説明

タイミング調整装置および光サンプリング装置

【課題】被測定光と当該被測定光をサンプリングするパルス光の時間精度を長時間連続して安定させることができる。
【解決手段】与えられる2つのパルス光の位相差を調整して出力するタイミング調整装置であって、2つのパルス光の少なくとも一方のパルス光を遅延させて、位相差を調整する光可変遅延部と、光可変遅延部により位相差が調整された2つのパルス光のそれぞれを電気信号に変換することにより、2つの調整用信号を生成する光電変換器と、2つの調整用信号の位相差を検出し、検出した位相差を予め定められた位相差に近づけるべく、光可変遅延部における遅延量を制御する位相比較部とを備えるタイミング調整装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイミング調整装置および光サンプリング装置に関する。本発明は、特に、与えられる2つのパルス光の位相差を調整して出力するタイミング調整装置および光サンプリング・オシロスコープ等による光パルス波形の測定に使用される光サンプリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光パルス波形の測定は、光通信において、受信端での光信号の品質を評価するために必要であるだけでなく、信号中継器や光ネットワークのノードにおける信号品質の監視にも応用することができる。ところで、光ファイバ通信の大容量化に伴い、160Gb/s以上のビットレートで信号光を送受信することのできる次世代の光ファイバ通信システムの実用化が進められている。このような大容量の通信システムを実現させるためには、上記のような高いビットレートの光信号のパルス波形を高精度に測定する装置が不可欠である。
【0003】
160Gb/s以上のビットレートの光パルス波形を測定する装置としては、被測定光とパルス光を合波して非線形媒質に入射させることで非線形光学効果を生じさせ、得られた強度相関信号光から測定する装置が知られている(例えば特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2006−194842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記装置による測定において、被測定光のパルス波形を高い時間分解能で測定するためには、よりパルス幅の狭いパルス光を入射させる必要がある。しかしながら、このようなパルス幅の狭いパルス光と被測定光によって得られる強度相関信号は、その信号強度が小さいのでS/N比が低くなり、結果として高感度での測定が難しかった。
【0005】
そこで、上記強度相関信号を上記パルス光と異なるパルス光で再度サンプリングすることにより、当該強度相関信号の信号強度を増幅することが考えられる。しかしながら、この場合、強度相関信号とパルス光とを高い時間精度で同期させて非線形媒質に入射させる必要があるが、当該時間精度を長時間連続して安定させることが難しかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の形態によれば、与えられる2つのパルス光の位相差を調整して出力するタイミング調整装置であって、2つのパルス光の少なくとも一方のパルス光を遅延させて、位相差を調整する光可変遅延部と、光可変遅延部により位相差が調整された2つのパルス光のそれぞれを電気信号に変換することにより、2つの調整用信号を生成する光電変換器と、2つの調整用信号の位相差を検出し、検出した位相差を予め定められた位相差に近づけるべく、光可変遅延部における遅延量を制御する位相比較部とを備えるタイミング調整装置が提供される。
【0007】
また、本発明の第2の形態によれば、被測定光をサンプリングする光サンプリング装置であって、被測定光のうち、与えられる第1パルス光と時間的な重なりを有する部分に応じた光を、第1出力光として出力する第1サンプリング部と、第1出力光と、与えられる第2パルス光とが時間的な重なりを有する場合に、第1出力光を増幅した光を第2出力光として出力する第2サンプリング部と、第1パルス光および第2パルス光の位相差を調整して、第1サンプリング部および第2サンプリング部に入力するタイミング調整部とを備え、タイミング調整部は、第1パルス光および第2パルス光の少なくとも一方を遅延させて、位相差を調整する光可変遅延部と、光可変遅延部により位相差が調整された第1パルス光および第2パルス光について、それぞれの少なくとも一部を電気信号に変換した第1調整用信号および第2調整用信号を生成する光電変換器と、第1調整用信号および第2調整用信号の位相差を検出し、検出した位相差が予め定められた位相差となるように、光可変遅延部における遅延量を制御する位相比較部とを有する光サンプリング装置が提供される。
【0008】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、光サンプリング装置10の構成を示す概略図である。光サンプリング装置10は、パルス波形を有する被測定光(信号光)をサンプリングすることのできる装置であり、図1に示すように、パルス光出力部20と、第1サンプリング部101と、第2サンプリング部106と、光電変換器60と、波形表示器70とを備える。また、パルス光出力部20は、図1に示すように、アンプ31、32、パルス幅調整部40、タイミング調整部500、光分岐器80、レーザ光源200、高周波電流出力部260、変調部400および分周回路410を有する。
【0011】
図2は、パルス光出力部20における、レーザ光源200、高周波電流出力部260、変調部400および分周回路410付近を抜き出して示す概略図である。レーザ光源200は、単一モードのパルス光を出力するパルス光源であり、レーザダイオード210、コリメートレンズ220、集光レンズ222、ミラー230、光学バンドパスフィルタ240、バイアス電流出力部250および電流増幅回路270を有する。
【0012】
高周波電流出力部260は、レーザ光源200の電流増幅回路270、および、分周回路410とそれぞれ電気的に接続する。この高周波電流出力部260は、特定の周波数の高周波電流を出力する。なお、高周波電流出力部260が出力する高周波電流の周波数は所望に変更することができる。
【0013】
バイアス電流出力部250は、特定の大きさの直流電流をバイアス電流として出力する。なお、バイアス電流出力部250が出力するバイアス電流の大きさは所望に変更することができる。電流増幅回路270は、高周波電流出力部260から出力される高周波電流をバイアス電流出力部250から出力されるバイアス電流に重畳した電流をレーザダイオード210に加える。
【0014】
レーザダイオード210は、電流増幅回路270から加えられる上記電流によってレーザ光のパルス(以下、「パルス光」と称する)を発光する。レーザダイオード210の一対の端面は、それぞれ反射がほとんど生じない低反射面211および反射率が30%以上の高反射面212となっており、レーザダイオード210で発振したパルス光は低反射面211からレーザダイオード210の外部に出力する。
【0015】
コリメートレンズ220は、レーザダイオード210の低反射面211側に配され、レーザダイオード210の低反射面211側から出力したパルス光をコリメートする。ミラー230は、片側の面に全反射面232が形成されており、コリメートされた上記パルス光を全反射面232で全反射する。光学バンドパスフィルタ240は、コリメートレンズ220とミラー230との間における上記パルス光の光路上に配され、上記パルス光のスペクトル成分のうち上記発振波長を中心とする帯域の成分を透過する。また、光学バンドパスフィルタ240は回転可能に取り付けられており、光学バンドパスフィルタ240の透過面に対して上記パルス光が斜め方向から入射するように上記光路に対する透過面の角度を変えることができる。したがって、光学バンドパスフィルタ240はこの角度に応じて透過する光の帯域を設定することができる。
【0016】
レーザダイオード210でパルス発光したパルス光は、上記のように、コリメートレンズ220および光学バンドパスフィルタ240を透過してミラー230の全反射面232で全反射された後、再びレーザダイオード210の高反射面212で反射される。したがって、上記パルス光は、レーザダイオード210の高反射面212とミラー230の全反射面232との間を往復する。ここで、上記パルス光が高反射面212と全反射面232との間を往復する周期とレーザダイオード210のパルス発光の周期が同期するように、高反射面212と全反射面232との間隔を設定することにより、上記パルス光は増幅されて、その一部がレーザダイオード210の高反射面212側から出力する。
【0017】
集光レンズ222は、レーザダイオード210の高反射面212側に配され、レーザダイオード210の高反射面212側から出力したパルス光を集光して光ファイバ290に入射させる。光ファイバ290は、レーザ光源200の外部と接続し、上記パルス光をレーザ光源200の外部に出力する。
【0018】
変調部400は、レーザ光源200から出力されるパルス光の光路上に配され、分周回路410と電気的に接続する。分周回路410は、高周波電流出力部260から出力される高周波電気信号をN分周(Nは正の整数)して変調部400に出力する。変調部400は、分周回路410から入力される電気信号の周波数に応じて上記パルス光の繰り返し周波数を1/nに分周したパルス光を出力する。ここで、パルス光の繰り返し周波数は、パルス光の繰返し周期の逆数で定義される。変調部400としては、例えばLiNbO光導波路を用いたLN強度変調器であり、数十GHz程度の周波数を有する高周波電気信号に忠実に応答して上記パルス光の繰り返し周波数を分周することができる。
【0019】
レーザダイオード210の発振波長、すなわち、レーザ光源200から出力するパルス光の波長は、第1サンプリング部101における後述の第1カラーフィルタ141および第2サンプリング部106における後述の第2カラーフィルタ142の遮断帯域の波長であり、光サンプリング装置10でサンプリングする被測定光の発振波長に近い波長であることが好ましい。また、レーザ光源200から出力するパルス光の繰り返し周波数は、光サンプリング装置10でサンプリングする被測定光の周波数をfとしたとき、この周波数をN分周した周波数から掃引のための周波数(Δf)だけシフトさせた周波数であることが好ましい。
【0020】
光分岐器80は、光サンプリング装置10から出力されるパルス光を受け取り、当該パルス光を分光して、その一方をアンプ31に出力し、他方をアンプ32に出力する。この光分岐器80としては、例えば無偏光ビームスプリッタなどの分光器が用いられる。以下において、光分岐器80で分光されたこれらのパルス光のうち、アンプ31に入力される上記一方の光を第1パルス光と称し、アンプ32に入力される上記他方の光を第2パルス光と称する。
【0021】
アンプ31は、上記光分岐器80で分光された第1パルス光が入力されると、その第1パルス光のピーク強度を増幅する。また、アンプ32は、上記光分岐器80で分光された第2パルス光が入力されると、その第2パルス光のピーク強度を増幅する。これらのアンプ31およびアンプ32としては、例えばエルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)が用いられる。
【0022】
パルス幅調整部40は、スペクトル拡散部42およびパルス圧縮部44を有し、第1パルス光のパルス幅を調整する。スペクトル拡散部42には、例えば高非線形ファイバ(HNLF)が用いられ、アンプ31でピーク強度が増幅された第1パルス光に自己位相変調を生じさせてそのスペクトルを拡散する。また、パルス圧縮部44には、シングルモードファイバ(SMF)が用いられ、スペクトル拡散部42においてスペクトルが拡散された第1パルス光のパルス幅を分散補償により縮める。なお、スペクトル拡散部42に用いられる高非線形ファイバの長さ、および、パルス圧縮部44に用いられるシングルモードファイバの長さは、例えば前者が10mであり、後者が15mである。
【0023】
図3は、パルス幅調整部40においてスペクトル拡散部42側から入力する第1パルス光のパルス幅を圧縮する非線形伝送シミュレーションの結果を示す。また、図3において、「A」は、スペクトル拡散部42に入力される第1パルス光の時間波形およびスペクトル波形を示す。「B」は、スペクトル拡散部42から出力されてパルス圧縮部44に入力される第1パルス光の時間波形およびスペクトル波形を示す。「C」は、パルス圧縮部44から出力された第1パルス光の時間波形およびスペクトル波形を示す。図3に示すように、パルス幅調整部40により第1パルス光の時間幅は約0.7psecまで圧縮される。このように、パルス幅調整部40は、第1パルス光のパルス幅をサブピコ秒のオーダーまで圧縮して出力することができる。
【0024】
図4は、タイミング調整部500の構成を示す図である。タイミング調整部500は、図4に示すように、第1光カプラ511と、第2光カプラ512と、第1光電変換器521と、第2光電変換器522と、アンプ531、532と、第1フィルタ541と、第2フィルタ542と、光可変遅延部600と、位相比較部700とを有する。タイミング調整部500は、パルス幅調整部40が出力する第1パルス光およびアンプ32が出力する第2パルス光の位相差を調整して、第1サンプリング部101および第2サンプリング部106に入力する。
【0025】
第1光カプラ511は、パルス幅調整部40が出力する第1パルス光の一部を第1光電変換器521に入力する。第1光電変換器521は、第1光カプラ511で分光した一方の第1パルス光を電気信号に変換することにより、第1調整用信号を生成する。アンプ531は、第1光電変換器521で生成された第1調整用信号を増幅して第1フィルタ541に出力する。第1フィルタ541は、第1調整用信号における予め定められた周波数より小さい周波数成分を除去して、位相比較部700に入力する。具体的には、第1フィルタ541は、パルス幅調整部40が出力する第1パルス光の繰り返し周期が156.25MHzである場合、第1調整用信号に含まれる周波数成分のうち、当該第1パルス光の繰り返し周期(156.25MHz)の3次(468.75MHz)または5次(781.25MHz)の高調波を選択的に透過するとともに、透過する高調波の周波数以外の周波数成分を吸収する。
【0026】
第2光カプラ512は、後述の光可変遅延部600が出力する第2パルス光の一部を第2光電変換器522に入力する。第2光電変換器522は、第2光カプラ512で分光した一方の第2パルス光を電気信号に変換することにより、第2調整用信号を生成する。アンプ532は、第2光電変換器522で生成された第2調整用信号を増幅して第2フィルタ542に出力する。第2フィルタ542は、第2調整用信号における予め定められた周波数より小さい周波数成分を除去して、位相比較部700に入力する。具体的には、第2フィルタ542は、光可変遅延部600が出力する第2パルス光の繰り返し周期が上記第1パルス光と同様に156.25MHzである場合、第2調整用信号に含まれる周波数成分のうち、上記第1フィルタ541が透過する高調波と同じ周波数の高調波を透過するとともに、透過する高調波の周波数以外の周波数成分を吸収する。
【0027】
図5は、光可変遅延部600の構成を示す図である。光可変遅延部600は、図5に示すように、第1遅延部610と、第2遅延部620とを有する。
【0028】
第1遅延部610は、固定反射面611、612および可動反射面615を有する。第1遅延部610において、固定反射面611は、アンプ32が出力する第2パルス光の光路上に固定して配され、当該第2パルス光を可動反射面615に向けて反射する。可動反射面615は、固定反射面611が反射した第2パルス光を固定反射面612に向けて反射する。固定反射面612は、可動反射面615が反射した第2パルス光を第2遅延部620の光ファイバ621に入力する。
【0029】
ここで、可動反射面615は、自身が固定反射面611および固定反射面612に対して離れる(または近づく)方向に移動することにより、当該可動反射面615と固定反射面611および固定反射面612それぞれとの間の距離(以下、「反射面間距離」と略称する)を、例えば大きさ「L」のストロークで変化させることができる。したがって、第1遅延部610は、入力した第2パルス光が固定反射面611から可動反射面615を経て固定反射面612に至るまでの光路長を最大で大きさ「2L」だけ変えることができる。これにより、第1遅延部610は、上記光路長を長くすることにより、当該光路長が長くなった分だけ第2サンプリング部106に入力される第2パルス光を遅延させることができる。第1遅延部610における上記反射面間距離は、光サンプリング装置10を被測定光のサンプリングに用いるときのタイミング調整部500の初期設定において、可動反射面615を例えば手動で移動させることにより所定の大きさ(初期設定値)に設定される。この初期設定値については後述する。また、可動反射面615は、モータなどの不図示の駆動機構を有し、後述する位相比較部700の制御部730から入力される制御信号によって移動される。なお、第1遅延部610は、上記並びに図5に示す形態に限定されない。第1遅延部610は、例えば、アンプ32から出力する第2パルス光の光路上に間隔を開けて配される2つのコリメートレンズを有してもよい。この場合、アンプ32から光ファイバを通って伝播される第2パルス光は、当該光ファイバから上記2つのコリメートレンズの一方のレンズ面に向けて拡散して出力された後、当該一方のコリメートレンズで平行光に変換される。さらに、当該平行光に変換された第2パルス光は、例えば空気中を伝播して上記2つのコリメートレンズの他方のレンズ面に入射した後、第2遅延部620における後述する光ファイバ621の入力端に入力される。ここで、第1遅延部610は、上記2つのコリメートレンズの間隔を変化させる構成を有し、当該間隔を変化させることにより、第2パルス光の光路長を変化させることができる。
【0030】
第2遅延部620は、光ファイバ621、ピエゾ素子622、電極623、624、および高圧電源625を有する。第2遅延部620において、光ファイバ621は、略円筒形のピエゾ素子622の周囲に巻き付けられる。より詳細には、光ファイバ621は、略円筒形のピエゾ素子622の外周面に配された電極623に固定される。また、ピエゾ素子622の内周面には、電極624が配される。高圧電源625は、例えば0〜2kVの範囲で出力電圧の大きさが可変な直流電圧源であり、プラスまたはマイナスの一方の出力端子が電極623と接続し、他方の出力端子が電極624と接続する。高圧電源625は、後述する位相比較部700の制御電圧出力部720から入力される制御電圧の大きさに応じた大きさの電圧を電極623および電極624の間に印加する。
【0031】
ピエゾ素子622は、電極623および電極624の間に印加された上記電圧の大きさに応じて変形する。具体的には、ピエゾ素子622は、当該電圧が印加されることにより、当該電圧の大きさに応じて断面の半径が変化する。この場合、ピエゾ素子622における電極623が配された外周面の面積も変化するので、伴って電極623に固定された光ファイバ621の長さも変化する。これにより、当該光ファイバ621を通過する第2パルス光の光路長が変化する。
【0032】
このように、第2遅延部620は、上記制御電圧を電極623および電極624の間に印加することにより、当該電圧の大きさに応じて当該光ファイバ621を通過する第2パルス光の光路長を変化させることができる。したがって、例えば当該光路長が長くなった分だけ第2サンプリング部106に入力される第2パルス光を遅延させることができる。なお、第2遅延部620は、ピエゾ素子622の変形により光ファイバ621を伸長または収縮させることで第2パルス光の光路長を変えるので、可動反射面615の往復移動により第2パルス光の光路長を変える第1遅延部610と比べてより精細な分解能で、第2パルス光が第2サンプリング部106に入力するタイミングを遅延させ、または早めることができる。
【0033】
図6は、位相比較部700の構成を示す図である。位相比較部700は、図6に示すように、位相差検出部710と、制御電圧出力部720と、制御部730とを有し、入力される第1調整用信号および第2調整用信号の2つの調整用信号の位相差を検出し、検出した位相差を予め定められた位相差に近づけるべく、上記光可変遅延部600における遅延量を制御する。
【0034】
位相差検出部710は、第1フリップフロップ711、第2フリップフロップ712およびAND回路715を有し、入力される第1調整用信号および第2調整用信号の位相差を検出する。具体的には、第1フリップフロップ711は、第1フィルタ541から入力される第1調整用信号の信号レベルが論理Hに対応する信号レベルとなったときに、論理Hを制御電圧出力部720およびAND回路715に出力する。また、第2フリップフロップ712は、第2フィルタ542から入力される第2調整用信号の信号レベルが論理Hに対応する信号レベルとなったときに、論理Hを制御電圧出力部720およびAND回路715に出力する。AND回路715は、第1フリップフロップ711および第2フリップフロップ712がともに論理Hを出力したときに、第1フリップフロップ711および第2フリップフロップ712の出力をともに論理Lにリセットする。
【0035】
位相差検出部710において、第1フリップフロップ711が論理Hを出力するタイミングと、第2フリップフロップ712が論理Hを出力するタイミングとの間には、第1調整用信号および第2調整用信号の位相差に応じた大きさの時間的なずれが生じる。また、上記のように、第1フリップフロップ711および第2フリップフロップ712は、同じタイミングで論理Hを出力している状態から論理Lを出力している状態にリセットされる。したがって、上記の時間的なずれの大きさは、第1フリップフロップ711および第2フリップフロップ712がそれぞれリセットされるまで論理Hを連続して出力している時間幅の違いと略等しい。このような第1フリップフロップ711および第2フリップフロップ712における出力の時間幅の違いは、上記タイミング調整部500の第1光カプラ511で分光された第1パルス光と第2光カプラ512で分光された第2パルス光との位相差に対応する。したがって、位相差検出部710は、当該第1パルス光と第2パルス光との位相差を、当該位相差に対応した出力の時間幅の違いに変換して制御電圧出力部720に出力する。なお、制御電圧出力部720に対しては、論理Hおよび論理Lの各論理値に応じた大きさの電圧が出力される。
【0036】
制御電圧出力部720は、コンデンサ721、722、コンパレータ725、およびオフセット電圧印加部727を有し、上記2つの調整用信号の位相差と予め定められた位相差との差分に応じた制御電圧を出力する。具体的には、上記第1フリップフロップ711が論理Hを連続して出力している時間幅だけコンデンサ721に対して論理Hに応じた大きさの電圧が入力されるとともに、上記第2フリップフロップ712が論理Hを連続して出力している時間幅だけコンデンサ722に対して論理Hに応じた大きさの電圧が入力されると、コンデンサ721およびコンデンサ722には、それぞれ入力される電圧の時間幅に応じた大きさの電圧が生じる。
【0037】
コンパレータ725は、コンデンサ721およびコンデンサ722にそれぞれ生じた電圧の大きさを比較して、当該電圧の大きさの違いに応じた大きさの電圧をオフセット電圧印加部727に出力する。ここで、コンパレータ725から出力される電圧の大きさは、上記第1調整用信号および第2調整用信号の位相差に応じた大きさとなる。オフセット電圧印加部727は、コンパレータ725から出力される電圧に所定の大きさのオフセット電圧を加えた制御電圧を第2遅延部620および制御部730に出力する。
【0038】
ここで、オフセット電圧印加部727が加えるオフセット電圧の大きさは、光サンプリング装置10を被測定光のサンプリングに用いるときのタイミング調整部500の初期設定において、予め定められた大きさ(初期設定値)に設定される。この初期設定値については後述する。また、この場合、オフセット電圧印加部727から出力される制御電圧は、オフセット電圧を中心として上記第1調整用信号および第2調整用信号の位相差に応じて一定の範囲を変動する電圧となる。
【0039】
制御部730は、制御電圧出力部720が出力する制御電圧を検出し、当該制御電圧が予め定められた電圧範囲の略中心となっているか、すなわち上記オフセット電圧近傍の大きさであるかどうかを判別する。ここで、制御電圧がオフセット電圧と大きく異なる値である場合、当該制御電圧を当該オフセット電圧に近づけるべく、上記光可変遅延部600の第1遅延部610に制御信号を出力する。
【0040】
第1遅延部610は、制御部730から制御信号が入力された場合、その制御信号に応じて可動反射面615を駆動して上記反射面間距離を変化させることにより、第2サンプリング部106に入力される第2パルス光に与える遅延量を変える。これにより、第1サンプリング部101に入力される第1パルス光と第2サンプリング部106に入力される第2パルス光との間に生じる位相差が変化する。このように、制御部730は、上記制御電圧を上記オフセット電圧に近づけるべく、予め定められた期間毎に第1遅延部610の遅延量を制御する。第2遅延部620は、制御電圧出力部720から制御電圧が入力された場合、上記のように高圧電源625が当該制御電圧の大きさに応じて第2パルス光の光路長の長さを変化させることにより、第2サンプリング部106に入力される第2パルス光を遅延させ、または早めることができる。
【0041】
このように、位相比較部700は、上記第1調整用信号および第2調整用信号の2つの調整用信号の位相差を検出し、検出した位相差を予め定められた位相差に近づけるべく、光可変遅延部600に対して制御信号および制御電圧を出力することにより、第1光カプラ511で分光した第1パルス光と第2光カプラ512で分光した第2パルス光との位相差を一定に保持すべく光可変遅延部600が第2パルス光に与える遅延量を制御することができる。したがって、光可変遅延部600および位相比較部700を有するタイミング調整部500を備えた光サンプリング装置10は、第1サンプリング部101に入力される第1パルス光と、第2サンプリング部106に入力される第2パルス光との位相差に基づくこれら2つのパルス光の時間精度を長時間連続して安定させることができる。
【0042】
また、位相比較部700は、上記のように第1パルス光および第2パルス光から生成された第1調整用信号および第2調整用信号の高調波を利用して、これら第1パルス光および第2パルス光の位相差を検出する。したがって、第1パルス光および第2パルス光の繰り返し周波数から位相差を検出する場合と比べて、検出の分解能が向上する。
【0043】
また、タイミング調整部500において、上記第1パルス光と第2パルス光との位相差を予め定めた位相差に保持した場合でも、例えば時間の経過とともに温度など環境変動により第1パルス光の光路長が変化することがある。このような場合、オフセット電圧印加部727から出力される制御電圧がオフセット電圧から大きくずれることがある。しかしながら、当該電圧のずれを位相比較部700の制御部730が予め定められた期間毎に検出するとともに、検出結果に基づいた制御信号により光可変遅延部600において、第2パルス光の第1パルス光に対する位相差を制御することができる。
【0044】
なお、本実施形態において、第1光カプラ511から第1サンプリング部101までの光路長と、第2光カプラ512から第2サンプリング部106までの光路長とは略等しいことが好ましい。また、上記第1パルス光の光路上の例えばパルス幅調整部40と第1光カプラ511との間に光可変遅延部600と同様の光可変遅延部を有してもよい。この場合、第1パルス光と第2パルス光との位相差をそれぞれ別個に制御することができる。
【0045】
図7は、第1サンプリング部101の構成を示すブロック図である。また、図8は、第1サンプリング部101において第1パルス光によって被測定光をサンプリングする様子を示す概略図である。第1サンプリング部101は、図7に示すように、第1入力側偏光制御部111、光結合器118、第1光ファイバ121、第1出力側偏光部131および第1カラーフィルタ141を有し、外部から入力される被測定光のうち、パルス光出力部20から入力される第1パルス光と時間的な重なりを有する部分に応じた光を、第1出力光として出力する。
【0046】
第1入力側偏光制御部111は、偏光制御素子113および偏光制御素子114を有する。偏光制御素子113には、外部から第1サンプリング部101に入力された被測定光が入力される。また、偏光制御素子114には、上記パルス光出力部20から出力されて第1サンプリング部101に入力された第1パルス光が入力される。第1入力側偏光制御部111は、偏光制御素子113に入力した被測定光および偏光制御素子114に入力した第1パルス光を、偏光方向が相互に40〜50度の角度を有する直線偏光となるようにそれぞれの偏光方向を制御する。第1入力側偏光制御部111において偏光方向が制御された被測定光および第1パルス光は、それぞれ偏光制御素子113および偏光制御素子114から光結合器118に向けて出力される。
【0047】
図7において、偏光制御素子113および偏光制御素子114の出力側に、これらから出力された被測定光および第1パルス光の偏光方向を円で囲んだ矢印の方向で示す。図7に示すように、本実施形態では、第1入力側偏光制御部111の偏光制御素子113および偏光制御素子114からそれぞれ出力された被測定光および第1パルス光の偏光方向は相互に略45度の角度を有する。また、このとき、偏光制御素子113から出力される被測定光の偏光方向は概ね水平方向であり、偏光制御素子114から出力される第1パルス光の偏光方向は水平方向に対して略45度の角度を有する。
【0048】
光結合器118は、偏光制御素子113から出力される被測定光および偏光制御素子114から出力される第1パルス光を結合して第1光ファイバ121に出力する。光結合器118としては、例えばハーフミラーまたはビームスプリッタ等が用いられる。
【0049】
第1光ファイバ121は、入力された被測定光および第1パルス光が少なくとも一部において時間的な重なりを有して内部を通過するときに、これらの光の間に光カー効果および四光波混合を含む非線形光学効果を生じさせる。より具体的には、図8に示すように、第1光ファイバ121の内部を通過する被測定光の特定のパルスと第1パルス光の特定のパルスとが少なくとも一部において時間的に重なるとき、被測定光の当該パルスは、その偏光軸が光カー効果によって回転することにより、第1パルス光の当該パルスの偏光方向と略同じ偏光方向となる。この第1光ファイバ121には、例えば平均零分散波長が上記第1パルス光の波長と略一致し、非線形定数がおよそ20(/W/km)程度である高非線形ファイバが用いられる。
【0050】
ここで、被測定光における上記のような偏光軸の回転は、被測定光全体に生じるのではなく、被測定光と第1パルス光とが時間的に重なる部分にのみ生じる。したがって、例えば、第1パルス光のパルスのパルス幅が被測定光のパルスのパルス幅よりも短い場合、被測定光のパルスにおける第1パルス光のパルスと時間的に重なる一部だけが上記のように偏光軸が回転し、偏光方向が第1パルス光と略同じ偏光方向となる。
【0051】
図9は、図7に示す第1サンプリング部101のブロック図において丸付き数字1〜丸付き数字4を付して示す位置を、時間的な重なりを有して通過する光の強さを光周波数毎に示す。なお、図9において、横軸は光周波数を表し、ω、ωおよびωは、それぞれ第1パルス光、被測定光(丸付き数字4は第1出力光)およびアイドラー光の光周波数を示す。また、図9においてこの横軸と直交する方向に伸びる矢印の長さは、それぞれの光周波数における光の強度を表す。
【0052】
第1パルス光の強度が被測定光と比べて非常に大きい場合、図9の丸付き数字2および丸付き数字3に示すように、第1光ファイバ121を通過する被測定光における上記のような偏光軸が回転する部分、すなわち、被測定光における第1パルス光と時間的に重なる部分は、その強度が増幅される。これは、被測定光における当該部分が第1光ファイバ121内で四光波混合による光パラメトリック増幅により増幅されることによる。ここで、被測定光における当該部分が光パラメトリック増幅により増幅された光は、被測定光と同じ光周波数(波長)の直線偏光であり、その偏光方向は上記第1パルス光の偏光方向と略同じ方向である。したがって、被測定光における上記増幅された部分の偏光方向は水平方向に対して45度の角度を有する。
【0053】
このように、第1光ファイバ121を通過する被測定光および第1パルス光において互いに時間的な重なりを有する部分があるとき、第1光ファイバ121を通過した被測定光における当該部分は、第1パルス光と略同じ偏光方向で強度の増幅された光となる。なお、被測定光における増幅された部分の強度は、第1パルス光の強度が一定である場合、被測定光における当該部分の増幅される前の強度と相関関係を有する。
【0054】
また、上記のように、第1光ファイバ121を通過する被測定光および第1パルス光において互いに時間的な重なりを有する部分があるとき、図9に示すように、被測定光および第1パルス光の上記部分と時間的な重なりを有するアイドラー光が四光波混合により新たに発生する。このアイドラー光は、第1パルス光と略同じ偏光方向の直線偏光として発生する。したがって、上記アイドラー光の偏光方向は、水平方向に対して略45度の角度を有する。また、上記アイドラー光の強度は、偏光方向が第1パルス光の偏光方向と略同じ方向に回転して増幅された被測定光の上記部分と同じ強度である。したがって、上記アイドラー光の強度もまた、第1パルス光の強度が一定である場合、被測定光における上記部分の増幅される前の強度と相関関係を有する。
【0055】
また、上記被測定光の光周波数ωと上記第1パルス光の光周波数ωとの差は、上記アイドラー光の光周波数ωと上記第1パルス光の光周波数ωとの差と等しい。
【0056】
第1出力側偏光部131は、第1光ファイバ121を通過する光の光路上に配される偏光素子133を有する。この偏光素子133は、入射する光のうち偏光方向が水平方向の成分の光を吸収し、鉛直方向(水平方向と直交する方向)の成分の光を透過する。したがって、図8に示すように、第1光ファイバ121を通過した第1パルス光は、その鉛直方向の成分が偏光素子133を透過する。また、第1光ファイバ121を通過した被測定光のうち第1光ファイバ121において第1パルス光と時間的に重ならない部分は、偏光素子133に吸収される。
【0057】
これに対し、被測定光のうち第1光ファイバ121において第1パルス光と時間的に重なる部分は、上記のように偏光方向が第1パルス光と略同じ方向、すなわち水平方向に対して略45度の方向に回転するので、その鉛直方向の成分が偏光素子133を透過する。また、第1光ファイバ121において発生した上記アイドラー光は、偏光方向が第1パルス光の偏光方向と同じであるので、その鉛直方向の成分が偏光素子133を透過する。
【0058】
第1カラーフィルタ141は、上記第1出力側偏光部131の偏光素子133を透過する光の光路上に配され、上記被測定光の波長λと同じ帯域の波長の光だけを透過する特性を有する。したがって、偏光素子133を透過した光のうち、被測定光の波長λと異なる波長の光である上記第1パルス光および上記アイドラー光の成分は第1カラーフィルタ141に吸収され、被測定光の波長λ(光周波数ω)と同じ波長の成分だけが第1カラーフィルタ141を透過する。以下において、第1カラーフィルタ141を透過した光を第1出力光と称する。
【0059】
なお、上記第1カラーフィルタ141は、上記アイドラー光の波長λと同じ帯域の波長の光だけを透過する特性を有してもよい。この場合、上記第1パルス光および上記被測定光の成分は第1カラーフィルタ141に吸収されるので、第1カラーフィルタ141を透過するアイドラー光の成分が第1出力光となる。この場合でも、アイドラー光の強度および波長が、上記のように被測定光と相関関係を有することから、アイドラー光の成分からなる第1出力光を被測定光に対応させることができる。
【0060】
このように、第1サンプリング部101では、被測定光のうち第1光ファイバ121において第1パルス光と時間的に重ならない部分は、偏光素子133に吸収される。したがって、被測定光のパルス波形をサンプリングして得られる第1出力光のSN比をより大きくすることができる。
【0061】
また、例えば上記パルス光出力部20がサブピコ秒オーダーのパルス光を第1パルス光として出力することにより、第1サンプリング部101においてパルス幅の非常に短い第1パルス光で被測定光をサンプリングすることができるので、第1サンプリング部101における被測定光のサンプリングの時間分解能をサブピコ秒オーダーにまで高めることができる。
【0062】
図10は、第2サンプリング部106の構成を示すブロック図である。図10において、円で囲んだ矢印の方向は、第1出力光および後述する偏光制御素子115から出力される第2パルス光の偏光方向を示す。また、図11は、第2サンプリング部106において第2パルス光によって第1出力光を光パラメトリック増幅する様子を示す概略図である。第2サンプリング部106は、図10に示すように、第2入力側偏光制御部112、光結合器119、第2光ファイバ122および第2カラーフィルタ142を有し、第1サンプリング部101から入力される第1出力光と、パルス光出力部20のタイミング調整部500から第2サンプリング部106に入力される第2パルス光とが時間的な重なりを有する場合に、第1出力光を増幅した光を、第2出力光として出力する。
【0063】
第2入力側偏光制御部112は、偏光制御素子115を有する。偏光制御素子115には、上記パルス光出力部20のタイミング調整部500から出力されて第2サンプリング部106に入力された第2パルス光が入力される。第2入力側偏光制御部112は、偏光制御素子115に入力した第2パルス光の偏光方向が上記第1出力光の偏光方向と略同じになるように第2パルス光の偏光方向を制御する。本実施形態では、上記第1出力光の偏光方向が鉛直方向であることから、第2入力側偏光制御部112は、偏光制御素子115に入力した第2パルス光を、その偏光方向が略鉛直方向となるように制御する。
【0064】
第2入力側偏光制御部112において偏光方向が制御された第2パルス光は、偏光制御素子115から光結合器119に向けて出力される。なお、第2入力側偏光制御部112は、上記パルス光出力部20から出力される第2パルス光の偏光方向が、第1出力光の偏光方向と略同じである場合はなくてもよい。この場合、第1サンプリング部101の部品点数を削減することができる。光結合器119は、第1出力光および偏光制御素子115から出力される第2パルス光を結合して第2光ファイバ122に出力する。光結合器119としては、例えばハーフミラーまたはビームスプリッタ等が用いられる。
【0065】
光結合器119によって結合された第1出力光および第2パルス光は、第2光ファイバ122に入力される。ここで、タイミング調整部500の上記初期設定により、第2サンプリング部106に入力される第2パルス光は、第1出力光と第2光ファイバ122において時間的な重なりを有する。具体的には、当該初期設定において、光可変遅延部600の第1遅延部610における上記反射面間距離の初期設定値、並びに制御電圧出力部720のオフセット電圧印加部727が加えるオフセット電圧の初期設定値は、光可変遅延部600から第2サンプリング部106に入力される第2パルス光が第2光ファイバ122において第1出力光と時間的な重なりを有するような大きさに設定される。
【0066】
図12は、図10に示す第2サンプリング部106のブロック図において丸付き数字5〜丸付き数字7の番号を付して示す位置を、時間的な重なりを有して通過する光の強さを光周波数毎に示す。なお、図12において、横軸は光周波数を表し、ω、ωおよびωは、それぞれ第2パルス光、第1出力光(丸付き数字7は第2出力光)およびアイドラー光の光周波数を示す。また、図12においてこの横軸と直交する方向に伸びる矢印の長さは、それぞれの光周波数における光の強度を表す。
【0067】
第2光ファイバ122は、時間的な重なりを有して内部を通過する第1出力光および第2パルス光の間に非線形光学効果である四光波混合を生じさせる。第2パルス光の強度が第1出力光と比べて非常に大きい場合、図12の丸付き数字5および丸付き数字6に示すように、第1出力光における第2パルス光と時間的に重なる部分は、その強度が増幅される。これは、第1出力光における当該部分が第2光ファイバ122内で四光波混合による光パラメトリック増幅により増幅されることによる。この第2光ファイバ122には、上記と第1光ファイバ121同様に、例えば平均零分散波長が上記第2パルス光の波長と略一致し、非線形定数がおよそ20(/W/km)程度である高非線形ファイバが用いられる。
【0068】
このように、第2光ファイバ122を通過した第1出力光は、第2パルス光と略同じ偏光方向で強度の増幅された光となる。なお、増幅された第1出力光の強度は、第2パルス光の強度が一定である場合、増幅される前の第1出力光の強度と相関関係を有する。
【0069】
また、図12に示すように、第2光ファイバ122において、第1出力光および第2パルス光と時間的な重なりを有するアイドラー光が四光波混合により新たに発生する。このアイドラー光は、第1出力光および第2パルス光と略同じ偏光方向の直線偏光として発生する。したがって、上記アイドラー光の偏光方向は略鉛直方向の角度を有する。また、上記アイドラー光の強度は、上記光パラメトリック増幅により増幅された第1出力光と同じ強度である。したがって、上記アイドラー光の強度もまた、第2パルス光の強度が一定である場合、第1出力光の増幅される前の強度と相関関係を有する。
【0070】
また、上記第1出力光の光周波数ωと上記第2パルス光の光周波数ωとの差は、上記アイドラー光の光周波数ωと上記第2パルス光の光周波数ωとの差と等しい。
【0071】
第2カラーフィルタ142は、上記第2光ファイバ122を通過した光の光路上に配され、上記第1出力光の波長と同じ帯域の波長の光を透過する特性を有する。したがって、第2光ファイバ122を通過した光のうち、第1出力光の波長λと異なる波長の光である上記第2パルス光および上記アイドラー光の成分は第2カラーフィルタ142に吸収され、第1出力光の波長λ(光周波数ω)と同じ波長の成分だけが第2カラーフィルタ142を透過する。以下において、第2カラーフィルタ142を透過した光を第2出力光と称する。
【0072】
なお、上記第2カラーフィルタ142は、上記アイドラー光の波長λと同じ帯域の波長の光だけを透過する特性を有してもよい。この場合、上記第2パルス光および上記第1出力光の成分は第2カラーフィルタ142に吸収されるので、第2カラーフィルタ142を透過するアイドラー光の成分が第2出力光となる。この場合でも、アイドラー光の強度および波長が、上記のように被測定光と相関関係を有することから、アイドラー光の成分からなる第2出力光を被測定光に対応させることができる。
【0073】
また、上記第1サンプリング部101から出力される第1出力光が上記のように第1光ファイバ121で発生するアイドラー光の成分である場合、第1出力光の波長はλ(光周波数ω)である。したがって、上記第2光ファイバ122において、波長がλ(光周波数ω)の第2パルス光と波長がλ(光周波数ω)の第1出力光との間に生じる四光波混合により発生するアイドラー光の波長は、λ(光周波数ω)となる。
【0074】
このように、第2サンプリング部106では、第1サンプリング部101から入力される第1出力光を第2光ファイバ122において光パラメトリック増幅により増幅することによりその強度を大きくすることができる。したがって、第1サンプリング部101で被測定光をサンプリングすることにより得られた第1出力光の強度が小さい場合でも、第1出力光に対する第2出力光のSN比を低下させることなく、被測定光のサンプリング出力光である第2出力光をその強度を増幅して出力することができる。
【0075】
また、第2サンプリング部106は、上記のように、第2入力側偏光制御部112を有することにより、第2パルス光の偏光方向と第1出力光の偏光方向とを略同じになるように制御している。したがって、第2光ファイバ122内で第1出力光が四光波混合による光パラメトリック増幅により増幅されるときの増幅効率は略最大となり、被測定光のサンプリングにおけるゲインをより高めることができる。
【0076】
光電変換器60は、第2カラーフィルタ142を透過した光の光路上に配され、上記第2出力光を受光してその時間−強度成分に対応した電気信号に変換し波形表示器70に出力する。この光電変換器60には、例えばフォトダイオードなどの光電変換素子が用いられる。このとき、光電変換器60における感度が最も良好な光の波長は、上記第2出力光の波長と略一致することが好ましい。波形表示器70は、光電変換器60と電気的に接続し、上記電気信号を繰返し周期に応じて表示させる。
【0077】
以上において説明したように、上記光サンプリング装置10は、被測定光を高い時間分解能でサンプリングすることのできる第1サンプリング部101と、第1サンプリング部101で得られたサンプリング出力である第1出力光の強度を効率よく増幅する第2サンプリング部106を備えているので、被測定光のパルス波形を高感度かつ高い時間分解能で観測することができる。
【0078】
なお、上記光サンプリング装置10において、第1サンプリング部101に配される第1カラーフィルタ141は、第1出力側偏光部131の出力側に別個に配される形態に限定されない。例えば第2サンプリング部106の光結合器119が第1出力光の入光面および第2パルス光の入光面を有する場合、第1カラーフィルタ141は、当該光結合器119における第2パルス光の入光面に一体的に形成されてもよい。
【0079】
図13は、第1サンプリング部102および第2サンプリング部107の構成を示すブロック図である。上記および図1〜図12を参照して説明した光サンプリング装置10は、第1サンプリング部101および第2サンプリング部106に替えて、図13に示す第1サンプリング部102および第2サンプリング部107を備えてもよい。なお、図13に示す第1サンプリング部102および第2サンプリング部107において、上記第1サンプリング部101および第2サンプリング部106と同じ参照番号を付したものについては略同じ構成であるので説明を部分的に省略する。
【0080】
第1サンプリング部102は、図13に示すように、第1入力側偏光制御部111、光結合器118、第1光ファイバ121および第1カラーフィルタ141を有する。
【0081】
第1入力側偏光制御部111は、偏光制御素子113に入力した被測定光および偏光制御素子114に入力した第1パルス光を、偏光方向が略同じ方向である直線偏光となるようにそれぞれの偏光方向を制御する。第1入力側偏光制御部111において偏光方向が制御された被測定光および第1パルス光は、それぞれ偏光制御素子113および偏光制御素子114から光結合器118に向けて出力される。
【0082】
図13において、偏光制御素子113および偏光制御素子114の出力側に、これらから出力された被測定光および第1パルス光の偏光方向を円で囲んだ矢印の方向で示す。図13に示すように、本実施形態では、第1入力側偏光制御部111の偏光制御素子113および偏光制御素子114からそれぞれ出力された被測定光および第1パルス光の偏光方向はともに略鉛直方向である。しかしながら、被測定光および第1パルス光の偏光方向は、第1入力側偏光制御部111によって略同じ方向に制御されていれば、本実施形態のように鉛直方向に限定されない。
【0083】
また、図13に示す形態において、パルス光出力部20から出力される第1パルス光は、後述する第1光ファイバ121を通過するときに被測定光と時間的に重なるべく、適切なタイミングおよび十分なパルス幅を有している。第1パルス光のタイミングおよびパルス幅は、上記パルス光出力部20の変調部400およびパルス幅調整部40等において調整される。
【0084】
第1光ファイバ121は、時間的な重なりを有して内部を通過する第1出力光および第2パルス光の間に非線形光学効果である四光波混合を生じさせる。第1パルス光の強度が被測定光と比べて十分に大きい場合、被測定光は、その強度が増幅される。このように、第1光ファイバ121を通過した被測定光は、第1パルス光と略同じ偏光方向で強度の増幅された光となる。なお、増幅された被測定光の強度は、第1パルス光の強度が一定である場合、増幅される前の被測定光の強度と相関関係を有する。
【0085】
また、第1光ファイバ121において、被測定光および第1パルス光と時間的な重なりを有するアイドラー光が四光波混合により新たに発生する。このアイドラー光は、被測定光および第1パルス光と略同じ偏光方向の直線偏光として発生する。したがって、上記アイドラー光の偏光方向は略鉛直方向の角度を有する。また、上記アイドラー光の強度は、上記光パラメトリック増幅により増幅された被測定光と同じ強度である。したがって、上記アイドラー光の強度もまた、第1パルス光の強度が一定である場合、被測定光の増幅される前の強度と相関関係を有する。また、上記被測定光の波長と上記第1パルス光の波長との差は、上記アイドラー光の波長と上記第1パルス光の波長との差と等しい。
【0086】
第1カラーフィルタ141は、上記第1光ファイバ121を通過した光の光路上に配され、上記被測定光の波長と同じ帯域の波長の光を透過する特性を有する。したがって、第1光ファイバ121を通過した光のうち、被測定光の波長と異なる波長の光である上記第1パルス光および上記アイドラー光の成分は第1カラーフィルタ141に吸収され、被測定光の波長と同じ波長の成分だけが第1カラーフィルタ141を透過する。以下において、第1カラーフィルタ141を透過した光を第1出力光と称する。
【0087】
第2サンプリング部107は、図13に示すように、第2入力側偏光制御部112、光結合器119、第2光ファイバ122、第2出力側偏光部132および第2カラーフィルタ142を有する。
【0088】
第2入力側偏光制御部112は、偏光制御素子115に入力した第2パルス光の偏光方向が、上記第1出力光の偏光方向に対して40〜50度の角度を有する直線偏光となるように第2パルス光の偏光方向を制御する。第2入力側偏光制御部112において偏光方向が制御された第2パルス光は、偏光制御素子115から光結合器119に向けて出力される。
【0089】
図13において、偏光制御素子115の出力側に、偏光制御素子115から出力された第2パルス光の偏光方向を円で囲んだ矢印の方向で示す。図13に示すように、本実施形態では、例えば上記のように第1出力光の偏光方向が略鉛直方向である場合、第2入力側偏光制御部112の偏光制御素子115から出力された第2パルス光の偏光方向は、鉛直方向に対して略45度の角度を有することが好ましい。
【0090】
第2光ファイバ122は、入力された第1出力光および第2パルス光が少なくとも一部において時間的な重なりを有して内部を通過するときに、これらの光の間に光カー効果および四光波混合を含む非線形光学効果を生じさせる。より具体的には、第2光ファイバ122の内部を通過する第1出力光の特定のパルスと第2パルス光の特定のパルスとが少なくとも一部において時間的に重なるとき、第1出力光の当該パルスは、その偏光軸が光カー効果によって回転することにより、第2パルス光の当該パルスの偏光方向と略同じ偏光方向となる。ここで、第1出力光における上記のような偏光軸の回転は、第1出力光全体に生じるのではなく、第1出力光と第2パルス光とが時間的に重なる部分にのみ生じる。
【0091】
第2パルス光の強度が第1出力光と比べて非常に大きい場合、第2光ファイバ122を通過する第1出力光における上記のような偏光軸が回転する部分、すなわち、第1出力光における第2パルス光と時間的に重なる部分は、その強度が光パラメトリック増幅により増幅される。ここで、第1出力光における当該部分が光パラメトリック増幅により増幅された光は、第1出力光と同じ波長の直線偏光であり、その偏光方向は第2パルス光の偏光方向と略同じ方向である。したがって、本実施形態では、第1出力光における上記増幅された部分の偏光方向は、鉛直方向に対して略45度の角度を有する。
【0092】
このように、第2光ファイバ122を通過する第1出力光および第2パルス光において互いに時間的な重なりを有する部分があるとき、第2光ファイバ122を通過した第1出力光における当該部分は、第2パルス光と略同じ偏光方向で強度の増幅された光となる。なお、第1出力光における増幅された部分の強度は、第2パルス光の強度が一定である場合、第1出力光における当該部分の増幅される前の強度と相関関係を有する。
【0093】
また、上記のように、第2光ファイバ122を通過する第1出力光および第2パルス光において互いに時間的な重なりを有する部分があるとき、第1出力光および第2パルス光の上記部分と時間的な重なりを有するアイドラー光が四光波混合により新たに発生する。このアイドラー光は、第2パルス光と略同じ偏光方向の直線偏光として発生する。したがって、上記アイドラー光の偏光方向は、鉛直方向に対して略45度の角度を有する。また、上記アイドラー光の強度は、偏光方向が第2パルス光の偏光方向と略同じ方向に回転して増幅された第1出力光の上記部分と同じ強度である。したがって、上記アイドラー光の強度もまた、第2パルス光の強度が一定である場合、第1出力光における上記部分の増幅される前の強度と相関関係を有する。
【0094】
第2出力側偏光部132は、第2光ファイバ122を通過する光の光路上に配される偏光素子134を有する。この偏光素子134は、入射する光のうち偏光方向が鉛直方向の成分の光を吸収し、水平方向の成分の光を透過する。したがって、図13に示すように、第2光ファイバ122を通過した第2パルス光は、その水平方向の成分が偏光素子134を透過する。また、第2光ファイバ122を通過した第1出力光のうち第2光ファイバ122において第2パルス光と時間的に重ならない部分は、偏光方向が鉛直方向であるので、偏光素子134に吸収される。
【0095】
これに対し、第1出力光のうち第2光ファイバ122において第2パルス光と時間的に重なる部分は、上記のように偏光方向が第2パルス光と略同じ方向、すなわち鉛直方向に対して略45度の方向に回転するので、その水平方向の成分が偏光素子134を透過する。また、第2光ファイバ122において発生した上記アイドラー光は、偏光方向が第2パルス光の偏光方向と同じであるので、その水平方向の成分が偏光素子134を透過する。
【0096】
第2カラーフィルタ142は、上記第2出力側偏光部132の偏光素子134を透過する光の光路上に配され、上記第1出力光の波長と同じ帯域の波長の光だけを透過する特性を有する。したがって、偏光素子134を透過した光のうち、第1出力光の波長と異なる波長の光である上記第2パルス光および上記アイドラー光の成分は第2カラーフィルタ142に吸収され、第1出力光の波長と同じ波長の成分だけが第2カラーフィルタ142を透過する。以下において、第2カラーフィルタ142を透過した光を第2出力光と称する。
【0097】
なお、上記第2カラーフィルタ142は、上記アイドラー光の波長と同じ帯域の波長の光だけを透過する特性を有してもよい。この場合、上記第2パルス光および上記第1出力光の成分は第2カラーフィルタ142に吸収されるので、第2カラーフィルタ142を透過するアイドラー光の成分が第2出力光となる。この場合でも、アイドラー光の強度および波長が、上記のように第1出力光と相関関係を有することから、アイドラー光の成分からなる第2出力光を第1出力光に対応させることができる。
【0098】
このように、第2サンプリング部107では、第1出力光のうち第2光ファイバ122において第2パルス光と時間的に重ならない部分は、偏光素子134に吸収される。したがって、第1出力光のパルス波形をサンプリングして得られる第2出力光のSN比をより大きくすることができる。
【0099】
また、例えば上記パルス光出力部20がサブピコ秒オーダーのパルス光を第2パルス光として出力することにより、第2サンプリング部107においてパルス幅の非常に短い第2パルス光で第1出力光をサンプリングすることができるので、第2サンプリング部107における第1出力光のサンプリングの時間分解能をサブピコ秒オーダーにまで高めることができる。
【0100】
以上において説明したように、光サンプリング装置10は、図13に示す第1サンプリング部102および第2サンプリング部107を備えることにより、第1サンプリング部102において被測定光の強度を効率よく増幅するとともに、第2サンプリング部107において増幅された第1出力光を高い時間分解能でサンプリングすることができる。したがって、被測定光のパルス波形を高感度かつ高い時間分解能で観測することができる。
【0101】
なお、上記および図1〜図12を参照して説明した光サンプリング装置10は、第2サンプリング部106に替えて、第2サンプリング部107を備えてもよい。この場合、光サンプリング装置10は、第1サンプリング部101および第2サンプリング部107を備える。なお、この第2サンプリング部107については、図13を参照して説明した上記第2サンプリング部107と同じものであり、同様の構成および作用効果を奏することから説明を省略する。
【0102】
光サンプリング装置10は、第1サンプリング部101および第2サンプリング部107を備えることにより、第1サンプリング部101において被測定光を高い時間分解能でサンプリングするとともに、第2サンプリング部107において、第1出力光をそのSN比を低下させることなく再度サンプリングすることができる。したがって、被測定光をより高い時間分解能で観測することができる。
【0103】
また、上記および図1〜図12を参照して説明した光サンプリング装置10は、第1サンプリング部101に替えて、第1サンプリング部102を備えてもよい。この場合、光サンプリング装置10は、第1サンプリング部102および第2サンプリング部106を備える。なお、この第1サンプリング部102については、図13を参照して説明した上記第1サンプリング部102と同じものであり、同様の構成および作用効果を奏することから説明を省略する。
【0104】
光サンプリング装置10は、第1サンプリング部102および第2サンプリング部106を備えることにより、第1サンプリング部102において被測定光の強度を効率よく増幅するとともに、第2サンプリング部106において増幅された第1出力光をさらに効率よく増幅することができる。したがって、被測定光のサンプリングにおけるゲインをより高めることができる。
【0105】
図14は、パルス光出力部21を備えた光サンプリング装置10の概略図である。上記および図1〜図13を参照して説明した光サンプリング装置10は、パルス光出力部20に替えて、図14に示すパルス光出力部21を備えてもよい。なお、図14に示す光サンプリング装置10において、図1に示す光サンプリング装置10と同じ参照番号を付したものについては同じ構成であるので説明を省略する。
【0106】
図14に示すように、パルス光出力部21は、高周波電流出力部261、第1レーザ光源201、第2レーザ光源202および分周回路411を有する。第1レーザ光源201および第2レーザ光源202は、ともに上記レーザ光源200と同様の構成を有し、単一モードのパルス光を出力するパルス光源である。第1レーザ光源201から出力されるパルス光は、変調部400、アンプ31およびパルス幅調整部40を経て第1パルス光として第1サンプリング部101(102)に入力される。また、第2レーザ光源202から出力されるパルス光は、アンプ32およびタイミング調整部500を経て第2パルス光として第2サンプリング部106(107)に入力される。
【0107】
高周波電流出力部261は、第1レーザ光源201の電流増幅回路(不図示)、および、分周回路411とそれぞれ電気的に接続する。この高周波電流出力部261は、上記高周波電流出力部260と同様に、特定の周波数の高周波電流を出力する。なお、高周波電流出力部261が出力する高周波電流の周波数は所望に変更することができる。
【0108】
分周回路411は、高周波電流出力部261から出力される高周波電気信号をN分周(Nは正の整数)して変調部400および第2レーザ光源202の電流増幅回路(不図示)に出力する。したがって、変調部400は、分周回路411から入力される電気信号の周波数に応じて上記第1レーザ光源201から出力されるパルス光の繰り返し周波数を1/nに分周したパルス光を出力する。また、第2レーザ光源202は、分周回路411から入力される電気信号の周波数、すなわち、高周波電流出力部261から出力される高周波電気信号の繰り返し周波数を1/nに分周した繰り返し周波数を有するパルス光を出力する。
【0109】
図15は、パルス光出力部22を備えた光サンプリング装置10の概略図である。上記および図1〜図13を参照して説明した光サンプリング装置10は、パルス光出力部20に替えて、図15に示すパルス光出力部22を備えてもよい。なお、図15に示す光サンプリング装置10において、図1に示す光サンプリング装置10と同じ参照番号を付したものについては同じ構成であるので説明を省略する。
【0110】
図15に示すように、パルス光出力部22は、高周波電流出力部262、第1レーザ光源201、第2レーザ光源202および分周回路412を有する。第1レーザ光源201および第2レーザ光源202は、ともに上記レーザ光源200と同様の構成を有し、単一モードのパルス光を出力するパルス光源である。第1レーザ光源201から出力されるパルス光は、変調部400、アンプ31およびパルス幅調整部40を経て第1パルス光として第1サンプリング部101(102)に入力される。また、第2レーザ光源202から出力されるパルス光は、変調部400、アンプ32およびタイミング調整部500を経て第2パルス光として第2サンプリング部106(107)に入力される。
【0111】
高周波電流出力部262は、第1レーザ光源201の電流増幅回路(不図示)、第2レーザ光源202の電流増幅回路(不図示)、および、分周回路412とそれぞれ電気的に接続する。この高周波電流出力部262は、上記高周波電流出力部260と同様に、特定の周波数の高周波電流を出力する。なお、高周波電流出力部262が出力する高周波電流の周波数は所望に変更することができる。
【0112】
分周回路412は、高周波電流出力部262から出力される高周波電気信号をN分周(Nは正の整数)して、変調部400に出力する。したがって、第1レーザ光源201および第2レーザ光源202それぞれの出力側に配される変調部400は、分周回路412から入力される電気信号の周波数に応じて上記第1レーザ光源201および第2レーザ光源202からそれぞれ出力されるパルス光の繰り返し周波数を1/nに分周したパルス光を出力する。
【0113】
なお、本実施形態の光サンプリング装置10において、レーザ光源200は、第1パルス光および第2パルス光の共通の光源であるが、第1パルス光を出力する光源と第2パルス光を出力する光源とを別々に備えてもよい。また、パルス幅調整部40は、第2パルス光の光路上に配されて、当該第2パルス光のパルス幅を調整してもよい。また、パルス幅調整部40は、第1パルス光および第2パルス光の両方のパルス光の光路上にそれぞれ配されて、これら2つのパルス光のパルス幅を調整してもよい。
【0114】
また、タイミング調整部500は、本実施形態の光サンプリング装置10の一部として用いられる形態に限られず、与えられる2つのパルス光の位相差を調整して出力するタイミング調整装置として例えば光信号のPM変調などにも用いることができる。
【0115】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることができることは当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】光サンプリング装置10の構成を示す概略図である。
【図2】パルス光出力部20における、レーザ光源200、高周波電流出力部260、変調部400および分周回路410付近を抜き出して示す概略図である。
【図3】パルス幅調整部40においてスペクトル拡散部42側から入力する第1パルス光のパルス幅を圧縮する非線形伝送シミュレーションの結果を示す。
【図4】タイミング調整部500の構成を示す図である。
【図5】光可変遅延部600の構成を示す図である。
【図6】位相比較部700の構成を示す図である。
【図7】第1サンプリング部101の構成を示すブロック図である。
【図8】第1サンプリング部101において第1パルス光によって被測定光をサンプリングする様子を示す概略図である。
【図9】図7に示す第1サンプリング部101のブロック図において丸付き数字1〜丸付き数字4を付して示す位置を、時間的な重なりを有して通過する光の強さを光周波数毎に示す。
【図10】第2サンプリング部106の構成を示すブロック図である。
【図11】第2サンプリング部106において第2パルス光によって第1出力光を光パラメトリック増幅する様子を示す概略図である。
【図12】図10に示す第2サンプリング部106のブロック図において丸付き数字5〜丸付き数字7の番号を付して示す位置を、時間的な重なりを有して通過する光の強さを光周波数毎に示す。
【図13】第1サンプリング部102および第2サンプリング部107の構成を示すブロック図である。
【図14】パルス光出力部21を備えた光サンプリング装置10の概略図である。
【図15】パルス光出力部22を備えた光サンプリング装置10の概略図である。
【符号の説明】
【0117】
10 光サンプリング装置、20、21、22 パルス光出力部、31、32 アンプ、40 パルス幅調整部、42 スペクトル拡散部、44 パルス圧縮部、60 光電変換器、70 波形表示器、80 光分岐器、101、102 第1サンプリング部、106、107 第2サンプリング部、111 第1入力側偏光制御部、112 第2入力側偏光制御部、113、114、115 偏光制御素子、118、119 光結合器、121 第1光ファイバ、122 第2光ファイバ、131 第1出力側偏光部、132 第2出力側偏光部、133、134 偏光素子、141 第1カラーフィルタ、142 第2カラーフィルタ、200 レーザ光源、201 第1レーザ光源、202 第2レーザ光源、210 レーザダイオード、211 低反射面、212 高反射面、220 コリメートレンズ、222 集光レンズ、230 ミラー、232 全反射面、240 光学バンドパスフィルタ、250 バイアス電流出力部、260、261、262 高周波電流出力部、270 電流増幅回路、290 光ファイバ、400 変調部、410、411、412 分周回路、500 タイミング調整部、511 第1光カプラ、512 第2光カプラ、521 第1光電変換器、522 第2光電変換器、531、532 アンプ、541 第1フィルタ、542 第2フィルタ、600 光可変遅延部、610 第1遅延部、611、612 固定反射面、615 可動反射面、620 第2遅延部、621 光ファイバ、622 ピエゾ素子、623、624 電極、625 高圧電源、700 位相比較部、710 位相差検出部、711 第1フリップフロップ、712 第2フリップフロップ、715 AND回路、720 制御電圧出力部、721、722 コンデンサ、725 コンパレータ、727 オフセット電圧印加部、730 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
与えられる2つのパルス光の位相差を調整して出力するタイミング調整装置であって、
前記2つのパルス光の少なくとも一方の前記パルス光を遅延させて、前記位相差を調整する光可変遅延部と、
前記光可変遅延部により前記位相差が調整された2つの前記パルス光のそれぞれを電気信号に変換することにより、2つの調整用信号を生成する光電変換器と、
前記2つの調整用信号の位相差を検出し、検出した前記位相差を予め定められた位相差に近づけるべく、前記光可変遅延部における遅延量を制御する位相比較部と
を備えるタイミング調整装置。
【請求項2】
前記2つの調整用信号のそれぞれについて、予め定められた周波数より小さい周波数成分を除去して、前記位相比較部に入力するフィルタを更に備える
請求項1に記載のタイミング調整装置。
【請求項3】
前記フィルタは、前記2つの調整用信号のそれぞれについて、予め定められた次数の高調波を抽出して、前記位相比較部に入力する
請求項2に記載のタイミング調整装置。
【請求項4】
前記2つのパルス光のうちの一方の前記パルス光のパルス幅を調整するパルス幅調整部を更に備え、
前記光可変遅延部は、一方の前記パルス光と異なる他方の前記パルス光を遅延させる
請求項1に記載のタイミング調整装置。
【請求項5】
前記位相比較部は、
前記2つの調整用信号の前記位相差を検出する位相差検出部と、
前記2つの調整用信号の前記位相差と予め定められた前記位相差との差分に応じた制御電圧を出力する制御電圧出力部と
を有し、
前記光可変遅延部は、
前記位相差検出部が検出した前記位相差に応じて、前記パルス光を遅延させる第1遅延部と、
前記制御電圧出力部が出力する前記制御電圧に応じて、前記第1遅延部より精細な分解能で、前記パルス光を遅延させる第2遅延部と
を有する請求項1に記載のタイミング調整装置。
【請求項6】
前記第2遅延部は、予め定められた電圧範囲の前記制御電圧に応じて遅延量が変化し、
前記位相比較部は、前記制御電圧出力部が出力する前記制御電圧が、前記予め定められた電圧範囲の略中心となるように、前記第1遅延部の遅延量を制御する制御部を更に有する
請求項5に記載のタイミング調整装置。
【請求項7】
前記制御部は、予め定められた期間毎に前記第1遅延部の遅延量を制御する
請求項6に記載のタイミング調整装置。
【請求項8】
前記第1遅延部は、前記位相差検出部が検出した位相差に応じて変化させることにより前記パルス光の光路長を変化させ、
前記第2遅延部は、前記制御電圧出力部が出力する前記制御電圧の大きさに応じて、前記パルス光の光路長を変化させる
請求項5に記載のタイミング調整装置。
【請求項9】
前記第1遅延部は、固定反射面および可動反射面を有し、
前記固定反射面は、前記パルス光を前記可動反射面に向けて反射し、
前記可動反射面は、前記固定反射面との間の距離を前記位相差検出部が検出した位相差に応じて変化させることにより前記パルス光の光路長を変化させ、
前記第2遅延部は、前記パルス光を伝送する光ファイバを周囲に巻き付けた略円筒形のピエゾ素子に、前記制御電圧を印加して前記光ファイバの長さを変化させることにより、前記パルス光の光路長を変化させる
請求項8に記載のタイミング調整装置。
【請求項10】
被測定光をサンプリングする光サンプリング装置であって、
前記被測定光のうち、与えられる第1パルス光と時間的な重なりを有する部分に応じた光を、第1出力光として出力する第1サンプリング部と、
前記第1出力光と、与えられる第2パルス光とが時間的な重なりを有する場合に、前記第1出力光を増幅した光を第2出力光として出力する第2サンプリング部と、
前記第1パルス光および前記第2パルス光の位相差を調整して、前記第1サンプリング部および前記第2サンプリング部に入力するタイミング調整部と
を備え、
前記タイミング調整部は、
前記第1パルス光および前記第2パルス光の少なくとも一方を遅延させて、前記位相差を調整する光可変遅延部と、
前記光可変遅延部により前記位相差が調整された前記第1パルス光および前記第2パルス光について、それぞれの少なくとも一部を電気信号に変換した第1調整用信号および第2調整用信号を生成する光電変換器と、
前記第1調整用信号および前記第2調整用信号の位相差を検出し、検出した前記位相差が予め定められた位相差となるように、前記光可変遅延部における遅延量を制御する位相比較部と
を有する光サンプリング装置。
【請求項11】
パルス光を受け取り、前記パルス光を分光した前記第1パルス光および前記第2パルス光を出力する光分岐器と、
前記第1パルス光のパルス幅を、前記第2パルス光のパルス幅より小さくなるように調整して、前記第1サンプリング部に入力するパルス幅調整部と
を更に備え、
前記光可変遅延部は、前記第2パルス光を遅延させる
請求項10に記載の光サンプリング装置。
【請求項12】
前記タイミング調整部は、
前記パルス幅調整部が出力する前記第1パルス光の一部を前記光電変換器に入力する第1光カプラと、
前記光可変遅延部が出力する前記第2パルス光の一部を前記光電変換器に入力する第2光カプラと
を更に有する請求項11に記載の光サンプリング装置。
【請求項13】
前記第1光カプラから前記第1サンプリング部までの光路長と、前記第2光カプラから前記第2サンプリング部までの光路長とは略等しい
請求項12に記載の光サンプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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