説明

タイヤトレッドゴム配合用カーボンブラック、それを用いたタイヤ用ゴム組成物および自動車用タイヤ

【課題】タイヤトレッドゴム配合用として耐摩耗性とヒステリシス特性と伸び特性をより一層高度に両立することを可能とするカーボンブラック、特にカーボンブラックの表面特性に着目したタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラック、それを用いたタイヤ用ゴム組成物および自動車用タイヤの提供。
【解決手段】(1)DBP吸収量(DBP)が40〜250ml/100g (2)24M4DBP(圧縮後のDBP吸収量)が35〜220ml/100g (3)CTAB吸着比表面積(CTAB)が70〜200m/g (4)水素含有率(%)>0.350−0.000625×(CTAB) (5)トルエン着色透過度が90%以上の特性を有するタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラック、それを用いたタイヤ用ゴム組成物および自動車用タイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム成分への配合時にタイヤトレッド用ゴム組成物として好ましい高い耐摩耗性と優れたヒステリシス特性(低発熱性)および伸び特性を同時に満足することができるタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラック、それを用いたタイヤ用ゴム組成物および自動車用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラックは、ファーネス炉内で発生させたおよび/または外部で発生されて炉内に導入された高温燃焼ガス中へ原料炭化水素を噴霧導入し、この原料炭化水素の熱分解または不完全燃焼により厳密に制御された条件下で操業されるファーネス炉で生産される産業上有用な原材料であり、ゴム配合時の組成物に対して機械的性質、特に引張り強さ、耐摩耗性などの特性を飛躍的に向上させることができるという特異な性質を有することから、タイヤをはじめとする各種ゴム製品の充填補強剤として広く用いられている。
【0003】
ゴム配合用カーボンブラックは、その物理化学的特性、すなわちカーボンブラックを構成する単位粒子の直径、単位重量当たりの表面積(比表面積)、粒子のつながり度合(ストラクチャー)、表面性状などにより配合ゴム組成物の特性・性能に大きな影響を与えるので、要求されるゴム製品の性能、使用される環境等によって特性の異なる種々のカーボンブラックが選択的に使用されている。
【0004】
タイヤの接地面(トレッド部)に用いられるゴム組成物では、高速度回転で道路面との接触による摩損に対する耐性(耐摩耗性)に優れていると同時に、種々の状況下の路面との接触で生じるタイヤへの繰り返し変形によるゴム組成物の発熱性に大きな影響を与えるヒステリシス特性も重要な要素である。また、路面からタイヤへの繰り返し変形によるゴム組成物の耐疲労性、耐カット性に大きな影響を与える伸び特性も重要な要素である。これら3つの特性は互いに相反する三律背反事項、すなわち一方の特性を向上させると他の特性が低下することが知られており、この解消が大きな課題となっている。
【0005】
タイヤトレッドに用いられるゴム組成物に対して高い耐摩耗性を与えるカーボンブラックとしては、一般的により大きな比表面積、あるいは高いストラクチャーを有するカーボンブラックが採用されるが、前記の様に耐摩耗性向上以外に発熱特性と伸び特性は低下するといったように、これら特性は互いに相反する三律背反事項であり、この課題を解決するために上記2つの基本特性のコントロールだけではなく、最小分散単位であるアグリゲートのサイズや分布、空隙容積などの制御、結晶構造、真比重値などの物理的特性の制御による両特性の整合化・両立化が検討されてきた。
【0006】
これに加えて、カーボンブラックの化学的性質、例えば表面上に結合している酸素含有官能基の量あるいは含水量を特定したカーボンブラックも提案されている。
さらに、カーボンブラックに含まれる炭素以外の構成元素や表面活性に着目し、カーボンブラック表面の水素量を特定した発明(特許文献1および2など)、あるいは水素量と酸素量の和、また比を特定した発明(特許文献3および4など)も提案されている。
【0007】
また、カーボンブラックに含有されるピリジンまたはトルエンによる溶媒抽出成分(重質タール成分:多環芳香族炭化水素成分他)を低減させることで、ゴム中での分散改良等により配合ゴム組成物の補強性、耐摩耗性を改良する発明(特許文献5)が提案されている。
また、発生水素量をカーボンブラック表面積との関係式により提案した発明(特許文献6)があるが、後述のとおり、従来技術と本発明ではカーボンブラックに含まれる水素に対する考え方が根本的に異なっているだけでなく、特許文献6では耐摩耗性の向上という点は達成できても、併せて優れたヒステリシス特性(低発熱性)を満足させることはできない。
【0008】
本出願人はこれらの課題を解決する製造方法を確立し、これを特許文献7として出願した。この発明の要旨は次の通りである。
特許文献7における請求項1の発明は、燃焼帯域と反応帯域および反応停止帯域を同軸上に連設した反応装置を用い、燃焼帯域内で燃料用炭化水素の燃焼により高温燃焼ガスを生成させ、引き続き反応帯域で前記高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入し、不完全燃焼または熱分解反応により前記原料炭化水素から転化されたカーボンブラックを含む反応ガス流となし、次いで反応停止帯域において前記反応ガス流を反応停止温度まで冷却して反応を終結させることからなるカーボンブラック製造方法において、前記原料炭化水素が前記高温ガス流中に導入されてから急冷媒体が導入されるまでの滞留時間をt(秒)、この空間での平均反応温度をT(℃)とし、さらに急冷媒体が導入されてから前記反応停止域通過までのカーボンブラックを含む反応ガス流の滞留時間をt(秒)、この空間内での平均反応温度をT(℃)として、下記(1)式および(2)式を満たす条件下で制御することを構成上の特徴とするものである。
(1)2.00≦α≦9.00
(2)−2.5α+85.0≦β≦90.0
(式中、α=t×T、β=t×Tを表す)
先願請求項2の発明は、上記αおよびβが(1)3.00≦α≦8.00(2)−2.5×α+85.0≦β≦86.0の範囲を満たすことが更に好ましいとするものである。
先願請求項3の発明は、原料炭化水素導入位置から冷却媒体導入位置までの空間内および/または冷却媒体導入位置から反応停止帯域通過までの空間内に空気または酸素と炭化水素の混合物あるいはこれらの燃焼反応による燃焼ガスを含むガス体を導入添加する、先願請求項1または2記載のカーボンブラックの製造方法に関するものである。
【0009】
また、本出願人は上記先願技術を用いて、特許文献8(先願発明2)において、タイヤトレッドゴム配合用として耐摩耗性とヒステリシス特性、更に伸び特性をより一層高度に両立することを可能とするカーボンブラック、特にカーボンブラックの表面特性に着目したカーボンブラックを出願した。この発明の要旨は次の通りである。
先願2における請求項1の発明は、
(1)DBP吸収量(DBP)が40〜250ml/100g
(2)24M4DBP(圧縮後のDBP吸収量)が35〜220ml/100g
(3)CTAB吸着比表面積(CTAB)が70〜200m/g
(4)水素放出率(%)>0.260−0.000625×(CTAB)
(5)トルエン着色透過度が90%以上
の特性を有するタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックとするものである。
先願2の請求項2の発明は、前記DBPが95〜220ml/100gであり、前記24M4DBPが90〜200ml/100gである請求項1記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックである。
先願2の請求項3の発明は、(6)モノクロロベンゼン抽出量が0.15%以下である請求項1または2いずれか記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックとするものである。
先願2の請求項4の発明は、燃焼帯域と反応帯域および反応停止帯域を同軸上に連設した反応装置を用い、燃焼帯域内で燃料用炭化水素の燃焼により高温燃焼ガスを生成させ、引き続き反応帯域で前記高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入し、不完全燃焼または熱分解反応により前記原料炭化水素から転化されたカーボンブラックを含む反応ガス流となし、次いで反応停止帯域において前記反応ガス流を急冷して反応を終結させることからなるカーボンブラックの製造方法において、前記原料炭化水素が前記高温ガス流中に導入されてから急冷媒体が導入されるまでの滞留時間をt(秒)、この空間での平均反応温度をT(℃)とし、さらに急冷媒体が導入されてから前記反応停止帯域通過までのカーボンブラックを含む反応ガス流の滞留時間をt(秒)、この空間内での平均反応温度をT(℃)として、下記(i)式および(ii)式を満たす条件下で制御することにより下記の(1)から(3)の特性を同時に満足せしめた請求項1〜3いずれか記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックとするものである。
(i)2.00≦α≦9.00
(ii)−2.5×α+85.0≦β≦90.0
(式中、α=t×T、β=t×Tを表す)
(1)DBP吸収量(DBP)が40〜250ml/100g
(2)24M4DBP(圧縮後のDBP吸収量)が35〜220ml/100g
(3)CTAB吸着比表面積(CTAB)が70〜200m/g
【0010】
本出願人は、先願技術で得られたカーボンブラックに対して更なる耐摩耗性と低発熱性を高度に両立できるカーボンブラックを検討した結果、カーボンブラック表面に有する活性水素の量を増加させることが有効であるとの結論に至った。しかしながら、先願技術を用いて活性水素量を増加させた場合、カーボンブラックに含有されるピリジンまたはトルエンによる溶媒抽出成分(重質タール成分:多環芳香族炭化水素成分他)が増加してしまうという問題が回避できないことが判明した。
【0011】
【特許文献1】特開昭61−207452号公報
【特許文献2】特開平1−144434号公報
【特許文献3】特開平4−108837号公報
【特許文献4】特開平10−36703号公報
【特許文献5】特開平9−40883号公報
【特許文献6】特開平3−62858号公報
【特許文献7】特開2005−272729号公報
【特許文献8】特開2005−272734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のカーボンブラックは耐摩耗性とヒステリシス特性および伸び特性の両立という技術課題に対してある程度の効果の発現は見られるが、昨今のタイヤの技術進展に対する、カーボンブラックへのより高度の要求には十分に応えられていないのが現状である。
かかる現状から、本発明の課題は、タイヤトレッドゴム配合用として耐摩耗性とヒステリシス特性および伸び特性をより一層高度に両立することを可能とするカーボンブラック、特にカーボンブラックの表面性状として水素含有量に着目したカーボンブラックおよびこれを用いたゴム組成物、さらにはこの組成物により構成されるタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1は、
(1)DBP吸収量(DBP)が40〜250ml/100g
(2)24M4DBP(圧縮後のDBP吸収量)が35〜220ml/100g
(3)CTAB吸着比表面積(CTAB)が70〜200m/g
(4)水素放出率(%)>0.350−0.000625×(CTAB)
(5)トルエン着色透過度が90%以上
の特性を有するタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックに関する。
本発明の第2は、前記DBPが95〜220ml/100gであり、前記24M4DBPが90〜200ml/100gである請求項1記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックに関する。
本発明の第3は、(6)モノクロロベンゼン抽出量が0.15%以下である請求項1または2いずれか記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックに関する。
本発明の第4は、燃焼帯域と反応帯域および反応停止帯域を同軸上に連設した反応装置を用い、燃焼帯域内で燃料用炭化水素の燃焼により高温燃焼ガスを生成させ、引き続き反応帯域で前記高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入し、不完全燃焼または熱分解反応により前記原料炭化水素から転化されたカーボンブラックを含む反応ガス流となし、次いで反応停止帯域において前記反応ガス流を反応停止温度まで冷却して反応を終結させて得られるカーボンブラックであって、前記原料炭化水素が前記高温燃焼ガス流中に導入されてから第1の急冷媒体が導入されるまでの滞留時間をt(秒)、第1の急冷媒体が導入される直前の反応温度をT(℃)とし、第1の冷却媒体が導入されてから次の第2の急冷媒体が導入されるまでの滞留時間をt(秒)、第2の急冷媒体が導入される直前の反応温度をT(℃)とし、さらに第2の急冷媒体が導入されてから前記反応停止帯域通過までの反応ガス流の滞留時間t(秒)、反応停止帯域で反応ガス流を急冷して反応を終結する直前の反応温度(反応継続兼冷却室の下流端空間近傍での温度)をT(℃)として、下記(i)式、(ii)式および(iii)式を満たす条件下で制御することにより下記の(1)から(3)の特性を同時に満足せしめた請求項1〜3いずれか記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックに関する。
(i)3.00≦α≦5.00
(ii)5.00≦α≦8.00
(iii)−2.5×(α+α)+85.0≦β≦86.0
(式中、α=t×T、α=t×T、β=t×T

(1)DBP吸収量(DBP)が40〜250ml/100g
(2)24M4DBP(圧縮後のDBP吸収量)が35〜220ml/100g
(3)CTAB吸着比表面積(CTAB)が70〜200m/g
本発明の第5は、請求項1〜4いずれか記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックを含有することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物に関する。
本発明の第6は、請求項5記載のタイヤ用ゴム組成物を用いることを特徴とする自動車用タイヤに関する。
【0014】
本発明のカーボンブラックは、前述のように
(1)DBP吸収量(DBP)が40〜250ml/100g
(2)24M4DBP(圧縮後のDBP吸収量)が35〜220ml/100g
(3)CTAB吸着比表面積(CTAB)が70〜200m/g
(4)水素放出率(%)>0.350−0.000625×(CTAB)
(5)トルエン着色透過度が90%以上
の特性を有するタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックであることを特徴としているが、このカーボンブラックは反応帯域および反応停止帯域の各帯域において、どの程度の温度(℃)で、どのくらいの時間(秒)、熱的に暴露されているかを示すこれらの積(熱履歴の程度を示す指標)に着目し、各帯域での各積の値を特定範囲に設定して、生成中のおよび/または生成したカーボンブラックへの熱履歴を最適化することでゴム組成物での機械的特性、特に耐摩耗性での低下を回避でき、これにより耐摩耗性と低発熱性および伸びを高度に両立できることを見出したものである。
【0015】
本発明者らは、カーボンブラックの表面特性、特に水素含有量と未分解多環芳香族炭化水素残存量に注目し、生成中のおよび/または生成したカーボンブラックへの熱履歴(急冷媒体が導入されるまでの滞留時間、急冷媒体が導入される直前の反応温度、一定温度以上での保持時間等)の最適化を行い、これによりゴム組成物での機械的特性、特に耐摩耗性での低下を回避することにより、タイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックとして耐摩耗性とヒステリシス特性と伸び特性を高度に両立できることを見いだしたことが本発明の基礎となっている。
【0016】
すなわち、本出願人が先願発明として出願した特許文献7および特許文献8との相違点は、
1)カーボンブラックの製造工程における原料導入位置から反応停止帯域通過までの空間の分割数が、先願発明では2つであったのに対して3つとなり、よりカーボンブラック生成中のおよび/または生成反応での熱履歴の大きさを細かく制御する。
2)先願のカーボンブラックと同じ基本的物理化学特性を有し、かつ先願カーボンブラックでの請求項1の(4)水素放出率(%)>0.260−0.000625×(CTAB)よりも水素放出率(%)が大きい側にあり、これが先願発明におけるゴム組成物の性能に大きな差異を与えていると推測することができる。
本発明のカーボンブラックにおいては、関係式〔水素放出率(%)>0.350−0.000625×(CTAB)〕で算出される、水素放出率(%)を先願発明2よりも高い側に制御し、先願発明2における数値を超える範囲にあることが大切であるが、一般にカーボンブラックは比表面積の大小により、水素放出率(%)が変化する。
これは主にカーボンブラック生成反応温度、反応時間、反応雰囲気の違いに起因すると想定されるが、本発明のカーボンブラックは、上記関係式で算出される水素放出率(%)を超えるように反応炉内での熱履歴を適宜調整を行うことで制御している。
水素放出率(%)が関係式で算出される水素放出率(%)以下では、タイヤ用ゴム組成物の耐摩耗性が低下するとともに、ヒステリシス特性が低下するため好ましくない。
【0017】
また、本発明のカーボンブラックにおいては、トルエン着色透過度が90%以上であることが大切であり、90%未満ではカーボンブラック中に含有される未分解成分(多環芳香族炭化水素等)が多く存在し、この成分はゴムに対して十分な補強性を与えないために耐摩耗性が低下するので好ましくない。
【0018】
発生水素量をカーボンブラック表面積との関係式により特定した発明として特許文献6があり、これらは本発明と最も近似している発明であるが、この従来技術と本発明ではカーボンブラックに含まれる水素に対する考え方で以下に述べるように大きく異なっている。
すなわち、特許文献6の技術では結晶構造の規則性が乏しく、ゴムとの反応性に富んだ表面状態を有するカーボンブラックを得るために反応時間を極端に短時間化する(実施例では2.5〜6.0ミリ秒)ことにより得られる(明細書3ページ)と述べているが、単純に反応時間を短くすることはカーボンブラック中に残存する未分解成分(カーボンブラックよりもH/C比がずっと大きい)が増大することは明らかである(トルエン着色透過度は低くなり、溶媒抽出量は増加する)。
このように含有される水素(活性水素)が多いカーボンブラックがゴム分子の相互作用を増大させ、これにより配合ゴム組成物の耐摩耗性を向上させることができることは特許文献6においてすでに開示された通りであるが、特許文献6の技術での水素量の測定は1200℃で実施されており、この温度ではカーボンブラック中のすべての水素を測定することは困難である(図5:平成7年4月15日発行「カーブンブラック便覧」第三版第11頁)。
したがって、特許文献6の技術のカーボンブラックではH/C比の大きい、かつゴムマトリックスとは何らの相互作用をもたない、すなわち補強性に関与しない未分解成分を多く含み、加えて水素量の全体を測定できない1200℃の分解温度における測定値により判断しているという問題がある。
【0019】
これに対して、特許文献7および8は反応時間、一定温度以上での保持時間等を未分解成分が残存しない条件下で製造条件をコントロールし、かつカーボンブラック中に含有される水素の全量を測定できる2000℃まで昇温したときに放出された値(放出率(%))で評価することによりゴムマトリックスと相互作用を有する活性水素量を一層正確に判断することがようやく可能となったものである。
【0020】
加えて、本願発明ではゴムマトリックスと相互作用をもち、強い結合を形成する水素放出率を特許文献7および8よりも更に高くさせることにより、外力、例えば回転時のタイヤトレッドへの道路面からの変形に対して形成されたゴムとカーボンブラックおよび/またはカーボンブラック同士の結合の切断が発生しにくくなり、これが発熱性に関連するヒステリシス、すなわち結合の切断と再結合に帰因されるエネルギー逸散(放出)の減少に貢献したものと推定している。
【0021】
本発明のカーボンブラックは、DBP吸収量が40〜250ml/100gの範囲で、かつ24M4DBP吸収量が35〜220ml/100gであることが必要であるが、DBP吸収量が95〜220ml/100gの範囲で、かつ24M4DBP吸収量が90〜200ml/100gであることがより好ましい。
DBP吸収量が40ml/100g未満または24M4DBP吸収量が35ml/100g未満では、タイヤ用ゴム組成物として最低限必要な引張応力を発現することができないため好ましくない。
またDBP吸収量が250ml/100g超え、または24M4DBP吸収量が220ml/100gを超えると、最低限必要な伸びを確保することができないため好ましくない。
これに加えて、DBP吸収量および24M4DBP吸収量の上限である250ml/100gおよび220ml/100gの数値は、反応帯域中に他の成分の添加(例えば水蒸気など)がない場合にはこの上限を超えることはほとんどないことからもこの範囲が設定される(もし添加物が炉内に加えられた場合、一般的にカーボンブラックにより付与される耐摩耗性は低下するので好ましくない)。
【0022】
本発明のカーボンブラックは、CTAB吸着比表面積が70〜200m/gであることが必要である。
70m/g未満では、タイヤ用ゴム組成物として最低限必要な引張り強さを発現することができず、200m/gを超えると、ゴム組成物中への分散性を十分に確保できず、逆にゴム組成物の耐摩耗性等が悪化するため好ましくない。
【0023】
本発明のカーボンブラックは、トルエン着色透過度が90%以上であることが必要であり、トルエン着色透過度が90%未満では、カーボンブラック中に含有される未分解成分(多環芳香族炭化水素等)が多く存在し、この成分はゴムに対して十分な補強性を与えずに耐摩耗性が低下するとともに、ゴム組成物自体を汚染するため好ましくない。
【0024】
また、モノクロロベンゼン抽出量は0.15%以下であることが好ましく、これが0.15%を超えると、カーボンブラック中に含有される未分解成分(多環芳香族炭化水素等)が多くなる傾向があり、場合によってはゴムに対する補強効果、耐摩耗性を低下させることがある。
【0025】
すなわち、本発明のカーボンブラックは、DBP吸収量が40〜250ml/100g、より好ましくは95〜220ml/100g、24M4DBP吸収量が35〜220ml/100g、好ましくは70〜220ml/100g、より好ましくは90〜200ml/100g、CTAB吸着比表面積が70〜200m/g、水素放出率%が関係式値〔0.350−0.000625×(CTAB)〕を超え、トルエン着色透過度が90%以上のものであり、さらにモノクロロベンゼン抽出量が0.15%以下の特性を有するものであることが好ましい。
【0026】
本発明におけるゴム組成物には、必要に応じて加硫剤、硫黄、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤等、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択し配合できる。
【0027】
本発明のカーボンブラックは、燃焼ガス生成帯域と反応帯域および反応停止帯域を同軸上に連設した反応装置を用い、燃焼ガス生成帯域内で燃料用炭化水素の燃焼により高温燃焼ガスを生成させ、引き続く反応帯域で前記高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入し、不完全燃焼または熱分解反応により前記原料炭化水素から転化されたカーボンブラックを含む反応ガス流となし、反応停止帯域において前記反応ガス流を反応停止温度まで冷却して反応を終結させる反応停止工程によって得られるカーボンブラックであって、前記原料炭化水素が前記高温燃焼ガス流中に導入されてから第1の急冷媒体が導入されるまでの滞留時間をt(秒)、第1の急冷媒体が導入される直前の反応温度をT(℃)とし、第1の冷却媒体が導入されてから次の第2の急冷媒体が導入されるまでの滞留時間をt(秒)、第2の急冷媒体が導入される直前の反応温度をT(℃)とし、さらに第2の急冷媒体が導入されてから前記反応停止帯域通過までの反応ガス流の滞留時間t(秒)、反応停止帯域で反応ガス流を急冷して反応を終結する直前の反応温度を(反応継続兼冷却室の下流端空間近傍での温度)T(℃)として、下記(i)式、(ii)式および(iii)式を満たす様に制御することにより製造したものである。
(i)3.00≦α≦5.00
(ii)5.00≦α≦8.00
(iii)−2.5×(α+α)+85.0≦β≦86.0
また、前記製造に当っては、原料炭化水素導入位置から急冷媒体導入位置までの帯域内および/または急冷媒体導入位置から反応停止帯域通過までの帯域内に空気または酸素と炭化水素の混合物あるいはこれらの燃焼反応による燃焼ガスを含むガス体を導入添加ことが好ましい。
【0028】
ここで、本発明における各帯域について説明する。
燃焼ガス生成帯域とは、燃料と空気との反応により高温ガス流が生成される領域であり、この下流端は原料油が反応装置内に導入される点、例えば図1の8Bから原料油が導入される場合はそれよりも上流側(図1では左端)から原料油が導入される8Bまでを指す。また、複数位置より原料油が導入される場合の燃焼ガス生成帯域とは、例えば図1の8A,8B,8Cから同時に原料油が導入される場合は、原料油が導入される最も上流の8C(図1では左端)までを指す。
反応帯域1とは、原料炭化水素が導入された点(複数位置での導入の場合は最も上流側)から反応継続兼冷却室10内での温度計設置または急冷水噴霧装置設置用空間(a〜z)における反応生成物の冷却のための第1の急冷水噴霧手段(b〜vで表示され、これらの手段は反応継続兼冷却室10内で抜き差し自在であり、生産する品種、特性により使用位置は選択される)の作動(水を導入する)点までを指す。すなわち、8Bで原料油を導入し、第1の冷却媒体導入位置をcで水を導入した場合、この間の領域(8B〜c)が反応帯域1となる。
反応帯域2とは、第1の冷却媒体が導入された点から反応継続兼冷却室10内での温度計設置または急冷水噴霧装置設置用空間(a〜z)における反応生成物の冷却のために第2の急冷水噴霧手段(d〜xで表示され、これらの手段は反応継続兼冷却室10内で抜き差し自在であり、生産する品種、特性により使用位置は選択される)の作動(水を導入する)点までを指す。すなわち、第1の冷却媒体導入位置をcで水を導入し、第2の冷却媒体導入位置をhで水を導入した場合、この間の領域(c〜h)が反応帯域2となる。なお、第1の冷却媒体および第2の冷却媒体の噴霧手段設置位置のすぐ上流側空間には反応空間温度測定装置が設置されている〔例えば上記の場合にはbとgに設置され、これら温度がT(℃)とT(℃)となる〕。
反応停止帯域とは、第2の急冷水圧入噴霧手段を作動させた点よりも下側(図では右側)の帯域を指す。
また、反応停止帯域で反応ガス流を急冷して反応を終結する直前の反応温度(反応継続兼冷却室の下流端空間での温度)は図1右端のyを指し、これは下流端のz点において反応生成物分離装置に導入する雰囲気温度を低下させる冷却水導入装置を設置するためであり、このy点での温度を終結する直前の反応温度とみなすが、前記複数アルファベットの温度計設置または急冷水噴霧装置設置用空間の表示においては単に下流端近傍という意味合いだけで、設置空間の数または長さを限定するものではなく、本発明で特定した温度および滞留時間を満足させる条件で適宜選択される。
【0029】
本発明におけるカーボンブラック製造方法においては、反応帯域および反応停止帯域におけるカーボンブラックの熱への暴露、換言すれば熱履歴の大きさを表すα、αおよびβ値が上記範囲を満たすことが必要条件であり、反応温度調整のために、原料炭化水素導入位置から急冷媒体導入位置までの範囲および/または急冷媒体導入位置から最終反応工程までの範囲に空気および酸素又は炭化水素燃焼ガス等のガス体を導入添加することができる。
【0030】
また、各滞留時間の算出は燃焼帯域中に導入された燃料および空気による燃焼反応生成物を用いた公知の熱力学的計算方法により燃焼ガス流体の容積を算出し、次いで次式により求められる。
【数1】

なお、原料油の分解反応および急冷媒体による体積変化は無視するものとする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、カーボンブラック特性、特にカーボンブラックの表面性状を適正化することで、タイヤトレッドゴム配合用として重要な耐摩耗性と低発熱性と伸びを加工性の低下を招くことなく高度に両立しうる、産業上有用なカーボンブラックを提供することができる。
【実施例】
【0032】
以下に本発明の実施例を比較例と対比しながら詳しく説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【0033】
実施例および比較例は、図1〜4に示すカーボンブラック反応装置(図1)を用いて表2〜5に示すRun No.1〜12のカーボンブラックを下記の要領で製造したものである。
【0034】
可燃性流体導入室(内径450mmφ、長さ400mm)2の内部に反応装置頭部外周から導入された酸素含有ガスを整流するための整流板5を有する酸素含有ガス導入用円筒(内径250mmφ、長さ300mm)4とその中心軸に燃料油噴霧導入管6を備え、前記円筒の下流側は次第に収れんする収れん室(上流端内径370mmφ、下流端内径80mmφ、収れん角度5.3°)7となり、かつ収れん室7の下流側には図2に8B平面で例示したような4つの原料油噴霧口(8B−1、8B−2、8B−3、8B−4)を同一平面上に設置した4つの別個の平面を形成する原料油噴霧平面(8A〜8D)を含む原料油導入室9を有し、この下流側は反応停止用急冷水圧入噴霧手段(a〜z)を26ヶ所備えた反応継続兼冷却室(内径160mmφ、長さ7500mm)10からなる、全体が耐火物で覆われたカーボンブラック反応装置1を用いた。
ここで、反応継続兼冷却室10という名称を用いたのは、原料導入時点から前記反応停止用急冷水圧入噴霧手段の作動時点までが反応帯域、それ以降が反応停止帯域であり、この急冷水導入位置が要求されるカーボンブラック性能により移動することがあるためである。
例えば、図1において原料油導入位置が8Bであり、第1の急冷媒体導入位置をcとし、第2の急冷媒体導入位置をhとした場合には、8Bとcまでの間が反応帯域1であり、これ以降で第2の急冷媒体導入点hまでが反応帯域2であり、その下流側が反応停止帯域となる。
【0035】
本発明における各反応帯域での温度としては、「急冷媒体の導入される直前の反応温度」とは上述の例で説明すると冷却水導入位置がcである場合にはその1つ上流側、すなわち冷却水の導入位置でbにおける反応室での温度を意味し、この各断面での図を図3および図4として示す。同様にして、第2の急冷媒体の導入位置がhの場合にはその1つ前のgの位置で測定した温度が直前の温度となる。
【0036】
燃料には比重0.8622(15℃/4℃)のA重油を用い、原料油としては表1に示した性状の重質油を使用した。
【0037】
【表1】

【0038】
前記のカーボンブラック反応装置を用い、表2〜表3に示した操作条件によりカーボンブラックを製造した。
【0039】
表2〜表3に記載のカーボンブラック製造条件は、前述の製造装置を用いて実施例カーボンブラックおよび比較例カーボンブラックを導入総空気量、原料油導入量および温度、燃料導入量、また、原料炭化水素導入位置から第1の急冷媒体導入位置までの滞留時間、第1の急冷媒体導入直前の反応温度、さらに第1の急冷媒体が導入されてから第2の急冷媒体が導入されるまでの滞留時間、第2の急冷媒体が導入される直前の反応温度、および第2の急冷媒体が導入されてから反応停止帯域通過までの滞留時間、反応停止帯域で反応ガス流を急冷して反応を終結する直前の反応温度などの条件を表2〜3記載のように調整して製造したものである。
【0040】
前記表2〜表3の操作により製造された各カーボンブラックの物理化学的特性等を表4〜表5に示した。
【0041】
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
【表4】

【0044】
【表5】

【0045】
本発明に記載のカーボンブラックの各特性は、下記の方法により測定されたものである。
【0046】
(1)DBP吸収量、(2)24M4DBP吸収量
JIS K6217−4:2001に記載の方法で測定され、カーボンブラック100g当たりに吸収されるジブチルフタレート(DBP)のmlで表示される。
【0047】
(3)CTAB吸着比表面積
JIS K6217−3:2001に記載の方法により測定され、単位重量当たりの比表面積m/gで表示される。
【0048】
(4)水素放出率(%)
(a)カーボンブラック試料を105℃の恒温乾燥機中で1時間乾燥し、デシケータ中で室温まで冷却する。
(b)スズ製のチューブ状サンプル容器に試料約10mgを精秤し、圧着・密栓する。
(c)水素分析装置〔堀場製作所EMGA621W〕でアルゴン気流下、2000℃で15分間加熱したときの水素ガス発生量を測定し、試料に対する百分率で表示する。
【0049】
(5)トルエン着色透過度
JIS K6218:1997の第8項B法に記載の方法により測定され、純粋なトルエンの透過率を100%としたときの試料の透過率で表示される。
数字が大きいほどトルエン汚染度が小さい、すなわち未分解芳香族炭化水素成分が少ないことを意味する。
【0050】
(6)モノクロロベンゼン抽出量
JIS K6218:1997の第9項 溶媒抽出量に準拠し、溶媒にモノクロロベンゼンを用いて30時間抽出を行い、得られた抽出量を試料に対する百分率で表示する。
【0051】
本発明記載のカーボンブラックを充填剤として用いたゴム組成物の性能評価は、下記の方法により実施される。
【0052】
(7)ゴム配合方法
表6に示す配合処方のゴム組成物をバンバリーミキサーを用いて混練し、更に加圧型加硫装置で145℃で30分間加硫して加硫ゴムを得た。
この加硫ゴムの特性を表7〜8に示した。なお、ゴム特性は次のようにして測定した。
【0053】
(8)ランボーン耐摩耗指数
ランボーン摩耗試験器を用い、摩耗損失量を測定し、次式より耐摩耗性指数を算出した。
なお、指数値が大きい程、耐摩耗性に優れる。
式:耐摩耗指数=(S/T)×100
S:比較基準(比較例Run No.8)試験片の摩耗損失量
T:各ゴム試験片の摩耗損失量
【0054】
(9)反発弾性指数
JIS K6255:1996に記載の方法により反発弾性を測定した。なお、比較例(Run No.8)の試験片の反発弾性を100として指数で表示した。
指数値が大きい程、反発弾性が高く、低発熱性に優れることを示す。
【0055】
(10)引張り試験(Eb)
JIS K6251:2004「加硫ゴムおよび熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」に記載された方法により実施した。試験片はダンベル状3号形を用い、測定温度25℃、引張速度500mm/minで測定し、破断時の伸び(Eb)を算出した。
なお、測定値は比較例(RunNo.8)の試験片の伸び(Eb)を100として指数で表示した。
指数値が大きい程、伸びが高く、耐疲労性、耐カット性に優れることを示す。
【0056】
【表6】

【0057】
【表7】

【0058】
【表8】

【0059】
表4〜表5に示したカーボンブラック物理化学特性および表7〜8に示したゴム組成物性能評価の結果から、本発明カーボンブラックの効果を説明する。
Run No.1〜4のカーボンブラックは本発明にかかるものであり、Run No.5〜10のカーボンブラックは本発明の特定要件の1つまたはそれ以上の要件を外れた比較例である。
【0060】
Run No.5、6、8、9、10は本発明のカーボンブラック特性の1つである水素放出率関係式〔水素放出率(%)>0.350−0.000625×CTAB〕を満たさない例である。
例えば、ゴム特性への影響が比較的大きいカーボンブラック基本特性CTAB吸着比表面積およびDBP吸収量(24M4DBP吸収量)がほぼ同じ比較例Run No.5と実施例Run No.1、比較例Run No.6と実施例Run No.2のゴム特性を比較すると、反発弾性および伸び特性は近似するがランボーン耐摩耗性については実施例に比べ比較例が劣っていることが分かる。
【0061】
比較例Run No.7は、本発明のカーボンブラック特性の1つであるトルエン着色透過度が90%未満、また好ましい条件であるモノクロロベンゼン抽出量が0.15%を超えているため、カーボンブラック中に含有される多環芳香族炭化水素成分が多く存在する。
このカーボンブラックから得られたゴム組成物の性能は、CTAB吸着比表面積およびDBP吸油量(24M4DBP吸油量)がほぼ同じであるRun No.3に比べ、ランボーン耐摩耗性について劣っていることが分かる。
【0062】
比較例Run No.8は、水素放出率関係式〔水素放出率(%)>0.350−0.000625×CTAB〕を満たしているものの、本発明の目的生成物であるトルエン着色透過度が90%以下の例であり、反発弾性および伸び特性はRunNo.3と近似するがランボーン耐摩耗性において低下が見られる。
【0063】
比較例Run No.9は、水素放出率関係式〔水素放出率(%)>0.350−0.000625×CTAB〕を満たさない例であり、実施例Run No.3に比べ、反発弾性およびランボーン耐摩耗性について劣っていることが分かる。
【0064】
比較例Run No.10は、実施例Run No.3とほぼ同一な反発弾性を示すが、水素放出率関係式〔水素放出率(%)>0.350−0.000625×CTAB〕を満たさない例であり、実施例Run No.3に比べ、ランボーン耐摩耗性および伸び特性について劣っていることが分かる。
【0065】
比較例Run No.11と比較例Run No.12は、本発明における第2の急冷媒体を導入しない例、すなわち特許文献7(特開2005−272729)記載に基づいた製造例である(表の表示としてはαを特許文献6のαと読み替え、αは−として表示)。Run No.11およびRun No.12は、共に熱履歴が高いためトルエン抽出量は少ないものの、本発明の特徴である高水素放出率の関係式〔0.350−0.000625×(CTAB)〕を上回ることができず、ランボーン摩耗および反発弾性に効果が見られない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に用いるカーボンブラック反応装置の一例の縦断正面説明図である。
【図2】図1のA−A矢視における断面図である。
【図3】図1のB−B矢視断面における反応炉温度測定用装置を含む断面図である。
【図4】図1のC−C矢視における第1急冷媒体導入の断面図である。
【図5】カーボンブラックでの脱離温度と揮発分組成を示すグラフである(カーボンブラック便覧第三版、第11頁)
【符号の説明】
【0067】
1 カーボンブラック反応装置
2 可燃性流体導入室
3 酸素含有ガス導入管
4 酸素含有ガス導入用円筒
5 整流板
6 燃料油噴霧装置導入管
7 収れん室
8A 原料油噴霧平面
8B 原料油噴霧平面
8C 原料油噴霧平面
8D 原料油噴霧平面
9 原料油導入室
10 反応継続兼急冷室
a〜y 温度計設置または急冷水噴霧装置設置用空間
z 下流側雰囲気温度調整用冷却水噴霧空間
Tc 炉温測定用熱電対装置
Qa1,Qa2 10空間内の急冷水圧入噴霧手段設置空間に設置された急冷水圧入噴霧ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)DBP吸収量(DBP)が40〜250ml/100g
(2)24M4DBP(圧縮後のDBP吸収量)が35〜220ml/100g
(3)CTAB吸着比表面積(CTAB)が70〜200m/g
(4)水素放出率(%)>0.350−0.000625×(CTAB)
(5)トルエン着色透過度が90%以上
の特性を有するタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラック。
【請求項2】
前記DBPが95〜220ml/100gであり、前記24M4DBPが90〜200ml/100gである請求項1記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラック。
【請求項3】
(6)モノクロロベンゼン抽出量が0.15%以下である請求項1または2いずれか記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラック。
【請求項4】
燃焼ガス生成帯域と反応帯域および反応停止帯域を同軸上に連設した反応装置を用い、燃焼ガス生成帯域内で燃料用炭化水素の燃焼により高温燃焼ガスを生成させ、引き続き反応帯域で前記高温燃焼ガス流中に原料炭化水素を噴霧導入し、不完全燃焼または熱分解反応により前記原料炭化水素から転化されたカーボンブラックを含む反応ガス流となし、次いで反応停止帯域において前記反応ガス流を反応停止温度まで冷却して反応を終結させて得られるカーボンブラックであって、前記原料炭化水素が前記高温燃焼ガス流中に導入されてから第1の急冷媒体が導入されるまでの滞留時間をt(秒)、第1の急冷媒体の導入される直前の反応温度をT(℃)とし、第1の冷却媒体が導入されてから次の第2の急冷媒体が導入されるまでの滞留時間をt(秒)、第2の急冷媒体が導入される直前の反応温度をT(℃)とし、さらに第2の急冷媒体が導入されてから前記反応停止帯域通過までの反応ガス流の滞留時間t(秒)、反応停止帯域で反応ガス流を急冷して反応を終結する直前の反応温度(反応継続兼冷却室の下流端空間近傍での温度)をT(℃)として、下記(i)式、(ii)式および(iii)式を満たす条件下で制御することにより下記の(1)から(3)の特性を同時に満足せしめた請求項1〜3いずれか記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラック。
(i)3.00≦α≦5.00
(ii)5.00≦α≦8.00
(iii)−2.5×(α+α)+85.0≦β≦86.0
(式中、α=t×T、α=t×T、β=t×T

(1)DBP吸収量(DBP)が40〜250ml/100g
(2)24M4DBP(圧縮後のDBP吸収量)が35〜220ml/100g
(3)CTAB吸着比表面積(CTAB)が70〜200m/g
【請求項5】
請求項1〜4いずれか記載のタイヤトレッドゴム配合用カーボンブラックを含有することを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項5記載のタイヤ用ゴム組成物を用いることを特徴とする自動車用タイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−144011(P2010−144011A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321275(P2008−321275)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000116747)旭カーボン株式会社 (19)
【Fターム(参考)】