説明

タイヤ用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】特定の窒素含有化合物に由来する構成単位を主鎖中に有する変性スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、特定のシランカップリング剤とを含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、及びそれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイヤの転がり抵抗を低減(転がり抵抗性能を向上)させることにより、車の低燃費化が行なわれてきた。近年、車の低燃費化の要求がますます強くなってきており、タイヤ部材の中でもタイヤにおける占有比率の高いトレッドを製造するためのゴム組成物に対して、優れた低発熱性が要求されている。
【0003】
ゴム組成物の低発熱性を満足させる方法として、補強用充填剤の含有量を減量させる方法が知られているが、ゴム組成物の硬度が低下し、車のハンドリング性能(操縦安定性)やウェットグリップ性能が低下したり、耐摩耗性が低下したりするという問題があった。
【0004】
また、補強用充填剤であるカーボンブラックをシリカで置換する方法が知られている。しかし、シリカは表面に親水性シラノール基が存在するため、カーボンブラックに比べゴム(特に、タイヤ用でよく使われる天然ゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムなど)との親和性が低く、耐摩耗性や力学強度(引張強度や破断伸び)の点で劣る場合があった。
【0005】
特許文献1には、無水シリカ及び含水シリカをともに含有することにより、ウェットグリップ性能を大幅に改善できるタイヤ用ゴム組成物が開示されている。しかしながら、ウェットグリップ性能とともに、低燃費性及び耐摩耗性を改善する点については改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−192842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記課題を解決し、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を改善できるタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記一般式;
【化1】

(式中、Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素、
【化2】

又は
【化3】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは2価の飽和炭化水素基を表し、窒素、酸素又は硫黄を含んでいてもよく、
【化4】

又は
【化5】

で置換されていてもよい。Zは2価の飽和炭化水素基を表し、窒素、酸素又は硫黄を含んでいてもよい。R〜Rは、同一若しくは異なって、水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。)で表される窒素含有化合物に由来する構成単位を主鎖中に有する変性スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、下記式(1)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤とを含有するタイヤ用ゴム組成物に関する。
【化6】

(式(1)中、R21は−O−(R25−O)−R26(t個のR25は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R26は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。tは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R22及びR23は、同一若しくは異なって、R21と同一の基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R27(R27は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。R24は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
【化7】

【化8】

(式(2)、(3)中、xは0以上の整数である。yは1以上の整数である。R28は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R29は水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。R28とR29とで環構造を形成してもよい。)
【0009】
前記ゴム成分100質量%中の前記変性スチレンブタジエンゴムの含有量が5質量%以上であることが好ましい。また、前記変性スチレンブタジエンゴムは更に、少なくとも一方の末端が、窒素、酸素、ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む官能基を有する変性剤で変性された重合体であることが好ましい。
【0010】
前記ゴム組成物は、トレッドに使用されることが好ましい。
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、特定の変性スチレンブタジエンゴム、シリカ及び特定のシランカップリング剤を含有するゴム組成物であるので、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴム組成物は、下記一般式;
【化9】

(式中、Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素、
【化10】

又は
【化11】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは2価の飽和炭化水素基を表し、窒素、酸素又は硫黄を含んでいてもよく、
【化12】

又は
【化13】

で置換されていてもよい。Zは2価の飽和炭化水素基を表し、窒素、酸素又は硫黄を含んでいてもよい。R〜Rは、同一若しくは異なって、水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。)で表される窒素含有化合物に由来する構成単位を主鎖中に有する変性スチレンブタジエンゴム(変性SBR)を含むゴム成分と、シリカと、下記式(1)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤とを含有する。
【化14】

(式(1)中、R21は−O−(R25−O)−R26(t個のR25は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R26は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。tは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R22及びR23は、同一若しくは異なって、R21と同一の基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R27(R27は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。R24は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
【化15】

【化16】

(式(2)、(3)中、xは0以上の整数である。yは1以上の整数である。R28は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R29は水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。R28とR29とで環構造を形成してもよい。)
【0013】
上記成分を併用することにより、シリカを良好に分散でき、低燃費性、耐摩耗性を両立でき、優れたウェットグリップ性能も得られる。特に低燃費性、耐摩耗性について顕著な改善効果が得られ、両性能に優れることから環境に配慮できる。また、優れた操縦安定性も得られる。ドライグリップ性能、力学強度、加工性も良好に得られる。
【0014】
上記変性SBRとしては、例えば、特開2010−116545号公報、特開2010−116546号公報に記載のものを使用することができる。
【0015】
Xで表される飽和炭化水素基が窒素、酸素又は硫黄を含む形態としては、例えば、(CR1011−NR12−(CR1314、(CR1011−O−(CR1314、(CR1011−S−(CR1314などが挙げられる。R10〜R14は、同一若しくは異なって、水素、炭素数1〜30(好ましくは1〜5)の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30(好ましくは3〜10)の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基(好ましくは5〜10)を表す。m及びnは1〜9(好ましくは1〜6)の整数を表す。mが2以上の場合、複数の(CR1011)のそれぞれは同じであっても異なってもよく、nが2以上の場合、複数の(CR1314)のそれぞれは同じであっても異なってもよい。
【0016】
Zで表される飽和炭化水素基が窒素、酸素又は硫黄を含む形態についても、Xで表される飽和炭化水素基と同様のものが挙げられる。
【0017】
シリカをより良好に分散できるという点から、Rは、水素又は炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。また、Rは、水素又は炭素数1〜2の炭化水素基であることが好ましい。また、R〜Rは、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基又は複素環基であることが好ましく、脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。また、R10〜R14は、水素又は炭素数1〜2の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0018】
上記変性SBRは、スチレン、ブタジエン(1,3−ブタジエン)、及び上記一般式で表される窒素含有化合物(モノマー)を共重合して得られる共重合体であって、該窒素含有化合物に由来する構成単位は、主鎖部に含まれている。ここで、主鎖部とは、末端部も含む概念である。
【0019】
上記一般式で表される窒素含有化合物としては、例えば、3−または4−(2−アゼチジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ピペリジノエチル)スチレン、3−または4−(2−ヘキサメチレンイミノエチル)スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いても良いし、二種以上を組み合わせて用いても良い。なかでも、シリカをより良好に分散できるという点から、3−または4−(2−ピロリジノエチル)スチレンが好ましい。
【0020】
上記変性SBRは、少なくとも一方の末端が、窒素、酸素、ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む官能基を有する変性剤で変性されていることが好ましく、両末端が該変性剤で変性されていることがより好ましい。これにより、各性能の改善効果を高めることができる。
【0021】
上記変性剤が有する官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトリル基、ピリジル基などが挙げられ、好ましくはアミノ基、アルコキシシリル基である。また、上記変性剤としては、例えば、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(N,N−ジエチルアミノプロピル)トリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(4−ピリジルエチル)トリエトキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール、四塩化ケイ素などが挙げられ、良好な低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られるという理由から、3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0022】
上記変性SBRにおける窒素含有化合物の含有量は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。0.05質量%未満では、低燃費性及びウェットグリップ性能の改善効果が得られにくい傾向がある。また、上記変性SBRにおける窒素含有化合物の含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。30質量%を超えると、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
なお、本明細書において、窒素含有化合物の含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0023】
上記変性SBRの重量平均分子量Mwは、好ましくは1.0×10以上、より好ましくは2.0×10以上である。1.0×10未満では、低燃費性及び耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、該Mwは、好ましくは2.0×10以下、より好ましくは1.5×10以下である。2.0×10を超えると、加工性が悪化する傾向がある。
なお、本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0024】
上記変性SBRの含有量は、ゴム成分100質量%中、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上である。5質量%未満であると、低燃費性能を向上できないおそれがある。上限は特に限定されないが、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である。90質量%を超えると、破壊強度が極端に悪化する傾向がある。
【0025】
本発明において、ゴム組成物のゴム成分としては、前記変性SBR以外に、ジエン系ゴムを用いることが好ましい。ジエン系ゴムは、天然ゴムおよび/またはジエン系合成ゴムからなり、ジエン系合成ゴムとしては、たとえば、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などがあげられる。中でも、グリップ性能および耐摩耗性をバランスよく示すことから、NR、BR、SBRが好ましい。
【0026】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上である。10質量%未満であると、NRを配合した効果が十分に得られない傾向がある。NRの含有量は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。70質量%を超えると、上記変性SBRの含有量が少なくなり、シリカの分散性が悪化する傾向がある。
【0027】
本発明のゴム組成物においては、補強剤としてシリカが配合される。シリカとしては、特に制限はないが、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)などが挙げられ、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。シリカは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは150m/g以上である。100m/g未満であると、補強効果が小さく、耐摩耗性が悪化する傾向がある。また、シリカのNSAは、好ましくは300m/g以下、より好ましくは200m/g以下である。300m/gを超えると、シリカが分散しにくくなり、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される。
【0029】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。10質量部未満であると、十分なウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られないおそれがある。また、シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。150質量部を超えると、シリカが分散しにくくなり、加工性、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0030】
本発明のゴム組成物は、下記式(1)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤を含有する。
【化17】

(式(1)中、R21は−O−(R25−O)−R26(t個のR25は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R26は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。tは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R22及びR23は、同一若しくは異なって、R21と同一の基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R27(R27は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。R24は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
【化18】

【化19】

(式(2)、(3)中、xは0以上の整数である。yは1以上の整数である。R28は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R29は水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。R28とR29とで環構造を形成してもよい。)
【0031】
上記式(1)で表されるシランカップリング剤を配合することにより、優れた低燃費性が得られ、グリップ性能も良好に得られる。
【0032】
上記式(1)のR21は−O−(R25−O)−R26(t個のR25は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R26は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。tは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。
【0033】
上記R25は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基を表す。
該炭化水素基としては、例えば、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基などが挙げられる。なかでも、シリカと結合(反応)しやすく、低燃費性、耐摩耗性を十分に向上できるという理由から、上記アルキレン基が好ましい。
【0034】
25の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基などが挙げられる。
【0035】
25の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基などが挙げられる。
【0036】
25の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜15、より好ましくは炭素数2〜3)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基などが挙げられる。
【0037】
25の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基などが挙げられる。
【0038】
上記tは1〜30(好ましくは2〜20、より好ましくは5〜6)の整数を表す。tが0であるとシリカとの結合(反応)が不利であり、tが31以上であるとシリカとの反応性が低下し、工程面で不利となる。
【0039】
26は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。なかでも、シリカとの反応性が良好であるという理由から、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
【0040】
26の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0041】
26の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基などが挙げられる。
【0042】
26の炭素数6〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。
【0043】
26の炭素数7〜30(好ましくは炭素数10〜20)のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
【0044】
上記式(1)のR21の具体例としては、例えば、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1225、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1429、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327などが挙げられる。なかでも、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327が好ましい。
【0045】
22及びR23は、同一若しくは異なって、R21と同一の基(すなわち、−O−(R25−O)−R26で表される基)、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R27(R27は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。なかでも、シリカとの反応性が良好であるという理由から、R21と同一の基、−O−R27(R27が分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基の場合)で表される基が好ましい。
【0046】
22及びR23の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜8)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基などが挙げられる。
【0047】
27の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基としては、例えば、上記R26の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0048】
27の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜5)のアルケニル基としては、例えば、上記R26の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0049】
27の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜12)のアリール基としては、例えば、上記R26の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0050】
27の炭素数7〜30(好ましくは炭素数7〜13)のアラルキル基としては、例えば、上記R26の炭素数7〜30のアラルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0051】
上記式(1)のR22及びR23の具体例としては、例えば、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1225、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1429、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、C−O−、CH−O−、C−O−などが挙げられる。なかでも、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、C−O−が好ましい。
【0052】
24の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5)のアルキレン基としては、例えば、上記R25の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基を挙げることができる。
【0053】
上記式(1)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、デグッサ社製のSi363などを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
また、上記式(3)で示される結合単位Bと、必要に応じて上記式(2)で示される結合単位Aからなるシランカップリング剤を配合することにより、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどの従来のシランカップリング剤に比べ、低燃費性、耐摩耗性を向上できる。
【0055】
上記結合単位Aと結合単位Bからなるシランカップリング剤は、結合単位Aと結合単位Bとの合計量に対して、結合単位Bを1〜70モル%の割合で共重合したものが好ましい。
【0056】
結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たす場合、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0057】
また、結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たす場合、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチタイムの短縮が抑制される。これは結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C15部分が結合単位Bの−SH基を覆うためポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
【0058】
28のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などが挙げられる。
【0059】
28、R29の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基としては、例えば、上記R26の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0060】
28、R29の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜12)のアルキレン基としては、例えば、上記R25の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基を挙げることができる。
【0061】
28、R29の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルケニル基としては、例えば、上記R26の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0062】
28、R29の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルケニレン基としては、例えば、上記R25の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基と同様の基を挙げることができる。
【0063】
28、R29の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基などが挙げられる。
【0064】
28、R29の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルキニレン基としては、例えば、上記R25の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基と同様の基を挙げることができる。
【0065】
上記結合単位Aと結合単位Bからなるシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内、かつ、xが1以上であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0066】
上記結合単位Aと結合単位Bからなるシランカップリング剤としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60、NXT−Z100などを使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは8質量部以上である。3質量部未満では、破壊強度が大きく低下する傾向がある。また、シランカップリング剤の含有量は、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、シランカップリング剤を添加することによる破壊強度の増加や転がり抵抗軽減などの効果が得られない傾向がある。
なお、2種以上のシランカップリング剤を併用する場合には、上記含有量は、合計含有量を意味する。
【0068】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、カーボンブラック、クレーなどの補強用充填剤、老化防止剤、酸化亜鉛、ステアリン酸、オイル、ワックス、ポリエチレングリコールなどの加工助剤、硫黄などの加硫剤、加硫促進剤などを適宜配合できる。
【0069】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは30m/g以上、より好ましくは90m/g以上である。30m/g未満では、十分な補強性や耐摩耗性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのNSAは、好ましくは180m/g以下、より好ましくは130m/g以下である。180m/gを超えると、分散性が悪化し、発熱性が増大する傾向がある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K 6217−2:2001によって求められる。
【0070】
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。また、該含有量は、好ましくは20質量部以下、より好ましくは15質量部以下である。2質量部未満では、加工性が悪化する傾向がある。一方、20質量部を超えると、ウェットグリップ性及び低発熱性が悪化する傾向がある。
【0071】
シリカ及びカーボンブラックの合計含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは60質量部以上である。20質量部未満であると、十分な低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性が得られないおそれがある。また、該合計含有量は、好ましくは160質量部以下、より好ましくは120質量部以下である。160質量部を超えると、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0072】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油脂、又はその混合物を用いることができる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油脂としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生湯、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油などが挙げられる。
【0073】
上記ゴム組成物がオイルを含有する場合、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。5質量部未満では、十分なグリップ性能が得られないおそれがある。また、オイルの含有量は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下である。30質量部を超えると、低燃費性、耐摩耗性が悪化するおそれがある。
【0074】
本発明のゴム組成物は、一般的な方法で製造される。すなわち、バンバリーミキサーやニーダー、オープンロールなどで前記各成分を混練りし、その後加硫する方法などにより製造できる。本発明のゴム組成物は、タイヤの各部材に使用でき、なかでも、トレッド(特にキャップトレッド)に好適に使用できる。
【0075】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法で製造される。すなわち、前記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッドなどの形状にあわせて押出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することによりタイヤを得る。
【0076】
本発明の空気入りタイヤは、乗用車用タイヤなどとして好適に用いられる。
【実施例】
【0077】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0078】
以下に、モノマー(1)の合成で用いた各種薬品について説明する。
シクロへキサン:関東化学(株)製
ピロリジン:関東化学(株)製
ジビニルベンゼン:シグマアルドリッチ社製
1.6M n−ブチルリチウムへキサン溶液:関東化学(株)製
イソプロパノール:関東化学(株)製
【0079】
製造例1(モノマー(1)の合成)
十分に窒素置換した100ml容器に、シクロへキサン50ml、ピロリジン4.1ml(3.6g)、ジビニルベンゼン6.5gを加え、0℃にて1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.7mlを加えて撹拌した。
1時間後、イソプロパノールを加えて反応を停止させ、抽出・精製を行うことでモノマー(1)を得た。
【0080】
以下に、重合体(1)〜(2)の合成で用いた各種薬品について説明する。
シクロヘキサン:関東化学(株)製
スチレン:関東化学(株)製
ブタジエン:高千穂化学工業(株)製
テトラメチルエチレンジアミン:関東化学(株)製
1.6M n−ブチルリチウムへキサン溶液:関東化学(株)製
末端変性剤:アヅマックス社製の3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン
イソプロパノール:関東化学(株)製
【0081】
製造例2(重合体(1)の合成)
十分に窒素置換した1000ml耐圧製容器に、シクロヘキサン600ml、スチレン12.6ml(11.4g)、ブタジエン71.0ml(41.0g)、モノマー(1)0.29g、テトラメチルエチレンジアミン0.11mlを加え、40℃で1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.2mlを加えて撹拌した。
3時間後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて重合体(1)を得た。
【0082】
製造例3(重合体(2)の合成)
十分に窒素置換した1000ml耐圧製容器に、シクロヘキサン600ml、スチレン12.6ml(11.4g)、ブタジエン71.0ml(41.0g)、モノマー(1)0.29g、テトラメチルエチレンジアミン0.11mlを加え、40℃で1.6M n−ブチルリチウムヘキサン溶液0.2mlを加えて撹拌した。
3時間後、3−(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン(変性剤)を0.5ml(0.49g)加えて撹拌した。
1時間後、イソプロパノール3mlを加えて重合を停止させた。反応溶液に2,6−tert−ブチル−p−クレゾール1gを添加後、メタノールで再沈殿処理を行い、加熱乾燥させて重合体(2)を得た。
【0083】
(重量平均分子量Mwの測定)
重量平均分子量Mwは、東ソー(株)製GPC−8000シリーズの装置を用い、検知器として示差屈折計を用い、分子量は標準ポリスチレンにより校正した。
【0084】
(重合体中の窒素含有化合物誘導体モノマー量の測定)
重合体中の窒素含有化合物誘導体モノマー量(モノマー(1)量)は、日本電子(株)製JNM−ECAシリーズの装置を用いて測定した。
【0085】
以下、実施例及び比較例で使用した薬品について説明する。
SBR:旭化成ケミカルズ(株)製のE15
重合体(1):主鎖変性SBR(製造例2にて製造、Mw:3.0×10、モノマー(1)量:1.0質量%)
重合体(2):主鎖及び末端変性SBR(製造例3にて製造、Mw:3.0×10、モノマー(1)量:1.0質量%)
NR:RSS#3
シリカ:デグッサ社製のULTRASIL VN3(NSA:175m/g)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイアブラックN220(NSA:114m/g)
シランカップリング剤(1):デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
シランカップリング剤(2):Momentive社製のNXT−Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体、結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%)
シランカップリング剤(3):テグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤(4):デグッサ社製のSi363(下記式で表されるシランカップリング剤(上記式(1)のR21=−O−(C−O)−C1327、R22=C−O−、R23=−O−(C−O)−C1327、R24=−C−))
【化20】

酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「椿」
老化防止剤(1):住友化学(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
老化防止剤(2):住友化学(株)製のアンチゲン3C
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
オイル(1):(株)ジャパンエナジー製のプロセスX−140
オイル(2):出光興産(株)製のダイアナプロセスオイルAH−25
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロへキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤(3):住友化学(株)製のソクシノールCZ
加硫促進剤(4):住友化学(株)製のソクシノールD
【0086】
実施例及び比較例
表1、2に示す配合内容に従い、バンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄、加硫促進剤及び架橋剤を添加し、オープンロールを用いて、50℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物をトレッドの形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で10分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0087】
上記試験用タイヤを用いて以下の評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0088】
(転がり抵抗)
転がり抵抗試験機を用い、試験用タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(230kPa)、荷重(3.43kN)、速度(80km/h)で走行させたときの転がり抵抗を測定し、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、転がり抵抗が低く、低燃費性に優れることを示す。
(転がり抵抗指数)=(比較例1、5の転がり抵抗)/(各配合の転がり抵抗)×100
【0089】
(ウェットグリップ性能)
試験用タイヤを装着した車両で湿潤アスファルト路面を走行し、初速度100km/hからの制動距離を測定し、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性能(ウェットスキッド性能)に優れることを示す。
(ウェットグリップ性能指数)=(比較例1、5の制動距離)/(各配合の制動距離)×100
【0090】
(耐摩耗性)
試験用タイヤを装着した車両で市街地を走行し、8000km走行後の溝探さの減少量から、溝深さが1mm減少するときの走行距離を算出し、下記計算式により指数表示した。指数が大きいほど、耐摩耗性に優れることを示す。
(耐摩耗性指数)=(各配合の走行距離)/(比較例1、5の走行距離)×100
【0091】
(操縦安定性)
試験用タイヤを装着した普通乗用車を用いて、テストコースで官能試験(ハンドル応答性)を実施し、比較例5を5.5点として相対評価した。点数が高いほど、操縦安定性が良好であることを示す。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
表1より、特定の窒素含有化合物を主鎖中に有する変性SBRと、シリカと、特定のシランカップリング剤とを併用した実施例は、比較例と比べて、優れた低燃費性、ウェットグリップ性能が得られ、耐摩耗性、操縦安定性も良好に得られた。また、該変性SBR及び特定のシランカップリング剤の一方を含有する比較例との比較から、併用により低燃費性、耐摩耗性が相乗的に改善されることが明らかとなった。さらに、末端変性を施した変性SBRを用いた実施例では、低燃費性、ウェットグリップ性能、耐摩耗性がより高い次元で得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式;
【化1】

(式中、Rは水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基又は炭素数5〜30の芳香族炭化水素基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素、
【化2】

又は
【化3】

であり、少なくともR及びRのいずれかは水素ではない。Rは水素又は炭素数1〜4の炭化水素基を表す。Xは2価の飽和炭化水素基を表し、窒素、酸素又は硫黄を含んでいてもよく、
【化4】

又は
【化5】

で置換されていてもよい。Zは2価の飽和炭化水素基を表し、窒素、酸素又は硫黄を含んでいてもよい。R〜Rは、同一若しくは異なって、水素、炭素数1〜30の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜30の脂環族炭化水素基、炭素数5〜30の芳香族炭化水素基、又は環構成原子数3〜30の複素環基を表す。)で表される窒素含有化合物に由来する構成単位を主鎖中に有する変性スチレンブタジエンゴムを含むゴム成分と、
シリカと、
下記式(1)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(2)で示される結合単位Aと下記式(3)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤とを含有するタイヤ用ゴム組成物。
【化6】

(式(1)中、R21は−O−(R25−O)−R26(t個のR25は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R26は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。tは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R22及びR23は、同一若しくは異なって、R21と同一の基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R27(R27は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。R24は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
【化7】

【化8】

(式(2)、(3)中、xは0以上の整数である。yは1以上の整数である。R28は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R29は水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。R28とR29とで環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
前記ゴム成分100質量%中の前記変性スチレンブタジエンゴムの含有量が5質量%以上である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記変性スチレンブタジエンゴムは更に、少なくとも一方の末端が、窒素、酸素、ケイ素からなる群より選択される少なくとも1種を含む官能基を有する変性剤で変性された重合体である請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
トレッドに使用される請求項1〜3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製した空気入りタイヤ。


【公開番号】特開2012−207108(P2012−207108A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73202(P2011−73202)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】