孔7にハンドル3を筒状本体1外側より貫通させ軸2の孔13より固定具でハンドル3を固定する。図1中でハンドル3は軸方向からの図となり孔8と区別がつかないため、反転させた仮想図として記載している。ハンドル3には孔13より固定する際の固定具をガイドする溝や穴などを設けることで任意の位置での固定が可能となり、ハンドルの固定位置によって、てこの原理により締付けトルクを変えることが出来る。
【0020】
以下、上記機構の動作を説明する。ハンドル3を筒状本体1のガイド孔7に沿って軸方向キャップ側(以下上側とする)へスライドさせることで、筒状本体1内部に収容された軸2が上側へスライドし、軸2に取り付けられたソケット5を筒状本体1内部へ収容する。この際、筒状本体1口元がソケット5に取り付けられたアーム6を筒状本体内側へ押さえ込むことで閉口し、ボルトやナットなどの締具をソケット5の締具収容部内で保持する。また、反対にハンドル3を筒状本体1のガイド孔に沿って軸方向ソケット側(以下下側とする)へスライドさせることで、筒状本体1内部の軸2が下側へスライドし、軸2に取り付けられたソケット5が筒状本体1から突き出て筒状本体1に押し込まれていたアーム6のバネ力により開口し、ボルトやナットなどの締具を開放する。
【0021】
また、締め付け作業の際、ボルトやナットなどの締具(以下締具とする)を保持した状態で締め込みを行ったとしても、締め付けにより締具がアーム6及びソケット5を締具を取り付ける相手物方向に引き込む力が働くことで筒状本体1の突出部16と前記相手物とが接触し締具がアーム6及びソケット5を引き込む力の反力によって筒状本体1を軸方向上側に押し上げストッパーを外してハンドル3がスライドしアーム6が開口する。その為、アーム6が保持したまま作業してしまい完全に締め付けがなされないというような誤作業は防止されており、アーム6が締具と相手物に挟まれて損壊する恐れも無い。
【0022】
ストッパーは、スプリング10のバネ力によるノッチ式になっており孔11にボール9が嵌る際の音や振動、又は目視によってアーム6の開閉が確認できるようになっている。これにより軸2やソケット5の自重による誤動作は防止されており、また、このストッパーはバネ力によって固定されている為ハンドル3をスライドさせることで容易に解除でき、且つ強さ調整が可能である。
【0023】
また、筒状本体1にあるソケット簡易取り外し用孔15があることによって、ハンドル3を抜き取り、15孔の位置に軸2を回転させてソケットを固定している固定具と位置を合わせることで固定具を筒状本体1の外側から取り外しすることができるようになり、軸2及びストッパーを筒状本体内部に収容したままでのソケット5の交換を可能にしている。
【符号の説明】
【0024】
1 筒状本体
2 軸
3 ハンドル
4 キャップ
5 ソケット
6 アーム
7 ハンドルスライドガイド孔
8 ハンドル差込孔
9 ストッパー用ボール
10 ストッパー用スプリング
11 ストッパー用ボール受孔
12 ストッパー用孔
13 既存のソケットレンチハンドル連結用孔
14 スライドガイド
15 ソケット固定具の簡易取り外し用孔
16 筒状本体突出部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部キャップ4の端面部に軸方向と垂直に設けた止まり孔13に既存のソケットレンチハンドルが嵌め合い可能であり、ボルトやナットなどの締具の形状や寸法によって取替え可能なソケット5の側面先端側溝にバネ力によって開口する取替え可能なアーム6を取り付け、軸2に軸方向と直角に設けたハンドル用貫通孔8に軸方向と直角方向に抜き差し及び固定が可能なハンドル3をソケット5と反対の軸方向へスライドさせることにより筒状本体1内側に軸2に取り付けたソケット5を収容し筒状本体1口元でアーム6を筒状本体1内側に押し込み閉口させる機構と共に、締込み作業においてボルトやナットなどの締具がねじ込まれアーム6及びソケット5をボルトやナットなどの締具を取り付ける相手物方向に引き込む力が働いた際に筒状本体1の突出部16と前記相手物とが接触し締具がアーム6及びソケット5を引き込む際の反力によって筒状本体1を軸方向に押し上げ、アーム6が開口する機構を備え、且つハンドル3を軸方向ソケット5側へスライドさせることで任意の位置での開口が可能な機構を備えることを特徴とするソケットレンチ。
【請求項2】
前記ソケットレンチにおいて、ボルトやナットなどの締具の保持が確実になされたかを確認し、且つボルトやナットなどの締具の自重や前記ソケットレンチの軸2やソケット5の自重によりスライド動作しアーム6が開口しないために、筒状本体1にボール9の外径及びスプリング10の外径より小さい貫通孔11、軸2にボール9の外径及びスプリング10の外径より大きい貫通孔12を筒状本体1に開けたハンドル3のスライドをガイドする長孔7の両端に対し距離や位相を合わせた位置に長手方向と直角にそれぞれ設け、この軸孔12にスプリング10とボール9を嵌め込んだ後に筒状本体1に差込み、軸孔12と筒状本体孔11の位置を合わせ軸孔12のボール9と反対側の軸2外径側よりボール9へ向け前後に可動可能な固定具を取り付けることで圧力調整が可能で、アーム6の閉口が確認でき、且つ容易に解除が可能なノッチ式のストッパー機構を備えたことを特徴とする請求項1記載のソケットレンチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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