説明

ゾル状芳香剤組成物

【課題】 本発明の目的は、液状形態の芳香剤の利点(即ち、安定な発香性を示す点)と、ゲル状形態の芳香剤の利点(即ち、容器からこぼれにくい点)とを併せ持つ芳香剤組成物を提供することである。
【解決手段】 使用によって含有成分が揮発して芳香剤組成物が減量するのに伴って、ゾル状からゲル状に形態が変化する、従来にない新たなタイプのゾル状芳香剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゾル状芳香剤組成物に関する。より詳細には、使用により経時的に、ゾル状からゲル状に形態が変化し、持続的に安定な芳香効果を奏することができるゾル状芳香剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、芳香剤として、液状形態とゲル状形態のものが知られている。従来のゲル状形態の芳香剤では、固体状であり、芳香剤が容器からこぼれ落ちることがないという利点があるが、使用に伴って、芳香剤の表面が固化した膜で覆われてしまい、使用時間の経過と共に発香性が低減するという欠点があった。一方、液状形態の芳香剤は、開口部が大きい容器に収容して使用すると、良好な発香性を安定で持続的に示すことができることが分かっている。しかしながら、液状形態の芳香剤は、流動性が高く、容器からこぼれ落ち易いため、開口部が小さく内容物がこぼれにくい構造の容器や、不織布等の揮散部材に芳香剤を含浸させて揮発できるように設計された容器に収容して使用されているのが現状である。このような容器に収容して、液状形態の芳香剤を使用すると、容器の開口部が小さいことにより芳香剤の発香速度が低くなったり、揮散部材に目詰まりが起こることにより芳香剤の発香性が不十分になるといった欠点があった。
【0003】
また、従来、液状形態の芳香剤は、使用によって含有成分が揮発しても、残存する芳香剤は液状形態が保たれているように処方されている(例えば、特許文献1参照)。一方、これまでに、含有成分の揮発により芳香剤自体が減量すると、液状形態からゲル状形態に変化するように設計された液状形態の芳香剤については一切知られていない。
【特許文献1】特公平3−34346号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、液状形態の芳香剤の利点(即ち、安定な発香性を示す点)と、ゲル状形態の芳香剤の利点(即ち、容器からこぼれにくい点)とを併せ持つ芳香剤組成物を提供することを目的とする。また、本発明の目的は、持続的で安定な発香性を示す芳香剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、使用によって経時的に芳香剤組成物が減量するのに伴ってゾル状からゲル状に形態が変化する、従来にない新たなタイプのゾル状芳香剤組成物を作製した。そして、上記ゾル状芳香剤組成物は、持続的に安定な発香性を示し得ることを見出した。更に、上記ゾル状芳香剤組成物は、ゾル状態で粘稠性を備えることが可能であり、容器からこぼれ落ち難いように処方することができるので、開口部が大きい容器に収容して使用できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0006】
即ち、本発明は、下記に掲げるゾル状芳香剤組成物を提供する。
項1. 芳香成分、ゲル化剤及び揮発性基剤を含有するゾル状芳香剤組成物であって、含有成分の揮発に伴ってゾル状態からゲル状態に変化することを特徴とする、ゾル状芳香剤組成物。
項2. 含有成分の揮発によってゾル状芳香剤組成物の総量の内50重量%が減量するまでに、保形性を有するゲル状態を呈することを特徴とする、項1に記載のゾル状芳香剤組成物。
項3. 前記保形性を有するゲル状態において、レオメータ測定値によるゲル強度が1〜100g(測定条件:検体保存温度25℃、感圧軸の針径10mmφ、針入速度30mm/min、針入長10mm)であることを特徴とする、項2に記載のゾル状芳香剤組成物。
項4. 粘度が100〜8000 mPa・sである、項1乃至3の何れかに記載のゾル状芳香剤組成物。
項5. ゲル化剤がιカラギーナンである、項1乃至4の何れかに記載のゾル状芳香剤組成物。
項6. ゲル化剤がゾル状芳香剤組成物の総量に対して0.1〜10重量%の割合で含有されている、項1乃至5の何れかに記載のゾル状芳香剤組成物。
【0007】
以下に、本発明を詳細に説明する。なお、本発明において、特に言及しない限り、ゾル状態、ゾル状、ゲル状態、又はゲル状とは、常温(25±1℃)における組成物の状態を示す。
【0008】
本発明の芳香剤組成物に含まれる芳香成分については、天然香料、天然香料から分離された単離香料、合成香料のいずれであってもよく、従来の芳香剤に使用されている公知の芳香成分を使用することができる。芳香成分として、具体的には、炭素数6〜12のアルデヒド、アニスアルデヒド、アセタールR、アセトフェノン、アセチルセドレン、アドキサール、アリルアミルグリコレート、アリルシクロヘキサンプロピオネート、アルファダマスコン、アンブレットリッド、アンブロキサン、アミルシンナミックアルデヒド、アミルシンナミックアルデヒドジメチルアセタール、アミルバレリアネート、アミルサリシレート、イソアミルアセテート、アセチルユゲノール、イソアミルサリシレート、インドール、αイオノン、βイオノン、αメチルイオノン、βメチルイオノン、γメチルイオノン、インデン、エチルワニリン、オウランチオール、オークモスNo.1、オリボン、オキシフェニロン、カリオフィレン、カシュメラン、カルボン、ガラキソリッド、キャロン、クマリン、パラクレジールメチルエーテル、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ゲラニルニトリル、テトラヒドロゲラニオール、テトラヒドロゲラニールアセテート、コアボン、サンダロア、サンデラ、サンタレックス、サンタリノール、メチルサリシレート、シンナミックアルコール、シンナミックアルデヒド、シスジャスモン、シトラール、シトラールジメチルアセタール、シトラサール、シトロネラール、シトロネロール、シトロネリルアセテート、シトロネリルフォーメート、シトロネリルニトリル、シクラセット、シクラメンアルデヒド、シクラプロップ、シンナミルアセテート、ジヒドロジャスモン、ジメトール、イソシクロシトラール、ジャスマール、ジャスモラクトン、ジャスモフィラン、スチラリールアセテート、スチラリールプロピオネート、セドロアンバー、セドリルアセテート、セドロール、セレストリッド、βダマスコン、αターピネオール、γターピネオール、ターピニルアセテート、チモール、デルタダマスコン、デルタC6〜C13ラクトン、トナリッド、トラセオライド、トリプラール、イソノニルアセテート、ネロール、ネリールアセテート、ネオベルガメート、ノピールアセテート、ノピールアルコール、バクダノール、ヒヤシンスジメチルアセタール、ヒドロトロピックアルコール、ヒドロキシシトロネラール、αピネン、ブチルブチレート、パラターシャリーブチルシクロヘキサノール、パラターシャリーブチルシクロヘキシルアセテート、オルトターシャリーブチルシクロヘキサノール、ジフェニルオキサイド、フルイテート、フェンチールアルコール、フェニルエチルフェニルアセテート、イソブチルキノリン、フェニルエチルアルコール、フェニルエチルアセテート、フェニルアセトアルデハイドジメチルアセタール、ベンジルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルサリシレート、ベルガミールアセテート、ベンズアルデヒド、ベンジルフォーメート、ジメチルベンジルカービノール、ヘディオン、ヘリオナール、ヘリオトロピン、シス−3−ヘキセノール、シス−3−ヘキセニールアセテート、シス−3−ヘキセニールサリシレート、ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘキシルサリシレート、ペンタリッド、ベルドックス、オルトボルニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルネオール、エンド−ボルネオール、マンザネート、マイヨール、ミューゲアルデヒド、ミラックアルデヒド、ジヒドロミルセノール、ジミルセトール、ムゴール、ムスクTM−II、ムスク781、ムスクC14、ムスクT、ムスクケトン、ムスクチベチン、ムスクモスケン、メンサニールアセテート、メンソネート、メチルアンスラニレート、メチルユゲノール、メントール、メチルフェニルアセテート、ユゲノール、イソユゲノール、メチルイソユゲノール、γC6〜13ラクトン、ライムオキサイド、メチルラベンダーケトン、ジヒドロリナロール、リグストラール、リリアール、リモネン、リナロール、リナロールオキサイド、テトラヒドロリナロール、テトラヒドロリナリールアセテート、リナリルアセテート、リラール、ルバフラン、ローズフェノン、ローズオキサイド、ワニリン、ベンゾイン、ペルーバルサム、トルーバルサム、チュベローズ油、ムスクチンキ、カストリウムチンキ、シベットチンキ、アンバーグリスチンキ、ペパーミント油、ペリラ油、プチグレン油、パイン油、ローズ油、ローズマリー油、しょう脳油、芳油、クラリーセージ油、サンダルウッド油、スペアミント油、スパイクラベンダー油、スターアニス油、ラバンジン油、ラベンダー油、レモン油、レモングラス油、ライム油、ネロリ油、オークモス油、オコチア油、パチュリ油、タイム油、トンカ豆チンキ、テレピン油、ワニラ豆チンキ、バジル油、ナツメグ油、シトロネラ油、クローブ油、ボアドローズ油、カナンガ油、カルダモン油、カシア油、シダーウッド油、オレンジ油、マンダリン油、タンジェリン油、アニス油、ベイ油、コリアンダー油、エレミ油、ユーカリ油、フェンネル油、ガルバナム油、ゼラニウム油、ヒバ油、桧油、ジャスミン油、ベチバー油、ベルガモット油、イランイラン油、グレープフルーツ油、ゆず油等を挙げることができる。これらの芳香成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて調香して使用することもできる。
【0009】
本発明の芳香剤組成物において、芳香成分の配合割合については、使用する芳香成分の種類、該芳香剤組成物の発香性の強度等に応じて適宜設定されるが、一例として、該芳香剤組成物の総量に対して、芳香成分が総量で0.1〜15重量%、好ましくは0.2〜10重量%、更に好ましくは0.3〜5重量%が挙げられる。
【0010】
本発明の芳香剤組成物は、更にゲル化剤を含有する。本発明において、ゲル化剤は、組成物中の濃度に応じて、組成物をゾル状態(液体形態)にしたり、ゲル状態にしたりすることが可能なものが採用される。
【0011】
本発明の芳香剤組成物において、ゲル化剤は、該芳香剤組成物中の含有成分の揮発に伴って、該芳香剤組成物の形態をゾル状態からゲル状態に変化させるために配合される。即ち、本発明の芳香剤組成物において、ゲル化剤の配合割合は、ゾル状態が保持される程度であり、且つ芳香剤組成物中の含有成分が揮発して該芳香剤組成物が減量すると、該芳香剤組成物がゲル状態に変化する程度に設定される。
【0012】
より具体的には、以下のような形態挙動を示すように、ゲル化剤を配合しておくことが望ましい。即ち、本発明の芳香剤組成物の含有成分が揮発して、芳香剤組成物の総量の内50重量%が減量するまでに(即ち、芳香剤組成物100重量部の内、合計50重量部の含有成分が揮発するまでに)、保形性を有するゲル状態を呈する。ここで、保形性を有するゲル状態とは、一定の形状が保持される程度にゲル化されている状態をいい、具体的には、ゲル強度が1〜100g、好ましくは2〜80g、更に好ましくは3〜50gである状態が例示される。本発明において、ゲル強度は、レオメーター(SUN RHEO METER CR-500DX;株式会社サン科学製)により、検体温度25℃、感圧軸(アダプター)の針径10mmφ、針入速度30mm/minにおける針入度試験において、感圧軸を深さ10mmまで押し込む際に感圧軸にかかる荷重(g)である。
【0013】
上記のように、芳香剤組成物の減量に伴ってゾル状態からゲル状態に変化する挙動を示すことにより、該芳香剤組成物の発香性(芳香効果)が安定で持続的に奏されると共に、芳香剤組成物の残量を量ではなく、形態を指標として判断することが可能になる。
【0014】
本発明に使用されるゲル化剤としては、芳香剤組成物に、上記の形態挙動を付与できるものであれば特に制限されない。ゲル化剤の具体例としては、ιカラギーナン、κカラギーナン、λカラギーナン、ジェランガム、タマリンドガム、寒天、ペクチン等が例示される。これらのゲル化剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、ιカラギーナンは、濃度の変化によりゲル化する作用が大きく変動するため好適である。また、ιカラギーナンを配合すると、芳香剤組成物の減量に伴って、ひび割れ等の外観上の不具合がなく、1つの塊となった透明なゲルが形成されるという有利な効果も得られる。
【0015】
本発明の芳香剤組成物におけるゲル化剤の配合割合については、使用するゲル化剤の特性、他の配合成分の種類や量等を考慮して、上記の形態挙動を具備するように適宜設定される。一例として、芳香剤組成物の総量に対して、ゲル化剤が、通常0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜8重量%、更に好ましくは0.3〜7重量%となる割合が例示される。より具体的には、ゲル化剤としてιカラギーナンを使用する場合であれば、芳香剤組成物の総量に対して、ιカラギーナンが、例えば0.1〜6重量%、好ましくは0.2〜5重量%、更に好ましくは0.3〜4重量%となる割合が例示される。
【0016】
更に、本発明の芳香剤組成物は、揮発性基剤を含有する。揮発性基剤としては、室内等の環境で揮発する基剤成分である限り、特に制限されず、一般に、芳香剤組成物の基剤として配合されているものを広く使用することができる。揮発性基剤として、具体的には、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜3の低級アルコール;n-プロピルアルコール;イソプロピルアルコール等が例示される。これらの揮発性基剤は、1種を単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中で、好ましくは、水、炭素数1〜3の低級アルコール及びこれらの組み合わせである。揮発性基剤として、更に好ましくは、水と、20℃での蒸気圧が2.4〜6.0kPaの範囲にあるアルコールとの組み合わせが例示される。特に好ましくは水とエタノールの組み合わせである。例えば、水と炭素数1〜3の低級アルコールを組み合わせて使用する場合、両者の比率については特に制限されないが、例えば、水100重量部に対して、該低級アルコールが0.1〜50重量部、好ましくは1〜40重量部となる比率が例示される。
【0017】
また、本発明の芳香剤組成物において、揮発性基剤として、揮発速度が異なる2種以上の成分を使用し、それらの成分の混合比を適宜調整することにより、芳香剤組成物の揮発速度(減量速度)を制御することが可能になる。例えば、揮発性基剤として水と該低級アルコールを組み合わせて使用する場合、炭素数1〜3の低級アルコールは水に比べて揮発速度が高いため、水に対する該低級アルコールの配合比を高める程、ゾル状芳香剤組成物の揮発速度(減量速度)が速くなり、使用後速やかにゲル形態に変化させることができる。
【0018】
本発明の芳香剤組成物において、揮発性基剤の配合割合については、他の成分の配合割合等によって変動するが、一例として、該芳香剤組成物の総量に対して、揮発性基剤が総量で0.1〜99.5重量%、好ましくは1〜99重量%、更に好ましくは3〜95重量%となる割合が挙げられる。
【0019】
本発明の芳香剤組成物は、本発明の効果を妨げない範囲で、上記成分の他に、3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の芳香成分の溶解剤;非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤等の界面活性剤;脱塩型ベタイン化合物、変性有機酸化合物、トリエタノールアミン等の消臭剤;1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2n-オクチル-イソチアゾリン-3-オン等の防腐剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;顔料、染料等の色素;シリコーン等の他の成分を適当量含有してもよい。
【0020】
なお、乳酸カルシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等の架橋剤は、ゲル化剤のゲル化作用を強固にし、ゲル化剤を含む組成物でゾル状態を保持することが困難になることが多い。また、架橋剤が添加されて形成されたゲル状の芳香剤は、使用に伴って、芳香剤の表面が架橋剤の作用により固化する場合があり、発香性が低減することがある。それ故、良好なゾル状態を形成させ、持続的に良好な発香性を発現させるという観点から、本発明の芳香剤組成物には、ゲル化剤の不純物として不可避的に配合される場合等を除いて、架橋剤を配合しないことが望ましい。
【0021】
本発明のゾル状芳香剤組成物の粘度については、特に制限されない。但し、流動性を維持しつつ、容器からこぼれ難くして、開口部が大きい容器に収容しても好適に使用できるように粘稠性を備えさせるという観点から、該ゾル状芳香剤組成物の粘度は、例えば100〜8000 mPa・s、好ましくは200〜7000 mPa・s、更に好ましくは300〜6000 mPa・sであることが望ましい。当該粘度の測定条件は、次の通りである:B型回転粘度計(東機産業株式会社製、TOKI VISCOMETER RB-80L、No.2ローター)、回転数30rpm、25℃、500mLのビーカーに芳香剤組成物400mlを収容したものをサンプルとして測定。上記範囲の粘度を具備させるには、前述するゲル化剤の種類や配合割合、揮発性基剤の種類や配合割合等を適宜調整すればよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明の芳香剤組成物は、使用によって経時的に芳香剤組成物が減量するのに伴ってゾル状からゲル状に形態が変化する、従来にない新たなタイプのゾル状芳香剤組成物である。このような形態の変動性に基づいて、本発明の芳香剤組成物は、その残存量を形状を指標として判断できるという利点もある。
【0023】
また、本発明の芳香剤組成物は、含有成分の揮発によってゲル状に形態が変化し、従来のゲル状芳香剤のように架橋剤が必須ではない。それ故、本発明の芳香剤組成物は、従来のゲル状芳香剤のように含有成分の揮発に伴ってその表面が固化した膜に覆われることがなく、持続的に安定な発香性を示すように処方することもできる。
【0024】
更に、本発明の芳香剤組成物は、ゾル状態で粘稠性を備えることが可能であり、容器からこぼれ落ち難い性質を備え得るので、従来の液状洗浄剤では実用困難であった容器(即ち、開口部が大きい容器)に収容して、発香性を高めた状態で使用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、試験例及び実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
試験例1
表1に示す組成のゾル状芳香剤組成物(実施例1)、液状芳香剤組成物(比較例1)及びゲル状芳香剤組成物(比較例2)を調製した。これらの芳香剤組成物各100gを、上部が開口しているカップ状容器に収容して、室温で30日間静置した。各芳香剤組成物について、調製直後、室温静置15日後、及び室温静置30日後に、芳香効果について官能評価を行った。芳香効果の官能評価は、具体的には次のようにして実施した。即ち、容積1000Lのステンレス製のボックス内を無臭と感じるまで換気を行った後に、評価対象の芳香剤組成物をボックス内に置いて、ボックス内を室温(約25℃)に保った状態で、20分間放置した。次いで、ボックス正面の小窓に鼻を近づけて、香りを嗅知することにより、香りの評価を行った。香りの評価は、8人のパネラーにより、「香りの強さ」、「香りの嗜好性」及び「香りの総合評価」について、下記の基準に従って数値化することにより判定した。
<判定基準>
(A)香りの強さ
5:強い
4:やや強い
3:普通
2:やや弱い
1:弱い
(B)香りの嗜好性
2:良い
1:やや良い
0:普通
−1:やや悪い
−2:悪い
(C)香りの総合評価
2:良い
1:やや良い
0:普通
−1:やや悪い
−2:悪い
【0026】
【表1】

得られた結果を図1に示す。この結果から、実施例1の芳香剤組成物は、室温で30日間放置した後でも、香りの強さ、嗜好性、総合評価の全ての項目に置いて良好であり、比較例1の芳香剤組成物(液状)と同様に、持続的で安定な芳香効果が奏されることが確認された。これに対して、比較例2の芳香剤組成物(ゲル状)では、経時的に芳香効果が低減することが確認された。
【0027】
また、実施例1の芳香剤組成物は、次のような形態挙動を示した。即ち、実施例1の芳香剤組成物は、試験開始時(調製直後)に100gであったのが、室温静置15日後に50gに減量(即ち、50%減量)しており、この時点で透明で1つのゲル状の塊を形成していた。また、室温静置30日後には、更に10gにまで減量(即ち、90%減量)しており、この時点では1つの固形状の塊を形成していた。参考のために、図2に、調製直後の実施例1の芳香剤組成物を撮影した写真(図2のA)、室温静置15日後に実施例1の芳香剤組成物を撮影した写真(図2のB)及び室温静置30日後に実施例1の芳香剤組成物を撮影した写真(図2のC)を示す。
【0028】
試験例2
上記表1に示す実施例1のゾル状の芳香剤組成物100gを、上部が開口しているカップ容器(幅5cm、奥行き5cm、高さ5cm)に入れて、室温で放置した。カップ容器内の芳香剤組成物が50%減量した時点で、該芳香剤組成物は保形成を備えているゲル状態を呈していることが確認できた。調製直後のゾル状態を呈している芳香剤組成物と、50%減量した時点のゲル状態を呈している芳香剤組成物について、レオメータ測定値によるゲル強度(測定条件:検体温度25℃、感圧軸の針径10mmφ、針入速度30mm/min、針入長10mm、最大荷重2kg)を測定した。この結果、調製直後の実施例1の芳香剤組成物は、ゾル状態を呈していることからも分かるようにゲル強度は0gであった。一方、50%減量した時点において、ゲル状態を呈している芳香剤組成物は、レオメータ測定値によるゲル強度は4gであった。
【0029】
試験例3
表2に示す組成のゾル状芳香剤組成物を調製し、その粘度について測定を行った。粘度の測定条件は、次の通りである:B型回転粘度計(東機産業株式会社製、TOKI VISCOMETER RB-80L、No.2ローター)、回転数30rpm、25℃、500mLのビーカーに芳香剤組成物400mlを収容したものをサンプルとして測定。
【0030】
測定結果を表2に示す。この結果から、ゲル化剤とエタノールの濃度を適宜調整することにより、種々の粘稠性を示すゾル状態の芳香剤組成物が得られることが確認できた。
【0031】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】試験例1において、実施例1及び比較例1−2の芳香剤組成物について、調製直後、室温静置15日後、及び室温静置30日後において、芳香効果の官能評価を行った結果を示す図である。
【図2】試験例1において、実施例1の芳香剤組成物を室温で30日間静置した際の外観変化(調製直後、15日後、30日後)を観察した結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香成分、ゲル化剤及び揮発性基剤を含有するゾル状芳香剤組成物であって、含有成分の揮発に伴ってゾル状態からゲル状態に変化することを特徴とする、ゾル状芳香剤組成物。
【請求項2】
含有成分の揮発によってゾル状芳香剤組成物の総量の内50重量%が減量するまでに、保形性を有するゲル状態を呈することを特徴とする、請求項1に記載のゾル状芳香剤組成物。
【請求項3】
前記保形性を有するゲル状態において、レオメータ測定値によるゲル強度が1〜100g(測定条件:検体保存温度25℃、感圧軸の針径10mmφ、針入速度30mm/min、針入長10mm)であることを特徴とする、請求項2に記載のゾル状芳香剤組成物。
【請求項4】
粘度が100〜8000mPa・sである、請求項1乃至3の何れかに記載のゾル状芳香剤組成物。
【請求項5】
ゲル化剤がιカラギーナンである、請求項1乃至4の何れかに記載のゾル状芳香剤組成物。
【請求項6】
ゲル化剤がゾル状芳香剤組成物の総量に対して0.1〜10重量%の割合で含有されている、請求項1乃至5の何れかに記載のゾル状芳香剤組成物。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−97739(P2007−97739A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289461(P2005−289461)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】