説明

タイヤ情報管理システム

【課題】本発明は、採鉱現場において砕石の運搬効率を高めることができる。
【解決手段】 タイヤ情報管理センター300は、車両100から受信した測定値が許容範囲内でない場合には、測定値の送信元の車両100に対してタイヤの劣化の進行を抑止するための劣化抑止情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の車両のそれぞれに装着されたタイヤの状態を測定するセンサにより出力された測定値を管理するタイヤ情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、採鉱現場においては、穿孔機が採鉱された砕石を分析し、該砕石の分析結果と該砕石の位置情報とを基地局に送信し、基地局が当該分析結果と当該位置情報とに基づいて砕石の分布マップを作成している(例えば、特許文献1参照)。この分布マップが用いられることにより、所望の成分を含有する砕石がトラックに積載されるため、より効率的な砕石の運搬業務が行われる。
【0003】
ところで、上記採鉱現場においては、ショベルカーが砕石をダンプトラックに積載する。そして、ダンプトラックは、積載された砕石の種類に応じて該当する目的地まで砕石を運搬して砕石を荷降ろす。その後、ダンプトラックは、再び採鉱現場に戻り、積載の待機をしているダンプトラックの最後尾に並び、これらの「積載」−「運搬」−「荷降ろし」−「待機」を繰り返す。
【0004】
このような採鉱現場においては、砕石の運搬効率を高めるために、ダンプトラックが持つ最大積載量の近くまで砕石が積載されるため、ダンプトラックのタイヤには大きな負担が掛かり、故障が生じ易い。このため、ダンプトラックを管理する運送業者は、タイヤの内圧や温度が許容範囲内であるか否かを細かに点検(以下、タイヤ点検)している。
【特許文献1】特開2000−204872号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ダンプトラックが停止している時にしか上記タイヤ点検が行われておらず、そのタイヤ点検はダンプトラックの走行中には行われていない。このため、ダンプトラックが走行している最中にタイヤに故障が生じても、そのタイヤの修理がされないままダンプトラックが採鉱現場に戻り、積載の待機をすることがある。
【0006】
したがって、故障の発生の可能性の高いタイヤを装着したダンプトラック(以下、発生可能性高タイヤ装着トラック)は、運搬の途中でバーストを生じさせ、砕石を目的地まで運搬できないことがある。その一方で、故障の発生の可能性の低いタイヤを装着したダンプトラック(以下、発生可能性低タイヤ装着トラック)は、最大積載量の近くまで積載された砕石を目的地まで適切に運搬することができるものの、上記発生可能性高タイヤ装着トラックの存在により砕石が積載されるまでの待機時間が長くなり、所定期間内における運搬効率を高めることができなかった。
【0007】
このため、採鉱現場における発生可能性高タイヤ装着トラックを従来よりも減らす一方で、発生可能性低タイヤ装着トラックを従来よりも増やすことにより、全体としての運搬効率を高めることができるシステムの開発が望まれていた。
【0008】
そこで、本発明は以上の点に鑑みてなされたものであり、採鉱現場において砕石の運搬効率を高めることができるタイヤ情報管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、受信した測定値が許容範囲内でない場合には、測定値の送信元の車両に対してタイヤの劣化の進行を抑止するための劣化抑止情報(タイヤの点検を促す情報、車両の積載量を減少させることを促す情報、車両の速度を減少させることを促す情報、又はタイヤの内圧調整を促す情報など)を送信する。
【0010】
これにより、車両の運転手が、タイヤの点検を促す劣化抑止情報を見ることにより、現在運転している車両を採鉱現場から整備工場に移動させた場合には、故障の発生の可能性の高いタイヤを装着した車両が採鉱現場から減るため、故障の発生の可能性の低いタイヤを装着した車両の積載の待機時間が短縮されることとなり、タイヤ情報管理システムは、その車両の所定時間における運搬効率を高めることができる。また、劣化抑止情報を見た運転手が、車両に負担が掛からない運転をした場合には、故障の発生の可能性の高いタイヤのバーストの発生が抑止されるため、タイヤ情報管理システムは、採鉱現場における運搬効率を高めることができる。
【0011】
また、タイヤに負担が掛からない走行経路(例えば、前記目的地までの距離が短い前記走行経路、前記目的地までの路面状態が良い前記走行経路)をタイヤ情報管理装置が選択して当該測定値の送信元の車両に送信することにより、車両の運転手は、送信された走行経路に従い、タイヤに大きな負担の掛からない走行経路で車両を移動させることができるため、車両は、積載された砕石を目的地まで適切に運搬することができる。
【0012】
さらに、タイヤ情報管理装置は、受信した測定値が許容範囲内でない場合には、測定値の時間的変化に基づいてタイヤの点検予測時期を算出し、測定値の送信元の車両を点検する整備工場に対して点検予測時期を送信する。これにより、整備工場の従業員は、車両に装着されたタイヤの点検時期を予め把握することができるため、故障の発生の可能性の高いタイヤを装着した車両を受け入れる前に、そのタイヤ点検を行うための準備(例えば、タイヤ点検の調整、必要なタイヤの発注)をすることができる。
【0013】
また、整備工場に対して点検予測時期が送信されているときには、その整備工場では、点検予測時期に該当する車両の入庫が予測されているため、当該車両の入庫によりタイヤ点検サイクルを大きく変更させなければならないという事態が低減される。
【0014】
さらに、タイヤ情報管理装置は、受信した測定値に含まれている「温度値」が許容範囲内でない場合および、測定値に含まれている「内圧値」が「温度値」により換算された値が許容範囲内でない場合には、当該「圧力値」が異常であると判定し、測定値の送信元の車両に対して劣化抑止情報を送信する。これにより、タイヤ情報管理装置は、「温度値」が許容範囲内でないことに連動して「圧力値」が異常であると判定し、測定値の送信元の車両に対して劣化抑止情報を送信することにより、該車両のバーストを未然に防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、採鉱現場において砕石の運搬効率を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(タイヤ情報管理システムの構成)
先ず、本実施形態におけるタイヤ情報管理システム1の概略構成について説明する。図1は、本実施形態におけるタイヤ情報管理システム1の概略構成を示す図である。
【0017】
図1に示すように、タイヤ情報管理システム1は、複数の車両100と、ショベルカー200と、タイヤ情報管理センター300と、整備工場400とを備えている。
【0018】
車両100は、採鉱現場A,B,…における鉱物資源を該当する目的地まで運搬する。ショベルカー200は、鉱物資源を車両100に積載する。
【0019】
タイヤ情報管理センター300は、複数の車両100のそれぞれに装着されたタイヤの状態を測定するセンサにより出力された測定値を無線により受信する。なお、タイヤ情報管理センター300は、タイヤ情報管理装置を構成している。
【0020】
整備工場400は、車両100又はその車両100に装着されたタイヤの点検などを行う工場であり、車両100又はタイヤの点検日時等を管理する整備工場内管理センター401を備えている。
【0021】
後述で詳細に説明するように、タイヤ情報管理センター300は、タイヤの状態を示す測定値(ここでは、タイヤの圧力値及び温度値)を車両100毎に管理しており、当該測定値が許容範囲内でない場合には、当該測定値の送信元の車両100に対して、整備工場400においてタイヤの点検を行うように指示するための情報(図1に示す情報1)を送信したり、車両100が現在位置から目的地まで向うための複数の走行経路(図1に示す走行経路1,走行経路2)のうちの最もタイヤに負担が掛からない走行経路(図1に示す情報2)などを送信したりする。
【0022】
次に、本実施形態におけるタイヤ情報管理システム1の内部構成を説明する。図2は、本実施形態におけるタイヤ情報管理システム1の内部構成を示す図である。
【0023】
図2に示すように、車両100は、センサ110と、通信部120とを備えている。センサ110は、タイヤ又は、タイヤが組み付けられているリムRに備えられており、タイヤの圧力及び温度を測定する。このセンサ110は、通信部120から受信した信号を電力として用いることにより、測定した圧力値及び温度値を通信部120に送信する。
【0024】
通信部120は、センサ110から受信した圧力値及び温度値を含むタイヤ情報をタイヤ情報管理センター300に送信する。ここで、タイヤ情報には、圧力値及び温度値のみならず、車両100を個々に識別するための固有の情報である車両識別情報(例えば、シリアルナンバー、車両ID)、タイヤを個々に識別するための固有の情報であるタイヤ識別情報(例えば、シリアルナンバー、タイヤID)、タイヤが装着されている位置の情報であるタイヤ位置情報(例えば、右前輪、左前輪)、タイヤサイズなどが含まれている。
【0025】
タイヤ情報管理センター300は、通信部310と、表示部320と、データ記憶部330と、CPU340とを備えている。
【0026】
通信部310は、タイヤ情報管理センター300と整備工場400との間、タイヤ情報管理センター300と車両100との間で通信接続を実行し、各種情報を送受信する。例えば、通信部310は、複数の車両100とタイヤ情報管理センター300との間で通信接続を実行し、車両100に装着されたタイヤの状態を測定するセンサ110により出力された測定値を無線により受信する。
【0027】
表示部320は、CPU340による判定結果や、データ記憶部330により記憶された情報を表示する。データ記憶部330は、通信部310により受信されたタイヤ情報などを記憶する。
【0028】
CPU340は、通信部310により受信された測定値が許容範囲内でない場合には、該測定値の送信元の車両100に対して、タイヤの劣化の進行を抑止するための劣化抑止情報を送信する。
【0029】
この劣化抑止情報には、タイヤの点検を促す情報、車両の積載量を減少させることを促す情報、車両の速度を減少させることを促す情報、又はタイヤの内圧調整を促す情報などが含まれている。
【0030】
CPU340は、受信された上記測定値に含まれる圧力値をそのまま用いてもよいし、下記(1)及び下記(2)に示すように換算して用いてもよい。
【0031】
ここで、(1)タイヤ内部にタイヤを冷却するための液体が充填されている場合には、CPU340は、受信された測定値に含まれる温度値(以下では、TI)及び圧力値(以下では、IP)、鉱山の月の平均温度(以下では、TA)に基づいて、以下の式1により当該圧力値IPを、タイヤ使用時における圧力値であるタイヤ使用時圧力値(以下では、IP1)に換算する。また、以下の式1乃至式3により、タイヤ使用時における適正な圧力値であるタイヤ設定目標内圧(IP2)とIP1との比較において、圧力値IPが適正であるか否か判断する。例えば、IP1とIP2との差分が許容範囲内であれば、CPU340は、圧力値IPが適正であると判断する。なお、鉱山の月の平均温度TAは、タイヤに備えられたセンサ110、又はタイヤ情報管理センター300に備えられたセンサ(図示せず)により測定される。
【数1】

【0032】
但し、IPAは、TRA等が推奨するタイヤの推奨内圧値である。
【0033】
上記のようにタイヤ内部にタイヤを冷却するための液体が充填されている場合には、当該液体が気化することによりタイヤの圧力値が変化し易くなる。このため、温度値TI、鉱山の月の平均温度TAを用いて、受信した測定値に含まれる圧力値IPを、タイヤ使用時圧力値IP1に変換することにより、CPU340は、上記式1乃至式3を用いて、圧力値IPが適正であるか否かを高精度に判別することができる。
【0034】
(2)タイヤ内部にタイヤを冷却するための液体が封入されていない場合には、CPU340は、以下の式4により、受信された測定値に含まれている圧力値IPをタイヤ使用時圧力値IP1に換算する。
【数2】

【0035】
なお、センサが備えられている場所などにより測定値は真の値とずれることがあるため、測定値である温度値TIなどは、入力操作により補正されてもよいし、特定の式により補正されてもよい。
【0036】
上記のようにタイヤ内部にタイヤを冷却するための液体が封入されていない時の圧力値は、当該液体の気化の関係により当該液体が封入されている時の圧力値とは異なってくる。このため、温度値TI、鉱山の月の平均温度TAを用いて、受信した測定値に含まれる圧力値IPを、タイヤ使用時圧力値IP1に変換することにより、CPU340は、上記式4乃至式6を用いて、圧力値IPが適正であるか否かを高精度に判別することができる。例えば、IP1とIP2との差分が許容範囲内であれば、CPU340は、圧力値IPが適正であると判断することができる。
【0037】
(タイヤ情報管理システムの動作)
次に、図3及び図4を参照して、本実施形態におけるタイヤ情報管理システム1の動作について説明する。
【0038】
図3に示すように、S101において、車両100は、センサ110を用いてタイヤ内部の圧力及び温度を測定する。
【0039】
S103において、車両100は、圧力値及び温度値である測定値を含むタイヤ情報をタイヤ情報管理センター300に送信する(図4参照)。
【0040】
S105において、タイヤ情報管理センター300は、受信した測定値が許容範囲内であるか否かを判定する。
【0041】
S107において、タイヤ情報管理センター300は、S105の判定結果を表示する。
【0042】
S109において、タイヤ情報管理センター300は、受信した測定値が許容範囲内である場合(異常有り;図4に示す斜線部を参照)にはS111の処理に移り、受信した測定値が許容範囲内でない場合(異常なし)には本処理を終了する。
【0043】
S111において、タイヤ情報管理センター300は、測定値の送信元の車両100に対して劣化抑止情報を送信する。当該車両100は、受信した劣化抑止情報を音により出力したり、画像により表示させたりする。
【0044】
このような本実施形態によれば、タイヤ情報管理センター300は、受信した測定値が許容範囲内でない場合には、測定値の送信元の車両100に対してタイヤの劣化の進行を抑止するための劣化抑止情報(タイヤの点検を促す情報、車両の積載量を減少させることを促す情報、車両の速度を減少させることを促す情報、又はタイヤの内圧調整を促す情報など)を送信する。
【0045】
これにより、車両100の運転手が、タイヤの点検を促す情報を見ることにより、現在運転している車両100を採鉱現場から整備工場400に移動させた場合には、タイヤ情報管理システム1は、故障の発生の可能性の高いタイヤを装着した車両100(以下、発生可能性高タイヤ装着車両)を従来よりも減らす一方で、故障の発生の可能性の低いタイヤを装着した車両100(以下、発生可能性低タイヤ装着車両)を従来よりも増やすことができ、全体としての運搬効率を高めることができる。
【0046】
また、上記発生可能性高タイヤ装着車両が整備工場400に移動することにより、採鉱現場において当該発生可能性高タイヤ装着車両が減る分、上記発生可能性低タイヤ装着車両の積載の待ち時間が短くなるため、当該発生可能性低タイヤ装着車両は、所定時間内における砕石の運搬効率を高めることができる。
【0047】
さらに、車両100の運転手が、車両100の積載量を減少させることを促す劣化抑止情報を見ることにより、次に積載する際の砕石の重量を減らすことができるため、その車両100は、バーストを未然に防ぐことができ、積載された砕石を目的地まで適切に運搬することができる。
【0048】
また、車両100の運転手が、車両100の速度を減少させることを促す劣化抑止情報を見ることにより、現在の速度を減少させることができるため、その車両100は、車両100の速度が減少した分、タイヤに大きな負担を掛けないようにすることができ、積載された砕石を目的地まで適切に運搬することができる。
【0049】
(変更例)
なお、車両100は、車両100の現在位置及び目的地を所定時間毎にタイヤ情報管理センター300に送信する位置特定部(図示せず)を備えてもよい。この位置特定部は、GPSなどが挙げられる。タイヤ情報管理センター300は、受信した測定値が許容範囲内でない場合には、測定値の送信元の車両100が現在位置から目的地へ向うための複数の走行経路の中から、タイヤに大きな負担が掛かり難い走行経路(例えば、目的地までの距離が短い走行経路、目的地までの路面状態が良い走行経路、タイヤの温度上昇を抑止する走行経路)を選択したり、又はタイヤの内圧調整を実施させるための情報を選択し、測定値の送信元の車両100に対して選択後の走行経路や、タイヤの内圧調整を実施させるための情報を上記劣化抑止情報に含めて送信してもよい。
【0050】
例えば、タイヤ情報管理センター300は、測定値が許容範囲から外れるにつれて、車両100の現在位置と目的地との間の距離が短くなる走行経路を予め複数記憶している。このタイヤ情報管理センター300は、受信した測定値が許容範囲内でない場合には、複数の走行経路の中から、測定値が許容範囲から外れている度合に応じた走行経路を選択し、測定値の送信元の車両100に対してその走行経路を含む劣化抑止情報を送信する。
【0051】
この場合には、車両100がより短い走行経路などを移動することにより、タイヤの温度上昇が抑止され、タイヤに大きな負担が掛かり難いため、その車両100は積載された砕石を目的地まで適切に運搬することができる。
【0052】
なお、許容範囲は、タイヤが故障する可能性の高い特定許容値を含んでもよい。タイヤ情報管理センター300は、受信した測定値が特定許容値に達した場合には、測定値の送信元の車両100が現在位置から目的地へ向うための複数の走行経路の中から、タイヤに大きな負担が掛かり難い走行経路を選択し、測定値の送信元の車両100に対して、選択した走行経路を示す走行経路情報を送信してもよい。なお、特定許容値は、実験又はシミュレーションなどにより決定される値である。
【0053】
ここで、本変更例に係るタイヤ情報管理センター300が車両100に対して走行経路情報を送信する一例について説明する。ここでは、車両100が現在位置から目的地へ向かうための複数の走行経路には、走行経路1と、走行経路1よりもタイヤに大きな負荷が掛り難い走行経路2とが含まれていることを前提とする(図1参照)。また、許容範囲の最大値は85℃であり、特定許容値は80℃であることを前提とする。
【0054】
もし、車両100が走行経路1経由で移動しているときに、車両100から受信した測定値が許容範囲の最大値85℃に到達した場合には、タイヤ情報管理センター300は、測定値の送信元の車両100のタイヤの負担を軽減するために、走行経路1よりもタイヤに大きな負担が掛り難い走行経路2を示す走行経路情報を送信することがある。
【0055】
この場合には、車両100の運転手は、受信された走行経路情報を参照することにより、現在の走行経路1を走行経路2に変更し、タイヤの負担をさらに軽減するために現在の走行速度(ここでは60km/h)よりも遅い走行速度(ここでは30km/h)で運転することができ、タイヤの故障を未然に防ぐことができる。
【0056】
しかしながら、走行経路2では、上記車両100に続く後続車も、車両100の走行速度(ここでは30km/h)に合わせなければならない。このため、走行経路2において車両100及び後続車は、積荷を目的地まで迅速に運搬することができず、全体としての運搬効率を低下させる場合があった。
【0057】
ところが、本変更例では、タイヤ情報管理センター300は、許容範囲の最大値85℃に測定値が到達した段階で上記走行経路情報を車両100に送信するのではなく、許容範囲の最大値85℃よりも低い特定許容値80℃に測定値が到達した段階で上記走行経路情報を車両100に送信している。これにより、タイヤ情報管理センター300は、車両100に対してより迅速に走行経路情報を送信することができる。
【0058】
このため、走行経路1を移動している車両100の運転手は、タイヤの測定値が許容範囲の最大値85℃に到達する前に、走行経路1よりもタイヤに大きな負担が掛り難い走行経路2に変更して、タイヤの負担を早期に軽減することができるため、走行経路2において極端に走行速度を下げなくても目的地まで運転することができ、後続車の走行速度を大きく下げさせないようにすることができる。これにより、走行経路2において車両100及び後続車は、全体としての運搬効率を低下させないようにすることができる。
【0059】
なお、タイヤ情報管理センター300は、受信した測定値が許容範囲内でない場合には、測定値の時間的変化に基づいてタイヤの点検予測時期を算出し、測定値の送信元の車両100を点検する整備工場400に対して点検予測時期を送信してもよい。
【0060】
これにより、整備工場400の従業員は、車両100に装着されたタイヤの点検時期を予め把握することができるため、故障の発生の可能性の高いタイヤを装着した車両100を受け入れる前に、そのタイヤ点検を行うための準備(例えば、タイヤ点検の調整、必要なタイヤの発注)をすることができる。
【0061】
また、整備工場400に対して点検予測時期が送信されているときには、その整備工場400では、点検予測時期に該当する車両100の入庫が予測されているため、当該車両100の入庫によりタイヤ点検サイクルを大きく変更させなければならないという事態が低減される。
【0062】
なお、タイヤ情報管理センター300は、受信した測定値に含まれている「温度値」が許容範囲内でない場合および、測定値に含まれている「内圧値」が「温度値」により換算された値が許容範囲内でない場合には、当該「内圧値」が異常であると判定し、測定値の送信元の車両100に対して劣化抑止情報を送信してもよい。ここで、タイヤの圧力と温度とは相互に密接に関係しており、タイヤの圧力が通常よりも低い場合には、タイヤが大きく撓み、タイヤの温度が上昇する。これにより、「温度値」が許容範囲内でないということは、「圧力値」も許容範囲内でないという可能性が高い。このため、タイヤ情報管理センター300は、「温度値」が許容範囲内でないことに連動して「圧力値」が異常であると判定し、測定値の送信元の車両100に対して劣化抑止情報を送信することにより、該車両100のバーストを未然に防ぐことができる。
【0063】
なお、タイヤ情報管理センター300は、受信した測定値が許容範囲内でない場合には、その旨を、測定値の送信元の車両100を点検する整備工場400に対して送信してもよい。整備工場400は、上記その旨を受信した場合には、測定値の送信元の車両100(例えば、図5に示すID−E1)の点検日時を他の車両の点検日時に対して優先して設定し直してもよい(例えば、図5に示すID−E1)。
【0064】
なお、整備工場内管理センター401は、タイヤの点検日時、タイヤの残溝深さなどのメンテナンス情報を、タイヤに備えられている記憶部(ICチップなど)に記憶させてもよい。この場合には、車両100がタイヤ情報及びメンテナンス情報をタイヤ情報管理センター300に送信し、タイヤ情報管理センター300がメンテナンス情報及びタイヤ情報を車両毎に管理する。これにより、複数の車両100を管理する運送業者は、複数の車両100のメンテナンス状況を瞬時に把握することができ、タイヤの故障を未然に防ぐことができる。
【0065】
以上、本発明の一例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、各部の具体的構成等は、適宜設計変更可能である。また、実施形態の構成及び各変更例の構成はそれぞれ組み合わせることが可能である。また、実施形態及び各変更例の作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、実施形態及び各変更例に記載されたものに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態におけるタイヤ情報管理システムの概略構成を示す図である。
【図2】本実施形態におけるタイヤ情報管理システムの内部構成を示す図である。
【図3】本実施形態におけるタイヤ情報管理システムの動作を示す図である。
【図4】本実施形態におけるタイヤ情報の内容を示す図である。
【図5】本変更例における車両ID毎のタイヤ点検日時を示す図である(その1)。
【図6】本変更例における車両ID毎のタイヤ点検日時を示す図である(その2)。
【符号の説明】
【0067】
1…タイヤ情報管理システム、100…車両、110…センサ、120…通信部、200…ショベルカー、300…タイヤ情報管理センター、310…通信部、320…表示部、330…データ記憶部、340…CPU、400…整備工場、401…整備工場内管理センター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物資源を運搬する複数の車両のそれぞれに装着されたタイヤの状態を測定するセンサと、前記センサにより出力された測定値を無線により受信するタイヤ情報管理装置とを備え、採鉱現場において用いられるタイヤ情報管理システムであって、
前記タイヤ情報管理装置は、受信した前記測定値が許容範囲内でない場合には、該測定値の送信元の前記車両に対して、前記タイヤの劣化の進行を抑止するための劣化抑止情報を送信するタイヤ情報管理システム。
【請求項2】
前記劣化抑止情報は、前記タイヤの点検を促す情報であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報管理システム。
【請求項3】
前記劣化抑止情報は、前記車両の積載量を減少させることを促す情報であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報管理システム。
【請求項4】
前記劣化抑止情報は、前記車両の速度を減少させることを促す情報であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報管理システム。
【請求項5】
前記劣化抑止情報は、前記車両のタイヤの内圧調整を促す情報であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報管理システム。
【請求項6】
前記車両の現在位置及び目的地を前記タイヤ情報管理装置に送信する位置特定部を備え、
前記タイヤ情報管理装置は、受信した前記測定値が前記許容範囲内でない場合には、該測定値の送信元の前記車両が前記現在位置から前記目的地へ向うための複数の走行経路の中から、前記タイヤに大きな負担が掛かり難い前記走行経路を選択し、前記測定値の送信元の前記車両に対して該走行経路を前記劣化抑止情報に含めて送信することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報管理システム。
【請求項7】
前記タイヤ情報管理装置は、受信した前記測定値が前記許容範囲内でない場合には、前記複数の走行経路の中から、前記目的地までの距離が短い前記走行経路を選択することを特徴とする請求項6に記載のタイヤ情報管理システム。
【請求項8】
前記タイヤ情報管理装置は、受信した前記測定値が前記許容範囲内でない場合には、前記複数の走行経路の中から、前記目的地までの路面状態が良い前記走行経路を選択することを特徴とする請求項6に記載のタイヤ情報管理システム。
【請求項9】
前記タイヤ情報管理装置は、受信した前記測定値が前記許容範囲内でない場合には、該測定値の時間的変化に基づいてタイヤの点検予測時期を算出し、前記測定値の送信元の前記車両を点検する整備工場に対して前記点検予測時期を送信することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報管理システム。
【請求項10】
前記測定値は、タイヤの内圧値及び温度値を含んでおり、
前記タイヤ情報管理装置は、受信した前記測定値に含まれている前記温度値が許容範囲内でない場合には、該測定値に含まれている前記内圧値が異常であると判定し、該測定値の送信元の前記車両に対して前記劣化抑止情報を送信することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報管理システム。
【請求項11】
前記車両の現在位置及び目的地を前記タイヤ情報管理装置に送信する位置特定部を備え、
前記許容範囲は、前記タイヤが故障する可能性の高い特定許容値を含んでおり、
前記タイヤ情報管理装置は、
受信した前記測定値が前記特定許容値に達した場合には、該測定値の送信元の前記車両が前記現在位置から前記目的地へ向うための複数の走行経路の中から、前記タイヤに大きな負担が掛かり難い走行経路を選択し、
前記測定値の送信元の前記車両に対して、選択した前記走行経路を示す走行経路情報を送信することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ情報管理システム。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−91202(P2007−91202A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−107950(P2006−107950)
【出願日】平成18年4月10日(2006.4.10)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(505326645)ブリヂストンファイアストンノースアメリカンタイヤ エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】