説明

タイル張り外壁構造

【課題】外壁表面の意匠性を高め、しかも外壁下地材間の目地部における防水メンテナンス工事を簡単に行うことができ、地震発生時におけるタイルの破損も低減することができるタイル張り外壁構造を提供する。
【解決手段】このタイル張り外壁構造においては、外壁下地材2、2間の目地部5を、目地部用タイルユニット4・・及び被覆用タイル40・・で覆い隠している。目地部用タイルユニット4は、ユニット本体15の裏面に固定板16を張り合わせてなり、その固定板16の突片21、22・・をビス30・・止めすることで、外壁下地材2、2の表面に張り付けられている。被覆用タイル40は、突片21、22・・を覆うようにして、外壁下地材2、2の表面に面ファスナー41、41を介して取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、住宅やマンション等の建物におけるタイル張り外壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、タイル張り外壁として、例えば特許文献1にも開示されているように、外壁下地材の表面にモルタルや接着剤を介してタイルを張り付けるようにした構造のものが広く知られている。
【0003】
また、近年では、例えば特許文献2にも開示されているように、複数枚のタイルを並設一体化してなるタイルユニットが各種提案されており、このようなタイルユニットを使用することで、タイルの張り付け作業を軽減して、施工性を高めることができる。この種のタイルユニットも、外壁下地材の表面にモルタルや接着剤を介して張り付けるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−317181号公報
【特許文献2】特開2006−45970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなタイル張り外壁においては、外壁下地材間の目地部を回避しながら、タイルやタイルユニットを張り付ける場合と、外壁下地材間の目地部を覆い隠しながら、タイルやタイルユニットの張り付ける場合とがある。
【0006】
ところが、前者の場合には、外壁表面において、タイル間の目地部(例えば幅5〜7mm)よりも幅広の外壁下地材間の目地部(例えば幅10〜15mm)が露出して目立つことになり、しかも外壁下地材間の目地部には光沢のあるシーリング材が充填されていることが多く、タイル間の目地部と比べて色合や質感も異なることから、美感上好ましくないといった不具合があった。
【0007】
また、後者の場合には、外壁下地材間の目地部に充填したシーリング材の経年劣化に伴う防水メンテナンス工事に際して、目地部を覆っているタイルやタイルユニットを剥がす必要があるが、これらタイルやタイルユニットは外壁下地材の表面に強固に接着されていて容易に剥がすことができず、防水メンテナンス工事が非常に面倒になるといった不具合があった。さらに、地震発生時において、外壁下地材の挙動によって目地部が変形することで、目地部を覆うタイルに欠けや割れ等が発生し易く、タイルの張替えを伴う面倒な修復工事が必要となることが多いといった不具合もあった。
【0008】
この発明は、上記の不具合を解消して、外壁表面の意匠性を向上することができ、しかも外壁下地材間の目地部における防水メンテナンス工事を簡単に行うことができ、地震発生時におけるタイルの破損も低減することができるタイル張り外壁構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、この発明のタイル張り外壁構造は、外壁下地材2、2間の目地部5を、目地部用タイルユニット4、44・・で覆い隠すようにしたものであって、前記目地部用タイルユニット4、44は、複数枚のタイル10・・を並設一体化してなるユニット本体15裏面に固定板16を張り合わせてなり、その固定板16に形成したビス挿通用長穴25、26、45・・に挿通したビス30・・を、前記外壁下地材2、2の表面にねじ込むことで、前記目地部用タイルユニット4、44を、前記目地部5を跨ぐようにして前記外壁下地材2、2の表面に張り付けるようにしたことを特徴とする。
【0010】
具体的に、前記固定板16の前記ユニット本体15から張り出した突片21、22・・に、前記ビス挿通用長穴25、26・・を形成して、それらビス挿通用長穴25、26・・に挿通したビス30・・を、前記外壁下地材2、2の表面にねじ込むとともに、前記外壁下地材2、2の表面に着脱可能に取り付けた被覆用タイル40・・によって、前記突片21、22・・を覆い隠すようにしている。すなわち、前記被覆用タイル40の裏面に、前記面ファスナー41、41における雄面部42、42又は雌面部43、43のうちの一方を貼り付けるとともに、前記外壁下地材2、2の表面に、前記目地部5を挟むようにして、前記面ファスナー41、41における雄面部42、42又は雌面部43、43のうちの他方を貼り付けて、前記雄面部42、42と雌面部43、43とを接合させながら、前記被覆用タイル40を、前記目地部5を跨ぐように取り付けている。さらに、前記外壁下地材2、2の表面に、前記面ファスナー41、41を収容する凹所8、8を形成している。
【0011】
また、前記固定板16の突片21、22・・は、前記ユニット本体15の上端部から上向きに張り出した上側突片21、21と、前記ユニット本体15の下端部から下向きに張り出した下側突片22、22とからなり、複数の前記目地部用タイルユニット4・・を、縦方向の前記目地部5に沿って配列して、下側の前記目地部用タイルユニット4の上側突片21、21と上側の前記目地部用タイルユニット4の下側突片22、22とを重ね合わせた状態で、これら上側突片21、21及び下側突片22、22の互いに一致したビス挿通用長穴25、26・・に挿通したビス30、30を、前記外壁下地材2、2の表面にねじ込むようにしている。さらに、前記下側突片22、22のビス挿通用長穴26、26を下方へ向けて開放して、前記上側突片21、21に対する前記下側突片22、22の重ね合わせに際して、前記上側突片21、21のビス挿通用長穴25、25に挿通させながら前記外壁下地材2、2の表面にねじ込んだ仮止め状態の前記ビス30、30を、前記開放部分から前記ビス挿通用長穴26、26へ差し入れ可能としている。
【0012】
また、前記固定板16の前記ユニット本体15裏側の基片20に、前記ビス挿通用長穴45、45を形成するとともに、前記固定板16の前記ユニット本体15の下端部から下向きに張り出した下側突片22、22に、前記ビス挿通用長穴26、26を形成して、複数の前記目地部用タイルユニット44・・を、縦方向の前記目地部5に沿って配列して、下側の前記目地部用タイルユニット44の基片20と上側の前記目地部用タイルユニット44の下側突片22、22とを重ね合わせた状態で、これら基片20及び下側突片22、22の互いに一致したビス挿通用長穴26、45・・に、下側の前記目地部用タイルユニット44におけるタイル10、10間の目地部46からビス30、30を挿通させて、それらビス30、30を、前記外壁下地材2、2の表面にねじ込むようにしている。さらに、前記下側突片22、22のビス挿通用長穴26、26を下方へ向けて開放して、前記基片20に対する前記下側突片22、22の重ね合わせに際して、前記基片20のビス挿通用長穴45、45に挿通させながら前記外壁下地材2、2の表面にねじ込んだ仮止め状態の前記ビス30、30を、前記開放部分から前記ビス挿通用長穴26、26へ差し入れ可能としている。
【0013】
別の発明のタイル張り外壁構造は、外壁下地材2、2間の目地部5を、目地部用タイルユニット50・・で覆い隠すようにしたものであって、前記目地部用タイルユニット50は、複数枚のタイル10・・を並設一体化してなるユニット本体15を備え、そのユニット本体15裏面に、面ファスナー51、51における雄面部52、52又は雌面部53、53のうちの一方を貼り付けるとともに、前記外壁下地材2、2の表面に、前記目地部5を挟むようにして、前記面ファスナー51、51における雄面部52、52又は雌面部53、53のうちの他方を貼り付けて、これら雄面部52、52と雌面部53、53とを接合することで、前記目地部用タイルユニット50を、前記目地部5を跨ぐようにして前記外壁下地材2、2の表面に張り付けるようにしたことを特徴とする。そして、前記外壁下地材2、2の表面に、前記面ファスナー51、51を収容する凹所8、8を形成している。
【発明の効果】
【0014】
この発明のタイル張り外壁構造においては、外壁下地材間の目地部が覆い隠されていて、外部に露出することがないので、外壁表面の意匠性を良好に維持することができる。しかも、目地部を覆い隠している目地部用タイルユニットは、その固定板を外壁下地材の表面にビス止めすることで、外壁下地材の表面に張り付けられていることから、目地部用タイルユニットの着脱が容易であって、外壁下地材間の目地部における防水メンテナンス工事を簡単に行うことができる。さらに、目地部用タイルユニットの固定板に形成したビス挿通用長穴にビスを挿通させているので、地震発生時において、外壁下地材の挙動によって目地部が変形して、目地部用タイルユニットに負荷がかかっても、ビス挿通用長穴の範囲内におけるビスに対する目地部用タイルユニットの位置ずれによって負荷を吸収することができ、タイルの破損を低減することができる。
【0015】
また、固定板の突片を外壁下地材の表面にビス止めして、それら突片を着脱可能な被覆用タイルによって覆い隠すことで、ビス止め部分を外部から見えないようにして、外壁表面の意匠性をより一層高めることができる。さらに、被覆用タイルを面ファスナーを介して取り付けることで、地震発生時において、被覆用タイルに負荷がかかっても、面ファスナーの接合部分の位置ずれや部分的な外れによって負荷を吸収し、被覆用タイルの破損を低減することができる。さらにまた、外壁下地材の表面に形成した凹所に面ファスナーを収容することで、被覆用タイルの浮き上がりが抑えて、意匠性をより一層向上することができる。
【0016】
また、上下に隣接する目地部用タイルユニットの突片同士、或いは、基片と突片とを重ね合わせて共締め固定することで、ビス止め箇所を少なくして、施工性を高めることができる。さらにまた、上側突片や基片を仮止めした仮止め状態のビスを、下側突片のビス挿通用長穴へ差し入れるようにしながら、突片同士、或いは、基片と突片とを重ね合わせることで、上下に隣接する目地部用タイルユニットを、それぞれ位置決めしながら、簡単に張り付けることができ、施工性の向上を図ることができる。
【0017】
別の発明のタイル張り外壁構造においては、外壁下地材間の目地部が覆い隠されていて、外部に露出することがないので、外壁表面の意匠性を良好に維持することができる。しかも、目地部用タイルユニットを面ファスナーを介して張り付けているので、目地部用タイルユニットの着脱が容易であって、外壁下地材間の目地部における防水メンテナンス工事を簡単に行うことができる。また、地震発生時において、外壁下地材の挙動によって目地部が変形して、目地部用タイルユニットに負荷がかかっても、面ファスナーの接合部分の位置ずれや部分的な外れによって負荷を吸収して、タイルの破損を低減することができる。さらに、外壁下地材の表面に形成した凹所に面ファスナーを収容することで、目地部用タイルユニットの浮き上がりが抑えて、意匠性をより一層向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の一実施形態に係るタイル張り外壁の分解斜視図である。
【図2】同じくその要部正面図である。
【図3】一般部用タイルユニットを示す図である。
【図4】目地部用タイルユニットを示す図である。
【図5】突片の共締め固定状態を示す斜視図である。
【図6】突片の共締め固定作業を示す斜視図である。
【図7】タイル張り外壁の要部横断面図である。
【図8】他の実施形態に係るタイル張り外壁の分解斜視図である。
【図9】同じくその要部正面図である。
【図10】目地部用タイルユニットを示す図である。
【図11】タイル張り外壁の要部横断面図である。
【図12】別の実施形態に係るタイル張り外壁の分解斜視図である。
【図13】目地部用タイルユニットを示す図である。
【図14】タイル張り外壁の要部横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明の一実施形態に係るタイル張り外壁は、図1及び図2に示すように、建物躯体1に取り付けられた外壁下地材2・・の表面に、複数の一般部用タイルユニット3・・及び目地部用タイルユニット4・・が整列状態で張り付けられている。
【0020】
外壁下地材2は、例えばサイディング材等からなり、地震発生時において建物躯体1に揺れが生じると、この揺れに追従して回動することで、脱落やひび割れを生じることなく、地震の力を受け流すように構成されている。そして、横方向に隣接する外壁下地材2、2間には、幅10〜15mm程度の縦方向の目地部5が形成されている。なお、目地部5には、図7に示すように、バックアップ材6を介してシーリング材7が充填されている。
【0021】
一般部用タイルユニット3は、図3に示すように、所定形状に並べた複数枚のタイル10・・の裏面に跨って、合成樹脂製の連結用ネット11を貼り合わせることで、複数枚のタイル10・・を並設一体化してなる。そして、一般部用タイルユニット3・・は、外壁下地材2・・の目地部5周辺を除く表面に接着剤を介してそれぞれ張り付けられている。
【0022】
目地部用タイルユニット4は、外壁下地材2、2間の縦方向の目地部5を覆い隠すためのものであって、図4に示すように、ユニット本体15の裏面に金属製の固定板16を接着剤を介して貼り合わせてなる。ユニット本体15は、一般部用タイルユニット3と同様に、所定形状に並べた複数枚のタイル10・・の裏面に跨って、合成樹脂製の連結用ネット11を貼り合わせることで、複数枚のタイル10・・を並設一体化してなる。
【0023】
固定板16は、方形状の基片20と、この基片20の上端部から延出して、ユニット本体15の上端部から上向きに張り出した左右一対の上側突片21、21と、基片20の下端部から延出して、ユニット本体15の下端部から下向きに張り出した左右一対の下側突片22、22とからなる。なお、上側突片21、21は、下側突片22、22よりも幅広に形成されている。
【0024】
また、固定板16には、左右一対の段差部23、23が縦方向に沿って形成されていて、これにより上側突片21、21及び下側突片22、22を含めた固定板16の左右端部が、ユニット本体15の裏面に対して僅かに離間した状態となっている。
【0025】
さらに、上側突片21、21及び下側突片22、22には、後述するビス30を挿通させるためのビス挿通用長穴25、26・・が縦方向に沿ってそれぞれ形成されている。また、下側突片22、22のビス挿通用長穴26、26は、下方へ向けて開放されていて、その開放部分からビス挿通用長穴26、26へのビス30、30の差し入れを可能としている。
【0026】
そして、目地部用タイルユニット4・・は、外壁下地材2、2間の縦方向の目地部5に沿って配列された状態で、それら上端部に設けた左右一対の上側突片21、21、及び、それら下端部に設けた左右一対の下側突片22、22を、目地部5を挟むように配置しながら、外壁下地材2、2の表面にビス30・・止めすることで、目地部5を跨ぐようにして外壁下地材2、2の表面にそれぞれ張り付けられている。
【0027】
この張付状態において、図5に示すように、下側に位置する目地部用タイルユニット4の上側突片21、21と、上側に位置する目地部用タイルユニット4の下側突片22、22とが重ね合わされて、互いに一致したビス挿通用長穴25、26・・に挿通されたビス30、30が、外壁下地材2、2の表面にねじ込まれている。
【0028】
この共締め固定に際しては、図6に示すように、下側に位置する目地部用タイルユニット4を先付けして、その上側突片21、21のビス挿通用長穴25、25に挿通させたビス30、30を、外壁下地材2、2の表面に軽くねじ込んで仮止め状態とし、続いて上側に位置する目地部用タイルユニット4の下側突片22、22を、そのビス挿通用長穴26、26の開放部分からビス挿通用長穴26、26へ仮止め状態のビス30、30を差し入れるように下方へスライドさせながら、下側に位置する目地部用タイルユニット4の上側突片21、21に重ね合わせている。そして、この状態で、仮止め状態のビス30、30をさらにねじ込んで本締めしている。これにより、目地部用タイルユニット4・・を、それぞれ位置決めしながら、簡単に張り付けることができる。
【0029】
また、目地部用タイルユニット4・・を張り付けただけでは、図5に示すように、共締め固定した突片21、22・・が外部に露出していることから、これら突片21、22・・を被覆用タイル40・・によって覆い隠すようにしている。
【0030】
被覆用タイル40は、一般部用タイルユニット3・・及び目地部用タイルユニット4・・における1枚分のタイル10と同じものが使用されていて、一対の面ファスナー41、41を介して外壁下地材2、2の表面に着脱可能に取り付けられている。
【0031】
具体的には、図1及び図7に示すように、外壁下地材2、2における縦方向の目地部5を挟んだ側端部表面に、目地部5に沿って面ファスナー41、41を収容する凹所8、8が形成されている。そして、被覆用タイル40の裏面に、面ファスナー41、41における雄面部42、42(雌面部43、43であっても良い。)が貼り付けられるとともに、外壁下地材2、2の凹所8、8表面に、目地部5を挟むようにして、面ファスナー41、41における雌面部43、43(雄面部42、42であっても良い。)が貼り付けられている。なお、雌面部43、43は、左右のビス30・・止め状態の突片21、22・・間に配置されている。そして、これら雄面部42、42と雌面部43、43とを接合することで、被覆用タイル40が目地部5を跨ぐように取り付けられている。
【0032】
なお、実際の施工に際しては、被覆用タイル40の裏面に接合状態の一対の面ファスナー41、41を貼り付けておいて、それら面ファスナー41、41における雌面部43、43(雄面部42、42であっても良い。)の裏面を、外壁下地材2、2の凹所8、8表面に貼り付けることで、被覆用タイル40を取り付けるようにしている。
【0033】
この被覆用タイル40の取付状態において、図7に示すように、面ファスナー41、41の大部分が外壁下地材2、2の凹所8、8に収容されて、被覆用タイル40の浮き上がりが必要最小限に抑えられて、外壁下地材2、2の表面と被覆用タイル40の裏面との間の隙間に、共締め固定した突片21、22・・及びビス30・・の頭部が収容された状態となっている。そして、被覆用タイル40・・の表面と一般部用タイルユニット3・・及び目地部用タイルユニット4・・の表面とが、面一に揃えられている。
【0034】
上記のタイル張り外壁においては、目地部用タイルユニット4・・及び被覆用タイル40・・によって、外壁下地材2、2間の目地部5が覆い隠されていて、外部に露出することがないので、外壁表面の意匠性を良好に維持することができる。
【0035】
また、外壁下地材2、2間の目地部5に充填したシーリング材7の経年劣化に伴う防水メンテナンス工事に際しては、まず被覆用タイル40・・を止め付けている面ファスナー41・・の接合を解除して、被覆用タイル40・・を取り外すことで、目地部用タイルユニット4・・の突片21、22・・を露出させる。続いて、突片21、22・・を止め付けているビス30・・を緩めて、目地部用タイルユニット4・・を取り外すことで、目地部5全体を露出させる。そして、シーリング材7の補修や交換を行った後、取り外した目地部用タイルユニット4・・の突片21、22・・を、外壁下地材2、2の表面に再度ビス30・・止めして、元の張付状態に戻す。このとき、突片21、22・・のビス挿通用長穴25、26・・の範囲内において、ビス30・・の挿通位置を変更することができ、外壁下地材2、2の表面に形成されている既存のビス穴を回避して、ビス30・・をしっかりとねじ込むことができる。最後に、取り外した被覆用タイル40・・を再度取り付けて、目地部用タイルユニット4・・の突片21、22・・を覆い隠すことで、工事が完了する。このように、被覆用タイル40・・及び目地部用タイルユニット4・・の着脱が容易であることから、外壁下地材2、2間の目地部5における防水メンテナンス工事を簡単に行うことができる。
【0036】
さらに、地震発生時には、外壁下地材2、2の挙動によって目地部5が変形すると、目地部用タイルユニット4・・及び被覆用タイル40・・に負荷がかかることになるが、目地部用タイルユニット4・・は、突片21、22・・のビス挿通用長穴25、26・・の範囲内において、外壁下地材2、2にねじ込んだビス30・・に対する位置ずれが許容されていることから、この位置ずれによって負荷を吸収して、タイル10・・の欠けや割れ等を防止することができる。また、被覆用タイル40・・は、面ファスナー41・・を使用して取り付けられていることから、面ファスナー41・・の接合部分の位置ずれや部分的な外れによって負荷を吸収して、欠けや割れ等を防止することができる。
【0037】
なお、上記実施形態においては、被覆用タイル40・・を面ファスナー41・・を使用して取り付けていたが、例えば目地部用タイルユニット4・・の突片21、22・・に形成したフックに引っ掛けるようにして取り付けるようにしても良い。
【0038】
図8及び図9は、他の実施形態に係るタイル張り外壁を示している。このタイル張り外壁においては、被覆用タイル40・・を使用することなく、目地部用タイルユニット44・・を外壁下地材2、2間の縦方向の目地部5に沿って連続的に配列することで、目地部5を覆い隠すようにしている。なお、被覆用タイル40・・を使用しないことから、外壁下地材2、2には面ファスナー41、41を収容するための凹所8、8は形成されていない。その他の構成は、上記実施形態と同様であり、図において上記実施形態と同様の機能を有する部材については同符号を付してある。
【0039】
目地部用タイルユニット44は、図10に示すように、固定板16において上側突片21、21が廃止されていて、固定板16におけるユニット本体15裏側の基片20の左右端部(段差部23、23によってユニット本体15の裏面から離間した状態の左右端部)に、ビス挿通用長穴45、45が横方向に沿ってそれぞれ形成されている。具体的に、これらビス挿通用長穴45、45は、ユニット本体15の最上段のタイル10とその直下のタイル10との間の幅5〜7mm程度の目地部46に対応する位置に形成されている。また、固定板16の下側突片22、22は、やや長めに張り出している。それ以外の構造は、上述した目地部用タイルユニット4と同様である。
【0040】
そして、目地部用タイルユニット44・・は、外壁下地材2、2間の縦方向の目地部5に沿って配列された状態で、その基片20及び下側突片22、22を外壁下地材2、2の表面にビス30・・止めすることで、目地部5を跨ぐようにして外壁下地材2、2の表面にそれぞれ張り付けられている。
【0041】
この張付状態において、図9及び図11に示すように、下側に位置する目地部用タイルユニット44の基片20の上端部と、上側に位置する目地部用タイルユニット44の下側突片22、22とが重ね合わされて、互いに一致したビス挿通用長穴26、45・・に、下側の目地部用タイルユニット44における上記のタイル10、10間の目地部46を通してビス30、30が挿通されて、それらビス30、30が、外壁下地材2、2の表面にねじ込まれている。
【0042】
この共締め固定に際しては、下側に位置する目地部用タイルユニット44を先付けして、その基片20のビス挿通用長穴45、45に挿通させたビス30、30を、外壁下地材2、2の表面に軽くねじ込んで仮止め状態とし、続いて上側に位置する目地部用タイルユニット44の下側突片22、22を、そのビス挿通用長穴26、26の開放部分からビス挿通用長穴26、26へ仮止め状態のビス30、30を差し入れるように下方へスライドさせながら、下側に位置する目地部用タイルユニット4の基片20に重ね合わせている。そして、この状態で、仮止め状態のビス30、30をさらにねじ込んで本締めしている。これにより、目地部用タイルユニット44・・を、それぞれ位置決めしながら、簡単に張り付けることができる。
【0043】
上記のタイル張り外壁においては、目地部用タイルユニット44によって、外壁下地材2、2間の目地部5が覆い隠されていて、外部に露出することがないので、外壁表面の意匠性を良好に維持することができる。
【0044】
また、外壁下地材2、2間の目地部5に充填したシーリング材7の経年劣化に伴う防水メンテナンス工事に際しては、目地部用タイルユニット44・・の基片20・・及び下側突片22・・を止め付けているビス30・・を、上記のタイル10、10間の目地部46を通して緩めて、目地部用タイルユニット44・・を取り外すことで、目地部5全体を露出させる。そして、シーリング材7の補修や交換を行った後、取り外した目地部用タイルユニット44・・の基片20・・及び下側突片22・・を、外壁下地材2、2の表面に再度ビス30・・止めして、元の張付状態に戻すことで、工事が完了する。このように、目地部用タイルユニット44・・の着脱が容易であることから、外壁下地材2、2間の目地部5における防水メンテナンス工事を簡単に行うことができる。
【0045】
さらに、地震発生時には、外壁下地材2、2の挙動によって目地部5が変形すると、目地部用タイルユニット44・・に負荷がかかることになるが、目地部用タイルユニット44・・は、基片20・・のビス挿通用長穴45・・の範囲内において、外壁下地材2、2にねじ込んだビス30・・に対する位置ずれが許容されていることから、この位置ずれによって負荷を吸収して、タイル10・・の欠けや割れ等を防止することができる。
【0046】
図12は、別の実施形態に係るタイル張り外壁を示している。このタイル張り外壁は、上記のような目地部用タイルユニット4、44・・、被覆用タイル40・・の代わりに、別の目地部用タイルユニット50・・を使用して、これら目地部用タイルユニット50・・を外壁下地材2、2間の縦方向の目地部5に沿って連続的に配列することで、目地部5を覆い隠すようにしている。なお、その他の構成は、上記実施形態と同様であり、図において上記実施形態と同様の機能を有する部材については同符号を付してある。
【0047】
目地部用タイルユニット50は、図13に示すように、所定形状に並べた複数枚のタイル10・・の裏面に跨って、合成樹脂製の連結用ネット11を貼り合わせることで、複数枚のタイル10・・を並設一体化してなるユニット本体15を備えている。そして、ユニット本体15の裏面に、帯状に形成された一対の面ファスナー51、51における雄面部52、52(雌面部53、53であっても良い。) が縦方向に沿って互いに平行に貼り付けられるとともに、外壁下地材2、2の凹所8、8表面に、目地部5を挟むようにして、面ファスナー51、51における雌面部53、53(雄面部52、52であっても良い。)が縦方向に沿って互いに平行に貼り付けられ、これら雄面部52、52と雌面部53、53とを接合することで、目地部用タイルユニット50が目地部5を跨ぐようにして外壁下地材2、2の表面に張り付けられている。
【0048】
なお、実際の施工に際しては、目地部用タイルユニット50の裏面に接合状態の面ファスナー51、51を貼り付けておいて、その面ファスナー51、51における雌面部53、53(雄面部52、52であっても良い。)の裏面を、外壁下地材2、2の凹所8、8表面に貼り付けることで、目地部用タイルユニット50を張り付けるようにしている。
【0049】
この目地部用タイルユニット50の張付状態において、図14に示すように、面ファスナー51、51の大部分が外壁下地材2、2の凹所8、8に収容されて、目地部用タイルユニット50の浮き上がりが抑えられている。そして、一般部用タイルユニット3・・の表面と目地部用タイルユニット50・・の表面とが、面一に揃えられている。
【0050】
上記のタイル張り外壁においては、目地部用タイルユニット50・・によって、外壁下地材2、2間の目地部5が覆い隠されていて、外部に露出することがないので、外壁表面の意匠性を良好に維持することができる。
【0051】
また、外壁下地材2、2間の目地部5に充填したシーリング材7の経年劣化に伴う防水メンテナンス工事に際しては、目地部用タイルユニット50・・を止め付けている面ファスナー51・・の接合を解除して、目地部用タイルユニット50・・を取り外すことで、目地部5全体を露出させる。そして、シーリング材7の補修や交換を行った後、取り外した目地部用タイルユニット50・・を再度張り付けて、工事が完了する。このように、目地部用タイルユニット50・・の着脱が容易であることから、外壁下地材2、2間の目地部5における防水メンテナンス工事を簡単に行うことができる。
【0052】
さらに、地震発生時には、外壁下地材2、2の挙動によって目地部5が変形すると、目地部用タイルユニット50・・に負荷がかかることになるが、目地部用タイルユニット50・・は、面ファスナー51・・を使用して張り付けられていることから、面ファスナー51・・の接合部分の位置ずれや部分的な外れによって負荷を吸収して、タイル10・・の欠けや割れ等を防止することができる。
【0053】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で上記実施形態に多くの修正及び変更を加え得ることは勿論である。例えば、一般部用タイルユニット3や目地部用タイルユニット4、44、50・・におけるタイル10・・の配置は、必ずしも上記のような櫛歯状とする必要はなく、例えば全体的に正方形状や長方形状に配置させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0054】
2・・外壁下地材、4、44、50・・目地部用タイルユニット、5・・目地部、8・・凹所、10・・目地部用タイルユニットのタイル、15・・ユニット本体、16・・固定板、20・・基片、21・・上側突片、22・・下側突片、25・・上側突片のビス挿通用長穴、26・・下側突片のビス挿通用長穴、30・・ビス、40・・被覆用タイル、41、51・・面ファスナー、42、52・・雄面部、43、53・・雌面部、45・・基片のビス挿通用長穴、46・・タイル間の目地部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁下地材(2)(2)間の目地部(5)を、目地部用タイルユニット(4)(44)・・で覆い隠すようにした外壁構造であって、前記目地部用タイルユニット(4)(44)は、複数枚のタイル(10)・・を並設一体化してなるユニット本体(15)裏面に固定板(16)を張り合わせてなり、その固定板(16)に形成したビス挿通用長穴(25)(26)(45)・・に挿通したビス(30)・・を、前記外壁下地材(2)(2)の表面にねじ込むことで、前記目地部用タイルユニット(4)(44)を、前記目地部(5)を跨ぐようにして前記外壁下地材(2)(2)の表面に張り付けるようにしたことを特徴とするタイル張り外壁構造。
【請求項2】
前記固定板(16)の前記ユニット本体(15)から張り出した突片(21)(22)・・に、前記ビス挿通用長穴(25)(26)・・を形成して、それらビス挿通用長穴(25)(26)・・に挿通したビス(30)・・を、前記外壁下地材(2)(2)の表面にねじ込むとともに、前記外壁下地材(2)(2)の表面に着脱可能に取り付けた被覆用タイル(40)・・によって、前記突片(21)(22)・・を覆い隠すようにした請求項1記載のタイル張り外壁構造。
【請求項3】
前記被覆用タイル(40)の裏面に、前記面ファスナー(41)(41)における雄面部(42)(42)又は雌面部(43)(43)のうちの一方を貼り付けるとともに、前記外壁下地材(2)(2)の表面に、前記目地部(5)を挟むようにして、前記面ファスナー(41)(41)における雄面部(42)(42)又は雌面部(43)(43)のうちの他方を貼り付けて、前記雄面部(42)(42)と雌面部(43)(43)とを接合させながら、前記被覆用タイル(40)を、前記目地部(5)を跨ぐように取り付けた請求項2記載のタイル張り外壁構造。
【請求項4】
前記外壁下地材(2)(2)の表面に、前記面ファスナー(41)(41)を収容する凹所(8)(8)を形成した請求項3記載のタイル張り外壁構造。
【請求項5】
前記固定板(16)の突片(21)(22)・・は、前記ユニット本体(15)の上端部から上向きに張り出した上側突片(21)(21)と、前記ユニット本体(15)の下端部から下向きに張り出した下側突片(22)(22)とからなり、複数の前記目地部用タイルユニット(4)・・を、縦方向の前記目地部(5)に沿って配列して、下側の前記目地部用タイルユニット(4)の上側突片(21)(21)と上側の前記目地部用タイルユニット(4)の下側突片(22)(22)とを重ね合わせた状態で、これら上側突片(21)(21)及び下側突片(22)(22)の互いに一致したビス挿通用長穴(25)(26)・・に挿通したビス(30)(30)を、前記外壁下地材(2)(2)の表面にねじ込むようにした請求項2乃至4のいずれかに記載のタイル張り外壁構造。
【請求項6】
前記下側突片(22)(22)のビス挿通用長穴(26)(26)を下方へ向けて開放して、前記上側突片(21)(21)に対する前記下側突片(22)(22)の重ね合わせに際して、前記上側突片(21)(21)のビス挿通用長穴(25)(25)に挿通させながら前記外壁下地材(2)(2)の表面にねじ込んだ仮止め状態の前記ビス(30)(30)を、前記開放部分から前記ビス挿通用長穴(26)(26)へ差し入れ可能とした請求項5記載のタイル張り外壁構造。
【請求項7】
前記固定板(16)の前記ユニット本体(15)裏側の基片(20)に、前記ビス挿通用長穴(45)(45)を形成するとともに、前記固定板(16)の前記ユニット本体(15)の下端部から下向きに張り出した下側突片(22)(22)に、前記ビス挿通用長穴(26)(26)を形成して、複数の前記目地部用タイルユニット(44)・・を、縦方向の前記目地部(5)に沿って配列して、下側の前記目地部用タイルユニット(44)の基片(20)と上側の前記目地部用タイルユニット(44)の下側突片(22)(22)とを重ね合わせた状態で、これら基片(20)及び下側突片(22)(22)の互いに一致したビス挿通用長穴(26)(45)・・に、下側の前記目地部用タイルユニット(44)におけるタイル(10)(10)間の目地部(46)からビス(30)(30)を挿通させて、それらビス(30)(30)を、前記外壁下地材(2)(2)の表面にねじ込むようにした請求項1記載のタイル張り外壁構造。
【請求項8】
前記下側突片(22)(22)のビス挿通用長穴(26)(26)を下方へ向けて開放して、前記基片(20)に対する前記下側突片(22)(22)の重ね合わせに際して、前記基片(20)のビス挿通用長穴(45)(45)に挿通させながら前記外壁下地材(2)(2)の表面にねじ込んだ仮止め状態の前記ビス(30)(30)を、前記開放部分から前記ビス挿通用長穴(26)(26)へ差し入れ可能とした請求項7記載のタイル張り外壁構造。
【請求項9】
外壁下地材(2)(2)間の目地部(5)を、目地部用タイルユニット(50)・・で覆い隠すようにした外壁構造であって、前記目地部用タイルユニット(50)は、複数枚のタイル(10)・・を並設一体化してなるユニット本体(15)を備え、そのユニット本体(15)裏面に、面ファスナー(51)(51)における雄面部(52)(52)又は雌面部(53)(53)のうちの一方を貼り付けるとともに、前記外壁下地材(2)(2)の表面に、前記目地部(5)を挟むようにして、前記面ファスナー(51)(51)における雄面部(52)(52)又は雌面部(53)(53)のうちの他方を貼り付けて、これら雄面部(52)(52)と雌面部(53)(53)とを接合することで、前記目地部用タイルユニット(50)を、前記目地部(5)を跨ぐようにして前記外壁下地材(2)(2)の表面に張り付けるようにしたことを特徴とするタイル張り外壁構造。
【請求項10】
前記外壁下地材(2)(2)の表面に、前記面ファスナー(51)(51)を収容する凹所(8)(8)を形成した請求項9記載のタイル張り外壁構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2011−26857(P2011−26857A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−174282(P2009−174282)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【出願人】(000198787)積水ハウス株式会社 (748)
【Fターム(参考)】