説明

タグ装置

【課題】タグ装置間で通信を可能とする。
【解決手段】起動指示に基づいて起動され、他のタグ装置に対して情報を送信する送信部(RF送信専用回路15)と、送信部の起動中は、他のタグ装置から送信される情報を受信し、送信部の停止中は、リーダライタ装置との間で情報を送受信する送受信部(RF送受信回路14)と、送信部および送受信部に対して電力を供給するバッテリ18と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、異なる通信プロトコルに基づいて動作する複数のRFIDを筐体内に内蔵するタグ装置に関する技術が開示されている。この技術では、複数のRFIDが相互に通信することにより、異なる周波数や通信方式や故障時のIDデータの読出しを可能とする。
【特許文献1】特開2007−334703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示される技術は、タグ装置に内蔵されている複数のRFID間で通信を行う技術であることから、タグ装置間で通信を行うことはできない。一般的には、タグ装置は、リーダライタ装置との間で通信を行い、タグ装置間で通信を行うことはできない。しかしながら、タグ装置間で、例えば、プロフィールやスケジュール等の情報を直接に授受したい場合がある。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、タグ装置間で通信を可能とするタグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、起動指示に基づいて起動され、他のタグ装置に対して情報を送信する送信部と、前記送信部の起動中は、前記他のタグ装置から送信される情報を受信し、前記送信部の停止中は、リーダライタ装置との間で情報を送受信する送受信部と、前記送信部および送受信部に対して電力を供給するバッテリと、を有することを特徴とする。
この構成によれば、タグ装置間で通信が可能となる。
【0006】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記送信部は第1のアンテナを有し、前記送受信部は前記第1のアンテナとは独立した第2のアンテナを有することを特徴とする。
この構成によれば、アンテナを独立した構成とすることにより、他のタグ装置に対して送信を行う第1のアンテナを最適設計できるので、他のタグ装置に対して情報を確実に送信できる。また、アンテナを独立させることにより、送信強度を高くするために第1のアンテナに高い電圧を印加した場合であっても、送受信部の回路にストレスがかかることを防止できる。
【0007】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記第1のアンテナおよび第2のアンテナはループアンテナによって構成されるとともに、前記第1のアンテナは前記第2のアンテナよりも開口面積が大きく、かつ、巻数が少ない、ことを特徴とする。
このような構成によれば、第1のアンテナのコイルに流れる電流が急激に変化するようにできるので、他のタグ装置との間で通信を円滑に行うことができる。
【0008】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記送受信部は、前記送信部の起動中は前記送信部の送信動作実行後に受信動作を実行し、前記送信部の停止中は自己が受信動作を実行した後に送信動作を実行することを特徴とする。
このような構成によれば、他のタグ装置との間で通信を実行することができるとともに、リーダライタ装置との間でも通信を行うことができる。
【0009】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記送信部には前記送受信部よりも高い電圧の電源電力が供給されていることを特徴とする。
このような構成によれば、アンテナコイルに流れる電流を急峻に変化させることができるので、他のタグ装置と確実に通信することができる。
【0010】
前記起動指示は、操作部が操作されたこと、外部電源が接続されたこと、または、他のタグ装置から読み出し要求がなされたことであることを特徴とする。
このような構成によれば、特定のトリガによってのみ送信部を起動することにより、バッテリの消耗を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0012】
(A)実施の形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係るタグ装置を含むタグシステムの構成例を示す図である。この図に示すように、タグシステムは、タグ装置10−1,10−2およびリーダライタ装置30を有している。タグ装置10−1,10−2は、リーダライタ装置30との間の通信(通常通信)によって、リーダライタ装置30との間で情報を授受することができるとともに、タグ装置10−1,10−2と間の通信(タグ間通信)により、タグ装置10−1,10−2の間で情報を授受することができる。なお、後述するように、タグ装置10−1,10−2は、リーダライタ装置30との間で通信が可能なエリアに属している場合には、タグ間通信は実行せずに通常通信のみを実行し、通信が可能なエリアに属していない場合において、ユーザからの指示がなされたときにタグ間通信を実行する。
【0013】
図2は、図1に示すタグ装置10−1,10−2の構成例を示す図である。なお、タグ装置10−1,10−2は、同様の構成とされているので、以下では、これらをタグ装置10として説明する。図2に示すように、タグ装置10は、アンテナ11,12、制御回路13、RF(Radio Frequency)送受信回路14、RF送信専用回路15、高耐圧ドライバ16、昇圧回路17、バッテリ18、操作部19、および、I/F(Interface)20を有している。
【0014】
ここで、アンテナ11は、ループアンテナによって構成され、リーダライタ装置30から送信された交番磁界を電気信号に変換してRF送受信回路14に供給するとともに、RF送受信回路14から供給された信号を交番磁界としてリーダライタ装置30に対して放射する。アンテナ11を構成する導線の巻数はN1であり、その開口面積(導線によって囲まれる領域の面積)はA1である。
【0015】
アンテナ12もループアンテナによって構成され、高耐圧ドライバ16から供給された信号を交番磁界に変換して他のタグ装置に対して放射する。アンテナ12を構成する導線の巻数はN2であり、その開口面積はA2である。なお、アンテナ12は、アンテナ11に比較して、アンテナを構成する導線の巻数が少なく(N1>N2)、また、開口面積が大きい(A1<A2)。これにより、後述するように、アンテナ12に流れる電流の変化を急峻化できるので、他のタグ装置と確実に通信を行うことができる。
【0016】
制御回路13は、RF送受信回路14、RF送信専用回路15、および、昇圧回路17の制御を行うとともに、通信プロトコルの制御を行う。また、制御回路13は、例えば、ID(Identification)情報等の情報を格納する記憶部を有している。
【0017】
RF送受信回路14は、制御回路13に制御され、リーダライタ装置30が近くに存在し、これとの間で通信を可能である場合には、アンテナ11を送受信用アンテナとして用いてリーダライタ装置30との間で情報を送受信する。また、他のタグ装置との間で1対1の通信を行う場合には、アンテナ11を受信用アンテナとして用いて他のタグ装置から送信された情報を受信する。
【0018】
RF送信専用回路15は、リーダライタ装置30が存在しない場合であって、かつ、ユーザからタグ間の通信を行う指示がなされた場合に起動され、アンテナ12を送信専用アンテナとして用いて他のタグ装置に対して情報を送信する。
【0019】
高耐圧ドライバ16は、RF送信専用回路15から供給される信号を、昇圧回路17から供給される高電圧を用いて増幅し、アンテナ12を駆動する。
【0020】
昇圧回路17は、例えば、スイッチングレギュレータ等によって構成され、バッテリ18から供給される直流電圧(例えば、「3V」)を高電圧(例えば、「7V」)に昇圧して、高耐圧ドライバ16に供給する。
【0021】
バッテリ18は、例えば、ボタン電池等の1次電池またはリチウム電池等の2次電池によって構成され、直流電力を装置の各部に供給する。
【0022】
操作部19は、例えば、タグ装置10の図示せぬ筐体の一部に配置されたボタンとして構成され、ユーザによって操作された場合には、所定の情報を出力する。
【0023】
I/F20は、例えば、パーソナルコンピュータ等の外部機器が接続された場合に、当該外部機器との間で情報を授受するために、情報の表現形式を変換する。
【0024】
(B)実施の形態の動作の説明
つぎに、本発明の実施形態の動作について説明する。なお、以下では、タグ装置10−1を例に挙げて説明を行う。まず、タグ装置10−1が、リーダライタ装置30との間で通信が可能な位置に存在する場合において、リーダライタ装置30との間で通常通信を行う動作を図3を参照して説明する。
【0025】
図3に示す処理が開始されると、ステップS11において、制御回路13は、RF送受信回路14のみを動作状態とし、RF送信専用回路15、高耐圧ドライバ16、および、昇圧回路17については動作を停止状態とする。これにより、バッテリ18から出力された電力は、RF送受信回路14にのみ供給されるため、RF送信専用回路15には電源電力は供給されない。また、昇圧回路17にも供給されないため、高耐圧ドライバ16にも電力は供給されない状態となる。
【0026】
ステップS12では、制御回路13は、リーダライタ装置30との間の通信処理を実行する。詳細には、リーダライタ装置30は、周辺に存在するタグ装置に対して一定の時間間隔で一斉に読み出しを行うブロードキャストを実行しており、リーダライタ装置30からの交番磁界が到達可能な範囲に存在するタグ装置は、当該読み出しをアンテナ11を介してRF送受信回路14によって受信し、これに応答する処理を実行する。より具体的には、制御回路13は、当該読み出しに対して、自機に割り当てられたID情報等をリーダライタ装置30に対して送信する処理を実行する。
【0027】
ステップS13では、操作部19がユーザによって操作され、他のタグ装置との間の通信指示がなされたか否かを判定し、指示がされたと判定した場合(ステップS13;Yes)にはステップS14に進み、それ以外の場合(ステップS13;No)にはステップS15に進む。ここで、図1に示すタグ間通信は、リーダライタ装置30が存在しない領域でしか許容されないが、そのことを知らないユーザがタグ装置10−1の操作部19を操作し、他のタグ装置10−2に対して情報を送信する指示を行った場合には、ステップS13ではYesと判定されてステップS14に進む。
【0028】
ステップS14では、制御回路13は、現在、自機がリーダライタ装置30と通信可能な位置に存在することから、他のタグ装置10−2との間で、通信不能であることを通知する。具体的には、例えば、図示せぬ表示部に対してメッセージ「現在、リーダライタ装置30との間で通信を行うインフラモード動作中ですので、他のタグ装置との通信はできません。」を表示することができる。なお、「インフラモード」は、リーダライタ装置30との間で通常通信を行うモードであり、また、インフラモードにおいて、タグ装置間の通信を禁止するのは、リーダライタ装置30は商用電源等から電力を得ているので、小型のバッテリ18から電力を得ているタグ装置10がリーダライタ装置30に勝る電力の交番磁界を送信することは困難であり、また、仮に可能であったとしてもバッテリ18の消耗を早めてしまうからである。
【0029】
ステップS15では、制御回路13は、処理を終了するか否かを判定し、処理を終了しない場合(ステップS15;No)にはステップS11に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS15;Yes)には処理を終了する。具体的には、例えば、タグ装置10−1の電源を切断する操作がされた場合には処理を終了する。
【0030】
つぎに、図4を参照して、タグ装置10−1,10−2が、リーダライタ装置30との間で通信が不能な位置に存在する場合において、タグ間通信を行う動作を説明する。以下では、具体例として、タグ装置10−1を有するユーザが、タグ装置10−2を有するユーザに対して、タグ装置10−1に格納されている情報を送信する場合を例に挙げて説明する。
【0031】
図4に示す処理が開始されると、ステップS31において制御回路13は、ユーザが操作部19を操作して、他のタグ装置に対して情報を送信する指示がなされたか否かを判定し、指示がなされたと判定した場合(ステップS31;Yes)にはステップS32に進み、それ以外の場合(ステップS31;No)にはステップS37に進む。例えば、タグ装置10−1のユーザが操作部19を操作し、他のタグ装置10−2に情報を送信する指示を行った場合にはステップS32に進む。
【0032】
ステップS32では、制御回路13は、RF送信専用回路15、高耐圧ドライバ16、および、昇圧回路17から構成される送信部を起動する。より詳細には、制御回路13は、RF送信専用回路15に対するバッテリ18からの電力の供給を開始するとともに、昇圧回路17に対するバッテリ18からの電力の供給を開始する。この結果、RF送信専用回路15は動作状態になるとともに、高耐圧ドライバ16も昇圧回路17から供給されるバッテリ18からの直流電圧を昇圧した電力が供給される。
【0033】
ステップS33では、制御回路13は、送信処理を実行する。より詳細には、制御回路13は、他のタグ装置に対して応答を求めるための情報を、図示せぬメモリから取得し、RF送信専用回路15に供給する。RF送信専用回路15は、送信しようとする情報に応じて搬送波を変調し、高耐圧ドライバ16に供給する。高耐圧ドライバ16は、昇圧回路17によって昇圧された電源電圧(例えば、7Vの電圧)に基づいて信号を増幅し、アンテナ12を駆動する。アンテナ12は、高耐圧ドライバ16の駆動に応じた交番磁界を放射する。アンテナ12から放射された交番磁界は、通信相手であるタグ装置10−2に伝送される。なお、送信に先立って、他の通信が実行されていないか確認するために、制御回路13は、RF送受信回路14によって搬送波の受信の有無を確認する。すなわち、リーダライタ装置30は、一般的に、通信に先立って160mS程度の期間搬送波を送信する。また、他のタグ装置10−2とリーダライタ装置30との間で通常通信が実行されている場合には、ほぼ連続して搬送波が送受信される。このため、制御回路13は、例えば、1/8秒間搬送波の有無を確認し、搬送波が検出できない場合には、送信処理を実行する。
【0034】
タグ装置10−2では、後述する図5の処理が実行され、タグ装置10−1から送信された交番磁界をRF送受信回路14がアンテナ11を介して受信する。そして、後述するステップS51において、他のタグ装置からの読み出しがあったと判定し、送信部を起動し、読み出しに対応する応答情報をRF送信専用回路15によって送信する。
【0035】
ステップS34では、制御回路13は、RF送信専用回路15、高耐圧ドライバ16、および、昇圧回路17から構成される送信部の動作を停止する。より詳細には、制御回路13は、RF送信専用回路15に対するバッテリ18からの電力の供給を停止するとともに、昇圧回路17に対するバッテリ18からの電力の供給を停止する。この結果、RF送信専用回路15は停止状態になるとともに、高耐圧ドライバ16および昇圧回路17も停止状態となる。この結果、バッテリ18の電力の消費が抑制されるとともに、アンテナ12からの交番磁界の放射が停止されるので、後述するステップS35におけるアンテナ11による受信処理において、自機が放射した交番磁界が他のタグ装置10−2から送信される交番磁界に干渉することを防止できる。
【0036】
ステップS35では、制御回路13は、RF送受信回路14により、他のタグ装置から送信された情報を受信する受信処理を実行する。すなわち、RF送受信回路14は、他のタグ装置10−2から送信された情報を、アンテナ11を介して受信し、制御回路13に供給する。例えば、読み出しに応答する応答情報がタグ装置10−2から送信された場合には、RF送受信回路14がアンテナ11を介して当該情報を受信し、制御回路13に供給する。
【0037】
ステップS36では、制御回路13は、他のタグ装置との間の通信を終了するか否かを判定し、終了しない場合(ステップS36;No)にはステップS32に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS36;Yes)にはステップS37に進む。
【0038】
ステップS37では、制御回路13は、処理を終了するか否かを判定し、終了しない場合(ステップS37;No)にはステップS31に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS37;Yes)には処理を終了する。
【0039】
つぎに、図5を参照して、タグ間通信において、読み出しを受ける側のタグ装置10−2において実行される処理について説明する。図5に示す処理が開始されると、ステップS51において、制御回路13は、他のタグ装置からタグ間通信の読み出しがなされたか否かを判定し、読み出しがなされたと判定した場合(ステップS51;Yes)にはステップS52に進み、それ以外の場合(ステップS51;No)にはステップS57に進む。例えば、タグ装置10−1において図4のステップS33の処理によって読み出しを行う情報が送信された場合にはステップS52に進む。
【0040】
ステップS52では、制御回路13は、RF送受信回路14に対して、他のタグ装置から送信された情報を受信する受信処理を実行させる。すなわち、RF送受信回路14は、他のタグ装置10−1から送信された情報を、アンテナ11を介して受信し、制御回路13に供給する。例えば、応答を求める情報がタグ装置10−1から送信された場合には、RF送受信回路14がアンテナ11を介して当該情報を受信し、制御回路13に供給する。
【0041】
ステップS53では、制御回路13は、RF送信専用回路15、高耐圧ドライバ16、および、昇圧回路17から構成される送信部を起動する。より詳細には、制御回路13は、RF送信専用回路15に対するバッテリ18からの電力の供給を開始するとともに、昇圧回路17に対するバッテリ18からの電力の供給を開始する。この結果、RF送信専用回路15は動作状態になるとともに、高耐圧ドライバ16にも昇圧回路17から供給されるバッテリ18からの直流電圧を昇圧した電力が供給される。
【0042】
ステップS54では、制御回路13は、送信処理を実行する。より詳細には、制御回路13は、他のタグ装置10−1からの読み出しに応答するための情報を、図示せぬメモリから取得し、RF送信専用回路15に供給する。RF送信専用回路15は、送信しようとする情報に応じて搬送波を変調し、高耐圧ドライバ16に供給する。高耐圧ドライバ16は、昇圧回路17によって昇圧された電源電圧(例えば、7Vの電圧)に基づいて増幅し、アンテナ12を駆動する。アンテナ12は、高耐圧ドライバ16の駆動に応じた交番磁界を放射する。アンテナ12から放射された交番磁界は、通信相手であるタグ装置10−1に伝送される。
【0043】
タグ装置10−1では、前述した図4の処理が実行され、タグ装置10−2から送信された交番磁界を、ステップS35の処理により、RF送受信回路14がアンテナ11を介して受信する。
【0044】
ステップS55では、制御回路13は、RF送信専用回路15、高耐圧ドライバ16、および、昇圧回路17から構成される送信部の動作を停止する。より詳細には、制御回路13は、RF送信専用回路15に対するバッテリ18からの電力の供給を停止するとともに、昇圧回路17に対するバッテリ18からの電力の供給を停止する。この結果、RF送信専用回路15は停止状態になるとともに、高耐圧ドライバ16および昇圧回路17も停止状態となる。この結果、バッテリ18の電力の消費が抑制されるとともに、アンテナ12からの交番磁界の放射が停止されるので、前述したステップS52におけるアンテナ11による受信処理において、自機が放射した交番磁界が他のタグ装置10−1から送信される交番磁界に干渉することを防止できる。
【0045】
ステップS56では、制御回路13は、他のタグ装置との間の通信を終了するか否かを判定し、終了しない場合(ステップS56;No)にはステップS52に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS56;Yes)にはステップS57に進む。
【0046】
ステップS57では、制御回路13は、処理を終了するか否かを判定し、終了しない場合(ステップS57;No)にはステップS51に戻って前述の場合と同様の処理を繰り返し、それ以外の場合(ステップS57;Yes)には処理を終了する。
【0047】
以上の処理によれば、リーダライタ装置30からの電波が届かない位置にタグ装置10−1,10−2が存在している場合に、一方のタグ装置10−1の操作部19が操作されて、タグ間通信を行う指示がなされた場合には、送信部が起動されてアンテナ12を介して読み出し信号が送信される。そして、送信が終了すると、送信部の動作が停止される。このようにして送信された読み出し信号は、他のタグ装置10−2のアンテナ11によって受信される。タグ装置10−2は、他のタグ装置10−1からの読み出しであることを認識し、送信部を起動した後、応答信号をタグ装置10−1に対してアンテナ12を介して送信する。タグ装置10−1では、アンテナ11を介して当該信号を受信する。なお、これ以降もタグ間通信を継続する場合には、前述した処理が繰り返される。
【0048】
以上に説明したように、本実施形態のタグ装置によれば、通常のタグ装置が有するアンテナ11およびRF送受信回路14に対してRF送信専用回路15を追加的に設けるようにしたので、当該RF送信専用回路15を用いることにより、タグ間通信が可能になる。
【0049】
また、RF送信専用回路15を含む送信部については、リーダライタ装置30との間の通信ができないことを条件として起動するようにしたので、商用電源を使用して強力な交番磁界を放射することができるリーダライタ装置30が近くに存在する場合には、タグ間通信を実行しないことで、混信による誤動作を防止するとともに、バッテリ18の消耗を防止できる。また、ユーザによって指示がなされた場合にのみ送信部を起動することでバッテリ18の消耗を防止できる。さらに、送信が完了した場合には、送信部への電力の供給を停止することで、バッテリ18の消耗を防止できるとともに、送信部から送信される交番磁界が、アンテナ11によって受信されることにより生じる混信の発生を防止できる。
【0050】
また、送信用のアンテナ12を新たに設けるようにしたので、アンテナ12を独立して設計することにより、バッテリ18を使用した近距離通信において、通信効率が高くなるようにアンテナ12を最適設計できる。すなわち、近傍界の磁界を受信する場合には、コイルの巻数が多い方が望ましく、また、ある程度の大きさ(例えば、名刺サイズ)があれば、十分な通信距離が確保できる。また、通信相手がリーダライタ装置である場合には、リーダライタ装置の無線性能がタグ装置に比較して著しく高いために、アンテナ11の性能はそれほど高くなくてもよい。一方、近傍界へ磁界を送信する場合には、ループアンテナを構成するコイルを流れる電流が急峻に変化することが必要である。この場合、コイルの開口面積は大きい方が望ましいが、巻数については少ない方が好ましい。巻数が多い場合にはリアクタンス成分が増加することから、急激な電流変化を抑制するように働くからである。そこで、本実施の形態では、アンテナ12については、近傍界へ磁界を送信するのに適するように、アンテナ12の開口面積は、アンテナ11よりも広くなるようにするとともに、巻数についてはアンテナ11よりも少なくなるように設定している。
【0051】
また、本実施形態では、高耐圧ドライバ16によって、昇圧回路17によって昇圧された電源電圧によって送信信号を増幅するようにしたので、アンテナ12に流れる電流の変化を急峻にすることができるとともに、交番磁界の強度を増加させることにより、タグ間通信を確実に実行することができる。また、昇圧回路17によって昇圧された電源電圧については、高耐圧ドライバ16にのみ供給するので、回路全体に供給する場合に比較してバッテリ18の消耗を防ぐことができる。また、アンテナ11とアンテナ12を独立に設け、送信用のアンテナ12にのみ高い電圧を印加するようにしたので、これらのアンテナを独立させない場合に、送信のために印加された高い電圧が、受信回路に印加されて回路にストレスが生じることを防止できる。
【0052】
(C)変形実施の態様
なお、上述した実施の形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の範囲内で任意に変形および応用が可能であることは勿論である。
たとえば、以上の実施形態では、1対1のタグ通信を例に挙げて説明したが、1対複数のタグ通信に適用することも可能である。具体的には、1つのタグ装置によって読み出しが行われた場合には、複数の他のタグ装置が、例えば、読み出しを行ったタグ装置に近い順に応答するようにしてもよい。
【0053】
また、以上の実施形態では、RF送信専用回路15および高耐圧ドライバ16の電源電力はバッテリ18から供給するようにしたが、外部電源から供給するようにしてもよい。例えば、ホストとしてのモバイル機器(例えば、携帯電話またはPDA(Personal Digital Assistant))が接続された場合に、当該モバイル機器に内蔵されているバッテリから電源電力を供給するようにしてもよい。また、外部電源から電力を供給可能である場合には、当該外部電源が接続された場合に、送信部を起動するようにしてもよい。
【0054】
また、以上の実施形態では、タグ間通信の例として、双方のタグ装置が図2に示す構成を有するようにしたが、読み出しを行う側が図2の構成を有し、読み出しを受ける側が送信部を有しない構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明のタグ装置を含むタグシステムの全体構成を示す図である。
【図2】図1に示すタグ装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】図2に示すタグ装置において実行される処理のフローチャートである。
【図4】図2に示すタグ装置において実行される処理のフローチャートである。
【図5】図2に示すタグ装置において実行される処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
10…タグ装置、11…アンテナ、12…アンテナ、13…制御回路、14…RF送受信回路、15…RF送信専用回路、16…高耐圧ドライバ、17…昇圧回路、18…バッテリ、19…操作部、20…I/F、30…リーダライタ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起動指示に基づいて起動され、他のタグ装置に対して情報を送信する送信部と、
前記送信部の起動中は、前記他のタグ装置から送信される情報を受信し、前記送信部の停止中は、リーダライタ装置との間で情報を送受信する送受信部と、
前記送信部および送受信部に対して電力を供給するバッテリと、
を有することを特徴とするタグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタグ装置において、
前記送信部は第1のアンテナを有し、
前記送受信部は前記第1のアンテナとは独立した第2のアンテナを有する、
ことを特徴とするタグ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のタグ装置において、
前記第1のアンテナおよび第2のアンテナはループアンテナによって構成されるとともに、前記第1のアンテナは前記第2のアンテナよりも開口面積が大きく、かつ、巻数が少ない、
ことを特徴とするタグ装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項記載のタグ装置において、
前記送受信部は、前記送信部の起動中は前記送信部の送信動作実行後に受信動作を実行し、前記送信部の停止中は自己が受信動作を実行した後に送信動作を実行する、
ことを特徴とするタグ装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項記載のタグ装置において、
前記送信部には前記送受信部よりも高い電圧の電源電力が供給されている、
ことを特徴とするタグ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項記載のタグ装置において、
前記起動指示は、操作部が操作されたこと、外部電源が接続されたこと、または、他のタグ装置から読み出し要求がなされたことである、
ことを特徴とするタグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−33152(P2010−33152A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−192278(P2008−192278)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】