説明

タイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法

【課題】ウェット路面及びセミウェット路面でのグリップ性能が優れると共に、耐摩耗性を向上するようにしたタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】ジエン系ゴム100重量部に軟化点130〜170℃の粘着付与樹脂を15〜50重量部、シリカを80重量部以上含む充填剤を80〜180重量部、加硫系配合剤以外の配合剤を配合し、シリカ量の1〜15重量%のシランカップリング剤を配合した混合物を120℃以上で混練りすると共にその混練り温度Tiを△t(秒)毎に測定し、式HHS=Σ[△t×exp(Ea/R×(1/To−1/Ti))](HHSは150℃換算の熱履歴量、△tは測定間隔(秒)、Ea=22000cal/mol、R=1.987cal/(mol・K)、To=150+273K、Tiはi番目の混練温度(K))で表される150℃に換算した熱履歴量を70〜350にした混練り工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法に関し、更に詳しくは、ウェット路面及びセミウェット路面におけるグリップ性能が優れると共に、耐摩耗性を向上するようにしたタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、空気入りタイヤのトレッド部に使用するゴム組成物には、グリップ性能が優れていることに加え、耐摩耗性が優れていることが求められている。特に、競技用の空気入りタイヤでは、ドライ路面走行用タイヤとウェット路面走行用タイヤとが用意され、走行時の天候及び路面の状態に応じそれぞれ最適のタイヤを選択するようにしている。ここでウェット路面走行用の競技用タイヤとしては、トレッド用ゴム組成物にシリカを多量に配合してウェットグリップ性能と相関関係があるtanδ(0℃)を大きくすることが知られている。しかし、シリカを多量に配合したゴム組成物でトレッド部を形成すると、ウェット路面(完全な湿潤路面)でのグリップ性能は高くなるものの、ウェット状態からドライ状態へ変わるセミウェット路面(半乾き状態の路面)では十分なグリップ性能が得られなくなるという問題があった。また、同時にシリカの多量配合により耐摩耗性が相対的に低下するという問題があった。
【0003】
このため特許文献1は、スチレンブタジエン共重合ゴム100重量部に、シリカ50重量部以上を含む充填剤80〜180重量部、軟化点が100〜150℃の樹脂を5〜60重量部配合したゴム組成物を提案している。しかし、このゴム組成物は、セミウェット路面におけるグリップ性能を改良する効果が必ずしも十分ではなく、また耐摩耗性を改善する効果が得られないため、さらなる改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−321046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ウェット路面及びセミウェット路面でのグリップ性能が優れると共に、耐摩耗性を向上するようにしたタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法は、ジエン系ゴム100重量部に、軟化点が130〜170℃の粘着付与樹脂を15〜50重量部、シリカを80重量部以上含む充填剤を80〜180重量部配合し、加硫系配合剤以外の配合剤を配合し、かつシランカップリング剤をシリカ量の1〜15重量%配合した混合物を、120℃以上で混練りすると共に、そのときの混練り温度Tiを測定間隔△t(秒)毎に測定し、下記の式(1)で求められる150℃に換算した熱履歴量HHSを70〜350にした混練り工程を含むことを特徴とする。
HHS=Σ[△t×exp(Ea/R×(1/To−1/Ti))] ・・・(1)
(式中、HHSは150℃に換算した熱履歴量、△tは測定間隔(秒)、Eaは活性化エネルギーでEa=22000cal/mol、Rは気体定数でR=1.987cal/(mol・K)、Toは基準温度でTo=150+273K、Tiは△t毎に測定したi番目の混練温度(K)である。)
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法は、ジエン系ゴム、130〜170℃の高い軟化点を有する粘着付与樹脂、シリカを含む充填剤、加硫系配合剤以外の配合剤、シランカップリング剤を配合した混合物を、120℃以上でノンプロ混練するとき、その混練り温度Tiを△t(秒)毎に測定し、上記式(1)で表わされるアレニウスの式から求められる150℃に換算した熱履歴量HHSを70〜350にするようにしたので、高軟化点の粘着付与樹脂及び多量に配合したシリカをジエン系ゴム中に良好に分散させると共に、ジエン系ゴムとシリカとのシランカップリング剤を介した結合を一層強固なものにしたゴム組成物を製造することができる。これにより得られたトレッド用ゴム組成物は、ウェット路面及びセミウェット路面でのグリップ性能が優れると共に、耐摩耗性が向上したものになる。
【0008】
前記粘着付与樹脂は、テルペン系樹脂、石油系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、セミウェット路面のグリップ性能をより高くすることができる。
【0009】
前記タイヤトレッド用ゴム組成物は、競技用空気入りタイヤに使用されることが好ましく、その空気入りタイヤは、ウェット路面及びセミウェット路面でのグリップ性能が共に優れ、かつ耐摩耗性が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において、タイヤトレッド用ゴム組成物を構成するゴム成分はジエン系ゴムとする。ジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム等を例示することができる。なかでも、スチレン−ブタジエンゴム、天然ゴムが好ましい。
【0011】
また、ジエン系ゴムは、そのガラス転移温度(以下「Tg」という。)が好ましくは−45℃〜−5℃、より好ましくは−40℃〜−10℃であるとよい。ジエン系ゴムのTgが−5℃より高いと、ヘビーウェット路面(深い冠水路面)でのグリップ性能が低下する。また、グリップ性能の温度依存性が大きくなりドライバーが熱ダレを感知し易くなる。ジエン系ゴムのTgが−45℃より低いと、セミウェット路面でのグリップ性能が低下する。ジエン系ゴムのTgは、示差走査熱量測定装置(DSC)を使用し10℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、その転移域の中点の温度とする。ジエン系ゴムが油展オイルを含む場合には、油展オイルを除いた状態のTgとする。また、ジエン系ゴムが複数のゴムから構成されるとき、ジエン系ゴムのTgは、構成ゴムのTgにそれぞれの構成ゴムの含有量(重量分率)を乗じたものの総和とする。
【0012】
本発明のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法では、上述したジエン系ゴムに軟化点が130〜170℃、好ましくは140〜165℃の粘着付与樹脂を配合することにより、セミウェット路面でのグリップ性能を高くする。粘着付与樹脂の軟化点が130℃未満であると、セミウェット路面でのグリップ性能を改良する効果が十分に得られない。また、粘着付与樹脂の軟化点が170℃を超えると、ジエン系ゴムに対する分散性が悪化し、ウェット路面及びセミウェット路面のグリップ性能が低下すると共に、耐摩耗性及びゴム強度が低下する。なお、粘着付与樹脂の軟化点はJIS K6220−1(環球法)に準拠し測定したものとする。
【0013】
粘着付与樹脂の配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し15〜50重量部、好ましくは20〜40重量部である。粘着付与樹脂の配合量が15重量部未満であると、セミウェット路面でのグリップ性能を改良する効果が十分に得られない。粘着付与樹脂の配合量が50重量部を超えると、耐摩耗性が低下する。また、ゴム組成物の粘着性が増大し、成形ロールに密着するなど成形加工性及び取り扱い性が悪化する。
【0014】
粘着付与樹脂の種類としては、特に制限されるものではなく、例えば、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂などの天然樹脂、石油系樹脂、石炭系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂などの合成樹脂が例示される。なかでもテルペン系樹脂及び/又は石油系樹脂が好ましい。
【0015】
テルペン系樹脂としては、例えばα−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、リモネン樹脂、水添リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、水素添加テルペン樹脂等が好適に挙げられる。石油系樹脂としては、芳香族系炭化水素樹脂あるいは飽和または不飽和脂肪族系炭化水素樹脂が挙げられ、例えばC5系石油樹脂(イソプレン、1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルブテン、ペンテンなどの留分を重合した脂肪族系石油樹脂)、C9系石油樹脂(α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエンなどの留分を重合した芳香族系石油樹脂)、C59共重合石油樹脂などが例示される。
【0016】
本発明で製造するタイヤトレッド用ゴム組成物は、シリカを配合することにより、ウェット路面及びセミウェット路面でのグリップ性能を向上する。シリカの配合量は、ジエン系ゴム100重量部に対し80重量部以上、好ましくは80〜180重量部、より好ましくは90〜150重量部である。シリカの配合量が80重量部未満であると、ウェット路面及びセミウェット路面でグリップ性能を改良する効果が十分に得られない。また、シリカの配合量が180重量部を超えると、耐摩耗性及びゴム強度を十分に確保することが難しくなる。また、ゴムの加工性が著しく悪化する。
【0017】
シリカとしては、BET比表面積が好ましくは90〜250m2/g、より好ましくは130〜220m2/gのものを使用するとよい。シリカのBET比表面積が90m2/g未満であると、ゴム組成物に対する補強性が不十分となり耐摩耗性が低下する。また、シリカのBET比表面積が250m2/gを超えると、シリカの分散性が悪化しゴムの加工性が悪化するため好ましくない。シリカのBET比表面積は、ASTM−D−4820−93に準拠して測定するものとする。シリカの種類としては、通常タイヤトレッド用ゴム組成物に配合されるシリカであればよく、例えば湿式法シリカ、乾式法シリカあるいは表面処理シリカなどを使用することができる。
【0018】
本発明では、シリカ以外の充填剤を配合することができる。シリカ及びシリカ以外の充填剤の合計は、ジエン系ゴム100重量部に対し80〜180重量部、好ましくは90〜150重量部である。シリカ及び他の充填剤の合計が80重量部未満であると、ゴム組成物の補強性が十分に得られず耐摩耗性が不足する。また、シリカ及び他の充填剤の合計が180重量部を超えると、ゴム組成物の発熱性が大きくなり、空気入りタイヤにしたときの耐久性(熱だれ性)が低下する。
【0019】
シリカ以外の充填剤としては、例えばカーボンブラック、クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウムを例示することができる。なかでも、カーボンブラックが好ましい。カーボンブラックを配合することにより、混練り工程でのゴム混合物のまとまりを良くすることができる。
【0020】
本発明において、シリカと共にシランカップリング剤を配合することにより、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を改良することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対し1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%にする。シランカップリング剤の配合量が1重量%未満であると、シリカの分散性を十分に改良することができない。また、シランカップリング剤の配合量が15重量%を超えると、シランカップリング剤同士が凝集・縮合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0021】
シランカップリング剤の種類としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましい。硫黄含有シランカップリング剤としては、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0022】
本発明では、加硫系配合剤以外の配合剤を配合することができる。加硫系配合剤以外の配合剤としては、例えば酸化亜鉛、ステアリン酸、老化防止剤、プロセスオイル、加工助剤等の一般にゴム組成物に添加される配合剤等を例示することができる。なかでも加硫系配合剤以外の配合剤として酸化亜鉛を配合することにより、混練り工程でのゴム混合物のまとまりを良くすることができる。
【0023】
本発明の製造方法では、上述したジエン系ゴム、粘着付与樹脂、シリカを含む充填剤、加硫系配合剤以外の配合剤及びシランカップリング剤からなる混合物を、120℃以上で混練りする。以下、これを「ノンプロ混練り」ということがある。ノンプロ混練りを120℃以上で行うことにより、粘着付与樹脂及びシリカの分散性を良好にすることができる。
【0024】
ノンプロ混練りにおける混練温度は120℃以上、好ましくは120〜170℃にする。混練温度が120℃より低いと、高融点の粘着付与樹脂を良好に分散させることができない。ここで混練温度は、ノンプロ混練り中に測定されたゴム混合物の温度である。またノンプロ混練りを開始したときのゴム混合物の温度が低くても、ノンプロ混練りにより温度が高くなり120℃以上になればよい。
【0025】
本発明の製造方法では、ノンプロ混練りにおける熱履歴量を調整することにより、高軟化点の粘着付与樹脂及び多量に配合したシリカをジエン系ゴム中に良好に分散させると共に、ジエン系ゴムとシリカとのシランカップリング剤を介した結合を一層強固なものにする。すなわち本発明は、ノンプロ混練りにおいて、ゴム混合物の混練り温度Tiを測定間隔△t秒毎に測定し、下記の式(1)に基づいて、150℃に換算した熱履歴量HHSを算出する。
HHS=Σ[△t×exp(Ea/R×(1/To−1/Ti))] ・・・(1)
(式中、HHSは150℃に換算した熱履歴量、△tは混練温度の測定間隔(秒)、Eaは活性化エネルギーでありEa=22000cal/mol、Rは気体定数でありR=1.987cal/(mol・K)、Toは基準温度でありTo=150+273K、Tiは△t秒毎に測定したi番目の混練温度(K)である。)
【0026】
本発明において、150℃に換算した熱履歴量HHSは、ノンプロ混練り時に混練温度が120℃以上に達してから、その混練温度Ti(K)を測定間隔△t秒毎に測定し、上記式(1)のように、基準温度Toと混練温度Tiのそれぞれ逆数の差から計算される指数値に測定間隔△tを乗じて足し合わせることによりに求める。また、測定間隔の時間△t(秒)は、任意に設定することができるが、好ましくは0.2〜2.0秒、より好ましくは0.5〜1.0秒にするとよい。ここでΣ(△t)秒は、120℃以上でノンプロ混練りした混練時間の合計である。式(1)中の添え字iは、1から測定終了に至るまでの順番を示す自然数である。例えばΣ(△t)=180秒、△t=0.5秒のとき、iは1〜360の自然数になる。
【0027】
ノンプロ混練りにおける150℃に換算した熱履歴量HHSは70〜350、好ましくは120〜300になるようにする。150℃に換算した熱履歴量HHSが70未満であると、高軟化点の粘着付与樹脂及びシリカの分散性を良好にすることができず、tanδ(0℃)が小さくなりウェット及びセミウェットグリップ性が悪化すると共に、耐摩耗性及びゴム強度が悪化する。また、150℃に換算した熱履歴量HHSが350を超えると、耐摩耗性及びゴム強度が悪化すると共に、ノンプロ混練りで調製されたゴム混合物にゴム焼けが起こり、成形加工性が悪化する。
【0028】
本発明の製造方法は、ノンプロ混練りの後に、混練り物の温度を冷ましてから、その混練り物に加硫系配合剤を添加し混合する。加硫系配合剤としては、例えば加硫及び架橋剤、加硫及び架橋促進剤などが例示される。以下、これを「ファイナル混合」ということがある。
【0029】
本発明の製造方法では、ノンプロ混練り及びファイナル混合を通常のゴム用混練機械、例えばバンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用することができる。
【0030】
本発明の製造法により得られたタイヤトレッド用ゴム組成物でトレッド部を構成した空気入りタイヤは、ウェット路面及びセミウェット路面でのグリップ性能が共に優れ、かつ耐摩耗性が優れる。特にこのタイヤトレッド用ゴム組成物は競技用タイヤのトレッド部を構成するのに好適である。
【0031】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0032】
表1,2に示す配合からなる11種類のタイヤトレッド用ゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜6)を以下の通り調製した。先ず表1,2のノンプロ混練りの欄に示した配合成分を秤量し、これを16L密閉式バンバリーミキサーで約4〜8分間混練し、混練温度が120℃以上になったときから混練り工程の終了まで(混練り物を16L密閉式バンバリーミキサーから放出するまで)、測定間隔△t=1秒毎に混練温度Tiを測定し、前述の式(1)に基づき150℃に換算した熱履歴量HHSを演算した。得られた熱履歴量HHSを表1,2に示した。
【0033】
16L密閉式バンバリーミキサーから放出した混練り物を室温冷却した後、この混練り物をロールに供し、表1,2のファイナル混合の欄に示した硫黄及び加硫促進剤を加え2分間混合し、タイヤトレッド用ゴム組成物を調製した。なお、比較例3により調製したゴム組成物にはゴム焼けが生じたこと、比較例5により調製したゴム組成物は、ファイナル混合時にロールに密着して成形加工性が悪いことが認められた。
【0034】
得られた11種類のタイヤトレッド用ゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜6)を用いて、所定形状の金型を使用して160℃、30分間加硫成形し試験用サンプルを作成し、下記に示す方法により動的粘弾性tanδ(0℃)及び引張り応力を評価した。また得られたゴム組成物によりタイヤトレッド部を構成したタイヤサイズ195/55R15の空気入りタイヤを製作し、下記に示す方法によりウェットグリップ性能、セミウェットグリップ性能及び耐摩耗性を評価した。
【0035】
動的粘弾性tanδ(0℃)
得られた試験用サンプルの動的粘弾性を、東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、初期歪み10%、振幅±2%、周波数20Hzで測定し、温度0℃におけるtanδを求めた。得られた結果は、それぞれ比較例1の値を100とする指数で表わし表1,2に示した。温度0℃におけるtanδ(0℃)の指数が大きいほどウェット制動性能が優れることを意味する。
【0036】
引張り応力
得られた試験用サンプルから、JIS K6251に準拠してJIS3号ダンベル型試験片を切り出した。JIS K6251に準拠し300%変形応力(300%モジュラス)を測定し、得られた結果は、比較例1の値を100とする指数として表1,2に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを意味する。
【0037】
ウェットグリップ性能、セミウェットグリップ性能
得られた13種類の空気入りタイヤ(実施例1〜5、比較例1〜8)を、それぞれリム(サイズ15×6J)に組み、空気圧150kPaで、テスト車両に装着し、テストドライバーがウェット路面及びセミウェット路面のサーキットコース(一周約2km)を走行させたときの計測3ラップ目での周回タイムを計測した。なお、ウェット路面の水深は、4.0mm以上、セミウェット路面の水深は、1.0mm以上4.0mm未満になるようにした。得られた結果は、比較例1の値の逆数をそれぞれ100とする指数にし「ウェットグリップ性能」「セミウェットグリップ性能」として表1,2に示した。この指数が大きいほどウェットグリップ性能、セミウェットグリップ性能がそれぞれ優れることを意味する。
【0038】
耐摩耗性
得られた13種類の空気入りタイヤ(実施例1〜5、比較例1〜8)を、それぞれリム(サイズ15×6J)に組み、空気圧150kPaで、テスト車両に装着し、テストドライバーがセミウェット路面のサーキットコース(一周約2km)を周回走行させた。計測15ラップ目終了後のタイヤの残溝を測定した。得られた結果は、比較例1の値の逆数を100とする指数にし「耐摩耗性」として表1,2に示した。この指数が大きいほど耐摩耗性に優れることを意味する。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
なお、表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・SBR:スチレンブタジエンゴム、旭化成社製E581、ゴム成分100重量部に対しオイル分37.5重量部を含む油展品、Tg=−25℃
・シリカ:デクサ社製7000GR、BET比表面積170m2/g
・シランカップリング剤:ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、デクサ社製Si69
・粘着性与樹脂1:テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製YSポリスターT160、軟化温度160℃
・粘着性与樹脂2:石油樹脂、三井化学社製FMR、軟化温度145℃
・粘着性与樹脂3:テルペンフェノール樹脂、ヤスハラケミカル社製YSポリスターT115、軟化温度115℃
・カーボンブラック:東海カーボン社製シースト9M、窒素吸着比表面積148m2/g
・アロマオイル:昭和シェル石油社製エキストラクト4号S
・酸化亜鉛:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・老化防止剤:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
・硫黄:鶴見化学工業社製金華印油入微粉硫黄
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーCZ−G

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部に、軟化点が130〜170℃の粘着付与樹脂を15〜50重量部、シリカを80重量部以上含む充填剤を80〜180重量部、加硫系配合剤以外の配合剤を配合し、かつシランカップリング剤をシリカ量の1〜15重量%配合した混合物を、120℃以上で混練りすると共に、そのときの混練り温度Tiを測定間隔△t(秒)毎に測定し、下記の式(1)で求められる150℃に換算した熱履歴量HHSを70〜350にした混練り工程を含むことを特徴とするタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
HHS=Σ[△t×exp(Ea/R×(1/To−1/Ti))] ・・・(1)
(式中、HHSは150℃に換算した熱履歴量、△tは測定間隔(秒)、Eaは活性化エネルギーでEa=22000cal/mol、Rは気体定数でR=1.987cal/(mol・K)、Toは基準温度でTo=150+273K、Tiは△t毎に測定したi番目の混練温度(K)である。)
【請求項2】
前記粘着付与樹脂が、テルペン系樹脂、石油系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
【請求項3】
前記タイヤトレッド用ゴム組成物が、競技用空気入りタイヤに使用されることを特徴とする請求項1又は2に記載のタイヤトレッド用ゴム組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法で製造されたタイヤトレッド用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2012−111878(P2012−111878A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262963(P2010−262963)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】