説明

タイル外壁改修・補修方法

【課題】 タイル外壁の補修を一貫して行うタイル外壁改修・補修方法を提供することである。
【解決手段】 補修しようとする建築物のタイル外壁の補修すべき箇所の調査を行う工程と、補修すべき箇所に切り込みを入れて当該箇所のタイル及び目地を除去する工程と、当該箇所の下地処理を行う工程と、前記当該箇所に、除去したタイルの寸法、色、風合いに合わせて製作したタイルを貼り、周囲の目地詰めを行う工程と、タイル外壁のうち貼り変えたタイル以外のタイルの洗浄を行う工程とを含むことを特徴とする方法が提供される。好ましくは、下地処理を行う工程は、コンクリートのひび割れ部分に沿ってU形にカットする段階と、U形にカットした溝内に、プライマーを均一に塗布する段階と、溝内にシーリング材を充填する段階と、シーリング材の上部にモルタルを充填する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、タイル外壁改修・補修方法に関する。より詳細には、本発明は、タイル外壁の改修・補修を一貫して行うタイル外壁改修・補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルディングやマンション等の大型建築物の外壁材として、耐久性があり、高級感を醸しだすことができるため、タイルが広範に用いられている。タイル外壁は基本的には、外壁に接着剤等でタイルを貼り付け、隣接するタイル間の隙間に目地を設けることによって形成されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなタイル外壁は、施工後に年月が経過すると、ひび割れや浮きが発生する。また、地震等の振動により、タイルの貼り付けの強い箇所ではタイルにクラックが入り、タイルの貼り付けの弱い箇所ではタイルに浮きが生ずる。さらに、タイルや目地が劣化することにより、タイルの裏面に雨水が侵入する。このようにタイル外壁も経年劣化するが、タイル外壁を補修する一貫したシステムが見当たらないのが現状である。
【0004】
本発明は、このような状況に鑑みて案出されたものであって、タイル外壁の改修・補修を一貫して行うタイル外壁改修・補修方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願請求項1に記載のタイル外壁改修・補修方法は、補修しようとする建築物のタイル外壁の補修すべき箇所の調査を行う工程と、補修すべき箇所に切り込みを入れて当該箇所のタイル及び目地を除去する工程と、前記当該箇所の下地処理を行う工程と、前記当該箇所に、除去したタイルの寸法、色、風合いに合わせて製作したタイルを貼り、周囲の目地詰めを行う工程と、前記タイル外壁のうち貼り変えたタイル以外のタイルの洗浄を行う工程とを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、経年劣化したタイル外壁の改修・補修を一貫して行うことにより、低コストで且つ手軽にタイル外壁の改修・補修工事を行うことができる。また、本発明では、健全なタイルはそのままにし、不良タイルのみを除去するので、改修・補修工事自体を廉価に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係るタイル外壁改修・補修方法について詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係るタイル外壁改修・補修方法の一連の工程を示したフロー図である。
【0008】
まず最初に、補修しようとするタイル外壁の調査を行う。調査では、各タイルを打診ハンマーで打診したり、クラックスケール等を用いてタイルのクラックや浮き部を調べる。なお、クラックのチェックでは、0.2mm以上のクラックについては全てマーキングし、補修対象とすることが望ましい。また、ベランダ、窓、開口部、階段室、1階廻り等では、0.2mm以下のクラックにもマーキングを行い、補修対象とすることが望ましい。なお、マーキングしたタイルの種類や個数等の欄を設けた打診調査表を予め準備しておき、調査の結果を記入するようにするとよい。
【0009】
次いで、マーキングしたタイル(以下「不良タイル」という)に電動カッターで切り込みを入れて除去する。図2は、カッターによる切り込みの例を示した図である。切り込みは、不良タイルと共にその周囲の目地も除去することができるように入れる。なお、不良タイル及びその周囲の目地を除去した後に、不良タイルを貼り付けていたモルタルを完全に除去し、コンクリート躯体面を露出させるようにする必要があるが、除去しすぎてコンクリート躯体以外の下地まで露出させないように注意しなければならない。
【0010】
一方、除去した不良タイルの寸法、色、風合い等に合わせて、見かけ上ほぼ同等の新しいタイルを製作しておく。
【0011】
なお、不良タイルの除去作業においては、本発明者の開発した外壁補修工事用安全シュート(特許第3446958号公報参照)を使用するのが好ましい。図3は、この外壁補修工事用安全シュートを使用してタイル除去を行っている状態を模式的に示した図である。この外壁補修工事用安全シュートを使用する際には、まず、建築物の外壁の前面に足場を設置し、タイルを除去しようとする高さにおける足場に当該シュートの頂面が位置し、一段下の足場に当該シュートの底面が位置するように当該シュートを足場に取り付ける。
【0012】
次いで、タイル外壁の再調査を行う。再調査においては、不良タイルを除去した後に露出したひび割れ、コンクリートの浮き、爆裂等の老化状況を調査し分類して、再調査表に記入する。
【0013】
次いで、下地処理を行う。下地処理に際しては、まず、タイルのひび割れ部分(特に、開口部周囲)を目視で観察し、補修すべき範囲を決定する。しかる後、電動カッターを用いて、コンクリートのひび割れ部分に沿ってU形にカットする(幅10mm程度、深さ10mm〜15mm程度、図4(a)参照)。次に、U形にカットした溝内に、プライマーを均一に塗布する(図4(b)参照)。次に、溝内にシーリング材を充填する。その際、シーリング材の頂面がコンクリート表面よりも3mm〜5mm程度低くなるように、シーリング材を充填し(図4(c)参照)、頂面をヘラで押さえて平滑に仕上げる。次に、シーリング材の上部にポリマーセメントモルタルを充填し、コンクリート表面に合うようにポリマーセメントモルタルの頂面を平滑にする(図4(d)参照)。
【0014】
なお、0.2mm未満の微細なひび割れについては、ポリマーセメントモルタルを低圧で注入する低圧注入工法等の他の方法を採用してもよい。
【0015】
また、コンクリート躯体中の露出鉄筋は、錆や汚れをワイヤブラシ等で除去してから、防錆ペーストを塗布する。
【0016】
次いで、タイル貼り、目地詰めを行う。タイル貼りに先立って、下地の十分な清掃を行う。なお、タイル貼りに用いるタイルは、上述のように、除去した不良タイルの寸法、色、風合い等に合わせて、見かけ上ほぼ同等となるように製作されたものである。タイル貼りに際しては、タイルの寸法に合わせて接着剤の量を決め、各タイルの裏面に接着剤を塗布し、貼ろうとする箇所にタイルを慎重に合わせて、ハンマーの木部で叩きながらもみ込むようにして貼り付ける。なお、タイルを貼った後に、硬化養生を行う。目地詰めは、モルタルを目地部に塗り込むことによって行う。なお、目地詰めを行った後も硬化養生を行う。
【0017】
次いで、貼り変えたタイル以外のタイルの洗浄を行う。施工時の気温やタイルの材質を考慮しつつ、必要がある場合には、水で湿しながら洗浄する。洗浄は、洗浄液を浸したスポンジを絞りつつ、洗浄液をタイル面に均等に塗布するようにして行うのがよい。洗浄液の塗布に際しては、ムラを防ぐため、スポンジを円形状に移動させるのではなく、上下左右方向に移動させるようにするのがよい。洗浄液で汚れが分解された後、高圧洗浄機を用いて洗浄液を洗い流す。
【0018】
最後に、改修・補修が完全に行われたか否かの検査を行う。検査は、打診調査にともなうタイル浮き部、クラック部、欠損部の補修もれがないか否か、ハツリ作業にともなう欠損部がないか否か、タイル貼り付けや目地詰めもれがないか否か、タイルの洗浄もれや洗いムラがないか否か等について行う。
【0019】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係るタイル外壁改修・補修方法の一連の工程を示したフロー図である。
【図2】不良タイル除去作業における不良タイルの切り込み例を示した図である。
【図3】外壁補修工事用安全シュートを使用してタイル除去を行っている状態を模式的に示した図である。
【図4】下地処理工程においてシーリング材を充填する一連の手順を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイル外壁改修・補修方法であって、
補修しようとする建築物のタイル外壁の補修すべき箇所の調査を行う工程と、
補修すべき箇所に切り込みを入れて当該箇所のタイル及び目地を除去する工程と、
前記当該箇所の下地処理を行う工程と、
前記当該箇所に、除去したタイルの寸法、色、風合いに合わせて製作したタイルを貼り、周囲の目地詰めを行う工程と、
前記タイル外壁のうち貼り変えたタイル以外のタイルの洗浄を行う工程と、
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−274709(P2006−274709A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97385(P2005−97385)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(505116057)株式会社クリーンクロックス (4)
【Fターム(参考)】