説明

ソレノイドコイル

【課題】 従来よりもバルブボディからの取り外しが非常に容易に行えるソレノイドコイルの提供。
【解決手段】 電磁弁のバルブボディに装着された状態にて、磁気吸引力で駆動される可動鉄心によりバルブボディ内に配置されたスプール弁体を軸方向に摺動させる電磁石用のモールド形ソレノイドコイルにおいて、前記バルブボディの装着部位端面に当接する前面に、バルブボディ装着状態にて前記端面との間に間隙空間を形成する切欠き部が設けられ、該切欠き部が外部からの工具の挿入を許容する開口部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電磁開閉弁、電磁方向切換弁、比例電磁流量制御弁、比例電磁圧力制御弁などの各種電磁弁におけるスプール弁の駆動に用いられるプラグイン式のソレノイドコイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なスプール形式の電磁弁は、金属製バルブボディの内部に摺動可能に配置されたスプール弁体をバルブボディ端部に取り付けられた電磁石装置の可動鉄心によりプッシュピンを介して軸方向に移動させる構造を備えている。
【0003】
電磁石装置は、概略筒状のモールド形ソレノイドコイルと、ソレノイドコイルの軸心空孔に挿入されたスリーブ状の鉄心ユニットとを備え、バルブボディ上面に固定された電装端子ボックスからソレノイドコイルに通電することにより鉄心ユニット内部で可動鉄心が固定鉄心に磁気吸引され、この磁気吸引力がプッシュピンを介してスプール弁体に機械的に伝達される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
プラグイン式のソレノイドコイルでは、モールド形ソレノイドコイルの前面、即ちバルブボディに向き合う側の面の上部にモールド内部の電磁コイルに結線された端子プラグが突設されており、この端子プラグが電磁弁の組立時にバルブボディ上面に固定された電装端子ボックスの対応する端子ジャックに挿入されて電気的な接続が果たされるようになっている。
【0005】
この場合、モールド形ソレノイドコイルは、バルブボディに螺合された鉄心ユニットの尾端にエンドナットを螺合して占め込むことにより固定され、この締め込みにより端子プラグもジャックに適切に挿入された状態に維持されるようになっている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−83465
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記のようなプラグイン式のソレノイドコイルを備えた電磁弁においては、何らかの理由でコイルの組み換えや電磁弁の分解が必要になった場合、エンドナットをはずしてモールド形ソレノイドコイルを電装端子ボックス及びバルブボディから取り外さなければならないが、鉄心ユニットとバルブボディ及びソレノイドコイルとの間に介装されているシール用のOリングが締め込みにより圧縮された状態となっており、このためモールド形ソレノイドコイルの取り外しが困難となることが多い。
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、従来よりもバルブボディからの取り外しが非常に容易に行えるソレノイドコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係るソレノイドコイルは、電磁弁のバルブボディに装着された状態にて、磁気吸引力で駆動される可動鉄心によりバルブボディ内に配置されたスプール弁体を軸方向に摺動させる電磁石用のモールド形ソレノイドコイルであって、前記バルブボディの装着部位端面に当接する前面に、バルブボディ装着状態にて前記端面との間に間隙空間を形成する切欠き部が設けられ、該切欠き部が外部からの工具の挿入を許容する開口部を備えているものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明に係るソレノイドコイルは、請求項1に記載のソレノイドコイルにおいて、前記可動鉄心を内部に備えた別体のスリーブ状鉄心ユニットを着脱可能に挿入するための軸心空孔を有し、該軸心空孔に挿入状態の鉄心ユニットの先端部分を前記バルブボディに螺合した状態でその鉄心ユニットの尾端にエンドナットを螺合して締め込むことによりバルブボディに固定されるものである。
ものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のソレノイドコイルにおいては、バルブボディの装着部位端面に当接する前面に切欠き部が設けられており、この切欠き部によって、バルブボディ装着状態にて端面との間に間隙空間が形成され、この間隙空間の開口部が外部からの工具の挿入を許容するものであるため、電磁弁の分解を行う必要が生じてソレノイドコイルをバルブボディから取り外す際に、ソレノイドコイルとバルブボディとの間に介装されていたシール用Oリングが圧縮状態で締め付け固定されていた場合など、ナット等の固定部材を緩めても両部材同士が密着したままで離れない状態でも、前記間隙空間の開口部に工具を挿入して両部材同士を容易に引き剥がすことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、電磁石用のモールド形ソレノイドコイルにおいて、バルブボディの装着部位端面に当接する前面に、バルブボディ装着状態にて前記端面との間に間隙空間を形成する切欠き部が設けられ、該切欠き部が外部からの工具の挿入を許容する開口部を備えているものである。
【0013】
従って、バルブボデイにエンドナット等で固く締め付け装着されていたソレノイドコイルを何らかの理由で取り外す必要が生じた際に、両部材間に圧縮状態で介装されていたシール用Oリングによる密着などによって、ナットを緩めてもソレノイドコイルがバルブボディから離れないうような場合でも、例えばマイナスドライバの先端など、前記間隙空間に入れられる工具を開口部から挿入して他端部側を梃子のように振れば、両部材同士を互いに引き剥がすことができ、分解作業を容易に行うことができる。
【0014】
このような切欠き部は、ソレノイドコイル前面に少なくとも一つ設けておけば良いが、バルブボディの左右どちらの側からも工具が挿入しやすいように、ソレノイドの左右両側面にそれぞれ開口部が露呈するように一対の切欠き部を設ける構成がより好ましい。
【0015】
ソレノイドコイルの構成としては、同じモールド内に固定鉄心、可動鉄心等を含むものに対して、別体の鉄心ユニットと互いに独立したものとし、鉄心ユニットを着脱可能に装着できる構成とすれば、同一ソレノイドコイルで各種電磁弁の構成に応じた鉄心ユニットを選択して対応することができる。
【0016】
この場合、ソレノイドコイルに別体のスリーブ状鉄心ユニットを着脱可能に挿入するための軸心空孔を設け、該軸心空孔に挿入状態の鉄心ユニットの先端部分をバルブボディに螺合した状態でその鉄心ユニットの尾端にエンドナットを螺合して締め込むことによりバルブボディに固定される構成が簡便である。
【0017】
なお、本発明のソレノイドコイルの構成は、直流ソレノイド、交流ソレノイドのいずれの場合も有効であることは言うまでもない。
【実施例】
【0018】
本発明の一実施例として、別体のスリーブ状鉄心ユニットを挿入するための軸心空孔を備えた略筒形状のモールド形交流ソレノイドコイルを図1に鉄心ユニット挿入状態で示す。図1(a)は本実施例のよるソレノイドコイルの概略正面図、(b)は側面図、(c)は上方より見た平面図、(d)は横断面図である。
【0019】
本ソレノイドコイル1は、マグネットワイヤ4が巻回されたコイルボビン3が巻鉄心5を介してモールド樹脂6で筒形状に封止されて中央に軸心空孔7が設けられた本体部2と、バルブボディ(不図示)に向き合う前面の上部に設けられ、組立時にバルブボディ上面に固定された電装端子ボックス(不図示)の対応する端子ジャックに挿入されて電気的な接続を果たすための端子プラグ9が設けられた上突部8とから構成されたものである。
【0020】
このソレノイドコイル1の本体部2の前面には、軸心空孔7の外周同心状に、バルブボディの装着端面との間に介装されて両部材間をシールするためのOリング12が嵌め込まれるリング溝11が形成されている。
【0021】
このソレノイドコイル1は、前記端子プラグ9を端子ジャックに差し込んだ状態で軸心空孔7に挿入された状態の鉄心ユニット20の先端部をバルブボディ端部に螺合すると共に鉄心ユニット20の尾端にエンドナット30を螺合して締め込むことによりバルブボディに固定されるものである。
【0022】
この電気的接続状態でバルブボディに装着されたソレノイドコイル1は、端子プラグ9を介して電装端子ボックスから通電されることにより、鉄心ユニット20の内部で可動鉄心22が固定鉄心21に磁気吸引され、その駆動がプッシュピン23を介してバルブボディ内部に摺動可能に配置されたスプール弁体に機械的に伝達され、スプール弁の摺動によって電磁弁のポートの切換が行われる。
【0023】
また、本実施例のソレノイドコイル1は、上突部8の左右両側に一対の切欠き部10が設けられている。この切欠き部10は、ソレノイドコイル1がバルブボディに装着された状態において、外部にその開口部を露呈するようにバルブボディの装着端面との間に間隙空間を形成するものである。
【0024】
このようなソレノイドコイル1では、例えば、図2に示すように切欠き部10によって形成される間隙空間内へ開口部からマイナスドライバなどの先細り工具を挿入することができるため、電磁弁分解の際にエンドナット30を緩めてもソレノイドコイル1がバルブボディに密着したままで離れない状態でも、開口部に工具先端を差し込んで梃子のように振れば両部材同士を容易に引き剥がすことができる。
【0025】
以上の実施例においては、略筒形状のソレノイドコイル本体部に別体の鉄心ユニットが着脱可能に取り付けられる場合を例に説明したが、これに限らず、例えば鉄心部がソレノイドコイル本体部と一体に設けられた構成であっても、本発明の切欠き部を設ければ、同様にソレノイドコイルを容易にバルブボディから容易に取り外すことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施例によるモールド形ソレノイドコイルの概略構成図であり、(a)は本ソレノイドコイルの正面図、(b)は側面図、(c)は上方より見た平面図、(d)は横断面図である
【図2】本実施例によるソレノイドコイルを電磁切換弁のバルブボディから取り外す際の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1:ソレノイドコイル
2:本体部
3:コイルボビン
4:マグネットワイヤ
5:巻鉄心
6:モールド樹脂
7:軸心空孔
8:上突部
9:端子プラグ
10:切欠き部
11:リング溝
12,13:Oリング
20:鉄心ユニット
21:固定鉄心
22:可動鉄心
23:プッシュピン
30:エンドナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁のバルブボディに装着された状態にて、磁気吸引力で駆動される可動鉄心によりバルブボディ内に配置されたスプール弁体を軸方向に摺動させる電磁石用のモールド形ソレノイドコイルであって、
前記バルブボディの装着部位端面に当接する前面に、バルブボディ装着状態にて前記端面との間に間隙空間を形成する切欠き部が設けられ、該切欠き部が外部からの工具の挿入を許容する開口部を備えていることを特徴とするソレノイドコイル。
【請求項2】
前記可動鉄心を内部に備えた別体のスリーブ状鉄心ユニットを着脱可能に挿入するための軸心空孔を有し、該軸心空孔に挿入状態の鉄心ユニットの先端部分を前記バルブボディに螺合した状態でその鉄心ユニットの尾端にエンドナットを螺合して締め込むことによりバルブボディに固定されることを特徴とする請求項1に記載のソレノイドコイル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−83947(P2006−83947A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−269419(P2004−269419)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000246251)油研工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】