説明

ソレノイド駆動装置

【課題】駆動時に発生する熱を抑制することができるソレノイド駆動装置を提供する。
【解決手段】ソレノイド駆動装置100において、第1駆動ドライバ12は、第1ソレノイド40に駆動電流を供給する。第2駆動ドライバ22は、第1駆動ドライバ12とは別の系統から第1ソレノイド40に駆動電流を供給する。第1制御部30は、第1駆動ドライバ12および第2駆動ドライバ22を制御する。第1制御部30は、第1ソレノイド40を駆動する際、第1駆動ドライバ12および第2駆動ドライバ22を切り替えてどちらか一方の駆動ドライバから駆動電流を供給させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソレノイド駆動装置、特に駆動時に発生する熱を抑制するソレノイド駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキ制御は車両に搭載されたブレーキシステムの液圧アクチュエータを制御することにより行う。液圧アクチュエータは、ホイールシリンダへ流れ込むブレーキフルードの流入出を制御する電磁操作式の電磁弁を備える。この電磁弁にはソレノイドが設けられ、ソレノイドは駆動ICに搭載された駆動ドライバから駆動電流の供給をうけ、駆動する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ブレーキバイワイヤ方式のブレーキ制御装置では、制動力を制御する場合は常に電磁弁の開閉制御が行われる。その結果、電磁弁のソレノイドを制御する電子部品、特に駆動ICにおける発熱量が増大してしまう傾向がある。また、一つのソレノイドを複数の駆動ICにより駆動する場合がある。この場合においても複数の駆動ICが通常の駆動ICと同じように駆動していると、駆動IC全体の発熱量が大きくなってしまう。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、駆動時に発生する熱を抑制することができるソレノイド駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のソレノイド駆動装置は、ソレノイドに駆動電流を供給する第1駆動回路と、第1駆動回路とは別の系統からソレノイドに駆動電流を供給する第2駆動回路と、第1駆動回路および第2駆動回路を制御する制御部と、を備える。制御部は、ソレノイドを駆動する際、第1駆動回路および第2駆動回路を切り替えてどちらか一方の駆動回路から駆動電流を供給させる。この態様によると、駆動時に発生する熱を抑制することができることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明のソレノイド駆動装置によれば、駆動時に発生する熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施形態に係るソレノイド駆動装置とソレノイドを示す構成概念図である。
【図2】比較技術におけるソレノイドおよび駆動ドライバの通電状態を説明する図である。
【図3】実施形態に係るソレノイド駆動装置における通電方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、実施形態に係るソレノイド駆動装置とソレノイドを示す構成概念図である。ソレノイド駆動装置100は、第1ソレノイド40および第2ソレノイド50(これらを区別しない場合「ソレノイド」という)を駆動する。ソレノイド駆動装置100は、ソレノイドの駆動を制御する第1制御部30および第2制御部32(これらを区別しない場合「制御部」という)と、ソレノイドに駆動電流を供給する第1駆動IC10および第2駆動IC20(これらを区別しない場合「駆動IC」という)とを備える。
【0009】
第1駆動IC10には第1駆動ドライバ12および第3駆動ドライバ14が設けられ、第2駆動IC20には第2駆動ドライバ22および第4駆動ドライバ24が設けられる。実施形態では、第1ソレノイド40は第1駆動ドライバ12および第2駆動ドライバ22から駆動電流の供給をうけ、第2ソレノイド50は第3駆動ドライバ14および第4駆動ドライバ24から駆動電流の供給をうける。各駆動ドライバはグランド34に接地されている。第1駆動IC10と第2駆動IC20はソレノイドにおいてそれぞれ別系統の電流供給源となっている。
【0010】
ソレノイドは、たとえば車両用の電子制御式ブレーキシステム(ECB)の液圧アクチュエータユニットに配置される電磁弁に設けられる。液圧アクチュエータユニットは、動力液圧源またはマスタシリンダユニットから供給されたブレーキフルードの液圧を電磁弁により適宜調整してディスクブレーキユニットに送出する。これにより、液圧制動による各車輪に対する制動力が調整される。液圧アクチュエータユニットには複数の電磁弁が設けられ、複数の電磁弁のそれぞれにソレノイドが設けられる。
【0011】
電磁弁は、車両に設けられる第1制御部30および第2制御部32から第1駆動IC10および第2駆動IC20を介して所定の駆動電流が供給されると、開弁または閉弁し、ブレーキフルードを流通または遮断する。たとえば、常開型の電磁弁では、ソレノイドのコイルに所定の駆動電流が供給されると、ソレノイドに連結する弁子がソレノイドとともに弁座に向かって移動し、弁子が弁座に当接すると、弁座に設けられた孔を塞ぎ、ブレーキフルードの流通を遮断する。駆動ICは駆動に伴い発熱する。
【0012】
ソレノイドは複数の駆動ドライバから駆動電流の供給を受ける。これは、一方の駆動ドライバがソレノイドに駆動電流を供給をすることができなくなったとしても、他方の駆動ドライバが駆動電流を供給できるよう、フェイルセーフの観点から設けられている。そのため駆動ドライバの発熱は増すことになる。さらに、駆動ICには複数の駆動ドライバが設けられており、駆動ICでの発熱も増すこととなる。そこで、ソレノイド駆動装置100は、駆動ドライバの発熱を抑えるための制御を行う。
【0013】
図2は、比較技術におけるソレノイドおよび駆動ドライバの通電状態を説明する図である。第1ソレノイド40および第2ソレノイド50の通電状態は100%である。100%の通電状態とは、制御部から指令された通電量に対して十分な通電量が確保されている状態をいい、制御部の所望の駆動が発揮されている状態をいう。
【0014】
比較技術では、第1ソレノイド40が100%の通電状態であるとき、第1駆動ドライバ12および第2駆動ドライバ22の両方からそれと同等の100%の通電状態で駆動電流が供給されている。また第2ソレノイド50が100%の通電状態であるとき、第3駆動ドライバ14および第4駆動ドライバ24の両方からそれと同等の100%の通電状態で駆動電流が供給されている。
【0015】
第1ソレノイド40を駆動している際、何らかの理由で第1駆動ドライバ12から駆動電流を供給することができなくなった場合、第2駆動ドライバ22からそのまま駆動電流を供給することで、第1ソレノイド40が停止することなく駆動することができる。この態様によると、ソレノイドを駆動している際、一つのソレノイドを一つの駆動ドライバで駆動する場合と比べて、発熱量が2倍になってしまう。そこで実施形態のソレノイド駆動装置100では、制御部が駆動ドライバの通電量を抑えるように制御する。
【0016】
図3は、実施形態に係るソレノイド駆動装置100における通電方法を説明する図である。通常時において第1ソレノイド40が駆動される際、最初の30%は第1駆動ドライバ12により駆動電流が供給されるが、途中で駆動供給系統が切り替えられ、少なくとも残りの70%が第2駆動ドライバ22により駆動電流が供給される。この切り替えは、所定の切替時間の間に実行され、駆動電流を両方の駆動回路から供給する。これにより、電流の立上がりの遅れなどによってソレノイドを一時的に停止することなく、駆動回路を切り替えることができる。
【0017】
一方、第1駆動ドライバ12が何らかの理由で通電できない状態となった場合には、第2駆動ドライバ22のみが第1ソレノイド40への供給を行う。これにより第1ソレノイド40の通電状態を100%の状態に維持することができる。なお制御部は、駆動ドライバのソレノイドへの通電状態を監視して不具合が生じたかどうかを判定する機能を有してよい。これにより、たとえば第1制御部30は第1駆動ドライバ12に不具合があると判定すると、第2駆動ドライバ22のみから第1ソレノイド40への通電を行う方法に変更することができる。
【0018】
通常状態における第1ソレノイド40の駆動について具体的に説明する。まず第1制御部30は、第1駆動ドライバ12に駆動電流を供給するよう指令信号を送出し、第1駆動ドライバ12はその指令信号に応じて第1ソレノイド40に駆動電流を供給する。
【0019】
そして、第1制御部3による駆動開始から所定の第1時間t1が経過すると、第2制御部32は第2駆動ドライバ22に駆動電流を供給するよう指令信号を送出する。これに応じて第2駆動ドライバ22はその指令信号に応じて第1ソレノイド40に駆動電流を供給する。このとき、まだ第2駆動ドライバ22は通電を停止している。
【0020】
所定の第1時間t1から所定の切替時間t2が経過すると、第1制御部30は第1駆動ドライバ12に駆動電流の供給を停止するよう制御する。所定の切替時間t2での通電が図3に示すα%の通電に相当する。第1駆動ドライバ12からの通電が停止されても第1ソレノイド40は、第2駆動ドライバ22により駆動を一時的に停止することなく、駆動することができる。このように、第1制御部30および第2制御部32は、第1ソレノイド40を駆動する際、第1駆動ドライバ12および第2駆動ドライバ22を切り替えてどちらか一方の駆動ドライバから駆動電流を供給させる。
【0021】
第1駆動ドライバ12および第2駆動ドライバ22は、制御部による切り替え制御によって通電の有無を切り替える。すなわち、一方の駆動ドライバがソレノイドに通電している場合は、他方の駆動ドライバはそのソレノイドへの通電を停止しており、制御部による駆動ドライバの切り替えが完了すると、一方の駆動ドライバは通電を停止し、他方の駆動ドライバはソレノイドへの通電を行う。このように制御することで、2系統の駆動ICからの通電を確保しつつ、通電による発熱量を低減することができる。
【0022】
実施形態におけるソレノイドはECBに配置される電磁弁に設けられる態様を説明したが、それ以外のソレノイドにもソレノイド駆動装置100を用いることは当然に可能である。
【0023】
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0024】
10 第1駆動IC、 12 第1駆動ドライバ、 14 第3駆動ドライバ、 20 第2駆動IC、 22 第2駆動ドライバ、 24 第4駆動ドライバ、 30 第1制御部、 32 第2制御部、 34 グランド、 40 第1ソレノイド、 50 第2ソレノイド、 100 ソレノイド駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイドに駆動電流を供給する第1駆動回路と、
前記第1駆動回路とは別の系統から前記ソレノイドに駆動電流を供給する第2駆動回路と、
前記第1駆動回路および前記第2駆動回路を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記ソレノイドの駆動を維持する間、前記第1駆動回路および前記第2駆動回路を切り替えてどちらか一方の駆動回路から駆動電流が供給されるようにすることを特徴とするソレノイド駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−94777(P2012−94777A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242667(P2010−242667)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】