説明

タッチスクリーンおよびタッチスクリーンの製造方法

表示装置(1)上のタッチスクリーン(13)、及び表示装置(1)上のタッチスクリーン(13)の製造方法である。表示装置(1)は、表示装置(1)を環境から保護するための上部基板(12)を有し、タッチスクリーン(13)が導電性の透明な第一層(16)を含む。第一層(16)は、ビューアと、画像が形成される表示装置(1)の領域との間で構造の光学的厚さを減らすため、導電性の高アスペクト比分子構造(HARM構造)のネットワークを含み、上記第一層(16)は、前記導電性の透明な第一層(16)を保護するために表示装置(1)の前記上部基板(12)に埋め込まれている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出技術及び表示技術に関する。特に本発明は、ディスプレイ上のタッチスクリーン及びディスプレイ上のタッチスクリーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチスクリーンは、電子装置と相互に作用するポピュラーな手段として頭角を現している。タッチスクリーンは、例えば、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、エレクトロルミネセントディスプレイ、あるいは例えば電気泳動ディスプレイのような電子ペーパーに使用されるディスプレイといった多くの異なる表示タイプと機械的に結合され得る。
【0003】
多くのタッチスクリーンは、スクリーンがタッチされるとその感触がタッチスクリーンの特定の位置における例えば静電容量又は抵抗等の電気特性を変えるという原理に基づいて動作する。タッチの位置に対応する電気信号は、その後、制御ユニットにおいて読み込まれ得、例えば、ディスプレイに接続される装置の動作を制御する。タッチに影響を受ける電気特性を基本とすると、この種のタッチスクリーンは通常、例えば容量性タッチスクリーンまたは抵抗性タッチスクリーンに分類される。
【0004】
このようなタッチスクリーンは、静電容量または抵抗がタッチによって特定の場所において変更される電気回路の一部として、一つ以上の導電性透明層、一般にインジウムスズ酸化(ITO)薄膜のようなフィルムに依存する。タッチスクリーン構造で知られる導電性透明フィルムは、良好な光学および電気的品質を有する透明導電膜を可能にするために適切な材料であることを要する支持基板に堆積される。
【0005】
従来技術の表示装置は、通常、透明層によってディスプレイの視聴側から保護されている(例えば米国特許第5688551号参照)。これらの保護透明層は、ディスプレイを機械的に及び/又は化学的に保護するために及び/又はディスプレイ動作用の必要な透明電極を支持するために好適な、例えばガラス又は他の材料であってよい。
【0006】
タッチディスプレイを形成するため、タッチスクリーンの薄い透明フィルムが蒸着(堆積)される特定の基板を必要とするとともに、タッチスクリーンはディスプレイモジュールの上部に加えられて整列配置される別々のモジュールとして組み立てられる。タッチスクリーンモジュールを別々に製造することは、タッチスクリーンの透明導電膜(又はいくつかのフィルム)のために適切な基板が選択されることを可能にする。
【0007】
基板により提供される構造的支持体に加え、導電性透明フィルムは、一般にフィルムの一方または両方の面からの化学的及び/又は物理的な保護も必要とする。この種のカプセル化(封入)は、潜在的に敏感な透明導電膜を、例えば、水及び/又は酸素に対して、又は、物理的損傷(例えば引っかき又は曲げ)に対して保護することを要求される。このように、タッチスクリーンモジュールは、見られるべきディスプレイの画像を通す付加的な層を加える。
【0008】
従来技術のタッチディスプレイにより実現されるタッチスクリーンは、タッチスクリーンモジュールの光学的な厚みが加えられるために、タッチディスプレイの光学品質/有用性を著しく低下させる。この低下は特に、例えば電気泳動ディスプレイ(EPD)等、従来の紙の概観を模倣するよう意図される電子新聞用に使用されるタッチディスプレイにおいて弊害をもたらす。電子新聞用に使用するディスプレイにおける従来技術のタッチスクリーンは、従来の紙と同じように画像が表面に現れるので簡単で見易いという、ディスプレイの重要な利点の一つを損なう。
【0009】
従来のタッチスクリーン構造のこの悪影響は、広い視野角からの表示に対し、言い換えれば、視聴方向がディスプレイの面と直交する方向からはるかに離れており、例えばLCDディスプレイ(液晶ディスプレイ)又はOLEDディスプレイ(有機発光ダイオードディスプレイ)等の従来の放射ディスプレイにおいて高度の強い光(まぶしい光)及び/又は反射を引き起こす条件である場合に、とりわけ不快な見え方(体裁)を引き起こす。従来のタッチスクリーンモジュール溶液は、一方では、ユーザにとって心地良くない、かつ不自然な、ガラス片を通して電子新聞を読んでいる感じを与える。
【0010】
従来技術は、ディスプレイにタッチスクリーンを一体化しようとする一部の構造を開示する。例えば、米国特許第5852487号は、液晶ディスプレイ(LCD)上の抵抗性タッチスクリーンを開示し、米国特許第6177918号は、表示装置と一体となる共有基板の同じ面側に組み立てられるタッチスクリーンを有するタッチディスプレイを開示する。
【0011】
米国特許第5852487において開示される構造の欠点は、適切な光学及び電気特性を有する電極フィルムを共有基板の両面に組み立て可能なように、共有基板の厳しい要件を含むことである。公報はさらに、タッチスクリーンモジュールとディスプレイモジュールがそれらの専用の基板に別々に製作された後、組み合わせるタッチスクリーンとディスプレイのための別々の基板を積層することによって、タッチスクリーンとディスプレイ間の基板が形成される方法を示唆する。
【0012】
他方、米国特許第6177918において開示される構造は、ディスプレイ及びタッチスクリーンが共有基板の同じ面側に組み立てられるように、ディスプレイのピクセル間の特定の配列及びタッチスクリーンの信号生成層が必要である。さらにまた、透明導電膜の基板の厳しい具体的な要件は、まだ、この公報において開示される構造のままである。
【0013】
タッチスクリーンによって、画像の光学品質及びディスプレイの読み易さが落ちないように、タッチスクリーンがディスプレイに組み立てられ得る非複雑で信頼性が高い方法およびデバイス構造体の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、ディスプレイ上の新型のタッチスクリーン構造及びディスプレイ上の新型のタッチスクリーン構造の製造方法を提供することによって、従来技術の上述した技術的問題を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による生産品(製品)は、独立クレーム1で表現されることによって特徴づけられる。
【0016】
本発明による方法は、独立クレーム10で表現されることによって特徴づけられる。
【0017】
本発明による生産品(製品)は、環境から表示装置を保護するための上部基板を有する表示装置上のタッチスクリーンであり、前記タッチスクリーンは導電性の透明な第一層を含む。前記第一層は、ビューア(視聴者)と、画像が形成される表示装置の領域との間で構造の光学的厚さを減らすためのものであり、前記導電性の透明な第一層を保護するために前記表示装置の前記上部基板に埋め込められており、導電性の高アスペクト比分子構造(HARM構造)のネットワークを含む。
【0018】
本発明による、表示装置を環境から保護するための上部基板を有する表示装置上のタッチスクリーンを製造するための方法は、上部基板と接触する表示装置の上部基板の上の導電性の高アスペクト比分子構造(HARM構造)のネットワークを含む、導電性の透明な第一層を堆積するステップと、ビューア(視聴者)と、画像が形成される表示装置の領域との間で構造の光学的厚さを減らすためであって、前記上部基板に埋め込むために上部基板に対して第一層を加圧成形するステップと、を含む。
【0019】
この文脈において、「透明な」という表現は、基本的に可視光に対して透過的な、好ましくは可視光の50%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上として、理解されるべきである。しかし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、50%未満の可視光でも透過する「透明な」層が使われ得ることは、当業者にとっては明らかである。
【0020】
HARM構造が基板上に堆積されるときに、導電性の高アスペクト比分子構造(HARM構造)、例えばカーボンナノチューブ(CNTs)、カーボンナノバッド(CNBs)、金属ナノワイヤ、又はカーボンナノリボンは、導電性経路を形成する。HARM構造は、例えばITOのような連続材料の被膜を形成するのではなく、むしろ電気的に相互に連結した分子のネットワークである。それ故、HARM構造のネットワークの特性は基板の特性に顕著に影響を受けず、基板が堆積環境の条件を維持することができる限り、基板材料は比較的自由に選択され得る。従って、HARM構造のネットワークは、直接表示装置の外面に堆積され得、この文脈においては上部基板と呼ばれている。
【0021】
第一層が上部基板と接触して存在するように第一層を表示装置の上部基板に堆積することは、第一層を堆積させるための専用の基板を用いる必要を取り除く。これは結果としてディスプレイ上のタッチスクリーンに対して光学的に薄い設計となり、タッチスクリーン下での表示の読み易さ、従って、タッチディスプレイの使い勝手を改良する。タッチスクリーンは現在良好な電気的、光学的品質を有する表示装置に直接組み立てられることができるように、さらに全部の構造の設計、製造処理を単純化する。結果としてHARM構造のネットワークの力学的(機械的)耐久性も、最終製品のための付加的な効果になり、より信頼性の高いタッチディスプレイの製造を可能にする。さらに、HARM構造のネットワークは、ネットワークの領域の全体にわたる導電性のために連続的である必要はないけれども、例えばITOのような金属酸化物の被膜とは対照的に、機械的、電気的に強くなりつつ、HARM構造の堆積するネットワークを例外的に薄くできる。これはユーザが経験するにつれ、タッチスクリーン構造の透明度を増加させ、このことによりタッチスクリーンを通す画像の品質を改善するタッチスクリーンアプリケーションのための良好な電気的、機械的特性を有するHARM構造の非常に薄いネットワークの堆積を可能にする。
【0022】
本発明の一実施態様では、上部基板は、ポリマーでできている。
【0023】
本発明において、第一層は、導電性の透明な第一層を保護するために、上部基板に埋め込まれる。
【0024】
さらに本発明のもう一つの実施態様における方法は、上部基板に第一層を埋め込むために、上部基板に対し第一層を加圧する前及び/又は加圧するときに、上部基板に熱を加えるステップを含む。
【0025】
本発明の一実施態様では、上部基板に対して第一層を加圧するステップは、機械的圧縮又は熱圧着を含む。本発明の一実施態様において、機械的圧縮は、上部基板を加熱することなく加圧することを含む。本発明の一実施態様では、熱圧着は、上部基板に第一層を埋め込むために加圧と加熱の利用を含む。
【0026】
本発明の一実施態様では、タッチスクリーンは、容量性のタッチスクリーンである。本発明の他の実施態様において、タッチスクリーンは、投影型容量性のタッチスクリーンである。
【0027】
本発明の一実態様では、表示装置は、電子ペーパーである。本発明の他の実施態様において、表示装置は、電気泳動ディスプレイである。
【0028】
本発明の一部の実施態様における付加的な利点は、表示装置の上部基板にネットワークを埋め込むことによって、第一層、すなわちHARM構造のネットワークが環境から保護され得るということである。相互に連結したHARM構造のネットワークは、フレキシブルで機械的に耐久性がある。これは、例えば熱圧着によって上部基板にHARM構造のネットワークを埋め込むことを可能にする。熱圧着において、例えばポリマーであり得る上部基板は、熱処理によって最初に軟化され、その後、HARM構造のネットワークは第一層を上部基板に移行させるために軟化した上部基板に対して加圧される。

第一層が本発明の一部の実施態様における上部基板にカプセル化(封入)される場合、もはや第一層上又は下に付加的な保護コーティングを塗布する必要はなく、小さい光学的厚さを有するタッチスクリーン構造が製造されることを可能にする。これは、タッチディスプレイの読み易さ及び光学的品質/使い勝手を更に改善する。
【0029】
容量性のタッチスクリーンにおいて、タッチに依存する電気信号を層の両側から又はマトリックス状の保護材料において発生させることに関与する導電性透明層を保護することは有益でしばしば必要である。さらに、容量性のタッチスクリーンが例えば投影型のものである場合、透明な導電層はパターン化される。特にパターン化された層は、例えば機械的又は熱的な外乱に敏感であり、それがそれらの保護が重要である理由である。従って、本発明の効果は、容量性及び投影型容量性のタッチスクリーンにおいて顕著になる。
【0030】
電気泳動ディスプレイのような電子ペーパーアプリケーションに用いられるディスプレイは、従来の紙の可視光で見える体裁を模倣しようとすることから、これらのディスプレイに使用するタッチスクリーンモジュールはできるだけ小さい光学的厚さを有しなければならない。従って、本発明のタッチスクリーン構造は、特にタッチスクリーン構造のための小さい光学的厚さが要求されるか又は必要とされさえする電子ペーパーアプリケーション用の電気泳動ディスプレイ又は他のディスプレイに適している。
【0031】
本発明の一実施態様では、高いアスペクト比分子構造(HARM構造)のネットワークは、カーボンナノチューブのネットワークである。本発明の一実施態様では、高いアスペクト比分子構造(HARM構造)のネットワークは、管状カーボン分子の側面に共有結合しているフラーレン分子を有するカーボンナノバッドのネットワークである。カーボンナノチューブ(CNTs)及びカーボンナノバッド(CNBs)は、基板に堆積される場合、堆積が非常に薄く透明であっても、非常に導電性のある、機械的に柔軟で永続的なネットワークを形成することができるHARM構造の例である。従って、これらのHARM構造は、タッチスクリーンにおいて使用される導電性の透明層によく適している。CNTs又はCNBsのネットワークは、さらに、小さい光学的厚さを有するタッチスクリーンへのそれらの潜在的適用性を増す低い屈折率を持ち合わせる。CNTs又はCNBsのネットワークは、高い充電記憶容量をも呈する。このような良好な電気伝導度を伴う付加的利点は、タッチスクリーン上のタッチを登録するためのより短い応答時間を可能にする容量性及び投影型容量性のタッチスクリーンに使用され得る。
【0032】
本発明の一実施態様において、タッチスクリーンは、第一層を環境から保護する第一層上の最上部基板層を含む。第一層が表示装置の上部基板に埋め込まれる場合であっても、タッチスクリーンが例えば大きい温度変化、化学的浸食環境、又は繰り返される機械的応力にさらされているようになる厳しい動作条件下で、最上部基板層は付加的な保護を第一層に提供するために使用され得る。
【0033】
先に記載されている本発明の実施例が、互いにあらゆる組合せにおいて使用され得る。実施例のいくつかは、本発明のさらなる実施例を形成するために、一緒に結合され得る。
本発明が関連する生産品(製品)又は方法は、先に記載されている本発明の実施例のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本発明は、以下において、添付の図を参照することによって例示的実施形態を伴い更に詳細に説明される。
【図1】従来技術のタッチディスプレイの概略図である。
【図2】本発明の一実施例による、ディスプレイ上のタッチスクリーンの概略図である。
【図3】本発明の他の実施例による、ディスプレイ上のタッチスクリーンの概略図である。
【図4】本発明のさらに他の実施例による、ディスプレイ上のタッチスクリーンの概略図である。
【図5】本発明の一実施例による、第一層を上部基板に組み込む方法を例示するフローチャートである。
【図6】本発明の他の実施例による、ディスプレイ上のタッチスクリーンの概略図である。
【図7】本発明のさらに他の実施例による、ディスプレイ上のタッチスクリーンの概略図である。
【図8】本発明のさらに他の実施例による、ディスプレイ上のタッチスクリーンの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1の典型的な投影型容量性のタッチディスプレイは、ディスプレイモジュール1と、ディスプレイモジュール1に積層されるタッチスクリーンモジュール13とを含む。ディスプレイモジュール1は、例えば駆動電子機器を提供しているバックボーン2とディスプレイモジュール1のための基板とを含む。ディスプレイモジュール1は、バックボーン2上の第一電極4、ディスプレイモジュール1の画像を出すための画像素子6、透明電極である第二電極8、画像素子6に接続している電源、及び選択的に画像素子6を作動させるために第二電極8に画像制御信号を供給する第一制御ケーブル10を含む。第二電極8は、HARMのネットワークを含むことができ、及び/又は透明な導電性フィルムであって、例えばガラス又はポリマーであり得る保護上部基板12で被覆されている。
【0036】
図1の典型的な投影型容量性のタッチスクリーンモジュール13は、間に導電性の透明な第一層16を共に形成しパターン化された透明な導電性コーティングを有して互いに積層される2つの透明基板(例えばガラス基板)14,20を含む。この第一層16は、タッチスクリーンモジュール13の接触検出要素であって、第二制御ケーブル18を介して制御装置(図示せず)に接続されている。
【0037】
最上部基板層20の表面上のタッチに対する第一層16の検出感度は、タッチセンサー式の第一層16のパターン化された導電性コーティング(電極)によって達成される。これらのパターン化されたコーティングは、例えばITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)またはATO(アンチモンドープ酸化スズ)などの導電性透明材料をパターン化することによる薄膜から作られる。導電トレース(例えば銀、銅又は金)は、典型的に、第二制御ケーブル18を介してパターン化されたITO、FTO又はATOフィルムを制御ユニットにつなぐために用いられる。
【0038】
下部基板14の上面が垂直X測定電極を有すると共に、最上部基板層20の下側は、例えば水平Y測定電極を有することができる。X及びY電極は共に第一層16を形成する。Y測定電極は、例えば最上部基板層20の表面上のタッチスクリーンモジュール13に触れる接触要素(例えば指先)からX電極の遮蔽を最小化するような方法でパターン化され得る。このような構成において、X及びY電極は同じ平面内に含まれる。
【0039】
タッチセンサー式の第一層16の電極をパターン化する様々な方法は、従来技術から公知である。図1の投影型容量性のタッチスクリーンにおいて、指先などの導電面が最上部基板層20に近づくか、接触する場合、X及びY電極を含むRC回路の静電容量における位置依存性摂動は登録され、タッチ位置に対応する電気的信号は第二制御ケーブル18を介して制御ユニット(図示せず)に伝達される。
【0040】
従来は、タッチスクリーンがディスプレイに用いられる場合、上部基板12を介して上方に光が発せられるディスプレイモジュール1の上にタッチスクリーンモジュール13が配置され、2つのモジュール1,13は共に機械的な取付け手段により(例えばフレームのような構造によって)保持される。
【0041】
図1のディスプレイモジュール1は、例えば、LCD、プラズマディスプレイ、OLEDディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、又はタッチスクリーンを支援し相互に作用することのできる他のいかなるディスプレイ表示であり得る。ディスプレイモジュール1のバックボーン2は、ひいては、例えばパワーコンバータ、バックライトソースおよび支持構造等の特定の表示方式を駆動するために、必要な構成要素を含む。
【0042】
基板12,14,20及び第一層16の厚み及び材料は、ビューアに向かってその構造を通過するとき、画像の品質を低下させ得る。光が下層の画像素子6からタッチスクリーンモジュール13を通って通過するときに、光はその屈折率が変化する。一部の光は吸収され、一部の光は屈折され、一部の光は伝達され、そして、一部の光は反射される。これは、図1に示される従来技術のタッチディスプレイで画像素子6によって発生されるときに、画像の読みやすさ、明るさ、鋭さ及び他の光学特性を低下させる。
【0043】
簡潔さの理由で、項目番号は、繰り返し構成要素の場合、以下の例示的実施形態において維持される。
【0044】
図2は、本発明の一実施例によるタッチディスプレイを示す。ここで、タッチセンサー式の第一層16は、X及びY電極を組み込むためにパターン化された、例えばCNTs、ナノワイヤ、ナノリボン又はCNBs等のHARM構造のネットワークである。先に述べたように、例えばCNTs又はCNBsのHARM構造は、基板上の材料の被膜となるのではなく、むしろ分子のネットワークとしてなり、それ故、ネットワークが堆積する基板材料に、又はHARM構造のネットワークの厚さに特定の限界を課さない。従って、第一層16は、ディスプレイモジュール1の上部基板12上へ、結果的にタッチスクリーン構造のための小さい光学的厚さになる所望の層厚で直接堆積することができる。これは、フィルムが良好な光学及び電気的品質を有するように特定材料の基板上に成長されなければならない例えばCVD、PVD又はALD等の一般の薄膜堆積方法によって堆積されるITO、FTO又はATOフィルムの従来技術のタッチスクリーン構造と反対である。
【0045】
図2の薄いタッチスクリーンモジュール13は、よりユーザの目に見えにくく、よってディスプレイ/タッチスクリーンの組合せのパフォーマンスを向上させる。CNTs及びCNBsのネットワークはさらに、タッチスクリーンモジュール13の光学的厚さにおいて有利な縮小に拍車をかける低い屈折率を有する。
【0046】
本発明の一実施例による図2のタッチディスプレイは、電気泳動ディスプレイ(EPD)のバックボーン2に第一電極4を堆積させ、パターン化することによって製造され得る。これは、従来の薄膜堆積及びリソグラフィ方法によってなし得る。次に、eインクカプセルを含んでいる液状ポリマー層は、画像素子6を形成するために第一電極上に堆積され、透明な第二電極8は画像素子6の上に形成される。第一及び第二の電極4,8は、電極間に電界を発生させる電源に接続されている。個々の画像素子の上の電界は、個々の第二電極8の電圧を制御している制御ユニット(図示せず)に取り付けられる第一制御ケーブル10によって制御される。ポリマーで作られている保護用上部基板12は、第二電極8上にアセンブルされる。
【0047】
タッチスクリーンモジュール13のタッチセンサー式の第一層16は、処理フローの多くの取り得る段階で、上部基板12に直接堆積しかつパターン化され得る。それに応じて第一層16は、例えば上部基板12がディスプレイモジュール1にアセンブルされる前又は後に、堆積され得る。
【0048】
本発明の他の実施例において、第一層16は、最初に最上部基板層20に堆積することもでき、その後、基板層20上に存在する第一層16は、ディスプレイモジュール1上へすでにアセンブルされている上部基板12と接触して堆積され得る。最上部基板層20は、基底構造を機械的に支持するため、かつ第一層16を例えば環境から機械的、化学的に保護するために用いられる。
【0049】
HARM構造のための気相合成過程の詳細及び基板上にCNTs(又はCNBs)のネットワークを堆積するために用いることのできるプロセスは、例えば、本文献に参照として含まれる、特許出願公開WO2005/085130、WO2007/101906及びWO2007/101907において開示される。HARM構造のネットワークをパターン化するパターニングプロセスの詳細は、本文献に参照として含まれる特許出願公開WO2009/000969において開示される。
【0050】
本発明の一部の実施例によれば、上記の参考文献において開示されるプロセスは、パターン化されたX電極及び第一層16のHARM構造を含むY電極を製作するために使用され得る。第一層16(例えばCNTs又はCNBsから形成される)のHARM構造に対する第二制御ケーブル18の電気的接続は、従来技術から公知の方法によって達成され得、これらの方法は当業者にとって明らかである。この種の方法は、本文献に参照として含まれる、例えば特許出願公開US2005/0148174において述べられる。
【0051】
本発明の一実施例によるHARM構造のネットワークを上部基板12に堆積する方法の実施例として、SWCNTs(単層カーボンナノチューブ)は、炭素源及び触媒前駆体として一酸化炭素及びフェロセンをそれぞれ使用しているエアロゾル層流(浮遊触媒)反応器において合成される。SWCNTマットは、その後、直径2.45cmのニトロセルロース(又は銀)の円板型濾過器(ミリポア社、米国)を介してフィルタリングすることによって、反応器の下流の気相から直接に集められた。フィルタは、本実施例において、予備基板の役割を担う。
【0052】
フィルタ面(予備基板)上の堆積温度は45℃に測定された。予備基板上に形成されたSWCNTネットワークの層厚は、所望のネットワーク厚に応じて2、3分から数時間まで変えられる堆積時間により制御された。このようにして、異なる厚みのSWCNTsのネットワークが予備基板に得られ、測定結果は、堆積がSWCNTsのランダムに配向したネットワークであることを示した。その後、本発明のこの実施例において、物理的な圧縮及び加熱(熱圧着)は、予備基板から上部基板12上にSWCNTネットワークを移すために用いられた。
【0053】
熱圧着は、SWCNTsのネットワークが予備基板及び上部基板12の間に挟まれる(サンドイッチされる)ように、予備基板及び上部基板12が配置された2枚の平行した加熱プレートとの間に力を加えることによって実施された。加熱加圧プレートは、自然に予備基板、SWCNTネットワーク及び上部基板12の加熱も引き起こした。
【0054】
例えば、SWCNTネットワークは、上部基板12の目的を果たす厚さ10μmの中密度ポリエチレン(PE)ポリマー被膜(Metsa Tissue社、フィンランド)に転写された。この材料は、フレキシブルで、光学的に基本的に透明で、約125℃の融解温度t及び約−125℃のガラス転移温度tを有する。熱圧着後、予備基板はSWCNTネットワークとの接触から除去された。最後に、転写されたSWCNTsのネットワークは、第一層16を形成するために、挿入材料(エタノールまたは水)によって上部基板12に緻密化された。
【0055】
SWCNTネットワークの光学的透明性を評価するために、コーティングしてないポリマーフィルムが、比較対象基準として用いられた。ポリマーフィルム上へ堆積するSWCNTネットワークの透明性は、それぞれ、500から24nmの範囲の厚さを有するCNTネットワークに対して、ほぼ60%から95%まで変化した。
【0056】
図3に示される本発明の実施例において、タッチセンサー式の第一層16は、ディスプレイモジュール1の上部基板(ポリマーで作られている)12に埋め込まれる。第一層16の埋め込みは、第一層16のタッチ感応電極が保護されていて、上部基板12によって本発明のこの実施例においてカプセル化されるにつれ、タッチセンサー式の第一層16を保護するために追加される保護最上部基板層20又は別々のカプセル化層を有する必要を減少させる。この構造は、結果的にタッチスクリーンの光学的厚さを更に減少させ、それによってタッチディスプレイの読み易さ及び使い勝手を改善する。
【0057】
第一層16が埋め込まれる上部基板12によって、第一層16が良好に保護されているにもかかわらず、厳しい作動条件の下では追加的な保護の必要性が未だ存在する場合がある。タッチスクリーンが例えば大きい温度変化、化学的浸食環境、又は繰り返される機械的応力にさらされるようになる所で、最上部基板層20は付加的な保護を第一層16に提供するために堆積され得る。このような本発明の実施例は、概略的に図4に示される。
【0058】
図3又は図4の埋め込み形構造は、タッチセンサー式の第一層16のHARM構造のネットワーク以外の透明導電性材料で実現することは困難である。これらの他の材料の例としては、導電性ポリマー及び前述の金属酸化物の被膜が挙げられる。
【0059】
例えばCNTs又はCNBsのHARM構造のネットワークを含む第一層16は、例えば熱圧着によってEPDディスプレイモジュール(又は他のあらゆる適切なディスプレイモジュール)の上部基板12に、直接埋め込みされ得る。熱圧着方法の詳細は、上述され、また本文献に参照として含まれる特許出願公開WO2009/000969にも見られる。
【0060】
図3又は図4によれば、第一層16の上部基板12への統合を可能にするために、第一層16は、例えば上記のように予備基板から上部基板12上へ最初に堆積する。第一層16との接触からの予備基板の除去後、上部基板12に上部基板12にある第一層16を押圧するために再び熱圧着が利用される。
【0061】
今回、上述の加圧プレートの温度は、上部基板12の材料の融解温度近くまで大きくなる。これは上部基板の粘度を低下させ、印加圧縮力は、上部基板12のポリマー材料、すなわちポリマーマトリックスに第一層16を一体化(統合)させるために、第一層16を加圧して上部基板12にする。統合を実現するために必要なプロセスパラメータの詳細は相互に関連付けられ、それらは例えば上部基板12の組成に依存する。適切なプロセスパラメータは、この明細書を踏まえて専門家によって容易に理解され得る。本発明の一実施例による第一層16を上部基板12に一体化させる方法は、図5のフローチャートとして提示される。
【0062】
本発明の一実施例では、第一層16は、機械的圧縮によって上部基板12に埋め込まれる。この実施例において、上部基板12に堆積される第一層16は、上部基板12に第一層16を埋め込むために、熱を用いずに上部基板に対して押圧される。
【0063】
本発明の他の実施例による、図6において概略的に例示されるタッチセンサー式の表示構造は、最上部基板層20上の導電性の透明な第二層22が含まれる。第一層16と同様な第二層22は、HARM構造のネットワークである。その構造はまた、第二層22を環境から保護する第二層22上の任意の最上部コーティング24を含む。図6の構造は、上述のように、そして、透明な最上部基板層20の両面上のHARM構造、すなわち第一層16及び第二層22のネットワークを含む透明な導電層を作り上げることによって製造され得る。
【0064】
図6の「二層」タッチスクリーンモジュール13は、最上部基板層20の一方側上の第一層16と、最上部基板層20の他方側上の第二層22と、第二層22上の任意の最上部コーティング24と、第一層16と第二層22との間の前記最上部基板層20とを含み、それから、第一層16が上部基板12と接触して堆積される方法で、ディスプレイモジュール1の上部基板12上にアセンブルされ得る。例えばPET又は他のポリマーであり得る透明な保護コーティング24は、上述したタッチスクリーンモジュール13が上部基板12上にアセンブルされる前又は後に、第二層22に堆積され得る。
【0065】
図6における付加的な導電性の透明な第二層22は、第一層16と同様なX及びY電極を含み、第三制御ケーブル21を介して制御装置(図示せず)に電気的に接続している。第一層16の電極は第二層22の電極に容量結合されており、タッチスクリーンモジュール13が露出表面にタッチされる(あるいは近づける)場合、例えば指先などのタッチ側導電性表面は、第二層22の電極に容量結合される。それ故、2つの容量結合は直列に形成され、第三電極は接触性の導電性表面になる。当業者に知られているように、例えば図6のタッチスクリーンモジュール13のような容量の直列接続体は、タッチスクリーンモジュール13の確度及び感度を改善するために用いられ得る。
【0066】
図7において概略的に例示される本発明の他の実施例において、第一層16はディスプレイモジュール1の上部基板12に埋め込まれ、第二層22は最上部基板層20に埋め込まれる。第一層16及び第二層22の埋め込みは、例えば上述される熱圧着方法によって実現され得、これはこの明細書を考慮すると当業者にとって明らかである。図7のタッチスクリーンモジュール13はまた、任意の透明な保護コーティング24を含む。
【0067】
図8において概略的に例示される本発明の他の実施例では、第一層16及び第二層22両方が最上部基板層20に埋め込まれ得る方法を提示する。その一方で、第一層16は、最上部基板層20の材料によって完全には囲まれないので上部基板12との接触を保ち続ける。第二層22もまた、最上部基板層20の材料によって完全には囲まれず、環境にさらされているままになるか、念のために保護コーティング24が用いられる場合、保護コーティング24と接触する。図8の実施例において、第一層16及び第二層22の埋め込みは、例えば上述される熱圧着方法によって実現され得、この方法はこの明細書を考慮すると当業者にとって明らかである。
【0068】
当業者にとって明らかであるように、上部基板12及び/又は最上部基板層20への第一層16及び第二層22の埋め込みについての他の方法も考えられ得、本発明の他の実施例を形成するためにこの明細書を考慮して、上述の本発明の異なる実施例の特徴を組み合わせることができる。
【0069】
上記の実施例が本発明を投影型容量性のタッチスクリーンを背景としているとはいえ、同じ発明の考えが同様に、例えば抵抗性タッチスクリーンや、非投影型で「レギュラー」の容量性タッチスクリーン等、他のタイプのタッチスクリーン構造で用いられ得る。これらタッチスクリーン構造で利用される本発明を要する変更態様は、本発明のこの開示を考慮すると、当業者にとって明らかである。また、第一層16を堆積させるかパターン化する他の堆積方法及び/又はHARM構造を含む第二層22も、この明細書を考慮すると、専門家によって考えられ得る。
【0070】
当業者にとって明白であるように、本発明は上記の実施例に限られないが、実施例は請求項の範囲内で、自由に変えることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置(1)を環境から保護するための上部基板(12)を有する表示装置(1)上のタッチスクリーン(13)であって、
前記タッチスクリーン(13)は、導電性の透明な第一層(16)を含み、
前記第一層(16)は、導電性の高アスペクト比分子構造(HARM構造)のネットワークを含み、
ビューアと、画像が形成される表示装置(1)の領域との間で構造の光学的厚さを減らすため、前記第一層(16)は、前記導電性の透明な第一層(16)を保護するために表示装置(1)の前記上部基板(12)に埋め込まれているタッチスクリーンの生産品。
【請求項2】
前記上部基板(12)がポリマーでできている請求項1の生産品。
【請求項3】
前記タッチスクリーン(13)が容量性のタッチスクリーンである請求項1又は2の生産品。
【請求項4】
前記タッチスクリーン(13)が投影型容量性のタッチスクリーンである請求項1〜3いずれか一つの生産品。
【請求項5】
前記表示装置(1)は、電子ペーパーである請求項1〜4いずれか一つの生産品。
【請求項6】
前記表示装置(1)は、電気泳動ディスプレイである請求項1〜5いずれか一つの生産品。
【請求項7】
前記高アスペクト比分子構造(HARM構造)のネットワークがカーボンナノチューブのネットワークである請求項1〜6いずれか一つの生産品。
【請求項8】
前記高アスペクト比分子構造(HARM構造)のネットワークが管状カーボン分子の側面に共有結合しているフラーレン分子を有するカーボンナノバッドのネットワークである請求項1〜6いずれか一つの生産品。
【請求項9】
前記タッチスクリーンは、前記第一層(16)を環境から保護するために、前記第一層(16)上の最上部基板層(20)を含む請求項1〜8いずれか一つの生産品。
【請求項10】
表示装置(1)を環境から保護するための上部基板(12)を有する表示装置(1)上のタッチスクリーン(13)を製造する方法であって、
導電性の高アスペクト比分子構造(HARM構造)のネットワークを含む導電性の透明な第一層(16)を、上部基板(12)と接触する表示装置(1)の上部基板(12)上に堆積するステップと、
ビューアと、画像が形成される表示装置(1)の領域との間で構造の光学的厚さを減らすため、前記第一層(16)を前記上部基板(12)に埋め込むために上部基板(12)に対して第一層(16)を押圧するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記上部基板(12)がポリマーでできている請求項10の方法。
【請求項12】
前記第一層(16)を前記上部基板(12)に埋め込むために上部基板(12)に対して第一層(16)を押圧するとき及び/又は前に、前記上部基板(12)に熱を加えるステップを含む請求項10又は11の方法。
【請求項13】
上部基板(12)に対して第一層(16)を押圧するステップが機械的圧縮又は熱圧着を含む請求項10〜12いずれか一つの方法。
【請求項14】
前記タッチスクリーン(13)が容量性のタッチスクリーンである請求項10〜13いずれか一つの方法。
【請求項15】
前記表示装置(1)は、電子ペーパーである請求項10〜14いずれか一つの方法。
【請求項16】
前記表示装置(1)は、電気泳動ディスプレイである請求項10〜15いずれか一つの方法。
【請求項17】
前記タッチスクリーンは、前記第一層(16)を環境から保護するために、前記第一層(16)上の最上部基板層(20)を含む請求項10〜16いずれか一つの方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−504106(P2013−504106A)
【公表日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−527364(P2012−527364)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際出願番号】PCT/FI2010/050684
【国際公開番号】WO2011/027034
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(510334941)
【Fターム(参考)】