説明

タオル織物

【課題】
ベース地が緻密で高級タオルの見栄えを有し、それでいて吸水力に優れ、しかも洗濯、乾燥を容易かつ短時間に行うことができるタオル織物を提供する。
【解決手段】
経糸1aと緯糸1bよりなる織物のベース地1に、パイル糸2による輪奈2aがベース地1の両面もしくは片面に現れるよう絡合してなるタオル織物であって、前記輪奈を、ベース地の経糸1aと緯糸1bとで区画された各区画1cに対し、少なくとも一区画以上を空けるように配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タオル織物に関し、より詳しくは、輪奈(パイル)密度が詰んでいる高級タオルの見栄えを有し、それでいて吸水力に優れまた乾燥し易いタオル織物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タオル織物には各種のものがあり(例えば、特許文献1参照)、タオル織物は、図6に示すように、経糸1aと緯糸1bよりなる織物のベース地1に絡合させているパイル糸2からなる輪奈2aの密度を詰んだものが高級品であると一般的に認識されている。
【0003】
しかしながら、この輪奈密度が詰んでいる高級タオル織物は表面が輪奈で密に覆われていてベース地が隠れているため吸水力に劣り、バスタオルやフェイスタオル等の水を拭き取るためのタオル生地として使用した場合、タオルとしての見栄えは良いものであるが、身体や顔に付着する水滴を快適に拭き取ることができないという矛盾を包含していた。
【0004】
また洗濯の際は、前記ベース地に絡合する輪奈密度が詰んでいることから、タオルが多量の水を含むので、すすぎに要する水や時間も多く、また洗い上がったタオルは脱水、乾燥に時間が非常に長く掛かり、かつ、水を多く含んで重いので、タオルを干す作業も容易ではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2004−131910号公報(第1〜4頁、図1〜4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高級タオルの見栄えを維持しつつ、吸水力に優れ、しかも洗濯時の乾燥などの作業が容易なタオル織物を提供できるようにした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係るタオル織物は、経糸と緯糸よりなる織物のベース地に、パイル糸による輪奈がベース地の両面もしくは片面に現れるよう絡合してなるタオル織物であって、前記輪奈を、ベース地の経糸と緯糸とで区画された各区画に対し、少なくとも一区画以上を空けるように配設した構成のものとしてある。
【0008】
また前記輪奈を、ベース地の経糸と緯糸とで区画された各区画に対し、一区画以上空け、かつ隣り合うパイル糸にて形成される輪奈が現れる区画と互い違いになるように構成して、輪奈が現れる区画と現れない区画が市松模様状に配設されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタオル織物によれば、パイル糸による輪奈を、ベース地の経糸、緯糸で区画された各区画に対し、少なくとも一区画以上空けて輪奈が現れる区画と現れない区画がいわゆる市松模様状を呈するように配設しているので、高級タオルトとしてベース地(生地)が型崩れし難くなるように経糸、緯糸の密度を込めて緻密に織り込んでも、隣り合うパイル糸による輪奈の間には多少空間が空き、水の拭き取りの際、水がこの空間を通って素早くベース地に吸収されるので、バスタオルやフェイスタオル等の水を拭き取るためのタオル生地としても快適に使用できる。
【0010】
またパイル糸による輪奈も、規則正しく市松模様状に各区画に配設しているので、安価なタオル織物のように、パイル糸による輪奈が適当に間引きして形成されてあったり、荒い密度で織製されたりしたものと異なり、パイル糸による輪奈がベース地上に整然と配されるので見栄えもよく、しかも手や肌に触れた場合もソフトな感触が得られて、一種独特の風合いのタオル織物からなる製品を製造できる。また、パイル糸による輪奈が半数になるので、見栄えがよい上にパイル糸の使用量が比較的少なくて済み、軽く、かつ安価に製造できる。
【0011】
さらに洗濯の際も、隣り合うパイル糸による輪奈と輪奈との間に空間が空くので、タオルが洗濯層の水中に浸されても洗濯層の水の通りがよく、洗濯層の水を大に保水することがないことから洗剤や洗濯水を少なくでき、また洗い上がったタオルを脱水する際も、隣り合うパイル糸による輪奈の間に多少空間が空いているので水捌けもよく、したがって自然乾燥や乾燥機によって乾燥させる際も乾燥時間を短縮でき、作業も容易に行うことができる。
【0012】
そして、本タオル織物を、ホテル等の宿泊施設等で使用するバスタオルやフェイスタオル等の毎日洗濯を行う業務用製品に用いた際も、高級タオルの見栄えを備えていて、それでいて吸水力に優れまた乾燥し易く、なにより洗濯の際に必要とする洗濯水を節約でき、さらに乾燥時間も短縮できるので、光熱水費を節減できて省資源化に貢献できるタオル織物であり、さらにはパイル糸による輪奈の数が半数であるので自重も軽く、各室への配送・回収作業も楽に行える。したがって内外に数多くあるホテル業界での利用に好適である。
【0013】
さらに、輪奈を形成するための工程は従来のタオル織物を製造する工程と大幅な変更を要さず、したがって基本的には従来のタオル織物製造ラインを使用しつつ新たなタオル織物の生産を行うことができ、産業上の利用可能性が極めて高いというメリットもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のタオル織物を添付図面に基づいて説明する。
図1は、ベース地1の両面にパイル糸2による輪奈2aを配設したタオル織物の一例を示しており、ベース地1の周辺端部には縁布3を巻いて縫い糸4で縫合してあって、周辺端部の解れ防止処置をしてある。
【0015】
前記ベース地1は、図2に示されるように、経糸1aと緯糸1bとで織ってあって、これら経糸1aと緯糸1bとで区画された各区画1cに対して例えば緯糸1bと平行をなすようにパイル糸2を絡合して輪奈2aを形成する。
【0016】
しかして本発明のタオル織物においては、経糸1aと緯糸1bとで区画された各区画1cに対し、少なくとも一区画以上を空け(図3の実施例では1区画をあけてある)、パイル糸2をベース地1の両面にループ状の毛羽立ち、すなわち輪奈2aが形成されるように絡合させてある。
【0017】
そして、本実施例のものでは隣り合うパイル糸2の輪奈は、パイル糸2の長手方向に対して1区画ずつずれるように形成してあり、したがってパイル糸2による輪奈2aの配置、すなわち輪奈が現れる区画と現れない区画は、図4に示すように、各区画1cに対して一区画を空けたいわゆる市松模様状を呈する。なお、同図4において黒丸印は輪奈が現れている部分、白丸印は輪奈が表れていない部分を模式的に示している。
【0018】
上述した実施例のものでは、ベース地1の上下(表裏)両面に輪奈2aを形成してあるが、図5に示されるように片面にのみ輪奈を形成する場合もある。
【0019】
また実施例には図示していないが、経糸1aと緯糸1bとの詰めを大にしてベース地1の腰を大にしっかりとしたものにする場合は、各区画1cに対して空ける区画数を、例えば2区画、3区画など多くする場合もある。
【0020】
さらに、図1に示したタオルでの前記解れ防止処置では、実施例には示していないが、ベース地1の周辺端部を一側に2回折り返して重ね、この折り返した部分を縫い糸4でベース地1に縫合(三つ巻き縫い)する場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係るタオル織物の一例を示す図。
【図2】本発明におけるタオル織物のベース地を示す平面図。
【図3】本発明に係るタオル織物を、パイル糸の長手方向に沿って切断して示す縦断面図。
【図4】輪奈の配置を示す模式図。
【図5】本発明に係るタオル織物の他の例を示す縦断面図。
【図6】従来のタオル織物の一例を示す図。
【符号の説明】
【0022】
1 ベース地
1a 経糸
1b 緯糸
1c 区画
2 パイル糸
2a 輪奈
3 縁布
4 縫い糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸と緯糸よりなる織物のベース地に、パイル糸による輪奈がベース地の両面もしくは片面に現れるよう絡合してなるタオル織物であって、前記輪奈を、ベース地の経糸と緯糸とで区画された各区画に対し、少なくとも一区画以上を空けるように配設してなるタオル織物。
【請求項2】
前記輪奈を、ベース地の経糸と緯糸とで区画された各区画に対し、一区画以上空け、かつ隣り合うパイル糸にて形成される輪奈が現れる区画と互い違いになるように構成して、輪奈が現れる区画と現れない区画が市松模様状に配設されることを特徴とする請求項1に記載のタオル織物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−266844(P2008−266844A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113640(P2007−113640)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(593158168)株式会社 第一織物 (6)
【Fターム(参考)】