タガント粒子群、ならびにそれを有する偽造防止用インク、偽造防止用トナー、偽造防止用シートおよび偽造防止媒体
【課題】本発明は、認証段階を複数有し偽造防止効果に優れ、種々の偽造防止媒体に応用可能なタガント粒子群を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、個々の粒子が複数の識別情報を有しているタガント粒子の集合体であるタガント粒子群であって、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの一つの識別情報が、上記タガント粒子群を構成するタガント粒子が共通して有する共通識別情報であり、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの他の識別情報が、上記タガント粒子群を構成する他のタガント粒子が有する識別情報との組み合わせにより真贋判定が可能な非共通識別情報であることを特徴とするタガント粒子群を提供することにより、上記課題を解決する。
【解決手段】本発明は、個々の粒子が複数の識別情報を有しているタガント粒子の集合体であるタガント粒子群であって、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの一つの識別情報が、上記タガント粒子群を構成するタガント粒子が共通して有する共通識別情報であり、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの他の識別情報が、上記タガント粒子群を構成する他のタガント粒子が有する識別情報との組み合わせにより真贋判定が可能な非共通識別情報であることを特徴とするタガント粒子群を提供することにより、上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証段階を複数有し偽造防止効果に優れ、種々の偽造防止媒体に応用可能なタガント粒子群に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物品の偽造を防止するための偽造防止技術には、その用途から2つの側面が求められる。まず、物品を使用する需要者が物品の安全性等の観点から正規品であることを確認する場合等に、容易に認証が行えること、また、精巧な模倣品との区別が必要となった場合等に、より高度な認証が行えることである。
【0003】
現在、多用されている偽造防止技術として、目視で真贋判定可能な透かし技術やホログラム等が挙げられる。これらの技術では、目視で確認できることから容易に認証が行えるという利点を有するが、さらなる偽造防止効果の向上への要求から新たな偽造防止技術の開発が望まれている。
【0004】
そこで、ルーペ等の簡易的な拡大器具を使用して観察することにより真贋判定を行う偽造防止技術が注目されている(特許文献1〜3)。これらの技術では、一見するだけでは偽造防止技術が施されていることが確認できないため、目視で確認できる偽造防止技術と比べて、より高い偽造防止効果を発揮することができる。また、真贋判定に特殊な装置等を必要とせず簡易的に識別可能であるという利点を有する。
【0005】
このような認証する際に拡大器具を必要とする偽造防止技術として、タガント粒子(追跡用添加物)と呼ばれる微粒子を用いた技術が提案されている。タガント粒子を用いた偽造防止媒体では、個体によってタガント粒子の位置が異なるため、タガント粒子自体の確認が難しく、複製も困難となる。そのため、優れた偽造防止効果を発揮することが可能となり、また、個体の識別も可能となる。
【0006】
タガント粒子には、拡大して観察することにより識別可能な情報を有するものが知られており、例えば、文字、記号、標章等や特殊な形状を有するものや、特殊な色彩情報を有するものが挙げられる。(特許文献4〜5)
しかしながら、従来使用されているタガント粒子は製造が比較的容易であり、また、印刷技術が進み高精彩な印刷が可能となったことから、タガント粒子の形成される位置を特定された場合、模倣される危険性が高まる。そのため、偽造防止効果のより高いタガント粒子の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−274834号公報
【特許文献2】特開2009−193069号公報
【特許文献3】特開2001−288698号公報
【特許文献4】特許3665282号公報
【特許文献5】特開2008−230228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、認証段階を複数有し偽造防止効果に優れ、種々の偽造防止媒体に応用可能なタガント粒子群を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、個々の粒子が複数の識別情報を有しているタガント粒子の集合体であるタガント粒子群であって、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうち一つの識別情報が、上記タガント粒子群を構成するタガント粒子が共通して有する共通識別情報であり、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの他の識別情報が、上記タガント粒子群を構成する他のタガント粒子が有する識別情報との組み合わせにより真贋判定が可能な非共通識別情報であることを特徴とするタガント粒子群を提供する。
【0010】
本発明によれば、上記タガント粒子群内の個々のタガント粒子が共通識別情報を有することから、本発明のタガント粒子群を偽造防止媒体等に応用した際に、タガント粒子群内に存在する任意のタガント粒子について、共通識別情報を有しているか否かを確認することにより、真正性を保証することができる。そのため、タガント粒子群内の複数の粒子の識別情報を確認する必要性がなく、容易に認証を行うことができる。
また、上記個々のタガント粒子は複数の識別情報を有しており、上記共通識別情報とは異なる非共通識別情報を有する。非共通識別情報は、異なる2種類以上の識別情報を組み合わせることにより識別することが可能となるため、任意のタガント粒子が発現する識別情報と、別のタガント粒子が発現する識別情報との組み合わせを確認することで、より高度な認証を行うことが可能となる。さらに、タガント粒子の製造が複雑になることから、模倣容易性をより低下させることができる。
【0011】
本発明は、上述したタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用インクを提供する。
【0012】
本発明によれば、上述したタガント粒子群を有することにより、より高度な真贋判定が可能な偽造防止媒体作製に利用できる偽造防止用インクを作製することが可能となる。
【0013】
本発明は、上述したタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用トナーを提供する。
【0014】
本発明によれば、上述したタガント粒子群を有することにより、より高度な真贋判定が可能な偽造防止媒体作製に利用できる偽造防止用トナーを作製することが可能となる。
【0015】
また、本発明は、上述したタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用シートを提供する。
【0016】
本発明によれば、上述したタガント粒子群を有することにより、より高度な真贋判定が可能な偽造防止媒体作製に利用できる偽造防止用シートを作製することが可能となる。
【0017】
本発明は、上述したタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止媒体を提供する。
【0018】
本発明によれば、上述したタガント粒子群を有することから、物品の需要者が簡易的に識別可能であり、また、精巧な模倣品との識別が必要な際に、より高度な識別が可能であるため、高度な真贋判定が可能な偽造防止媒体を作製することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、拡大することによって観察できることから偽造防止効果が高く、また複数の識別情報を有することから、簡易的な識別と高度な識別とによる複数の認証段階を有するため、高度な真贋判定が可能であり、また、種々の偽造防止用材料および偽造防止媒体に容易に応用可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】タガント粒子の識別情報の組み合わせの一例を示す模式図である。
【図2】本発明におけるタガント粒子の一例を示す模式図である。
【図3】本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図である。
【図4】本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図である。
【図5】本発明におけるタガント粒子の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図である。
【図7】本発明の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図12】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図13】本発明の偽造防止用シートの検査方法の一例を示す模式図である。
【図14】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す模式図である。
【図15】本発明の偽造防止媒体の一例を示す模式図である。
【図16】本発明の偽造防止媒体の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のタガント粒子群、偽造防止用インク、偽造防止用シートおよび偽造防止媒体について説明する。
【0022】
A.タガント粒子群
本発明のタガント粒子群について説明する。本発明のタガント粒子群は、個々の粒子が複数の識別情報を有しているタガント粒子の集合体であるタガント粒子群であって、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの一つの識別情報が、上記タガント粒子群を構成するタガント粒子が共通して有する共通識別情報であり、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの他の識別情報が、上記タガント粒子群を構成する他のタガント粒子が有する識別情報との組み合わせにより真贋判定が可能な非共通識別情報であることを特徴とするものである。
【0023】
本発明によれば、タガント粒子群内の個々のタガント粒子が共通識別情報を有するので、タガント粒子群を偽造防止媒体等に応用した際に、タガント粒子群内に存在する任意のタガント粒子について共通識別情報を有しているか否かを確認することにより、真正性を保証することができる。そのため、タガント粒子群内の複数の粒子の識別情報を確認する必要性がなく、容易に認証を行うことができる。
また、上記個々のタガント粒子は複数の識別情報を有しており、上記共通識別情報とは異なる非共通識別情報を有する。非共通識別情報は、異なる2種類以上の識別情報を組み合わせることにより識別することが可能となるため、任意のタガント粒子が発現する識別情報と、別のタガント粒子が発現する識別情報との組み合わせを確認することで、より高度な認証を行うことが可能となる。
さらに、タガント粒子の製造が複雑になることから、模倣容易性をより低下させることができる。
以下、本発明のタガント粒子群について説明する。
【0024】
1.共通識別情報
まず、本発明における共通識別情報について説明する。本発明に用いられる共通識別情報は、個々のタガント粒子が有する複数の識別情報のうちの一つの識別情報であり、タガント粒子群を構成するタガント粒子が共通して有するものである。
上記タガント粒子群内の個々のタガント粒子が共通識別情報を有することから、本発明のタガント粒子群を偽造防止媒体等に応用した際に、タガント粒子群内に存在する任意のタガント粒子について、共通識別情報を有しているか否かを確認することにより、真正性を保証することができる。そのため、タガント粒子群内の複数の粒子の識別情報を確認する必要性がなく、容易に認証を行うことができる。
なお、共通識別情報として用いることが可能な識別情報としては、形状、色彩、大きさ、印等が挙げられる。各識別情報については、後述する「3.識別情報」の項に記載するのでここでの説明は省略する。
【0025】
ここで、共通識別情報について図面を参照して説明する。図1は、タガント粒子の識別情報の組み合わせの一例を示す模式図である。図1(a)に例示するように、形状(円形)と色彩(白色)とが共通識別情報であり、印(A、B、Cの文字)が異なる。そのため、タガント粒子群内の任意のタガント粒子が、所定の共通識別情報である、形状(円形)と色彩(白色)であることを確認することで、容易に認証が可能となる。
また、図1(b)に例示するように、色彩(白色)と印(文字A)とが共通識別情報であり、形状(円形、四角形、六角形)が異なる。図1(c)では、形状(円形)および印(文字A)が共通識別情報であり、色彩が異なる。
さらに、図1(d)に例示するように、形状(文字A)が共通識別情報であり、色彩が異なる。図1(e)では、形状(円形)、色彩(白色)、印(文字A)は共通識別情報であり、大きさが異なる。図1(f)では、色彩(白色)が共通識別情報であり、形状(円形、四角形、六角形)、印(A、B、Cの文字)が異なる。
【0026】
共通識別情報としては、後述する識別情報であれば特に限定されるものではないが、中でも、形状と印が好ましく、特に形状がより好ましい。ルーペ等の簡易拡大器具により容易に識別することが可能となるからである。
また、共通識別情報としては、1種類の識別情報を用いても良く、2種類以上の識別情報を用いても良い。
【0027】
2.非共通識別情報
本発明に用いられる非共通識別情報は、個々の粒子が有する複数の識別情報のうち、上述した共通識別情報とは異なる識別情報であり、上記タガント粒子群を構成する他のタガント粒子が有する識別情報との組み合わせにより真贋判定が可能なものである。
上記個々のタガント粒子は、複数の識別情報を有しており、上記共通識別情報とは異なる非共通識別情報を有する。ここで、識別情報としては、共通識別情報と同様に、後述する識別情報を用いることができる。
非共通識別情報は、異なる2種類の識別情報を組み合わせることにより識別することが可能となるため、任意のタガント粒子が発現する識別情報と、別のタガント粒子が発現する識別情報との組み合わせを確認することで、より高度な認証を行うことが可能となる。
また、タガント粒子の製造が複雑になるため、模倣容易性を低下させることが可能となる。
【0028】
図1(a)に例示するように、共通識別情報として形状(円形)と色彩(白色)とを用いており、非共通識別情報として、印(A、B、Cの文字)を有する。印である「A」、「B」、「C」という非共通識別情報を有するタガント粒子を、すべてタガント粒子群内に確認することで、より高度な真贋判定を行うことが可能となる。
また、図1(b)に例示するように、共通識別情報として色彩(白色)と印(文字A)を用いており、非共通識別情報として形状(円形、四角形、六角形)を有する。形状が円形、四角形、六角形であるという非共通識別情報を有するタガント粒子を、すべてタガント粒子群内に確認することで、より高度な真贋判定を行うことができる。
また、例えば、図1(c)に示すように、共通識別情報として形状(円形)と印(文字A)を有しており、非共通識別情報として色彩を有する。色彩の異なるタガント粒子をすべてタガント粒子群内に確認することによって、高度な真贋判定を行うことが可能となる。
【0029】
さらに、上述した識別情報の組み合わせ以外に、図1(d)〜(f)に例示するように、様々な識別情報の組み合わせが考えられる。
図1(d)では、形状(文字A)を共通識別情報として有し、色彩を非共通識別情報として有する。図1(e)は、形状(円形)、印(文字A)および色彩(白色)を共通識別情報として有し、大きさを非共通識別情報として有する。
さらに、図1(f)では、色彩(白色)を共通識別情報として有し、形状(円形、四角形、六角形)および印(A、B、Cの文字)を非共通識別情報として有する。
【0030】
非共通識別情報としては、後述する識別情報であれば特に限定されるものではないが、形状、印、色彩が好ましく、中でも形状、印がより好ましい。他の識別情報と容易に組み合わせることができるからである。
また、非共通識別情報としては、1種類の識別情報の組み合わせであっても良く、2種類以上の識別情報の組み合わせであっても良い。
さらに、非共通識別情報として用いられる識別情報としては、偽造防止効果をより向上させる目的から、簡易器具により識別可能な識別情報以外に、測定装置等を用いて識別可能な識別情報を用いても良い。
【0031】
本発明のタガント粒子群内における非共通識別情報としては、少なくとも2種類以上の識別情報を発現すれば特に限定するものではなく、異なる識別情報を発現するタガント粒子の存在率としては、2種類以上の識別情報を発現するタガント粒子が同程度ずつ存在していても良く、存在率が異なっていても良い。中でも、存在率が異なることが好ましい。非共通識別情報の識別が困難となり、偽造防止効果が向上し、より高度な認証が可能となるからである。
例えば、非共通識別情報を識別する際に、タガント粒子群内に2種類の識別情報を発現するタガント粒子が存在する場合、その識別情報の異なるタガント粒子の存在率は、100:1〜1:1の範囲内であることが好ましく、中でも、20:1〜1:1の範囲内であることがより好ましい。
上記範囲内であることにより、タガント粒子群内における非共通識別情報の識別が好適に可能となるからである。
【0032】
3.識別情報
次に、本発明における識別情報について説明する。本発明に用いられる識別情報は、拡大することにより識別可能な情報であり、中でも簡易器具により識別可能であることが好ましい。本発明のタガント粒子群に含有される個々のタガント粒子は、複数の識別情報を有しており、上述した共通識別情報および非共通識別情報として用いられるものである。
このような識別情報として、例えば、形状、大きさ、印、色彩等が挙げられる。
以下、各識別情報についてそれぞれ説明する。
【0033】
(1)形状
本発明における形状としては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではなく平面形状であっても良く、立体形状でも良い。平面形状としては、例えば、シート状、フィルム状等の形状が挙げられる。また、立体形状としては、平面のみから構成されるものであっても良く、曲面のみから構成されるものであっても良く、平面と曲面とから構成されるものであっても良い。
【0034】
平面を有する立体形状としては、平面を有していれば特に限定されるものではなく、平面のみから構成されるものであっても良く、平面と曲面とから構成されるものであっても良い。例えば、柱体や錐体等が挙げられる。立体形状がこれらの柱体や錐体等である場合、立体形状の平面視上の形状としては、例えば、三角形形状、四角形形状等の多角形形状、円、楕円等の幾何学形状の他、文字、記号、標章等を挙げることができる。
【0035】
曲面を有する形状としては、曲面を有していれば特に限定されるものではなく、曲面のみから構成されるものであっても良く、曲面と平面とから構成されるものであっても良い。
ここで、曲面は反射特性を測定することにより確認することができる。平面は、法線方向が一つであるのに対して、曲面は法線方向が位置によって異なる。そのため、平面と曲面とでは反射光の明暗が異なる。また、平面と曲面とでは光の入射角度を変化させたときの反射光の明暗の変化も異なる。
【0036】
曲面であることは破壊式または非破壊式の検査手法にて確認することができる。
破壊式の検査方法は、例えばカッターやカミソリ、ミクロトーム等によりタガント粒子を切断し、ルーペや顕微鏡等により拡大して観察することにより確認する手法が挙げられる。
非破壊式の検査方法は、接触式または非接触式の形状測定を行うことにより確認する手法が挙げられる。接触式の形状測定は、例えば針をタガント粒子に接触させ、移動させることにより形状を計測する触針式の形状測定器を用いる手法が挙げられる。非接触式の形状測定は、例えば可干渉性の少ない白色光を光源として、ミラウ型やマイケルソン型等の等光干渉計を利用し、測定面に対応するCCD各画素の等光路位置(干渉強度が最大になる位置)を、干渉計対物レンズを垂直走査(スキャン)して見つける手法にて形状を計測する、走査型白色干渉計を用いる手法が挙げられる。
【0037】
また、本発明におけるタガント粒子は、通常、表面と、表面に対向する裏面とを有しており、また側面を有していても良い。本発明における曲面を有する立体形状が、少なくともタガント粒子表面に曲面を有している場合、タガント粒子表面の50%以上が曲面で構成されていることが好ましく、75%以上が曲面で構成されていることがより好ましい。
タガント粒子表面での曲面の割合が高いほど、光の反射により立体形状を確認しやすいため、容易に識別可能となるからである。
なお、上記曲面の割合については、曲面であることは破壊式または非破壊式の検査手法にて確認することができる。
【0038】
このような立体形状としては、例えば、人物、動物、植物、食物、道具、乗物、建物、風景や、文字、数字、ロゴ、商標、言語記号等の任意の立体形状とすることができ、タガント粒子の用途によって適宜選択されるものである。
【0039】
本発明に用いられるタガント粒子においては、上述した柱体、錐体および立体形状を組み合わせた形状を用いることもできる。
【0040】
(2)大きさ
本発明に用いられる識別情報の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。
識別情報が大き過ぎる場合、目視で識別可能であることから模倣容易性が高まる危険性を有するからである。また、識別情報の大きさは、ルーペ等の簡易拡大器具を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。しかし、識別情報の大きさが50μm未満である場合、顕微鏡等の高精度な拡大器具を使用して識別可能となることから、認証容易性に比較して秘匿性や模倣困難性を重視する場合等、識別情報の大きさの下限は、タガント粒子群またはタガント粒子群を用いる偽造防止媒体等の用途に応じて適宜選択されるものである。
【0041】
(3)印
本発明における印としては、例えば、文字、数字、ロゴ、標章、言語記号等が挙げられる。タガント粒子の用途等によって適宜選択され、所定の意味を表現する印とすることができる。
【0042】
印の大きさとしては、拡大して観察できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることが好ましい。
印が大きすぎる場合、目視で識別可能であることから模倣容易性が高まる危険性を有するからである。また、印の大きさは、ルーペ等の簡易拡大器具を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。しかし、印の大きさが50μm未満である場合、顕微鏡等の高精度な拡大器具を使用して識別可能となることから、認証容易性に比較して秘匿性や模倣困難性を重視する場合等、印の大きさの下限は、タガント粒子群またはタガント粒子群を用いる偽造防止媒体等の用途に応じて適宜選択されるものである。
【0043】
このような印の形成方法としては、タガント粒子表面の一部に所望の印を形成することができる方法であれば特に限定されない。例えば、タガント粒子作製時に印を形成する方法やタガント粒子作製後に印を形成する方法が挙げられる。タガント粒子作製時に印を形成する方法としては、レーザーによる直描法や階調マスクを用いたフォトリソグラフィー法等によりタガント粒子の形状を形成する際に印を形成する方法等が挙げられ、またタガント粒子作製後に印を形成する方法としては、タガント粒子の一部に印刷法や賦型法により印を形成する方法等を挙げることができる。
【0044】
(4)色彩
本発明の識別情報に用いられる色彩としては、無色であっても良く有色であっても良く、また紫外線等の刺激を受けることで色彩を変化するものでも良く、後述するタガント粒子の材料に応じて適宜選択される。
【0045】
4.タガント粒子
次に、本発明におけるタガント粒子について説明する。本発明に用いられるタガント粒子としては、複数の識別情報を有するものである。
【0046】
本発明のタガント粒子について図面を参照しながら説明する。
図2(a)、(b)は本発明におけるタガント粒子の一例を示す模式図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のA−A線における断面図である。図2(a)、(b)に示すタガント粒子1は、例えば、金属多層膜3の表面に凹部がパターン状に形成されたものであり、識別情報2a(十字型)および識別情報2b(文字A)という複数の識別情報を有している。
例えば、識別情報2a(十字型)を共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内の任意のタガント粒子が、上記識別情報2a(十字型)を有することを確認することにより簡易的に認証を行うことができる。また、識別情報2b(文字A)を非共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内に、タガント粒子1と、所定の識別情報2b(例えば、文字B等)を非共通識別情報として有する別のタガント粒子との組み合わせを確認することにより、高度な認証を行うことが可能となる。
【0047】
また、図3(a)、(b)は本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図であり、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のB−B線における断面図である。図3(a)、(b)に例示するタガント粒子1は、識別情報2(ティーポットの立体形状)および、図示はしないが、識別情報である色彩(白色)という複数の識別情報を有している。
例えば、識別情報2(ティーポットの立体形状)を共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内の任意のタガント粒子が、上記識別情報2(ティーポットの立体形状)を有することを確認することにより簡易的に認証を行うことができる。また、識別情報である色彩(白色)を非共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内に、タガント粒子1と、所定の識別情報である色彩(例えば、青色等)を非共通識別情報として有する別のタガント粒子との組み合わせを確認することにより、高度な認証を行うことが可能となる。
【0048】
図4(a)、(b)は本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図であり、図4(a)は上面図、図4(b)は図4(a)のC−C線における断面図である。図4(a)、(b)に例示するタガント粒子1は、その表面4に立体形状を有しており、識別情報2a(ティーポットの立体形状)および2b(TEAの文字)を有している。
例えば、識別情報2a(ティーポットの立体形状)を共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内の任意のタガント粒子が、上記識別情報2a(ティーポットの立体形状)を有することを確認することにより簡易的に認証を行うことができる。また、識別情報2b(TEAの文字)を非共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内に、タガント粒子1と、所定の識別情報2b(例えば、PODの文字等)を非共通識別情報として有する別のタガント粒子との組み合わせを確認することにより、高度な認証を行うことが可能となる。
【0049】
また、この例において、タガント粒子1の裏面5に略垂直な断面における厚みHTをタガント粒子の厚みとする。タガント粒子の粒径については、タガント粒子表面側からの平面視におけるタガント粒子の粒径を示し、タガント粒子が図4(a)に例示するように、粒径に長径と短径とを有する場合、長径をL1とし、短径をL2とし、長径L1をタガント粒子の粒径とする。
【0050】
また、図6(a)〜(c)は、本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図であり、図6(a)、(b)は斜視図であり、図6(c)は側面図である。図6(a)〜(c)に示すタガント粒子1A〜1Cはそれぞれ、表面4および裏面5を有し、表面4に識別情報2(D、N、Pの文字の立体形状)を有している。
【0051】
(1)識別情報
タガント粒子の有する識別情報としては、上記「3.識別情報」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0052】
(2)材料
タガント粒子の材料としては、所望のタガント粒子を作製することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属や樹脂材料等が挙げられる。
また、上記樹脂材料としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂材料、熱可塑性樹脂材料、感光性樹脂材料が挙げられる。また、金属としては、蒸着法やメッキ法等により成膜できるものであれば特に限定されるものではない。
【0053】
中でも、タガント粒子の材料としては、樹脂材料であることが好ましい。樹脂材料は、後述するような紫外線発光材料、赤外線発光材料、着色材料等の機能性材料を添加し、タガント粒子に形態以外の識別情報を付与することが可能となるからである。そのため、真贋判定が容易になるとともに、その他の識別情報と組み合わせることにより高度な認証を行うことができることから、優れた偽造防止効果を発揮することが可能となる。
【0054】
樹脂材料としては、耐溶剤性を有することが好ましく、中でも、タガント粒子を用いてタガント粒子が透明樹脂中に分散するタガント粒子含有層の形成時に使用される溶媒に対して不溶性を示すことが好ましい。
【0055】
樹脂材料としては、中でも、感光性樹脂材料が好適に用いられる。後述する製造方法として例示するフォトリソグラフィー法を用いることができ、生産性良く製造することができるからである。
感光性樹脂材料としては、ポジ型感光性樹脂材料およびネガ型感光性樹脂材料のいずれも用いることができる。
【0056】
また、本発明におけるタガント粒子は、図5に例示するように、樹脂層6と、樹脂層6上に形成され、タガント粒子1の表面4に形成された金属層7とを有することも好ましい。識別情報を有するタガント粒子の表面に金属層が形成されていることで、光の反射により識別情報を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、本発明のタガント粒子を用いてタガント粒子が透明樹脂中に分散されたタガント粒子含有層を形成する場合には、タガント粒子が樹脂からなる場合、タガント粒子と透明樹脂との屈折率の差が小さいために、タガント粒子と透明樹脂との界面が見えにくくなり、タガント粒子の識別情報を視認するのが困難になることが懸念されるが、タガント粒子の表面に金属層が形成されていることで、識別情報の視認性を高めることが可能となる。
【0057】
タガント粒子の材料として樹脂材料が用いられる場合、機能性材料を含有することが好ましい。タガント粒子に簡便に形態以外の識別情報を付与できるからである。機能性材料としては、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料、磁性材料、顔料や着色材料等が挙げられる。
中でも、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料等が好適に用いられる。簡易器具を用いて識別が可能であり、また発光、光の反射および吸収によって識別が可能であることから、真贋判定が容易となるからである。
以下、各機能性材料について説明する。
【0058】
(i)紫外線発光材料
紫外線発光材料としては、紫外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。紫外線発光材料は、短波長域(約200nm〜300nm)の吸収により発光するもの、および、長波長域(約300nm〜400nm)の吸収により発光するもののいずれも使用することができる。この紫外線発光材料は、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としては、Ca2B5O9Cl:Eu2+、CaWO4、ZnO:Zn、Zn2SiO4:Mn、Y2O2S:Eu、ZnS:Ag、YVO4:Eu、Y2O3:Eu、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、Y3Al5O12:Ce、Sr5(PO4)3Cl:Eu、3(Ba,Mg)O・8Al2O3:Eu、Zn2GeO4:Mn、Y(P,V)O4:Eu、0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn、ZnS:Cu、ZnS:Mn等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種類以上で用いてもよい。なお、上記紫外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0059】
タガント粒子中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0060】
(ii)赤外線発光材料
本発明に用いられる赤外線発光材料としては、赤外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。赤外線発光材料は、赤外線(約800nm〜1200nm)で励起され、可視光(約400nm〜800nm)を発光するものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としてはYF3:Yb+Er、YF3:Yb+Tm、BaFCl:Yb+Er等が挙げられる。なお、上記赤外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0061】
タガント粒子中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0062】
(iii)赤外線反射材料
赤外線反射材料としては、赤外線に対して波長選択反射性を有する材料を用いることができ、例えば、多層構造材料、赤外線反射顔料、コレステリック構造を有する液晶材料等を挙げることができる。赤外線反射材料が反射する赤外線の波長は特に限定されないが、通常、800nm〜2500nmである。
【0063】
多層構造材料としては、赤外線を反射するような間隔で形成された赤外線反射面を有する層(赤外線反射層)で構成された多層構造材料を挙げることができる。多層構造材料は、各層(赤外線反射層)のBragg反射によって特定波長の赤外線を反射するものである。
具体的には、コレステリック液晶の架橋体のような固定化されたコレステリック構造を有する多層液晶材料を用いて、赤外線反射層を形成することができる。
【0064】
赤外線反射顔料は、赤外線反射材料の粉末や粒子が用いられ、無機系顔料および有機系顔料のいずれも用いることができる。無機系顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等の複合金属酸化物、アルミニウム、金、銅等の金属が挙げられる。また、無機系顔料として、特開2004−4840号公報に記載の、天然または合成雲母、別の葉状珪酸塩、ガラス薄片、薄片状二酸化珪素または酸化アルミニウム等の透明支持材料と、金属酸化物の被覆とからなる干渉顔料等も用いることができる。一方、有機系顔料としては、例えば、特開2005−330466号公報および特開2002−249676号公報に記載されている顔料が挙げられ、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素を用いることができる。
【0065】
コレステリック構造を有する液晶材料(いわゆるコレステリック液晶材料)としては、ネマチック液晶にカイラル剤を混合したカイラルネマチック液晶材料、または、高分子コレステリック液晶材料を挙げることができる。
【0066】
タガント粒子中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0067】
(iv)赤外線吸収材料
赤外線吸収材料としては、赤外線(800nm〜1100nm)を吸収できる材料であれば特に限定されるものではない。中でも、800nm〜1100nmの波長域を吸収し、かつ可視光域、すなわち380nm〜780nmの波長域では吸収が少なく十分な光線透過率を有する赤外線吸収材料が好ましい。
【0068】
赤外線吸収材料としては、例えば、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、インモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類、特開2007−163644号公報に開示されているベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収材料、および特開2006−154516号公報に開示されている複合タングステン酸化物、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、酸化インジウム錫(ITO)等の無機系赤外線吸収材料などが挙げられる。赤外線吸収材料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、「系化合物」とは、例えばアントラキノン系化合物の場合、アントラキノン誘導体をいう。
【0069】
また、赤外線吸収材料は、使用する樹脂の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、光硬化性樹脂材料や感光性樹脂材料を用いた場合、赤外線吸収材料としては、複合タングステン酸化物等の無機系近赤外線吸収材料を好適に用いることができる。
【0070】
タガント粒子中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0071】
(v)量子ドット材料
量子ドット(Quantum dot)材料は、半導体のナノメートルサイズのタガント粒子で、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子(Semiconductor Nanoparticle)とか、半導体ナノ結晶(Semiconductor Nanocrystal)とも呼ばれるものである。
本発明に用いられる量子ドット材料としては、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる材料であれば特に限定されない。例えば、自らの粒径によって発光色が規制される半導体微粒子と、ドーパントを有する半導体微粒子がある。
【0072】
量子ドット材料は、単独の半導体化合物からなるものであっても、2種類以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、このコアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。その代表例としては、CdSeからなるコアと、その周囲に設けられたZnSシェルと、さらにその周囲に設けられた保護材料(キャッピング材料と呼ばれることもある)とで構成されたものを例示できる。この量子ドット材料は、その粒径により発光色を異にするものであり、例えば、CdSeからなるコアのみから構成される量子ドットの場合、粒径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmのときの蛍光スペクトルのピーク波長は、528nm、570nm、592nm、637nmである。
【0073】
量子ドット材料のコアとなる材料として、具体的には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶を例示できる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。
【0074】
さらに、ドーパントを有する半導体微粒子からなる量子ドット材料としては、上記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag+、Cu+のような希土類金属のカチオンまたは遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることもできる。
【0075】
中でも、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
【0076】
コアシェル型の量子ドット材料を用いる場合にシェルを構成する半導体としては、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い材料を用いることで、量子ドット材料の発光効率を高めることが出来る。
このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0077】
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜制御すればよい。量子ドットは粒径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットのサイズを変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。
【0078】
一般的には、量子ドットの粒径(直径)は0.5nm〜20nmの範囲内であることが好ましく、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。なお、量子ドットのサイズ分布が狭いほど、より鮮明な発光色を得ることができる。
【0079】
また、量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、粒子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
【0080】
量子ドットの粒径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡(TEM)により得ることができる。また、量子ドットの結晶構造、粒径については、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒径、表面に関する情報を得ることもできる。
【0081】
タガント粒子中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0082】
(vi)磁性材料
磁性材料としては、核磁気共鳴(NMR)、核四極子共鳴(NQR)、電子スピン共鳴(ESR)、強磁性共鳴、反強磁性共鳴、フェリ磁性共鳴、磁壁共鳴、スピン波共鳴、スピンエコー共鳴等の磁気共鳴を示すものを用いることができる。
【0083】
共鳴周波数は、核固有のパラメーターである磁気回転比γおよび外部磁場の磁場強度により決まるものであることから、磁性材料が磁気共鳴を示す共鳴周波数を選択することにより、本発明のタガント粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。
例えば、磁性材料を含有するタガント粒子と、磁性材料を含有しないタガント粒子とに、磁性材料が核磁気共鳴を示す周波数の電磁波を照射すると、磁性材料を含有するタガント粒子では共鳴吸収が起こり、磁性材料を含有しないタガント粒子では共鳴吸収が起こらないため、この共鳴吸収を観測することによりタガント粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。また、得られるNMRスペクトルでは、物質の構造やエネルギー状態等によりシグナルの位置、強度、半値幅、形状等が異なるため、使用する磁性材料の種類により識別することも可能である。
【0084】
磁性材料は、磁性材料の粉末や粒子が用いられる。磁性材料としては、特開2005−309418号公報に記載の磁気共鳴を示す微粒子を例示することができる。
【0085】
タガント粒子中の磁性材料の含有量は、磁気共鳴による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、5質量%〜20質量%の範囲内がより好ましい。磁性材料の含有量が上記範囲内より少ない場合、識別が困難となる可能性があり、上記範囲内より多い場合、タガント粒子表面へ立体形状を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0086】
(vii)着色材料
本発明に用いられる着色材料としては、顔料、染料を挙げることができる。
着色材料は、タガント粒子に含有させることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な顔料、染料を用いることができる。
【0087】
タガント粒子中の着色材料の含有量としては、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0088】
(3)製造方法
タガント粒子の製造方法としては、所望のタガント粒子を作製できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なタガント粒子の製造方法を用いることができる。一般的な製造方法としては、例えば、基材上に溶媒溶解性の犠牲層を塗布した後、タガント材料として感光性樹脂材料を塗布し、フォトリソグラフィー法により露光現像処理を行い上記犠牲層上に所望のタガント粒子のパターン形状のみが存在するようにする。その後、上記犠牲層を溶解させることによってタガント粒子を分離、回収する方法等が挙げられる。
【0089】
(4)タガント粒子
本発明のタガント粒子の粒径は、拡大することで観察可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大器具を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には300μm以下であることが好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがより好ましい。
タガント粒子の粒径が大きい場合、目視で観察可能となり、偽造防止媒体に用いた際にタガント粒子の位置が容易に特定されてしまうため、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、タガント粒子の粒径が小さい場合、所望の識別情報を有することが困難となる可能性、簡易拡大器具での観察が難しく、より高精度な拡大器具を用いることが必要となり、真贋判定が複雑化する可能性が生じるからである。
【0090】
なお、粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、本発明においては、タガント粒子表面側からの平面視におけるタガント粒子の粒径である。例えば図4(a)に示すように、タガント粒子の粒径が長径と短径とを有する場合、長径をL1とし、短径をL2とし、長径L1をタガント粒子の粒径Lとする。
【0091】
また、本発明におけるタガント粒子の粒径は、レーザー法により測定した値である。レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。上記粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
【0092】
本発明におけるタガント粒子表面が立体形状を有する場合、タガント粒子の厚みとしては、タガント粒子の表面に所望の識別情報を有することが可能な厚みであれば特に限定されるものではないが、中でも、0.1μm〜500μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
タガント粒子の厚みが上記範囲であれば、光の反射により形態に関する識別情報を視認しやすく、容易に識別可能となる。一方、タガント粒子の厚みが厚い場合、タガント粒子の製造が困難となる場合があり、タガント粒子の厚みが薄い場合、タガント粒子の表面に所望の識別情報を有することが困難となる場合がある。
なお、上記のタガント粒子の厚みは、タガント粒子の裏面に略垂直な断面におけるタガント粒子の厚みをいう。例えば図4(b)に示すようなタガント粒子の厚みHTをいう。
ここで、上記「略垂直な断面」とは、略垂直な断面とタガント粒子の裏面とのなす角度が90°±10°の範囲内にあるものを示す。
【0093】
また本発明においては、タガント粒子の粒径(L)およびタガント粒子の厚み(HT)が、HT/L≧1/100を満たすことが好ましく、中でも、HT/L≧1/30、特にHT/L≧1/20、さらにHT/L≧1/10を満たすことがより好ましい。
タガント粒子の粒径に対するタガント粒子の厚みの比が上記範囲であれば、光の反射により形態に関する識別情報を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。一方、上記範囲内より比が大きい場合、タガント粒子の製造が困難となる場合があり、上記範囲内より比が小さい場合、所望の識別情報を有することが困難となる場合がある。
タガント粒子の粒径(L)および厚み(HT)は、破壊式または非破壊式の検査手法にて測定することができる。
【0094】
5.タガント粒子群
本発明のタガント粒子群の用途としては、その優れた偽造防止効果から、例えば、紙幣、株券、クレジットカード、IDカード、パスポート、高価格品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等に用いることができる。
【0095】
B.偽造防止用インク
本発明の偽造防止用インクは、上述したタガント粒子群を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上述したタガント粒子群を有することから、本発明の偽造防止用インクを使用することにより、優れた偽造防止効果を発揮する偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用インクを用いて偽造防止媒体を形成する際に、支持体上に偽造防止用インクを塗布することにより、支持体上に容易にタガント粒子を分散、固定することが可能となる。そのため、偽造防止媒体の支持体として用いることができる材料の選択可能性を大きくすることができる。
以下、本発明の偽造防止用インクの各構成について説明する。
【0096】
1.タガント粒子群
本発明に用いられるタガント粒子群としては、上記「A.タガント粒子群」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0097】
偽造防止用インク中のタガント粒子群の含有量としては、本発明の偽造防止用インクを偽造防止媒体に用いた場合に、タガント粒子群による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、0.01質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0098】
2.透明樹脂成分
本発明の偽造防止用インクは、通常、透明樹脂成分中にタガント粒子が分散されたものである。
【0099】
本発明に用いられる透明樹脂成分の光透過性としては、本発明の偽造防止用インクを用いてタガント粒子が透明樹脂中に分散されたタガント粒子含有層を形成した際に、タガント粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂成分を所定の厚みで成膜したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0100】
透明樹脂成分としては、上述した光透過性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分、熱可塑性樹脂成分のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分等の硬化性樹脂成分が好ましく、特に光硬化性樹脂成分が好ましい。光硬化性樹脂成分を用いることにより、耐熱性の低い支持体にも本発明の偽造防止用インクを適用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、本発明の偽造防止用インクを用いてタガント粒子が透明樹脂中に分散されたタガント粒子含有層を形成する場合には、生産効率を向上させることができるからである。
【0101】
3.機能性材料
本発明の偽造防止用インクは、上述したタガント粒子群および透明樹脂成分の他に、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料を含有していてもよい。
【0102】
例えば、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、タガント粒子群内に紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有するタガント粒子が存在しない場合には、発光の有無により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
また、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、タガント粒子群内に紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有するタガント粒子が存在する場合には、発光の波長により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0103】
偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、タガント粒子群内に赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有するタガント粒子が存在しない場合には、赤外線の吸収または反射の有無により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
また、偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、タガント粒子群内に赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有するタガント粒子が存在する場合には、吸収または反射する赤外線の波長により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0104】
偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、タガント粒子群内に、量子ドット材料を含有するタガント粒子が存在しない場合には、発光の有無により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
また、偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、タガント粒子群内のタガント粒子も量子ドット材料を含有する場合には、発光の波長により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0105】
なお、機能性材料については、上記「A.タガント粒子群」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0106】
偽造防止用インク中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0107】
偽造防止用インク中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0108】
偽造防止用インク中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0109】
偽造防止用インク中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0110】
偽造防止用インク中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0111】
4.溶媒
本発明の偽造防止用インクは、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、上記のタガント粒子および透明樹脂成分が分散するものであれば特に限定されるものではなく、偽造防止用インクの塗布方法に応じて適宜選択される。また、溶媒は単独で用いてもよく2種類以上を混合して用いてもよい。
例えば、グラビア印刷用インキとして用いる場合、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。オフセット印刷用インキやシルクスクリーン印刷用インキとして用いる場合は、高沸点の石油系溶剤(C15以上の炭化水素類)が挙げられる。
【0112】
本発明の偽造防止用インクの固形分濃度は、偽造防止用インクを偽造防止媒体に適用可能であれば特に限定されるものではなく、20質量%〜85質量%程度とすることができる。
【0113】
C.偽造防止用トナー
本発明の偽造防止用トナーは、上述したタガント粒子群を含有することを特徴とするものである。
本発明においては、上述したタガント粒子群を含有するので、本発明の偽造防止用トナーを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用トナーを偽造防止媒体に適用する際には、支持体上に本発明の偽造防止用トナーを転写することにより、支持体上にタガント粒子を容易に固定することができるので、種々の支持体に使用することが可能であり、支持体の形状等の選択の幅が広いという利点を有する。
【0114】
本発明の偽造防止用トナーは、上記タガント粒子群を含有するものであればよく、乾式トナーおよび湿式トナーのいずれであってもよく、その組成としては一般的な組成とすることができる。本発明の偽造防止用トナーは、例えば、主樹脂、副樹脂、着色剤、荷電制御剤、流動性制御剤等を含有することができる。
主樹脂としては、光透過性を有し、上記のタガント粒子群が分散するものであれば特に限定されるものではない。主樹脂の光透過性としては、上述した偽造防止用インクにおける透明樹脂成分の光透過性と同様とすることができる。主樹脂としては、スチレン−アクリル系、ポリエステル系が主として使用される。副樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、WAX系が使用される。主樹脂や副樹脂は1種単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
着色剤としては、カーボン、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料等が使用される。荷電制御剤としては、プラス系、マイナス系があり、金属を含有したものや、樹脂系、四級アンモニウム塩等が挙げられる。また、流動制御剤としては、シリカ等が使用される。
【0115】
なお、タガント粒子群については、上述した偽造防止用インクにおけるタガント粒子群と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0116】
本発明の偽造防止用トナーは、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料をさらに含有していてもよい。機能性材料としては、上述した偽造防止用インクにおける機能性材料と同様とすることができる。
【0117】
D.偽造防止用シート
本発明の偽造防止用シートは、上述したタガント粒子群を有することを特徴とするものである。
また、本発明の偽造防止用シートとしては、タガント粒子群を有するものであれば特に限定されるものではなく、タガント粒子群を含有するタガント粒子含有層を有するもの(第1態様)であっても良く、また、シート上にタガント粒子状の形状が形成されているもの(第2態様)であっても良い。
以下、各態様について説明する。
【0118】
1.第1態様
本態様における偽造防止用シートは、タガント粒子群を含有するタガント粒子含有層を有するものである。
【0119】
本態様の偽造防止用シートについて図面を参照しながら説明する。
図7は本態様の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。図7に示す偽造防止用シート10は、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12からなるものである。
【0120】
本態様においては、上述したタガント粒子を含有するタガント粒子含有層を有することから、本態様の偽造防止用シートを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、タガント粒子を偽造防止媒体に適用する際に、タガント粒子を含有するインクを支持体上に塗布する場合には、インクの塗布量が少ないと支持体上にタガント粒子が存在していない可能性があり、偽造防止効果が得られないおそれがあるが、本態様においては、偽造防止用シートにおけるタガント粒子の個数が予め分かった状態で、偽造防止媒体に適用することができるので、確実に偽造防止効果を達成することができる。さらに本態様においては、偽造防止用シートにおけるタガント粒子の位置についてマッピングを行うことが可能であり、高度な偽造防止を実現することが可能である。また、本態様の偽造防止用シートは容易に貼付することができるという利点も有する。さらには、本態様の偽造防止用シートは他のシートとの積層も容易であり、付加価値を高めることができる。
【0121】
図8は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図8に示す偽造防止用シート10においては、剥離層13と、粘着層14と、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12とが順に積層されている。
【0122】
図9は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図9に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12とを有し、タガント粒子含有層12側に粘着層14および剥離層13が順に積層されている。
【0123】
図10は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図10に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12と、タガント粒子含有層12上に形成されたハードコート層16とを有し、基材15側に粘着層14および剥離層13が順に積層されている。
【0124】
図11は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図11に示す偽造防止用シート10においては、剥離層13と、粘着層14と、ホログラム層17と、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12とが順に積層されている。
【0125】
図12は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図12に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12と、タガント粒子含有層12上に形成されたハードコート層16とを有し、基材15側にホログラム層17と粘着層14と剥離層13とが順に積層されている。
【0126】
このように、本態様の偽造防止用シートは、タガント粒子含有層以外に他の構成を有していてもよい。
以下、本態様の偽造防止用シートにおける各構成について説明する。
【0127】
(1)タガント粒子含有層
本態様におけるタガント粒子含有層は、上述したタガント粒子群が透明樹脂中に分散されたものである。
なお、タガント粒子群については、上記「A.タガント粒子群」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0128】
本態様に用いられる透明樹脂の光透過性としては、タガント粒子含有層中のタガント粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂からなる層をタガント粒子含有層と同じ厚みで形成したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0129】
透明樹脂としては、上記光透過性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂好ましく、特に光硬化性樹脂が好ましい。例えば図9、図10および図12に示すように、基材15上にタガント粒子含有層12が形成されている場合には、光硬化性樹脂を用いることにより、耐熱性の低い基材も使用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、偽造防止用シートの生産効率を向上させることができるからである。
透明樹脂は、上記「B.偽造防止用インク」の項に記載した透明樹脂成分を固化させたものとすることができる。
【0130】
タガント粒子含有層中のタガント粒子群の含有量としては、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、タガント粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではないが、タガント粒子含有層1cm2当たりに少なくとも1個以上のタガント粒子が含有されていることが好ましい。
【0131】
また、タガント粒子含有層が基材上に形成されている場合には、タガント粒子含有層は基材上に一面に形成されていてもよくパターン状に形成されていてもよい。タガント粒子含有層のパターン形状が所定の意味を表す形状である場合には、タガント粒子を高次認証情報として利用することにより、偽造防止効果を高めることができる。
【0132】
タガント粒子含有層の膜厚としては、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、タガント粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、本態様の偽造防止用シートの層構成やタガント粒子含有層に含まれる透明樹脂の種類等に応じて適宜選択される。例えば図9、図10および図12に示すように、基材15上にタガント粒子含有層12が形成されている場合には、タガント粒子含有層12の膜厚は比較的薄くともよい。一方、図7に例示するように、タガント粒子含有層12が単独で形成されている場合には、自己支持性の観点から、タガント粒子含有層の膜厚は比較的厚いことが好ましい。また、タガント粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、割れを抑制する観点から、タガント粒子含有層の膜厚は比較的薄いことが好ましい。
具体的に、タガント粒子含有層の膜厚は、0.1μm〜500μm程度とすることができ、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0133】
タガント粒子含有層の形成方法としては、例えば、上述した偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法が挙げられる。例えば図9、図10および図12に示すように、基材15上にタガント粒子含有層12が形成されている場合には、基材15上に偽造防止用インクを塗布し、固化させることで、タガント粒子含有層12を形成することができる。
また、図7に例示するように、タガント粒子含有層12が単独で形成されている場合には、基板上に偽造防止用インクを塗布し、固化させた後、基板からタガント粒子含有層12を剥離することで、タガント粒子含有層12を単独で得ることができる。この際に用いられる基板としては、光透過性を有していても有さなくてもよく、例えば、ガラス基板、樹脂基板等を用いることができる。
【0134】
偽造防止用インクの塗布方法としては、任意の方法を用いることができる。
また、偽造防止用インクの固化方法としては、透明樹脂の種類に応じて適宜選択される。硬化性樹脂の場合には、光や熱による硬化方法が用いられる。熱可塑性樹脂の場合には、冷却する方法が用いられる。
【0135】
(2)基材
本態様においては、図9、図10および図12に例示するように、タガント粒子含有層12が基材15上に形成されていてもよい。本態様の偽造防止用シートの強度を高めることができ、また容易に取り扱うことができるからである。中でも、タガント粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、タガント粒子含有層の割れを抑制する観点から、タガント粒子含有層は比較的薄いことが好ましいので、透明基材上にタガント粒子含有層が形成されていることが好ましい。また、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図9に例示するように、透明基材15がタガント粒子含有層12よりも表面側となるように配置されている場合には、透明基材によりタガント粒子含有層を保護することもできる。図10に例示する層構成の場合には、不透明基材を使用することもできる。
【0136】
本発明に用いられる基材は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよく、基材の形成位置により適宜選択される。本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図9に例示するように、基材15がタガント粒子含有層12よりも表面側となるように配置されている場合や、図12に例示するように、基材15がホログラム層17よりも表面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有することが好ましい。
一方、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図10に例示するように、基材15がタガント粒子含有層12よりも裏面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0137】
本態様に用いられる基材が光透過性を有する場合、その光透過性としては、タガント粒子含有層中のタガント粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
【0138】
また、基材は、フレキシブル性を有することが好ましい。本態様の偽造防止用シートを種々の形状の偽造防止媒体に適用することが可能となるからである。
【0139】
このような基材としては、一般的な樹脂基材を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂基材を挙げることができる。
【0140】
また、基材の表面は、タガント粒子含有層との密着性を向上させるために、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、タガント粒子含有層および基材を接着させることができれば特に限定されるものではなく、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理等の物理的処理、あるいは、クロム酸、シランカップリング剤、プライマー剤等を使用した化学的処理を挙げることができる。
中でも、プライマー剤を用いた化学的処理であることが好ましい。プライマー剤は、透明基材製造時に処理されるものと、製造後の透明基材表面に処理されるものと、いずれの場合も好適である。プライマー剤で処理した透明基材としては、市販されているものを用いることができる。また、製造後の透明基材表面を処理するプライマー剤としては、上記偽造防止用インクと密着するものであればよい。
【0141】
基材の厚みは、本態様の偽造防止用シートの用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、1μm〜800μm程度とすることができ、好ましくは10μm〜50μmの範囲内である。
【0142】
(3)粘着層
本態様においては、図8〜図12に例示するように、タガント粒子含有層12上に粘着層14が積層されていてもよい。粘着層を介して、本態様の偽造防止用シートを貼付することができるからである。
【0143】
粘着層は、基材上にタガント粒子含有層が形成されている場合、基材側に積層されていてもよく、タガント粒子含有層側に積層されていてもよい。タガント粒子含有層上に後述するハードコート層が形成されている場合には、ハードコート層とは反対側の面に粘着層が配置される。また、タガント粒子含有層とホログラム層とが積層されている場合には、ホログラム層側に粘着層が配置される。
【0144】
粘着層の材料としては、粘着層を介して本態様の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑系、熱硬化系、光硬化系、エラストマー系のいずれも用いることができ、偽造防止用シートの用途や種類に応じて適宜選択される。偽造防止用シートを転写箔として使用する場合には、ヒートシール性を有する粘着層が用いられる。
【0145】
粘着層の膜厚は、粘着層を介して本態様の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば、1μm〜100μm程度とすることができる。
粘着層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0146】
(4)剥離層
本態様においては、図8〜図12に例示するように、タガント粒子含有層12上に粘着層14と剥離層13とが順に積層されていてもよい。粘着層および剥離層が積層されていることにより、本態様の偽造防止用シートの取り扱いが容易になるからである。
本態様の偽造防止用シートは、偽造防止媒体に適用される際には、剥離層を剥がして用いられる。
【0147】
剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0148】
(5)ハードコート層
本態様においては、図10および図12に例示するように、タガント粒子含有層12上にハードコート層16が形成されていてもよい。ハードコート層によりタガント粒子含有層を保護することができるからである。
ハードコート層は、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図10および図12に例示するように、ハードコート層16がタガント粒子含有層12よりも表面側となるように配置される。
【0149】
ハードコート層は光透過性を有する。ハードコート層の光透過性としては、タガント粒子含有層中のタガント粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましく、中でも、50%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
【0150】
ハードコート層の材料としては、上記光透過性を満たし、タガント粒子含有層を保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂を用いることができる。
【0151】
ハードコート層の膜厚は、タガント粒子含有層を保護することができれば特に限定されるものではなく、例えば、1μm〜100μm程度とすることができる。
ハードコート層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0152】
(6)ホログラム層
本態様においては、図11および図12に例示するように、タガント粒子含有層12上にホログラム層17が積層されていてもよい。ホログラム層により偽造防止効果を高めることができるからである。
【0153】
ホログラム層の種類としては特に限定されるものではなく、レリーフ型ホログラム層であってもよく、体積型ホログラム層であってもよい。レリーフ型ホログラム層は生産性に優れており、一方で体積型ホログラム層は偽造防止効果に優れている。
ホログラム層としては公知のものを使用することができる。
【0154】
ホログラム層は、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図11および図12に例示するように、ホログラム層17がタガント粒子含有層12よりも裏面側になるように配置される。これにより、タガント粒子含有層をホログラム層の保護層として利用することができる。
【0155】
(7)偽造防止用シート
本態様の偽造防止用シートは、枚葉状に形成されていても良く、長尺状に形成されていても良い。
【0156】
また、本態様の偽造防止用シートの形状としては、特に限定されるものではなく、三角形形状、四角形形状、円形形状等の任意の形状とすることができる。また、本態様の偽造防止用シートの形状が所定の意味を表す形状である場合には、タガント粒子を高次認証情報として利用することができるため、偽造防止効果に優れた偽造防止用シートとすることができる。
【0157】
本態様の偽造防止用シートの検査方法としては、図13に例示するように、偽造防止用シート10にLED照明41で光を照射し、カメラ(ラインセンサ)42により画像を取得する方法を挙げることができる。図13においては、偽造防止用シート10に対してカメラ42と反対側にLED照明41を配置して、透過光を観察しているが、図示はしないが、偽造防止用シートに対してカメラと同じ側にLED照明を配置して、反射光を観察してもよい。
偽造防止用シートの検査装置では、タガント粒子の位置をマッピングし、データベースに保存し、照合が可能である。
検査において、タガント粒子含有層にタガント粒子が含有されていない領域があった場合には、レーザーマーキング装置を使用し、タガント粒子が含有されていない領域にマーキングを行い、偽造防止用シートを所定の形状とする際に排除してもよい。
【0158】
本態様の偽造防止用シートは、そのままラベルとして使用したり、転写箔として使用したりすることが可能である。また、偽造防止用シートがホログラム層を有する場合には、ホログラムラベルやホログラム転写箔として使用することもできる。さらに、偽造防止用シートは、偽造防止媒体へのラミネートフィルムとして使用することもできる。
偽造防止用シート自体は光透過性を有するものとすることができるので、様々な偽造防止媒体に適用することができる。
【0159】
また、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用する際には、偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着してもよく、偽造防止媒体が複数層から構成される場合には、偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートを埋め込んでもよく、偽造防止媒体が紙で構成される場合には、偽造防止用シートを細長く切断し、紙に抄き込んでもよい。偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着する場合には、偽造防止用シートをそのまま貼付してもよく、転写箔加工を行って転写してもよい。転写方法としては、熱転写法が挙げられる。
なお、偽造防止媒体については、後述する「E.偽造防止媒体」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0160】
2.第2態様
本態様における偽造防止用シートは、シート上にタガント粒子状の形状(以降、識別形状とする)を有するものである。
本態様によれば、一定の面積を有するシート上に形成される識別形状の数および位置を予め規定することが可能である。そのため、識別情報をより高度に制御することが可能な偽造防止用シートとすることができ、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を作製することが可能となる。
また、第1態様では、タガント粒子含有層を形成する透明樹脂内にタガント粒子群を混合することから、含有されるタガント粒子の位置や方向等の制御が難しく、タガント粒子の識別情報の識別が困難となる可能性を有していたが、本態様によれば、識別形状の配列を制御することが可能であることから、識別情報をより高度に制御することができる。
【0161】
本態様の偽造防止用シートについて図を用いて説明する。図14(a)、(b)は、本態様の偽造防止用シートの一例を示す概略図であり、図14(a)は斜視図であり、図14(b)は、図14(a)のD−D線断面図である。図14に例示するように、本態様の偽造防止用シート10は、基底部21と、基底部21の表面にタガント粒子状の形状である識別形状22aが複数形成された識別部22を有する。
【0162】
本態様によれば、識別部内に形成される識別形状が、上述したタガント粒子群と同様に共通識別情報および非共通識別情報を有することから、本態様の偽造防止用シートは、高度な真贋判定が可能であり、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を作製することができる。
【0163】
(1)識別部
本態様における識別部について説明する。本態様の識別部は、識別部における各々の識別形状が共通識別情報と非共通識別情報とを有するものである。
【0164】
(識別形状)
本態様における識別形状としては、共通識別情報と非共通識別情報とを有することができる形状であれば特に限定されるものではないが、上述したタガント粒子の形状と同様の形状とすることができる。なお、タガント粒子の形状については、上記「A.タガント粒子群」に記載したため、ここでの説明は省略する。
【0165】
識別部が有する識別形状の個数としては、2個以上であれば特に限定されるものではなく、偽造防止用シートが応用される偽造防止媒体の用途により適宜選択されるものであるが、中でも10個〜1,000,000,000個の範囲内であることが好ましく、特に100個〜1,000,000個の範囲内であることがより好ましい。
識別部に形成される識別形状の個数が上記範囲に満たない場合、識別形状の位置の特定や、識別形状が有する識別情報自体の認識を行うことが困難となる可能性がある。なお、識別形状の個数については、本態様の偽造防止用シートの用途により適宜選択することができる。
【0166】
識別部における識別形状の配置としては、識別部に表示される識別情報を認識可能な配置であれば特に限定されるものではなく、規則性を有するように配置されていても良く、ランダムに配置されていても良い。
【0167】
(共通識別情報)
本態様における共通識別情報としては、識別形状のすべてに共通して有することが可能な識別情報であれば特に限定されるものではなく、例えば、形状、大きさ、マーカー、色彩等が挙げられる。なお、各識別情報については、上記「A.タガント粒子群」の項で記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0168】
(非共通識別情報)
本態様における非共通識別情報としては、上記共通識別情報と異なる識別情報であれば特に限定されるものではないが、簡易器具を用いて識別可能であることが好ましい。なお、非共通識別情報は、上記「A.タガント粒子群」の項で記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0169】
(その他)
本態様における識別部としては、識別部の各識別形状が有する識別情報を簡易器具で拡大することによって観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、偽造防止用シートの一部の表面上に形成されているものであっても良く、偽造防止用シートの全面に形成されているものであっても良い。また、偽造防止用シート上に1つの識別部が形成されているものであっても良く、複数の識別部が形成されているものであっても良い。
【0170】
また、本態様における識別部全体の大きさとしては、識別部の各識別形状が有する識別情報を拡大して観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、本態様の偽造防止用シートの用途に応じて適宜選択することが可能である。よって、識別部全体を目視で確認することができる程度の大きさであっても良く、識別部全体についても拡大することによって観察することができる程度の大きさであっても良い。
【0171】
(2)基底部
本態様における基底部は、その表面に上述した識別部を有するものである。
【0172】
本態様における基底部の厚みとしては、基底部の表面に上述した識別部を形成することができ、また、本態様の偽造防止用シートを所望の偽造防止媒体に用いることができる程度の厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には、1μm〜800μmの範囲内であることが好ましく、中でも10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。
基底部の厚みが上記範囲より厚い場合、偽造防止用シートが厚膜となるため、偽造防止用シートの加工が困難となる可能性や、応用する偽造防止媒体の規格に沿わない可能性等を有している。また一方、上記範囲より薄い場合、複数の識別形状を有する識別部を形成することが困難となる可能性や、充分な自己支持性を保持することが困難となる可能性を有する。
なお、本態様における基底部の厚みとしては、図14(b)に例示するように、偽造防止用シート10の識別部22が形成されていない部分の厚みHsを示すものである。
【0173】
(3)その他
本態様の偽造防止用シートの材料としては、所望の偽造防止用シートを作製することができるものであれば特に限定されるものではなく、第1態様の透明樹脂に用いた材料と同様のものを使用することができる。透明樹脂材料としては、上記「1.第1態様」の項に記載したため、ここでの説明は省略する。
また、本態様の偽造防止用シート材料としては、第1態様と同様に機能性材料を有していても良い。機能性材料については、上記「A.タガント粒子群」の項で記載したものと同様のものを使用することができるため、ここでの説明は省略する。
【0174】
本発明の偽造防止用シートの形状、色彩、光透過性等については、第1態様と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0175】
本態様の偽造防止用シートは、上述した識別部と基底部とを有するものであれば特に限定されるものではなく、他に必要な構成があれば適宜選択して用いることができる。
【0176】
(金属層)
本発明の偽造防止用シートは、偽造防止用シートの識別部側の面に金属層が形成されていることが好ましい。識別部側の表面に金属層が形成されていることにより、光の反射により形態に関する識別情報を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、ハードコート層を形成する場合、ハードコート層も樹脂を用いて形成されるものであることから、偽造防止用シートおよびハードコート層の屈折率の差が小さいために、偽造防止用シートとハードコート層との界面が見えにくくなり、各々が有する形態に関する識別情報を視認するのが困難になることが懸念されるが、識別部側表面に金属層が形成されていることで、形態に関する識別情報の視認性を高めることが可能となる。
【0177】
金属層の厚みとしては、識別部における各々識別形状が有する形態に関する識別情報の視認性を向上させることができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば、1nm〜250nm程度とすることができ、10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
金属層の厚みが上記範囲より厚い場合、識別情報が損なわれてしまうおそれがあり、金属層が薄すぎると、金属層の形成が困難であったり、形態に関する識別情報の視認性を高める効果が十分に得られなかったりする可能性があるからである。
【0178】
このような金属層としては、金属および金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物が用いられ、例えば、Al、ZnS、TiO2,Cu,Au,Pt等が挙げられる。
【0179】
また、金属層の形成方法としては、識別情報付シートの識別部側の表面に所望の厚みで金属層を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば金属蒸着法、金属メッキ法、スパッタ法等を挙げることができる。
【0180】
本態様の偽造防止用シートとしては、上記金属層の他にも任意の構成を有していても良く、例えば、透明基材、粘着層、剥離層、ハードコート層、ホログラム層等が挙げられる。なお、これらの構成は、上述した第1態様と同様のものを使用できるため、ここでの記載は省略する。
【0181】
本態様の偽造防止用シートの製造方法としては、偽造防止用シート表面に所望の識別形状を形成することができる製造方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、基材表面に、上記識別部の複数の識別形状と嵌合する形状を有する転写部を形成して原版を作製し、樹脂を含有する偽造防止用シート形成用層を形成する。続いて、偽造防止用シート形成用層表面と原版の転写部とを密着させることにより、偽造防止用シート形成用層表面に識別部の複数の識別形状を賦型する。複数の識別形状が賦型された偽造防止用シート形成用層を固化し、硬化した偽造防止用シート形成用層から原版を剥離して偽造防止用シートを形成する方法等が挙げられる。
【0182】
E.偽造防止媒体
本発明の偽造防止媒体は、上述したタガント粒子を有することを特徴とするものである。
【0183】
図15(a)、(b)は本発明の偽造防止媒体の一例を示す模式図であり、図15(a)は上面図、図15(b)は図15(a)のE−E線断面図である。図15(a)、(b)に示す偽造防止媒体30においては、支持体31上に、上述したタガント粒子1が透明樹脂11中に分散されたタガント粒子含有層12が形成されている。
【0184】
図16(a)〜(c)は本発明の偽造防止媒体の他の例を示す模式図であり、図16(a)は上面図、図16(b)は図16(a)のF−F線断面図、図16(c)は偽造防止媒体の積層構造を示す斜視図である。図16(a)〜(c)に示す偽造防止媒体30おいては、支持体31上に第1樹脂層32と上述したタガント粒子1が透明樹脂21中に分散されたタガント粒子含有層12からなる偽造防止用シート10と第2樹脂層33とが積層されており、偽造防止媒体30の内部に偽造防止用シート10が埋め込まれている。偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートが埋め込まれている場合には、偽造防止用シートが剥がされて悪用されるのを防ぐことができる。
【0185】
本発明の偽造防止媒体においては、上述したタガント粒子群を用いるので、偽造防止に非常に有用である。また本発明においては、ルーペ等の簡易器具のみで、真贋判定を容易に行うことが可能である。
【0186】
以下、本発明の偽造防止媒体における各構成について説明する。
なお、タガント粒子群については、上記「A.タガント粒子群」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0187】
支持体上にタガント粒子群を固定する方法としては、支持体上に上述した偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法や、支持体上に上述した偽造防止用シートを貼付もしくは埋め込む方法を用いることができる。
【0188】
支持体上に偽造防止用シートを貼付する方法としては、そのまま貼っても良く、転写しても良い。さらに、偽造防止媒体が複数層から構成される場合には、偽造防止用シートを偽造防止媒体の構成層間に埋め込んでも良い。
ここで、偽造防止用シートを埋め込む方法としては、例えば、偽造防止媒体の支持体上に所望の構成層を積層し、各層間を接着層、粘着層、熱圧着等によって接着する方法が挙げられる。
なお、偽造防止媒体内に積層される偽造防止用シートは、一部で領域に設けられていても良く、全体に設けられていても良い。また、偽造防止媒体中のその他の構成層としては、偽造防止媒体の種類に応じて、適宜選択されるものである。
【0189】
本発明に用いられる支持体としては、本発明の偽造防止媒体の用途に応じて適宜選択されるものである。基材は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。基材の材料としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、紙等が挙げられる。
【0190】
また、偽造防止媒体を構成する第1樹脂層は、光透過性を有していても良く有していなくても良い。中でも、支持体と第1樹脂層との間に、任意の情報を記録し得るまたは有する機能層(例えば受像層、ホログラム層等)が形成されている場合には、第1樹脂層は光透過性を有することが好ましい。第1樹脂層が光透過性を有する場合、その光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材が透明基材である場合の光透過性と同様とすることができる。第1樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
一方、第2樹脂層は、光透過性を有するものである。第2樹脂層の光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材が透明基材である場合の光透過性と同様とすることができる。第2樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
支持体と第1樹脂層と偽造防止用シートと第2樹脂層との積層方法としては、例えば、各層を接着層を介して積層する方法、各層を熱圧着により積層する方法等をあげることができる。
【0191】
本発明の偽造防止媒体の用途としては、例えば、貨幣、株券、クレジットカード、IDカード、パスポート、高価格品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等を挙げることができる。
【0192】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0193】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0194】
(原版の形成)
厚さ0.7mmのガラス基板上に、ポジ型レジスト(東京応化工業製LA900)を、スピンコーターを用いて塗布し、130℃で10分間加熱することにより、塗膜を形成した。
なお、塗膜の厚さについては、現像硬化後の最大膜厚が2μmとなるように調整した。
【0195】
次に、図14(a)に示した偽造防止用シートの識別形状のパターンに対応し、遮光的に、また周期的に縦100μm、横100μmの矩形または円形の、露光光の透過率が高い領域を設け、上記矩形または円形の領域の中央部に、さらに透過率が高い文字Aの形状の領域を設けた濃度階調を有する階調マスクを用い、アライナーにて365nmの紫外光を照射した。なお、露光量は800mJとした。
露光後に現像液(東京応化工業製、NMD−3)を用いて5分間現像した後、純水にて洗浄することにより、上記矩形または円形の領域の膜厚が低く、上記文字Aの領域の膜厚がさらに低い凹凸パターンを有する原版を形成した。
【0196】
(偽造防止用シートの形成)
次に、厚さ0.7mmのガラス基板に、スペーサとして厚さ110μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けた。なお、PETフィルムはガラス基板を底面とし、PETフィルムが側面とする空間が形成されるように配置した。上記空間内にUV硬化性樹脂を充填して偽造防止用シート形成用層を形成し、偽造防止用シート形成用層と原版との転写部とが密着し、上述した空間を塞ぐようにして、原版を配置した。
【0197】
原版側からUV照射機にて、波長365nmの紫外線を1000mJ照射し、偽造防止用シート形成用層を固化させた後、原版およびガラス基板を剥離することにより、偽造防止用シートを形成した。
【0198】
以上の工程で、共通識別情報である文字Aおよび、非共通識別情報である形状(矩形または円形)を有する偽造防止用シートを得た。
【符号の説明】
【0199】
1、1A、1B、1C … タガント粒子
2、2a、2b … 識別情報
3 … 金属多層膜
4 … タガント粒子の表面
5 … タガント粒子の裏面
6 … 樹脂層
7 … 金属層
10 … 偽造防止用シート
11 … 透明樹脂
12 … タガント粒子含有層
13 … 剥離層
14 … 粘着層
15 … 基材
16 … ハードコート層
17 … ホログラム層
21 … 基底部
22 … 識別部
22a … 識別形状
30 … 偽造防止媒体
31 … 支持体
32 … 第1樹脂層
33 … 第2樹脂層
41 … LED照明
42 … カメラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、認証段階を複数有し偽造防止効果に優れ、種々の偽造防止媒体に応用可能なタガント粒子群に関するものである。
【背景技術】
【0002】
物品の偽造を防止するための偽造防止技術には、その用途から2つの側面が求められる。まず、物品を使用する需要者が物品の安全性等の観点から正規品であることを確認する場合等に、容易に認証が行えること、また、精巧な模倣品との区別が必要となった場合等に、より高度な認証が行えることである。
【0003】
現在、多用されている偽造防止技術として、目視で真贋判定可能な透かし技術やホログラム等が挙げられる。これらの技術では、目視で確認できることから容易に認証が行えるという利点を有するが、さらなる偽造防止効果の向上への要求から新たな偽造防止技術の開発が望まれている。
【0004】
そこで、ルーペ等の簡易的な拡大器具を使用して観察することにより真贋判定を行う偽造防止技術が注目されている(特許文献1〜3)。これらの技術では、一見するだけでは偽造防止技術が施されていることが確認できないため、目視で確認できる偽造防止技術と比べて、より高い偽造防止効果を発揮することができる。また、真贋判定に特殊な装置等を必要とせず簡易的に識別可能であるという利点を有する。
【0005】
このような認証する際に拡大器具を必要とする偽造防止技術として、タガント粒子(追跡用添加物)と呼ばれる微粒子を用いた技術が提案されている。タガント粒子を用いた偽造防止媒体では、個体によってタガント粒子の位置が異なるため、タガント粒子自体の確認が難しく、複製も困難となる。そのため、優れた偽造防止効果を発揮することが可能となり、また、個体の識別も可能となる。
【0006】
タガント粒子には、拡大して観察することにより識別可能な情報を有するものが知られており、例えば、文字、記号、標章等や特殊な形状を有するものや、特殊な色彩情報を有するものが挙げられる。(特許文献4〜5)
しかしながら、従来使用されているタガント粒子は製造が比較的容易であり、また、印刷技術が進み高精彩な印刷が可能となったことから、タガント粒子の形成される位置を特定された場合、模倣される危険性が高まる。そのため、偽造防止効果のより高いタガント粒子の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−274834号公報
【特許文献2】特開2009−193069号公報
【特許文献3】特開2001−288698号公報
【特許文献4】特許3665282号公報
【特許文献5】特開2008−230228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、認証段階を複数有し偽造防止効果に優れ、種々の偽造防止媒体に応用可能なタガント粒子群を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、個々の粒子が複数の識別情報を有しているタガント粒子の集合体であるタガント粒子群であって、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうち一つの識別情報が、上記タガント粒子群を構成するタガント粒子が共通して有する共通識別情報であり、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの他の識別情報が、上記タガント粒子群を構成する他のタガント粒子が有する識別情報との組み合わせにより真贋判定が可能な非共通識別情報であることを特徴とするタガント粒子群を提供する。
【0010】
本発明によれば、上記タガント粒子群内の個々のタガント粒子が共通識別情報を有することから、本発明のタガント粒子群を偽造防止媒体等に応用した際に、タガント粒子群内に存在する任意のタガント粒子について、共通識別情報を有しているか否かを確認することにより、真正性を保証することができる。そのため、タガント粒子群内の複数の粒子の識別情報を確認する必要性がなく、容易に認証を行うことができる。
また、上記個々のタガント粒子は複数の識別情報を有しており、上記共通識別情報とは異なる非共通識別情報を有する。非共通識別情報は、異なる2種類以上の識別情報を組み合わせることにより識別することが可能となるため、任意のタガント粒子が発現する識別情報と、別のタガント粒子が発現する識別情報との組み合わせを確認することで、より高度な認証を行うことが可能となる。さらに、タガント粒子の製造が複雑になることから、模倣容易性をより低下させることができる。
【0011】
本発明は、上述したタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用インクを提供する。
【0012】
本発明によれば、上述したタガント粒子群を有することにより、より高度な真贋判定が可能な偽造防止媒体作製に利用できる偽造防止用インクを作製することが可能となる。
【0013】
本発明は、上述したタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用トナーを提供する。
【0014】
本発明によれば、上述したタガント粒子群を有することにより、より高度な真贋判定が可能な偽造防止媒体作製に利用できる偽造防止用トナーを作製することが可能となる。
【0015】
また、本発明は、上述したタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用シートを提供する。
【0016】
本発明によれば、上述したタガント粒子群を有することにより、より高度な真贋判定が可能な偽造防止媒体作製に利用できる偽造防止用シートを作製することが可能となる。
【0017】
本発明は、上述したタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止媒体を提供する。
【0018】
本発明によれば、上述したタガント粒子群を有することから、物品の需要者が簡易的に識別可能であり、また、精巧な模倣品との識別が必要な際に、より高度な識別が可能であるため、高度な真贋判定が可能な偽造防止媒体を作製することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、拡大することによって観察できることから偽造防止効果が高く、また複数の識別情報を有することから、簡易的な識別と高度な識別とによる複数の認証段階を有するため、高度な真贋判定が可能であり、また、種々の偽造防止用材料および偽造防止媒体に容易に応用可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】タガント粒子の識別情報の組み合わせの一例を示す模式図である。
【図2】本発明におけるタガント粒子の一例を示す模式図である。
【図3】本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図である。
【図4】本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図である。
【図5】本発明におけるタガント粒子の他の例を示す断面図である。
【図6】本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図である。
【図7】本発明の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。
【図8】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図9】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図10】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図11】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図12】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。
【図13】本発明の偽造防止用シートの検査方法の一例を示す模式図である。
【図14】本発明の偽造防止用シートの他の例を示す模式図である。
【図15】本発明の偽造防止媒体の一例を示す模式図である。
【図16】本発明の偽造防止媒体の他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明のタガント粒子群、偽造防止用インク、偽造防止用シートおよび偽造防止媒体について説明する。
【0022】
A.タガント粒子群
本発明のタガント粒子群について説明する。本発明のタガント粒子群は、個々の粒子が複数の識別情報を有しているタガント粒子の集合体であるタガント粒子群であって、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの一つの識別情報が、上記タガント粒子群を構成するタガント粒子が共通して有する共通識別情報であり、上記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの他の識別情報が、上記タガント粒子群を構成する他のタガント粒子が有する識別情報との組み合わせにより真贋判定が可能な非共通識別情報であることを特徴とするものである。
【0023】
本発明によれば、タガント粒子群内の個々のタガント粒子が共通識別情報を有するので、タガント粒子群を偽造防止媒体等に応用した際に、タガント粒子群内に存在する任意のタガント粒子について共通識別情報を有しているか否かを確認することにより、真正性を保証することができる。そのため、タガント粒子群内の複数の粒子の識別情報を確認する必要性がなく、容易に認証を行うことができる。
また、上記個々のタガント粒子は複数の識別情報を有しており、上記共通識別情報とは異なる非共通識別情報を有する。非共通識別情報は、異なる2種類以上の識別情報を組み合わせることにより識別することが可能となるため、任意のタガント粒子が発現する識別情報と、別のタガント粒子が発現する識別情報との組み合わせを確認することで、より高度な認証を行うことが可能となる。
さらに、タガント粒子の製造が複雑になることから、模倣容易性をより低下させることができる。
以下、本発明のタガント粒子群について説明する。
【0024】
1.共通識別情報
まず、本発明における共通識別情報について説明する。本発明に用いられる共通識別情報は、個々のタガント粒子が有する複数の識別情報のうちの一つの識別情報であり、タガント粒子群を構成するタガント粒子が共通して有するものである。
上記タガント粒子群内の個々のタガント粒子が共通識別情報を有することから、本発明のタガント粒子群を偽造防止媒体等に応用した際に、タガント粒子群内に存在する任意のタガント粒子について、共通識別情報を有しているか否かを確認することにより、真正性を保証することができる。そのため、タガント粒子群内の複数の粒子の識別情報を確認する必要性がなく、容易に認証を行うことができる。
なお、共通識別情報として用いることが可能な識別情報としては、形状、色彩、大きさ、印等が挙げられる。各識別情報については、後述する「3.識別情報」の項に記載するのでここでの説明は省略する。
【0025】
ここで、共通識別情報について図面を参照して説明する。図1は、タガント粒子の識別情報の組み合わせの一例を示す模式図である。図1(a)に例示するように、形状(円形)と色彩(白色)とが共通識別情報であり、印(A、B、Cの文字)が異なる。そのため、タガント粒子群内の任意のタガント粒子が、所定の共通識別情報である、形状(円形)と色彩(白色)であることを確認することで、容易に認証が可能となる。
また、図1(b)に例示するように、色彩(白色)と印(文字A)とが共通識別情報であり、形状(円形、四角形、六角形)が異なる。図1(c)では、形状(円形)および印(文字A)が共通識別情報であり、色彩が異なる。
さらに、図1(d)に例示するように、形状(文字A)が共通識別情報であり、色彩が異なる。図1(e)では、形状(円形)、色彩(白色)、印(文字A)は共通識別情報であり、大きさが異なる。図1(f)では、色彩(白色)が共通識別情報であり、形状(円形、四角形、六角形)、印(A、B、Cの文字)が異なる。
【0026】
共通識別情報としては、後述する識別情報であれば特に限定されるものではないが、中でも、形状と印が好ましく、特に形状がより好ましい。ルーペ等の簡易拡大器具により容易に識別することが可能となるからである。
また、共通識別情報としては、1種類の識別情報を用いても良く、2種類以上の識別情報を用いても良い。
【0027】
2.非共通識別情報
本発明に用いられる非共通識別情報は、個々の粒子が有する複数の識別情報のうち、上述した共通識別情報とは異なる識別情報であり、上記タガント粒子群を構成する他のタガント粒子が有する識別情報との組み合わせにより真贋判定が可能なものである。
上記個々のタガント粒子は、複数の識別情報を有しており、上記共通識別情報とは異なる非共通識別情報を有する。ここで、識別情報としては、共通識別情報と同様に、後述する識別情報を用いることができる。
非共通識別情報は、異なる2種類の識別情報を組み合わせることにより識別することが可能となるため、任意のタガント粒子が発現する識別情報と、別のタガント粒子が発現する識別情報との組み合わせを確認することで、より高度な認証を行うことが可能となる。
また、タガント粒子の製造が複雑になるため、模倣容易性を低下させることが可能となる。
【0028】
図1(a)に例示するように、共通識別情報として形状(円形)と色彩(白色)とを用いており、非共通識別情報として、印(A、B、Cの文字)を有する。印である「A」、「B」、「C」という非共通識別情報を有するタガント粒子を、すべてタガント粒子群内に確認することで、より高度な真贋判定を行うことが可能となる。
また、図1(b)に例示するように、共通識別情報として色彩(白色)と印(文字A)を用いており、非共通識別情報として形状(円形、四角形、六角形)を有する。形状が円形、四角形、六角形であるという非共通識別情報を有するタガント粒子を、すべてタガント粒子群内に確認することで、より高度な真贋判定を行うことができる。
また、例えば、図1(c)に示すように、共通識別情報として形状(円形)と印(文字A)を有しており、非共通識別情報として色彩を有する。色彩の異なるタガント粒子をすべてタガント粒子群内に確認することによって、高度な真贋判定を行うことが可能となる。
【0029】
さらに、上述した識別情報の組み合わせ以外に、図1(d)〜(f)に例示するように、様々な識別情報の組み合わせが考えられる。
図1(d)では、形状(文字A)を共通識別情報として有し、色彩を非共通識別情報として有する。図1(e)は、形状(円形)、印(文字A)および色彩(白色)を共通識別情報として有し、大きさを非共通識別情報として有する。
さらに、図1(f)では、色彩(白色)を共通識別情報として有し、形状(円形、四角形、六角形)および印(A、B、Cの文字)を非共通識別情報として有する。
【0030】
非共通識別情報としては、後述する識別情報であれば特に限定されるものではないが、形状、印、色彩が好ましく、中でも形状、印がより好ましい。他の識別情報と容易に組み合わせることができるからである。
また、非共通識別情報としては、1種類の識別情報の組み合わせであっても良く、2種類以上の識別情報の組み合わせであっても良い。
さらに、非共通識別情報として用いられる識別情報としては、偽造防止効果をより向上させる目的から、簡易器具により識別可能な識別情報以外に、測定装置等を用いて識別可能な識別情報を用いても良い。
【0031】
本発明のタガント粒子群内における非共通識別情報としては、少なくとも2種類以上の識別情報を発現すれば特に限定するものではなく、異なる識別情報を発現するタガント粒子の存在率としては、2種類以上の識別情報を発現するタガント粒子が同程度ずつ存在していても良く、存在率が異なっていても良い。中でも、存在率が異なることが好ましい。非共通識別情報の識別が困難となり、偽造防止効果が向上し、より高度な認証が可能となるからである。
例えば、非共通識別情報を識別する際に、タガント粒子群内に2種類の識別情報を発現するタガント粒子が存在する場合、その識別情報の異なるタガント粒子の存在率は、100:1〜1:1の範囲内であることが好ましく、中でも、20:1〜1:1の範囲内であることがより好ましい。
上記範囲内であることにより、タガント粒子群内における非共通識別情報の識別が好適に可能となるからである。
【0032】
3.識別情報
次に、本発明における識別情報について説明する。本発明に用いられる識別情報は、拡大することにより識別可能な情報であり、中でも簡易器具により識別可能であることが好ましい。本発明のタガント粒子群に含有される個々のタガント粒子は、複数の識別情報を有しており、上述した共通識別情報および非共通識別情報として用いられるものである。
このような識別情報として、例えば、形状、大きさ、印、色彩等が挙げられる。
以下、各識別情報についてそれぞれ説明する。
【0033】
(1)形状
本発明における形状としては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではなく平面形状であっても良く、立体形状でも良い。平面形状としては、例えば、シート状、フィルム状等の形状が挙げられる。また、立体形状としては、平面のみから構成されるものであっても良く、曲面のみから構成されるものであっても良く、平面と曲面とから構成されるものであっても良い。
【0034】
平面を有する立体形状としては、平面を有していれば特に限定されるものではなく、平面のみから構成されるものであっても良く、平面と曲面とから構成されるものであっても良い。例えば、柱体や錐体等が挙げられる。立体形状がこれらの柱体や錐体等である場合、立体形状の平面視上の形状としては、例えば、三角形形状、四角形形状等の多角形形状、円、楕円等の幾何学形状の他、文字、記号、標章等を挙げることができる。
【0035】
曲面を有する形状としては、曲面を有していれば特に限定されるものではなく、曲面のみから構成されるものであっても良く、曲面と平面とから構成されるものであっても良い。
ここで、曲面は反射特性を測定することにより確認することができる。平面は、法線方向が一つであるのに対して、曲面は法線方向が位置によって異なる。そのため、平面と曲面とでは反射光の明暗が異なる。また、平面と曲面とでは光の入射角度を変化させたときの反射光の明暗の変化も異なる。
【0036】
曲面であることは破壊式または非破壊式の検査手法にて確認することができる。
破壊式の検査方法は、例えばカッターやカミソリ、ミクロトーム等によりタガント粒子を切断し、ルーペや顕微鏡等により拡大して観察することにより確認する手法が挙げられる。
非破壊式の検査方法は、接触式または非接触式の形状測定を行うことにより確認する手法が挙げられる。接触式の形状測定は、例えば針をタガント粒子に接触させ、移動させることにより形状を計測する触針式の形状測定器を用いる手法が挙げられる。非接触式の形状測定は、例えば可干渉性の少ない白色光を光源として、ミラウ型やマイケルソン型等の等光干渉計を利用し、測定面に対応するCCD各画素の等光路位置(干渉強度が最大になる位置)を、干渉計対物レンズを垂直走査(スキャン)して見つける手法にて形状を計測する、走査型白色干渉計を用いる手法が挙げられる。
【0037】
また、本発明におけるタガント粒子は、通常、表面と、表面に対向する裏面とを有しており、また側面を有していても良い。本発明における曲面を有する立体形状が、少なくともタガント粒子表面に曲面を有している場合、タガント粒子表面の50%以上が曲面で構成されていることが好ましく、75%以上が曲面で構成されていることがより好ましい。
タガント粒子表面での曲面の割合が高いほど、光の反射により立体形状を確認しやすいため、容易に識別可能となるからである。
なお、上記曲面の割合については、曲面であることは破壊式または非破壊式の検査手法にて確認することができる。
【0038】
このような立体形状としては、例えば、人物、動物、植物、食物、道具、乗物、建物、風景や、文字、数字、ロゴ、商標、言語記号等の任意の立体形状とすることができ、タガント粒子の用途によって適宜選択されるものである。
【0039】
本発明に用いられるタガント粒子においては、上述した柱体、錐体および立体形状を組み合わせた形状を用いることもできる。
【0040】
(2)大きさ
本発明に用いられる識別情報の大きさとしては、拡大して観察することで識別可能であれば特に限定されるものではないが、具体的には、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。
識別情報が大き過ぎる場合、目視で識別可能であることから模倣容易性が高まる危険性を有するからである。また、識別情報の大きさは、ルーペ等の簡易拡大器具を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。しかし、識別情報の大きさが50μm未満である場合、顕微鏡等の高精度な拡大器具を使用して識別可能となることから、認証容易性に比較して秘匿性や模倣困難性を重視する場合等、識別情報の大きさの下限は、タガント粒子群またはタガント粒子群を用いる偽造防止媒体等の用途に応じて適宜選択されるものである。
【0041】
(3)印
本発明における印としては、例えば、文字、数字、ロゴ、標章、言語記号等が挙げられる。タガント粒子の用途等によって適宜選択され、所定の意味を表現する印とすることができる。
【0042】
印の大きさとしては、拡大して観察できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることが好ましい。
印が大きすぎる場合、目視で識別可能であることから模倣容易性が高まる危険性を有するからである。また、印の大きさは、ルーペ等の簡易拡大器具を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には50μm以上であることが好ましい。しかし、印の大きさが50μm未満である場合、顕微鏡等の高精度な拡大器具を使用して識別可能となることから、認証容易性に比較して秘匿性や模倣困難性を重視する場合等、印の大きさの下限は、タガント粒子群またはタガント粒子群を用いる偽造防止媒体等の用途に応じて適宜選択されるものである。
【0043】
このような印の形成方法としては、タガント粒子表面の一部に所望の印を形成することができる方法であれば特に限定されない。例えば、タガント粒子作製時に印を形成する方法やタガント粒子作製後に印を形成する方法が挙げられる。タガント粒子作製時に印を形成する方法としては、レーザーによる直描法や階調マスクを用いたフォトリソグラフィー法等によりタガント粒子の形状を形成する際に印を形成する方法等が挙げられ、またタガント粒子作製後に印を形成する方法としては、タガント粒子の一部に印刷法や賦型法により印を形成する方法等を挙げることができる。
【0044】
(4)色彩
本発明の識別情報に用いられる色彩としては、無色であっても良く有色であっても良く、また紫外線等の刺激を受けることで色彩を変化するものでも良く、後述するタガント粒子の材料に応じて適宜選択される。
【0045】
4.タガント粒子
次に、本発明におけるタガント粒子について説明する。本発明に用いられるタガント粒子としては、複数の識別情報を有するものである。
【0046】
本発明のタガント粒子について図面を参照しながら説明する。
図2(a)、(b)は本発明におけるタガント粒子の一例を示す模式図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は図2(a)のA−A線における断面図である。図2(a)、(b)に示すタガント粒子1は、例えば、金属多層膜3の表面に凹部がパターン状に形成されたものであり、識別情報2a(十字型)および識別情報2b(文字A)という複数の識別情報を有している。
例えば、識別情報2a(十字型)を共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内の任意のタガント粒子が、上記識別情報2a(十字型)を有することを確認することにより簡易的に認証を行うことができる。また、識別情報2b(文字A)を非共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内に、タガント粒子1と、所定の識別情報2b(例えば、文字B等)を非共通識別情報として有する別のタガント粒子との組み合わせを確認することにより、高度な認証を行うことが可能となる。
【0047】
また、図3(a)、(b)は本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図であり、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のB−B線における断面図である。図3(a)、(b)に例示するタガント粒子1は、識別情報2(ティーポットの立体形状)および、図示はしないが、識別情報である色彩(白色)という複数の識別情報を有している。
例えば、識別情報2(ティーポットの立体形状)を共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内の任意のタガント粒子が、上記識別情報2(ティーポットの立体形状)を有することを確認することにより簡易的に認証を行うことができる。また、識別情報である色彩(白色)を非共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内に、タガント粒子1と、所定の識別情報である色彩(例えば、青色等)を非共通識別情報として有する別のタガント粒子との組み合わせを確認することにより、高度な認証を行うことが可能となる。
【0048】
図4(a)、(b)は本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図であり、図4(a)は上面図、図4(b)は図4(a)のC−C線における断面図である。図4(a)、(b)に例示するタガント粒子1は、その表面4に立体形状を有しており、識別情報2a(ティーポットの立体形状)および2b(TEAの文字)を有している。
例えば、識別情報2a(ティーポットの立体形状)を共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内の任意のタガント粒子が、上記識別情報2a(ティーポットの立体形状)を有することを確認することにより簡易的に認証を行うことができる。また、識別情報2b(TEAの文字)を非共通識別情報として使用する場合、タガント粒子群内に、タガント粒子1と、所定の識別情報2b(例えば、PODの文字等)を非共通識別情報として有する別のタガント粒子との組み合わせを確認することにより、高度な認証を行うことが可能となる。
【0049】
また、この例において、タガント粒子1の裏面5に略垂直な断面における厚みHTをタガント粒子の厚みとする。タガント粒子の粒径については、タガント粒子表面側からの平面視におけるタガント粒子の粒径を示し、タガント粒子が図4(a)に例示するように、粒径に長径と短径とを有する場合、長径をL1とし、短径をL2とし、長径L1をタガント粒子の粒径とする。
【0050】
また、図6(a)〜(c)は、本発明におけるタガント粒子の他の例を示す模式図であり、図6(a)、(b)は斜視図であり、図6(c)は側面図である。図6(a)〜(c)に示すタガント粒子1A〜1Cはそれぞれ、表面4および裏面5を有し、表面4に識別情報2(D、N、Pの文字の立体形状)を有している。
【0051】
(1)識別情報
タガント粒子の有する識別情報としては、上記「3.識別情報」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0052】
(2)材料
タガント粒子の材料としては、所望のタガント粒子を作製することができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、金属や樹脂材料等が挙げられる。
また、上記樹脂材料としては、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂材料、熱可塑性樹脂材料、感光性樹脂材料が挙げられる。また、金属としては、蒸着法やメッキ法等により成膜できるものであれば特に限定されるものではない。
【0053】
中でも、タガント粒子の材料としては、樹脂材料であることが好ましい。樹脂材料は、後述するような紫外線発光材料、赤外線発光材料、着色材料等の機能性材料を添加し、タガント粒子に形態以外の識別情報を付与することが可能となるからである。そのため、真贋判定が容易になるとともに、その他の識別情報と組み合わせることにより高度な認証を行うことができることから、優れた偽造防止効果を発揮することが可能となる。
【0054】
樹脂材料としては、耐溶剤性を有することが好ましく、中でも、タガント粒子を用いてタガント粒子が透明樹脂中に分散するタガント粒子含有層の形成時に使用される溶媒に対して不溶性を示すことが好ましい。
【0055】
樹脂材料としては、中でも、感光性樹脂材料が好適に用いられる。後述する製造方法として例示するフォトリソグラフィー法を用いることができ、生産性良く製造することができるからである。
感光性樹脂材料としては、ポジ型感光性樹脂材料およびネガ型感光性樹脂材料のいずれも用いることができる。
【0056】
また、本発明におけるタガント粒子は、図5に例示するように、樹脂層6と、樹脂層6上に形成され、タガント粒子1の表面4に形成された金属層7とを有することも好ましい。識別情報を有するタガント粒子の表面に金属層が形成されていることで、光の反射により識別情報を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、本発明のタガント粒子を用いてタガント粒子が透明樹脂中に分散されたタガント粒子含有層を形成する場合には、タガント粒子が樹脂からなる場合、タガント粒子と透明樹脂との屈折率の差が小さいために、タガント粒子と透明樹脂との界面が見えにくくなり、タガント粒子の識別情報を視認するのが困難になることが懸念されるが、タガント粒子の表面に金属層が形成されていることで、識別情報の視認性を高めることが可能となる。
【0057】
タガント粒子の材料として樹脂材料が用いられる場合、機能性材料を含有することが好ましい。タガント粒子に簡便に形態以外の識別情報を付与できるからである。機能性材料としては、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料、磁性材料、顔料や着色材料等が挙げられる。
中でも、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料等が好適に用いられる。簡易器具を用いて識別が可能であり、また発光、光の反射および吸収によって識別が可能であることから、真贋判定が容易となるからである。
以下、各機能性材料について説明する。
【0058】
(i)紫外線発光材料
紫外線発光材料としては、紫外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。紫外線発光材料は、短波長域(約200nm〜300nm)の吸収により発光するもの、および、長波長域(約300nm〜400nm)の吸収により発光するもののいずれも使用することができる。この紫外線発光材料は、紫外線により励起され、これよりも低いエネルギー準位に戻るときに発するスペクトルのピークが青、緑、赤等の波長域にあるものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としては、Ca2B5O9Cl:Eu2+、CaWO4、ZnO:Zn、Zn2SiO4:Mn、Y2O2S:Eu、ZnS:Ag、YVO4:Eu、Y2O3:Eu、Gd2O2S:Tb、La2O2S:Tb、Y3Al5O12:Ce、Sr5(PO4)3Cl:Eu、3(Ba,Mg)O・8Al2O3:Eu、Zn2GeO4:Mn、Y(P,V)O4:Eu、0.5MgF2・3.5MgO・GeO2:Mn、ZnS:Cu、ZnS:Mn等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種類以上で用いてもよい。なお、上記紫外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0059】
タガント粒子中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0060】
(ii)赤外線発光材料
本発明に用いられる赤外線発光材料としては、赤外線の吸収により蛍光発光する材料を用いることができる。赤外線発光材料は、赤外線(約800nm〜1200nm)で励起され、可視光(約400nm〜800nm)を発光するものであり、目的に応じて適宜選択することができる。具体例としてはYF3:Yb+Er、YF3:Yb+Tm、BaFCl:Yb+Er等が挙げられる。なお、上記赤外線発光材料は、その組成を、主成分と付活剤または発光中心とを「:」で繋いで表記している。
【0061】
タガント粒子中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0062】
(iii)赤外線反射材料
赤外線反射材料としては、赤外線に対して波長選択反射性を有する材料を用いることができ、例えば、多層構造材料、赤外線反射顔料、コレステリック構造を有する液晶材料等を挙げることができる。赤外線反射材料が反射する赤外線の波長は特に限定されないが、通常、800nm〜2500nmである。
【0063】
多層構造材料としては、赤外線を反射するような間隔で形成された赤外線反射面を有する層(赤外線反射層)で構成された多層構造材料を挙げることができる。多層構造材料は、各層(赤外線反射層)のBragg反射によって特定波長の赤外線を反射するものである。
具体的には、コレステリック液晶の架橋体のような固定化されたコレステリック構造を有する多層液晶材料を用いて、赤外線反射層を形成することができる。
【0064】
赤外線反射顔料は、赤外線反射材料の粉末や粒子が用いられ、無機系顔料および有機系顔料のいずれも用いることができる。無機系顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO2)、酸化亜鉛、硫化亜鉛、鉛白、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化インジウム錫(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)等の複合金属酸化物、アルミニウム、金、銅等の金属が挙げられる。また、無機系顔料として、特開2004−4840号公報に記載の、天然または合成雲母、別の葉状珪酸塩、ガラス薄片、薄片状二酸化珪素または酸化アルミニウム等の透明支持材料と、金属酸化物の被覆とからなる干渉顔料等も用いることができる。一方、有機系顔料としては、例えば、特開2005−330466号公報および特開2002−249676号公報に記載されている顔料が挙げられ、アゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、イソインドリン系、ジケトピロロピロール系、アゾメチン系およびアゾメチンアゾ系の有機色素を用いることができる。
【0065】
コレステリック構造を有する液晶材料(いわゆるコレステリック液晶材料)としては、ネマチック液晶にカイラル剤を混合したカイラルネマチック液晶材料、または、高分子コレステリック液晶材料を挙げることができる。
【0066】
タガント粒子中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0067】
(iv)赤外線吸収材料
赤外線吸収材料としては、赤外線(800nm〜1100nm)を吸収できる材料であれば特に限定されるものではない。中でも、800nm〜1100nmの波長域を吸収し、かつ可視光域、すなわち380nm〜780nmの波長域では吸収が少なく十分な光線透過率を有する赤外線吸収材料が好ましい。
【0068】
赤外線吸収材料としては、例えば、ポリメチン系化合物、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ジチオール系化合物、インモニウム系化合物、ジイモニウム系化合物、アミニウム系化合物、ピリリウム系化合物、セリリウム系化合物、スクワリリウム系化合物、銅錯体類、ニッケル錯体類、ジチオール系金属錯体類、特開2007−163644号公報に開示されているベンゼンジチオール金属錯体アニオンとシアニン系色素カチオンとの対イオン結合体等の有機系赤外線吸収材料、および特開2006−154516号公報に開示されている複合タングステン酸化物、酸化スズ、酸化インジウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化アンモン、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ランタン、酸化タングステン、酸化インジウム錫(ITO)等の無機系赤外線吸収材料などが挙げられる。赤外線吸収材料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、「系化合物」とは、例えばアントラキノン系化合物の場合、アントラキノン誘導体をいう。
【0069】
また、赤外線吸収材料は、使用する樹脂の種類によって適宜選択することが好ましい。例えば、光硬化性樹脂材料や感光性樹脂材料を用いた場合、赤外線吸収材料としては、複合タングステン酸化物等の無機系近赤外線吸収材料を好適に用いることができる。
【0070】
タガント粒子中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0071】
(v)量子ドット材料
量子ドット(Quantum dot)材料は、半導体のナノメートルサイズのタガント粒子で、電子や励起子がナノメートルサイズの小さな結晶内に閉じ込められる量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)により、特異的な光学的、電気的性質を示し、半導体ナノ粒子(Semiconductor Nanoparticle)とか、半導体ナノ結晶(Semiconductor Nanocrystal)とも呼ばれるものである。
本発明に用いられる量子ドット材料としては、半導体のナノメートルサイズの微粒子であり、量子閉じ込め効果(量子サイズ効果)を生じる材料であれば特に限定されない。例えば、自らの粒径によって発光色が規制される半導体微粒子と、ドーパントを有する半導体微粒子がある。
【0072】
量子ドット材料は、単独の半導体化合物からなるものであっても、2種類以上の半導体化合物からなるものであってもよく、例えば、半導体化合物からなるコアと、このコアと異なる半導体化合物からなるシェルとを有するコアシェル型構造を有していてもよい。その代表例としては、CdSeからなるコアと、その周囲に設けられたZnSシェルと、さらにその周囲に設けられた保護材料(キャッピング材料と呼ばれることもある)とで構成されたものを例示できる。この量子ドット材料は、その粒径により発光色を異にするものであり、例えば、CdSeからなるコアのみから構成される量子ドットの場合、粒径が2.3nm、3.0nm、3.8nm、4.6nmのときの蛍光スペクトルのピーク波長は、528nm、570nm、592nm、637nmである。
【0073】
量子ドット材料のコアとなる材料として、具体的には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe及びHgTeのようなII−VI族半導体化合物、AlN、AlP、AlAs、AlSb、GaAs、GaP、GaN、GaSb、InN、InAs、InP、InSb、TiN、TiP、TiAs及びTiSbのようなIII−V族半導体化合物、Si、Ge及びPbのようなIV族半導体、等の半導体化合物又は半導体を含有する半導体結晶を例示できる。また、InGaPのような3元素以上を含んだ半導体化合物を含む半導体結晶を用いることもできる。
【0074】
さらに、ドーパントを有する半導体微粒子からなる量子ドット材料としては、上記半導体化合物に、Eu3+、Tb3+、Ag+、Cu+のような希土類金属のカチオンまたは遷移金属のカチオンをドープしてなる半導体結晶を用いることもできる。
【0075】
中でも、作製の容易性、可視域での発光を得られる粒径の制御性、蛍光量子収率の観点から、CdS、CdSe、CdTe、InP、InGaP等の半導体結晶が好適である。
【0076】
コアシェル型の量子ドット材料を用いる場合にシェルを構成する半導体としては、励起子がコアに閉じ込められるように、コアを形成する半導体化合物よりもバンドギャップの高い材料を用いることで、量子ドット材料の発光効率を高めることが出来る。
このようなバンドギャップの大小関係を有するコアシェル構造(コア/シェル)としては、例えば、CdSe/ZnS、CdSe/ZnSe、CdSe/CdS、CdTe/CdS、InP/ZnS、Gap/ZnS、Si/ZnS、InN/GaN、InP/CdSSe、InP/ZnSeTe、InGaP/ZnSe、InGaP/ZnS、Si/AlP、InP/ZnSTe、InGaP/ZnSTe、InGaP/ZnSSe等が挙げられる。
【0077】
量子ドットのサイズは、所望の波長の光が得られるように、量子ドットを構成する材料によって適宜制御すればよい。量子ドットは粒径が小さくなるに従い、エネルギーバンドギャップが大きくなる。すなわち、結晶サイズが小さくなるにつれて、量子ドットの発光は青色側へ、つまり、高エネルギー側へとシフトする。そのため、量子ドットのサイズを変化させることにより、紫外領域、可視領域、赤外領域のスペクトルの波長全域にわたって、その発光波長を調節することができる。
【0078】
一般的には、量子ドットの粒径(直径)は0.5nm〜20nmの範囲内であることが好ましく、特に1nm〜10nmの範囲内であることが好ましい。なお、量子ドットのサイズ分布が狭いほど、より鮮明な発光色を得ることができる。
【0079】
また、量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状、棒状、円盤状、その他の形状であってもよい。量子ドットの粒径は、粒子ドットが球状でない場合、同体積を有する真球状の値とすることができる。
【0080】
量子ドットの粒径、形状、分散状態等の情報については、透過型電子顕微鏡(TEM)により得ることができる。また、量子ドットの結晶構造、粒径については、X線結晶回折(XRD)により知ることができる。さらには、紫外−可視(UV−Vis)吸収スペクトルによって、量子ドットの粒径、表面に関する情報を得ることもできる。
【0081】
タガント粒子中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0082】
(vi)磁性材料
磁性材料としては、核磁気共鳴(NMR)、核四極子共鳴(NQR)、電子スピン共鳴(ESR)、強磁性共鳴、反強磁性共鳴、フェリ磁性共鳴、磁壁共鳴、スピン波共鳴、スピンエコー共鳴等の磁気共鳴を示すものを用いることができる。
【0083】
共鳴周波数は、核固有のパラメーターである磁気回転比γおよび外部磁場の磁場強度により決まるものであることから、磁性材料が磁気共鳴を示す共鳴周波数を選択することにより、本発明のタガント粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。
例えば、磁性材料を含有するタガント粒子と、磁性材料を含有しないタガント粒子とに、磁性材料が核磁気共鳴を示す周波数の電磁波を照射すると、磁性材料を含有するタガント粒子では共鳴吸収が起こり、磁性材料を含有しないタガント粒子では共鳴吸収が起こらないため、この共鳴吸収を観測することによりタガント粒子の存在を認識することができ、真贋判定を行うことが可能となる。また、得られるNMRスペクトルでは、物質の構造やエネルギー状態等によりシグナルの位置、強度、半値幅、形状等が異なるため、使用する磁性材料の種類により識別することも可能である。
【0084】
磁性材料は、磁性材料の粉末や粒子が用いられる。磁性材料としては、特開2005−309418号公報に記載の磁気共鳴を示す微粒子を例示することができる。
【0085】
タガント粒子中の磁性材料の含有量は、磁気共鳴による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、5質量%〜20質量%の範囲内がより好ましい。磁性材料の含有量が上記範囲内より少ない場合、識別が困難となる可能性があり、上記範囲内より多い場合、タガント粒子表面へ立体形状を形成することが困難となる可能性があるからである。
【0086】
(vii)着色材料
本発明に用いられる着色材料としては、顔料、染料を挙げることができる。
着色材料は、タガント粒子に含有させることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的な顔料、染料を用いることができる。
【0087】
タガント粒子中の着色材料の含有量としては、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0088】
(3)製造方法
タガント粒子の製造方法としては、所望のタガント粒子を作製できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なタガント粒子の製造方法を用いることができる。一般的な製造方法としては、例えば、基材上に溶媒溶解性の犠牲層を塗布した後、タガント材料として感光性樹脂材料を塗布し、フォトリソグラフィー法により露光現像処理を行い上記犠牲層上に所望のタガント粒子のパターン形状のみが存在するようにする。その後、上記犠牲層を溶解させることによってタガント粒子を分離、回収する方法等が挙げられる。
【0089】
(4)タガント粒子
本発明のタガント粒子の粒径は、拡大することで観察可能であれば特に限定されるものではないが、中でも、ルーペ等の簡易拡大器具を用いて観察可能であることが好ましく、具体的には300μm以下であることが好ましく、50μm〜250μmの範囲内であることがより好ましい。
タガント粒子の粒径が大きい場合、目視で観察可能となり、偽造防止媒体に用いた際にタガント粒子の位置が容易に特定されてしまうため、偽造防止効果が低下するおそれがあるからである。また、タガント粒子の粒径が小さい場合、所望の識別情報を有することが困難となる可能性、簡易拡大器具での観察が難しく、より高精度な拡大器具を用いることが必要となり、真贋判定が複雑化する可能性が生じるからである。
【0090】
なお、粒径とは、一般に粒子の粒度を示すために用いられるものであり、本発明においては、タガント粒子表面側からの平面視におけるタガント粒子の粒径である。例えば図4(a)に示すように、タガント粒子の粒径が長径と短径とを有する場合、長径をL1とし、短径をL2とし、長径L1をタガント粒子の粒径Lとする。
【0091】
また、本発明におけるタガント粒子の粒径は、レーザー法により測定した値である。レーザー法とは、粒子を溶媒中に分散し、その分散溶媒にレーザー光線を当てて得られた散乱光を細くし、演算することにより、平均粒径、粒度分布等を測定する方法である。上記粒径は、レーザー法による粒径測定機として、リーズ&ノースラップ(Leeds & Northrup)社製 粒度分析計 マイクロトラックUPA Model-9230を使用して測定した値である。
【0092】
本発明におけるタガント粒子表面が立体形状を有する場合、タガント粒子の厚みとしては、タガント粒子の表面に所望の識別情報を有することが可能な厚みであれば特に限定されるものではないが、中でも、0.1μm〜500μmの範囲内であることが好ましく、1μm〜100μmの範囲内であることがより好ましい。
タガント粒子の厚みが上記範囲であれば、光の反射により形態に関する識別情報を視認しやすく、容易に識別可能となる。一方、タガント粒子の厚みが厚い場合、タガント粒子の製造が困難となる場合があり、タガント粒子の厚みが薄い場合、タガント粒子の表面に所望の識別情報を有することが困難となる場合がある。
なお、上記のタガント粒子の厚みは、タガント粒子の裏面に略垂直な断面におけるタガント粒子の厚みをいう。例えば図4(b)に示すようなタガント粒子の厚みHTをいう。
ここで、上記「略垂直な断面」とは、略垂直な断面とタガント粒子の裏面とのなす角度が90°±10°の範囲内にあるものを示す。
【0093】
また本発明においては、タガント粒子の粒径(L)およびタガント粒子の厚み(HT)が、HT/L≧1/100を満たすことが好ましく、中でも、HT/L≧1/30、特にHT/L≧1/20、さらにHT/L≧1/10を満たすことがより好ましい。
タガント粒子の粒径に対するタガント粒子の厚みの比が上記範囲であれば、光の反射により形態に関する識別情報を視認しやすく、容易に識別可能となるからである。一方、上記範囲内より比が大きい場合、タガント粒子の製造が困難となる場合があり、上記範囲内より比が小さい場合、所望の識別情報を有することが困難となる場合がある。
タガント粒子の粒径(L)および厚み(HT)は、破壊式または非破壊式の検査手法にて測定することができる。
【0094】
5.タガント粒子群
本発明のタガント粒子群の用途としては、その優れた偽造防止効果から、例えば、紙幣、株券、クレジットカード、IDカード、パスポート、高価格品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等に用いることができる。
【0095】
B.偽造防止用インク
本発明の偽造防止用インクは、上述したタガント粒子群を有することを特徴とするものである。
本発明によれば、上述したタガント粒子群を有することから、本発明の偽造防止用インクを使用することにより、優れた偽造防止効果を発揮する偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用インクを用いて偽造防止媒体を形成する際に、支持体上に偽造防止用インクを塗布することにより、支持体上に容易にタガント粒子を分散、固定することが可能となる。そのため、偽造防止媒体の支持体として用いることができる材料の選択可能性を大きくすることができる。
以下、本発明の偽造防止用インクの各構成について説明する。
【0096】
1.タガント粒子群
本発明に用いられるタガント粒子群としては、上記「A.タガント粒子群」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0097】
偽造防止用インク中のタガント粒子群の含有量としては、本発明の偽造防止用インクを偽造防止媒体に用いた場合に、タガント粒子群による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、0.01質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0098】
2.透明樹脂成分
本発明の偽造防止用インクは、通常、透明樹脂成分中にタガント粒子が分散されたものである。
【0099】
本発明に用いられる透明樹脂成分の光透過性としては、本発明の偽造防止用インクを用いてタガント粒子が透明樹脂中に分散されたタガント粒子含有層を形成した際に、タガント粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂成分を所定の厚みで成膜したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0100】
透明樹脂成分としては、上述した光透過性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分、熱可塑性樹脂成分のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂成分、熱硬化性樹脂成分等の硬化性樹脂成分が好ましく、特に光硬化性樹脂成分が好ましい。光硬化性樹脂成分を用いることにより、耐熱性の低い支持体にも本発明の偽造防止用インクを適用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、本発明の偽造防止用インクを用いてタガント粒子が透明樹脂中に分散されたタガント粒子含有層を形成する場合には、生産効率を向上させることができるからである。
【0101】
3.機能性材料
本発明の偽造防止用インクは、上述したタガント粒子群および透明樹脂成分の他に、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料を含有していてもよい。
【0102】
例えば、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、タガント粒子群内に紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有するタガント粒子が存在しない場合には、発光の有無により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
また、偽造防止用インクが紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有する場合であって、タガント粒子群内に紫外線発光材料または赤外線発光材料を含有するタガント粒子が存在する場合には、発光の波長により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0103】
偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、タガント粒子群内に赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有するタガント粒子が存在しない場合には、赤外線の吸収または反射の有無により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
また、偽造防止用インクが赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有する場合であって、タガント粒子群内に赤外線反射材料または赤外線吸収材料を含有するタガント粒子が存在する場合には、吸収または反射する赤外線の波長により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0104】
偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、タガント粒子群内に、量子ドット材料を含有するタガント粒子が存在しない場合には、発光の有無により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
また、偽造防止用インクが量子ドット材料を含有する場合であって、タガント粒子群内のタガント粒子も量子ドット材料を含有する場合には、発光の波長により、タガント粒子の位置を特定することができ、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることが可能となる。
【0105】
なお、機能性材料については、上記「A.タガント粒子群」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0106】
偽造防止用インク中の紫外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0107】
偽造防止用インク中の赤外線発光材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0108】
偽造防止用インク中の赤外線反射材料の含有量としては、赤外線の反射による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0109】
偽造防止用インク中の赤外線吸収材料の含有量は、赤外線の吸収による識別が可能であれば特に限定されるものではないが、0.1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。赤外線吸収材料の含有量が上記範囲内であれば、十分な赤外線吸収機能を発現できるとともに、十分な量の可視光線を透過できるからである。
【0110】
偽造防止用インク中の量子ドット材料の含有量としては、発光による識別が可能であれば特に限定されるものではなく、0.1質量%〜50質量%程度とすることができる。
【0111】
4.溶媒
本発明の偽造防止用インクは、溶媒を含有していてもよい。溶媒としては、上記のタガント粒子および透明樹脂成分が分散するものであれば特に限定されるものではなく、偽造防止用インクの塗布方法に応じて適宜選択される。また、溶媒は単独で用いてもよく2種類以上を混合して用いてもよい。
例えば、グラビア印刷用インキとして用いる場合、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール等が挙げられる。オフセット印刷用インキやシルクスクリーン印刷用インキとして用いる場合は、高沸点の石油系溶剤(C15以上の炭化水素類)が挙げられる。
【0112】
本発明の偽造防止用インクの固形分濃度は、偽造防止用インクを偽造防止媒体に適用可能であれば特に限定されるものではなく、20質量%〜85質量%程度とすることができる。
【0113】
C.偽造防止用トナー
本発明の偽造防止用トナーは、上述したタガント粒子群を含有することを特徴とするものである。
本発明においては、上述したタガント粒子群を含有するので、本発明の偽造防止用トナーを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、本発明の偽造防止用トナーを偽造防止媒体に適用する際には、支持体上に本発明の偽造防止用トナーを転写することにより、支持体上にタガント粒子を容易に固定することができるので、種々の支持体に使用することが可能であり、支持体の形状等の選択の幅が広いという利点を有する。
【0114】
本発明の偽造防止用トナーは、上記タガント粒子群を含有するものであればよく、乾式トナーおよび湿式トナーのいずれであってもよく、その組成としては一般的な組成とすることができる。本発明の偽造防止用トナーは、例えば、主樹脂、副樹脂、着色剤、荷電制御剤、流動性制御剤等を含有することができる。
主樹脂としては、光透過性を有し、上記のタガント粒子群が分散するものであれば特に限定されるものではない。主樹脂の光透過性としては、上述した偽造防止用インクにおける透明樹脂成分の光透過性と同様とすることができる。主樹脂としては、スチレン−アクリル系、ポリエステル系が主として使用される。副樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、WAX系が使用される。主樹脂や副樹脂は1種単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
着色剤としては、カーボン、シアン顔料、マゼンタ顔料、イエロー顔料等が使用される。荷電制御剤としては、プラス系、マイナス系があり、金属を含有したものや、樹脂系、四級アンモニウム塩等が挙げられる。また、流動制御剤としては、シリカ等が使用される。
【0115】
なお、タガント粒子群については、上述した偽造防止用インクにおけるタガント粒子群と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0116】
本発明の偽造防止用トナーは、紫外線発光材料、赤外線発光材料、赤外線反射材料、赤外線吸収材料、量子ドット材料等の機能性材料をさらに含有していてもよい。機能性材料としては、上述した偽造防止用インクにおける機能性材料と同様とすることができる。
【0117】
D.偽造防止用シート
本発明の偽造防止用シートは、上述したタガント粒子群を有することを特徴とするものである。
また、本発明の偽造防止用シートとしては、タガント粒子群を有するものであれば特に限定されるものではなく、タガント粒子群を含有するタガント粒子含有層を有するもの(第1態様)であっても良く、また、シート上にタガント粒子状の形状が形成されているもの(第2態様)であっても良い。
以下、各態様について説明する。
【0118】
1.第1態様
本態様における偽造防止用シートは、タガント粒子群を含有するタガント粒子含有層を有するものである。
【0119】
本態様の偽造防止用シートについて図面を参照しながら説明する。
図7は本態様の偽造防止用シートの一例を示す概略断面図である。図7に示す偽造防止用シート10は、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12からなるものである。
【0120】
本態様においては、上述したタガント粒子を含有するタガント粒子含有層を有することから、本態様の偽造防止用シートを用いることにより、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を得ることが可能である。また、タガント粒子を偽造防止媒体に適用する際に、タガント粒子を含有するインクを支持体上に塗布する場合には、インクの塗布量が少ないと支持体上にタガント粒子が存在していない可能性があり、偽造防止効果が得られないおそれがあるが、本態様においては、偽造防止用シートにおけるタガント粒子の個数が予め分かった状態で、偽造防止媒体に適用することができるので、確実に偽造防止効果を達成することができる。さらに本態様においては、偽造防止用シートにおけるタガント粒子の位置についてマッピングを行うことが可能であり、高度な偽造防止を実現することが可能である。また、本態様の偽造防止用シートは容易に貼付することができるという利点も有する。さらには、本態様の偽造防止用シートは他のシートとの積層も容易であり、付加価値を高めることができる。
【0121】
図8は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図8に示す偽造防止用シート10においては、剥離層13と、粘着層14と、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12とが順に積層されている。
【0122】
図9は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図9に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12とを有し、タガント粒子含有層12側に粘着層14および剥離層13が順に積層されている。
【0123】
図10は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図10に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12と、タガント粒子含有層12上に形成されたハードコート層16とを有し、基材15側に粘着層14および剥離層13が順に積層されている。
【0124】
図11は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図11に示す偽造防止用シート10においては、剥離層13と、粘着層14と、ホログラム層17と、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12とが順に積層されている。
【0125】
図12は本態様の偽造防止用シートの他の例を示す概略断面図である。図12に示す偽造防止用シート10は、基材15と、基材15上に形成され、透明樹脂11中に所定のタガント粒子1が分散されたタガント粒子含有層12と、タガント粒子含有層12上に形成されたハードコート層16とを有し、基材15側にホログラム層17と粘着層14と剥離層13とが順に積層されている。
【0126】
このように、本態様の偽造防止用シートは、タガント粒子含有層以外に他の構成を有していてもよい。
以下、本態様の偽造防止用シートにおける各構成について説明する。
【0127】
(1)タガント粒子含有層
本態様におけるタガント粒子含有層は、上述したタガント粒子群が透明樹脂中に分散されたものである。
なお、タガント粒子群については、上記「A.タガント粒子群」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0128】
本態様に用いられる透明樹脂の光透過性としては、タガント粒子含有層中のタガント粒子が観察可能であれば特に限定されないが、透明樹脂からなる層をタガント粒子含有層と同じ厚みで形成したときに、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
なお、上記全光線透過率は、JIS K 7105に準拠して測定した値である。
【0129】
透明樹脂としては、上記光透過性を満たすものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれも用いることができる。中でも、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂好ましく、特に光硬化性樹脂が好ましい。例えば図9、図10および図12に示すように、基材15上にタガント粒子含有層12が形成されている場合には、光硬化性樹脂を用いることにより、耐熱性の低い基材も使用することが可能となり、用途の選択肢が広がるからである。また、偽造防止用シートの生産効率を向上させることができるからである。
透明樹脂は、上記「B.偽造防止用インク」の項に記載した透明樹脂成分を固化させたものとすることができる。
【0130】
タガント粒子含有層中のタガント粒子群の含有量としては、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、タガント粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではないが、タガント粒子含有層1cm2当たりに少なくとも1個以上のタガント粒子が含有されていることが好ましい。
【0131】
また、タガント粒子含有層が基材上に形成されている場合には、タガント粒子含有層は基材上に一面に形成されていてもよくパターン状に形成されていてもよい。タガント粒子含有層のパターン形状が所定の意味を表す形状である場合には、タガント粒子を高次認証情報として利用することにより、偽造防止効果を高めることができる。
【0132】
タガント粒子含有層の膜厚としては、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に用いた場合に、タガント粒子による真贋判定が可能であれば特に限定されるものではなく、本態様の偽造防止用シートの層構成やタガント粒子含有層に含まれる透明樹脂の種類等に応じて適宜選択される。例えば図9、図10および図12に示すように、基材15上にタガント粒子含有層12が形成されている場合には、タガント粒子含有層12の膜厚は比較的薄くともよい。一方、図7に例示するように、タガント粒子含有層12が単独で形成されている場合には、自己支持性の観点から、タガント粒子含有層の膜厚は比較的厚いことが好ましい。また、タガント粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、割れを抑制する観点から、タガント粒子含有層の膜厚は比較的薄いことが好ましい。
具体的に、タガント粒子含有層の膜厚は、0.1μm〜500μm程度とすることができ、1μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0133】
タガント粒子含有層の形成方法としては、例えば、上述した偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法が挙げられる。例えば図9、図10および図12に示すように、基材15上にタガント粒子含有層12が形成されている場合には、基材15上に偽造防止用インクを塗布し、固化させることで、タガント粒子含有層12を形成することができる。
また、図7に例示するように、タガント粒子含有層12が単独で形成されている場合には、基板上に偽造防止用インクを塗布し、固化させた後、基板からタガント粒子含有層12を剥離することで、タガント粒子含有層12を単独で得ることができる。この際に用いられる基板としては、光透過性を有していても有さなくてもよく、例えば、ガラス基板、樹脂基板等を用いることができる。
【0134】
偽造防止用インクの塗布方法としては、任意の方法を用いることができる。
また、偽造防止用インクの固化方法としては、透明樹脂の種類に応じて適宜選択される。硬化性樹脂の場合には、光や熱による硬化方法が用いられる。熱可塑性樹脂の場合には、冷却する方法が用いられる。
【0135】
(2)基材
本態様においては、図9、図10および図12に例示するように、タガント粒子含有層12が基材15上に形成されていてもよい。本態様の偽造防止用シートの強度を高めることができ、また容易に取り扱うことができるからである。中でも、タガント粒子含有層に含まれる透明樹脂が硬化性樹脂である場合には、タガント粒子含有層の割れを抑制する観点から、タガント粒子含有層は比較的薄いことが好ましいので、透明基材上にタガント粒子含有層が形成されていることが好ましい。また、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図9に例示するように、透明基材15がタガント粒子含有層12よりも表面側となるように配置されている場合には、透明基材によりタガント粒子含有層を保護することもできる。図10に例示する層構成の場合には、不透明基材を使用することもできる。
【0136】
本発明に用いられる基材は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよく、基材の形成位置により適宜選択される。本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図9に例示するように、基材15がタガント粒子含有層12よりも表面側となるように配置されている場合や、図12に例示するように、基材15がホログラム層17よりも表面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有することが好ましい。
一方、本発明の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図10に例示するように、基材15がタガント粒子含有層12よりも裏面側となるように配置されている場合には、基材は光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。
【0137】
本態様に用いられる基材が光透過性を有する場合、その光透過性としては、タガント粒子含有層中のタガント粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましい。
【0138】
また、基材は、フレキシブル性を有することが好ましい。本態様の偽造防止用シートを種々の形状の偽造防止媒体に適用することが可能となるからである。
【0139】
このような基材としては、一般的な樹脂基材を用いることができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリメタクリル酸メチル、ポリイミド、ポリアミド等の樹脂基材を挙げることができる。
【0140】
また、基材の表面は、タガント粒子含有層との密着性を向上させるために、易接着処理が施されていることが好ましい。易接着処理としては、タガント粒子含有層および基材を接着させることができれば特に限定されるものではなく、例えば、プラズマ処理、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理等の物理的処理、あるいは、クロム酸、シランカップリング剤、プライマー剤等を使用した化学的処理を挙げることができる。
中でも、プライマー剤を用いた化学的処理であることが好ましい。プライマー剤は、透明基材製造時に処理されるものと、製造後の透明基材表面に処理されるものと、いずれの場合も好適である。プライマー剤で処理した透明基材としては、市販されているものを用いることができる。また、製造後の透明基材表面を処理するプライマー剤としては、上記偽造防止用インクと密着するものであればよい。
【0141】
基材の厚みは、本態様の偽造防止用シートの用途や種類等に応じて適宜選択されるものであるが、1μm〜800μm程度とすることができ、好ましくは10μm〜50μmの範囲内である。
【0142】
(3)粘着層
本態様においては、図8〜図12に例示するように、タガント粒子含有層12上に粘着層14が積層されていてもよい。粘着層を介して、本態様の偽造防止用シートを貼付することができるからである。
【0143】
粘着層は、基材上にタガント粒子含有層が形成されている場合、基材側に積層されていてもよく、タガント粒子含有層側に積層されていてもよい。タガント粒子含有層上に後述するハードコート層が形成されている場合には、ハードコート層とは反対側の面に粘着層が配置される。また、タガント粒子含有層とホログラム層とが積層されている場合には、ホログラム層側に粘着層が配置される。
【0144】
粘着層の材料としては、粘着層を介して本態様の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば、熱可塑系、熱硬化系、光硬化系、エラストマー系のいずれも用いることができ、偽造防止用シートの用途や種類に応じて適宜選択される。偽造防止用シートを転写箔として使用する場合には、ヒートシール性を有する粘着層が用いられる。
【0145】
粘着層の膜厚は、粘着層を介して本態様の偽造防止用シートを貼付することができれば特に限定されるものではなく、例えば、1μm〜100μm程度とすることができる。
粘着層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0146】
(4)剥離層
本態様においては、図8〜図12に例示するように、タガント粒子含有層12上に粘着層14と剥離層13とが順に積層されていてもよい。粘着層および剥離層が積層されていることにより、本態様の偽造防止用シートの取り扱いが容易になるからである。
本態様の偽造防止用シートは、偽造防止媒体に適用される際には、剥離層を剥がして用いられる。
【0147】
剥離層としては、剥離性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、一般的な樹脂基材を用いることができる。
【0148】
(5)ハードコート層
本態様においては、図10および図12に例示するように、タガント粒子含有層12上にハードコート層16が形成されていてもよい。ハードコート層によりタガント粒子含有層を保護することができるからである。
ハードコート層は、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図10および図12に例示するように、ハードコート層16がタガント粒子含有層12よりも表面側となるように配置される。
【0149】
ハードコート層は光透過性を有する。ハードコート層の光透過性としては、タガント粒子含有層中のタガント粒子が観察可能であれば特に限定されないが、可視領域における全光線透過率が10%以上であることが好ましく、中でも、50%以上であることが好ましく、特に80%以上であることが好ましい。
【0150】
ハードコート層の材料としては、上記光透過性を満たし、タガント粒子含有層を保護することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、光硬化性樹脂を用いることができる。
【0151】
ハードコート層の膜厚は、タガント粒子含有層を保護することができれば特に限定されるものではなく、例えば、1μm〜100μm程度とすることができる。
ハードコート層の形成方法は、公知の方法を用いることができる。
【0152】
(6)ホログラム層
本態様においては、図11および図12に例示するように、タガント粒子含有層12上にホログラム層17が積層されていてもよい。ホログラム層により偽造防止効果を高めることができるからである。
【0153】
ホログラム層の種類としては特に限定されるものではなく、レリーフ型ホログラム層であってもよく、体積型ホログラム層であってもよい。レリーフ型ホログラム層は生産性に優れており、一方で体積型ホログラム層は偽造防止効果に優れている。
ホログラム層としては公知のものを使用することができる。
【0154】
ホログラム層は、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用した際に、図11および図12に例示するように、ホログラム層17がタガント粒子含有層12よりも裏面側になるように配置される。これにより、タガント粒子含有層をホログラム層の保護層として利用することができる。
【0155】
(7)偽造防止用シート
本態様の偽造防止用シートは、枚葉状に形成されていても良く、長尺状に形成されていても良い。
【0156】
また、本態様の偽造防止用シートの形状としては、特に限定されるものではなく、三角形形状、四角形形状、円形形状等の任意の形状とすることができる。また、本態様の偽造防止用シートの形状が所定の意味を表す形状である場合には、タガント粒子を高次認証情報として利用することができるため、偽造防止効果に優れた偽造防止用シートとすることができる。
【0157】
本態様の偽造防止用シートの検査方法としては、図13に例示するように、偽造防止用シート10にLED照明41で光を照射し、カメラ(ラインセンサ)42により画像を取得する方法を挙げることができる。図13においては、偽造防止用シート10に対してカメラ42と反対側にLED照明41を配置して、透過光を観察しているが、図示はしないが、偽造防止用シートに対してカメラと同じ側にLED照明を配置して、反射光を観察してもよい。
偽造防止用シートの検査装置では、タガント粒子の位置をマッピングし、データベースに保存し、照合が可能である。
検査において、タガント粒子含有層にタガント粒子が含有されていない領域があった場合には、レーザーマーキング装置を使用し、タガント粒子が含有されていない領域にマーキングを行い、偽造防止用シートを所定の形状とする際に排除してもよい。
【0158】
本態様の偽造防止用シートは、そのままラベルとして使用したり、転写箔として使用したりすることが可能である。また、偽造防止用シートがホログラム層を有する場合には、ホログラムラベルやホログラム転写箔として使用することもできる。さらに、偽造防止用シートは、偽造防止媒体へのラミネートフィルムとして使用することもできる。
偽造防止用シート自体は光透過性を有するものとすることができるので、様々な偽造防止媒体に適用することができる。
【0159】
また、本態様の偽造防止用シートを偽造防止媒体に適用する際には、偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着してもよく、偽造防止媒体が複数層から構成される場合には、偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートを埋め込んでもよく、偽造防止媒体が紙で構成される場合には、偽造防止用シートを細長く切断し、紙に抄き込んでもよい。偽造防止媒体の表面に偽造防止用シートを固着する場合には、偽造防止用シートをそのまま貼付してもよく、転写箔加工を行って転写してもよい。転写方法としては、熱転写法が挙げられる。
なお、偽造防止媒体については、後述する「E.偽造防止媒体」の項に記載するので、ここでの説明は省略する。
【0160】
2.第2態様
本態様における偽造防止用シートは、シート上にタガント粒子状の形状(以降、識別形状とする)を有するものである。
本態様によれば、一定の面積を有するシート上に形成される識別形状の数および位置を予め規定することが可能である。そのため、識別情報をより高度に制御することが可能な偽造防止用シートとすることができ、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を作製することが可能となる。
また、第1態様では、タガント粒子含有層を形成する透明樹脂内にタガント粒子群を混合することから、含有されるタガント粒子の位置や方向等の制御が難しく、タガント粒子の識別情報の識別が困難となる可能性を有していたが、本態様によれば、識別形状の配列を制御することが可能であることから、識別情報をより高度に制御することができる。
【0161】
本態様の偽造防止用シートについて図を用いて説明する。図14(a)、(b)は、本態様の偽造防止用シートの一例を示す概略図であり、図14(a)は斜視図であり、図14(b)は、図14(a)のD−D線断面図である。図14に例示するように、本態様の偽造防止用シート10は、基底部21と、基底部21の表面にタガント粒子状の形状である識別形状22aが複数形成された識別部22を有する。
【0162】
本態様によれば、識別部内に形成される識別形状が、上述したタガント粒子群と同様に共通識別情報および非共通識別情報を有することから、本態様の偽造防止用シートは、高度な真贋判定が可能であり、偽造防止効果に優れた偽造防止媒体を作製することができる。
【0163】
(1)識別部
本態様における識別部について説明する。本態様の識別部は、識別部における各々の識別形状が共通識別情報と非共通識別情報とを有するものである。
【0164】
(識別形状)
本態様における識別形状としては、共通識別情報と非共通識別情報とを有することができる形状であれば特に限定されるものではないが、上述したタガント粒子の形状と同様の形状とすることができる。なお、タガント粒子の形状については、上記「A.タガント粒子群」に記載したため、ここでの説明は省略する。
【0165】
識別部が有する識別形状の個数としては、2個以上であれば特に限定されるものではなく、偽造防止用シートが応用される偽造防止媒体の用途により適宜選択されるものであるが、中でも10個〜1,000,000,000個の範囲内であることが好ましく、特に100個〜1,000,000個の範囲内であることがより好ましい。
識別部に形成される識別形状の個数が上記範囲に満たない場合、識別形状の位置の特定や、識別形状が有する識別情報自体の認識を行うことが困難となる可能性がある。なお、識別形状の個数については、本態様の偽造防止用シートの用途により適宜選択することができる。
【0166】
識別部における識別形状の配置としては、識別部に表示される識別情報を認識可能な配置であれば特に限定されるものではなく、規則性を有するように配置されていても良く、ランダムに配置されていても良い。
【0167】
(共通識別情報)
本態様における共通識別情報としては、識別形状のすべてに共通して有することが可能な識別情報であれば特に限定されるものではなく、例えば、形状、大きさ、マーカー、色彩等が挙げられる。なお、各識別情報については、上記「A.タガント粒子群」の項で記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0168】
(非共通識別情報)
本態様における非共通識別情報としては、上記共通識別情報と異なる識別情報であれば特に限定されるものではないが、簡易器具を用いて識別可能であることが好ましい。なお、非共通識別情報は、上記「A.タガント粒子群」の項で記載したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0169】
(その他)
本態様における識別部としては、識別部の各識別形状が有する識別情報を簡易器具で拡大することによって観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、偽造防止用シートの一部の表面上に形成されているものであっても良く、偽造防止用シートの全面に形成されているものであっても良い。また、偽造防止用シート上に1つの識別部が形成されているものであっても良く、複数の識別部が形成されているものであっても良い。
【0170】
また、本態様における識別部全体の大きさとしては、識別部の各識別形状が有する識別情報を拡大して観察することができるものであれば特に限定されるものではなく、本態様の偽造防止用シートの用途に応じて適宜選択することが可能である。よって、識別部全体を目視で確認することができる程度の大きさであっても良く、識別部全体についても拡大することによって観察することができる程度の大きさであっても良い。
【0171】
(2)基底部
本態様における基底部は、その表面に上述した識別部を有するものである。
【0172】
本態様における基底部の厚みとしては、基底部の表面に上述した識別部を形成することができ、また、本態様の偽造防止用シートを所望の偽造防止媒体に用いることができる程度の厚みであれば特に限定されるものではないが、具体的には、1μm〜800μmの範囲内であることが好ましく、中でも10μm〜50μmの範囲内であることがより好ましい。
基底部の厚みが上記範囲より厚い場合、偽造防止用シートが厚膜となるため、偽造防止用シートの加工が困難となる可能性や、応用する偽造防止媒体の規格に沿わない可能性等を有している。また一方、上記範囲より薄い場合、複数の識別形状を有する識別部を形成することが困難となる可能性や、充分な自己支持性を保持することが困難となる可能性を有する。
なお、本態様における基底部の厚みとしては、図14(b)に例示するように、偽造防止用シート10の識別部22が形成されていない部分の厚みHsを示すものである。
【0173】
(3)その他
本態様の偽造防止用シートの材料としては、所望の偽造防止用シートを作製することができるものであれば特に限定されるものではなく、第1態様の透明樹脂に用いた材料と同様のものを使用することができる。透明樹脂材料としては、上記「1.第1態様」の項に記載したため、ここでの説明は省略する。
また、本態様の偽造防止用シート材料としては、第1態様と同様に機能性材料を有していても良い。機能性材料については、上記「A.タガント粒子群」の項で記載したものと同様のものを使用することができるため、ここでの説明は省略する。
【0174】
本発明の偽造防止用シートの形状、色彩、光透過性等については、第1態様と同様とすることができるため、ここでの説明は省略する。
【0175】
本態様の偽造防止用シートは、上述した識別部と基底部とを有するものであれば特に限定されるものではなく、他に必要な構成があれば適宜選択して用いることができる。
【0176】
(金属層)
本発明の偽造防止用シートは、偽造防止用シートの識別部側の面に金属層が形成されていることが好ましい。識別部側の表面に金属層が形成されていることにより、光の反射により形態に関する識別情報を視認しやすく、真贋判定が容易になるとともに、偽造防止効果を向上させることができるからである。特に、ハードコート層を形成する場合、ハードコート層も樹脂を用いて形成されるものであることから、偽造防止用シートおよびハードコート層の屈折率の差が小さいために、偽造防止用シートとハードコート層との界面が見えにくくなり、各々が有する形態に関する識別情報を視認するのが困難になることが懸念されるが、識別部側表面に金属層が形成されていることで、形態に関する識別情報の視認性を高めることが可能となる。
【0177】
金属層の厚みとしては、識別部における各々識別形状が有する形態に関する識別情報の視認性を向上させることができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば、1nm〜250nm程度とすることができ、10nm〜100nmの範囲内であることが好ましい。
金属層の厚みが上記範囲より厚い場合、識別情報が損なわれてしまうおそれがあり、金属層が薄すぎると、金属層の形成が困難であったり、形態に関する識別情報の視認性を高める効果が十分に得られなかったりする可能性があるからである。
【0178】
このような金属層としては、金属および金属酸化物、金属硫化物等の金属化合物が用いられ、例えば、Al、ZnS、TiO2,Cu,Au,Pt等が挙げられる。
【0179】
また、金属層の形成方法としては、識別情報付シートの識別部側の表面に所望の厚みで金属層を形成することが可能であれば特に限定されるものではなく、例えば金属蒸着法、金属メッキ法、スパッタ法等を挙げることができる。
【0180】
本態様の偽造防止用シートとしては、上記金属層の他にも任意の構成を有していても良く、例えば、透明基材、粘着層、剥離層、ハードコート層、ホログラム層等が挙げられる。なお、これらの構成は、上述した第1態様と同様のものを使用できるため、ここでの記載は省略する。
【0181】
本態様の偽造防止用シートの製造方法としては、偽造防止用シート表面に所望の識別形状を形成することができる製造方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、基材表面に、上記識別部の複数の識別形状と嵌合する形状を有する転写部を形成して原版を作製し、樹脂を含有する偽造防止用シート形成用層を形成する。続いて、偽造防止用シート形成用層表面と原版の転写部とを密着させることにより、偽造防止用シート形成用層表面に識別部の複数の識別形状を賦型する。複数の識別形状が賦型された偽造防止用シート形成用層を固化し、硬化した偽造防止用シート形成用層から原版を剥離して偽造防止用シートを形成する方法等が挙げられる。
【0182】
E.偽造防止媒体
本発明の偽造防止媒体は、上述したタガント粒子を有することを特徴とするものである。
【0183】
図15(a)、(b)は本発明の偽造防止媒体の一例を示す模式図であり、図15(a)は上面図、図15(b)は図15(a)のE−E線断面図である。図15(a)、(b)に示す偽造防止媒体30においては、支持体31上に、上述したタガント粒子1が透明樹脂11中に分散されたタガント粒子含有層12が形成されている。
【0184】
図16(a)〜(c)は本発明の偽造防止媒体の他の例を示す模式図であり、図16(a)は上面図、図16(b)は図16(a)のF−F線断面図、図16(c)は偽造防止媒体の積層構造を示す斜視図である。図16(a)〜(c)に示す偽造防止媒体30おいては、支持体31上に第1樹脂層32と上述したタガント粒子1が透明樹脂21中に分散されたタガント粒子含有層12からなる偽造防止用シート10と第2樹脂層33とが積層されており、偽造防止媒体30の内部に偽造防止用シート10が埋め込まれている。偽造防止媒体の内部に偽造防止用シートが埋め込まれている場合には、偽造防止用シートが剥がされて悪用されるのを防ぐことができる。
【0185】
本発明の偽造防止媒体においては、上述したタガント粒子群を用いるので、偽造防止に非常に有用である。また本発明においては、ルーペ等の簡易器具のみで、真贋判定を容易に行うことが可能である。
【0186】
以下、本発明の偽造防止媒体における各構成について説明する。
なお、タガント粒子群については、上記「A.タガント粒子群」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0187】
支持体上にタガント粒子群を固定する方法としては、支持体上に上述した偽造防止用インクを塗布し、固化させる方法や、支持体上に上述した偽造防止用シートを貼付もしくは埋め込む方法を用いることができる。
【0188】
支持体上に偽造防止用シートを貼付する方法としては、そのまま貼っても良く、転写しても良い。さらに、偽造防止媒体が複数層から構成される場合には、偽造防止用シートを偽造防止媒体の構成層間に埋め込んでも良い。
ここで、偽造防止用シートを埋め込む方法としては、例えば、偽造防止媒体の支持体上に所望の構成層を積層し、各層間を接着層、粘着層、熱圧着等によって接着する方法が挙げられる。
なお、偽造防止媒体内に積層される偽造防止用シートは、一部で領域に設けられていても良く、全体に設けられていても良い。また、偽造防止媒体中のその他の構成層としては、偽造防止媒体の種類に応じて、適宜選択されるものである。
【0189】
本発明に用いられる支持体としては、本発明の偽造防止媒体の用途に応じて適宜選択されるものである。基材は、光透過性を有していてもよく有さなくてもよい。基材の材料としては、例えば、ガラス、樹脂、金属、紙等が挙げられる。
【0190】
また、偽造防止媒体を構成する第1樹脂層は、光透過性を有していても良く有していなくても良い。中でも、支持体と第1樹脂層との間に、任意の情報を記録し得るまたは有する機能層(例えば受像層、ホログラム層等)が形成されている場合には、第1樹脂層は光透過性を有することが好ましい。第1樹脂層が光透過性を有する場合、その光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材が透明基材である場合の光透過性と同様とすることができる。第1樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
一方、第2樹脂層は、光透過性を有するものである。第2樹脂層の光透過性としては、偽造防止用シートを構成する基材が透明基材である場合の光透過性と同様とすることができる。第2樹脂層としては、例えば一般的な樹脂基材を用いることができる。
支持体と第1樹脂層と偽造防止用シートと第2樹脂層との積層方法としては、例えば、各層を接着層を介して積層する方法、各層を熱圧着により積層する方法等をあげることができる。
【0191】
本発明の偽造防止媒体の用途としては、例えば、貨幣、株券、クレジットカード、IDカード、パスポート、高価格品、自動車部品、精密機器部品、家電、化粧品、医薬品、食品、OAサプライ品、スポーツ用品、CD、DVD、ソフトウェア、たばこ、お酒等を挙げることができる。
【0192】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0193】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0194】
(原版の形成)
厚さ0.7mmのガラス基板上に、ポジ型レジスト(東京応化工業製LA900)を、スピンコーターを用いて塗布し、130℃で10分間加熱することにより、塗膜を形成した。
なお、塗膜の厚さについては、現像硬化後の最大膜厚が2μmとなるように調整した。
【0195】
次に、図14(a)に示した偽造防止用シートの識別形状のパターンに対応し、遮光的に、また周期的に縦100μm、横100μmの矩形または円形の、露光光の透過率が高い領域を設け、上記矩形または円形の領域の中央部に、さらに透過率が高い文字Aの形状の領域を設けた濃度階調を有する階調マスクを用い、アライナーにて365nmの紫外光を照射した。なお、露光量は800mJとした。
露光後に現像液(東京応化工業製、NMD−3)を用いて5分間現像した後、純水にて洗浄することにより、上記矩形または円形の領域の膜厚が低く、上記文字Aの領域の膜厚がさらに低い凹凸パターンを有する原版を形成した。
【0196】
(偽造防止用シートの形成)
次に、厚さ0.7mmのガラス基板に、スペーサとして厚さ110μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り付けた。なお、PETフィルムはガラス基板を底面とし、PETフィルムが側面とする空間が形成されるように配置した。上記空間内にUV硬化性樹脂を充填して偽造防止用シート形成用層を形成し、偽造防止用シート形成用層と原版との転写部とが密着し、上述した空間を塞ぐようにして、原版を配置した。
【0197】
原版側からUV照射機にて、波長365nmの紫外線を1000mJ照射し、偽造防止用シート形成用層を固化させた後、原版およびガラス基板を剥離することにより、偽造防止用シートを形成した。
【0198】
以上の工程で、共通識別情報である文字Aおよび、非共通識別情報である形状(矩形または円形)を有する偽造防止用シートを得た。
【符号の説明】
【0199】
1、1A、1B、1C … タガント粒子
2、2a、2b … 識別情報
3 … 金属多層膜
4 … タガント粒子の表面
5 … タガント粒子の裏面
6 … 樹脂層
7 … 金属層
10 … 偽造防止用シート
11 … 透明樹脂
12 … タガント粒子含有層
13 … 剥離層
14 … 粘着層
15 … 基材
16 … ハードコート層
17 … ホログラム層
21 … 基底部
22 … 識別部
22a … 識別形状
30 … 偽造防止媒体
31 … 支持体
32 … 第1樹脂層
33 … 第2樹脂層
41 … LED照明
42 … カメラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の粒子が複数の識別情報を有しているタガント粒子の集合体であるタガント粒子群であって、
前記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの一つの識別情報が、前記タガント粒子群を構成するタガント粒子が共通して有する共通識別情報であり、
前記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの他の識別情報が、前記タガント粒子群を構成する他のタガント粒子が有する識別情報との組み合わせにより真贋判定が可能な非共通識別情報であることを特徴とするタガント粒子群。
【請求項2】
請求項1に記載のタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項3】
請求項1に記載のタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用トナー。
【請求項4】
請求項1に記載のタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用シート。
【請求項5】
請求項1に記載のタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項1】
個々の粒子が複数の識別情報を有しているタガント粒子の集合体であるタガント粒子群であって、
前記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの一つの識別情報が、前記タガント粒子群を構成するタガント粒子が共通して有する共通識別情報であり、
前記個々の粒子が有する複数の識別情報のうちの他の識別情報が、前記タガント粒子群を構成する他のタガント粒子が有する識別情報との組み合わせにより真贋判定が可能な非共通識別情報であることを特徴とするタガント粒子群。
【請求項2】
請求項1に記載のタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用インク。
【請求項3】
請求項1に記載のタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用トナー。
【請求項4】
請求項1に記載のタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止用シート。
【請求項5】
請求項1に記載のタガント粒子群を有することを特徴とする偽造防止媒体。
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図3】
【図6】
【図2】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図3】
【図6】
【公開番号】特開2012−121173(P2012−121173A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271799(P2010−271799)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】
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