説明

タイルパネルの施工方法

【課題】タイルの脱落及びタイルの欠損等により、建造物等の壁面等が不陸状態である場合においても、タイルパネルを容易に施工するタイルパネルの施工方法を提供する。
【解決手段】可撓性を有する基板11の片面上に、複数のタイル13がそれぞれ目地部を設けて固着されてなるタイルパネルを、下地面に対して設置するためのタイルパネル1の施工方法であって、下地面に対して、該下地面より離れた面であり且つ前記タイルパネルを設置するときの基準となる基準面を設定し、下地面の適所に、自硬性を有し且つ変形容易な材料からなる不陸調整材25を、設置後のタイルパネルの裏面が位置する面より突出するように設け、タイルパネルを、その裏面を下地面に対向させて、不陸調整材25の上から下地面方向へ押しつけ、タイルパネルの表面を基準面と一致させ、タイルパネルの表面が基準面と一致した状態で、タイルパネルを下地面に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイルパネルを、建造物の壁面等に設置するタイルパネルの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
利便性、汎用性が高い陶磁器質タイル(以下、タイルという)は、建造物には欠かすことの出来ない建築材料の一つであり、建造物の天井部や壁部等に多く用いられている。特にトンネル等の構造物においては、良好な視環境づくりが必要である為、トンネル壁面に対しタイルを設置することにより、トンネル壁面を明るく美観を整えるとともに、前方車両や障害物の視認性や視線誘導効果の向上、照明効果の効率化を可能としている。また、このタイルを基板上に複数枚貼着してなるタイルパネルもその施工の利便性から多方面で広く使用されている。
【0003】
なお、従来技術として、基板の表面に複数枚のタイルが取り付けられているタイルパネルを下地躯体に固定させるに際し、タイルの少なくとも一部に切り欠き部が設けられており、該切り欠き部から該基板を介して下地躯体に固定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−265847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トンネル等の構造物においては、従来から壁面の上に、表面材としてタイルを接着して用いてきた。しかし接着材の経年劣化、施工精度及び外部からの衝撃等により、タイルの脱落・欠損が広範囲で生じた場合、単にタイルを接着し直すことは、非常に困難な作業となる。そこで、このような場合、タイルパネルを用いて補修することが行われている。このような場合の、従来のタイルパネルの施工方法では、残ったタイルを剥がし、壁面をほぼ平滑にしたうえでタイルパネルを取り付ける必要がある。しかしながら、上述したような施工方法では、非常に作業性が悪く、作業時間及び人件費等が嵩む等の不具合を生じてしまう。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、タイルの脱落やタイルの欠損等により、建造物等の壁面等(以下、下地面という)が不陸状態である場合においても、タイルパネルを容易に施工することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した問題を解決するため、本発明の一態様は、可撓性を有する基板の片面上に、複数のタイルがそれぞれ目地部を設けて固着されてなるタイルパネルを、下地面に対して設置するためのタイルパネルの施工方法であって、前記タイルパネルのタイルが接着された側の面を表面とし、その反対面を裏面としたとき、前記下地面に対して、該下地面より離れた面であり且つ前記タイルパネルを設置するときの基準となる基準面を設定するステップと、前記下地面の適所に、自硬性を有し且つ変形容易な材料からなる不陸調整材を、設置後のタイルパネルの裏面が位置する面より突出するように設けるステップと、前記タイルパネルを、その裏面を前記下地面に対向させて、前記不陸調整材の上から前記下地面方向へ押しつけて、前記タイルパネルの表面を前記基準面と一致させるステップと、前記タイルパネルの表面が前記基準面と一致した状態で、前記タイルパネルを前記下地面に固定するステップとを行う。
【発明の効果】
【0008】
開示のタイルパネル施工方法によれば、タイルの脱落やタイルの欠損等により、建造物の壁面等の下地面が不陸状態である場合においても、タイルパネルを容易に施工することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態に係るタイルパネルの概略正面図である。
【図1−B】本発明の他の形態に係るタイルパネルの概略正面図である。
【図2】本実施の形態に係るタイルパネルの概略側面図である。
【図2−B】本発明の他の形態に係るタイルパネルの概略側面図である。
【図3】本実施の形態に係る既存タイルが広範囲に脱落した状態のトンネル内壁面上に対し、アンカー、ボルト、及び不陸調整材を設置した状態を示す概略正面図である。
【図4】本実施の形態に係る既存タイルが広範囲に脱落した状態のトンネル内壁面上に対し、アンカー、ボルト、及び不陸調整材を設置した状態を示す概略側面図である。
【図5】本実施の形態に係る既存タイル上におけるボルト設置箇所の詳細図である。
【図6】本実施の形態に係る下地面上におけるボルト設置箇所の詳細図である。
【図7】本実施の形態に係る基準面に対し、タイルパネルを押しつけた状態を示す概略正面図である。
【図8】本実施の形態に係る基準面に対し、タイルパネルを押しつけた状態を示す概略側面図である。
【図9】本実施の形態に係る既存タイル上のタイルパネルにおけるボルト設置箇所の詳細側面図である。
【図10】本実施の形態に係る下地面上のタイルパネルにおけるボルト設置箇所の詳細側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
実施の形態
まず、本実施の形態において使用するタイルパネルについて説明する。なお、本実施の形態において使用する各図面において、同一符号のものは、同一又は同等のものを示しており、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は、本実施の形態に係るタイルパネルの概略正面図である。図1−Bは、本発明の他の形態に係るタイルパネルの概略正面図である。図2は、本実施の形態に係るタイルパネルの概略側面図である。図2−Bは、本発明の他の形態に係るタイルパネルの概略側面図である。なお、図1−B及び図2−Bについては後述にて説明する。図1及び図2に示されるように、タイルパネル1は、平板状の基板11の片面上に、複数個の基準タイル12及び役物タイル13が接着材14により縦横並列して固着されている。なお、図1及び図2に示されるハッチングの無いタイルは基準タイル12であり、網掛けのハッチングがあるタイルは役物タイル13を示している。なお、本実施の形態においては、基準タイル12及び役物タイル13は、X方向に並列して4枚のタイルが貼着される列が、Y方向へ9列連なり、Y方向2列ごとで交互に別種のタイルが貼着され、Y方向下方の1列においては基準タイル12が1列のみ貼着されている。
【0013】
基板11は、トンネル内壁面等の曲面に沿って取付けるものにあっては、その曲面に沿って湾曲可能な高じん性ボード等が好ましく、例えば繊維強化セメント板やけい酸カルシウム板等の平板状の窯業系ボードが好適である。特に、曲げ強度30N/mm2以上、曲げ動弾性係数10〜15kN/mm2程度の高じん性ボードを用いると、トンネル内壁面の曲面に沿って良好に湾曲させることができる。このような高じん性ボードは、例えば、マトリックス原料として水硬性セメントを、繊維原料としてセルロースパルプおよびビニロン繊維を使用し、必要に応じて使用される充填材(針状ワラストナイト粉、マイカ粉、炭酸カルシウム粉等)等の原料とともに湿式混合して抄造し、加圧成形後養生硬化することにより製造することができる。このような高じん性ボードを基板11として用いる場合の厚さは3mm〜6mm程度が好適で、軽量であり、しかも無機質なので腐食のおそれもない等の利点がある。
【0014】
基準タイル12は、陶磁器質タイルが代表的で、陶磁器質のタイル表面には釉薬を塗布して反射率を向上させたものが挙げられる。その中でトンネルを対象としたタイルパネル用としては、通常、JIS A 5209「陶磁器質タイル」の外装タイルが用いられる。通常、一辺が45mm〜235mm位の四角形で、厚さは5mm〜10mm位のものが用いられる。
【0015】
役物タイル13は、基準タイル12と同材料のタイルであり、且つ、役物タイル13間の目地の交差部を形成する角部を切欠いて形成される切欠部15を有するタイルである。切欠部は直線状に形成しても良く、例えば円弧を形成するように曲線状に形成しても良い。タイルパネルにおける各タイル間の目地幅については、タイルパネルを施工したときの上下方向に形成される目地(縦目地)の間隔については、通常、0mm(突き付け)〜5mmであり、タイルパネルを施工したときの水平方向に形成される目地(横目地)の間隔については、通常、1mm〜10mmである。トンネル等のように、下地躯体が曲面である場合には、横目地間隔は少なくとも1mmは必要である。タイルは硬いため、曲面に沿ってパネルを施工することができなくなるからである。
【0016】
また、役物タイル13は、切欠部15を設けることにより、目地の交差部に対し基板11が略菱形に露出された基板露出部16が基板11に形成される。なお、本実施の形態において、基板11は、基板露出部16に、後述するボルトが貫通する下穴である穿孔17を有する。この穿孔17は、タイルパネルに対し4箇所以上設けることが好ましく、設ける間隔は適宜である。なお、本実施の形態においては、タイルパネル1に対し、401mm間隔で、タイルパネル1の辺部の穿孔17を半個分とし、計4箇所穿孔17を設けることとする。穿孔17の径は後述するボルトが貫通可能な径であればよい。なお、穿孔については、予め行っておいてよもよいが、パネルの取付け時に穿孔するようにしてもよい。
【0017】
接着材14は、とくに制限されないが、耐水性に優れた接着材が好ましい。例えば、タイル洗浄の際などにおける水分の浸入による強度劣化が少ない、エポキシ系、変成シリコーン系、ポリウレタン系、ウレタン系等の接着剤が好適である。
【0018】
また、タイルパネル1は、図2に示されるように、Y方向の最上方および最下方の両方に基板突出部18Aを設ける構成(タイルパネル構成1)、図1−B及び2−Bに示されるように、Y方向の最上方に貼着された基準タイル12が基板11より所定の長さ分突出した状態で固着されたタイル突出部で形成される段部18Bと、基板11がY方向の最下方に貼着された基準タイル12の下辺より所定の長さ分下方に突出している基板突出部18Aとを有するタイルパネル1Bの構成(タイルパネル構成2)、または、Y方向の最上方または最下方の一方に基板突出部18Aを設け、他端についてはタイルの辺部と基板の辺部とを一致させる構成(タイルパネル構成3)のいずれでもよい。本実施の形態においては、タイルパネル構成1を用いた。なお、タイルパネル構成2の場合、段部18Bの基準タイル12が突出した長さ、及びの基板突出部18Aの基板11が突出した長さは、段部18Bの基準タイル12が突出した長さより、基板突出部18Aの基板11が突出した長さのほうが長くなるよう適宜設定する。これは、タイルパネル1をY方向へ並列して設置する場合において、タイルパネル1の段部18Bへ、別タイルパネル1の基板突出部18Aを系合させ、所謂相決りの状態とすることで容易にタイルパネル1を並列に設置できるようにするものである。
【0019】
また、各タイル間に形成されるタイルのない部分は目地部分であり、この目地幅、及び各タイルの寸法は、前記した条件の範囲において、施工を行うトンネル壁面の断面半径等により適宜設定する。本実施の形態におけるタイルパネル1は、基板として抄造法で製造された高じん性ボード(繊維強化セメント板)を使用し、基板の抄造方向がタイルパネルの縦方向となるようにした。基板の寸法は縦902mm×横802mm×厚さ4mm、タイルの寸法は98mm×198mm×厚さ6.8mm、タイル間の目地幅は、縦目地および横目地とも2mmとした。また、タイルパネルのY方向の最上方および最下方の両方に各2mmの基板突出部18Aを設け、X方向の両端部についても、それぞれ2mmの基板突出部を設けた。タイルパネルの寸法は、縦902mm×横802mm×厚さ11.3mmとした。なお、タイルパネル1の目地部に対し、必要に応じて目地コーキングを施してもよい。
【0020】
なお、本実施の形態において、上述したタイルパネル1を使用することとするが、使用するタイルパネルは、上述したタイルパネル1に限定するものではなく、他の構成を有するタイルパネルを使用したとしても問題はない。
【0021】
次に、本実施の形態におけるタイルパネルの施工方法について説明する。
【0022】
図3は、本実施の形態に係る既存タイルが広範囲に脱落した状態のトンネル内壁面上に対し、アンカー、ボルト、及び不陸調整材を設置した状態を示す概略正面図である。また、図4は、本実施の形態に係る既存タイルが広範囲に脱落した状態のトンネル内壁面上に対し、アンカー、ボルト、及び不陸調整材を設置した状態を示す概略側面図である。図3及び図4に示される21は、既存タイルを示し、22は下地躯体を示している。
【0023】
既存タイル21は、下地躯体22上に接着材14にて固着されたタイルであり、本実施の形態においては、縦60mm×横227mm×厚さ10mmの寸法のタイルである。既存タイル21は、モルタルを接着材として下地躯体22に固着されている。なお、既存タイル21の構成材料については、上述した基準タイル12と同様のものとする。なお、タイルパネルの施工は、一般的に最下段に設置されるタイルパネルから行われることが多い。本実施の形態においても、最下段に設置するタイルパネル1から施工を行う場合について記載する。
【0024】
下地躯体22はコンクリート製の壁面である。本実施の形態では、既存タイル21が固着されたままの面と既存タイル21が脱落した面とにより、タイルパネル1が設置される被設置面2が形成されている。なお、タイルの有無にかかわらず、下地躯体22の表面を下地面という。
【0025】
また、図3及び図4に示される23は、トンネルの底部に設けられたインバートコンクリートであり、24はボルトを示し、25は不陸調整材を示す。なお、ボルト24及び不陸調整材25は後述にて説明する。また,図4に示される2Aは、既存タイル21上におけるボルト24の設置箇所を示し、2Bは、下地面上におけるボルト24設置の箇所を示す。この2A及び2Bは、後述する図5及び図6にて説明する。
【0026】
図5は、本実施の形態に係る既存タイル上におけるボルト設置箇所2Aの詳細図である。また、図6は、本実施の形態に係る下地面上におけるボルト設置箇所2Bの詳細図である。図3、図5及び図6に示されるボルト24は、アンカー26へ螺入可能な雄ネジ構造をもつボルトであり、且つ、タイルパネル1の穿孔17の径に挿入可能な、なべ頭を有さない全ネジボルトである。このボルト24は、タイルパネル1を係止する為のボルトであり、後述するナットを取り付け、締め込むことによりタイルパネル1を基準面へ固定するものである。また、アンカー26は、ボルト24が螺入される雌ネジ構造をもつ、所謂被設置面2に定着させる内部コーン打込式のものである。なお、アンカー26を被設置面2に対し打設する詳細な方法についてはどのような方法を用いてもよく、周知の技術である為、説明を省略する。
【0027】
まず、図3から図6に示されるように、被設置面2に対し、下穴を開けてアンカー26を打設する。なお、インバートコンクリート23近傍に打設するアンカー26の位置は、タイルパネル1の設置位置を考慮し打設する。また、アンカー26を打設する間隔は、タイルパネル1の穿孔17の間隔とし、本実施の形態においては、上述したタイルパネル1の穿孔17の間隔と同様の401mmの間隔を空けて打設することとする。アンカー26の打設後、打設したアンカー26に対し、順次ボルト24を螺合することにより、ボルトは下地面に対してほぼ垂直となるように固定される。
【0028】
次に、タイルパネル1を取り付ける基準となる面である基準面を設定する。基準面は、下地面の状態やトンネル空間の条件等を考慮し、設置後のタイルパネル1の表面が、タイルが固着した下地面の表面からタイルパネル1の厚さを加えた距離よりもトンネル空間側に位置するように設定する。被設置面の最下段に最初に設置するタイルパネル1は、その表面が基準面と一致するよう位置を計測し、以下に詳述する方法により下地面上に固定する。最初に設置したタイルパネル1に隣接して設置するタイルパネル1は、最初に設置したタイルパネル1の表面を基準面に設定して設置すればよく、以下、順次同様にしてタイルパネル1を設置すれば、各タイルパネル1の表面を基準面と一致させることができる。また、必要に応じて、最初に設置するタイルパネル1以外のタイルパネル1に対しても、最初に設置したタイルパネル1と同様に基準面に対する位置を計測して、タイルパネル1の表面を基準面と一致させることができる。
【0029】
次に、図3及び図6に示されるように、下地面における不陸を調整する為、不陸調整材25を下地面の適所に設置する。不陸調整材25は、例えば、無機系で自硬性を有する変形容易な材料であればとくに制限されない。不陸調整材として無機系の材料を用いれば、不燃性を確保するうえで好適である。このような不陸調整材としては、例えば、硬さが粘土状となるように、公知の水和性石膏やポルトランドセメントと、各種添加剤と、水とを混合し、得られた混合物を硬化前の状態で使用することができる。不陸調整材25は、市販の材料を用いることもでき、例えば、吉野石膏(株)製のタイガーGLボンド等が挙げられる。また、不陸調整材25は、施工後に硬化することにより、タイルパネル1を基準面に保つためのスペーサーとしても作用する。
【0030】
この不陸調整材25を下地面へ設けるに際し、設置後のタイルパネル1の裏面が位置する面より突出するよう、高く盛り付けるように設ける。不陸調整材25を設置後のタイルパネル1の裏面が位置する面より突出させることにより、後述するタイルパネル1の設置においては、タイルパネル1を被設置面2方向へ押しつけるようにする為、設置後のタイルパネル1の裏面が位置する面より高い位置にある不陸調整材25がその押し込む外力に応じて変形することで、基準面への位置合わせを容易に行うことができる。
【0031】
また、不陸調整材25を設置する箇所は適所としたが、本実施の形態においては、ボルト24が固定された箇所とすることが好適である。これは、ボルト24と後述するナットによるタイルパネル1の固定を行う際、ボルト24及びナット近傍に不陸調整材25がなければ、ナットを螺着しタイルパネル1をネジ締結する際に、基板露出部16近傍が下地面方向へ落ち込む状態を回避する為である。また、不陸調整材25を設置後のタイルパネル1の裏面が位置する面より高い位置まで盛りつけることも、固定されたボルト24を目安として用いれば容易に行うことができる。
【0032】
次に、タイルパネル1の面を基準面と一致するように、被設置面2方向へ押しつける。図7は、本実施の形態に係る基準面に対し、タイルパネルを押しつけた状態を示す概略正面図である。また、図8は、本実施の形態に係る基準面に対し、タイルパネルを押しつけた状態を示す概略側面図である。図7及び図8に示される3は、タイルパネル1を基準面に押しつけた状態の壁面である。また,図8に示されている3Aは、既存タイル21上のタイルパネル1におけるボルト24の設置箇所を示し、3Bは、下地面上のタイルパネル1におけるボルト24の設置箇所を示す。この3A及び3Bは、後述する図9及び図10にて説明する。
【0033】
まず、タイルパネル1の穿孔17にボルト24が差し込まれるようにし、不陸調整材25を変形させる形でタイルパネル1を被設置面2方向へ押しつける。ここで、タイルパネル1における基準タイル12及び役物タイル13が固着してなる面の裏面が基準面の面と一致するようにし、図8に示されるような基準面に対しタイルパネル1が密着した状態とする。
【0034】
次に、ボルト24に対し、ワッシャ及びナットを螺着する。図9は、本実施の形態に係る既存タイル上のタイルパネルにおけるボルト設置箇所3Aの詳細側面図である。また、図10は、本実施の形態に係る下地面上のタイルパネルにおけるボルト設置箇所3Bの詳細側面図である。基準面へのタイルパネル1設置後、図9及び図10に示されるように、ボルト24に対し、ワッシャ31を通し、次いでナット32をボルト24に螺着することにより、タイルパネル1がアンカー26へネジ締結されるようにし、基準面へ固定する。なお、ワッシャ31及びナット32の形状は適宜であるが、ワッシャ31及びナット32の双方を足し合わせた厚みが基準タイル12及び役物タイル13の厚みより薄くなるものを用いることが好ましく、また、基板露出部16内に収まる寸法にて形成されているものを用いることが好適である。
【0035】
ナット32によるタイルパネル1の固定後、不陸調整材25の硬化を待ち、不陸調整材25の収縮の度合いにより、必要に応じてナット32を増し締めすることで、基準面へタイルパネル1を完全に固定する。増し締め後、ボルト24の先端が不必要に基準タイル12及び役物タイル13の表面上に突き出ている状態であれば、適宜これを切断し、本実施の形態は終了となる。
【0036】
なお、本実施の形態において、被設置面2を曲面と言及していないが、曲面である場合においても、タイルパネル1が、高じん性の基板11且つ各タイル間に目地部を有しているため、被設置面の曲面形状に良好に追従し、固定できることは言うまでもない。
【0037】
以上、既存タイル21が固着されたままの面と既存タイル21が脱落した面とにより被設置面2が形成されている場合について説明したが、被設置面2の全面について既存タイル21が脱落している場合や被設置面2が平滑な状態である場合にタイルパネル1を設置する施工も同様にして行うことができる。また、既存パネル21の一部を取替える施工時に本発明を適用してもよい。このとき、タイルパネル1を施工する周辺に位置する既存のタイルパネルの表面を基準面とし、設置するタイルパネル1の表面を一致させればよい。
【0038】
本実施の形態によれば、基準面を設定し、且つ不陸調整材25を用いてタイルパネル1の施工を行うことにより、不陸の調整が必要である下地面に対してもタイルパネル1を容易に、且つ効率的に設置することが可能となる。また、既存パネル21の一部をタイルパネル1と取り替える施工、及び下地躯体22のみに対しタイルパネル1を設置する施工を行ったとしても、不陸調整材25を用いることにより、既存パネル21の表面の基準面と、タイルパネル1のタイルの表面との高さ調整を容易に行うことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の施工方法は、不陸状態にある建造物の壁部等への、タイルパネルの取り付けに、特に有効である。
【符号の説明】
【0040】
11 基板
13 役物タイル
22 下地躯体
23 インバートコンクリート
24 ボルト
25 不陸調整材
26 アンカー
31 ワッシャ
32 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基板の片面上に、複数のタイルがそれぞれ目地部を設けて固着されてなるタイルパネルを、下地面に対して設置するためのタイルパネルの施工方法であって、前記タイルパネルのタイルが接着された側の面を表面とし、その反対面を裏面としたとき、
前記下地面に対して、該下地面より離れた面であり且つ前記タイルパネルを設置するときの基準となる基準面を設定するステップと、
前記下地面の適所に、自硬性を有し且つ変形容易な材料からなる不陸調整材を、設置後のタイルパネルの裏面が位置する面より突出するように設けるステップと、
前記タイルパネルを、その裏面を前記下地面に対向させて、前記不陸調整材の上から前記下地面方向へ押しつけて、前記タイルパネルの表面を前記基準面と一致させるステップと、
前記タイルパネルの表面が前記基準面と一致した状態で、前記タイルパネルを前記下地面に固定するステップと、
を備えるタイルパネルの施工方法。
【請求項2】
前記タイルパネルの前記下地面への固定は、前記不陸調整材を前記基準面より突出するように設けるステップに先だって、前記下地面に対してほぼ垂直となるようにボルトを前記下地面に固定しておき、前記不陸調整材を設けた後、前記ボルトが、前記タイルパネルの目地部において前記タイルパネルの厚さ方向に貫通するように、前記タイルパネルを前記不陸調整材の上から前記下地面方向へ押しつけ、前記タイルパネルの所定の面を前記基準面と一致させ、しかる後、前記タイルパネルの表面側からナットを前記ボルトに締結することにより行われることを特徴とする請求項1に記載のタイルパネルの施工方法。
【請求項3】
前記ボルトの前記下地面への固定は、前記下地面にアンカーを打設し、該アンカーに対してボルトを螺合することにより行うことを特徴とする請求項2に記載のタイルパネルの施工方法。
【請求項4】
前記タイルパネルとして、基板の片面上にタイルが縦横並列して固着されたタイルパネルを用い、前記タイルパネルの前記下地面への固定は、縦方向の目地部と横方向の目地部とが交差してなる目地部の交差部で行われることを特徴とする請求項1〜3に記載のタイルパネルの施工方法。
【請求項5】
前記タイルパネルとして、前記目地部の交差部に角部が切り欠かれたタイルが固着されてなるタイルパネルを用いることを特徴とする請求項4記載のタイルパネルの施工方法。

【図1】
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【図1−B】
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【図2】
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【図2−B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−159555(P2010−159555A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1338(P2009−1338)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000126609)株式会社エーアンドエーマテリアル (99)
【Fターム(参考)】