説明

タイヤのトリミング方法とその装置

【課題】タイヤ表面を傷つけることなく、スピューを深くかつ均一に切断することのできるタイヤのトリミング方法とその装置を提供する。
【解決手段】加硫後のタイヤ20を回転させながらスピューPをカッター12で切断して除去する際に、互いに隙間dを隔てて配置された一対の引張りローラー11a,11bを設けるとともに、カッター12を一対の引張りローラー11a,11bのほぼ中央のタイヤ表面側に配置し、一対の引張りローラー11a,11bによりほぼ直立した状態で把持されたスピューPをカッター12で切断するようにした。また、カッター12の前後に、案内ローラー14A,14Bを、その外周面がそれぞれタイヤ20の表面に接触するように配置して、カッター12をタイヤ20の表面からほぼ一定の高さに保つようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫後のタイヤの表面に発生したスピューを切断して除去するタイヤのトリミング方法とその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
加硫後のタイヤの表面には、タイヤの加硫時にモールドの境界に進入したりベントホールからはみ出したりしたスピューと呼ばれるバリや髭状の突起物が発生することが知られている。スピューの存在はタイヤの外観上好ましくないので、加硫工程の後にスピューを切除するトリミング工程が設けられている。
図5(a),(b)は、従来のタイヤのトリミング装置50を示す図で、このトリミング装置50は、加硫後のタイヤ20を装着して回転させる図示しないタイヤ回転手段と、タイヤ20の表面のスピューPを切断するスピューカッター51と櫛歯部材52とを備えている。スピューカッター51は、箱状のカッターホルダー53の空洞部Vのタイヤ側の壁である下壁側を構成している。このスピューカッター51には長さ方向に沿って深さが徐々に増加する複数の溝51aが形成されており、この溝51aの先端部のV字状に切欠かれた部分が当該スピューカッター51の刃先51bとなる。櫛歯部材52の櫛歯52aはスピューカッター51の隣接する刃先51b同士の中間に対応する位置に設けられてスピューPをスピューカッター51の刃先51bまで導入する機能を有する。
これにより、タイヤ20のスピューPは櫛歯部材52の櫛歯52aによりスピューカッター51の刃先51bまで案内され切断されるので、スピューPを確実に切断できる。また、切断されたスピューPは排出ホース54からスピュー回収装置に排出される(例えば、特許文献1参照)。
また、スピューPをカッターで切断するのではなく、一対のローラーまたは歯車等の回転体によりスピューPを挟み込んで引っ張り抜く方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−81561号公報
【特許文献2】特開2003−80610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スピューカッター51でスピューPを切断する方法では、スピューPが倒れ込んでしまうためスピューPの切断面が平らにならず、そのため、良好外環が得られなかった。また、スピューを深く切断することができないので、スピューPの残高さが高くなってしまうといった問題点があった。また、タイヤ20の表面にスピューカッター51を押し付けながら切断する構成であるため、トレッドパターンによってはタイヤ20の表面を傷つけてしまう恐れがあった。
一方、スピューPを一対の回転体で挟み込んで引っ張り抜く方法では、スピューPの中央から先端側を挟持して破断するため切断面がバラバラで外観上好ましくないだけでなく、スピューPが根元からもげてしまいタイヤ表面に穴ができてしまう場合もあった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、タイヤ表面を傷つけることなく、スピューを深くかつ均一に切断することのできるタイヤのトリミング方法とその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の請求項1に記載の発明は、加硫後のタイヤを当該タイヤの中心軸を中心として回転させながら前記タイヤの表面のスピューをカッターで切断して除去するタイヤのトリミング方法であって、互いに接するかもしくは隙間を隔てて配置された一対の回転体の間に前記スピューを把持した後、把持されたスピューを前記カッターで切断することを特徴とする。
このように、一対の回転体の間にスピューを把持して引っ張ることで、スピューをカッターに対してほぼ垂直に立てた状態にして切断することができるので、スピューの残高さを大幅に小さくすることができ、タイヤ外観を向上させることができる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、加硫後のタイヤの表面に発生したスピューを切断するタイヤのトリミング装置であって、前記スピューを切断するカッターと、互いに接するかもしくは隙間を隔てて配置された一対の回転体と、前記回転体を回転させる回転駆動手段とを備え、前記カッターが、前記一対の回転体のタイヤ表面側に配置されて前記一対の回転体で把持されたスピューを切断することを特徴とする。
これにより、簡単な構成でスピューをほぼ根元から切断できるので、安価で実用的なタイヤのトリミング装置を提供することができる。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のタイヤのトリミング装置において、前記タイヤの表面に接触する接触ローラーと、前記カッターを、前記タイヤの表面と隙間を隔てて保持するカッター保持手段とを更に備えたもので、これにより、スピューを一対の回転体で確実に保持できるとともに、カッターとタイヤの表面との隙間をほぼ一定に保つことができる。したがって、タイヤ表面を傷つけることなく、スピューをほぼ根元から切断することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項2または請求項3に記載のタイヤのトリミング装置において、切断されたスピューを吸引して排出する手段を備えたことを特徴とする。
これにより、切断されたスピュー屑が飛散することを防ぐことができるとともに、回転体の間にスピュー屑が挟まって起こる目詰まりをなくすことができる。
【0009】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態に係るタイヤのトリミング装置の要部構成を示す図である。
【図2】本実施の形態に係るタイヤのトリミング装置の配置を示す図である。
【図3】タイヤのトリミング装置の動作を説明するための図である。
【図4】タイヤのトリミング装置の動作を説明するための図である。
【図5】従来のタイヤのトリミング装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施の形態の中で説明される特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0012】
図1(a)は本実施の形態に係るタイヤのトリミング装置10の要部構成を示す図で、図1(b)は図1(a)のA−A断面図である。
本例のトリミング装置10は、図2に示すように、タイヤ回転装置30に装着されて回転する加硫後のタイヤ20のトレッド部21及びサイド部22に複数台配置されて、それぞれ、トレッド部21及びサイド部22をトリミングする。なお、1台のトリミング装置10をタイヤ20の表面に沿って移動させながらタイヤ20のトレッド部21及びサイド部22をトリミングしてもよい。
トリミング装置10はスピュー引張り部11と、カッター12と、駆動部13と、案内ローラー14A,14Bと、カッターホルダー15と、基台16と、ケース17と、支持部材18と、排出ホース19とを備える。以下、トリミング装置10のタイヤ20の回転方向前側である図1(a)の左側を前側、回転方向後側である右側を後側とし、タイヤ径方向外側を上側、タイヤ径方向内側を下側という。
スピュー引張り部11は、互いに所定の隙間d(例えば、d=0〜2mm)を隔てて配置された一対の引張ローラー11a,11bを備える。引張ローラー11a,11bは、回転軸11j,11kの方向がタイヤ幅方向に平行な方向になるように、かつ、下端がタイヤ20の表面から所定高さ(例えば、2〜5mm)だけ離れて配置される。
駆動部13はモーター13Mと減速歯車機構13Gとを備える。
モーター13Mは基台16に連結される。減速歯車機構13Gは、モーター13Mの出力軸13jと連結されてモーター13Mの回転を減速するとともに、図示しない2つの出力軸において引張ローラー11a,11bの回転軸11j,11kとにそれぞれ連結されて、引張ローラー11aと引張ローラー11bとを互いに逆方向に回転させる。具体的には、前側の引張ローラー11aは下端側であるタイヤ20側の回転方向がタイヤ回転方向と同じ向きになるように回転し、後側の引張ローラー11bは下端側の回転方向がタイヤ回転方向と反対向きになるように回転する。
【0013】
カッター12は板状のカッター本体12aと、カッター本体12aの前側に長さ方向に沿って厚さが薄くなるように形成された刃先12bと、カッター本体12aの後側に立設された支持片12cとを備え、刃先12bの先端が引張ローラー11a,11bの下部で、かつ、引張ローラー11aと引張ローラー11bとの間に位置するように、カッターホルダー15により保持される。具体的には、支持片12cがカッターホルダー15に取付けられ、カッターホルダー15が基台16に取付けられる。
案内ローラー14A,14Bはそれぞれ回転軸14j,14jの方向がタイヤ幅方向に平行な方向になるように、スピュー引張り部11の前後にそれぞれ配置されるとともに、ローラー本体14a,14aの外周面がそれぞれタイヤ20の表面に接触するように配置される。案内ローラー14A,14Bのローラー本体14aは回転軸14jに対して滑らかに回転できるように、転がり軸受けなどにより連結されている。
【0014】
本例では、スピュー引張り部11、カッター12、駆動部13と、案内ローラー14A,14B、カッターホルダー15、及び基台16とをケース17に収納するとともに、ケース17のタイヤ20とは反対側の面に支持部材18を取付けて、トリミング装置10の配置位置を変更可能としている。これにより、トリミング装置10を図示しないシリンダー装置などに連結することで、トリミング装置10をタイヤ20の表面に沿って移動させながらタイヤ20のトレッド部21及びサイド部22をトリミングすることができる。
また、本例では、ケース17に排出ホース19を取付けている。これにより、排出ホース19を図示しない吸引手段に接続すれば、カッター12で切断したスピューPをケース17内から排出することができる。
【0015】
次に、本発明のトリミング装置10を用いて、タイヤ表面のスピューを切断して除去する方法について説明する。
まず、図2に示すように、加硫後のタイヤ20をタイヤ回転装置30に装着し、タイヤ20の中心軸を中心としてタイヤ20を回転させる。
タイヤ回転装置30は、加硫後のタイヤ20を装着するリム31と、リム回転機構32とを備えている。リム回転機構32はモーター32Mとモーター32Mの回転軸32jに連結された回転板32a,32bとを備え、回転板32a,32bとリム31とがリム31の中心軸において連結される。なお、タイヤ内は所定の空気圧に保持されているものとする。
次に、トリミング装置10を回転しているタイヤ20の表面に配置する。このとき、図1(a)に示すように、案内ローラー14A,14Bのローラー本体14a,14aの外周面がそれぞれタイヤ20の表面に接触するようにトリミング装置10を配置する。これにより、カッター12がタイヤ20の表面に接触することを防止できるので、カッター12がタイヤ20の表面を傷つけることはない。
【0016】
図3(a)に示すように、タイヤ20の表面に発生したスピューPは、タイヤ20が回転するのに従ってスピュー引張り部11に近づいた後、図3(b)に示すように、前側の引張ローラー11aに接触する。前側の引張ローラー11aは下端側がタイヤ回転方向と同じ向きになるように回転しているので、スピューPは、図3(c)に示すように、タイヤ回転方向とは逆向きに倒されながら引張ローラー11aの引張ローラー11b側に送られる。その後、図3(d)に示すように、スピューPの根元が引張ローラー11aの下端側を過ぎるとスピューPは起き上がり、引張ローラー11a,11b間の隙間に入り込む。
図4(a)に示すように、スピューPは、引張ローラー11a,11bのほぼ中間に位置したときに、引張ローラー11aと引張ローラー11bとにより、ほぼ直立した状態で把持される。
本例では、カッター12の刃先12bの先端がローラー11a,11bの下部で、かつ、ローラー11aとローラー11bとの間に位置するように保持されているので、スピューPがほぼ直立した状態となった時に、カッター12の刃先12bがスピューPの根元に当接する。したがって、図4(b)に示すように、スピューPをほぼ根元から切断することができる。
切断されたスピューPは、図4(c)に示すように、引張ローラー11aと引張ローラー11bとの間から引張ローラー11a,11bの上面側に排出された後、ケース17に取付けられた排出ホース19から図示しない吸引手段に吸引される。したがって、切断されたスピュー屑が飛散することを防ぐことができるとともに、引張ローラー11a,11b間にスピュー屑が挟まって起こる目詰まりをなくすことができる。
【0017】
このように本実施の形態では、加硫後のタイヤ20を回転させながらスピューPをカッター12で切断して除去する際に、互いに隙間dを隔てて配置された一対の引張りローラー11a,11bを設けるとともに、カッター12を一対の引張りローラー11a,11bのほぼ中央のタイヤ表面側に配置し、一対の引張りローラー11a,11bによりほぼ直立した状態で把持されたスピューPをカッター12で切断するようにしたので、スピューの残高さを大幅に小さくすることができ、タイヤ外観を向上させることができる。
また、本例では、案内ローラー14A,14Bのローラー本体14a,14aの外周面がそれぞれタイヤ20の表面に接触することで、カッター12をタイヤ20の表面からほぼ一定の高さに保つようにしているので、カッター12とタイヤ20の表面との距離を小さくできる。したがって、タイヤを傷つけることなくスピューPを深く切断できる。
また、切断時には、スピューPが引張ローラー11aと引張ローラー11bとにより両側から把持されているので、タイヤ20とカッター12との間に作用する摩擦力が小さくなるので、切断中のスピューPの変形は極めて少ない。したがって、スピューPの切断面がほぼ平らになるので、外観上も好ましい。
更に、本例では、引張ローラー11a,11b及びカッター12をケース17内に収容し、このケース17に排出ホース19を取付けて、カッター12で切断したスピューPをケース17内から排出することができるようにしたので、スピュー屑の飛散を防ぐことができるとともに、引張ローラー11a,11bの目詰まりをなくすことができる。
【0018】
なお、前記実施の形態では、カッター12の前後に案内ローラー14A,14Bを設けることで、カッター12がタイヤ20の表面に接触することを防止するようにしたが、カッター12のタイヤ幅方向両端側の裏面(タイヤ20側)に、樹脂などを貼着することで、カッター12とタイヤ20の表面との間に隙間を設けるようにしてもよい。このとき、樹脂のタイヤ20の表面側を滑らかにして摩擦を低減するようにしておくことが好ましい。
また、カッター12の幅としては、タイヤ20の全幅に当たるようにしてもよいし、部分的に当たるようにしておき、トリミング装置10をタイヤ幅方向に移動させるようにしてもよい。
また、前記例では、トリミング装置10とタイヤ回転装置30とを別個の構成としたが、トリミング装置10がタイヤ回転装置30を有していてもよい。
【0019】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0020】
このように、本発明によれば、タイヤ表面を傷つけることなく、スピューを深くかつ均一に切断することができるので、タイヤの外観を向上させることができる。
また、簡単な構成で余剰部材を自動的に除去することができるので、シート状部材のトリミングを効率よくかつ確実に行うことができる。
【符号の説明】
【0021】
10 タイヤのトリミング装置、11 スピュー引張り部、
11a,11b 引張ローラー、12 カッター、12a カッター本体、
12b 刃先、12c 支持片、13 駆動部、13M モーター、
13G 減速歯車機構、14A,14B 案内ローラー、15 カッターホルダー、
16 基台、17 ケース、18 支持部材、19 排出ホース、
20 タイヤ、21 トレッド部、22 サイド部、
30 タイヤ回転装置、31 リム、32 リム回転機構、P スピュー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫後のタイヤを当該タイヤの中心軸を中心として回転させながら前記タイヤの表面のスピューをカッターで切断して除去するタイヤのトリミング方法において、
互いに接するかもしくは隙間を隔てて配置された一対の回転体の間に前記スピューを把持した後、把持されたスピューを前記カッターで切断することを特徴とするタイヤのトリミング方法。
【請求項2】
加硫後のタイヤの表面に発生したスピューを切断するタイヤのトリミング装置であって、
前記スピューを切断するカッターと、
互いに接するかもしくは隙間を隔てて配置された一対の回転体と、
前記回転体を回転させる回転駆動手段とを備え、
前記カッターは、前記一対の回転体のタイヤ表面側に配置されて前記一対の回転体で把持されたスピューを切断することを特徴とするタイヤのトリミング装置。
【請求項3】
前記タイヤの表面に接触する接触ローラーと、
前記カッターを、前記タイヤの表面と隙間を隔てて保持するカッター保持手段とを更に備えたことを特徴とする請求項2に記載のタイヤのトリミング装置。
【請求項4】
切断されたスピューを吸引して排出する手段を備えたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のタイヤのトリミング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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