説明

タイヤ歪み検出用センサシステム

【課題】 タイヤの固体部分に生じている歪みを直接検出し、かつ回転系非回転系間の電力・信号伝達が不要なタイヤ歪み検出用センサシステムを提供する。
【解決手段】 歪みに応じて反射波長が変化するFBGを形成した光ファイバ1をタイヤ2の内層3に埋め込み、この光ファイバ1とタイヤ外部との間で光伝送を行うためのカプラ4をタイヤ2の側部に設けた。タイヤ2の内層3の変形に応じてFBGの反射波長が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両運動時のタイヤの挙動を計測するシステムに係り、タイヤの固体部分に生じている歪みを直接検出し、かつ回転系非回転系間の電力・信号伝達が不要なタイヤ歪み検出用センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の操縦性を向上させるために、車両が運動するときのタイヤの挙動を計測或いは予測することができることが望ましい。その技術のひとつとして路面に対するタイヤの摩擦を予測する技術が検討されており、例えば、タイヤに圧力センサを搭載し、検知されたタイヤ内の空気圧をタイヤの摩擦の予測に用いることで、この予測をブレーキ制御に利用することができる。
【0003】
しかし、より高い精度でタイヤの挙動を計測するには、空気圧から間接的にタイヤの挙動を推定するよりも、直接、タイヤの本体、即ち固体部分に生じている物理量を検知するのが望ましい。
【0004】
この種の技術分野における先行技術文献として、以下のようなものがある。
【0005】
特許文献1には、タイヤ内部空間に連通するベローズに光ファイバを取り付けて、タイヤ空気圧に応じたベローズの変形を光ファイバの光量の変化として検知し、車軸の離れたところに設けた受光器まで光ファイバで伝送することが開示されている。
【0006】
特許文献2には、タイヤトレッド内部にトレッド幅方向に間隔をあけて正負の電極を埋設し、電極間の電気抵抗の変化からトレッドの変形量を判断することが開示されている。
【0007】
特許文献3には、タイヤのトレッド領域に圧電性或いは圧抵抗性のラバーを組み込むことにより轍の挙動をモニタすることが開示されている。
【0008】
特許文献4には、タイヤのリム部の空気室側に超音波送信手段・受信手段を配置してトレッド部の内側で反射した超音波からタイヤの歪みを検知することが開示されている。
【0009】
特許文献5には、タイヤのリム部の空気室側とトレッド部の空気室側に電極を配置し、電極間の静電容量からタイヤの歪みを検知することが開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平6−199117号公報
【特許文献2】特開2003−054428号公報
【特許文献3】特許第2875014号公報
【特許文献4】特開平7−81341号公報
【特許文献5】特開平7−81337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既に述べたように、より高い精度でタイヤの挙動を計測するには、直接、タイヤの固体部分に生じている物理量を検知するのが望ましい。特許文献2〜5では、トレッド領域の歪み或いはリム部トレッド部間距離を検知することでこれを実現している。
【0012】
しかし、特許文献2〜5では、回転系であるタイヤのトレッド内部若しくは空気室内に電極や超音波手段を配置するので、これらのセンサと車両の非回転系との間で電力や電気信号を伝達するのが困難であると共に電磁ノイズの影響を免れることはできない。また、タイヤの複数箇所の歪みを検出しようとすると、電極や超音波手段を複数配置し、それに応じた配線も必要となる。
【0013】
一方、特許文献1では、ベローズで取り出した圧力を光ファイバの光量変化として検知しているので、回転系への電力供給が不要かつ電磁ノイズの影響もない。しかし、特許文献1では、タイヤ空気圧を検知しているにすぎない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、タイヤの固体部分に生じている歪みを直接検出し、かつ回転系非回転系間の電力・信号伝達が不要なタイヤ歪み検出用センサシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、歪みに応じて反射波長が変化するファイバブラッググレーティング(FBG)を形成した光ファイバをタイヤの内層に埋め込み、この光ファイバとタイヤ外部との間で光伝送を行うためのカプラをタイヤの側部に設けたものである。
【0016】
前記光ファイバの少なくともFBG部分の光軸をタイヤの側面から見て径方向に向けてもよい。
【0017】
前記光ファイバの少なくともFBG部分の光軸をタイヤの回転方向に向けてもよい。
【0018】
前記光ファイバの少なくともFBG部分の光軸をタイヤの幅方向に向けてもよい。
【0019】
前記カプラが車両の内側に臨むよう前記タイヤを車両の駆動シャフトに取り付け、この駆動シャフトに前記カプラからの光軸を駆動シャフトの径方向外方に曲げるミラーを設けると共にこのミラーに対して駆動シャフトの径方向外方から臨む受光器を設け、この受光器の電気信号を車両の非回転系に伝達するスリップリングを設けてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0021】
(1)タイヤの内層の歪みを直接検出することができる。
【0022】
(2)電磁ノイズの影響をなくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0024】
図1に示されるように、本発明に係るセンサシステムは、歪みに応じて反射波長が変化するファイバブラッググレーティング(FBG)を形成した光ファイバ1(この図では光ファイバ1は断面が見えている)をタイヤ2の内層3に埋め込み、この光ファイバ1との光伝送をタイヤ外部との間で行うためのカプラ4をタイヤ2の側部に設けたものである。
【0025】
タイヤ2の内層3とは、タイヤ2の本体である固体部分のことを言う。 図示のように、光ファイバ1は、タイヤ2の内層3のうち、空気室に近い側に配置されている。また、光ファイバ1は、タイヤ2の内層3の厚み方向に複数段に重ねて配置されている。光ファイバ1のうちFBGの部分は、光軸をタイヤの径方向(タイヤを側面から見て車軸に向かう方向)、周方向(回転方向)、幅方向(車軸に沿った方向)など歪みを知りたい方向に向けて配置するとよい。光ファイバ1の引き回しの具体的な形態については後述する。
【0026】
光ファイバ1の一端はカプラ4に光結合させてある。カプラ4にはタイヤ外部に臨む集光レンズ(図示せず)を付随させてもよい。
【0027】
車両の車軸(駆動シャフト)5の一端にはホイル取付部6が設けられており、このホイル取付部6にタイヤ2のホイル7を固定することで、タイヤ2が駆動シャフト5に取り付けられる。タイヤ2は、カプラ4が車両の内側(図示左側)に臨むよう取り付ける。ホイル取付部6は、駆動シャフト5側が拡径されてフランジ8が形成されている。これにより、フランジ8はタイヤ2の側部に対向することになる。このフランジ8には、カプラ4からの光軸を駆動シャフト5の径方向外方に曲げるミラー9が設けられている。ミラー9及びカプラ4の駆動シャフト5の中心を起点とする径方向位置は、ブレーキ10が光軸に干渉しない位置とする。ミラー9にはタイヤ2に臨む集光レンズ(図示せず)を付随させてもよい。
【0028】
この実施の形態では、フランジ8はミラー9よりも駆動シャフト5の径方向外方に延出され、その延出部分11に光源及び受光器(図示せず)を備えた光送受信器12が設けられる。光送受信器12はミラー9に対して駆動シャフト5の径方向外方から臨むように配置されている。従って、光源光がミラー9で反射し自由空間を伝搬してカプラ4に入射し、タイヤ2の内層3の光ファイバ1を通ってカプラ4から出射される戻り光が自由空間を伝搬しミラー9で反射して受光器に入射することができる。フランジ8に取り付けられている光送受信器12及びミラー9は駆動シャフト5と共に回転し、タイヤ2に設けたカプラ4も駆動シャフト5及びミラー9と共に回転するので、光送受信器12及びミラー9とカプラ4は同期回転し、光軸がずれることがない。
【0029】
なお、光送受信器12からの光源光は理想的な平行光とするより、適宜な角度で広がる光にするとよい。これにより、光送受信器12とカプラ4の相対的位置が多少ずれても、光源光がカプラ4に確実に入射する。
【0030】
このように、フランジ8の延出部分11の外周にスリップリング13を設けるシステムでは、ミラー9と光送受信器12との間で時間的に連続して光信号の送受信をすることができる。この場合、このスリップリング13は、車両の非回転系に設けられているエンジンコントロールユニット(ECU)14と回転系に設けられている光送受信器12との間の電力及び信号の伝達を行うものである。ECU14は、本センサシステムを電気的に制御するものである。ECU14は、エンジンルーム或いはコンソールパネル内に設置されており、スリップリング13までケーブル15が配線されている。
【0031】
フランジ8の延出部分11の外周にスリップリング13を設けないシステムでは、ECU14からのケーブル15を非回転系に設けた光送受信器12に配線する。この場合、ミラー9が駆動シャフト5と共に回転すると1回転につき1回だけ光送受信器12とミラー9の光軸が一致し、そのときだけ光信号が送受信されることになる。
【0032】
ここで、光ファイバ1で構成するFBGファイバセンサについて詳しく説明しておく。
【0033】
図2に示されるように、FBGファイバセンサは、光ファイバ21中に光軸方向に一定間隔で格子が形成されたブラッグ格子(FBG)22がその格子間隔に基づく特定の波長の光を反射する性質を利用したものである。この光ファイバ21に光軸方向の伸縮歪みが加わってブラッグ格子22の格子間隔が変化すると、反射波長も変化するので、反射波長の変化から歪みを検出することができる。
【0034】
図示のように、光ファイバ21の一端から光源23の光を入射させる。この光は連続的に広いスペクトラム幅を持つか、或いは広いスペクトラム幅の中に離散的に複数の狭い幅のスペクトラムを持つか、或いは狭い幅のスペクトラムを広い幅でスイープする。この光は、大部分がブラッグ格子22を通過するが、特定の波長(色)の光(破線矢印)のみがブラッグ格子22で反射されて光源23の方向に戻る。この戻り光を分離して受光器24で受光する。受光器24には、受光した光の波長を解析するスペクトラムアナライザ(図示せず)が接続される。
【0035】
ここで、光ファイバ21のブラッグ格子22の部分に歪みが生じると、ブラッグ格子22の間隔が変化し、反射波長も変化する。受光した光の波長を解析して当初の反射波長とのズレ(変化)を検出し、この波長のズレを歪みに変換する。
【0036】
また、図示のようにブラッグ格子22が適宜間隔をおいて複数設けられている場合、最初のブラッグ格子22を通過した光は次のブラッグ格子22に入射する。このときブラッグ格子22の格子間隔をブラッグ格子22毎に異ならせておけば、反射中心波長(歪みのないときの反射波長)が異なるので、次のブラッグ格子22では最初のブラッグ格子22とは異なる波長の光を反射する。従って、光ファイバ21中に複数のブラッグ格子22を形成し、スペクトラム幅の広い光を使用することで、複数箇所の歪みを独立して検出することができる。
【0037】
FBGファイバセンサは、歪みによる伝送損失の増大を受光光量の変化として検知するセンサに比べて、伝送損失が増大したことによる光量低下がないこと、距離分解能が高く歪みの発生場所が特定しやすいことなどの利点があり、歪み検出の精度が高い。
【0038】
次に、本発明に係るセンサシステムの制御における信号の流れを説明する。
【0039】
図3に示されるように、ECU14(符号は図1と同;以下同)からの電力及び電気信号(電気は実線矢印)がスリップリング13を介して(スリップリング13を設けない場合はケーブルより)光送受信器12に供給される。光送受信器12からの光(光は破線矢印)は、ミラー9で反射してカプラ4から光ファイバ1に入射する。光ファイバ1中のFBGで反射した戻り光は、光ファイバ1を戻ってカプラ4から出射する(この図では説明の便宜上、光が一方向に通過するように示してあるが、実際は光ファイバ1中で反射した戻り光を受光する)。この戻り光は、ミラー9で反射して光送受信器12に入射する。光送受信器12で受光された電気信号は、スリップリング13を介して(スリップリング13を設けない場合はケーブルより)ECU14に伝達される。ECU14は、受光した光の波長を解析して反射波長の変化を検出し、歪みに変換する。
【0040】
図4(a)〜図4(c)に示されるように光ファイバ1は種々の形態で引き回すことができる。図4(a)のものは、光ファイバ1をタイヤ2の周方向(回転方向)に巻き回したもので、周回毎に幅方向に所定ピッチでずらせてある。図示しないがFBGを光ファイバ1中に任意の間隔で複数設けることにより、タイヤ2の全周面を周方向及び幅方向に適宜分割した複数の検出点を設けることができる。図4(b)のものは、光ファイバ1をタイヤ2の幅方向に一側から他側まで延ばし、周方向に所定ピッチでずらせてからまた幅方向に延ばすというジグザグな配線になっている。こちらもFBGを光ファイバ1中に任意の間隔で複数設けることにより、タイヤ2の全周面を周方向及び幅方向に適宜分割した検出点を設けることができる。図4(c)のものは、光ファイバ1をタイヤ2の幅方向に対して斜めに延ばしてジグザグ配線すると共にタイヤ2の内層3の厚み方向に重なる別の段では幅方向に対する光ファイバ1の傾斜を異ならせてある。
【0041】
これらの図には側面における引き回しは示されないが、周方向の引き回しの途中に適宜径方向の引き回しを挿入したり、側面でも周方向に引き回すなどして側面を含むタイヤ全面をくまなく引き回すことができる。これらの引き回しは1本の光ファイバ1で一筆書きのように実現することができる。もちろん、副数本の光ファイバ1で実現することもできる。
【0042】
各方向の引き回し箇所にFBGを設けることで、周方向、幅方向、径方向、或いは斜め方向に光軸を向けたFBGを配置することができる。即ち、各方向別の歪みを検出する複数の検出点を設けることができる。
【0043】
次に、本発明のセンサシステムを用いたタイヤの歪み分布計測について説明する。
【0044】
図5(a)には、タイヤ周方向及び幅方向にメッシュ状に配線した光ファイバ1が示してある。各メッシュの1辺毎にFBGが設けられているものとする。図1〜図3で説明したように、光送受信器12からの光は、ミラー9で反射してカプラ4から光ファイバ1に入射する。光ファイバ1に入射した光は、各メッシュの各FBGを順次通過する。その際、各FBG毎の格子間隔に基づく特定の波長の光が反射され、その戻り光は、光ファイバ1を戻ってカプラ4から出射し、ミラー9で反射して光送受信器12に入射する。ECU14は、受光した光の波長を解析して反射波長の変化を検出し、歪みに変換する。従って、各メッシュの各FBGにおける歪みが求まる。FBGに生じている歪みはタイヤ2の内層3に生じている歪みであるから、タイヤ全面の歪み分布が計測されたことになる。
【0045】
図5(b)には、計測された歪み分布を等高線h1,h2,h3で示してある。等高線h1の内側、等高線h1,h2間、等高線h2,h3間、等高線h3の外側の順で歪みが大きい。ここでは歪みの大きさのみを示したが歪みの向きも得られることは言うまでもない。このように、本発明では、タイヤの内層の歪みを直接検出することができると共に、多点計測により歪み分布を計測することができ、車両運動時のタイヤの挙動をリアルタイムで精度よく計測することができる。
【0046】
図6に示されるように、駆動シャフト5及びホイル7が路面61に対して傾斜し、タイヤ2が路面61に接する面及びその近傍において著しく変形しているとき、この部分の歪み分布を計測することにより、ECU14は、この変形の状況を定量的に認識することができる。こうしたタイヤの変形は、車両のコーナリング、スリップ、路面状態(例えば、濡れた路面、凍結した路面)、車速などが要因となって発生する。ECU14は、タイヤの変形を認識することで、車両速度の制御、ブレーキの制御、ステアリング補助、ハンドル補助などの車両安定化制御に役立てることができる。
【0047】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。
【0048】
図7に示したセンサシステムは、光ファイバ1をタイヤ2の内層3に埋め込み、その光ファイバ1をタイヤ2の外へ引き出してホイル7の側部中心に設けたカプラ71に接続したものである。駆動シャフト5の先端中心にはカプラ71に対向するロータリ変換器72を設けてある。このロータリ変換器72はベアリング73を介して駆動シャフト5に支持されており、駆動シャフト5の回転にかかわらず、ロータリ変換器72は静止するようになっている。ここで、ロータリ変換器72の静止手段としては、例えば、図7の右下に拡大して示すように駆動シャフト5が磁性体(例えば、SNCM(ニッケルクロムモリブデン鋼)、S45C(炭素鋼)など)の場合、駆動シャフト5はロータリ変換器72を配置する部分のみを非磁性体で構成し、その非磁性体部分75の外側の非回転系に磁石76を配置し、ロータリ変換器72にはこの磁石76に対向する磁石77を設け、両磁石76,77間の磁力でロータリ変換器72を固定(静止)させるものが考えられる。この場合、駆動シャフト5は磁性体に非磁性体を複合させて構成することになる。駆動シャフト5の全体が非磁性体の場合、特に非磁性体部分75を設ける必要はなく、磁石76,77を設けるだけでよい。
【0049】
ロータリ変換器72は、入射する光の波長に応じて光強度が異なる光を出射する光学素子とその光強度を電圧に変換するO/E変換器を利用しカプラ71から入射する光信号の波長を電圧に変換する光波長/電圧変換機能と、その電圧を変調して信号送受信器121に送信する機能とを合成した光波長/無線変換機能を有すると共に、信号送受信器121からの無線変調信号を受信して波長を表す電圧を得る機能とその電圧に対応した波長の光信号を出射する電圧/光波長変換機能とを合成した無線/光波長を有し、無線送受信に必要な発信回路・増幅回路・変調回路などの回路を内蔵している。これにより、ロータリ変換器72から車両の非回転系に設けられている信号送受信器121までは無線74を利用して送受信ができる。
【0050】
タイヤ2の駆動に関する機構部分は図1と同じであるので説明は省略する。
【0051】
このセンサシステムの制御における信号の流れは図8のようになる。
【0052】
図8に示されるように、ECU(符号は図7と同;以下同)14からの電力及び電気信号(光波長を表す)が配線により信号送受信器121に供給される。信号送受信器121からは光波長を表す信号が無線74(図7参照)によりロータリ変換器72に至り、ロータリ変換器72で無線/光波長変換された光がカプラ71に入射し、カプラ71から光ファイバ1に入射する。光ファイバ1中のFBGで反射した戻り光は、光ファイバ1を戻ってカプラ71から出射する。この光は、ロータリ変換器72において光波長/無線変換変換され、その無線信号(光波長を表す)が無線74により信号送受信器121に伝送される。信号送受信器121で受信された電気信号は、配線によりECU14に伝達される。ECU14は、この電気信号に基づき光の波長を解析して反射波長の変化を検出し、歪みに変換する。
【0053】
図7に示した実施形態にあっては、タイヤ2が1回転している間、時間的に連続して信号送受信器121から光ファイバ1を経由しての光送受信ができることになる。これに対し、図1の形態では、回転系であるフランジ8の延出部分11に光送受信器12を取り付け、非回転系からの電気信号をスリップリング13を介して光送受信器12に伝送したが、光送受信器12を固定系に設けた形態とすると、光送受信器12とミラー9の光軸はタイヤ2が1回転する間に1回しか光伝送ができない。つまり、図7に示した実施形態は信号送受信器121を固定系に設ける場合に連続伝送を実現できる形態である。なお、ロータリ変換器72に電力供給が必要な場合は、タイヤ回転を利用した電磁誘導などで電力供給をまかなうとよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態を示す車両のタイヤ近傍の断面図である。
【図2】本発明に用いるFBGファイバセンサの原理を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態における信号の流れを示す図である。
【図4】(a)〜 (c)は、それぞれ本発明における光ファイバ引き回しの形態を示すタイヤ正面透視図である。
【図5】本発明によるタイヤの歪み分布計測を説明する図であり、(a)はメッシュのみ、(b)はメッシュ上に等高線を示した図である。
【図6】タイヤの変形を示す断面図である。
【図7】本発明の一実施形態を示す車両のタイヤ近傍の断面図である。
【図8】本発明の一実施形態における信号の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 光ファイバ
2 タイヤ
3 内層
4 カプラ
5 駆動シャフト
9 ミラー
12 光送受信器
13 スリップリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歪みに応じて反射波長が変化するファイバブラッググレーティング(FBG)を形成した光ファイバをタイヤの内層に埋め込み、この光ファイバとタイヤ外部との間で光伝送を行うためのカプラをタイヤの側部に設けたことを特徴とするタイヤ歪み検出用センサシステム。
【請求項2】
前記光ファイバの少なくともFBG部分の光軸をタイヤの側面から見て径方向に向けたことを特徴とする請求項1記載のタイヤ歪み検出用センサシステム。
【請求項3】
前記光ファイバの少なくともFBG部分の光軸をタイヤの回転方向に向けたことを特徴とする請求項1記載のタイヤ歪み検出用センサシステム。
【請求項4】
前記光ファイバの少なくともFBG部分の光軸をタイヤの幅方向に向けたことを特徴とする請求項1記載のタイヤ歪み検出用センサシステム。
【請求項5】
前記カプラが車両の内側に臨むよう前記タイヤを車両の駆動シャフトに取り付け、この駆動シャフトに前記カプラからの光軸を駆動シャフトの径方向外方に曲げるミラーを設けると共にこのミラーに対して駆動シャフトの径方向外方から臨む受光器を設け、この受光器の電気信号を車両の非回転系に伝達するスリップリングを設けたことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載のタイヤ歪み検出用センサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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