説明

タクロリムスを含む改質放出組成物

タクロリムスを含む改質放出組成物は、溶出溶媒として0.1N HCLを使用してUSPパドル法によってin vitro溶出試験が施される時に、活性成分の20% w/w未満を0.5時間以内に放出し、そしてCYP3A4代謝の効果を効果的に低減又は回避することにより生体利用効率を増大させた。改質された組成物は、腸溶性コーティングを施すことができ;且つ/又は、親水性又は水混和性ビヒクル及び1種又は2種以上の放出調整剤中に、タクロリムスの固体分散体又は固溶体を含むことができ;且つ/又は、両親媒性又は疎水性ビヒクル及び場合により1種又は2種以上の放出調整剤中に、タクロリムスの固体分散体又は固溶体を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬組成物及び/又は投与形態、好ましくは経口単位投与形態であって、in vivoでの活性成分の実際の放出速度及び放出タイミングを反映すると考えられる慣用的な溶出法を施すと、改質された放出プロフィールを有するタクロリムス又はその類似体を含むものに関し、新規の組成物は、CYP3A4代謝の効果を効果的に低減又は回避する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
FK-506又はFR-900506としても知られるタクロリムス(tacrolimus)は、以下に示す化学的三環式構造:
【0003】
【化1】

【0004】
を有し、C44H69NO12に相当する。タクロリムスは白い結晶又は結晶性粉末の形態で現れる。タクロリムスは実際には水不溶性であり、エタノール中に溶けやすく、そしてメタノール及びクロロホルム中に高可溶性である。
【0005】
タクロリムスの製造は欧州特許出願公開第0 184 162号明細書に記載されており、そしてタクロリムスの類似体は、例えば欧州特許出願公開第0 444 659号明細書及び米国特許第6,387,918号明細書に記載されている。これらを両方とも参考のため本明細書中に引用する。
【0006】
タクロリムスは、有用な免疫抑制活性、抗菌活性及びその他の薬理学的活性を有するマクロライド化合物であり、そして器官又は組織の移植による拒絶反応、対宿主性移植片疾患、自己免疫疾患及び感染性疾患の治療又は予防に価値がある。タクロリムスは、肝臓、腎臓、心臓、骨髄及び小腸及び膵臓、肺及び気管、皮膚、角膜及び肢の動物移植モデルにおいて、宿主及び移植済片の生存時間を長くする。
【0007】
動物において、タクロリムスは、何らかの体液性免疫を抑制し、そして細胞媒介性反応、例えば同種移植の拒絶反応、遅延型過敏症、コラーゲン誘発型関節炎、実験的アレルギー性脳脊髄炎及び対宿主性移植片疾患を大幅に抑制することが実証されている。
【0008】
タクロリムスはT-リンパ球活性を阻害するが、正確な作用メカニズムは判っていない。実験による証拠が示唆するところによれば、タクロリムスは、細胞内タンパク質FKBP-12に結合する。タクロリムス-FKBP-12、カルシウム、カルモジュリン及びカルシニューリンから成る複合体が形成され、そしてカルシニューリンのホスファターゼ活性が阻害される。この効果は、活性化されたT細胞の核因子、つまりリンフォカインの形成のために遺伝子転写を開始すると考えられる核成分の脱ホスホリル化及び転座を防止することができる。最終結果として、T-リンパ球活性の阻害、すなわち免疫抑制が生じる。
【0009】
タクロリムスは、腸壁及び肝臓においてCYP3A4イソ酵素によって広範囲に代謝される。従ってこのイソ酵素に作用する薬物は、吸収及びこれに続く、全身に吸収されたタクロリムスの排除に影響を与えることができる。CYP3A4のインヒビターはタクロリムス・レベルを高めることができるが、CYP3A4のインデューサーは、タクロリムスの代謝を高め、そしてタクロリムス・レベルを低下させる。従って、生体利用効率全体を改善するために、タクロリムスは、1種又は2種以上のCYP3A4インヒビターと一緒に投与することができる。
【0010】
通常、タクロリムスは経口投与され、従って胃腸管から吸収される。吸収は食物の同時摂取によって不都合に影響されることが観察されている。従って、タクロリムス吸収の速度及び範囲は、絶食条件下で最大であった。
【0011】
一般に、治療上活性の物質の吸収作用及び生体利用効率は、経口投与時に種々の因子によって影響され得ることが知られている。このような因子は、胃腸管中の食物の存在を含み、そして一般には、薬物物質の胃滞留時間は、絶食状態時よりも食物存在時に著しく長くなる。薬物物質の生体利用効率が胃腸管内の食物の存在によりある点を超えるほど影響されるならば、薬物物質は食物効果を示すと言われる。食物効果は重要である。なぜならば、吸収作用、ひいては血漿レベルが、食物摂取量に応じて著しく変わりやすくなるからである。患者における吸収量が、薬物投与の対象となる状態を治療するには不十分になるほどに、血流中への吸収作用に不都合な影響が及ぼされることがある。他方において、絶食状態に見られる著しく高いピーク濃度は時として、腎毒性又は神経毒性起源の重大な副作用、並びにGI副作用及びその他の副作用を極めて多く引き起こすおそれがある。
【0012】
経口投与後の胃腸管からのタクロリムスの吸収作用は、急速に行われ、健常被験者又は腎臓又は肝臓を移植された患者への投与後、ピーク濃度までの平均時間(tmax)はほぼ1〜2時間であるが、しかしこのようなタクロリムスの吸収作用は不完全でありまた変動しやすい。生体利用効率は一般に、経口投与後、最大でも約20%という低さである。
【0013】
頻繁に観察される副作用は嘔吐及び吐き気であるが、振戦、頭痛、高血圧、腎機能障害、高カリウム血症、低マグネシウム血症、高血糖症、不眠症、下痢、便秘、腹痛、腎臓毒症状及び神経毒症状のような副作用も観察される。
【0014】
経口投与の場合、タクロリムスは現在、0.5、1又は5 mg当量の無水タクロリムスを含む軟質ゼラチン・カプセル剤として調製され、そしてPrograf(登録商標)及びProtropic(登録商標)の商品名で市販されている。推奨される初期経口投与量は患者において約0.1〜0.2 mg/kg/日である。この投与量は所定のトラフ血漿レベル約5〜約20 ng/mlを得ようとしている。Prograf(登録商標)は、同種移植の肝臓又は腎臓の移植を受容する患者における器官拒絶反応を予防するために指示される。
【0015】
高められた生体利用効率を示すタクロリムスを含む新規の医薬組成物及び/又は投与形態がなおも必要である。生体利用効率を高めることにより、患者によって摂取される投与単位が、例えば一日単回の投与まで低減されることが可能になり、また、投与形態と同時に食物を摂取する必要を減らすか又は無くすることができ、これにより患者はいつ薬物を摂取するかに関してより自由になることができる。さらに時間プロフィールに対する血漿濃度のばらつきが有意に低減されることも考えられる。さらに、生体利用効率が高まる結果、より再現性の高い(すなわちPrograf(登録商標)と比較して変動しやすさが少ない)放出プロフィールを得ることもできる。
【発明の開示】
【0016】
発明の簡単な概要
発明者は、CYP3A4代謝の効果を効果的に低減又は回避する活性成分の放出速度及び放出タイミング、すなわちin vivo放出プロフィールでタクロリムスを哺乳動物に投与すると、タクロリムスの生体利用効率が有意に増大することを見いだした。
【0017】
慣用的なin vitro溶出法が、ヒトにおける実際のin vivo改質型放出プロフィールと相関するか又は少なくともこれを反映すると考えられる。これに基づいて、本発明は第1の観点において、タクロリムス及びその類似体の中から選択される活性成分を含む固形医薬組成物であって、溶出溶媒として0.1N HCLを使用してUSPパドル法によってin vitro溶出試験を施すと、該活性成分の20% w/w未満が0.5時間以内に放出される、固形医薬組成物と提供する。この改質型放出プロフィールは、
i) 腸溶性コーティングを施され;且つ/又は
ii) 親水性又は水混和性ビヒクル及び1種又は2種以上の放出調整剤中に、活性成分、すなわちタクロリムス又はその類似体の固体分散体、又は好ましくは固溶体を含み;且つ/又は
iii) 両親媒性又は疎水性ビヒクル及び場合により1種又は2種以上の放出調整剤中に、活性成分、すなわちタクロリムス又はその類似体の固体分散体、又は好ましくは固溶体を含む
医薬組成物を提供することによって得られる。
【0018】
別の観点において、本発明は、本発明の組成物を含む固形投与形態、特に経口投与形態であって、改質された放出プロフィールを示す固形投与形態に関する。十二指腸の遠位部位へのタクロリムスの放出を遅らせることにより、薬物に関する胃腸関連の副作用、及び胃腸管の近位部位における比較的高い程度の代謝(CYP3A4媒介型代謝)を低減することができる。このことは、本発明の独自の組成物、好ましくはビヒクル中に完全又は部分的に溶解することにより周囲温度で固体分散体及び/又は固溶体を形成する活性成分を含む組成物により、全身的な生体利用効率を失うことなしに行うことができる。
【0019】
さらに別の観点において、本発明は、タクロリムスの経口生体利用効率を高めるためのこの医薬組成物の使用、医薬又は薬剤の製造、特に有用な固形投与形態の製造におけるこの組成物の使用に関する。
【0020】
発明の詳細な説明
定義
本明細書に使用される「活性成分」又は「活性薬剤成分」という用語は、疾患の診断、治癒、緩和、治療又は予防に薬理学的活性又は他の直接的な効果を提供するか、或いは、ヒト又はその他の動物の身体の構造又は任意の機能に影響を与えるように意図された任意の成分を意味する。この用語は、薬物生成物を製造する際に化学変化を受けることができ、そして特定の活性又は効果を提供するように意図された改質形態を成す薬物生成物中に存在する成分を含む。
【0021】
本明細書との関連において、「親水性」という用語は、何かが「水を好む」ことを意味し、すなわち、親水性分子又は分子の親水性部分は、典型的には電気的な極性を有し、そして水分子と一緒に水素結合を形成することができ、油又は他の「非極性」溶剤中よりも容易に水中に溶けることができる。
【0022】
本明細書との関連において、「両親媒性」という用語は、水不溶性炭化水素鎖に結合された極性水溶性基を有する分子(界面活性剤として)を意味する。従って、分子の一方の末端は親水性(極性)であり、他方の末端は疎水性(非極性)である。
【0023】
本明細書との関連において、「疎水性」は、電気的に中立且つ非極性である傾向を有し、ひいては他の中立且つ非極性の溶剤又は分子環境を好む化合物を意味する。
【0024】
明細書中に使用される「ビヒクル」という用語は、薬理学的役割を有しない製薬生成物中の任意の溶剤又は担体を意味する。例えば、水はキシロカインのためのビヒクルであり、そしてプロピレングリコールは多くの抗生物質のためのビヒクルである。
【0025】
本明細書との関連において、「固体分散体」という用語は、固体の不活性ビヒクル、担体、希釈剤又はマトリックス中に粒子レベルで分散された薬物又は活性成分又は物質、すなわち通常は微粒子分散体を意味する。
【0026】
本明細書との関連において、「固溶体」という用語は、固体の不活性ビヒクル、担体、希釈剤又はマトリックス中に分子レベルで溶解された薬物又は活性成分又は物質を意味する。
【0027】
明細書中に使用される「類似体」という用語は、別の化合物に構造的に類似した化合物を意味する。
【0028】
「薬物」という用語は、ヒト又はその他の動物の疾患の診断、治癒、緩和、治療又は予防に使用するように意図された化合物を意味する。
【0029】
本明細書との関連において、「投与形態」という用語は、薬物が患者に送達される形態を意味する。これは非経口、局所、錠剤、経口(液体又は溶解済粉末)、坐剤、吸入、経皮などであることが可能である。
【0030】
明細書中に使用される「生体利用効率」という用語は、薬物又はその他の物質が投与後に標的組織に利用可能になる程度を意味する。
【0031】
明細書中に使用される「生物学的等価性」という用語は、一般名称及びブランド名の薬物が互いに比較される科学的基準を意味する。例えば薬物が同様の条件下で同様の投与量で与えられたときに同じ速度で循環系に入る場合に、これらの薬物は生物学的に等価である。生物学的等価研究においてしばしば使用されるパラメーターは、tmax、cmax、AUC0-infinity、AUC0-tである。他の関連パラメーターは、W50、W75及び/又はMRTであってよい。従って、生物学的等価が存在するかどうかを決定するときには、これらのパラメーターの少なくとも1つを適用することができる。さらに、本明細書との関連において、使用されるパラメーターの値がPrograf(登録商標)又は試験に使用される商業的に入手可能な同様のタクロリムス含有生成物のパラメーターの80〜125%以内にある場合には、2つの組成物は生物学的等価と見なされる。
【0032】
本明細書との関連において、「tmax」という用語は、投与後の最大血漿濃度(cmax)に達するための時間を示し;AUC0-infinityは、時間0から無限までの血漿濃度対時間曲線下の面積を意味し;AUC0-tは、時間0から時間tまでの血漿濃度対時間曲線下の面積を意味し;W50は、血漿濃度がcmaxの50%以上である時間を意味し;W75は、血漿濃度がcmaxの75%以上である時間を意味し;そしてMRTは、タクロリムス(及び/又はその類似体)の平均滞留時間を意味する。
【0033】
本明細書との関連において、「薬品」という用語は、疾患、負傷又は痛みを治療するのに使用される化合物を意味する。薬品は正しくは「予防的」、すなわち健康を維持する種類のものと、「治療的」、すなわち健康を回復する種類のものとに分けられる。
【0034】
本明細書との関連において、「制御放出」及び「改質放出」という用語は、患者への投与後に特定の治療的又は予防的応答を得るのに十分な、本発明の組成物からのタクロリムスの任意のタイプの放出を対象とする等価の用語であるものとする。当業者ならば、制御放出/改質放出がただの錠剤又はカプセル剤とはどのように異なるかは明らかである。「制御状態での放出」又は「改質状態での放出」という用語も上記のものと同じ意味を有する。これらの用語は低速放出(その結果、cmaxは低くなり、tmaxは遅くなるが、t1/2は不変のままである)、長時間放出(その結果、cmaxは低くなり、tmaxは遅くなるが、見かけt1/2は長くなる)、遅延放出(cmaxは不変であるが時間のずれが生じ、従って、tmaxは遅らされ、そしてt1/2は不変のままである)、並びにパルス放出、バースト放出、持続放出(徐放)、延長放出、経時最適化放出、高速放出(作用発現を高めるため)などを含む。これらの用語には、例えば、薬物物質の放出を制御するために体内の特定条件、例えば種々異なる酵素、又はpH変化を利用することも含まれる。
【0035】
本明細書との関連において、「侵食」及び「被侵食性」という用語は、材料又は構造、例えば錠剤又は錠剤のコーティングの表面が徐々に崩壊することを意味する。
【0036】
本発明は、タクロリムス治療に応答する状態を改善された状態で治療するための医薬組成物及び固形投与形態、特にその生体利用効率を高めるために活性成分の改質放出を可能にする組成物及び投与形態を提供する。
【0037】
本発明の組成物における活性成分は、好ましくはタクロリムス、又はタクロリムスの任意の類似体又は誘導体である。類似体又は誘導体は、タクロリムス(FK-506又はFR-900506)と少なくとも等価の薬理学的又は治療的活性を示す。しかし、本発明の範囲には、任意の物理的形態(結晶、非晶質粉末、任意の考えられ得る多形体、その水和物、無水物、錯体などを含む任意の考えられ得る溶媒和物)のタクロリムスも含まれる。タクロリムスの任意の類似体、誘導体又は活性代謝体、これらの薬学的に許容される塩、溶媒和物、錯体も含まれる。
【0038】
このように、好ましい実施態様の場合、本発明は、タクロリムス及びその類似体の中から選択された活性成分を含む固形医薬組成物であって、溶出溶媒として0.1N HCLを使用してUSPパドル法によってin vitro溶出試験を施すと、該活性成分の20% w/w未満が0.5時間以内に放出され、好ましくは、該活性成分の20% w/w未満、より好ましくは該活性成分の10% w/w未満が3時間以内に放出される、固形医薬組成物を提供する。
【0039】
このような放出プロフィールが哺乳動物におけるタクロリムスの生体利用効率を有意に高めるものと考えられる。それというのもこの活性成分の全て又は大部分は実際に、CYP3A4代謝がほぼ回避されるか又は少なくとも有意に低減されるように、胃腸管内に放出されるからである。さらに、このような効果は、本発明の固形医薬組成物及び/又は投与形態のin vitro溶出プロフィールに相関されるか、又は少なくとも反映されると思われる。このプロフィールは、例えばUSPによる慣用的なin vitro溶出法を組成物及び/又は投与形態に施すと容易に見いだされる。任意のUSP in vitro溶出法が本発明の目的上有用であると考えられる。
【0040】
例えば、本発明の固形医薬組成物は、最初の2時間は溶出溶媒として0.1N HCLを使用し、次いでpH 6.8の溶出溶媒を使用してUSPパドル法によってin vitro溶出試験を施すと、該活性成分の50% w/w以上を4時間以内に、好ましくは2.5時間以内に放出する。
【0041】
あまり慣用的ではない溶出媒質を使用して、本発明の組成物は、0.005%ヒドロキシプロピルセルロースでpH 4.5に調節された水性溶出溶媒を使用してUSPパドル法によってin vitro溶出試験を施すと、該活性薬剤成分の50% w/w未満、特に40% w/w未満を8時間以内、好ましくは15時間以内に放出する。
【0042】
医薬組成物の所望の改質放出プロフィールは、
i) 腸溶性コーティングで組成物をコーティングし;且つ/又は
ii) 親水性又は水混和性ビヒクル及び1種又は2種以上の放出調整剤中に、活性成分、すなわちタクロリムス又はその類似体の固体分散体又は固溶体を含む医薬組成物を使用し;且つ/又は
iii) 疎水性ビヒクル及び場合により1種又は2種以上の放出調整剤中に、活性成分、すなわちタクロリムス又はその類似体の固体分散体又は固溶体を含む医薬組成物を使用する
ことにより提供することができる。
【0043】
本発明の1実施態様の場合、本明細書中に記載されているように腸溶性コーティングされた改質放出タクロリムス含有医薬組成物が提供される。
【0044】
本発明の別の実施態様の場合、本明細書中に記載されているような疎水性ビヒクル中、好ましくは油、油性材料、ワックス又は脂肪酸誘導体中に、より好ましくは低融点ワックス、例えばグリセリルモノステアレート中に溶解または分散された活性成分を有する改質放出タクロリムス含有医薬組成物が提供される。
【0045】
本発明のさらに別の実施態様の場合、本明細書中に記載されているような親水性又は水混和性ビヒクル中、好ましくは、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオキシド、ポロキサマー、ポリオキシエチレンステアレート、ポリ-イプシロンカプロラクトン、ポリグリコール化グリセリド、例えばGelucire(登録商標)、及びこれらの混合物から成る群から選択されたビヒクル中、より好ましくは、場合によりポロキサマーと混合されたポリエチレングリコール中に溶解または分散された活性成分を有する改質放出タクロリムス含有医薬組成物が提供される。有用な混合物の具体例は、70 w/w%のポリエチレングリコール6000(PEG6000)と30 w/w%のポロキサマー188との混合物である。
【0046】
別の観点において、本発明は、1種又は2種以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に、タクロリムス及び/又はその類似体を含む粒子形態の医薬組成物であって、これを必要とする哺乳動物に経口投与すると、同様の条件下で測定して、組成物は約1.3以上のAUC/AUCPrograf(登録商標)値を示す、医薬組成物に関する。
【0047】
本明細書中の実施例から明らかなように、本発明による組成物の投与後に得られる生体利用効率は著しく改善される。こうして、具体的な実施態様において、AUC/AUCPrograf(登録商標)値は、同様の条件下で測定して約1.5以上、例えば約1.75以上、約1.8以上、約1.9以上、約2.0以上、約2.5以上、約2.75以上、約3.0以上、約3.25以上、約3.5以上、約3.75以上、約4.0以上、約4.25以上、約4.5以上、約4.75以上、約5.0以上である。
【0048】
本発明による医薬組成物の経口投与後、血漿濃度対時間プロフィールは、拡張された時間を示すと考えられる。この時間において、重大な望ましくない副作用を招くことなしに、血漿濃度は治療濃度域(すなわち血漿濃度が治療効果をもたらす)内に維持される。このようにすると、ピーク濃度の低減も観察される。従って、本発明は、1種又は2種以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に、タクロリムスを含む粒子形態の医薬組成物であって、これを必要とする哺乳動物に経口投与すると、組成物はタクロリムスを制御された状態で放出し、そして、Prograf(登録商標)錠剤のCmaxの約80%以下、例えば約75%以下、約70%以下、約65%以下、約60%以下、約55%以下、約50%以下、約45%以下、約40%以下であるCmaxを示す。
【0049】
本明細書との関連において、「制御放出」及び「改質放出」という用語は、患者への投与後に特定の治療的又は予防的応答を得るのに十分な、本発明の組成物からのタクロリムスの任意のタイプの放出を対象とする等価の用語であるものとする。当業者ならば、制御放出/改質放出がただの錠剤又はカプセル剤とはどのように異なるかは明らかである。「制御状態での放出」又は「改質状態での放出」という用語も上記のものと同じ意味を有する。
【0050】
これらの用語は低速放出(その結果、cmaxは低くなり、tmaxは遅くなるが、t1/2は不変のままである)、長時間放出(その結果、cmaxは低くなり、tmaxは遅くなるが、見かけt1/2は長くなる)、遅延放出(cmaxは不変であるが時間のずれが生じ、従って、tmaxは遅らされ、そしてt1/2は不変のままである)、並びにパルス放出、バースト放出、持続放出(徐放)、延長放出、経時最適化放出、高速放出(作用発現を高めるため)などを含む。これらの用語には、例えば、薬物物質の放出を制御するために体内の特定条件、例えば種々異なる酵素、又はpH変化を利用することも含まれる。
【0051】
より具体的には、投与量5 mgのタクロリムスを含有する本発明による医薬組成物を、ヒトを含む哺乳動物に経口投与した後、タクロリムスは制御状態で制御され、約30 ng/ml以下、例えば約25 ng/ml以下又は約20 ng/ml以下のcmaxを示すことになる。
【0052】
しかし、タクロリムスの血漿濃度が治療濃度域内に維持されている限り、ピーク濃度の低減が治療効果の減少を招くことはない。従って、本発明はまた、W50が約2時間以上、例えば約3時間以上、約4時間以上、約5時間以上、約6時間以上、約7時間以上、約8時間以上、約9時間以上、約10時間以上、約11時間以上、約12時間以上、約13時間又は約14時間以上である医薬組成物に関する。
【0053】
さらに、本発明による組成物のCdiff=[Cmax-Ct(t=12時間)]は、同じ条件下のPrograf(登録商標)のCdiffよりも小さい。Prograf(登録商標)のCdiffが100に設定されている場合には、本発明による組成物のCdiffは通常の場合、約90以下、例えば約85以下、約80以下、約75以下、約70以下、約65以下、約60以下、約55以下、約50以下、約45以下、又は約40以下である。
【0054】
より具体的には、タクロリムス5 mgを含有する本発明の医薬組成物を、ヒトを含む哺乳動物に経口投与したあと、タクロリムスは制御状態で放出され、約20 ng/ml以下、例えば約15 ng/ml以下、約13 ng/ml以下、又は約10 ng/ml以下のCdiffを示す。
【0055】
本発明による医薬組成物は、タクロリムスの治療作用を広げるために、制御状態でタクロリムスを放出する。1つの観点において、放出はpH依存性であってよく、すなわち、放出は大部分が胃の通過後に行われる。このようなpH依存性放出は主に、本明細書中に記載されたような腸溶性コーティング材料によって可能になる。放出は、例えば制御放出コーティング、例えばエチルセルロースのようなセルロース系コーティングを備えた組成物を提供することにより、又はマトリックス組成物、例えばHPMCを基剤とする親水性セルロース・ポリマー・マトリックスの形態で組成物を提供することにより、pH非依存性であってもよい。もちろん、組み合わせを採用することもできる。
【0056】
一般に、生体利用効率の変化及び/又は他の生体利用効率関連パラメーターの変化は、通常は、Prograf(登録商標)又は同様の商業的に入手可能なタクロリムス含有生成物と一緒に当該組成物を試験する好適な動物モデルにおけるin vivo研究によって決定される。或る特定の配合物の生体利用効率の証拠を確立するためにイヌ・モデルを使用することは、製薬業界において一般的である。
【0057】
タクロリムスに関連する研究は、非ランダム化交差研究であり、この研究ではそれぞれのイヌが自身の対照である。4匹のイヌ及び4つの処理が通常適用される。静脈内注射が行われないので、得られる生体利用効率は相対的である。
【0058】
さらに驚くべきことには、タクロリムスの十分な摂取を確保するために同時に食物を摂取する必要は有意に低減されるか又は完全に無くされることが見いだされた。
【0059】
従って、本発明による医薬組成物は、有意なより高いタクロリムス生体利用効率を提供し、このような生体利用効率は、一日の投与単位数を低減し、そして食物摂取と結び付けて投与を行う必要を低減するか又は無くする。これにより、医薬組成物のレシピエントにはより高度の自由が与えられ、従って患者の受容度及び/又はコンプライアンスを有意に改善することができる。さらに、組成物は副作用、特に高いピーク濃度に関連する副作用(例えば腎毒性又は神経毒性、下痢、便秘、腹痛、吐き気など)を有意に低減し、そしてタクロリムスの長時間放出を可能にして、良好な治療をもたらすことができる。
【0060】
上述のように、タクロリムス組成物の調製に関する主な難関の1つは、不都合な食物効果を回避することである。一般に、タクロリムスはこれが食物なしで経口投与されると、より良く吸収される。従って、投与後に見られる生体利用効率は、食物を伴うか又は伴わないかによって大きく変動する。この依存性は、どれくらい多くの量を投与すべきかに関する正確な指針を与えるのを難しくし、また、投薬計画に関する情報を患者に提供することを必要とする。本発明は、不都合な食物効果が低減される組成物を提供することを目的としている。従って、本発明は、このような治療を必要とする哺乳動物に組成物を投与した後、著しい不都合な食物効果を示すことはない。このことは、(AUC摂食/AUC絶食)の値が約0.85以上であると共に90%信頼下限が0.75以上であることによって証明される。
【0061】
より具体的には、本発明による医薬組成物の(AUC摂食/AUC絶食)値は、約0.9以上、例えば約0.95以上、約0.97以上、約1以上、例えば約1.1以下又は約1.2以下である。
【0062】
本発明の組成物の更なる利点は、伝統的な経口治療と比較して低減された投与量で、効果的な治療応答を得ることができることである。従って、投与を必要とする哺乳動物に経口投与すると、本発明による医薬組成物はタクロリムス又はその類似体を制御状態で放出し、そしてこの組成物は、Prograf(登録商標)又は同様の商業的に入手可能なタクロリムス含有生成物の形態で投与されるタクロリムス投与量の約85% w/w以下、例えば約80% w/w以下、約75% w/w以下、約70% w/w以下、約65% w/w以下、約60% w/w以下、約55% w/w以下、約50% w/w以下の投与量で投与されると、Prograf(登録商標)又は同様の商業的に入手可能なタクロリムス含有生成物と事実上生物学的に等価である。
【0063】
生物学的等価研究においてしばしば使用されるパラメーターは、tmax、cmax、AUC0-infinity、AUC0-tである。他の関連パラメーターは、W50、W75及び/又はMRTであってよい。従って、生物学的等価が存在するかどうかを決定するときには、これらのパラメーターの少なくとも1つを適用することができる。さらに、本明細書との関連において、使用されるパラメーターの値がPrograf(登録商標)又は試験に使用される商業的に入手可能な同様のタクロリムス含有生成物のパラメーターの80〜125%以内にある場合には、2つの組成物は生物学的に等価と見なされる。
【0064】
本明細書との関連において、「tmax」という用語は、投与後の最大血漿濃度(cmax)に達するための時間を示し;AUC0-infinityは、時間0から無限までの血漿濃度対時間曲線下の面積を意味し;AUC0-tは、時間0から時間tまでの血漿濃度対時間曲線下の面積を意味し;W50は、血漿濃度がcmaxの50%以上である時間を意味し;W75は、血漿濃度がcmaxの75%以上である時間を意味し;そしてMRTは、タクロリムス(及び/又はその類似体)の平均滞留時間を意味する。
【0065】
タクロリムスによる治療又は予防に関連する2つの他の欠点は、比較的高い副作用発生率、及び比較的高い個体間変動である。本発明による組成物は副作用を低減すると想定される。この低減は出現頻度の低減という点又は重症性の低減という意味で使用することができる。当該副作用は、腎毒性又は神経毒性、下痢、便秘、腹痛、吐き気などを含む。1つの観点において、本発明は、1種又は2種以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に、タクロリムス又はその類似体を含む粒子形態の医薬組成物であって、これを必要とする哺乳動物に経口投与すると、組成物は制御状態でタクロリムス及び/又はその類似体を放出し、そして同様の条件下で等価の治療効果を提供する投与量で投与されたPrograf(登録商標)と比較して、副作用を低減する。
【0066】
生体利用効率が増大すると、曲線下面積は通常、薬物物質の吸収に関連した内部及び相互変動性を低減することになる。このことは特に、生体利用効率が低く損なわれることが水溶性の低さの結果である場合は、いつでも当てはまる。本発明による組成物は、Prograf(登録商標)及び同様の生成物よりも有意に小さい曲線下面積データCV(変動係数)を提供すると考えられる。
【0067】
前述のように、本発明の基本的な特徴の1つは、本発明の組成物の経口投与による生体利用効率を改善することが可能であることである。通常の場合、経口投与後の薬物物質の低い生体利用効率は、長時間にわたる効果的な薬物レベルを得ることがほとんど不可能であるという事実により、薬物物質の制御放出又は改質放出の設計にとって障壁となる。しかし、本発明の技術を用いれば、生体利用効率を有意に改善することが可能であり、これにより、制御放出、改質放出又は遅延放出組成物を設計することが可能である。
【0068】
タクロリムスは、腸壁及び肝臓においてCYP3A4イソ酵素によって広範囲に代謝される。従って、好適な制御放出組成物は、胃腸管内のCYP3A4代謝を回避又は低減するように遅延された状態でタクロリムスを放出するように設計された組成物であってよい。
【0069】
遅延放出は主に、何らかの腸溶性コーティングによって行われる。半透過性コーティングは何らかの遅延放出を示すが、極めて十分な「遅延」放出を示すことはない。加えて、内容物を放出するには或る程度の時間が必要となる。本発明のために模索されたコーティングはpH依存性コーティングである。このタイプのコーティングは、或る特定のpHに達するまで薬物の放出に対して大きな抵抗性を有する。pHの極めてわずかな1/10という範囲内で、フィルムは性質を変え、そして透過性になる。比較的不溶性であり且つ胃のpHでは不透過性であるが、しかし小腸及び結腸のpHではより可溶性且つ透過性であるpH感受性ポリマーの一例としては、ポリアクリルアミド;フタレート誘導体、例えば炭水化物の酸フタレート、アミロースアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセテート水素フタレート、ナトリウムセルロースアセテートフタレート、澱粉酸フタレート、スチレン-マレイン酸ジブチルフタレート・コポリマー、スチレン-マレイン酸ポリビニルアセテートフタレート・コポリマー、スチレン及びマレイン酸のコポリマー、ポリアクリル酸誘導体、例えばアクリル酸及びアクリル酸エステルのコポリマー、ポリメタクリル酸及びそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマー、セラック、ビニルアセテート及びクロトン酸のコポリマーが挙げられる。
【0070】
具体的な重要なpH感受性ポリマーは、セラック;フタレート誘導体、具体的にはセルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ポリアクリル酸誘導体、具体的にはアクリル酸及びアクリル酸エステルのコポリマーとブレンドされたポリメタクリレート;及びビニルアセテート及びクロトン酸のコポリマーを含む。
【0071】
コーティング材料として例えばゼイン又はモノ/ジ-グリセリド混合物が採用される場合には、遅延放出コーティングを有する組成物からの活性物質の放出は、酵素反応であってもよい。
【0072】
投与を必要とする、ヒトを含む哺乳動物に経口投与すると、本発明による制御放出医薬組成物は、約5 ng/ml以上、例えば約7.5 ng/ml以上、約10 ng/ml以上の血漿濃度が約24時間以上にわたって得られるようにタクロリムスを放出する。本発明の具体的な観点において、ピーク血漿濃度と、投与から24時間後に測定された血漿濃度との差は、約20 ng/ml以下、例えば約10 ng/ml以下、約7.5 ng/ml以下、又は約5 ng/ml以下である。
【0073】
具体的な観点において、本発明は、治療効果の比較的迅速な発現を可能にするために、タクロリムス及び/又はその類似体を比較的高速に放出する医薬組成物又は固形投与形態を提供する。1つの観点において、本発明は、1種又は2種以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に、タクロリムス及び/又はその類似体を含む粒子形態の医薬組成物であって、これを必要とする哺乳動物に経口投与すると、組成物は、約24時間以内、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内、又は約12時間以内にタクロリムス又はその類似体の総量の約50% w/w以上を制御状態で放出する、医薬組成物に関する。
【0074】
別の実施態様の場合、本発明による組成物を哺乳動物に経口投与してから15時間後に、或いは好適なin vitro溶出試験で試験した場合、このような試験の開始から15時間後に、約60% w/w以下、例えば約62% w/w以下、約65% w/w以下、約70% w/w以下のタクロリムスが放出される。
【0075】
より具体的には、投与を必要とする哺乳動物に経口投与すると、本発明による組成物は、約10時間以内、例えば約8時間以内、約6時間以内、約4時間以内、又は約3時間以内に、タクロリムス及び/又はその類似体の約50% w/w以上を放出する。
【0076】
別の実施態様の場合、投与を必要とする哺乳動物に経口投与すると、本発明による医薬組成物は、約0.5時間以上後、例えば約0.75時間以上後、約1時間以上後、約2時間以上後、約3時間以上後、約4時間以上後、約5時間以上後に、約80% w/w以上のタクロリムスを放出し;或いは、好適なin vitro溶出試験で試験した場合、このような試験の開始から0.5時間以上後、例えば約0.75時間以上後、約1時間以上後、約2時間以上後、約3時間以上後、約4時間以上後、約5時間以上後に、80% w/w以上を放出する。
【0077】
別の実施態様の場合、投与を必要とする哺乳動物に経口投与すると、本発明による医薬組成物は、約24時間以内、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内、約12時間以内、約10時間以内、約8時間以内、又は約6時間以内に、タクロリムス及び/又はその類似体の総量の約55% w/w以上、例えば約60% w/w以上、約65% w/w以上、約70% w/w以上、約75% w/w以上、約80% w/w以上を放出する。
【0078】
さらに、in vitro溶出試験で試験して、pH 7.5の緩衝液を含む溶出溶媒を採用する場合、約24時間以内、例えば約22時間以内、約20時間以内、約18時間以内、約15時間以内、約12時間以内に、タクロリムス及び/又はその類似体の総量の約50% w/w以上が放出される。好適な溶出試験の手引きは、本明細書中の実施例において記載されているが、しかし採用される特定の方法及び溶出溶媒中に含有される成分などに関する変更形も、本発明の範囲に含まれる。例えばUSPやPh.Eur.などからの手引きによってどのように好適な溶出試験を行うかは、当業者に明らかである。in vitro溶出試験に適した条件は、USP溶出試験(パドル法)及び溶出溶媒として2.5% SDS及び1g/mLのパンクレアチンを含有する緩衝液pH 7.5を採用している。
【0079】
他の実施態様において、in vitro溶出試験に関して下記条件が満たされる:
i) in vitro溶出試験で試験して、pH 7.5の緩衝液を含む溶出溶媒を採用する場合、約10時間以内、例えば約8時間以内、約6時間以内、約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、約1時間以内、約45分間以内、約30分間以内、又は約15分間以内に、タクロリムス又はその類似体の総量の約50% w/w以上が放出され;
ii) in vitro溶出試験で試験して、pH 7.5の緩衝液を含む溶出溶媒を採用する場合、約1.5時間以内、例えば約1時間以内、約0.75時間以内、約0.5時間以内、又は約20分間以内に、タクロリムス又はその類似体の総量の約50% w/w以上が放出され;
iii) in vitro溶出試験で試験して、pH 7.5の緩衝液を含む溶出溶媒を採用する場合、約15時間以内、例えば約12時間以内、約10時間以内、約8時間以内、又は約6時間以内に、タクロリムス又はその類似体の総量の約55% w/w以上、例えば約60% w/w以上、約65% w/w以上、約70% w/w以上、約75% w/w以上、又は約80% w/w以上が放出され;
iv) in vitro溶出試験で試験して、pH 7.5の緩衝液を含む溶出溶媒を採用する場合、約5時間以内、例えば約4時間以内、約3時間以内、約2時間以内、約1時間以内、又は約30分間以内に、タクロリムス又はその類似体の総量の約55% w/w以上、例えば約60% w/w以上、約65% w/w以上、約70% w/w以上、約75% w/w以上、又は約80% w/w以上が放出され;且つ/又は
v) in vitro溶出試験で試験して、pH 7.5の緩衝液を含む溶出溶媒を採用する場合、最初の3時間以内、例えば最初の2時間以内又は最初の1時間以内に、タクロリムス又はその類似体の総量の約20% w/w以上、例えば約25% w/w以上、約30% w/w以上、約35% w/w以上、約40% w/w以上が放出される。
【0080】
興味深い実施態様において、組成物は、タクロリムス又はその類似体の遅延放出を有するように構成される。従って、本発明は、1種又は2種以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に、タクロリムス又はその類似体を含む粒子形態の医薬組成物であって、これを必要とする哺乳動物に経口投与すると、組成物は、投与後、最初の2時間以内、例えば最初の1時間以内にタクロリムス又はその類似体の総量の約10% w/w以下、例えば約7.5% w/w以下、又は約5% w/w以下が放出されるように遅延放出を有する、医薬組成物を含む。
【0081】
他の実施態様において、酸性条件下で行われるin vitro溶出試験に関して、下記条件が満たされる:
i) pHが約5以下、例えば約4.5以下、約4以下、約3.5以下、約3以下、約2以下、又は約1.5以下の溶出溶媒を採用したin vitro溶出試験において、タクロリムス又はその類似体の約30% w/w以下、例えば約25% w/w以下、約20% w/w以下、約15% w/w以下、又は約10% w/w以下が2時間以内に放出され;
ii) pHが約5以下、例えば約4.5以下、約4以下、約3.5以下、約3以下、約2以下、又は約1.5以下の溶出溶媒を採用したin vitro溶出試験において、タクロリムス又はその類似体の約10% w/w以下、例えば約7.5% w/w以下、約5% w/w以下、又は約2.5% w/w以下が2時間以内に放出され;
iii) pHが約4.5以下、例えば約4.0以下、約3.5以下、約3以下、約2以下、又は約1.5以下の溶出溶媒を採用したin vitro溶出試験において試験したときに、タクロリムス又はその類似体の約60% w/w以下、例えば約50% w/w以下、約40% w/w以下、又は約30% w/w以下が15時間以内に放出され;
iv) pHが約4.5以下、例えば約4.0以下、約3.5以下、約3以下、約2以下、又は約1.5以下の溶出溶媒を採用したin vitro溶出試験において試験したときに、タクロリムス又はその類似体の約40% w/w以下、例えば約30% w/w以下、約25% w/w以下、又は約20% w/w以下が6時間以内に放出され;且つ/又は、
v) pHが約4.5以下、例えば約4.0以下、約3.5以下、約3以下、約2以下、又は約1.5以下の溶出溶媒を採用したin vitro溶出試験において試験したときに、タクロリムス又はその類似体の約30% w/w以下、例えば約25% w/w以下、約20% w/w以下、又は約15% w/w以下が4時間以内に放出される。
【0082】
タクロリムスとは別に、本発明の組成物はさらに、治療上、予防上及び/又は診断上活性の別の物質を含んでもよい。とりわけ、タクロリムスと、下記活性物質のうちの1つ以上との組み合わせが重要である:臓器移植との関連において使用するように指示される物質、例えばステロイド、カルシニューリン・インヒビター及び/又は抗増殖剤。具体例は、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、シクロスポリン、マイコフェノレート、アザチオプリン、シロリムス、エベロリムス、マイコフェノレートナトリウム、及びFTY720(Novartis)を含む。
【0083】
医薬組成物は任意の好都合な方法、例えば造粒、混合、噴霧乾燥などによって調製することができる。特に有用な方法は、国際公開第03/004001号パンフレットに記載された方法である。本明細書中に記載されているのは、制御凝集法により粒子材料を調製する方法、つまり、粒子サイズの制御した状態での成長を可能にする方法である。この方法は、溶融されている例えばタクロリムスと担体とを含む第1の組成物を、第2の固形担体媒質上に噴霧することに関与する。しかし通常は、溶融可能な担体の融点はタクロリムスの融点よりも5℃以上低い。担体の融点は10〜150℃であり、例えば30〜100℃又は40〜50℃が最も好ましい。
【0084】
薬学的に許容され、タクロリムスを溶解又は少なくとも部分溶解させることができ、また所望の範囲の融点を有することができる好適な担体を、一般的な知識及び日常的な試験によって選択することは、平均的当業者の技術範囲内である。好適な担体候補は、国際公開第03/004001号パンフレットに記載されている。これを参考のため本明細書中に引用する。
【0085】
本明細書との関連において、好適な担体は、油又は油様材料(本明細書中で後で論じる)並びに国際公開第03/004001号パンフレットに開示された担体である。
【0086】
国際公開第03/004001号パンフレットに記載された制御凝集法を用いる利点は、粒子サイズの望ましくない成長なしに、粒子材料に比較的多量の溶融を適用することが可能であることである。従って本発明の1実施態様において、医薬組成物の粒子材料の幾何重量平均直径dgwは≧約10 μm、例えば≧20 μm、約20〜約2000、約30 μm〜約2000 μm、約50 μm〜約2000 μm、約60 μm〜約2000 μm、約75 μm〜約2000 μm、例えば約100 μ〜約1500 μm、約100 μm〜約1000 μm、又は約100 μm〜約700 μm、又は約400 μm以下、又は約300 μm以下、例えば約50 μm〜約400 μm、例えば約50 μm〜約350 μm、約50 μm〜約300 μm、約50 μm〜約250 μm又は約100 μm〜約300 μmである。
【0087】
上述の方法によって得られる粒子状材料は、流動性及び/又は圧縮性に関して好適な性質を有しており、従ってさらに加工して製薬投与形態にするのに適している。
【0088】
タクロリムスの固体分散体及び/又は固溶体
本発明の好ましい実施態様において使用される固体分散体又は固溶体は、タクロリムス及びその類似体の中から選択された活性成分を含み、この成分は約0.01 w/w%〜約15 w/w%の濃度において融点(凝固点又は流動点)が20℃以上の親水性又は水混和性ビヒクル中に分散又は溶解され、分散体は、周囲温度(室温)で固体分散体又は固溶体を形成する。
【0089】
親水性又は水混和性ビヒクル中の活性成分の濃度は、約15 w/w%以下、好ましくは約10 w/w%以下、好ましくは約8 w/w%以下、より好ましくは約6 w/w%以下、さらにより好ましくは約5 w/w%以下、約4 w/w%以下、特に約3 w/w%以下、具体的には約2 w/w%以下であり;且つ/又は、約0.05 w/w%以上、好ましくは約0.1 w/w%以上、より好ましくは約0.5 w/w%以上、特に約0.7 w/w%以上、具体的には約1 w/w%以上である。
【0090】
物理的に見て、活性成分とビヒクルとの組み合わせは、固体分散体(すなわち活性成分が粒子形態でビヒクル中に分散されている)を形成するか、或いは、固溶体(すなわち活性成分が分子レベルでビヒクル中に溶解されている)を形成することができる。活性成分及びビヒクルは、分子レベルで溶解された活性成分の一部を有する固体分散体を形成することもできる。分散体及び/又は溶体の物理的状態は、種々の技術、例えば高温顕微鏡(HSM)、示差走査熱量計(DSC)、走査電子顕微鏡(SEM)と、場合によりエネルギー分散型X線(EDX)及びX線粉末解析との組み合わせによって決定することができる。好ましい実施態様の場合、活性成分はビヒクル中に完全に溶解され、これにより周囲温度で固溶体が形成される。
【0091】
本発明の固体分散体は、水性溶出溶媒を使用したUSPによる溶出試験において分散体又は溶体を含む組成物を試験すると、高速の即時のタクロリムス放出を示し、約30分間以内、好ましくは20分間以内、より好ましくは15分間以内で、活性薬剤成分の50w/w%以上が放出され;例えば約40分間以内で、活性薬剤成分の75w/w%以上が放出され、又はさらにより好ましくは、60分間以内、より好ましくは45分間以内で、活性薬剤成分の90w/w%以上が放出される。例えば、試験はUSPに記載された任意の方法及び任意の仕様に従って実施することができる。従って、溶出試験は、中性又は近中性pH、例えばpH 6.8、又は胃腸管内のpH条件をシミュレートする任意の酸性pHの水性溶出溶媒中で行うことができる。しかし、採用される具体的な方法、及び溶出溶媒中に含有される成分などに関する変形も、本発明の範囲に含まれる。例えばUSP、Ph.Eurなどの指針を用いて好適な溶出試験をいかにして行うかは当業者に明らかである。in vitro溶出試験に適した条件は、USP溶出試験(パドル法)、及び溶出溶媒として2.5% SDS及び1g/mLのパンクレアチンを含有するpH 7.5の緩衝液を採用する。
【0092】
本発明に従って使用されるべき親水性又は水混和性ビヒクルの融点(凝固点又は流動点)は20℃以上、より好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、さらにより好ましくは52℃以上、さらにより好ましくは55℃以上、さらにより好ましくは59℃以上、特に61℃以上、具体的には65℃以上である。
【0093】
本発明に従って使用されるべき有用な親水性又は水混和性ビヒクルの例は、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオキシド、ポロキサマー、ポリオキシエチレンステアレート、ポリ-イプシロンカプロラクトン、ポリグリコール化グリセリド、例えばGelucire(登録商標)、及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0094】
本発明の好ましい実施態様の場合、ビヒクルは、ポリエチレングリコール(PEG)、具体的には平均分子量が1500以上、好ましくは3000以上、より好ましくは4000以上、特に6000以上のPEGである。ポリエチレングリコールは有利には、1種又は2種以上の親水性又は水混和性ビヒクル、例えばポロキサマーと、好ましくは1:3〜10:1、好ましくは1:1〜5:1、より好ましくは3:2〜4:1、特に2:1〜3:1、具体的には約7:3の比で混合することができる。有用な混合物の具体例は、7:3の比のPEG6000とポロキサマー188との混合物である。
【0095】
ポリエチレングリコール(PEG)の場合、平均分子量が増大するにつれて融点(凝固点又は流動点)も増大する。例えばPEG 400は4〜8℃であり、PEG 600は20〜25℃であり、PEG 1500は44〜48℃であり、PEG 2000は約52℃であり、PEG 4000は約59℃であり、PEG 6000は約65℃であり、PEG 8000は約61℃である。
【0096】
有用なポロキサマー(ポリオキシプロピレン-ポリオキシエチレン・ブロックコポリマーとも呼ばれる)は例えば、ポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、又はポロキサマー407、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのその他のブロックコポリマー、例えばPluronic(登録商標)及び/又はTetronic(登録商標)シリーズである。Pluronic(登録商標)シリーズの好適なブロックコポリマーは、分子量が約3,000以上、例えば約4,000〜約20,000であり、且つ/又は粘度(ブルックフィールド)が約200〜約4,000 cps、例えば約250〜約3,000 cpsであるポリマーを含む。好適な例は、Pluronic(登録商標) F38、P65, P68LF, P75, F77, P84, P85, F87, F88, F98, P103, P104, P105, F108, P123, F123, F127, 10R8, 17R8, 25R5, 25R8などを含む。Tetronic(登録商標)シリーズの好適なブロックコポリマーは、分子量が約8,000以上、例えば約9,000〜約35,000であり、且つ/又は粘度(ブルックフィールド)が約500〜約45,000 cps、例えば約600〜約40,000 cpsであるポリマーを含む。上記粘度は、室温においてペーストである物質に対しては60℃で、そして室温で固形物である物質に対しては77℃で測定される。
【0097】
本発明の好ましい実施態様の場合、ポロキサマーは、平均分子量が約8400であり融点が約50〜54℃であるポロキサマー188である。
【0098】
他の有用な親水性又は水混和性ビヒクルは、ポリビニルピロリドン、ポリビニル-ポリビニルアセテート・コポリマー(PVP-PVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸ポリマー(Eudragit RS; Eudragit RL; Eudragit NE; Eudragit E)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースを含むセルロース誘導体、ペクチン、シクロデキストリン、ガラクトマンナン、アルギネート、カラゲネート、キサンタンガム及びこれらの混合物であってよい。
【0099】
「ポリグリコール化グリセリド」は、適切な場合には遊離グリセロールと遊離PEGとの、好ましくは分子量200〜600の、モノ-、ジ-及びトリグリセリドと、ポリエチレングリコール(PEG)モノ-及びジエステルとの混合物を意味し、そのHLB値は、PEG鎖の長さによって調節され、そしてその融点は、PEGの脂肪酸の鎖の長さによって、そして脂肪酸、ひいては出発油の飽和度によって調節され;このような混合物の例は、Gelucire(登録商標)である。Gelucire(登録商標)組成物は不活性半固形ワックス状材料であり、このような材料は両親媒性の特徴を有し、物理的特徴を変化させることにより利用可能である。これらは事実上、界面活性であり、そして、ミセル、顕微鏡的な球体又は小胞を形成する水性媒質中に分散又は可溶化する。これらの材料は、その融点/HLB値によって同定される。融点は摂氏で表され、そしてHLB(親水性-親油性バランス)は、0〜約20の数字目盛りである。低いHLBは、親油性及び疎水性がより高い物質を意味し、そしてより高い値は、親水性及び疎油性がより高い物質を意味する。水又は油性物質に対する化合物の親和性が決定され、そしてそのHLB値が試験によって帰属される。融点及び/又はHLB値の所望の特徴を得るために、Gelucire(登録商標)の1等級又は種々異なる等級の混合物を選ぶことができる。これらの混合物は、長鎖(C12-C18)脂肪酸のグリセリドのモノエステル、ジエステル及び/又はトリエステルと、長鎖(C12-C18)脂肪酸のPEG(モノ-及び/又はジ)エステルとの混合物であり、遊離PEGを含むことができる。Gelucire(登録商標)組成物は、グリセロールの脂肪酸エステル及びPEGエステルとして、又はポリグリコール化グリセリドとして一般に記述される。Gelucire(登録商標)組成物は、約33℃〜約64℃、及び最も一般的には約35℃〜約55℃という広範囲の融点によって、そして約1〜約14、及び最も一般的には約7〜約14という種々のHLB値によって特徴付けられる。例えばGelucire(登録商標)50/13は、約50℃の融点及び約13のHLB値を、Gelucire(登録商標)のこの等級に指定している。
【0100】
薬学的に許容される賦形剤
本発明による組成物又は固形投与形態において使用するのに適した例は、充填剤、希釈剤、崩壊剤、バインダー及び滑剤など、及びこれらの混合物を含む。本発明による組成物又は固形投与形態を種々異なる目的で使用することができるので、賦形剤は通常、このような種々異なる用途を考慮に入れて選ばれる。好適な使用のためのその他の薬学的に許容される賦形剤は、例えば酸性化剤、アルカリ化剤、保存剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート剤、着色剤、錯化剤、乳化剤及び/又は可溶化剤、矯味剤及び香料、保湿剤、甘味剤、及び湿潤剤などである。
【0101】
好適な充填剤、希釈剤及び/又はバインダーの例は、ラクトース(例えば噴霧乾燥型ラクトース、α-ラクトース、β-ラクトース、Tabletose(登録商標)、種々の等級のPharmatose(登録商標)、Microtose(登録商標)、又はFast-Floc(登録商標))、微結晶性セルロース(種々の等級のAvicel(登録商標)、Elcema(登録商標)、Vivacel(登録商標)、Ming Tai(登録商標)、又はSolka-Floc(登録商標))、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、L-ヒドロキシプロピルセルロース(低置換型)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)(例えばShin-Etsu, LtdのMethocel E, F及びK、Metolose SH、例えば4000 cps等級のMethocel E及びMetolose 60 SH、4000 cps等級のMethocel F及びMetolose 65 SH、4,000, 15,000及び100,000 cps等級のMethocel K;及び4,000, 15,000, 39,000及び100,000等級のMetolose 90 SH)、メチルセルロース・ポリマー(例えばMethocel A, Methocel A4C, Methocel A15C, Methocel A4M)、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、カルボキシメチレン、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、及びその他のセルロース誘導体、スクロース、アガロース、ソルビトール、マンニトール、デキストリン、マルトデキストリン、澱粉又は改質澱粉(ジャガイモ澱粉、トウモロコシ澱粉及びコメ澱粉を含む)、リン酸カルシウム(例えば塩基性リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、第二リン酸カルシウム水和物)、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルギン酸ナトリウム、コラーゲンなどを含む。
【0102】
希釈剤の具体例は、例えば炭酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、微結晶性セルロース、粉末セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、フルクトース、カオリン、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、澱粉、プレゼラチン化澱粉、スクロース、糖などである。
【0103】
崩壊剤の具体例は、例えばアルギン酸又はアルギネート、微結晶性セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、及びその他のセルロース誘導体、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、ナトリウム澱粉グリコレート、澱粉、プレゼラチン化澱粉、カルボキシメチル澱粉(例えばPrimogel(登録商標)及びExplotab(登録商標))などである。
【0104】
バインダーの具体例は、例えばアカシア、アルギン酸、寒天、カルシウムカラゲナン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、微結晶性セルロース、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、液体グルコース、グアールガム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、PEG、ポビドン、プレゼラチン化澱粉などである。
【0105】
組成物中には流動促進剤及び滑剤を含むこともできる。その例は、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム又はその他の金属ステアリン酸塩、タルク、ワックス及びグリセリド、軽油、PEG、グリセリルベヘネート、コロイドシリカ、水素化植物油、トウモロコシ澱粉、ナトリウムステアリルフマレート、ポリエチレングリコール、アルキルスルフェート、ナトリウムベンゾエート、ナトリウムアセテートなどを含む。
【0106】
本発明の組成物又は固形投与形態中に含むことができるその他の賦形剤は、例えば矯味剤、着色剤、味マスキング剤、pH調節剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、抗酸化剤、湿潤剤、湿度調節剤、界面活性剤、懸濁剤、吸収促進剤、放出調整剤などである。
【0107】
本発明による組成物又は固形投与形態における他の添加剤は、抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、次亜リン酸、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、没食子酸プロピル、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、二酸化イオウ、トコフェロール、トコフェロールアセテート、トコフェロールヘミスクシネート、TPGS又は他のトコフェロール誘導体などであってよい。担体組成物は例えば、安定剤を含有してもよい。担体組成物中の抗酸化剤及び/又は安定剤の濃度は通常、約0.1 % w/w〜約5 % w/wである。
【0108】
本発明による組成物又は固形投与形態は、1種又は2種以上の界面活性剤、又は界面活性特性を有する物質を含むこともできる。このような物質は、わずかに可溶性の活性物質の湿潤に関与し、ひいては活性物質の溶解度特性の改善に関与する。
【0109】
本発明による組成物又は固形投与形態における使用に適した賦形剤は、界面活性剤、例えばLipocine, Incの名称で国際公開第00/50007号パンフレットに開示された両親媒性界面活性剤である。
【0110】
好適な例は、
i) ポリエトキシル化脂肪酸、例えばポリエチレングリコールの脂肪酸モノ又はジエステル又はこれらの混合物、例えばポリエチレングリコールとラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リシノール酸とのモノ又はジエステル(ポリエチレングリコールは、PEG 4, PEG 5, PEG 6, PEG 7, PEG 8, PEG 9, PEG 10, PEG 12, PEG 15, PEG 20, PEG 25, PEG 30, PEG 32, PEG 40, PEG 45, PEG 50, PEG 55, PEG 100, PEG 200, PEG 400, PEG 600, PEG 800, PEG 1000, PEG 2000, PEG 3000, PEG 4000, PEG 5000, PEG 6000, PEG 7000, PEG 8000, PEG 9000, PEG 1000, PEG 10,000, PEG 15,000, PEG 20,000, PEG 3,500から選択することができる);
ii) ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル(すなわち、上述のようなエステルではあるが、しかし個々の脂肪酸のグリセリルエステル形態を成す);
iii) 例えば植物油、例えば水素化ヒマシ油、アーモンド油、パーム核油、ヒマシ油、杏仁油、オリーブ油、落花生油、水素化パーム核油などを有するグリセロール、プロピレングリコール、エチレングリコール、PEG又はソルビトールエステル;
iv) ポリグリセロール化脂肪酸、例えばポリグリセロールステアレート、ポリグリセロールオレエート、ポリグリセロールリシノレエート、ポリグリセロールリノレエート;
v) プロピレングリコール脂肪酸エステル、例えばプロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールリシノレエートなど;
vi) モノ-及びジグリセリド、例えばグリセリルモノオレエート、グリセリルジオレエート、グリセリルモノ-及び/又はジオレエート、グリセリルカプリレート、グリセリルカプレートなど;
vii) ステロール及びステロール誘導体;
viii) ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル(PEG-ソルビタン脂肪酸エステル)、例えば上記種々の分子量を有するPEGのエステル、及び種々のTween(登録商標)シリーズ;
ix) ポリエチレングリコールアルキルエーテル、例えばPEGオレイルエーテル及びPEGラウリルエーテル;
x) 糖エステル、例えばスクロースモノパルミテート及びスクロースモノラウレート;
xi) ポリエチレングリコールアルキルフェノール、例えばTriton(登録商標)X又はNシリーズ;
xii) ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン・ブロックコポリマー、例えばPluronic(登録商標)シリーズ、Synperonic(登録商標)シリーズ、Emkalyx(登録商標)、Lutrol(登録商標)、Supronic(登録商標)など(これらのポリマーの一般名称は「ポロキサマー」であり、本明細書との関連における該当例は、ポロキサマー105, 108, 122, 123, 124, 181, 182, 183, 184, 185, 188, 212, 215, 217, 231, 234, 235, 237, 238, 282, 284, 288, 331, 333, 334, 335, 338, 401, 402, 403及び407である);
xiii) ソルビタン脂肪酸エステル、例えばSpan(登録商標)シリーズ又はAriacel(登録商標)、例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレートなど;
xiv) 低級アルコール脂肪酸エステル、例えばオレエート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテートなど;
xv) カチオン性、アニオン性及び両性イオン性界面活性剤を含むイオン性界面活性剤、例えば脂肪酸塩、胆汁塩、リン脂質、リン酸エステル、カルボキシレート、スルフェート及びスルホネートなど
である。
【0111】
界面活性剤、又は界面活性剤の混合物が本発明による組成物又は固形投与形態中に存在するときには、界面活性剤の濃度は通常、約0.1〜80% w/w、例えば約0.1〜20% w/w、約0.1〜15% w/w、約0.5〜約10% w/w、或いは約0.10〜約80% w/w、例えば約10〜約70% w/w、約20〜約60% w/w、又は約30〜約50% w/wである。
【0112】
本発明の具体的な観点において、1種又は2種以上の薬学的に許容される賦形剤が、シリカ酸又はその誘導体又はシリケートを含むその塩、二酸化ケイ素及びそのポリマー;マグネシウムアルミノシリケート及び/又はマグネシウムアルミノメタシリケート、ベントナイト、カオリン、マグネシウムトリシリケート、モンモリロナイト及び/又はサポナイトから成る群から選択される。
【0113】
このような材料は特に、薬剤、化粧品及び/又は食品中の油又は油様材料のための吸着材料として特に有用である。具体的な実施態様の場合、この材料は、薬剤中の油又は油様材料のための吸着材料として使用される。油又は油様材料のための吸着材料として機能する能力を有する材料は「油吸着材料」とも呼ばれる。さらに、本明細書との関連において、「吸着」という用語は、「吸収」並びに「吸着」を意味するために使用される。言うまでもなく、これらの用語の一方が使用されるときにはいつでも、吸収という現象並びに吸着という現象に範囲が及ぶものとする。
【0114】
とりわけ、薬学的に許容される賦形剤は、シリカ酸又はその誘導体又は塩、例えば二酸化ケイ素及びそのポリマーを薬学的に許容される賦形剤として含むことができる。採用される品質に応じて、二酸化ケイ素は滑剤であってよく、又は油吸着剤料であってもよい。後者の機能を満たす品質が最も重要であると思われる。
【0115】
具体的な実施態様において、本発明による組成物又は固形投与形態が含む薬学的に許容される賦形剤は、Aeroperl(登録商標)300(ドイツ国フランクフルト在、Degussaから入手可能)に対応する特性を有する二酸化ケイ素生成物である。本明細書の実施例から明らかになるように、Aeroperl(登録商標)300(Aeroperl(登録商標)300のような又はAeroperl(登録商標)300に対応する特性を有する材料を含む)は極めて好適な材料である。
【0116】
本発明による組成物又は投与形態における油吸着材料の使用は、医薬組成物、化粧品、栄養組成物及び/又は食物組成物の調製に極めて有利である。組成物は油又は油様材料を含む。利点の一つは、比較的多量の油及び油様材料を組み込み、そしてなおも固形材料を有することが可能なことである。従って、比較的高い添加率の油及び油様材料を有する固形組成物を、本発明による油吸着材料を使用することにより調製することが可能である。製薬分野では、特に、活性物質が水溶性(低い水溶性)、水性媒質中の安定性(すなわち水性媒質中で分解が発生する)、経口生体利用効率(すなわち低い経口生体利用効率)などに関して好適な特性を有していない状況において、又は活性物質の制御送達、遅延送達、持続送達及び/又はパルス送達を得るために、組成物からの活性物質の放出を改質することが望ましい状況において、比較的多量の油又は油様材料を固形組成物中に組み込むことができることが利点である。従って、具体的な実施態様の場合、医薬組成物の調製に油吸着材料が使用される。
【0117】
固形組成物に加工する際に使用するための油吸着材料は通常、油及び油様材料の約5% w/w以上、例えば、約10% w/w以上、約15% w/w以上、約20% w/w以上、約25% w/w以上、約30% w/w以上、約35% w/w以上、約40% w/w以上、約45% w/w以上、約50% w/w以上、約55% w/w以上、約60% w/w以上、約65% w/w以上、約70% w/w以上、約75% w/w以上、約80% w/w以上、約85% w/w以上、約90% w/w以上、又は約95% w/w以上を吸収し、そしてなおも固形材料である。
【0118】
本発明のさらに別の観点は、油及び油性材料を含む組成物又は固形投与形態に関する。
【0119】
本明細書との関連において、「油及び油性材料」という用語は、油、ワックス、半固形材料、及び製薬分野において溶剤(例えば有機溶剤)又は補助溶剤として通常使用される材料を含む極めて幅広い意味で使用され、またこの用語は、周囲温度で液状の治療上且つ/又は予防上活性の物質を含み、さらにこの用語は、エマルジョン、例えばマイクロエマルジョン及びナノエマルジョン、及び懸濁液を含む。吸収することができる油及び油様材料は、通常、周囲温度又は高温(実際上の理由から最大温度は約250℃である)で液体となる。これらは親水性、親油性、疎水性及び/又は両親媒性材料であってよい。
【0120】
本明細書との関連において使用するのに適した油及び油様材料は、融点が約0℃以上であり且つ約250℃以下である物質又は材料である。
【0121】
本発明の具体的な実施態様の場合、油又は油様材料の融点は、約5℃以上、例えば約10℃以上、約15℃以上、約20℃以上、又は約25℃以上である。
【0122】
本発明の別の実施態様の場合、油又は油様材料の融点は、約25℃以上、例えば約30℃以上、約35℃以上、又は約40℃以上である。実際上の理由から、融点は通常は過度に高いことはなく、従って、油又は油様材料の融点は通常、約300℃以下、例えば約250℃以下、約200℃以下、約150℃以下、又は約100℃以下である。融点がこれよりも高いと、比較的高い温度が、例えば治療上及び/又は予防上活性の物質が含まれる事例において、例えば活性物質の酸化又は他の種類の分解を促進することがある。
【0123】
本明細書との関連において、融点はDSC(示差走査熱量計)によって測定される。融点は、DSC曲線の線形増大が温度軸と交差するときの温度として測定される。
【0124】
興味深い油又は油様材料は一般に、いわゆる溶融バインダー又は固形溶剤(固形投与形態の形)として、又は局所用薬剤中の補助溶剤又は成分として薬剤を製造するのに使用される物質である。
【0125】
油又は油様材料は親水性、疎水性であり、且つ/又は界面活性特性を有してよい。一般に、親水性及び/又は疎水性の油又は油様材料は、比較的低い水溶性を有する治療上且つ/又は予防上活性の物質を含む医薬組成物を製造する際に、且つ/又は、医薬組成物からの活性物質の放出が即時性又は非改質型であるように設計されている場合に使用するのに適している。疎水性の油又は油様材料は、他方において、改質型放出医薬組成物の製造に通常使用される。上記考察事項は、一般原理を説明するために単純にして述べたが、油及び油様材料の他の組み合わせ及び他の目的が関連する多くの事例があり、従って上記例は本発明を決して限定するものではない。
【0126】
典型的には、好適な親水性の油又は油様材料は、ポリエーテルグリコール、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;ポリオキシエチレン;ポリオキシプロピレン;ポロキサマー及びこれらの混合物から成る群から選択され;或いは、キシリトール、ソルビトール、カリウムナトリウムタルトレート、スクローストリベヘネート、グルコース、ラムノース、ラクチトール、ベヘン酸、ヒドロキノンモノメチルエーテル、ナトリウムアセテート、エチルフマレート、ミリスチン酸、クエン酸、Gelucire(登録商標)50/13、他のGelucireタイプ、例えばGelucire(登録商標)44/14など、Gelucire(登録商標)50/10、Gelucire(登録商標)62/05、Sucro-エステル7、Sucro-エステル11、Sucro-エステル15、マルトース、マンニトール及びこれらの混合物の中から選択することができる。
【0127】
好適な疎水性の油又は油様材料は、直鎖飽和型炭化水素、ソルビタン・エステル、パラフィン;油脂及び油、例えばココアバター、牛脂、ラード、ポリエーテルグリコール・エステル;高級脂肪酸、例えばステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、高級アルコール、例えばセタノール、ステアリルアルコール、低融点ワックス、例えばグリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレエート、水素化獣脂、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、置換型及び/又は無置換型モノグリセリド、置換型及び/又は無置換型ジグリセリド、置換型及び/又は無置換型トリグリセリド、蜜蝋、白蝋、カルナバ蝋、キャスター蝋、木蝋、アセチレートモノグリセリド;NVPポリマー、PVPポリマー、アクリル酸ポリマー及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0128】
興味深い実施態様の場合、油又は油様材料は、平均分子量が約400〜約35,000、例えば約800〜約35,000、約1,000〜約35,000であるポリエチレングリコール、例えばポリエチレングリコール1,000、ポリエチレングリコール2,000、ポリエチレングリコール3,000、ポリエチレングリコール4,000、ポリエチレングリコール5,000、ポリエチレングリコール6,000、ポリエチレングリコール7,000、ポリエチレングリコール8,000、ポリエチレングリコール9,000、ポリエチレングリコール10,000、ポリエチレングリコール15,000、ポリエチレングリコール20,000、ポリエチレングリコール35,000である。或る特定の状況では、ポリエチレングリコールは、約35,000〜約100,000の分子量を有するように採用することができる。
【0129】
興味深い別の実施態様の場合、油又は油様材料は、分子量が約2,000〜約7,000,000、例えば約2,000〜約100,000、約5,000〜約75,000、約10,000〜約60,000、約15,000〜約50,000、約20,000〜約40,000、約100,000〜約7,000,000、例えば約100,000〜約1,000,000、約100,000〜約600,000、約100,000〜約400,000、又は約100,000〜約300,000のポリエチレンオキシドである。
【0130】
別の実施態様の場合、油又は油様材料は、ポロキサマー、例えばポロキサマー188、ポロキサマー237、ポロキサマー338、又はポロキサマー407、又はエチレンオキシドとプロピレンオキシドとのその他のブロックコポリマー、例えばPluronic(登録商標)及び/又はTetronic(登録商標)シリーズである。Pluronic(登録商標)シリーズの好適なブロックコポリマーは、分子量が約3,000以上、例えば約4,00〜約20,000であり、且つ/又は粘度(ブルックフィールド)が約200〜約4,000 cps、例えば約250〜約3,000 cpsであるポリマーを含む。好適な例は、Pluronic(登録商標) F38、P65, P68LF, P75, F77, P84, P85, F87, F88, F98, P103, P104, P105, F108, P123, F123, F127, 10R8, 17R8, 25R5, 25R8などを含む。Tetronic(登録商標)シリーズの好適なブロックコポリマーは、分子量が約8,000以上、例えば約9,000〜約35,000であり、且つ/又は粘度(ブルックフィールド)が約500〜約45,000 cps、例えば約600〜約40,000 cpsであるポリマーを含む。上記粘度は、室温においてペーストである物質に対しては60℃で、そして室温で固形物である物質に対しては77℃で測定される。
【0131】
油又は油様材料は、ソルビタン・エステル、例えばソルビタンジイソステアレート、ソルビタンジオレエート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキ-イソステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンセスキステアレート、ソルビタントリ-イソステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート又はこれらの混合物であってもよい。
【0132】
油又は油様材料はもちろん、種々異なる油又は油様材料の混合物、例えば親水性及び/又は疎水性材料の混合物を含んでよい。
【0133】
他の好適な油又は油様材料は溶剤又は半固形賦形剤、例えばプロピレングリコール、Gelucire(登録商標)44/14を含むポリグリコール化グリセリド、カカオ脂、カルナバ蝋、植物油、例えばアーモンド油、ヤシ油、トウモロコシ油、綿実油、胡麻油、大豆油、オリーブ油、ヒマシ油、パーム核油、落花生油、菜種油、ブドウ種油などを含む植物起源の複合脂肪材料、水素化植物油、例えば水素化落花生油、水素化パーム核油、水素化綿実油、水素化大豆油、水素化ヒマシ油、水素化ヤシ油;蜜蝋、ラノリンを含む動物起源の天然型脂肪材料、セチル、ステアリル、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸脂肪アルコールを含む脂肪アルコール;グリセロールステアレート、グリコールステアレート、エチルオレエート、イソプロピルミリステートを含むエステル;Miglycol 810/812を含む液体エステル交換型半合成グリセリド;ステアラミドエタノール、脂肪ヤシ酸のジエタノールアミドを含むアミド又は脂肪酸アルコールアミド、モノ及びジグリセリドの酢酸エステル、モノ及びジグリセリドのクエン酸エステル、モノ及びジグリセリドの乳酸エステル、モノ及びジグリセリド、脂肪酸のポリ-グリセロールエステル、ポリ-グリセロールポリ-リシノレエート、脂肪酸のポリプロピレングリコールエステル、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ナトリウムステアロイルラクチレート、カルシウムステアロイルラクチレート、モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、などであってよい。
【0134】
通常、本発明による医薬組成物又は投与形態の、組成物中の油又は油様材料の濃度は、約5% w/w以上、例えば約10% w/w以上、約15% w/w以上、約20% w/w以上、約25% w/w以上、約30% w/w以上、約35% w/w以上、約40% w/w以上、約45% w/w以上、約50% w/w以上、約55% w/w以上、約60% w/w以上、約65% w/w以上、約70% w/w以上、約75% w/w以上、約80% w/w以上、約85% w/w以上、約90% w/w以上、又は約95% w/w以上である。
【0135】
本発明の組成物又は投与形態中の油又は油様材料の濃度は、約20% w/w〜約80% w/w、例えば約25% w/w〜約75% w/wである。
【0136】
利点の一つは、比較的多量の油及び油様材料を組み込み、そしてなおも固形材料を有することが可能なことである。従って、比較的高い添加率の油又は油様材料を有する固形組成物を、本発明による油吸着材料を使用することにより調製することが可能である。製薬分野では、特に、活性物質が水溶性(低い水溶性)、水性媒質中の安定性(すなわち水性媒質中で分解が発生する)、経口生体利用効率(すなわち低い経口生体利用効率)などに関して好適な特性を有していない状況において、又は活性物質の制御送達、遅延送達、持続送達及び/又はパルス送達を得るために、組成物からの活性物質の放出を改質することが望ましい状況において、比較的多量の油又は油様材料を固形組成物中に組み込むことができることが利点である。
【0137】
別の利点は、得られた粒子材料が自由流動性粉末であり、従って、例えば固形投与形態、例えば錠剤、カプセル剤又はサシェ剤に容易に加工可能である。通常、粒子材料は、多量の別の添加剤を添加することなしに直接的に圧縮することにより錠剤を製造するのに適している。粒子材料の流動性を試験するのに適した試験は、直径10.0 mmのノズル(オリフィス)を有する漏斗から出る材料の流量を測定する、Ph. Eurに記載された方法である。
【0138】
本発明の重要な実施態様の場合、タクロリムス及び/又はその類似体の少なくとも一部が、分子分散体及び固体分散体を含む固溶体の形態で、組成物中に存在する。通常、タクロリムス及び/又はその類似体の10% w/w以上、例えば20% w/w以上、30% w/w以上、40% w/w以上、50% w/w以上、60% w/w以上、70% w/w以上、80% w/w以上、90% w/w以上、95% w/w以上、又は100% w/wが固体分散体の形態で組成物中に存在する。
【0139】
固体分散体は、種々異なる方法、例えば、有機溶剤を採用することにより、又は別の好適な媒質(例えば室温又は高温において液状である油又は油様材料)中に活性物質を分散又は溶解することにより得ることができる。
【0140】
固体分散体(溶剤法)は、例えば活性物質(例えば薬物物質)と担体との物理的混合物を共通の有機溶剤中に溶解し、続いて溶剤を蒸発させることにより調製することができる。担体はしばしば親水性ポリマーである。好適な有機溶剤は、活性物質が可溶性である薬学的に許容される溶剤、例えばメタノール、エタノール、メチレンクロリド、クロロホルム、エチルアセテート、アセトン又はこれらの混合物を含む。
【0141】
好適な水溶性担体は、ポリマー、例えばポリエチレングリコール、ポリオキサマー、ポリオキシエチレンステアレート、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン-ポリビニルアセテート・コポリマー(PVP-PVA)(Kollidon VA64)、ポリメタクリル酸ポリマー(Eudragit RS; Eudragit RL; Eudragit NE; Eudragit E)及びポリビニルアルコール(PVA)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、及びポリ(エチレンオキシド)(PEO)を含む。
【0142】
固体分散体にとって好適なのは酸性官能基を含有するポリマーであり、これらのポリマーは、腸において許容される吸収作用を可能にする好ましいpH範囲で活性物質を放出する。このようなポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HMPCP)、ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、アルギネート、カルボマー、カルボキシメチルセルロース、メタクリル酸コポリマー(例えばEudragit L及びEudragit S)、セラック、セルロースアセテートフタレート(CAP)、澱粉グリコレート、ポラクリリン、メチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート及びセルロースアセテートトリメリテートから成る群から選択された1つ又は2つ以上であってよい。
【0143】
固体分散体中の活性物質及びポリマーの量に関して、活性物質とポリマーとの重量比は約3:1〜約1:20であってよい。しかし、約3:1〜約1:5、例えば約1:1〜約1:3という、より狭い範囲を用いることもできる。
【0144】
固体分散体は好ましくは、噴霧乾燥技術、制御凝集、凍結乾燥、又は担体上の粒子のコーティング、又は任意のその他の溶剤除去法により形成される。乾燥済生成物は、分子分散体と固溶体とを含む固体分散体の形態で存在する活性物質を含有する。
【0145】
有機溶剤を使用する代わりに、薬物とポリマーとを高温で同時粉砕するか又は押し出すことができる(溶融押出)。
【0146】
少なくとも部分的に固体分散体又は固溶体の形態を成すタクロリムスを含む医薬組成物は、原理的には、当業者に知られた医薬組成物を調製するのに適した任意の手順を用いて調製することができる。
【0147】
有機溶剤に基づく方法を用いることを別として、制御凝集法において使用される担体組成物中にタクロリムスを分散及び/又は溶解することにより、タクロリムス及び/又はその類似体の固体分散体又は固溶体を得ることができる。固体分散体/固溶体の安定性を保証するために、安定剤などを添加することができる。
【0148】
別の観点において、本発明は、本発明による医薬組成物の調製方法に関する。一般に製薬分野における任意の好適な方法を採用することができる。しかし、比較的多量の油又は油様材料を組み込むことを可能にするために、特に国際公開第03/004001号パンフレットに記載された方法が有用であることが判っている。国際公開第03/004001号パンフレットを参考のため本明細書中に引用する。この方法は液状の第1の組成物を第2の組成物上に噴霧することを含み、前記第1の組成物は第1のビヒクル又は担体を含みその融点は5℃を上回り、前記第2の組成物は第2の支持体又は担体材料を含み、例えば流動化された状態にあり、そして第1のビヒクル又は担体の融点を下回る温度を有している。活性物質は、第1のビヒクル又は担体組成物中、及び/又は、第2の支持体又は担体組成物中に存在してよい。しかし、タクロリムス及び/又はその類似体が少なくとも部分的に固体分散体として存在する場合には、第1のビヒクル又は担体組成物中にタクロリムス及び/又はその類似体を組み込むか又は溶解することが有利である。
【0149】
固形投与形態
本発明による医薬組成物は粒子形態を成しており、そしてそのようなものとして採用することができる。しかし多くの場合、顆粒、ぺレット、ミクロ球体又はナノ粒子などの形態で、又は錠剤、カプセル剤及びサシェ剤などを含む固形投与形態でこの組成物を提供することがより好都合である。本発明による固形投与形態は、単一の単位投与形態であってよく、或いは、ポリデポ投与形態を成して、多数の個々の単位、例えばぺレット、ビード及び/又は顆粒を含有してもよい。
【0150】
通常、本発明の医薬組成物又は固形投与形態は、経口、口腔内又は舌下投与ルートを介して投与されるように意図されている。
【0151】
本発明はまた、上述の提供形態に関する。本発明の範囲には、タクロリムス及び/又はその類似体を高速放出、遅延放出又は改質放出の状態で放出するように意図された組成物/固形投与形態が含まれる。これらの放出状態の全ては、制御された状態と考えられる。さらに、「制御された状態」という用語はpH依存性放出にも範囲が及ぶ。
【0152】
本発明による固形投与形態は、上述のような粒子形態を成す医薬組成物を含む。本発明のこの主な観点において開示された詳細及び細目は、必要な変更を加えて、本発明の他の観点にも当てはまる。従って、生体利用効率の増大、生体利用効率パラメーターの変化、不都合な食物効果の低減、並びに、粒子形態の医薬組成物に関して本明細書中に記載及び/又は主張されたクロリムス及び/又はその類似体の放出などに関する特性は、本発明による固形投与形態に関して類似する。
【0153】
通常、粒子形態の医薬組成物の濃度は、投与形態の約5%〜100% w/w、例えば約10%〜90% w/w、約15%〜85% w/w、約20%〜80% w/w、約25%〜80% w/w、約30%〜80% w/w、約35%〜80% w/w、約40%〜75% w/w、約45%〜75% w/w、約50%〜70% w/wである。本発明の1実施態様の場合、粒子形態の医薬組成物の濃度は、投与形態の約50% w/w以上である。
【0154】
本発明による固形投与形態は、当業者に知られた技術によって、本発明による粒子材料を加工することにより得られる。通常、固形投与形態は、本明細書中に述べられた薬学的に許容される賦形剤のうちの1種又は2種以上をさらに添加することを伴う。
【0155】
本発明による組成物又は固形投与形態は、生体利用効率の増大が存在することを条件として、任意の好適な状態でクロリムス及び/又はその類似体を放出するように設計することができる。こうして活性物質は、作用の発現を高めるために相対的に速く放出するか、又はゼロ次又は一次速度過程に従うように放出するか、又は所定の放出パターンを得るために改質された状態で放出することができる。これらの方法の全ては、制御された状態と考えられる。ただの配合物も本発明の範囲に含まれる。
【0156】
Prograf(登録商標)の推奨投与量範囲は、2回の投与に分けて、12時間毎に0.1〜0.2 mg/kg/日である。より重要なのは、血中レベルをモニタリングしなければならないことである。
【0157】
1〜3か月の典型的なレベルは、7〜20 ng/mLであり、4〜12か月のレベルは5〜15 ng/mLであるべきである。これは、指針のための値に過ぎず、移植物及び民族性に応じて変化してよい。
【0158】
下記のものは腎移植患者に関して見いだされたものである。
【0159】
【表1】

【0160】
本発明の生成物の予期される投与量推奨値は、1日1回の投与で、0.02 mg/kg/日〜0.15 mg/kg/日となる。
【0161】
本発明による組成物又は固形投与形態は、フィルム・コーティング、腸溶性コーティング、改質放出コーティング、保護コーティング、付着防止コーティングなどでコーティングすることもできる。
【0162】
本発明による固形投与形態をコーティングすることにより、例えば活性物質の制御放出に関して好適な特性を得ることもできる。コーティングは、単一単位投与形態(例えば錠剤、カプセル剤)上に塗布することができ、或いはポリデポ投与形態上、又はその個々の単位上に塗布することもできる。
【0163】
好適なコーティング材料は、例えばメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、アクリル酸ポリマー、エチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリビニルアルコール、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートフタレート、ゼラチン、メタクリル酸コポリマー、ポリエチレングリコール、セラック、スクロース、二酸化チタン、カルナバ蝋、微結晶性ワックス、グリセリルモノステアレート、ゼインである。
【0164】
コーティング材料中には可塑剤及びその他の成分を添加することができる。同じ又は異なる活性物質をコーティング材料中に添加することもできる。
【0165】
本発明の好ましい実施態様の場合、固形投与形態は、クロリムス及び/又はその類似体を制御状態で放出するように設計される。本明細書との関連において、「制御状態」という用語は、ただの錠剤から得られる放出とは異なる全ての放出タイプを含むものとする。こうして、この用語はいわゆる「制御放出」、「改質放出」、「持続放出(徐放)」、「パルス放出」、「延長放出」、「バースト放出」、「低速放出」、「長時間放出」、並びに「遅延放出」及び「pH依存性放出」を含む。しかし、本発明の特定の観点は、遅延放出組成物又は投与形態に関し、これは本明細書との関連において、投与後且つ/又はpH約3以下の溶出溶媒を採用する溶出試験の開始後最初の2時間以内に活性物質の10% w/w以下を放出する組成物又は投与形態を意味するものとする。
【0166】
改質放出系
第1の改質放出システムは、マトリックス系を含む。マトリックス系において、タクロリムスは、水性環境(すなわちGI管の管腔液)内へのタクロリムスの放出を遅らせるために役立つ別の材料のマトリックス内に埋め込まれるか又は分散される。タクロリムスがこの種のマトリックス内に分散される場合、薬物の放出は主にマトリックス表面から行われる。こうして薬物は、マトリックスを通って拡散したあと、又は機器表面が侵食されて薬物を露出すると、マトリックスを組み込む機器の表面から放出される。いくつかの実施態様の場合、両メカニズムは同時に働くことができる。マトリックス系は、大型、すなわち錠剤サイズ(約1 cm)であってよく、又は小型(< 0.3cm)であってよい。系は単一であってよく(例えばボーラス)、又はほぼ同時に投与されるいくつかのサブ単位(例えば単回投与量を構成するいくつかのカプセル)から形成することにより分割することもでき、又は多粒子とも呼ばれる複数の粒子を含むこともできる。多粒子は、多数の配合物用途を有することができる。例えば多粒子は、カプセル・シェルを満たすための粉末として、又は摂取を容易にするためにそれ自体を食物と混ぜるために使用することができる。
【0167】
具体的な実施態様において、マトリックス多粒子は、複数のタクロリムス含有粒子を含み、各粒子は、例えば固溶体/個体分散体の形態を成すクロリムス及び/又はその類似体を、水性媒質中へのタクロリムス溶出速度を制御することができるマトリックスを形成するために選択された1種又は2種以上の賦形剤と一緒に含む。この実施態様にとって有用なマトリックス材料は一般に疎水性材料、例えばワックス、いくつかのセルロース誘導体、又はその他の疎水性ポリマーである。必要な場合には、マトリックス材料は場合により、疎水性材料で調製することができる。疎水性材料はバインダー又は促進剤として使用することができる。これらの投与形態の製造のために有用なマトリックス材料は例えば:エチルセルロース、ワックス、例えばパラフィン、改質植物油、カルナバ蝋、水素化ヒマシ油、及び蜜蝋など、並びに合成型ポリマー、例えばポリ(塩化ビニル)、ポリ(ビニルアセテート)、ビニルアセテートとエチレンとのコポリマー、及びポリスチレンなどである。場合によりマトリックス中に配合することができる水溶性又は親水性のバインダー又は放出調整剤は、親水性ポリマー、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ポリ(N-ビニル-2-ピロリジノン(PVP)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、キサンタンガム、カラゲナン、及びその他のこのような天然型及び合成型材料を含む。加えて、放出調整剤として機能する材料は、水溶性材料、例えば糖又は塩を含む。好ましい水溶性材料は、ラクトース、スクロース、グルコース及びマンニトール、並びに親水性ポリマー、例えばHPC、HPMC及びPVPを含む。
【0168】
具体的な実施態様において、マトリックス多粒子は、制御凝集によって加工されるものとして定義される。この場合、タクロリムスは好適な溶融可能な担体中に溶解されるか又は部分溶解され、マトリックス物質を含む担体粒子上に噴霧される。好適な溶融可能な担体は、本明細書中で前述した通りである。
【0169】
或いは、タクロリムスは、マトリックス物質と一緒に有機溶剤中に溶解され、又は担体粒子に塗布される(下記参照)。加工のために典型的に採用される溶剤は、アセトン、エタノール、イソプロパノール、エチルアセテート、及び2種又は2種以上の混合物を含む。
【0170】
タクロリムス・マトリックス多粒子が形成されると、これを圧縮可能な賦形剤、例えばラクトース、微結晶性セルロース、及びジカルシウムホスフェートなどとブレンドし、このブレンドを圧縮して錠剤を形成することができる。崩壊剤、例えばナトリウム澱粉グリコレート又は架橋型ポリ(ビニルピロリドン)も有用に採用される。この用法により調製された錠剤は、水性媒質(例えばGI管)中に位置すると崩壊し、これにより多粒子マトリックスを露出し、このマトリックスはタクロリムスをそこから放出する。
【0171】
別の実施態様において、マトリックス系は、多粒子生成物としてのタクロリムス及び/又はその類似体(例えば固体分散体の形態を成す)と、有用な程度のタクロリムス溶出制御を可能にするのに十分な量の親水性ポリマーとを含有する親水性マトリックス錠剤形態を成している。マトリックスを形成するのに有用な親水性ポリマーは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(ビニルアルコール)、キサンタンガム、カルボマー、カラゲナン及びゾーグランを含む。好ましい材料はHPMCである。その他の同様の親水性ポリマーを採用することもできる。使用時には、親水性材料は水によって膨潤され、そして最終的に水に溶ける。タクロリムスは、マトリックスからの拡散、そしてマトリックスの侵食の両方によって放出される。これらの親水性マトリックス錠剤のタクロリムス溶出速度は、採用された親水性ポリマーの量、分子量及びゲル強度によって制御することができる。一般に、親水性ポリマーを多量に使用すればするほど、また使用するポリマーの分子量が高ければ高いほど、溶出速度は減少する。使用するポリマーの分子量が低ければ低いほど、通常、溶出速度は増大する。マトリックス錠剤は典型的には約20〜90重量%のタクロリムスと、約80〜10重量%のポリマーとを含む。
【0172】
好ましいマトリックス錠剤は重量で示すと、クロリムス及び/又はその類似体を含有する約30%〜約80%の固体分散体と、約15%〜約35%のマトリックス形成剤(例えばHPMC)と、0%〜約35%のラクトースと、0%〜約20%の微結晶性セルロースと、約0.25%〜約2%の滑剤(例えばステアリン酸マグネシウム)とを含む。
【0173】
或るクラスのマトリックス系はしばしば、マトリックスからの薬物の一定でない放出を示す。このような結果は薬物放出の拡散メカニズムと因果関係にあることがあり、投与形態の幾何構造に変更を加えることにより、有利に薬物放出速度をより一定にすることができる。
【0174】
本発明のタクロリムス制御放出投与形態の第2のクラスは、膜減速系又はリザーバー系を含む。このクラスでは、多粒子生成物としての例えば固溶体/固体分散体中のタクロリムス・リザーバーが、速度制限膜によって取り囲まれている。タクロリムスは、当業者によく知られた質量輸送メカニズムによって膜を横切る。このメカニズムは、例えば膜内の溶出と、これに続く、膜を横切る拡散、又は膜内部の液体充填孔を通る拡散とを含む。これらの個々のリザーバー系投与形態は、単一の大型リザーバーを含有する錠剤の場合のように、大型であってよく、或いは、それぞれが個別に膜でコーティングされた複数のリザーバー粒子を含有するカプセル又はポリデポ錠剤の場合のように、多粒子状であってよい。コーティングは非多孔質であるが、タクロリムスを通すことができるようになっていてよく(例えばタクロリムスは膜を通って直接拡散することができる)、又は多孔質であってもよい。本発明の他の実施態様と同様に、具体的な輸送メカニズムが重要であるとは思われない。
【0175】
膜を製作するために、当業者に知られた持続放出コーティング、特にポリマー・コーティング、例えばセルロースエステル又はエーテル、アクリル酸ポリマー、又はポリマーの混合物を採用することができる。好ましい材料は、エチルセルロース、セルロースアセテート及びセルロースアセテートブチレートを含む。ポリマーは有機溶剤中の溶液として、又は水性分散体又はラテックスとして塗布することができる。コーティング作業は、標準的な装置、例えば流動床コーター、ウルスター・コーター、又は回転流動床コーターにおいて行うことができる。
【0176】
所望の場合には、コーティングの透過性は、2種又は3種以上の材料をブレンドすることにより調節することができる。コーティングの多孔質を調製するための特に有用な方法は、所定量の微粉砕された水溶性材料、例えば糖、塩又は水溶性ポリマーを、使用されるべき膜形成ポリマーの溶液又は分散体(例えば水性ラテックス)に添加することを含む。GI管の水性媒質中に摂取されると、これらの水溶性膜添加剤は、膜から浸出し、薬物放出を容易にする孔を出る。当業者に知られているように可塑剤を添加することにより、膜コーティングに変更を加えることもできる。
【0177】
膜コーティングを塗布する方法の特に有用な改変形は、コーティングが乾くにつれて、塗布済コーティング溶液中で位相反転が行われ、その結果、多孔質構造を有する膜が形成されるように選択された溶剤の混合物中に、コーティング・ポリマーを溶解することを含む。
【0178】
一般に、膜を機械的に強化するための支持体は必要でない。
【0179】
膜の形態学特性は、本明細書中に挙げられた透過性特性が満たされる限り、さほど重要ではない。膜は、非晶質又は結晶性であってよい。膜は、特定の方法によって形成された形態学特性の任意のカテゴリーを有することができ、そして例えば界面重合膜(多孔質支持体上に速度制限薄皮を含む)、多孔質親水性膜、多孔質疎水性膜、ヒドロゲル膜、イオン膜、及びタクロリムスを制御下で通すことができることを特徴とする他のこのような材料であってよい。
【0180】
本発明の1実施態様の場合、上部GI管の高濃度タクロリムスに対する暴露を低減することが目的となる。従って好適な投与形態は、タクロリムスの制御放出の開始前の特定の遅れを組み込む形態を含む。タクロリムスの持続放出に有用なタイプの高分子材料から成る第1コーティングと、投与形態が摂取されたときに薬物の放出を遅らせるのに有用なタイプの第2コーティングとでコーティングされたタクロリムスを含有するコアを含む錠剤(又は粒子材料)によって、一例としての実施態様を説明することができる。第1コーティングは、錠剤又は個々の粒子の上に塗布されてこれを取り囲む。第2コーティングは、第1コーティングの上に塗布されてこれを取り囲む。
【0181】
当業者によく知られた技術によって錠剤を調製することができ、この錠剤は、治療上有用な量のタクロリムスと、このような技術によって錠剤を形成するのに必要であるような賦形剤とを含有する。
【0182】
第1コーティングは、リザーバー系に関して前に論じたように、膜を製作するために当業者に知られているような持続放出コーティング、特にポリマー・コーティングであってよい。或いはこれは、制御放出マトリックス・コアであってよく、二度目に遅延放出材料でコーティングされる。
【0183】
錠剤上に第2コーティングを調製するのに有用な材料は、薬剤の遅延放出のための腸溶性コーティングとして当業者に知られているポリマーを含む。これらの最も一般的なものは、下記「遅延放出」においてさらに十分に詳しく述べるように、pH感受性材料、例えばセルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートトリメリテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリ(ビニルアセテートフタレート)、及びアクリル酸コポリマー、例えばEudragit L-100(Roehm Pharma)及び関連材料である。遅延放出コーティングの厚さを調節することにより、所望の遅延特性を与える。一般にコーティングが厚ければ厚いほど、侵食に対する抵抗が大きくなり、その結果、より長くより効果的な遅延がもたらされる。好ましいコーティング厚は、約30 μm〜約3 mmである。
【0184】
グリセリルモノステアレートのような疎水性マトリックス材料を使用するときには、遅延コーティングは必要ではない。錠剤は、酵素的分解の領域、より具体的には十二指腸の後に達するまで、タクロリムスを放出することはない。
【0185】
2回コーティングされた錠剤は摂取されると、胃を通過する。ここでは、第2コーティングは、この場所で形成された酸性条件下におけるタクロリムスの放出を防止する。錠剤は胃から出て小腸内に入る。ここではpHがより高く、第2コーティングは、選択された材料の物理化学特性に従って侵食されるか又は溶出する。第2コーティングの侵食又は溶出が生じると、第1コーティングは、タクロリムスの即時の又は急速な放出を防止し、そして、高いピーク濃度の形成を防止するように、放出を調整し、これにより副作用を最小限に抑える。
【0186】
別の好ましい実施態様は、各粒子が錠剤に関して上述したように二重コーティングされている多粒子を含む。各粒子は、タクロリムスを持続放出するように設計されたポリマーで最初にコーティングされ、次いで、投与形態が摂取されたときにGI管の環境内における放出開始を遅らせるように設計されたポリマーでコーティングされる。
【0187】
持続放出コーティングされた多粒子(すなわち、遅延放出コーティングを受容する前の多粒子)からのタクロリムスの放出速度、及びコーティングを改質する方法はまた、リザーバー系のタクロリムス多粒子に関して前述したファクターによって制御される。
【0188】
二重コーティングされた多粒子のための第2の膜又はコーティングは、錠剤に関して上に開示した第1の持続放出コーティング上に塗布される遅延放出コーティングであり、同じ材料から形成されてよい。なお、この実施態様を実施するためにいわゆる「腸溶性」材料を使用することは、慣用的な腸溶性投与形態を生成するためにこれらの材料を使用することとは著しく異なる。慣用的な腸溶性形態の場合、投与形態が胃を通過するまで薬物の放出を遅らせ、次いで、この薬物を十二指腸に送達することが目的となる。しかし、十二指腸にタクロリムスを直接且つ完全に投与することは、本発明により最小化又は回避されることが模索されている副作用に基づき、望ましくない場合がある。従って、慣用的な腸溶性ポリマーをこの実施態様を実施するのに使用しようとすると、従来よりも著しく厚くポリマーを塗布することにより、投与形態が下部GI管に達するまで薬物放出を遅らせる必要がある場合がある。しかし、遅延放出コーティングの溶出又は侵食のあとでタクロリムスの持続送達又は制御送達をもたらすことも可能であり、従って、この実施態様の利点は、持続放出特性に遅延放出特性を適正に組み合わせることにより実現することができ、そして遅延放出部分は単独でUSP腸溶性基準に一致することができ、又は必ずしも一致しなくてもよい。遅延放出コーティングの厚さは、所望の遅延特性を与えるように調節される。一般に、コーティングが厚ければ厚いほど、侵食に対する抵抗が大きくなり、従って遅延が長くなる。
【0189】
本発明による第1の遅延放出実施態様は、「pH依存性コーティングを有する投与形態」、例えば錠剤又はカプセル剤である。錠剤の場合、これは、例えば多粒子生成物として例えば固溶体/固体分散体中にタクロリムスを含む錠剤コアと、例えばHPMCから成る制御放出マトリックスと、崩壊剤と、滑剤と、1種又は2種以上の薬剤担体とを含み、前記コアは胃のpHでは実質的に不溶性且つ不透過性であり、しかも小腸のpHでは不溶性及び透過性がより高くなる材料、好ましくはポリマーでコーティングされている。好ましくは、コーティング・ポリマーは、pH<5.0で不溶性且つ不透過性であり、そしてpH>5.0で水溶性である。錠剤コアは、投与形態が胃を出て、そして約15分以上、好ましくは30分以上にわたって小腸内に滞留するまで、投与形態からタクロリムスの放出が発生しないことを保証し、ひいては最小限のタクロリムスが十二指腸内で放出されることを保証するのに十分な量のポリマーでコーティングすることができる。錠剤は、タクロリムス含有錠剤コアの重量の約10%〜約80%の量のポリマーでコーティングされる。好ましい錠剤は、タクロリムス錠剤コアの重量の約15%〜約50%の量のポリマーでコーティングされる。
【0190】
胃のpHでは著しく不溶性且つ不透過性であり、しかも小腸及び結腸のpHでは不溶性及び透過性がより高くなるpH感受性材料は、ポリアクリルアミド;フタレート誘導体、例えば炭水化物の酸フタレート、アミロースアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルセルロースフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセテート水素フタレート、ナトリウムセルロースアセテートフタレート、澱粉酸フタレート、スチレン-マレイン酸ジブチルフタレート・コポリマー、スチレン-マレイン酸ポリビニルアセテートフタレート・コポリマー、スチレン及びマレイン酸のコポリマー、ポリアクリル酸誘導体、例えばアクリル酸及びアクリル酸エステルのコポリマー、ポリメタクリル酸及びそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマー、セラック、ビニルアセテート及びクロトン酸のコポリマーを含む。
【0191】
好ましいpH感受性ポリマーは、セラック;フタレート誘導体、具体的にはセルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート;ポリアクリル酸誘導体、具体的にはアクリル酸及びアクリル酸エステルのコポリマーとブレンドされたポリメタクリレート;及びビニルアセテート及びクロトン酸のコポリマーを含む。
【0192】
「pH依存性コーティング含有錠剤」投与形態が胃を出たあとの、タクロリムス放出前の遅延時間は、コーティング中のEudragit-L(登録商標)及びEudragit-S(登録商標)の相対量を選択することにより、そして、コーティング厚を選択することにより制御することができる。Eudragit-L(登録商標)フィルムはpH 6.0を上回ると溶出し、またEudragit-S(登録商標)フィルムは、pH 7.0を上回ると溶出し、混合物は中間のpHで溶出する。十二指腸のpHはほぼ6.0であり、結腸のpHはほぼ7.0なので、Eudragit-L(登録商標)及びEudragit-S(登録商標)の混合物から構成されたコーティングは、タクロリムスから十二指腸を保護することを可能にする。タクロリムスを含有する「pH依存性コーティング含有錠剤」が結腸に達するまで、タクロリムスの放出を遅らせることが望ましい場合には、Dew他(Br. J. Clin. Pharmac. 14(1982)405-408)によって記載されているように、Eudragit-S(登録商標)をコーティング材料として使用することができる。投与形態が胃を出た後、タクロリムスの放出を約15分以上、好ましくは30分以上にわたって遅らせるために、好ましいコーティングは約9:1〜約1:9のEudragit-L(登録商標)/Eudragit-S(登録商標)、より好ましくは約9:1〜約1:4のEudragit-L(登録商標)/Eudragit-S(登録商標)を含む。コーティングは、未コーティング錠剤コアの重量の約3%〜約70%を含んでよい。好ましくは、コーティングは、錠剤コアの重量の約5%〜約50%を含んでよい。
【0193】
用途
本発明の固体分散体及び/又は固溶体、又は本発明の医薬組成物は、固形経口投与形態、例えば錠剤、カプセル剤、又はサシェ剤の調製、又は顆粒、ぺレット、ミクロ球体又はナノ粒子の調製のために使用することができる。
【0194】
好ましくは固体分散体又は固溶体は、即時放出固形投与形態又は遅延固形投与形態の調製に使用される。
【0195】
本発明の固体分散体又は固溶体の他の用途は、局所用投与形態の調製である。
【0196】
本発明の組成物の更なる利点は、伝統的な経口治療と比較して低減された投与量で、効果的な治療応答を得ることができることである。従って、Prograf(登録商標)又は同様の商業的に入手可能なタクロリムス含有生成物の形態で投与されるタクロリムス投与量の約85% w/w以下、例えば約80% w/w以下、約75% w/w以下、約70% w/w以下、約65% w/w以下、約60% w/w以下、約55% w/w以下、約50% w/w以下の投与量で、投与を必要とする哺乳動物に経口投与すると、本発明による固形投与形態は、Prograf(登録商標)又は同様の商業的に入手可能なタクロリムス含有生成物と事実上生物学的等価であると考えられる。
【0197】
本発明によるタクロリムス含有投与形態、組成物、分散体又は溶体のいずれもが、タクロリムス治療に応答する状態の治療を改善することができる。
【0198】
タクロリムスは、疾患、例えば器官又は組織、例えば心臓、腎臓、肝臓、骨髄、皮膚、角膜、肺、脾臓、小腸、肢、筋肉、神経、椎間板、筋芽細胞、軟骨などの移植による拒絶反応;骨髄移植後の移植片対宿主反応;自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、橋本甲状腺炎、多発性硬化、重症筋無力症、I型糖尿病など;病原微生物(例えばAspergillus fumigatus, Fusarium oxysporum, Trichophyton asteroidesなど)による感染;炎症性又は過剰増殖性皮膚疾患、又は免疫媒介性疾患の皮膚症状(例えば乾癬、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、湿疹様皮膚炎、脂漏性皮膚炎、扁平苔癬、天疱瘡、水疱性類天疱瘡、表皮水疱症、じんましん、血管浮腫、脈管炎、紅斑、皮膚好酸球増加、紅斑性狼瘡、座瘡、及び円形脱毛);眼の自己免疫疾患(例えば角結膜炎、春季カタル、ベーチェット病に関連するブドウ膜炎、角膜炎、ヘルペス性角膜炎、円錐角膜炎、角膜上皮ジストロフィー、角膜白斑、眼の天疱瘡、モーレン潰瘍、強膜炎、グレーブス眼障害、フォークト-小柳-原田症候群、乾性角結膜炎(ドライアイ)、フリクテン、虹彩毛様体炎、サルコイドーシス、内分泌眼障害など);可逆性閉塞性気道疾患[喘息(例えば気管支喘息、アレルギー性喘息、内因性喘息、外因性喘息、及び塵埃喘息)、特に慢性又は常習的喘息(例えば遅発性喘息及び気道過敏性)気管支炎など;粘膜炎症又は血管炎症(例えば胃潰瘍、虚血性又は血栓性血管外傷、虚血性腸疾患、腸炎、壊死性腸炎、熱傷に関連する腸損傷、ロイコトリエンB4媒介性疾患);腸炎症/アレルギー(例えばセリアック病、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病及び潰瘍性大腸炎);胃腸管から隔たった症候性発現を伴う食物関連アレルギー疾患(例えば片頭痛、鼻炎及び湿疹);腎疾患(例えば間質性腎炎、グッドパスチャー症候群、溶血性尿毒症症候群、及び糖尿病性ネフロパシー);神経疾患(例えば多発性筋炎、ギラン・バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎、単発性神経炎、脳梗塞、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化(ALS)及び神経根障害);虚血性脳疾患(例えば頭部外傷、脳出血(例えばくも膜下出血、脳内出血)、脳血栓、脳卒中、心停止、発作、一過性脳虚血発作(TIA)、高血圧性脳症、脳梗塞);内分泌病(例えば甲状腺機能亢進症、及びバセドー氏病);血液疾患(例えば赤芽球ろう、再生不全性貧血、再生不良性貧血、突発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、顆粒球減少、悪性貧血、巨赤芽球性貧血、及び赤血球形成不全);骨疾患(例えば骨粗鬆症);呼吸器疾患(例えばサルコイドーシス、肺線維症、及び突発性間質性肺炎);皮膚疾患(例えば皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光過敏性、及び皮膚T細胞リンパ腫、);循環器系疾患(例えば動脈硬化、アテローム性動脈硬化、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎、及び心筋症);コラーゲン疾患(例えば強皮症、ヴェグナー肉芽腫、及びシェーングレン症候群);脂肪過多;好酸球性筋膜炎;歯周病(例えば歯肉、歯周組織、歯槽骨又は歯のセメント質);ネフローゼ症候群(例えば糸球体腎炎);男性型脱毛症、老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症及びセザリー症候群;染色体異常関連疾患(例えばダウン症候群);アジソン病;活性酸素媒介性疾患[例えば器官損傷(例えば、保存、移植又は虚血性疾患に関連する、器官(例えば心臓、肝臓、腎臓、消化管など)の虚血性循環障害(例えば血栓症、心筋梗塞など);腸疾患(例えば内毒素性ショック、偽膜性大腸炎、及び薬物又は放射線誘発型大腸炎);腎臓病(例えば虚血性急性腎不全、慢性腎不全);肺疾患(例えば肺酸素又は薬物(例えばパラコート、ブレオマイシンなど)によって引き起こされる中毒、肺癌、及び肺気腫);眼疾患(例えば白内障、鉄蓄積症(siderosis bulbi)、網膜炎、色素疾患、老人斑、硝子体瘢痕、角膜アルカリ火傷);皮膚炎(例えば多形性紅斑、線状免疫グロブリンA水疱症、セメント皮膚炎);及びその他の疾患(例えば歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、及び環境汚染(空気汚染)による疾患、加齢、発癌性物質、癌腫の転移、及び高山病)];ヒスタミン放出又はロイコトリエンC4放出によって引き起こされる疾患;血管形成後の冠動脈の再狭窄;自己免疫疾患及び炎症状態(例えば一次性粘膜浮腫、自己免疫性萎縮性胃炎、早発閉経、男性不妊症、若年性糖尿病、尋常性天疱瘡、類天疱瘡、交感性眼炎、水晶体過敏症眼内炎、活動性慢性肝炎、突発性肝硬変、円盤状紅斑性狼瘡、自己免疫性精巣炎、関節炎(例えば変形性関節炎)、又は多発性軟骨炎;ヒト免疫不全ウィルス(HIV)感染、AID;アレルギー性結膜炎;外傷、火傷又は手術による肥厚性瘢痕及びケロイド、の治療のために指示される(又は示唆されている)。
【0199】
加えて、例えばタクロリムスのような三環系マクロライドは、肝再生活性及び/又は肝細胞の肥大及び過形成を刺激する活性を有している。従って、本発明の医薬組成物は、肝疾患〔免疫原性疾患(例えば慢性自己免疫性肝疾患、一次性胆汁性肝硬変又は硬化性胆管炎)、部分肝切除、急性肝臓壊死(例えば毒素、ウィルス性肝炎、ショック、又は酸素欠乏症)、B型肝炎、非A非B型肝炎、肝硬変及び肝不全(例えば劇症肝炎、晩期発症型肝炎及び「慢性における急性」肝不全(慢性肝疾患における急性肝不全)〕の治療及び/又は予防の効果を高めるのに有用である。
【0200】
さらに、本発明の組成物は、三環系マクロライドの有用な薬理活性、例えば化学療法効果の増大活性、サイトメガロウィルス感染活性、抗炎症活性、ペプチジル-プロリルイソメラーゼ又はロタマーゼに対する阻害活性、抗マラリア活性、抗腫瘍活性などにより、種々の疾患の予防及び/又は治療の効果を増大するのに有用である。
【0201】
材料及び方法
材料
タクロリムス(Eurotradeにより供給);バッチ番号RD 03-111
ラクトース一水和物200メッシュ(DMVから)
粒状酸化ケイ素、Aeroperl(登録商標)300(Degussa)
ポリエチレングリコール6000, Pluracol(登録商標)E6000(BASFから)
ポロキサマー188, Pluronic(登録商標)F-68(BASFから)
グリセリルモノステアレート, Rylo(登録商標)(Danisco Cultor), Ph.Eur.;バッチ番号4010056276
Avical PH200(微結晶性セルロース)(FMCから)
ラクトースDCL 11(DMVから)
ステアリン酸マグネシウム
クロスカルメロースナトリウム, Ac-Di-Sol(登録商標)(FMCから)
Eudragit(登録商標)L30D.55(Degussaから)
クエン酸トリエチル(Merckから)
消泡エマルジョン(Unikemから)
Microタルク
【0202】
HPMCは、種々の重合度(粘度3-100,000cP)で入手可能な、ShinEtsuのMetolose 90SH(タイプ2910, 2208)又はMetolose 60SH(タイプ2910)を意味する。
【0203】
錠剤、カプセル剤又は顆粒剤は、種々異なるタイプのポリマー、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(Aqoat)、セルロースアセテートフタレート(CAP)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HMPCP)、又はメタクリル酸コポリマー、例えばEudragit L30D、Eudragit 100/S、Eudragit 100/Lで腸溶性コーティングすることができる。
【0204】
in vivo研究のための従来技術タクロリムス配合物との比較
Fujisawa Ireland Ltd.により製造されたPrograf(登録商標)硬質ゼラチンカプセル剤
成分 mg
タクロリムス無水物 1.0
ゼラチン 6.9
ヒプロメロース 1.0
ラクトース一水和物 24.7
ステアリン酸マグネシウム 0.3
セラック 適量
大豆レシチン 適量
赤色酸化鉄(E172) 適量
二酸化チタン(E171) 適量
ジメチコーン(E900) 適量
【0205】
方法
重量変動の測定
本明細書中の実施例において調製された錠剤に、Ph. Eurにして従って重量変動試験を施した。
【0206】
平均錠剤硬度の測定
本明細書中の実施例において調製された錠剤に、Schleuniger Model 6D装置を採用して、装置の一般指示書に従って錠剤硬度試験を施した。
【0207】
崩壊時間の測定
錠剤が崩壊する時間、すなわち、粒子又は凝集体に分解する時間をPh. Eurにして従って測定した。
【0208】
幾何重量平均直径dgwの測定
空気中で得られた粒子材料(又は出発材料)を分散させるレーザー回折法を採用することにより、幾何重量平均直径dgwを測定した。測定はSympatec Helos装置において1 bar分散圧で実施した。この装置は等価球体直径の分布を記録する。この分布は対数正規容積-サイズ分布に適合される。
【0209】
本明細書中に使用される「幾何重量平均直径」は対数正規容積-サイズ分布の平均直径を意味する。
【0210】
in vitro溶出試験
下記試験法を、本発明の組成物及び投与形態に当てはめた。
試験1:
USP法A、遅延放出項目(USPパドル法;回転速度:50 rpm;37℃;酸性媒質中2時間後に、媒質をリン酸緩衝液pH6.8に変える)によるin vitro溶出試験。
試験2:
pH 4.5に調節された水性溶出溶媒中のin vitro溶出試験(pH 4.5に調節された0.005% HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)を有する900 mlの水;37℃;USPパドル法;回転速度:50 rpm)。
【0211】
ビーグル犬におけるin vivo研究
商業的に入手可能なタクロリムス生成物、すなわちPrograf(登録商標)の生体利用効率に対する本発明の組成物の生体利用効率を測定することを目的とするin vivo研究を、ビーグル犬を使用して実施した。
【0212】
それぞれ体重が12-18 kg(開始時の体重)の雄ビーグル犬を使用して試験作業をデンマーク国で実施した。研究はオープンな非ランダム化交差研究であった。それぞれの動物は自身の対照であった。イヌには、Primperan注射 5mg/ml(制吐薬)で前処理し、タクロリムス0.5〜4 mgを経口投与した。
【0213】
イヌを投与前10時間にわたって絶食させ(水は自由)、投与から5時間後に食事を与えた(水は自由)。それぞれのイヌに、指定量のタクロリムスを投与し、イヌの体重は考慮に入れなかった。
【0214】
下記時点で外頸静脈から血液試料を採取した:投与前、投与から1, 1.5, 2, 3, 4, 6, 8, 12及び24時間後。4mlの血液を採取し、EDTAと混合し、そして試料を凍結した(-80℃)。血液試料をオンライン抽出LC/MSで分析し、そして結果をng/mLで示した。
【0215】
タクロリムスの測定済全血濃度プロフィールを、薬物動態ソフトウェアWinNonlin(登録商標)(米国カリフォルニア在Pharsight)で処理することにより、薬物動態パラメーターを計算した。全てのデータは調節された投与量である。
【0216】
ゲッティンゲン・ミニブタにおけるin vivo研究
商業的に入手可能なタクロリムス生成物、すなわちPrograf(登録商標)の生体利用効率に対する本発明の組成物の生体利用効率を測定することを目的とするin vivo研究を、ゲッティンゲン・ミニブタを使用して実施した。
【0217】
体重が15〜18 kg(開始時の体重)の雌ミニブタを使用して試験作業をデンマーク国で実施した。研究はオープンな非ランダム化交差研究であった。それぞれの動物は自身の対照であった。タクロリムス1 mgを経口投与した。
【0218】
ミニブタを投与前24時間にわたって絶食させ(水は自由)、投与から24時間後に食べることを許した。それぞれのミニブタに、指定量のタクロリムスを投与し、ミニブタの体重は考慮に入れなかった。
【0219】
下記時点で外頸静脈から血液試料を採取した:投与前、投与から0.5, 1, 1.5, 2, 3, 4, 6, 8, 12及び24時間後。4mlの血液を採取し、EDTAと混合し、そして試料を凍結した(-80℃)。血液試料をオンライン抽出LC/MSで分析し、そして結果をng/mLで示した。
【0220】
タクロリムスの測定済全血濃度プロフィールを、薬物動態ソフトウェアWinNonlin(登録商標)(米国カリフォルニア在Pharsight)で処理することにより、薬物動態パラメーターを計算した。全てのデータは調節された投与量である。
【0221】
下記実施例は本発明を説明することを目的とし、本発明の範囲を限定するものではない。
【0222】
本発明の医薬組成物及び投与形態を実施例1〜16に例示する。本発明の医薬組成物及び投与形態のin vitro溶出試験の結果は実施例17に見いだされる。ビーグル犬におけるin vivo比較研究(血漿濃度)の結果は実施例18に見いだされ、そしてゲッティンゲン・ミニブタにおけるin vivo比較研究(血漿濃度)の結果は実施例19に見いだされる。
【実施例】
【0223】
実施例1
ヒドロキシプロピルセルロースの膨潤性ハイドロコロイド・マトリックスを基剤とする改質放出ポリデポ・カプセル剤
【0224】
物質 % mg
タクロリムス 0.50 1.00
HPMC 20.00 40.00
ラクトース200メッシュ 30.00 60.00
PEG 600 34.65 69.30
ポロキサマー188 14.85 29.70
合計 100.00 200.00
【0225】
ポリエチレングリコール6000及びポロキサマー188(70:30 w/w比)中に70℃でタクロリムスを溶解した。溶液を、流動床Strea-1内で150 gのラクトースと100 gのHPMCとの混合物上に噴霧した。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、そして硬質ゼラチン・カプセル(200 mg)内に充填した。
【0226】
実施例2
ヒドロキシプロピルセルロースの膨潤性ハイドロコロイド・マトリックスを基剤とする改質放出ポリデポ・カプセル剤
【0227】
物質 % mg
タクロリムス 0.50 1.00
HPMC 2910 3 cp 20.00 40.00
ラクトース200メッシュ 30.00 60.00
グリセリルモノステアレート 49.50 99.00
合計 100.00 200.00
【0228】
グリセリルモノステアレート中に70℃でタクロリムスを溶解した。溶液を、流動床Strea-1内で150 gのラクトースと100 gのHPMCとの混合物上に噴霧した。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、そして硬質ゼラチン・カプセル(200 mg)内に充填した。
【0229】
実施例3
ヒドロキシプロピルセルロースの膨潤性ハイドロコロイド・マトリックスを基剤とする改質放出マトリックス錠剤
【0230】
物質 % mg
タクロリムス 0.50 1.00
HPMC 19.90 40.00
ラクトース200メッシュ 29.85 60.00
PWF 6000 34.48 69.30
ポロキサマー188 14.78 29.70
ステアリン酸マグネシウム 0.50 1.01
合計 100.00 201.01
【0231】
ポリエチレングリコール6000及びポロキサマー188(70:30 w/w比)中に70℃でタクロリムスを溶解した。溶液を、流動床Strea-1内で250 gのラクトース上に噴霧した。結果として生じた顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、そしてHPMC及びステアリン酸マグネシウムと、Turbulaミキサー内で0.5分にわたってブレンドした。
【0232】
混合物を圧縮して、コンパウンド・カップ(copmpound cup)形状を有する、1 mg活性成分から成る8 mm錠剤(200 mg錠剤)にした。
平均崩壊時間:20分、硬度:45 N。
【0233】
実施例4
グリセリルモノステアレートの親油性マトリックスを基剤とする改質放出マトリックス錠剤
【0234】
物質 % mg
タクロリムス 0.50 1.00
ラクトース200メッシュ 49.75 100.00
グリセリルモノステアレート 49.25 99.00
ステアリン酸マグネシウム 0.50 1.01
合計 100.00 201.01
【0235】
グリセリルモノステアレート中に70℃でタクロリムスを溶解した。溶液を、流動床Strea-1内で250 gのラクトース上に噴霧した。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、そしてステアリン酸マグネシウムと、Turbulaミキサー内で0.5分にわたってブレンドした。
【0236】
結果として生じた混合物を圧縮して、コンパウンド・カップ形状を有する、1 mg活性成分から成る8 mm錠剤(200 mg錠剤)にした。
平均崩壊時間:20分、硬度:45 N。
【0237】
実施例5
グリセリルモノステアレートの親油性マトリックスを基剤とする改質放出ポリデポ・カプセル剤
【0238】
物質 % mg
タクロリムス 0.50 1.00
ラクトース200メッシュ 49.75 100.00
グリセリルモノステアレート 49.25 99.00
ステアリン酸マグネシウム 0.50 1.01
合計 100.00 201.01
【0239】
グリセリルモノステアレート中に70℃でタクロリムスを溶解した。溶液を、流動床Strea-1内で250 gのラクトース上に噴霧した。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、そして硬質ゼラチン・カプセル(200 mg)内に充填した。
【0240】
実施例6
Gelucire(登録商標)44/14の親油性マトリックスを基剤とする改質放出ポリデポ錠剤
【0241】
物質 % mg
タクロリムス 0.50 1.00
Aeroperl(登録商標)300 49.75 100.00
Gelucire(登録商標)44/14 49.25 99.00
ステアリン酸マグネシウム 0.50 1.01
合計 100.00 201.01
【0242】
Gelucire(登録商標)中に70℃でタクロリムスを溶解した。溶液を、流動床Strea-1内で250 gのAeroperl上に噴霧した。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、そして硬質ゼラチン・カプセル(200 mg)内に充填した。
【0243】
結果として生じた顆粒状物質を圧縮して、1 mg活性成分から成る8 mm錠剤(錠剤重量200 mg)にした。錠剤はカップ形状であった。
平均崩壊時間:25分、硬度:43 N。
【0244】
実施例7
腸溶性コーティング
投与後の活性成分の遅延放出を達成するために、続いて実施例1、2、3、5及び6のカプセル及び錠剤に、下記腸溶性コーティングを施した。
【0245】
【表2】

【0246】
トリエチルアセチルシトレートと、消泡エマルジョンと、精製水とをUltra Turrax装置内で30分間にわたって9500 rpmで混合することにより、コーティング懸濁液を調製した。1分後にタルクを添加した。混合物を篩番号300にかけ、そして磁気撹拌器によって撹拌した。Eudragtを篩番号300にかけ、そして混合物に加え、これを5分間にわたって撹拌した。
【0247】
コーティング・プロセスのプロセス条件は下記の通りであった:入口温度は40℃、出口温度は31℃、空気流入量は1時間当たり140 cbm、そしてコーティング時間はほぼ50分間(300gのコーティング材料)。ほぼ400 gの錠剤又は200gのカプセル剤をコーティングした。
【0248】
フィルムコートされた錠剤及びカプセル剤を、溶出試験前に30℃で48時間にわたって硬化した。
【0249】
実施例8
グリセロールモノステアレートの親油性マトリックスを基剤とする改質放出マトリックス錠剤
【0250】
【表3】

【0251】
グリセロールモノステアレート中に80℃を上回る温度でタクロリムスを溶解した。溶液を、フィード・ユニットPhast FS1.7によって流動床Phast FB100内で60 gのラクトース及び60 gのHPMC上に噴霧した。顆粒生成物を50℃で4時間にわたって加熱炉内で硬化させた。結果として生じた顆粒生成物を0.71 mmの篩にかけ、そしてラクトースと、Turbulaミキサー内で3分間にわたってブレンドした。
【0252】
ステアリン酸マグネシウム及びタルクを篩番号300にかけ、そしてTurbulaミキサー内で3分間にわたって混合した。顆粒状物質をステアリン酸マグネシウムとタルク(1:9)との混合物と、Turbulaミキサー内で0.5分間にわたって混合した。
【0253】
最終混合物を圧縮して、コンパウンド・カップ形状を有する、2 mg活性成分から成る8 mm錠剤(210 mg錠剤)にした。
平均崩壊時間:20分、硬度:50 N。
【0254】
実施例9
PEG 6000/ポロキサマー188を基剤とするコアとEudragit L30D 55を基剤とする腸溶性コーティングとを有する、腸溶性コーティング含有錠剤
【0255】
錠剤コア組成:
【0256】
【表4】

【0257】
PEG 6000中に80℃を上回る温度で溶解することにより、タクロリムス錠剤コアを生成した。ポロキサマー188を加え、そして溶液を80℃を上回る温度まで加熱した。溶液を、フィード・ユニットPhast FS1.7によって流動床Phast FB100内で200 gのラクトース一水和物上に噴霧した。結果として生じた顆粒状物質を、4500rpmでComill篩1397にかけ、そしてクロスカルメロースナトリウムと、Turbulaミキサー内で3分間にわたってブレンドした。
【0258】
ステアリン酸マグネシウム及びタルクを篩番号300にかけ、そしてTurbulaミキサー内で3分間にわたって混合した。顆粒状物質をステアリン酸マグネシウムとタルク(1:9)との混合物と、Turbulaミキサー内で0.5分間にわたって混合した。
【0259】
最終混合物を圧縮して、コンパウンド・カップ形状を有する、2 mg活性成分から成る6 mm錠剤(100 mg錠剤)にした。
平均崩壊時間:7分、硬度:65 N。
【0260】
腸溶性コーティング:
腸溶性コーティングは、アクリル酸ポリマーEudragit L30D-55を基剤とする。Eudragit L30Dは、コーティング形成中に水が蒸発させられると水不溶性フィルムを形成する水性ラテックス懸濁液として供給される。ポリマーは5.0未満のpH値で不溶性であり、6.0を上回るpH値で容易に可溶性である。フィルム・コーティング組成は下記の通りである:
【0261】
【表5】

【0262】
塗布されるフィルム・ポリマー(Eudragit)の量は、錠剤表面積1cm2当たりのフィルム・ポリマー(mg)の計算に基づく。腸溶性コーティングの厚さは80 μmであった。塗布されたフィルム厚は、デジタル・マイクロメータで錠剤の高さの増大を測定することに基づいて検証された。フィルム・コーティング・プロセスは、ウルスター様挿入体を備えたPhast FB100流動床内で実施した。プロセス条件は下記の通りであった:流入空気温度は50℃;流入空気流は1時間当たり100 m3;生成物温度は38℃;供給速度は15g/分。
【0263】
コーティング後、適正なフィルム形成は、炉内で48時間で30℃でコーティング済錠剤を硬化することを必要とする。或いは、コーティング済錠剤は、より効率には、24時間で40℃で硬化することもできる。
【0264】
実施例10
HPMCマトリックスを基剤とする制御放出PEG 6000/ポロキサマー 188錠剤
【0265】
錠剤組成:
【0266】
【表6】

【0267】
PEG 6000中に80℃を上回る温度でタクロリムスを溶解した。ポロキサマー 188を加え、そして溶液を80℃を上回る温度まで加熱した。溶液を、フィード・ユニットPhast FS1.7によって流動床Phast FB100内で200 gのラクトース一水和物上に噴霧する。顆粒生成物を4500rpmでComill篩1397にかけ、そしてヒドロキシプロピルメチルセルロースと、Turbulaミキサー内で3分間にわたってブレンドした。
【0268】
ステアリン酸マグネシウム及びタルクを篩番号300にかけ、そしてTurbulaミキサー内で3分間にわたって混合した。顆粒状物質をステアリン酸マグネシウム:タルク(1:9)と、Turbulaミキサー内で0.5分間にわたって混合した。
【0269】
混合物を圧縮して、2 mgの強さを有する8 mm錠剤(コンパウンド・カップ形状を有する165 mg錠剤)にした。
平均崩壊時間:2時間34分、硬度:50 N。
【0270】
実施例11
腸溶性コーティング含有錠剤の調製。湿式造粒及び腸溶性コーティング含有錠剤
【0271】
錠剤組成:
【0272】
【表7】

【0273】
錠剤は、高剪断力ミキサーPellmix 1/8において湿式造粒に基づいて調製した。ミクロン粉砕された16gのタクロリムスを、高剪断力ミキサー内で640 gのラクトース125メッシュ及び80 gのナトリウムラウリルスルフェートと混合した。バインダーKollidon VA64の15%水溶液を、供給速度20 g/分で500 rpmのインペラー速度で混合物にポンプ供給し、続いて、等しい速度で3分間にわたって混練した。顆粒状物質を棚形乾燥機内で乾燥させ、そして篩サイズ0.7 mmにかけた。
【0274】
顆粒状物質を240 gのAvicel PH200と3分間にわたって混合し、そして4gのステアリン酸マグネシウムを添加したあと、さらに0.5分間にわたって混合した。混合物を単発式打錠機 Diaf TM20上で圧縮して錠剤にした。錠剤直径:6 mm。錠剤形状:円形、コンパウンド・カップ。
【0275】
続いて錠剤に、実施例9に記載したアクリル・タイプの腸溶性コーティングを施した。
【0276】
塗布されるフィルム・ポリマー(Eudragit)の量は、錠剤表面積1cm2当たりのフィルム・ポリマー(mg)の計算に基づくべきである。腸溶性コーティングの厚さは50〜80 μmとなるはずである。塗布されたフィルム厚は、デジタル・マイクロメータで錠剤の高さの増大を測定することに基づいて検証される。フィルム・コーティング・プロセスは、ウルスター挿入体を備えたStre-1流動床内で、下記プロセス条件で実施した。
【0277】
【表8】

【0278】
コーティング後、適正なフィルム形成は、炉内で48時間で30℃でコーティング済錠剤を硬化することを必要とする。或いは、コーティング済錠剤は、より効率的には、24時間で40℃で硬化することもできる。
【0279】
実施例12
被侵食性HPMCマトリックスを基剤とする制御放出錠剤の調製
顆粒外相の一部としてのHPMCの添加。湿式造粒。
【0280】
錠剤組成:
【0281】
【表9】

【0282】
錠剤は、高剪断力ミキサーPellmix 1/8において湿式造粒に基づいて調製した。ミクロン粉砕された16gのタクロリムスを、高剪断力ミキサー内で640 gのラクトース125メッシュ及び80 gのナトリウムラウリルスルフェートと混合した。バインダーKollidon VA64の15%水溶液を、供給速度20 g/分で500 rpmのインペラー速度で混合物にポンプ供給し、続いて、等しいインペラー速度で3分間にわたって混練した。顆粒状物質を棚形乾燥機内で乾燥させ、そして篩サイズ0.7 mmにかけた。
【0283】
顆粒状物質を240 g のAvicel PH200及び480 gのヒドロキシプロピルメチルセルロース Metolose SH 90 100 cPと3分間にわたって混合し、そして8gのステアリン酸マグネシウムを添加したあと、さらに0.5分間にわたって混合した。混合物を単発式打錠機 Diaf TM20上で圧縮して錠剤にした。
錠剤直径:7 mm。錠剤形状:円形、コンパウンド・カップ。
【0284】
実施例13
被侵食性HPMCマトリックスを基剤とする制御放出錠剤の調製
顆粒内相の一部としてのHPMCの添加。湿式造粒。
【0285】
錠剤組成:
【0286】
【表10】

【0287】
錠剤は、高剪断力ミキサーPellmix 1/8において湿式造粒に基づいて調製した。ミクロン粉砕された16gのタクロリムスを、高剪断力ミキサー内で640 gのラクトース125メッシュ及び80 gのナトリウムラウリルスルフェート及び640gのヒドロキシプロピルメチルセルロース Metolose SH 90 15,000 cPと混合した。精製水を、供給速度20 g/分で500 rpmのインペラー速度で混合物にポンプ供給し、続いて、3分間にわたって混練した。顆粒状物質を棚形乾燥機内で乾燥させ、そして篩サイズ0.7 mmにかけた。
【0288】
顆粒状物質を480 g のAvicel PH200と3分間にわたって混合し、そして16gのステアリン酸マグネシウムを添加したあと、さらに0.5分間にわたって混合した。混合物を単発式打錠機 Diaf TM20上で圧縮して錠剤にした。
錠剤直径:8 mm。錠剤形状:円形、コンパウンド・カップ。
【0289】
実施例14
被侵食性HPMCマトリックスを基剤とする制御放出錠剤の調製
顆粒内相の一部としてのHPMCの添加。溶融造粒。
【0290】
錠剤組成:
【0291】
【表11】

【0292】
錠剤は、高剪断力ミキサーPellmix 1/8において溶融造粒に基づいて調製した。ミクロン粉砕された16gのタクロリムスを、高剪断力ミキサー内で640 gのラクトース125メッシュ、120 gのポリエチレングリコール6000、48gのポロキサマー188及び640gのヒドロキシプロピルメチルセルロース Metolose SH 90 15,000 cPと混合した。ミキサー・ボウルのジャケットを80℃まで加熱し、そしてPEG及びポロキサマーの融点まで、1000 rpmのインペラー回転速度でブレンドを加熱した。溶融後、800 rpmで4分間にわたって混練を続けた。顆粒状物質を篩サイズ0.7 mmにかけ、そしてトレイ上で冷却した。顆粒状物質を480 g のAvicel PH200と3分間にわたって混合し、そして16gのステアリン酸マグネシウムを添加したあと、さらに0.5分間にわたって混合した。混合物を単発式打錠機 Diaf TM20上で圧縮して錠剤にした。錠剤直径:8 mm。錠剤形状:円形、コンパウンド・カップ。
【0293】
実施例15
顆粒外相の一部として添加された被侵食性Kollidon SRマトリックスを基剤とする制御放出錠剤の調製
【0294】
錠剤組成:
【0295】
【表12】

【0296】
錠剤は、高剪断力ミキサーPellmix 1/8において湿式造粒に基づいて調製した。ミクロン粉砕された16gのタクロリムスを、高剪断力ミキサー内で640 gのラクトース125メッシュ及び80 gのナトリウムラウリルスルフェートと混合した。バインダーKollidon VA64の15%水溶液(Kollidon SRはポリビニルアセテートとポリビニルピロリドンとの80:20混合物である)を、供給速度20 g/分で500 rpmのインペラー速度で混合物にポンプ供給し、続いて3分間にわたって混練した。顆粒状物質を棚形乾燥機内で乾燥させ、そして篩サイズ0.7 mmにかけた。
【0297】
顆粒状物質を400 g のラクトースDC Lac 14及び480 gのKollidon SRと3分間にわたって混合し、そして8gのステアリン酸マグネシウムを添加したあと、さらに0.5分間にわたって混合した。混合物を単発式打錠機 Diaf TM20上で圧縮して錠剤にした。錠剤直径:8 mm。錠剤形状:円形、コンパウンド・カップ。
【0298】
実施例16
腸溶性コーティング含有錠剤の調製(溶融造粒及び腸溶性コーティング含有錠剤)
【0299】
錠剤組成:
【0300】
【表13】

【0301】
錠剤は、高剪断力ミキサーPellmix 1/8において溶融造粒に基づいて調製した。ミクロン粉砕された16gのタクロリムスを、高剪断力ミキサー内で640 gのラクトース125メッシュ、120 gのポリエチレングリコール6000、及び48gのポロキサマー188と混合した。ミキサー・ボウルのジャケットを80℃まで加熱し、そしてPEG及びポロキサマーの融点まで、1000 rpmのインペラー回転速度でブレンドを加熱した。溶融後、800 rpmで4分間にわたって混練を続けた。顆粒状物質を篩サイズ0.7 mmにかけ、そしてトレイ上で冷却した。顆粒状物質を480 g のAvicel PH200と3分間にわたって混合し、そして16gのステアリン酸マグネシウムを添加したあと、さらに0.5分間にわたって混合した。混合物を単発式打錠機 Diaf TM20上で圧縮して錠剤にした。錠剤直径:7 mm。錠剤形状:円形、コンパウンド・カップ。
【0302】
実施例11に記載された手順に従って、錠剤に腸溶性コーティングを施した。
【0303】
実施例17
in vitro溶出データ
前述の実施例による組成物及び投与形態に、2種の異なる溶出溶媒/試験を用いて、in vitro溶出試験を施した。
A. 溶出溶媒/試験:pH 4.5に調節された0.005% HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)を有する900 mlの水性媒質(USPパドル法;回転速度:50 rpm)により、下記溶出プロフィールを見い出した。
【0304】
【表14】

【0305】
溶出溶媒:pH 4.5に調節された0.005% HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)を有する900 mlの水性媒質(USPパドル法;回転速度:50 rpm)中の実施例9の錠剤コアの溶出プロフィール。
【0306】
【表15】

【0307】
USP法A、遅延放出項目(USPパドル法;回転速度:50 rpm)による溶出溶媒中の実施例9の腸溶性コーティング含有錠剤の溶出プロフィール。
【0308】
【表16】

【0309】
実施例18
in vivoデータ(血漿濃度;ビーグル犬)
A. 以下のタクロリムス配合物を調製した。
【0310】
【表17】

【0311】
グリセリルモノステアレート中に80℃でタクロリムスを溶解した。溶液を、流動床Strea-1内で、供給速度37 g/分で100 gのラクトースと100 gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、Pharmacoat 606との混合物上に噴霧した。結果として生じた顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、そして硬質ゼラチン・カプセル(112 mg)内に充填した。
【0312】
この配合物のin vivo溶出試験(溶出溶媒:0.005% HPC を有するpH 4.5に調節された900 mlの水性媒質;USPパドル法;回転速度:50 rpm)は、下記結果をもたらした。
【0313】
【表18】

【0314】
Prograf(登録商標)4 x 1 mg(バッチ番号:1C56050)に対する、当該方法において上述したように行われた、ビーグル犬におけるこの配合物0.5 mgのin vivo研究は、下記結果をもたらした。
【0315】
配合物投与後のイヌno.F1183における血中濃度(ng/mL)。
【0316】
【表19】

【0317】
AUC(本発明/Prograf)に基づく相対生体利用効率:151 %。
【0318】
B. 下記タクロリムス配合物を調製した。
【0319】
【表20】

【0320】
グリセリルモノステアレート中に80℃でタクロリムスを溶解した。溶液を、流動床Strea-1内で、供給速度38 g/分で100 gのAeroperl(登録商標)300(マグネシウムアルミニウムメタシリケート)と100 gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、Pharmacoat 606との混合物上に噴霧した。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、そして硬質ゼラチン・カプセル(114 mg)内に充填した。
【0321】
Prograf(登録商標)4 x 1 mg(バッチ番号:1C56050)に対する、当該方法において上述したように行われた、ビーグル犬におけるこの配合物0.5 mgのin vivo研究は、下記結果をもたらした。
【0322】
配合物投与後のイヌno.F1184における血中濃度(ng/mL)。
【0323】
【表21】

【0324】
AUC(本発明/Prograf)に基づく相対生体利用効率:130 %。
【0325】
実施例19
in vivoデータ(血漿濃度;ゲッティンゲン・ミニブタ)
以下のタクロリムス配合物を調製した。
【0326】
【表22】

【0327】
グリセリルモノステアレート中に80℃でタクロリムスを溶解した。溶液を、流動床Strea-1内で、供給速度43 g/分で100 gのラクトースと100 gのヒドロキシプロピルメチルセルロース、Pharmacoat 606との混合物上に噴霧した。顆粒生成物を0.7 mmの篩にかけ、そしてTrubulaブレンダー内で40% Avicel PH200と3分間にわたって混合し、続いて1% ステアリン酸マグネシウムと0.5分間にわたって混合した。単発式打錠機 Diaf TM20上で圧縮して190 mgの錠剤にした。錠剤直径:8 mm。錠剤形状:円形、コンパウンド・カップ。錠剤硬度:42 N。崩壊時間:>55分。
【0328】
この配合物のin vivo溶出試験(溶出溶媒:0.005% HPC を有するpH 4.5に調節された900 mlの水性媒質;USPパドル法;回転速度:50 rpm)は、下記結果をもたらした。
【0329】
【表23】

【0330】
Prograf(登録商標)4 x 1 mg(バッチ番号:1C5605D)に対する、当該方法において上述したように行われた、雌ゲッティンゲン・ミニブタにおけるこの配合物1 mg(アッセイ0.9 mg)のin vivo研究は、下記結果をもたらした。
【0331】
配合物投与後のブタno.108003における血中濃度(ng/mL)。
【0332】
【表24】

【0333】
AUC(本発明/Prograf)に基づく相対生体利用効率:177 %。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タクロリムス及びその類似体の中から選択される活性成分を含む固形医薬組成物であって、溶出溶媒として0.1N HCLを使用してUSPパドル法によってin vitro溶出試験を施す時に、当該活性成分の20% w/w未満が0.5時間以内に放出される、前記組成物。
【請求項2】
前記活性成分の20% w/w未満が3時間以内に放出される、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項3】
前記活性成分の10% w/w未満が3時間以内に放出される、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項4】
最初の2時間は溶出溶媒として0.1N HCLを使用し、次いでpH 6.8の溶出溶媒を使用してUSPパドル法によってin vitro溶出試験を施す時に、当該活性成分の50% w/w以上が4時間以内に放出される、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項5】
最初の2時間は溶出溶媒として0.1N HCLを使用し、次いでpH 6.8の溶出溶媒を使用してUSPパドル法によってin vitro溶出試験を施す時に、当該活性成分の50% w/w以上が2.5時間以内に放出される、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項6】
0.005%ヒドロキシプロピルセルロースでpH 4.5に調節された水性溶出溶媒を使用してUSPパドル法によってin vitro溶出試験を施す時に、当該活性薬剤成分の50% w/w未満が8時間以内、好ましくは15時間以内に放出される、請求項1に記載の固形医薬組成物。
【請求項7】
前記活性薬剤成分の40% w/w未満が8時間以内、好ましくは15時間以内に放出される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
経口投与すると、胃腸管内のCYP3A4代謝をほぼ回避するように構成されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、腸溶性コーティングでコーティングされている、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
親水性又は水混和性ビヒクル及び1種又は2種以上の放出調整剤中に、活性成分の固体分散体又は固溶体を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記活性成分が、疎水性ビヒクル中に分散又は溶解されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記疎水性ビヒクルが、油、油性材料、ワックス又は脂肪酸誘導体である、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記疎水性ビヒクルが、直鎖飽和型炭化水素、ソルビタン・エステル、パラフィン;脂肪及び油、例えばココアバター、牛脂、ラード、ポリエーテルグリコール・エステル;高級脂肪酸、例えばステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、高級アルコール、例えばセタノール、ステアリルアルコール、低融点ワックス、例えばグリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレエート、水素化獣脂、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、置換型及び/又は無置換型モノグリセリド、置換型及び/又は無置換型ジグリセリド、置換型及び/又は無置換型トリグリセリド、蜜蝋、白蝋、カルナバ蝋、キャスター蝋、木蝋、アセチレートモノグリセリド;NVPポリマー、PVPポリマー、アクリル酸ポリマー及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記疎水性ビヒクルがグリセリルモノステアレート(GMS)である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記親水性又は水混和性ビヒクルが、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンオキシド、ポロキサマー、ポリオキシエチレンステアレート、ポリ-イプシロンカプロラクトン、ポリグリコール化グリセリド、例えばGelucire(登録商標)、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項16】
前記親水性又は水混和性ビヒクルが、ポリビニルピロリドン、ポリビニル-ポリビニルアセテート・コポリマー(PVP-PVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸ポリマー(Eudragit RS; Eudragit RL; Eudragit NE; Eudragit E)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースを含むセルロース誘導体、ペクチン、シクロデキストリン、ガラクトマンナン、アルギネート、カラゲネート、キサンタンガム及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項10に記載の組成物。
【請求項17】
前記ビヒクルがポリエチレングリコール(PEG)である、請求項10に記載の組成物。
【請求項18】
前記ポリエチレングリコールの平均分子量が1500以上である、請求項10に記載の組成物。
【請求項19】
2種又は3種以上の親水性又は水混和性ビヒクルの混合物を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項20】
前記混合物が、1:3〜10:1、好ましくは1:1〜5:1、より好ましくは3:2〜4:1、特に2:1〜3:1、具体的には約7:3の比でポリエチレングリコールとポロキサマーとを含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項21】
前記ポロキサマーがポロキサマー188である、請求項10に記載の組成物。
【請求項22】
前記ポリエチレングリコールの平均分子量が約6000(PEG6000)である、請求項10に記載の組成物。
【請求項23】
水混和性ポリマー、水不溶性ポリマー、油及び油性材料から成る群から選択された1種又は2種以上の放出調整剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記水不溶性ポリマーが、エチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースニトレート、及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記油又は油性材料は親水性であり、そして、ポリエーテルグリコール、例えばポリプロピレングリコール;ポリオキシエチレン;ポリオキシプロピレン;ポロキサマー;ポリグリコール化グリセリド、例えばGelucire(登録商標)、及びこれらの混合物から選択される、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記Gelucire(登録商標)は、Gelucire(登録商標)50/13、Gelucire(登録商標)44/14、Gelucire(登録商標)50/10、Gelucire(登録商標)62/05及びこれらの混合物の中から選択される、請求項25に記載の組成物。
【請求項27】
前記油又は油性材料は疎水性であり、そして直鎖飽和型炭化水素、ソルビタン・エステル、パラフィン;脂肪及び油、例えばココアバター、牛脂、ラード、ポリエーテルグリコール・エステル;高級脂肪酸、例えばステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、高級アルコール、例えばセタノール、ステアリルアルコール、低融点ワックス、例えばグリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレエート、水素化獣脂、ミリスチルアルコール、ステアリルアルコール、置換型及び/又は無置換型モノグリセリド、置換型及び/又は無置換型ジグリセリド、置換型及び/又は無置換型トリグリセリド、蜜蝋、白蝋、カルナバ蝋、キャスター蝋、木蝋、アセチレートモノグリセリド;NVPポリマー、PVPポリマー、アクリル酸ポリマー及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項23に記載の組成物。
【請求項28】
前記油又は油性疎水性材料の融点は、約20℃以上である、請求項23に記載の組成物。
【請求項29】
前記水混和性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポロキサマー、ポリオキシエチレンステアレート、ポリ-ε-カプロラクトン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルピロリドン-ポリビニルアセテート・コポリマー(PVP-PVA)、ポリメタクリル酸ポリマー及びポリビニルアルコール(PVA)、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)及びこれらの混合物から成る群から選択されるセルロース誘導体である、請求項23に記載の組成物。
【請求項30】
前記ポリメタクリル酸ポリマーが、Eudragit(登録商標) RS、Eudragit(登録商標) RL、Eudragit(登録商標) NE及びEudragit(登録商標) Eの中から選択される、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
pH依存性の水溶度を有する水混和性ポリマーを使用して腸溶性コーティングされている、請求項9に記載の組成物。
【請求項32】
前記水混和性ポリマーは、ポリアクリルアミド;フタレート誘導体、例えば、アミロースアセテートフタレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートテレフタレート、セルロースアセテートイソフタレート、他のセルロースエステルフタレート、セルロースエーテルフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルエチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HMPCP)、メチルセルロースフタレート、メチルセルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ポリビニルアセテート水素フタレート、ナトリウムセルロースアセテートフタレート、澱粉酸フタレートを含む、炭水化物の酸フタレート;ポリビニルアセテートフタレート(PVAP)を含むその他の化合物のフタレート;ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート(HPMCAS)、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートトリメリテートを含む他のセルロース誘導体;アルギネート;カルボマー;ポリアクリル酸誘導体、例えばアクリル酸及びアクリル酸エステルのコポリマー、ポリメタクリル酸及びそのエステル、ポリアクリル酸メタクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー(例えばEudragit(登録商標) L及びEudragit(登録商標) S);スチレン-マレイン酸ジブチルフタレート・コポリマー、スチレン-マレイン酸ポリビニルアセテートフタレート・コポリマー、スチレン及びマレイン酸のコポリマー;セラック、澱粉グリコレート;ポラクリリン;ビニルアセテート及びクロトン酸のコポリマー及びこれらの混合物から成る群から選択される、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
1種又は2種以上の薬学的に許容される賦形剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項34】
前記薬学的に許容される賦形剤が、充填剤、希釈剤、崩壊剤、バインダー及び滑剤から成る群から選択される、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
粒子形態、例えば粉末形態である、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記粒子の幾何重量平均直径dgwは、約10 μm〜約2000 μm、好ましくは約20 μm〜約2000 μm、特に約50 μm〜約300 μmである、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記粒子の幾何重量平均直径dgwは、約50 μm〜約300 μmである、請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項38】
固形経口投与形態である、請求項33に記載の医薬組成物を含む投与形態。
【請求項39】
単位投与形態である、請求項38に記載の投与形態。
【請求項40】
矯味剤、着色剤、味マスキング剤、pH調節剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、抗酸化剤、湿潤剤、湿度調節剤、界面活性剤、懸濁剤、及び吸収促進剤から成る群から選択される薬学的に許容される添加剤を更に含む、請求項38に記載の投与形態。
【請求項41】
1種以上の薬学的に許容される賦形剤が、シリカ酸又はその誘導体又はシリケートを含むその塩、二酸化ケイ素及びそのポリマー;マグネシウムアルミノシリケート及び/又はマグネシウムアルミノメタシリケート、ベントナイト、カオリン、マグネシウムトリシリケート、モンモリロナイト及び/又はサポナイトから成る群から選択される、請求項38に記載の投与形態。
【請求項42】
1種以上の薬学的に許容される賦形剤が、シリカ酸又はその誘導体又は塩である、請求項38に記載の投与形態。
【請求項43】
1種以上の薬学的に許容される賦形剤が、二酸化ケイ素又はそのポリマーである、請求項38に記載の投与形態。
【請求項44】
前記二酸化ケイ素生成物が、Aeroperl(登録商標)300(ドイツ国フランクフルト在、Degussaから入手可能)に対応する特性を有している、請求項43に記載の投与形態。
【請求項45】
タクロリムスの経口生体利用効率を高めるための、請求項1に記載の経口医薬組成物の使用。
【請求項46】
経口投与形態、好ましくは錠剤、カプセル剤又はサシェ剤を製造するための、請求項1に記載の固形組成物の使用。
【請求項47】
顆粒、ぺレット、ミクロ球体又はナノ粒子を製造するための、請求項1に記載の固形組成物の使用。
【請求項48】
制御放出又は改質放出固形投与形態を製造するための、請求項1に記載の固形組成物の使用。
【請求項49】
遅延放出固形投与形態を製造するための、請求項1に記載の固形組成物の使用。
【請求項50】
局所投与形態を製造するための、請求項1に記載の固形組成物の使用。
【請求項51】
請求項10に記載の組成物の製造方法であって、タクロリムス又はその類似体を親水性ビヒクル中に溶解又は分散させて、周囲温度で固溶体又は固体分散体を得るステップを含む、前記方法。

【公表番号】特表2007−504102(P2007−504102A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524226(P2006−524226)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000573
【国際公開番号】WO2005/020993
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506068276)ライフサイクル ファーマ アクティーゼルスカブ (5)
【Fターム(参考)】