説明

タイヤ用ゴム組成物

【課題】不飽和テルペン系樹脂を配合したゴム組成物において、耐摩耗性を悪化させることなく、老化防止性能及びグリップ性能を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ガラス転移温度が−25℃以下であるジエン系ゴムを90重量%以上含むゴム成分100重量部に対し、不飽和テルペン系樹脂を5〜50重量部、カテキンを含む茶抽出物を0.1〜5重量部配合すると共に、前記不飽和テルペン系樹脂の配合量(a[重量部])と茶抽出物の配合量(b[重量部])との重量比(a/b)を1〜200にしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物に関し、さらに詳しくは、不飽和テルペン系樹脂を配合したゴム組成物において、耐摩耗性を悪化させることなく、老化防止性能及びグリップ性能を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高性能タイプの乗用車用空気入りタイヤには、グリップ性能を向上することが求められており、このためトレッド部を構成するゴム組成物にテルペン系樹脂を配合することが行われている。テルペン系樹脂は、ミカンや松ヤニなどの非石油系の原材料から得られた樹脂成分であることから、空気入りタイヤにおける非石油系原材料の比率を高くする役割を果たすものとしても注目されている。
【0003】
しかし、一般にテルペン系樹脂は、分子量が比較的小さいことに加えて不飽和結合を有する構造であるため、酸化しやすく老化防止性能が低いという問題があった。また、タイヤのグリップ性能を一層向上させることも求められていた。
【0004】
老化防止性能を改良するためには、酸化防止剤の配合量を多くすることが考えられるが、従来の石油系原料から得られた酸化防止剤を増量したのでは、非石油系原材料の比率が低くなり好ましくない。
【0005】
この対策として、特許文献1は、テルペン系樹脂の不飽和結合を部分的に又は完全に水素添加した水添テルペン樹脂を配合することを提案している。しかし、水添テルペン樹脂は、ゴム組成物の老化防止性能を高くする効果はあるが、ジエン系ゴムとの親和性が低いため、ゴム組成物の耐摩耗性が低下するという問題があった。また、グリップ性能を一層高くするという課題を達成することもできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−169296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、不飽和テルペン系樹脂を配合したゴム組成物において、耐摩耗性を悪化させることなく、老化防止性能及びグリップ性能を従来レベル以上に向上するようにしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、低転動抵抗性のためにシリカを配合した場合において、耐摩耗性、老化防止性能及びグリップ性能の向上のみならず、低転動抵抗性のレベル向上を可能にしたタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ガラス転移温度が−25℃以下であるジエン系ゴムを90重量%以上含むゴム成分100重量部に対し、不飽和テルペン系樹脂を5〜50重量部、カテキンを含む茶抽出物を0.1〜5重量部配合すると共に、前記不飽和テルペン系樹脂の配合量(a[重量部])と茶抽出物の配合量(b[重量部])との重量比(a/b)を1〜200にしたことを特徴とする。
【0010】
前記不飽和テルペン系樹脂は、テルペン樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、これら不飽和テルペン系樹脂の数平均分子量は、500〜1500であるとよい。
【0011】
前記茶抽出物としては、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(+)−ガロカテキンガレート及び(−)−エピガロカテキンガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むものが好ましい。
【0012】
このタイヤ用ゴム組成物は、前記ゴム成分100重量部に対し、シリカを20〜130重量部配合することが好ましい。また、このタイヤ用ゴム組成物は、空気入りタイヤの構成材料として好適に使用可能である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のタイヤ用ゴム組成物によれば、ガラス転移温度が−25℃以下であるジエン系ゴムを90重量%以上含むゴム成分100重量部に対し、不飽和テルペン系樹脂を5〜50重量部、カテキンを含む茶抽出物を0.1〜5重量部配合すると共に、前記不飽和テルペン系樹脂の配合量(a[重量部])と茶抽出物の配合量(b[重量部])との重量比(a/b)を1〜200にしたので、この茶抽出物中のカテキンが酸化防止剤として機能しゴム組成物の老化防止性能を向上可能にする。また、カテキンを含む茶抽出物を配合することによりグリップ性能が向上すると共に、ゴム成分とテルペン系樹脂との親和性を悪化させることがないので、従来レベル以上の耐摩耗性を確保することができる。
【0014】
また、シリカを配合したゴム組成物の場合には、茶抽出物中のカテキンが、意外にもシリカの分散性を向上する作用を行うため、ゴム組成物の低転動抵抗性を一層向上することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、ゴム成分としては、ガラス転移温度が−25℃以下であるジエン系ゴムを必ず含むようにする。このジエン系ゴムのガラス転移温度は−25℃以下、好ましくは−27℃〜−110℃、より好ましくは−30℃〜−105℃である。ジエン系ゴムのガラス転移温度を−25℃以下にすることにより、タイヤに使用したときの耐摩耗性能を高くすることができる。ジエン系ゴムとしては油展オイルを含有した油展品でもよいが、そのガラス転移温度は、油展オイルを含まない状態のガラス転移温度とする。また、ガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC)により2℃/分の昇温速度条件によりサーモグラムを測定し、低温側のベースラインと転移域の傾き(傾斜直線)とのそれぞれの延長線の交点の温度とする。
【0016】
ガラス転移温度が−25℃以下のジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、ブチルゴム等が挙げられる。これらのジエン系ゴムは、単独又は任意のブレンドとして使用することができる。ゴム成分中のガラス転移温度が−25℃以下のジエン系ゴムの含有量は、90重量%以上、好ましくは100重量%である。ガラス転移温度が−25℃以下のジエン系ゴムの含有量が90重量%より少ないと耐摩耗性能を高くすることができない。
【0017】
また、ガラス転移温度が−25℃以下のジエン系ゴム以外の他のゴム成分としては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、スチレン−エチレンプロピレン−スチレン共重合体ゴム(SEPS)、スチレン−エチレンブチレン−スチレン共重合体ゴム(SEBS)等の熱可能性エラストマーや、ガラス転移温度が−25℃より高いスチレン−ブタジエンゴム等を例示することができる。これら他のゴム成分の含量量は、ゴム成分中10重量%以下にする。
【0018】
本発明では、不飽和テルペン系樹脂を配合することにより、グリップ性能を向上する。不飽和テルペン系樹脂とは、不飽和結合の少なくとも一部が水素添加された水添テルペン樹脂を除くテルペン系樹脂を意味する。このような不飽和テルペン系樹脂としては、例えばテルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂等を例示することができる。ここでテルペン樹脂とは、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネンなどから選ばれる少なくとも1種のテルペンの重合体である。芳香族変性テルペン樹脂とは、α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネンなどから選ばれる少なくとも1種のテルペンと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデンなどから選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物との重合体である。なかでも芳香族変性テルペン樹脂としては、スチレン変性テルペン樹脂が好ましい。また、フェノール変性テルペン樹脂とは、前述した少なくとも1種のテルペンとフェノールとの重合体である。本発明で使用する不飽和テルペン系樹脂としては、テルペン樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂が好ましい。
【0019】
また、不飽和テルペン系樹脂の分子量は、特に制限されるものではないが、数平均分子量(Mn)が、好ましくは500〜1500、より好ましくは600〜1500であるとよい。不飽和テルペン系樹脂の数平均分子量が500未満であると、ゴム組成物の硬度が不足しグリップ性能を十分に高くすることができない。また、数平均分子量が1500を超えると、ゴム組成物の混合時の取扱い性が低下すると共に、転動抵抗が悪化する。なお、不飽和テルペン系樹脂の数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)により測定しポリスチレン換算により求めた。
【0020】
本発明において、不飽和テルペン系樹脂の配合量は、ゴム成分100重量部に対し5〜50重量部、好ましくは5〜40重量部である。不飽和テルペン系樹脂の配合量が5重量部未満であるとグリップ性能を高くすることができない。また、不飽和テルペン系樹脂の配合量が50重量部を超えると、ゴムのハンドリング性が悪化したり、転がり抵抗が過大になったりする。
【0021】
本発明のタイヤ用ゴム組成物において、カテキンを含む茶抽出物は、酸化防止剤として機能し老化防止性能を高くする作用を行う。また、カテキンを含む茶抽出物を配合することによりグリップ性能が一層向上するという事実がある。この理由は、カテキンが不飽和テルペン系樹脂の分散性を良好にするためと推定される。また、茶抽出物は、ゴム成分とテルペン系樹脂との親和性を悪化させることがないので、従来レベル以上の耐摩耗性を確保することができる。
【0022】
カテキンを含む茶抽出物の配合量は、ゴム成分100重量部に対し0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜3.0重量部である。茶抽出物の配合量が0.1重量部未満であると、上述した所望の効果を得ることができない。また、茶抽出物の配合量が5重量部を超えると、コストが高くなりすぎて工業的でなくなり、また、それ以上いれても性能向上はみられない。
【0023】
また、本発明では、不飽和テルペン系樹脂の配合量(a[重量部])と茶抽出物の配合量(b[重量部])との重量比(a/b)は1〜200、好ましくは2〜200、より好ましくは2〜150にする。不飽和テルペン系樹脂と茶抽出物との重量比(a/b)が1未満であると、性能向上効果が十分に得られない。また、不飽和テルペン系樹脂と茶抽出物との重量比(a/b)が200を超えると、ゴム組成物の老化防止性能を高くすることができない。また、グリップ性能を一層高くする効果が得られない。
【0024】
本発明で使用するカテキンを含む茶抽出物は、緑茶、烏龍茶、紅茶から選ばれる少なくとも1種からの抽出物であり、これらの茶葉又は茶葉の粉砕物から、水若しくは熱水、有機溶剤を抽出剤とし5〜60℃の抽出温度で抽出することができる。有機溶剤としては例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、グリセリンなどが例示される。これらの抽出剤は単独で使用してもよいし、複数を組合わせて使用してもよい。
【0025】
カテキンを含む茶抽出物は、上記の抽出剤で抽出した画分を使用することができる。水若しくは熱水、有機溶剤で抽出したときは、その抽出液を茶抽出物としてそのまま使用してもよいが、取扱い性の観点からは、抽出液から噴霧乾燥や凍結乾燥等により水分を除去して粉末状にして使用するとよい。
【0026】
本発明で使用する茶抽出物は、カテキンを含む茶ポリフェノールを必ず含むものとする。また、茶ポリフェノール以外にミネラル、灰分などを含んでもよい。茶抽出物中の茶ポリフェノールの含有量は、好ましくは5〜95重量%、より好ましくは7〜90重量%にする。その残部は、ミネラル、灰分などである。この茶ポリフェノールはフラボノイドを主成分とし、フラボノイドはフラボン、フラボノール、フラバノール、フラボン配糖体などが例示される。また、複数のフラボノイドが結合することにより縮合型タンニンが生成する。フラボノイドのうちフラバノールが、フラバン−3−オール骨格を有するカテキン類である。
【0027】
本発明において、茶抽出物に含まれる茶ポリフェノールをカテキンとカテキン以外の他の茶ポリフェノールとに大別するものとする。カテキンとしては、例えば(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(+)−ガロカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレート、遊離型テアフラビン、テアフラビンモノガレートA、テアフラビンジガレートなどが例示される。なかでもカテキンとしては、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(+)−ガロカテキンガレート、(−)−エピガロカテキンガレートから選ばれる少なくとも1種であるとよい。茶ポリフェノール中のカテキンの含有量は、好ましくは5重量%以上、より好ましくは6〜85重量%にするとよい。茶ポリフェノール中のカテキンの含有量が5重量%未満であると、老化防止性能が十分に得られない。
【0028】
また、他の茶ポリフェノールとしては、カテキン以外の茶由来のフラボノイド類及びフラボノイド類以外の茶ポリフェノール類であるものとする。これら他の茶ポリフェノールを含有することにより、カテキンだけを配合した場合よりもゴム成分中へのカテキンの分散性を良好にする。このためカテキンの酸化防止剤としての効果をより高くすると共に、他の茶ポリフェノールの酸化防止効果との相乗効果が期待できる。
【0029】
本発明のタイヤ用ゴム組成物に使用する茶抽出物は、上述した茶抽出物をそのまま使用してもよいし、他の天然化合物及び/又は界面活性剤を添加した混合物として使用してもよい。天然化合物としては、例えばトコフェロール、アスコルビン酸、茶ポリフェノールを除いた植物由来のポリフェノール、植物油、動物油等を例示することができる。界面活性剤としては、例えばモノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合脂肪酸エステル等を例示することができる。
【0030】
このような茶抽出物或いはその混合物は市販されており、例えば太陽化学社製サンフェノンDK(カテキンを74重量%含む茶ポリフェノールが92重量%、ミネラル,灰分などが8重量%含む茶抽出物)、サンフラボンHG(カテキンを73重量%含む茶ポリフェノールが89重量%、ミネラル,灰分などを11重量%含む茶抽出物)、サンカトールNo1(カテキンを含む茶抽出物を界面活性剤で処理した混合物であり、カテキンを70重量%含む茶ポリフェノールの含有量を10重量%にしたもの)等を例示することができる。
【0031】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカを配合することができる。シリカを配合することにより、ゴム組成物の転動抵抗を低減する作用が得られ、タイヤの燃費性能を向上することができる。シリカは粒子表面に存在するシラノール基の水素結合により粒子同士が凝集しやすいためジエン系ゴムに対する分散性が悪いので、後述するようにシランカップリング剤を共に配合するようにしている。しかしシランカップリング剤を配合するだけでは、シリカの分散性を改良することができずゴム組成物の低転動抵抗性を小さくするという作用効果が十分に得られないことがある。これに対し、本発明では、カテキンを含む茶抽出物を配合したことにより、意外にもシリカの分散性を向上する作用が得られる。これによりゴム組成物の低転動抵抗性を一層小さくすることができる。このようにシリカの分散性を改良する作用は、石油系原料から得られた酸化防止剤を使用した場合には得られるものではない。
【0032】
本発明において好適に配合するシリカは、CTAB吸着比表面積が好ましくは60〜250m2/g、より好ましくは80〜200m2/g、さらに好ましくは100〜190m2/gであるとよい。シリカのCTAB吸着比表面積が60m2/g未満の場合には、ゴム強度を十分に高くすることができない。シリカのCTAB吸着比表面積が250m2/gを超えるとゴム粘度が高くなり加工性が悪化する。シリカのCTAB吸着比表面積は、ASTM−D3765−80の規格に準拠して求めるものとする。
【0033】
シリカの配合量は、ゴム成分100重量部に対し好ましくは20重量部以上、より好ましくは30〜100重量部にする。シリカの配合量が20重量部未満では、ゴム組成物の発熱性を十分に低減することができない。またシリカの凝集塊が形成し難いため分散性を改良する効果が顕在化されないことがある。
【0034】
本発明では、シリカと共にシランカップリング剤を配合することが好ましく、ジエン系ゴムに対するシリカの分散性を改良することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカの配合量に対し、好ましくは3〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%にするとよい。シランカップリング剤の配合量が3重量%未満であると、シリカの分散性を十分に改良することができない。また、シランカップリング剤の配合量が15重量%を超えると、シランカップリング剤同士が凝集・縮合してしまい、所望の効果を得ることができなくなる。
【0035】
シランカップリング剤の種類としては、特に制限されるものではないが、硫黄含有シランカップリング剤が好ましい。硫黄含有シランカップリング剤としては、例えばビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラサルファイド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジサルファイド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラサルファイド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等を例示することができる。
【0036】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、シリカ以外の無機充填剤を配合することができる。無機充填剤の配合によりゴム組成物の強度を高くする。無機充填剤としては、例えばカーボンブラック、クレー、酸化チタン、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、マイカ等が例示される。無機充填剤は、シリカと無機充填剤の合計が、ゴム成分100重量部に対し好ましくは20〜130重量部、より好ましくは30〜100重量部になるように配合する。シリカと無機充填剤の合計が20重量部未満の場合には、ゴム強度を十分に高くすることができない。また、シリカと無機充填剤の合計が130重量部を超えるとタイヤ用ゴム組成物の粘度が増大し成形加工性が悪化する。
【0037】
本発明のタイヤ用ゴム組成物には、加硫剤、加硫促進剤、酸化防止剤、可塑剤、カップリング剤などのタイヤ用ゴム組成物に一般的に使用される各種添加剤を配合することができ、かかる添加剤は一般的な方法で混練してタイヤ用ゴム組成物とし、加硫又は架橋するのに使用することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。また、タイヤ用ゴム組成物は、通常のゴム用混練機械、例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等を使用して、上記各成分を混合することによって製造することができる。
【0038】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、茶抽出物中のカテキンが酸化防止剤として機能するので、不飽和テルペン系樹脂を配合したゴム組成物の老化防止性能を向上可能にすると共に、グリップ性能を一層向上する。また、ゴム成分とテルペン系樹脂との親和性を悪化させることがないので、従来レベル以上の耐摩耗性を確保することができる。更に、シリカを配合したゴム組成物は、その低転動抵抗性を従来レベル以上に向上する特性が得られるため、空気入りタイヤの燃費性能を一層向上することができる。このようなタイヤ用ゴム組成物を使用した空気入りタイヤは、老化防止性能及び耐摩耗性が高くタイヤ耐久性に優れ、かつグリップ性能及び燃費性能を向上することができる。
【0039】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
表1,2に示す配合からなる12種類のタイヤ用ゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜7)を、それぞれ硫黄及び加硫促進剤を除く配合成分を秤量し、1.8Lのバンバリーミキサーで5分間混練し、温度160℃でマスターバッチを放出し室温冷却した。このマスターバッチを1.8Lのバンバリーミキサーに供し、硫黄及び加硫促進剤を加え混合し、タイヤ用ゴム組成物を調製した。
【0041】
得られた12種類のタイヤ用ゴム組成物(実施例1〜5、比較例1〜7)をそれぞれ所定形状の金型中で、160℃、20分間加硫して試験片を作製し、下記に示す方法により、動的粘弾性(60℃のtanδ)、引張試験による老化防止性能及び耐摩耗性を評価した。
【0042】
動的粘弾性(60℃のtanδ)
東洋精機製作所社製粘弾性スペクトロメーターを用いて、温度60℃におけるtanδを、静的歪み10%、動的歪み±2%、周波数20Hzの条件で測定した。得られた結果は、表1では比較例1の値の逆数を100とし、表2では比較例6の値の逆数を100とする指数として、表1,2の「低転動抵抗性」の欄に示した。この低転動抵抗性の指数が大きいほどtanδ(60℃)が小さく、タイヤにしたときの転がり抵抗が小さく燃費性能が優れることを意味する。
【0043】
老化防止性能
得られた試験片からJIS K6251に準拠した3号ダンベル型試験片を成形した。各ダンベル型試験片を2群に分けその一方を70℃で96時間加熱(老化処理)を行った。老化処理前後のダンベル型試験片を用いて、温度20℃、引張り速度500mm/分の条件で引張試験を行ない応力−歪み曲線(S−Sカーブ)を測定した。それぞれについて歪み10%毎の応力を記録し、S−Sカーブの面積を求めた。次に(老化処理後の面積/老化処理前の面積×100)により面積の変化率(%)を計算し、引張試験の老化防止性能とした。得られた結果は、表1では比較例1を100とし、表2では比較例6を100とする指数として、表1,2の「老化防止性能」の欄に示した。この耐老化性能の指数が大きいほど引張試験における老化防止性能が高いことを意味する。
【0044】
耐摩耗性
得られた試験片を、JIS K6264に準拠して、ランボーン摩耗試験機(岩本製作所社製)を使用して、荷重49N、スリップ率25%、時間4分、室温の条件で摩耗量を測定した。得られた結果は、表1では比較例1の摩耗量の逆数を100とし、表2では比較例6の摩耗量の逆数を100とする指数として表1,2の「耐摩耗性能」の欄に示した。この耐摩耗性能の指数が大きいほど耐摩耗性が優れることを意味する。
【0045】
また、得られた12種類のゴム組成物によりタイヤトレッド部を構成したタイヤサイズ215/60R16の空気入りタイヤを製作した。得られた空気入りタイヤを、それぞれリムサイズ16×1/2Jにリム組し空気圧230kPaに調整して、排気量2000ccの国産乗用車に装着した。テストドライバーがそれぞれの国産乗用車でドライ条件のサーキットコース(一周約2km)を10周走行させたときの周回毎のラップタイムを計測し、下記の判定方法によりグリップ性能を評価し、得られた結果を表1,2に示した。
【0046】
グリップ性能
サーキットコースを10周連続走行したときの3〜7ラップの平均タイムを、表1では比較例1の空気入りタイヤの平均タイム、表2では比較例6の空気入りタイヤの平均タイムをそれぞれ基準タイムとし、以下の判定基準により評価した。評点が高いほどグリップ性能が優れることを意味する。
5:平均ラップタイムが、基準タイムより0.5秒以上速い。
4:平均ラップタイムが、基準タイムより0.2秒以上0.5秒未満速い。
3:平均ラップタイムと基準タイムとの差が0.2秒未満の範囲内にある。
2:平均ラップタイムが、基準タイムより0.2秒以上0.5秒未満遅い。
1:平均ラップタイムが、基準タイムより0.5秒以上遅い。
【0047】
【表1】

【0048】
【表2】

【0049】
なお、表1,2において使用した原材料の種類を下記に示す。
・NR:天然ゴム、RSS#1
・カーボンブラック:新日化カーボン社製ニテロン#200IN
・シリカ:東ソーシリカ社製Nipsil AQ−N(CTAB吸着比表面積157m2/g)
・シランカップリング剤:信越化学社製KBE846
・不飽和テルペン系樹脂1:スチレン変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンTO−125(ジペンテンとスチレンとの重合体、数平均分子量(Mn)=700、分子量分布(Mw/Mn)=1.7)
・不飽和テルペン系樹脂2:フェノール変性テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSポリスターT−130(ジペンテンとフェノールとの重合体、数平均分子量(Mn)=900、分子量分布(Mw/Mn)=1.5)
・不飽和テルペン系樹脂3:テルペン樹脂、ヤスハラケミカル社製YSレジンPX−125(βピネン重合体、数平均分子量(Mn)=1000、分子量分布(Mw/Mn)=1.9)
・水添テルペン樹脂:ヤスハラケミカル社製クリアロンP−125(ジペンテンの重合体を水素添加した樹脂、数平均分子量(Mn)=650、分子量分布(Mw/Mn)=1.7)
・エピカテキン:ナカライデスク 社製(−)-エピカテキン、カテキン99重量%
・茶抽出物:太陽化学社製サンカトールNo1、カテキンを含む茶抽出物を界面活性剤で処理した混合物、カテキンを70重量%含む茶ポリフェノールの含有量が10重量%
・酸化防止剤1:フレキシス社製SANTOFLEX 6PPD
・酸化防止剤2:フレキシス社製FLECTOL TMQ
・亜鉛華:正同化学工業社製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日油社製ビーズステアリン酸
・ワックス:大内新興化学工業社製サンノック
・アロマオイル:昭和シェル石油社製アロマ4号
・加硫促進剤:大内新興化学工業社製ノクセラーNS−P
・硫黄:細井化学社製油処理硫黄
【0050】
表1,2から明らかなように本発明のタイヤ用ゴム組成物(実施例1〜5)は、耐摩耗性を悪化させることなく、老化防止性能及びグリップ性能を従来レベル以上に向上している。また、低転動抵抗性を一層向上している。
【0051】
これに対し、比較例1〜3,5及び6のゴム組成物は、カテキンを含む茶抽出物を配合していないので、グリップ性能を従来レベル以上に向上することができない。また、比較例4及び7のゴム組成物は、不飽和テルペン系樹脂を配合していないので、耐摩耗性を維持すること及びグリップ性能を従来レベル以上に向上することができない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が−25℃以下であるジエン系ゴムを90重量%以上含むゴム成分100重量部に対し、不飽和テルペン系樹脂を5〜50重量部、カテキンを含む茶抽出物を0.1〜5重量部配合すると共に、前記不飽和テルペン系樹脂の配合量(a[重量部])と茶抽出物の配合量(b[重量部])との重量比(a/b)を1〜200にしたタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記不飽和テルペン系樹脂が、テルペン樹脂、スチレン変性テルペン樹脂、フェノール変性テルペン樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記不飽和テルペン系樹脂の数平均分子量が、500〜1500である請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記茶抽出物が、(+)−カテキン、(−)−エピカテキン、(+)−ガロカテキン、(−)−エピガロカテキン、(−)−エピカテキンガレート、(+)−ガロカテキンガレート及び(−)−エピガロカテキンガレートからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1,2又は3に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記ゴム成分100重量部に対し、シリカを20〜130重量部配合した請求項1〜4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物をトレッド部に使用した空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−132321(P2011−132321A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291892(P2009−291892)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】