説明

ソフトセグメントと均一長さのハードセグメントの両者を有する共重合体含有ポリマー領域を持つ治療薬送達用医療器具

一つ以上のポリマー領域と一つ以上の治療薬を含む埋め込み可能又は挿入可能な医療器具を記載する。一つ以上の治療薬の医療器具からの放除を制御するポリマー領域は、共重合体分子を含有し、それぞれが一つ以上のソフトセグメントと一つ以上のハードセグメント(例えば中でも分子の端から端までの長さが変わらないポリアミドセグメント)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通常医療器具に関し、より詳しくはポリマー領域含有の治療薬放除医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
治療薬のポリマー材を用いた制御放除は長年の間種々の形で存在した。例えば治療薬を身体に送達するために多くのポリマーベースの医療器具が開発された。例としては医薬品溶出冠動脈ステントが挙げられ、ボストンサイエンティフィック社(Boston Scientific Corp.)(タクサス(TAXUS))、ジョンソンアンドジョンソン社(Johnson & Johnson)(サイファー(CYPHER))などが市販されている。
【0003】
医療器具に使用できる高性能ポリマー材に対して継続的な必要性があり、放除治療薬を制御する物が含まれる。はこの材料を構成するポリマー又は複数のポリマーの種々な特性の中でも、分子量、構造(例えば直線、環状、分岐)、モノマー構成要素、更にはモノマー構成要素の割合と分布(共重合体を用いた場合)が、通常生体整合性、機械的特性、加工性及び治療薬放除プロフィルを含む一つ以上の材料特性に影響する。
【発明の開示】
【0004】
本発明の様態に従うと、治療薬放除を制御するポリマー領域を含有する埋め込み可能又は挿入可能な医療器具が提供される。次いでこれらポリマー領域は一つ以上の形状のポリマーを含有し、その内の少なくとも1つが少なくとも1つのソフトセグメントと少なくとも1つの均一長さのハードセグメントを含有する共重合体である。
【0005】
本発明の利点は以下のものから選ぶ一つ以上の強化特性を有するポリマー領域を形成できることである。中でも治療薬保存と放除、引っ張り強度、剛性、耐久性、生体整合性、バイオ安定性及び加工性。
【0006】
これらや他の様態、本発明の実施形態や利点は、以下の“発明を実施するための最良の形態”を精査すると当業者には容易に明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のより完全な理解が、この発明の種々の様態と実施形態についての以下の詳細説明を参照することで得られる。以下のこの発明の詳細説明は例示を意図し、この発明の制限を意図するものではない。
【0008】
上述のようにこの発明は、通常治療薬放除を制御するポリマー領域を含有する埋め込み可能又は挿入可能な医療器具に関する。次いでこれらポリマー領域は一つ以上の形状のポリマーを含有し、その内の少なくとも一つが少なくとも一つのソフトセグメントと少なくとも一つの均一長さのハードセグメントを含有する共重合体である。
【0009】
本発明の種々な様態と実施形態で得られる埋め込み可能で挿入可能な医療器具は多数あり、例えば以下のものから選択できる。カテーテル類(例えばバルーンカテーテルのような腎臓カテーテル又は脈管カテーテル)、バルーン類、ガイドワイヤー類、フィルター類(例えば大静脈フィルター)、ステント類(冠状動脈ステント、末梢脈管ステント、脳動脈ステント、尿道ステント、尿管ステント、胆管ステント、気管支ステント、消化管ステント及び食道ステント)、ステントグラフト類、脈管グラフト類、脈管アクセスポート類、脳動脈瘤フィラーコイル類を含む塞栓化器具類(グリエルモ脱着可能コイルや他の種々の金属コイルのような)、心筋梗塞プラグ類、中隔欠損閉鎖装置類、パッチ類、ペースメーカーとペースメーカーリード類、除細動リードとコイル類、左室補助人工心臓とポンプ類、完全人工心臓類、心臓弁類、脈管弁類、生体内組織再生用の組織工学足場類、生検装置類、更には身体に埋め込むか又は挿入し、治療薬を放除する多くの他の装置類。
【0010】
本発明の医療器具としては、診断用、全身治療用又は任意の組織又は器官の局所治療に用いる医療器具、例えば以下のものが挙げられる。腫瘍類、心臓、冠状血管と末梢血管系(全体で“脈管構造”と呼ばれる)、腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立腺、膣、子宮と卵巣を含む泌尿生殖器系、眼、肺、気管、食道、腸、胃、脳、肝臓と膵臓、骨格筋、平滑筋、乳房、皮膚組織及び軟骨。ここで用いた“治療”とは、疾患又は容態の予防、疾患又は容態に関連した兆候又は症状の低減又は除去、又は疾患又は容態の実質的又は完全な除去を意味する。典型的被験者(又“患者”とも言われる)は、脊椎動物被験者、より典型的な哺乳動物被験者、更により典型的なヒト被験者である。
【0011】
この発明の種々の実施形態では、装置を用いて治療薬を組織に送達できる。例えばこの装置を用いて、中でも治療薬を心臓壁と膀胱のような組織外壁を含む種々の組織表面に送達できる。治療薬は又内腔壁、例えば以下のものに対応するものに送達できる。心臓、動脈(大動脈、冠状動脈、大腿動脈、腸骨動脈、頸動脈及び椎骨脳底動脈など)、静脈のような心臓血管系の内腔、尿道(尿道前立腺部を含む)、膀胱、尿管、膣、子宮、精管及び卵管のような泌尿器生殖器系の内腔、鼻涙管、耳管、気管、気管支、鼻道及び副鼻腔のような気道の内腔、食道、腸、十二指腸、小腸、大腸、結腸のような消化管の内腔、胆膵管系、リンパ系の内腔、主要な体腔(腹膜、胸膜、心膜など)。
【0012】
“治療薬”、“医薬品”、“生物活性薬剤”、“調合薬”、“薬学的活性薬剤”及び他の関連用語はここでは互換可能に用い、遺伝子治療薬と非遺伝子治療薬を含む。治療薬は単一又は組み合わして使用できる。広範囲の治療薬負荷が本発明の装置と組み合わして、最終的には例えば治療すべき容態、治療薬自身の性質、投薬形態を導入する組織などにより、当業者が容易に決める薬学的な有効量で用いられる。
【0013】
治療薬は例えば以下のものから選択できる。アドレナリン作用薬、副腎皮質ステロイド、副腎皮質抑制薬、嫌酒薬、アルドステロン拮抗薬、アミノ酸とタンパク質、アンモニア解毒薬、タンパク質同化薬、蘇生薬、鎮痛剤、アンドロゲン薬、麻酔薬、食欲抑制化合物、食欲減退薬、拮抗薬、下垂体前葉活性化薬と抑制薬、駆虫薬、抗アドレナリン作用薬、抗アレルギー薬、抗アメーバ薬、抗アンドロゲン剤、抗貧血薬、抗狭心症薬、抗不安薬、抗関節炎薬、抗喘息薬、抗アテローム硬化性薬、抗菌剤、利胆薬、胆石溶解薬、抗胆石薬、抗コリン剤、抗凝血剤、抗コクジウム剤、抗けいれん薬、抗うつ剤、抗糖尿病薬、抗利尿薬、解毒剤、抗運動障害薬、制吐薬、抗てんかん薬、抗エステロゲン剤、抗線溶薬、抗真菌剤、抗緑内障薬、抗血友病薬、抗血友病因子、抗出血薬、抗ヒスタミン剤、抗脂血症薬、抗リポタンパク血症薬、降圧剤、抗低血圧薬、抗感染症薬、抗炎症薬、抗角質化剤、抗菌剤、抗偏頭痛薬、有糸分裂阻害薬、抗真菌薬、抗腫瘍薬、抗ガン補足増強剤、抗好中球減少症薬、抗うつ作用薬、駆虫剤、抗パーキンソン病薬、抗ニューモシスティス薬、抗増殖薬、抗前立腺肥大薬、抗原虫薬、かゆみ止め薬、乾癬治療薬、抗精神病薬、抗リュウマチ剤、抗住血虫薬、抗脂漏薬、鎮痙薬、抗血栓剤、鎮咳薬、抗潰瘍薬、抗尿路結石薬、抗ウイルス薬、良性前立腺肥大症治療薬、血糖制御因子、骨吸収阻害剤、気管支拡張薬、炭酸脱水素阻害薬、心抑制薬、強心薬、心血管作動薬、利胆薬、コリン作用薬、アセチルコリン受容体刺激薬、利胆拮抗薬、コリンエステラーゼ不活性化剤、抗コクシジウム薬、認識補助薬と認識強化薬、抑制薬、診断補助薬、利尿薬、ドーパミン作動薬、外部寄生虫撲滅薬、催吐薬、酵素阻害剤、エストロゲン、線維素溶解薬、遊離酸素ラジカルスカベンジャー、胃腸運動薬、糖質コルチコイド、性腺刺激原理、止血剤、ヒスタミンH2受容体拮抗薬、ホルモン、コレステロール低下薬、血糖降下薬、脂質低下薬、血圧降下剤、HMGCoA還元酵素阻害剤、免疫剤、免疫賦活剤、免疫調節剤、免疫反応修飾因子、免疫賦活剤、免疫抑制剤、インポテンツ治療補助剤、角質溶解薬、LHRH作用薬、黄体融解薬、粘液溶解薬、粘膜保護剤、散瞳薬、鼻腔うっ血除去薬、神経弛緩薬、神経筋遮断薬、神経保護薬、NMDA拮抗薬、非ホルモン性ステロール誘導体、分娩促進剤、プラスミノゲン活性因子、血小板活性化因子拮抗薬、血小板凝集阻害剤、脳卒中後と頭蓋骨損傷後治療薬、プロゲスチン、プロスタグランジン、前立腺成長阻害剤、甲状腺刺激ホルモン促進剤、向精神薬、放射性薬剤、再分配剤、痒癬虫殺虫剤、硬化薬、鎮静剤、鎮静催眠剤、選択的アデノシンA1拮抗薬、セロトニン拮抗薬、セロトニン阻害剤、セロトニン受容体阻害剤、ステロイド、興奮剤、甲状腺ホルモン、甲状腺阻害剤、甲状腺擬症薬、トランキライザー、不安定狭心症薬、尿酸排泄促進剤、血管収縮薬、血管拡張薬、外傷治療薬、創傷治療薬、キサンチンオキシダーゼ阻害剤など。
【0014】
本発明の実施に有用な多数の追加治療薬が、同一出願者の全体開示をここに文献として取り入れた米国特許2003/0236514の段落0040乃至0046に記載の物から選択できる。
【0015】
幾つかの有益な具体的薬剤としては、抗血栓剤、抗増殖薬、抗炎症剤、抗遊走薬、細胞外基質産生組織化影響剤、抗腫瘍薬、有糸分裂阻害剤、麻酔剤、抗凝血剤、血管細胞成長促進物質、血管細胞成長阻害剤、コレステロール低下薬、血管拡張薬及び内在血管作動機構妨害薬剤。
【0016】
より具体的な治療薬として、多くの中でもパクリタキセル、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、エポディ(Epo D)、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、エイビーティー578(ABT−578(アボットラボラトリー(Abbott Laboratories))、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、レステンーNG、エイピー17(Ap−17)、アブシキシマブ、クロピドグレル、リドグレル、ベータ遮断薬、ベータアドレナリン受容体キナーゼ(bARKct)阻害剤、ホスホランバン阻害剤、セクラ2(Sectra 2)遺伝子/タンパク質、レシキモッド、イミキモッド(更には他のイミダゾキノリン免疫応答調節薬)、ヒトアポリポタンパク質(例えばAI、AII、AIII、AIV、AVなど)、血管内皮成長因子(例えばVEGF―2)、更には上述の誘導体が挙げられる。
【0017】
上述のように本発明の医療器具は共重合体含有のポリマー領域を利用し、次いで共重合体は少なくとも一つのソフトセグメントと少なくとも一つの均一長さのハードセグメントを含有する。ある実施形態ではポリマー領域内の25重量%乃至50重量%乃至75重量%乃至90重量%乃至95重量%以上の共重合体が、均一長さのハードセグメントを有する。
【0018】
“ポリマー”領域は、通常少なくとも50重量%、75重量%、90重量%、95重量%以上のポリマー含有の領域を意味する。
【0019】
ここで用いた“ポリマー”とは、通常モノマーと呼ばれる同一又は異なる構成単位の複数コピーを含有し、通常5乃至10乃至25乃至50乃至100乃至250乃至500乃至1000以上の構成単位を含有する分子である。それ故ここ用いた“ポリマー”は僅か二つの構成単位を有するオリゴマーも含む。ここで用いる“ホモポリマー”は単一構成単位の複数コピーを含むポリマーである。“共重合体”は少なくとも2つの異なる構成単位の複数コピーを含むポリマーである。ここで用いる“ポリマーセグメント”とは、ポリマーの一部を形成する構成単位のグループ分け(例えば2乃至3乃至4乃至5乃至10乃至25乃至50乃至100乃至250乃至500乃至1000以上の構成単位)。これらを構成するセグメントの数と性質により、本発明で用いるポリマーは環状、直線及び分岐構造を含む種々の構造を取り得る。分岐構造は、中でも星形構造(例えば三つ以上の直線セグメントが単一分岐点から広がる構造)、クシ形構造(例えば主鎖と複数の分岐鎖を有する構造)、及び樹枝状構造(例えば樹枝状ポリマーとハイパーブランチポリマー)を含む。このポリマーは、例えば単一構成単位を含有するホモポリマーセグメント、及び/又は少なくとも二つの異なる構成単位を含有する共重合体セグメントで、異なる単位はランダム分布、統計的分布、傾斜分布、及び周期的(例えば交互)分布を含む種々の分布のいずれで存在できるものを含む。ここで用いた“ブロック共重合体“は、二つ以上の異なるポリマーセグメント、例えばホモポリマーセグメント、ランダム共重合体セグメント及び周期的共重合体セグメントから選んだセグメントを含むポリマーである。
【0020】
少なくとも1つのソフトセグメントと少なくとも一つの均一長さのハードセグメントを含有する共重合体の具体例としては、(a)少なくとも一つのポリエーテルセグメントと少なくとも1つの均一長さのポリアミドセグメントを含有するポリエーテルアミドブロック共重合体と、(b)少なくとも一つのポリエーテルセグメントと少なくとも1つ均一長さのポリ尿素セグメントを含有するポリエーテル尿素ブロック共重合体が挙げられる。
【0021】
ここで用いた“均一なポリアミドセグメント”又は“均一長さのポリアミドセグメント”とは、一つ以上のアミド結合(-CO-NH-)を含有し、且つ分子の端から端までが同じ長さであるポリマーセグメントである(上述のように僅かに二つの構成単位を含有できる)。これはポリマーセグメントの長さが分子の端から端でやや異なるブロック共重合体を含むポリマーらしくはない点が注目される。この発明のある実施形態では、ポリマー領域内の25重量%乃至50重量%乃至75重量%乃至90重量%乃至95重量%以上のポリエーテルアミド分子が、均一なポリアミドセグメントを有する。
【0022】
ここで用いた“均一なポリ尿素セグメント”又は“均一長さのポリ尿素セグメント”とは、時々はウレイレン結合又はウリレン結合と呼ばれる一つ以上のカルボニルジイミノ結合(-NH-CO-NH-)を含有し、且つ分子の端から端までが同じ長さであるポリマーセグメントである。この発明のある実施形態では、ポリマー領域内の25重量%乃至50重量%乃至75重量%乃至90重量%乃至95重量%以上のポリエーテル尿素分子が、均一なポリ尿素セグメントを有する。
【0023】
このようなポリエーテルアミドとポリエーテル尿素内のポリエーテルセグメントは、低ガラス転移温度(Tg)セグメント(又ここでは室温で柔軟で且つしばしばゴム弾性であるため“ソフトセグメント”と呼ぶ)を含む一方、ポリアミドセグメントとポリ尿素セグメントは、高Tgセグメント(又ここでは室温で硬く且つしばしば結晶性であるため“ハードセグメント”と呼ぶ)を含む。“低Tgポリマーセグメント”は、室温より低い、より通常は20℃より低い、0℃より低い、―25℃より低い又はー50℃より低いTgを示すポリマーセグメントである。逆に高い又は“高Tgポリマーセグメント”は室温より高い、より通常は50℃より高い、75℃より高い、又は100℃より高いガラス転移温度を示すポリマーセグメントである。ある場合にはハードセグメントのTgは、材料の融点より高いことにより観察されない。Tgは示差走査熱量測定法(DSC)、動的機械分析(DMA)又は誘電解析(DEA)を含む多数の技法のいずれかで測定できる。“室温”とは、通常25℃―45℃、より通常は体温(例えば35℃―40℃)である。
【0024】
ソフトセグメント(S)とハードセグメント(H)は、種々の形態で本発明のブロック共重合体内に組織化でき、以下が含まれる。(a)形態(HS)m、S(HS)m又はH(SH)mの交互鎖を有するブロック共重合体で、mは1以上の正の自然数であり、(b)X(SH)n又はX(HS)nのような複数腕の形状を有するブロック共重合体で、nは2以上の正の自然数であり、Xはハブ種(例えば開始剤分子残渣、前もって形成したポリマー鎖に結合した分子残渣など)であり、且つ(c)S鎖バックボーンと複数のH側鎖を有するものか、又はH鎖バックボーンと複数のS側鎖を有するもののようなクシ形ブロック共重合体。
【0025】
この発明のポリエーテルアミドとポリエーテル尿素に使用できるポリエーテルセグメントの例としては、ポリアルキレンオキシドセグメント、芳香族ポリエーテルセグメント及びそれらの誘導体が挙げられ、例えばホモポリマーセグメント及び/又は共重合体セグメントの形で提供できる。ポリアルキレンオキシドの幾つかの具体例は、式HO-[R1-O-]n-H、HO-[R2-O-R3-O]n-H及びHO-[R4-O-]n-[R5-O-]m-Hのもので、R1, R2, R3, R4, R5は1乃至10個の炭素原子を有する直線、分岐及び環状アルキル基、芳香族基、アルキル芳香族基(より通常は)1乃至6個の炭素原子を有する直線又は分岐アルキル基)で、nとmは2以上であり、例えば2乃至5乃至10乃至25乃至50乃至100乃至250乃至500乃至1000以上の範囲の整数である。ポリエーテルは他の技法の中でも、例えば環状エーテルの開環付加重合により形成できる。
【0026】
より具体的な例としては、(a)Rがジメチレンで、又通常ポリエチレングリコール(PEG)と呼ばれるポリエチレンオキシド(即ちHO[-CH2-CH2-O-]nH)、(b)Rがトリメチレンのポリトリメチレンオキシド(即ちHO[-CH2-CH2-CH2O-]nH)、(c)Rがメチル置換ジメチレンで、又ポリプロピレングリコールと呼ばれるポリプロピレンオキシド(即ちHO[-CH2-CH-(CH3)-O-]nH)、(d)Rがテトラメチレンで、又ポリテトラメチレングリコールやポリテトラヒドロフランと呼ばれるポリテトラメチレンオキシド(PTMO)で(即ちHO[-(CH2-)4-O-]nH)、(e)Rがメチル置換テトラメチレンのメチル置換ポリテトラメチレンオキシド(mPTMO)(即ち、

(f)ポリフェニレンオキシド、及び(g)同一物の組み合わせと誘導体が挙げられる。PTMO誘導体の幾つかの例としては、




が挙げられ、ここでnとmは整数である。
【0027】
上述のようにポリエーテルセグメント以外に、本発明のポリマー領域に用いるポリエーテルアミド共重合体は又均一なポリアミドセグメントを含む。ある実施形態ではこれらの均一なポリアミドセグメントは長さが短く、例えば1乃至2乃至5乃至10乃至25個のアミド結合を含有する。更にある実施形態ではこの均一なポリアミドセグメントは、明確な相ドメインの自己組織化を助けると考えられる一つ以上の芳香属構造(多くの中でもベンゼン環構造)を含有できる。
【0028】
本発明と関連するポリエーテルアミドに組み入れられる均一な短鎖の芳香族ポリアミドの幾つかの具体例としては、以下のものような均一な芳香族ポリエステルアミドが挙げられる。

(TΦTジメチルエステルと呼ぶ)、

(TmdaTジメチルエステルと呼ぶ)、

(TtolTジメチルエステルと呼ぶ)、

(TmΦTジメチルエステルと呼ぶ)、

(T6T6Tジメチルエステルと呼ぶ)。
【0029】
PTMOがTΦTジメチルエステルと反応してポリエーテルアミドを形成する例は以下がある。(エムシーイージェー、ニーステン等(M.C.E.J. Niesten et al.)、“均一長さのアラミド単位を有するセグメント化共重合体の合成と物性(Synthesis and properties of segmented copolymers having aramid units of uniform length)、ポリマー(Polymer)、41巻(2000年)、8487−8500頁から引用)。

1.エステル交換、NMP、窒素、T=180−250℃
2.低圧、圧力(P)<20ミリバール、T=250℃でのNMPの除去
3.P<1ミリバール、T=250℃での溶融物の縮重合
NMPはN−メチルー2−ピロリドン、Pは圧力、Tは温度、nとpは整数である。他例としては、PTMO/DMTとTΦTジメチルエステルとの反応があり、以下の共重合体が得られ、


ここでn、m及びpは整数である。
【0030】
このセグメント化共重合体は、通常低ガラス転移温度(Tg)を有する非晶質ソフトセグメントと、高融点(Tm)を有する硬い分散結晶相からなる二相の材料である。動作理論に束縛される意図はないが、図1に模式的に示すように、長さが均一で水素結合を形成できるポリアミドセグメントは、長さがランダムに分布したセグメントに比べより整った結晶充填を与える。リボン状クリスタリットに積層した結晶化ポリアミドセグメントが観察された。このポリマーの原子間力顕微鏡写真を図2に示す。ポリアミドセグメントの全てが同じ長さを有するので、アミドセグメントの全長にわたって結晶化が起こると考えられ、その結果結晶化度が高い。このブロック共重合体は比較的短鎖ポリアミドセグメントでも高融点を有し、このポリマーの寸法安定性が良い。
【0031】
上に示したもののような構造を有するポリエーテルアミドの更なる情報は、例えばビービー、ザウアー等(B.B.Sauer et al.)、“均一長さのハードセグメントを有するセグメント化共重合体の結晶形態”(Crystalline Morphologies in Segmented Copolymers with Hard Segments of Uniform Length)、ジャーナルオブポリマーサイエンス、パートビー、ポリマーフィジクス(J. Polymer Sci., Part B, Polym. Phys.)、2004年、42巻(9号)、1783−1792頁;エムシーイージェー、ニーステン等(M.C.E.J. Niesten et al.)、“均一アラミド単位を有するセグメント化コポリエーテルエステルアミドの引っ張り弾性特性(Tensile and elastic properties of segmented copolyetheresteramides with uniform aramid units)、ポリマー(Polymer)、42巻(2001年)、6199−6207頁;エムシーイージェー、ニーステン等(M.C.E.J. Niesten et al.)、“伸長ポリテトラメチレンオキシドセグメントを有するセグメント化コポリエーテルエステルアラミド”(Segmented copolyetheresteramides with extended poly(tetramethyleneoxide) segments)、 ポリマー(Polymer)、42巻(2001年)、1461−1469頁;エムシーイージェー、ニーステン等(M.C.E.J. Niesten et al.)、“セグメント化コポリエーテルエステルアミドに対する均一芳香族アミド単位の形態の影響”(Influence of type of uniform aromatic amide units on segmented coolyetheresteramides)、ポリマー(Polymer)、42巻(2001年)、931−939頁;ジェイ、クリッグスマン等(J. Krijgsman et al.)、“PTMOとテトラアミドに基づく熱可塑性エラストマーの合成と物性”(Synthesis and properties of thermoplastic elasstomers based on PTMO and tetra-amide)、ポリマー(Polymer)、44巻(2003年)、7573−7588頁;エムシーイージェー、ニーステン等(M.C.E.J. Niesten et al.)、“均一長さのアラミド単位を有するセグメント化共重合体の合成と物性(Synthesis and properties of segmented copolymers having aramid units of uniform length)、ポリマー(Polymer)、41巻(2000年)、8487−8500頁;マルティジン、バンデル、シュール等(Martijin van der Schuur et al.)、”液液分離形態を有するセグメント化ブロック共重合体の構造―物性の関係“(Structure-property relations of segmented block copolymers with liquid-liquid demixed morphologies)、ポリマー(Polymer)、46巻(2005年)、3616−3627頁;エムアール、ヒブス等(M.R.Hibbs et al.)、”芳香族ビスエステルジアミドによる修飾のポリエチレンテレフタレート:熱物性と酸素バリア物性“(Poly(ethylene terephthalate) Modified with Aromatic Bisester Diamides: Thermal and Oxygen Barrier Properties)、ジャーナルオブポリマーサイエンス、パートA、ポリマーケミストリー(J. Polymer Sci., Part A, Polymer. Chemistry)、2004年、42巻、1668−1681頁参照。
【0032】
ポリアミドセグメントの他例としては、式-[R6-NH-CO]m-、-[NH-R7-NH-CO-R8-CO]m-及び-[R9-NH-CO]m--[R10-NH-CO]m-のポリアミドセグメントが挙げられ、ここでR、R、R、R及びR10は1乃至20個の炭素原子の直線、分岐及び環状アルキル基、芳香族基、アルキル芳香族基(より通常はメチル、エチル、プロピル、イソプロピルなどのような1乃至15個の炭素原子を有する直線又は分岐アルキル基)で、nとmは例えば3乃至5乃至10乃至25以上の範囲の整数である。具体例としてはナイロン6(ポリカプロラクタム)、ナイロン4、6、ナイロン6、6、ナイロン6、12、ナイロン11、ナイロン12のようなナイロン、ポリL−グルタミン酸、

ポリL−リシン、

のようなポリアミノ酸(PAA)、及び混合ペプチドが挙げられる。
【0033】
使用できるアミノ酸配列の幾つかの例としては、フィブリルに自己組織化できるものが挙げられる。フィブリルやリボンに自己組織化すると報告された構造の数例としては、NFGAIL,FGAIL、FGAILSS、TNVGSNTY、QRLANFLVH、KLVFFAE、GNNQQNY,FLVHS,NFLVH、ATQRLANFLVHSSが挙げられる。これらのセグメントは芳香族構造(例えばF=フェニルアラニン、Y=チロシン、W=トリプトファン)を含有するので、多分自己組織化プロセスの役割を果たすπ―スタッキングが提案された。更なる情報については、例えばイー、ガジット(E. Gazit)、“アミロイドフィブリルの自己組織化におけるπ―スタッキングの可能な役割”(A possible role of πstacking in the self-assembly of amyloid fibrils)、ザエフエイエスイービージャーナル(The FASEB Journal)、16巻、2002年1月、77−83頁及びワイ、マゾール等(Y. Mazor et al.)、“膵島アミロイドポリペプチド内の新規分子認識と自己組織化ドメインの同定と特性化”(Identification and Characterization of a Novel Molecular-recognition and Self-assembly Domain within the Islet Amyloid Polypeptide)、ジャーナルオブモレキュラーバイオロジー(J. Mol. Biol.)、(2002年)、322巻、1013−1024頁;“らせん状リボン中間体による高次形態構造へのペプチド自己組織”(Peptides self-assemble into higher order morphological structures via helical ribbon intermediates)、ハートカット(Hear Cut)、2002年、5月13日を参照。
【0034】
直線でない均一ポリアミドセグメントの他例は、ポリアミドデンドリマーセグメントである。デンドリマーは世代ごとに成長するので、所定世代内での反応は一旦利用可能な反応部位が全て反応すると停止するので、均一なセグメントを与える機会が得られる。均一なポリアミドデンドリマーセグメントを有するポリエーテルアミドの一例、具体的にはポリリシンーPEG―ポリリシントリブロック共重合体を以下に示す。

【0035】
例えばエフ、オーレンタ等(F. Aulenta et al.)、“デンドリマー:新種のナノスケール容器と送達装置”(Dendrimers: a new class of nanoscopic containers and delivery devices)、ヨーロピアンポリマージャーナル(European Polymer Journal)、39巻(2003年)、1741−1771参照。
【0036】
この発明のポリエーテルアミド内で均一セグメントとして働くポリアミドデンドリマーセグメントの他例としては、(a)一つ以上のポリエーテルセグメントと、(b)一つ以上のアミン終端の均一PMAMセグメント、及び/又は一つ以上のカルボキシル終端の均一PMAMセグメントを含有するポリエーテルアミドが挙げられる。例えばこのセグメントの例については同上、1748頁参照。
【0037】
更に本発明に使用するポリエーテルアミドの他例は、以下のポリエーテル芳香族アミドであり、


ここでRは一つ以上のポリエーテルセグメントと、このポリエーテルを芳香族ポリアミド構造と共有結合する適切な結合を含む。
【0038】
更に本発明に使用する他のポリエーテルアミドは生分解性である。その構造の一具体例は
-[C(=O)-R-C(=O)-O-(CH2)4-O-]x--[-C(=O)-R-C(=O)-O-(CH2CH2O)22-]y-で、ここでxとyは整数で、R=(CH2)4C(=O)NH(CH2)4NHC(=O)(CH2)4である。例えばエヌ、クマール(N. Kumar)、“生分解性ブロック共重合体”(Biodegradable block copolymers)、アドバンスドドラッグデリバリーレビュー(Advanced Drug Delivery Reviews)、53巻(2001年)、23−44頁参照。
【0039】
均一なポリアミドセグメントとして使用できる他の生分解性ポリアミドブロックの例は、ポリN−(2−ヒドロキシプロピル)メタアクリルアミドラクテート(pHPMAmDL)である。pHPMAmDL−b−PEGポリマーは均一なポリアミドセグメントを持たないが、例えばオー、曽我等(O. Soga et al.)、“パクリタキセル送達用の感熱性生分解性ポリマーミセル”(Thermosensitive and biodegradable polymeric micelles for paclitxel delivery)、ジャーナルオブコントロールドリリーズ(Journal of Controlled Release)、103巻(2005年)、341―353頁に記載されている。
【0040】
ポリエーテルアミドの他例、具体的には均一長さのポリエーテル(トリオキシエチレンとペンタオキシエチレン)ソフトセグメント、ポリエステル(ポリカプロラクトン)ソフトセグメント、及び均一長さのポリアミド(Gly−Phe)ハードセグメントを含有するポリエーテルエステルアミドは、エフ、クアグリア等(F. Quaglia et al.)、“生物活性化合物制御放除用のポリ(ε―カプロラクトン)とエーテルアミドセグメント含有の新規セグメント化共重合体”(New segmented copolymers containing poly(ε-caprolactone) and etheramide segments for the controlled release of bioactive compounds)、ジャーナルオブコントロールドリリーズ(Journal of Controlled Release)、83巻(2002年)、263−271頁に記載されている。
【0041】
上述のように上記のものようなポリエーテルセグメント以外に、中でも本発明のポリマー領域に用いるポリエーテル尿素共重合体は又均一なポリ尿素セグメントを含む。均一なポリ尿素セグメントを有するポリエーテル尿素セグメントの幾つかの具体例は、例えばアールエム、ベルスティーゲン等(R.M. Versteegen et al.)、“均一なハードセグメントを有するセグメント化コポリエーテル尿素の合成と特性化”(Synthesis and Characterization of Segmented Copoly(ethrurea)s with Uniform Hard Segments)、マクロモレキュール(Macromolecules)、2005年、38巻、3176−3184頁に示され、一つ以上のポリテトラヒドロフランソフトセグメントと、一つ以上の均一なポリ尿素セグメントを有するポリエーテル尿素が記載されている。具体例は以下の通りである。


ここでpTHFはポリテトラヒドロフランセグメントを指定し、nは整数(即ち1,2,3など)、Rは-(CH2)m-で、m=2乃至6である。
【0042】
必要ならば本発明のポリマー領域を構成するポリマーは、種々の試薬で架橋して所望物性(例えば溶解度の減少など)を得ることができる。
【0043】
少なくとも1つのソフトセグメントと少なくとも1つのハードセグメントを含有する共重合体以外に、この発明のポリマー領域は更に他のポリマー、例えば同一物とのブレンドを含んでも良い。
【0044】
この発明のある様態では、ポリマー領域は共有結合した金属要素又は半金属要素を含むポリマー分子を含有する。例えば幾つかの実施形態では、この金属要素又は半金属要素は中でも、例えば少なくとも一つのポリエーテルセグメントと、少なくとも一つの均一長さのポリアミドセグメントを含有するポリエーテルアミドブロック共重合体や、少なくとも一つのポリエーテルセグメントと、少なくとも一つの均一長さのポリ尿素セグメントを含有するポリエーテル尿素ブロック共重合体を含む上述のブロック共重合体と共有結合できる。他の実施形態では、金属要素又は半金属要素は他のポリマー分子、例えばポリエーテル分子、ポリアミド分子、ポリ尿素分子、均一長さのポリアミドセグメントを含有しないポリエーテルアミドブロック共重合体、均一長さのポリ尿素セグメントを含有しないポリエーテル尿素ブロック共重合体などと共有結合できる。
【0045】
共有結合した金属要素又は半金属要素を含むポリマー分子は、ゾルーゲルプロセスを用いて本発明のポリマー領域に一体化できる。
【0046】
典型的なゾルーゲルプロセスでは、前駆体材料、通常無機金属塩や半金属塩、金属錯体/キレートや半金属錯体/キレート、金属水酸化物や半金属水酸化物、又は金属アルコキシドやアルコキシシランのような有機金属化合物や有機半金属化合物を、加水分解縮合(又重合とも呼ばれる)に付することにより“ゾル”を形成する。例えば選択の半金属又は金属(ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、スズ、ハフニウム、タンタル、モリブデン、タングステン、レニウム、イリジウムなどのような)の選択のアルコキシド(メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、tert―ブトキシドなどのような)を、適切な溶剤、例えば一つ以上のアルコールに溶解する。次いで水又は例えば酸性又は塩基性水溶液(水溶液は更にアルコールのような有機溶剤種を含んでも良い)のような他の水溶液を加え、加水分解縮合を起こす。
【0047】
以下の簡略化図式から分かるように(ジー、キッケルビック(G. Kickelbick)、“無機ビルディングブロックを有機ポリマーにナノスケールで組み入れるための構想”(Concepts for the incorporation of inorganic building blocks into organic polymers on nanoscale)、プログレスオブポリマーサイエンス(Prog. Polym. Sci.)、28巻(2003年)、83−114頁で、その全開示を文献としてここに取り入れる。)、その反応は基本的にはセラミック網目の形成プロセスで、セラミック相内の金属/半金属原子(通常ここではMと指定する)が、M−O−M結合のような共有結合により互いに結合するが、例えば網目内の残留M−OH基のような水酸基の存在による水素結合を含む他の相互作用も又通常存在する。
加水分解

縮合

【0048】
このゾルを更に処理して種々の異なる形状の固体材料を作製できる。例えば基板上へのゾルのスプレーコーティング、アプリケーター(例えばローラー又は刷毛による)によるコーティング、スピンコーティング、浸漬コーティングなどにより基板上に薄膜が形成でき、その結果“ウエットゲル”が形成される。浸漬コーティングを用いた場合には、このゾルからの引き上げ速度を変えてこの膜物性に影響を与えられる。モノリシックウエットゲルが、例えばこのゾルを金型又は他の形状(例えばシート)に入れるか又は上に置いて形成し、これから乾燥ゲルを取り出すことができる。次いでウエットゲルを乾燥する。ウエットゲル中の溶剤を超臨界条件下に除去すると、通常“エーロゲル”と呼ばれる材料が得られる。このゲルを凍結乾燥により乾燥する(凍結乾燥)と、生成材料は通常“凍結ゲル”と呼ばれる。室温常圧で乾燥すると、通常“キセロゲル”と呼ばれるものなる。高温乾燥(例えば乾燥器内で)、真空乾燥(例えば室温又は高温で)などを含む他の乾燥の可能性が利用できる。
【0049】
同様にこの発明の幾つかの実施形態では、ポリマーは加水分解/縮合反応で沈殿を起こしうる金属又は半金属要素含有基が備わる。
【0050】
これら実施形態のあるものでは、ハブリッドモノマー種を通常は一つ以上のコモノマー存在下に適切な重合法によりポリマー中に組み入れる。例えばハイブリッドモノマー種は、-M(OR)m基(ここでMは金属又は半金属で、mは整数で、その値はMの原子価に依存し、通常は3乃至6で、同一でも異なっても良い種々のR基は1乃至10個の炭素原子の直線、分岐又は環状アルキル基、芳香族基又はアルキル芳香族基で、好ましくは1乃至6個の炭素原子を有する直線又は分岐アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピルなど)のような追加基を有する。次いで生成ポリマーに組み入れた無機基を利用して、ゾルーゲルプロセスに関連する加水分解/縮合反応にあずかり(ここでM、m及びRは上に定義した任意に-M(OR)m+1のような他の有機金属化合物又は有機半金属化合物と共に、)、その結果ポリマー相と共有結合したセラミック網目を形成する。
【0051】
これら実施形態のある他のものでは、以前から存在するポリマーは加水分解/縮合に関与できる無機基を備える。例えば適切な連結の化学を用いて、上述のポリマーを含む多種多様なポリマーがゾルーゲルプロセスに関与する基を備えることできる。ゾルーゲルプロセスに関与する有機金属基又は有機半金属基で容易に修飾されるポリマーの具体例は、ポリエーテルとポリエステルを含む水酸基を有するポリマーである。水酸基を有するポリマーの幾つかの具体例は以下の通りである。(a)上に示した式HO-[R1-O-]n-H、HO-[R2-O-R3-O-]n-H及びHO-[R4-O-]n-[R5-O]m-Hのようなポリエーテル、(b)ポリエチレンテレフタレート、

のようなポリエステル、(c)ポリエステル/ポリエーテルブロック共重合体、例えばHO-[CO-PEST-CO-PETH-O]-Hで、ここでPESTはポリエステルブロックを指定し、PETHはポリエーテルブロックを指定し、例えばデュポン社(DuPont)から入手できるポリジメチルテレフタレートーブロックーポリテトラメチレンエーテルグリコールのハイトレル(商品名(HYTREL))や、ディエスエムエンジニアリングプラスチック社(DSM Engineering Plastics)入手できるポリブチレンテレフタレートーブロックーポリテトラメチレンオキシド共重合体のアルニテル(商品名(ARNITEL))、(d)ポリエーテル/ポリアミドブロック共重合体、例えばHO-[CO-PA-CO-O-PE-O]-Hで、ここでエルフアトケム社(Elf Atochem)から入手できるポリテトラメチレンオキシドーポリアミド12ブロック共重合体(ピーバックス(商品名)(PEBAX))のような、PEはポリエーテルブロックを指定し、PAはポリアミドブロックを指定する。
【0052】
上記の水酸基を有するポリマーの適切構成員(更には水酸基を有する多くの他ポリマー、又は水酸基を含むように修飾するポリマー)は、例えばM(OR)m(R-N=C=O)のような適切な種との反応で加水分解/縮合反応に関与できる基を含むように修飾し、一つ又は複数のアルコキシ基-M(OR)mを有するポリマー提供でき、ここでM、m及びRは以前に規定した。
【0053】
例えば式HO-[R1-O-]n-Hで、Rがアルキル(例えばPEO,PPO、PTMEGなど)のポリエーテルは、M(OR)m(R-N=C=O)と反応して(RO)m M -R-NH-CO-O-[R1-O-]n-H、又は(RO)m M (R-NH-CO-O-[R1-O-]n-O-CO-NH-R- M(OR)mを生成できる。次いで種々の-M(OR)m基が任意にM(OR)m+1のような無機種の存在下に、上述のように加水分解/縮合に利用できる。
【0054】
幾つかの実施形態では、生成ポリマー(例えば-M(OR)m基を有する修飾ポリマー)を追加の重合段階に付しても良い。具体例としてはポリエーテル(例えば式(RO)mM- R-NH-CO-O-[R1-O-]n-Hの上記ポリエーテル)を用いてポリアミド形成モノマーとブロック共重合をし、ゾルーゲル反応に関与する基を有するポリエーテルポリアミドブロック共重合体を形成できる。これは上述のような-M(OR)m基を与えるポリエーテルポリアミドブロック共重合体の直接修飾とは対照的である。
【0055】
具体例では均一長さのポリアミド中央セグメント(例えばTΦTのようなビエステルジアミド、T6T6Tのような他のポリアミドなど)と、ポリエーテル末端セグメント(例えばPEO,PTMOなど)を有するハイブリッドポリエーテルアミドトリブロック共重合体が、ポリエーテル末端セグメントを金属アルコキシド(例えばチタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド又はケイ素アルコキシド基)で機能化して与えられる。支持基板上に沈着すると(例えば適切溶剤へ溶解後、水または酸性又は塩基性水溶液のような他の水溶液を加えて加水分解縮合を起こした後、生成ゾルを沈着してウエットゲルを形成後乾燥する上述のようなプロセスによりニチノールのような金属上)、医薬品放除の制御を最適化できる多孔層を形成する(例えばM(OR)m+1のような無機種を任意に種々の量を添加して)。更にこの層は支持基板、中でも特にニチノール又はステンレススチールのような金属基板及びピーバックス(PEBAX)のようなポリエーテル含有基板をと良好に接着できる。
【0056】
この発明のある実施形態では、一つ以上のポリマー相と一つ以上のセラミック相(例えば金属酸化物及び/又は半金属酸化物を含む相)を有するハイブリッド膜を用いて、この発明のポリマー領域と支持基盤間の接着性を改善できる。例えばピーシーチアン等(P.-C. Chiang)、“ナノチタニアハイブリッドポリイミドと銅系での界面接着機構に対するチタニア含量とプラズマ処理の影響”(Effects of titania content and plasma treatment on the interfacial adhesion mechanism of nanotitania-hydrized polymide/titania film)、ポリマー(Polymer)、45巻(2004年)、4465−4472頁に、ハイブリッドポリイミド/チタニア膜(アルゴン、アルゴン/窒素又はアルゴン/酸素存在下での任意のプラズマ処理と共に)が、銅とポリイミド間の接着強さを顕著に増加することを報告した。
【0057】
以前に示したように種々の治療薬が本発明の医療器具に使用できる。これらの治療薬は、例えばポリマー領域が治療薬放除を制御するようにポリマー領域下か内に配置できる。
【0058】
治療薬をポリマー領域下に配置した場合、ポリマー領域はここではバリア領域と呼ぶ。“バリア領域”とは、治療薬供給源と意図する放除部位間に配置し、治療薬の放除速度を制御する領域を意味する。例えば幾つかの実施形態では、医療器具は治療薬供給源を囲むバリア領域からなる。他の実施形態では、バリア領域は治療薬供給源上に配置し、次いで医療器具基板の全体又は一部上に配置する。ポリマー領域下に配置した場合、治療薬は遊離形でも、ポリマーキャリヤーのような補助材料と組み合わして提供できる。
【0059】
治療薬がポリマー領域内部に配置する場合、ポリマー領域はここではキャリヤー領域と呼ぶ。“キャリヤー領域”とは、更に治療薬を含み、治療薬がそこから放除されるポリマー放除領域を意味する。例えば幾つかの実施形態では、キャリヤー領域は医療器具全体を構成する(例えばステント本体の形で提供される)。他の実施形態では、キャリヤー領域は装置の一部だけに対応する(例えばステント本体のような医療器具基板を覆う塗膜)。
【0060】
治療薬はポリマー分子のような他種と共有結合するか、又は遊離形でも良い(即ち他種と共有結合していないが、バンデルワールス力、イオン力、水素結合、配位結合及びイオン配位結合のような他の引力が存在する)。
【0061】
例えばパクリタキセル、ドキソルビシン、カンプトセシン及び白金酸塩のような抗ガン剤をアミドベースのブロック共重合体を含むポリマーと複合化することで医薬品溶解度を増加し、全身毒性を減少し、治療係数を改善できることが知られている。典型的治療薬としてパクリタキセルを用いると、他の構成要素の中でも、この薬剤を(a)ポリグルタミン酸/ポリグルタメートのようなポリアミノ酸を含むポリアミド、(b)ポリエチレングリコールのようなポリエーテル、及び(c)ポリグルタミン酸―ポリエチレングリコールブロック共重合体のようなポリエーテルアミドと連結した。
【0062】
PEGパクリタキセルはファルマシア社(Pharmacia Corporation)で生産される。PEGカルボン酸のタキソールー2‘エステルと、PEG二塩基酸のビス(キソールー2‘エステル)形成に関する情報は、米国特許5,614,549に記載されている。
【0063】
その全体を文献として組み入れた米国特許6,730,699には、ポリ(d−グルタミン酸)、ポリ(l−グルタミン酸)、ポリ(dl−グルタミン酸)、ポリ(l−アスパラギン酸)、ポリ(d−アスパラギン酸)、ポリ(dl−アスパラギン酸)、ポリ(l−リシン)、ポリ(d−リシン)、ポリ(dl−リシン)、上に列挙のポリアミノ酸類とポリエチレングリコールとの共重合体(例えばパクリタキセルーポリ(l−グルタミン酸)―PEO)、ポリカプロラクトン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、更にはポリ(2−ヒドロキシエチルー1−グルタミン)、キトサン、カルボキメチルデキストラン、ヒアルロン酸、ヒト血清アルブミン及びアルギン酸を含む種々のポリアミノ酸と複合化したパクリタキセルが記載されている。
【0064】
パクリタキセルが2‘位の水酸基によりポリL−グルタミン酸のデルタカルボン酸基と結合したポリグルタメートパクリタキセル(PGA)は、セルセラピューティクス社(Cell Therapeutics, Inc.)、シアトル(Seattle)、ワシントン州(WA)、米国により生産されている。(7位の水酸基が又エステル化に利用できる)。この分子はカテプシンBにより生体内で切断しジグルタミルパクリタキセルを放出すると言われている。パクリタキセルがポリマーの一端又は両端と結合しているPEG−パクリタキセルと異なり、PGA−パクリタキセルではそのパクリタキセルがポリマーバックボーンに沿ったカルボキシル基と結合し、より高いパクリタキセル含量をもたらす。
【0065】
更なる情報は、例えばアール、ダンカン等(R. Duncan et al.)、“ポリマーー医薬品複合物、PDEPTとPELT:実験室から臨床への設計と移行の基本原理”(Polymer-drug conjugates, PDEPT and PELT: basic principles for design and transfer from the laboratory to clinic)、ジャーナルオブコントロールドリリーズ(Journal of Controlled Released)、74巻(2001年)、135−146頁;シー、リー(C. Li)、“ポリ(L−グルタミン酸)−抗ガン剤複合物”(Poly(L-glutamic acid)-anticancer drug conjugates)、アドバンスドドラッグデリバリーレビュー(Advanced Drug Delivery Reviews)、54巻(2002年)、695−713頁、及び米国特許5,614,549参照。
【0066】
上記と他の戦略を用いて、パクリタキセルと他の治療薬を以下の物を含む種々のポリマー分子と共有結合するか、又はさもなければ連携できる。(a)ここに記載のものと同様に他のポリエーテルアミドを含むポリエーテルアミド、(b)ここに記載のものと同様に他のポリエーテル尿素を含むポリエーテル尿素、(c)ここに記載のポリエーテルアミド内の一つ又は複数のポリエーテルセグメントと同一又は異なる化学組成であるポリエーテル、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、PTMO、mPTMOなど、(d)中でもここに記載のポリエーテルアミド内の均一なポリアミドセグメントと同一又は異なる化学組成のポリアミドで、そのポリアミドが同一組成の場合には、ここに記載のポリエーテルアミド内の均一ポリアミドセグメントと同一の大きさの均一なポリアミドで、例えばTΦTのようなビエステルジアミド、T6T6Tのような他のポリアミド、ポリアミドデンドリマー、pHPMAmDL、ポリグルタミン酸を含むポリアミノ酸、ナイロン6、ナイロン4,6、ナイロン6,6、ナイロン6,10、ナイロン6,12、ナイロン11、ナイロン12を含む種々のナイロンセグメント、(e)ここに記載のポリエーテル尿素内の均一なポリ尿素セグメントと同一又は異なる化学組成のポリ尿素で、そのポリ尿素が同一組成の場合、アミドがここに記載のポリエーテル尿素内の均一なポリ尿素セグメントと同一の大きさの均一なポリ尿素、及び(f)他のポリマー分子。
【0067】
この治療薬は生分解性結合によりポリマーに結合し放除を促進できる。
【0068】
上に示したように均一なハードセグメントの導入により、本発明の共重合体は通常自己組織化して、例えば柔軟で弾性相と、例えば物理的な架橋を与えポリマーを強化する硬い結晶相を有する相分離形態になる。
【0069】
上に検討したもの多くを含むポリエーテルアミドとポリエーテル尿素は、中でも例えば(a)一つ以上親水性ポリエーテルセグメントと、(b)一つ以上の疎水性ポリアミド又はポリ尿素セグメントの存在により事実上両親媒性である。その結果これらポリマーは疎水性医薬品と親水性医薬品両者を取り入れるのに適する。
【0070】
このよう共重合体は又疎水性ナノドメイン生成能による医薬品の放除に魅力的である。疎水性相ドメインと親水性相ドメインは、それぞれ疎水性医薬品と親水性医薬品用相溶性領域を提供し、ナノドメインの形状と配向を調節して水透過性を調節し医薬品拡散用の通路を提供できる。
【0071】
ある両親媒性ブロック共重合体が自己組織化的にミセルになり、この発明の放除領域から放除できると報告されていることに又留意する。例えば、ポリアルキレンオキシドーポリ(L−アミノ酸)ブロック共重合体が、ポリアルキレンオキシドセグメントとミセルに組織化してミセル殻を形成し、ポリ(L−アミノ酸)セグメントがミセル核を形成することが報告されている。ブロック共重合体の臨界ミセル濃度は非常に低く、通常ミクロモル範囲である。又ポリ(L−アミノ酸)のような生分解性の核形成セグメントを有するブロック共重合体は、加水分解及び/又は酵素的分解を受け生体整合性モノマーを生成できる。
【0072】
これらのミセルの核は、核セグメントのポリマーバックボーンと複合するか錯体化するか、又は核内に物理的に封入した疎水性治療薬の負荷放除用のナノ貯蔵所として役立つ。
【0073】
例えば幾つかの場合では、治療薬含有ミセルを形成するために、治療薬がこの共重合体のポリアミノ酸ブロック(例えばポリ(l−リシン)、ポリ(l−アスパラギン酸)、ポリ(2−ヒドロキエチルー1−アスパラギン酸アミド)と複合化された。複合化医薬品の親水性/疎水性の程度により、ミセル形成に必要な両親媒性を得るためにポリアミノ酸ブロックに追加単位(例えば疎水性単位)を付着する必要がある。
【0074】
他の場合には、ポリアルキレンオキシドーブロックーポリアミノ酸を用いて形成したミセル内に治療薬を物理的に封入した。幾つかの場合には、前段落で記載したもののようなポリアルキレンオキシドーブロックーポリアミノ酸複合物を用いて治療薬を物理的に封入する。複合化治療薬と物理的に封入の治療薬間(同じである)の強い相互作用により、ミセル安定性が改善されると考えられる。他の場合には、治療薬に強い親和性を有するポリエチレンオキシドーブロックーポリアミノ酸が用いられる。例えば芳香族構造を有するあるポリエチレンオキサイドーブロックーポリアミノ酸(例えばポリ(β―ベンジルーl−アスパラテート)、ポリ(β―ベンジルーl−グルタメート)などのようなポリアミノ酸)を用いて、又芳香族構造を有する治療薬を封入した。ミセルの芳香族核と医薬品内の芳香族構造間のπ―π相互作用により、この系の安定性が増強すると考えられる。他例では用いるアミノ酸により、ポリエチレンオキシドーブロックーポリアミノ酸は、DNA又はペプチドのような反対荷電の巨大分子とポリイオン性錯体を形成できる。
【0075】
ミセルに関する追加の情報は、例えばラバサニファー、エイ等(Lavasanifa A. et al.)、“医薬品送達用のポリエチレンオキシドーブロックーポリ(l−アミノ酸)ミセル”(Poly(ethylene oxide)-block-poly(l-amino acid) micelles for drug delivery)、アドバンスドドラッグデリバリーレビュー(Advanced Drug Delivery Reviews)、54巻(2002年)、169−190頁、及び柿沢ワイ等(Kakizawa Y. et al.)、“遺伝子と関連化合物送達用のブロック共重合体ミセル”(Block copolymer micelles for delivery of gene and related compounds)、アドバンスドドラッグデリバリーレビュー(Advanced Drug Delivery Reviews)、54巻(2002年)、203−222頁に見いだされる。
【0076】
本発明の種々の様態と実施形態で用いるポリマー領域は、種々の形状で提供でき、医療器具支持基板全体又は一部上だけに形成する層、足場類や繊維類のような支持基板を必要としない器具の大半領域などを含む。層は種々の場所で、種々の形状で支持基板上に備えることができる。これらは互いに積層できる。その結果複数層に複数の治療薬を積層して連続で現れる。ここで用いた所定材料の“層”とは、その厚みが長さと幅両者に比べて小さい材料の領域である。ここで用いた層は平面である必要はなく、例えば支持基板の輪郭を呈する。層は不連続でも良い(例えば模様化)。“膜”、“層”及び“塗膜”のような用語はここでは互換可能に用いる。
【0077】
ポリマー領域が支持基板全体又は一部上に形成される場合、その支持基板は金属材料やセラミック材料、炭素ベースの材料、ケイ素ベースの材料、ポリマー材料などのような非金属材料を含む種々の材料で形成できる。例えば本発明に従う抗再狭窄薬を負荷したポリマー塗膜を金属ステント上に備えられる。
【0078】
塗膜の完全性と安定性を増強するために(例えば塗膜と基板間界面での相互作用の改良により)、この発明のある実施形態では、このポリマー領域を同一セグメント又は関連セグメント、例えば同一又は関連ポリエーテルセグメント、同一又は関連ポリアミドセグメント又はポリ尿素セグメント、又は両者の組み合わせを含む基板上に配置することが望ましい。
【0079】
医療器具基板に利用できるポリエーテルーポリアミドブロック共重合体の具体例は、エルフアトケム社(Elf Atochem)からピーバックス(商品名(PEBAX))として入手できるポリテトラメチレンオキシドーb−ポリアミドー12ブロック共重合体のようなポリテトラメチレンオキシドセグメントとポリアミドー12セグメントを含むブロック共重合体である。ピーバックス(商品名(PEBAX))のようなポリエーテルーポリアミドブロック共重合体は、優れた機械物性を有し、安定で容易に加工される(例えば溶融加工又は溶液加工により)。ピーバックス(商品名(PEBAX))のようなポリエーテルーポリアミドブロック共重合体は、又金属、セラミック及び他のポリマー、特にポリエーテル、ポリアミド及びポリエーテルーアミド共重合体を含む他材料と良好な界面接触を形成できる。それ故この発明のある実施形態では、ポリエーテルーアミドブロック共重合体含有の医療器具基板は、本発明に従うポリエーテルアミド又はポリエーテル尿素、例えばポリテトラメチレンオキシドソフトセグメントと上述のポリアミド又はポリ尿素の内の一つのような均一長さのハードセグメントを含有する共重合体含有のポリマー塗膜を備える。
【0080】
本発明に用いる少なくとも一つのポリマー含有のポリマー領域は、種々の技術、例えば以下を含有する溶液を用いて形成できる。(a)ポリマー領域を構成するポリマー種と、(b)多数の他の中でも、水、アセトニトリル、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)、メタノールのような少なくとも一つの溶剤種を含有する溶液。必要ならば(c)多くの可能な他、薬剤の中でも少なくとも一つの治療薬のような種々の他薬剤が加えられる。ポリマー領域を構成する一つ以上のポリマー種が熱可塑特性を有する場合、次いで例えば要素(a)と任意に要素(c)から融解物を形成できる。次いで、注ぎ、浸漬、散布、押し出し、アプリケーター(例えばローラー又は刷毛による)による塗布、スピンコーティング、ウエブコーティング、エアサスペンションを含む機械サスペンションによる塗布を含む技法、インクジェット法、静電法及びこれらプロセスの組み合わせを含む種々の技法により、この溶液又は融解物を基板(例えば医療器具支持基板又は金型のような取り外し可能な基板)に塗布できる。
【0081】
種々の実施形態をここに具体的に示し説明したが、本発明の修正物と変形物が上記の教示に包含され、この発明の精神と意図範囲から逸脱すること無しに付随の特許の請求項の範囲内であることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は二つのブロック共重合体の模式図であり、その一つは均一長さのハードセグメントを有し、他はランダム長さのハードセグメントを有する。
【0083】
【図2】図2は図1に模式的に示したような共重合体の原子間力顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板、前記基板上に配置のポリマー領域、及び前記ポリマー領域内又は下に配置の治療薬を含む埋め込み可能又は挿入可能な医療器具で、前記ポリマー領域が前記治療薬の前記治療器具からの放除を制御し、ソフトセグメントと均一なハードセグメントをそれぞれ含有する共重合体分子を含む医療器具。
【請求項2】
前記共重合体分子のそれぞれが複数の均一なハードセグメントを含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項3】
前記共重合体分子のそれぞれが複数のソフトセグメントを含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項4】
前記共重合体分子の少なくとも25重量%が、均一長さのハードセグメントを有する請求項1に記載の医療器具。
【請求項5】
前記ポリマー領域がポリエーテルアミド共重合体分子を含み、それぞれがポリエーテルソフトセグメントと均一なポリアミドハードセグメントを含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項6】
前記ポリエーテルアミド共重合体分子のそれぞれが複数のポリエーテルセグメントを含む請求項5に記載の医療器具。
【請求項7】
前記ポリエーテルアミド共重合体分子のそれぞれが、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンオキシド誘導体、及び上述の物の組み合わせから選ぶポリエーテルセグメントを含む請求項5に記載の医療器具。
【請求項8】
前記ポリエーテルアミド共重合体分子のそれぞれが、ポリエチレンオキシド、ポリトリメチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラメチレンオキシド、上述の物の誘導体及び上述の物の組み合わせから選ぶポリエーテルセグメントを含む請求項5に記載の医療器具。
【請求項9】
前記ポリエーテルアミド共重合体分子のそれぞれが、複数の均一なポリアミドセグメントを含む請求項5に記載の医療器具。
【請求項10】
前記ポリマー領域内のポリエーテルアミド共重合体分子の少なくとも25重量%がそろいのポリアミドセグメントを有する請求項5に記載の医療器具。
【請求項11】
前記ポリエーテルアミド共重合体分子のそれぞれが、均一な芳香族ポリエステルアミドセグメントを含む請求項5に記載の医療器具。
【請求項12】
前記ポリエーテルアミド共重合体分子のそれぞれが、均一なポリアミノ酸セグメントを含む請求項5に記載の医療器具。
【請求項13】
均一な前記ポリアミノ酸セグメントが芳香族基を含む請求項5に記載の医療器具。
【請求項14】
均一な前記ポリアミノ酸セグメントが複数の芳香族基を含む請求項5に記載の医療器具。
【請求項15】
前記ポリエーテルアミド共重合体分子のそれぞれが、均一なポリアミノ酸デンドリマーセグメントを含む請求項5に記載の医療器具。
【請求項16】
前記共重合体分子のそれぞれが生分解性エステル結合を含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項17】
前記ポリエーテルアミド共重合体分子のそれぞれが、デンドリマーセグメントを含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項18】
前記共重合体分子がミセル形成分子である請求項1に記載の医療器具。
【請求項19】
複数の異なる治療薬を含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項20】
前記治療薬を前記ポリマー領域下に配置する請求項1に記載の医療器具。
【請求項21】
前記治療薬を前記ポリマー領域内に配置する請求項1に記載の医療器具。
【請求項22】
前記ポリマー領域が前記共重合体分子に共有結合した前記治療薬を含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項23】
前記治療薬が生分解性結合により前記共重合体分子と共有結合する請求項22に記載の医療器具。
【請求項24】
前記共重合体分子がポリアルキレンオキシドセグメントと均一なポリアミノ酸セグメントを含むブロック共重合体である請求項22に記載の医療器具。
【請求項25】
前記ポリマー領域が更に前記共重合体以外に追加ポリマーを含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項26】
前記治療薬を前記追加ポリマーに共有結合する請求項1に記載の医療器具。
【請求項27】
前記治療薬を生分解性結合により前記追加ポリマーと共有結合する請求項26に記載の医療器具。
【請求項28】
前記追加ポリマーがポリエーテルセグメントを含む請求項26に記載の医療器具。
【請求項29】
前記追加ポリマーがポリアミドセグメントを含む請求項26に記載の医療器具。
【請求項30】
前記追加ポリマーが前記均一なポリアミドセグメントと一致するポリアミドセグメントを含む請求項26に記載の医療器具。
【請求項31】
前記医療器具がガイドワイヤー、バルーン、大静脈フィルター、カテーテル、ステント、ステントグラフト、脈管グラフト、脳動脈瘤フィルターコイル、心筋梗塞プラグ、心臓弁、脈管弁及び組織工学足場から選ぶ請求項1に記載の医療器具。
【請求項32】
前記器具が複数のポリマー領域を含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項33】
前記支持基板がポリエーテル、ポリアミド、ポリ尿素、ポリエーテル尿素及びポリエーテルアミドから選ぶポリマーを含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項34】
前記支持基板がポリエチレンオキシドセグメント又はポリテトラメチレンオキシドセグメントとポリアミド6セグメント又はポリアミド12セグメントを含むブロック共重合体を含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項35】
前記ポリマー領域がポリエーテル尿素分子を含み、それぞれがポリエーテルソフトセグメントと均一なポリ尿素ハードセグメントを含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項36】
前記ポリエーテル尿素共重合体分子のそれぞれが、複数のポリエーテルセグメントを含む請求項35に記載の医療器具。
【請求項37】
前記ポリエーテル尿素共重合体分子のそれぞれが、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンオキシド誘導体、及び上述の物の組み合わせから選ぶポリエーテルセグメントを含む請求項35に記載の医療器具。
【請求項38】
前記ポリエーテル尿素共重合体分子のそれぞれが、複数の均一なポリ尿素セグメントを含む請求項35に記載の医療器具。
【請求項39】
前記ポリマー領域内のポリエーテル尿素共重合体分子の少なくとも25重量%が、揃ったポリ尿素セグメントを有する請求項35に記載の医療器具。
【請求項40】
前記ポリマー領域が共有結合した金属要素又は半金属要素を含むポリマー分子を含む請求項1に記載の医療器具。
【請求項41】
前記金属要素又は半金属要素がポリエーテル鎖を含むポリマー分子に共有結合する請求項40に記載の医療器具。
【請求項42】
前記ポリエーテル鎖が-O-(CH2)2-、-O-(CH2)3-、-O-(CH2)2(CH3)-、-O-(CH2)4-及び二つ以上の同一物の組み合わせから選ぶ複数の単位を含む請求項41に記載の医療器具。
【請求項43】
前記金属要素又は半金属要素がポリエーテル鎖とポリアミド鎖を含むポリマー分子と共有結合する請求項40に記載の医療器具。
【請求項44】
前記金属要素又は半金属要素がポリエーテル鎖とポリ尿素鎖を含むポリマー分子と共有結合する請求項40に記載の医療器具。
【請求項45】
前記金属要素又は半金属要素がソフトセグメントと均一なハードセグメントを含むポリマー分子と共有結合する請求項40に記載の医療器具。
【請求項46】
前記金属要素又は半金属要素がチタン、ジルコニウム、ケイ素、アルミニウム、タンタル、亜鉛、マグネシウム、鉄及びイリジウムから選ぶ請求項40に記載の医療器具。
【請求項47】
前記金属要素又は半金属要素が原子配列M-Cx-N-C-O-Cを含む結合により共有結合し、ここでCは1乃至8個の炭素原子を含む炭素の配列であり、Mはケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、タンタル、亜鉛、マグネシウム、鉄及びイリジウムから選ぶ請求項40に記載の医療器具。
【請求項48】
共有結合した前記金属要素又は半金属要素が、ゾルーゲル由来のセラミック網目の一部を形成する請求項40に記載の医療器具。
【請求項49】
前記基板と前記ポリマー領域間のハイブリッド膜を含み、前記ハイブリッド膜がポリマー相とセラミック相を含む請求項1に記載の医療器具。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−525125(P2009−525125A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553251(P2008−553251)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/001296
【国際公開番号】WO2007/089435
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(507017004)ボストン サイエンティフィック リミティッド (24)
【Fターム(参考)】