タッチセンサおよびそれを備えた電子機器用タッチパッド
【課題】
入力媒体を選ばず、複数の操作点を検出可能であって、押圧方向の強さを容易に検出可能なタッチセンサおよびそれを備える電子機器用タッチパッドを提供する。
【解決手段】
本発明は、絶縁性の基板20と、当該基板20と対向配置されるシートセンサ10とを備え、基板20のシートセンサ10と対向する面に、複数の電極を近接させて構成した電極群21を複数配置し、シートセンサ10を、基板20と反対側からの押圧を受けて、1または2以上の電極群21に接触し、その電極群21を構成する電極間を導通可能に構成するタッチセンサ1に関する。
入力媒体を選ばず、複数の操作点を検出可能であって、押圧方向の強さを容易に検出可能なタッチセンサおよびそれを備える電子機器用タッチパッドを提供する。
【解決手段】
本発明は、絶縁性の基板20と、当該基板20と対向配置されるシートセンサ10とを備え、基板20のシートセンサ10と対向する面に、複数の電極を近接させて構成した電極群21を複数配置し、シートセンサ10を、基板20と反対側からの押圧を受けて、1または2以上の電極群21に接触し、その電極群21を構成する電極間を導通可能に構成するタッチセンサ1に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜方式のタッチセンサおよびそのタッチセンサを備える電子機器用タッチパッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディスプレイへのタッチ操作にて入力を実行するタッチセンサが知られている。タッチセンサは、相対座標入力方式であるマウス形状のポインティングデバイスと異なり、ディスプレイ上の絶対座標を入力できるため、操作が簡単で、かつ操作者の感覚に適合した入力が可能である。このため、タッチセンサは、駅などの券売機、液晶ディスプレイを備える携帯型のゲーム機器や携帯通信機器の多くに搭載されている。タッチセンサは、その検出方法により、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波表面弾性波方式、電磁誘導方式などの多くのタイプに分けられるが、代表的なタッチセンサとして、抵抗膜方式および静電容量方式が挙げられる。
【0003】
抵抗膜方式タッチセンサの一例は、2枚の絶縁基板の各対向面に、ITO等による透明導電膜を形成し、電位勾配が形成された一方の透明導電膜と、他方の透明導電膜とが非接触状態となっている。一方から押圧すると、当該一方の透明導電膜と他方の透明導電膜とが接触し、他方の面側にて検出した電圧値に基づき、押圧された面上の絶対座標が特定される。このような抵抗膜方式タッチセンサは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
一方、静電容量方式タッチセンサは、表面型静電容量方式、インナー型静電容量方式、投影型静電容量方式などのいくつかの方式に分けられるが、いずれも、センサ側の電極と、操作者の指(もう一方の電極に相当)との間の静電容量の変化に基づき、操作位置の絶対座標が特定される。これらの中でも、投影型静電容量方式のタッチセンサは、最近、注目を集めており、操作者が2本の指にて操作面上の2点を押圧したときに、その両座標を特定できる工夫がなされ、2本の指を使った画像の拡大若しくは縮小の操作が可能なものが知られている。このようなマルチタッチを可能とする静電容量方式タッチセンサは、例えば、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−039667
【特許文献2】特開2002−501271
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抵抗膜方式タッチセンサは、一般的に、操作媒体を選ばず、スタイラスペン、指など如何なる入力媒体を用いた操作であっても検出できる。また、価格の面でも、抵抗膜方式タッチセンサは、静電容量方式タッチセンサと比べて安価である。しかし、その反面、抵抗膜方式タッチセンサは、異なる2点の操作(いわゆる、マルチタッチ)を行っても、それを検出することはできない、あるいは極めて特殊な構成を採らない限り検出困難である。このため、2本の指を使って、例えば、指を互いに反対方向に離し、あるいは互いに近づけるような操作を検出することは難しい。
【0007】
これに対して、静電容量方式タッチセンサの場合には、マルチタッチへの対応が可能なものも開発されており、操作者の操作感覚と検出後の出力結果とを近づけることが可能である。しかし、その反面、操作者が指若しくは導電性の高い特殊なペンを用いて操作する必要がある。このため、例えば、操作者が手袋(絶縁性のもの)をはめて操作する場合には、検出が困難になりやすい。
【0008】
また、押圧方向の強さを検出する点に関して、抵抗膜方式タッチセンサでは押圧方向の強さを検出できない。静電容量方式タッチセンサでは、押圧の強さに応じて、一方の電極である指とセンサ内部の電極との距離が変化するため、理論的には、その変化に基づき押圧の強さを検出可能ではあるが、押圧の強さに基づく静電容量の変化は極めて微弱であるため、その検出は困難である。
【0009】
本発明は、入力媒体を選ばず、複数の操作点を検出可能であって、押圧方向の強さを容易に検出可能なタッチセンサおよびそれを備えるタッチパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するため、本発明の一形態は、絶縁性の基板と、当該基板と対向配置されるシートセンサとを備え、基板には、シートセンサと対向する面に、複数の電極を近接させて構成される電極群を複数配置し、シートセンサを、基板と反対側からの押圧を受けて、1または2以上の電極群に接触し、その電極群を構成する電極間を導通可能に構成するタッチセンサである。
【0011】
本発明の別の形態は、さらに、基板およびシートセンサの少なくともいずれか一方に、シートセンサから押圧操作しないときに基板上の電極群とシートセンサとが接触して電極間が導通するのを防止する絶縁性の突出部を備えるタッチセンサである。
【0012】
本発明の別の形態は、さらに、シートセンサの基板と対向する面あるいは全体を、電極間を導通させる抵抗性材料にて構成するタッチセンサである。
【0013】
本発明の別の形態は、さらに、電極群を、複数の歯を持つ電極を互いに接触しないように噛み合わせた形態を持つ構成としたタッチセンサである。
【0014】
本発明の一形態は、電子機器を操作する電子機器用タッチパッドであって、ハーフミラーとして機能し、表側から面操作可能な操作板と、当該操作板の裏側に配置されると共に、外部光源からの光を導光して当該操作板に向けて照光可能な導光板と、当該導光板の裏側に配置され、操作板上での面操作によって操作位置を特定可能なタッチセンサとを積層して備え、タッチセンサには、絶縁性の基板と、当該基板と対向配置されるシートセンサとを備え、基板には、シートセンサと対向する面に、複数の電極を近接させて構成される電極群を複数配置し、シートセンサを、基板と反対側からの押圧を受けて、1または2以上の電極群に接触し、その電極群を構成する電極間を導通可能に構成する電子機器用タッチパッドである。
【0015】
本発明の別の形態は、さらに、基板およびシートセンサの少なくともいずれか一方に、シートセンサから押圧操作しないときに基板上の電極群とシートセンサとが接触して電極間が導通するのを防止する絶縁性の突出部を備える電子機器用タッチパッドである。
【0016】
本発明の別の形態は、さらに、シートセンサの基板と対向する面あるいは全体を、電極間を導通させる抵抗性材料にて構成する電子機器用タッチパッドである。
【0017】
本発明の別の形態は、さらに、導光板の一部に、操作板の方向に導光しやすい凹凸領域を形成した電子機器用タッチパッドである。
【0018】
本発明の別の形態は、さらに、凹凸領域を、導光板のタッチセンサ側の面に形成した電子機器用タッチパッドである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、タッチセンサおよびそれを備える電子機器用タッチパッドを、入力媒体を選ばず、複数の操作点を検出可能であって、押圧方向の強さを容易に検出可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るタッチセンサの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すタッチセンサを構成する基板から、当該基板と対向配置されるシートセンサを分離し、当該シートセンサを裏返した状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2に示すシートセンサのA部分を拡大して示す拡大図である。
【図4】図4は、図2に示す基板のB部分を拡大して示す拡大図である。
【図5】図5は、図1に示すタッチセンサの一部の断面を示す断面図である。
【図6】図6は、図1に示すシートセンサの上から基板に向かって押圧したときの状況を、シートセンサ側から透過的に示す図である。
【図7】図7は、図2に示す基板上の各電極群からの信号に基づいて押圧位置を検出する制御部の基本構成を模式的に示す図である。
【図8】図8は、図6に基づいて説明した押圧位置の検出方法と異なる別の検出方法を説明するための図である。
【図9】図9は、図1に示すタッチセンサを構成するシートセンサ上から操作する状況を、シートセンサ上から透過的に示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る電子機器用タッチパッドと、当該タッチパッドからの操作を受け付けて画像の表示を変える電子機器とを示す概略図である。
【図11】図11は、図10に示すタッチパッドの斜視図である。
【図12】図12は、図10に示すタッチパッドの平面図である。
【図13】図13は、図10に示すタッチパッドの分解斜視図である。
【図14】図14は、図12に示すタッチパッドのF−F線断面図である。
【図15】図15は、図14に示す操作板の詳細な構成を示す断面図である。
【図16】図16は、図10に示すタッチパッドを構成する操作板上から操作する状況を、操作板上から透過的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係るタッチセンサおよびそれを備える電子機器用タッチパッドの実施の形態について説明する。
【0022】
1.タッチセンサ
図1は、本発明の実施の形態に係るタッチセンサの斜視図である。図2は、図1に示すタッチセンサを構成する基板から、当該基板と対向配置されるシートセンサを分離し、当該シートセンサを裏返した状態を示す斜視図である。図3は、図2に示すシートセンサのA部分を拡大して示す拡大図である。図4は、図2に示す基板のB部分を拡大して示す拡大図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るタッチセンサ1は、矩形の平面を有する薄板状のセンサであって、薄いシート状のシートセンサ10と、これと対向配置される絶縁性の基板20とから、主に構成される。
【0024】
シートセンサ10は、その母材として柔軟性に富む材料、好適には、熱可塑性エラストマーあるいは熱硬化性エラストマー、より好ましくはシリコーンゴムで構成されている。また、シートセンサ10の母材中には、シリコーンゴムに導電性を付与して所望の抵抗性を有する抵抗性材料とするために、導電性材料が分散されている。導電性材料としては、カーボンブラック、金属等を例示できるが、径の小さな粒子(ナノレベルの粒子)の製造が容易で、取り扱いも容易なカーボンブラックが、より好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシートセンサ10の弾性を維持する観点から、母材と当該導電性材料の総重量に対して5〜50重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。シートセンサ10は、これと対向する基板20との接触抵抗として、好ましくは、100〜1700オーム、より好ましくは170〜1000オームの範囲の電気抵抗を有する。なお、シートセンサ10を複数の層から成る基材とし、基板20との対向面側の層を、導電性を付与した抵抗性材料で形成し、そこに絶縁材料から構成される層を貼付しても良い。
【0025】
また、シートセンサ10は、基板20と対向する面に、多くの絶縁性の突出部11を分散して備える。突出部11は、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂の他、エラストマー等から好適に構成され、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、シリコーンゴムから、より好適に構成される。突出部11は、例えば、絶縁性樹脂製の塗料から成るインクをドット状にパターン印刷した後に乾燥および硬化させることにより、好適に形成できる。なお、突出部11は、シートセンサ10との接着性を確保できるのであれば、上記以外の材料として、例えば、ガラス、セラミックス等から構成しても良い。突出部11は、シートセンサ10から押圧操作しないときに、基板20上の電極群21(後述する)とシートセンサ10とが接触して、電極群21を構成する電極21,21b間が導通するのを防止するためのスペーサーである。突出部11は、その突出面を基板20側に向けた略半球形状を有し、この実施の形態では、直径0.1mm、高さ0.03mmの薄い半球体である。ただし、突出部11の形状、大きさは、適宜変更可能であり、また、複数分散させずに、ルート状若しくは網目状につながっていても良い。なお、突出部11は、シートセンサ10側に形成せず、基板20側に形成しても良い。
【0026】
基板20は、上記シートセンサ10に比べて剛性の高い材料で構成され、好適には、ガラス繊維で編んだクロスにエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ製の基板である。ただし、基板20は、ガラスコンポジット基板、アルミナ等から成るセラミックス基板であっても良い。基板20は、シートセンサ10と対向する面に、複数の電極を近接して構成した多数の電極群21を備える。この実施の形態では、電極群21は、図4に示すように、複数の歯を持つ略櫛型の電極21a,21bを2つ備え、それら電極21a,21bを互いに接触しないように噛み合わせた形態を有する。電極21a,21bは、銅、銀等の導電性に優れた材料から成る薄膜であって、蒸着、印刷等の手段にて好適に形成可能である。電極群21は、シートセンサ10を基板20と対向配置させた際に、シートセンサ10に形成した突出部11が電極群21の周囲に存在するように、基板20上において格子の角部の位置に形成されている。この実施の形態では、電極群21の仮想外接円の直径は、約3mmであって、縦若しくは横方向に隣接する電極群21との距離は、約0.1mmであるが、これらの数値に限定されるものではない。また、必ずしも、電極群21は、格子の角部の位置に配置されなくても良い。
【0027】
図5は、図1に示すタッチセンサの一部の断面を示す断面図である。
【0028】
シートセンサ10の上方から矢印方向に押圧すると、当該押圧される位置にて、シートセンサ10の基板20との対向面が電極群21と接触し、当該電極群21を構成する電極21aと電極21bとが電気的に接続する。この結果、押圧した位置を特定することが可能となる。
【0029】
図6は、図1に示すシートセンサの上から基板に向かって押圧したときの状況を、シートセンサ側から透過的に示す図である。
【0030】
シートセンサ10からの押圧面積が電極群21の面積に対して極めて大きい場合、シートセンサ10は、複数の電極群21に接触し得る。図6に示す例は、シートセンサ10が4個の電極群21と、それぞれ、接触領域12、13、14および15にて接触した例である。この実施の形態では、4個の接触領域の内、接触領域12の面積が最も大きく、接触領域13、接触領域14、接触領域15の順に面積が小さくなっていく例で説明する。最も簡便な位置検出方法は、最も面積の大きな接触領域12の位置にある電極群21にて押圧されたものと決定することである。この検出方法を採用すると、例えば、指でシートセンサ10を押圧操作した場合に、接触領域が複数存在していても、最も面積が大きく、その結果、最も検出電圧が小さくなった電極群21の位置を押圧位置と決定することになる。したがって、シートセンサ10が他の電極群21に接触していても、その位置は無視される。
【0031】
図7は、図2に示す基板上の各電極群からの信号に基づいて押圧位置を検出する制御部の基本構成を模式的に示す図である。
【0032】
図7に示す制御部30は、中央処理装置(CPU)31と、読み書き可能なメモリ(RAM)32と、アナログ・デジタル変換器(A/Dコンバータ)33とを備える。制御部30は、基板20上あるいは基板20以外のいずれに設けても良い。CPU31は、シートセンサ10と電極群21との接触により変化する電極21a,21b間の電気抵抗値、あるいは当該電気抵抗値により変化する電圧値(この実施の形態では、代表して、「電圧値」とする)に基づき、シートセンサ10上の押圧位置を特定する。さらに具体的には、電圧値が所定の閾値を超えると押圧されたものと判定され、超えていなければ押圧されていないものと判定される。この結果、一点のみならず多点の検出が可能である。RAM32は、基板20上の複数の電極群21に対して、その位置情報(例えば、X−Y座標)を対応づけて記憶している記憶部である。CPU31は、電圧値に基づき特定の電極群21を選ぶと、RAM32内に記憶される情報を参照することにより、その電極群21の座標を決定することができる。A/Dコンバータ33は、アナログ信号をデジタル信号に変換する部分である。制御部30は、抵抗R1と抵抗R2とを直列につなぐ回路を有する。抵抗R1は、可変抵抗34であり、実際には、電極群21に相当する。抵抗R2は、固定の抵抗値を持つ抵抗35である。ある電極群21を一例に挙げると、電極群21を構成する電極21a,21b間の電圧(VOut)は、A/Dコンバータ33にてデジタル値に変換される。CPU31は、RAM32内の情報を参照して、押圧位置を特定する。
【0033】
図8は、図6に基づいて説明した押圧位置の検出方法と異なる別の検出方法を説明するための図である。
【0034】
図8では、4個の電極群21に、(X1,Y1)、(X2,Y1)、(X1,Y2)、(X2,Y2)の各座標が対応し、座標(X1,Y2)に対応する電極群21にてシートセンサ10と接触する接触領域12が最も大きな面積を有し、座標(X2,Y2)に対応する電極群21での接触領域13、座標(X1,Y1)に対応する電極群21での接触領域14、座標(X2,Y1)での接触領域15の順に、面積が小さくなっていく例で説明する。接触領域12の面積、接触領域13の面積、接触領域14の面積、接触領域15の面積を、それぞれ、S12、S13、S14、S15とし、S12:S13:S14:S15=0.5:0.2:0.16:0.14とする。このとき、CPU31が決定する押圧位置の座標(X,Y)は、上記4か所の座標にそれぞれの接触面積の比率を掛け合わせて、4か所の座標に重みづけを行い算出される。すなわち、X=X1*0.5+X2*0.2+X1*0.16+X2*0.14であり、Y=Y2*0.5+Y2*0.2+Y1*0.16+Y1*0.14である。この結果、指でシートセンサ10を押圧操作した場合に、接触領域が複数存在した場合、各接触面積の大きさを考慮し、接触面積の大きな位置に近い座標を、押圧位置と決定することができる。すなわち、先に説明したような最も接触領域の面積が大きな位置を押圧位置と決定する場合と異なり、アナログ的に、電極群21ごとに割り当てられた座標以外の座標を、押圧位置と決定することが可能になる。
【0035】
図9は、図1に示すタッチセンサを構成するシートセンサ上から操作する状況を、シートセンサ上から透過的に示す図である。
【0036】
シートセンサ10上に2本の指を接触させ(接触領域C1,C2)、その位置から互いに2本の指を近づける方向に移動させると、電極群21への接触箇所が互いに近づく方向に移動する。この結果、CPU31は、かかる2本の指の動きを検出することができる。同様に、シートセンサ10上に2本の指を接触させ(接触領域D1,D2)、その位置から互いに2本の指を遠ざける方向に移動させると、電極群21への接触箇所が互いに遠ざかる方向に移動する。この結果、CPU31は、かかる2本の指の動きを検出することができる。2点の座標の動きによって、画像の表示方式を変えるようにプログラミングした場合、例えば、2本の指を近づける場合には画像の縮小を行い、2本の指を遠ざける場合には画像の拡大を行うようにすることも可能である。基板20には、多くの電極群21が分散配置されているので、シートセンサ10上からの押圧箇所が2か所以上あっても、それらの押圧位置を正確に検出可能である。
【0037】
2.タッチパッド
次に、本発明の実施の形態に係る電子機器用タッチパッドについて、図面を参照しながら説明する。
【0038】
図10は、本発明の実施の形態に係る電子機器用タッチパッドと、当該タッチパッドからの操作を受け付けて画像の表示を変える電子機器とを示す概略図である。
【0039】
電子機器用タッチパッド(以後、単に、「タッチパッド」という)100は、有線若しくは無線にて電子機器200に操作信号を送信することができる操作機器であって、電子機器200と別体にて構成されている。例えば、タッチパッド100の操作面上を右斜め上方(Eで示す方向)に操作すると、電子機器200のディスプレイ210に表示されるオブジェクト211は、表示211aの状態(図10にて点線で表示)から、右斜め上方(Eで示す方向)の表示211bへと移動する。このように、電子機器200に表示される画像は、タッチパッド100からの操作を受け付けて、移動、さらには回転、拡大・縮小、選択等も可能である。
【0040】
図11は、図10に示すタッチパッドの斜視図である。図12は、図10に示すタッチパッドの平面図である。図13は、図10に示すタッチパッドの分解斜視図である。
【0041】
タッチパッド100は、上側ハウジング110と下側ハウジング160を、互いの開口面を合わせて形成される空間に、上側ハウジング110側から順に、操作板120、導光板130、タッチセンサ1’(シートセンサ10’および基板20’)を積層して備える。
【0042】
上側ハウジング110は、好適にはポリプロピレン等の硬質樹脂から構成される薄型で矩形のケースであって、その面内略中央に矩形の貫通孔111を有する。貫通孔111の周囲には、上側ハウジング110の上面から貫通孔111に向かって緩やかに下方傾斜する傾斜部112が形成されている。また、上側ハウジング110の一側面は、小さな貫通孔113を有しており、貫通孔113から内部に光を入れることができるようになっている。
【0043】
下側ハウジング160は、上側ハウジング110とほぼ同じ開口面積を有し、好適にはポリプロピレン等の硬質樹脂から構成される薄型で矩形のケースであって、その面内略中央に矩形の貫通孔161を有する。貫通孔161は、タッチセンサ1’と、外部の回路基板や電源等と電気的に接続するための孔である。
【0044】
操作板120は、ハーフミラーとして機能し、タッチパッド100の表側から面操作可能である。操作板120は、後述するように、樹脂製若しくはガラス製の透明板に膜を形成した多層の板である。操作板120は、その表側から指等でタッチ操作したときに、その操作を内部に伝達可能なレベルに薄く形成されている。例えば、操作板120の好適な厚さは、80〜150μmである。
【0045】
導光板130は、操作板120の裏側に配置されると共に、外部光源からの光を導光して操作板120に向けて照光可能な部材である。導光板130は、透明性の高い樹脂、例えば、アクリル樹脂から好適に構成されている。ただし、導光板130をガラスにて構成しても良い。導光板130は、操作板120の方向からの操作を裏側に伝達可能なレベルに薄く形成されている。例えば、導光板130の好適な厚さは、100〜150μmである。導光板130は、その一部に、操作板120の方向に導光しやすく形成される凹凸領域131を備える。凹凸領域131は、この実施の形態では、平面視にて文字「P」の形状に、導光板130の裏側の面に形成されている。ただし、凹凸領域131は、導光板130の表側の面あるいは内部に形成されていても良い。凹凸領域131の凹凸面の粗さは、光源からの光量、導光板130の透明度、操作板120からの距離などにより適宜変更できるが、一例として、凹凸の山谷間の高さにて1〜20μm程度の範囲が好ましい。凹凸領域131は、金型の転写、レーザーエッチング等にて好適に形成できる。導光板130の表側の面の外周には、突状の接着領域132が形成されている。当該接着領域132は、例えば、両面テープなどで好適に形成可能である。接着領域132を形成することにより、操作板120と導光板130との間に空気層を形成することができ、その結果、凹凸領域131にて反射した光を、操作板120から見やすくすることができる。
【0046】
タッチセンサ1’を構成するシートセンサ10’は、先に説明したシートセンサ10とほぼ同じ構成である。タッチセンサ1’を構成する基板20’は、先に説明した基板20と異なり、縦7列、横7行の合計49個の電極群が基板20’上の中央部分に集中配置した構成を有する。基板20’の他の構成は、基板20と共通する。基板20上の電極群21よりも数を減らし、かつそれら電極群を基板20’の中央に集めて配置したのは、上側ハウジング110の貫通孔11の領域に電極群が存在すれば、操作上の支障が無く、無駄な電極群を形成しなくて済むからである。
【0047】
図14は、図12に示すタッチパッドのF−F線断面図である。
【0048】
図14に示すように、上側ハウジング110の一側面に形成される貫通孔113は、導光板130の側端面の高さに形成されている。貫通孔113には、外部に配置される回路基板170上に固定される外部光源(この実施の形態では、LED)171が挿入されている。この結果、LED171からの光は、導光板130の側端面から入光し、凹凸領域131にて反射され、操作板120側へと向かうことができる。なお、貫通孔113は、下側ハウジング160側に形成されていても良い。
【0049】
図14では、見やすさを考慮して、シートセンサ10’の基板20’との対向面に形成される突出部は省略されているが、シートセンサ10’の上方からの押圧がない状態において、シートセンサ10’の当該対向面は、多くの突出部をスペーサーとして、どの電極群21’とも非接触状態に保持されている。
【0050】
図15は、図14に示す操作板の詳細な構成を示す断面図である。
【0051】
操作板120は、その表側から順に、ハードコート層121、透明基材122、反射層123、隠蔽層124を積層して構成される。ハードコート層121は、操作時に透明基材122を傷から守るために形成される層であり、例えば、UV硬化型アクリル系樹脂、あるいはメラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂などから好適に形成される。ハードコート層121の好適な厚さは、1〜20μmである。
【0052】
透明基材122は、好適には、PET系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂とポリエステル系樹脂からなるポリマーアロイ、ABS系樹脂、AS系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、あるいは塩化ビニル系樹脂から成り、特に、PET系樹脂により好適に構成される。透明基材122の好適な厚さは、80〜100μmである。
【0053】
反射層123は、LED171の消灯時において、表側からの光を反射して、透光領域の輪郭が薄く見えることを防ぐ機能を有する。また、反射層123が設けられることにより、使用面を平滑かつ光沢を有する平面に見せることができるため、より好ましい。反射層123には、無機顔料粒子あるいは金属粒子を分散させた樹脂バインダを用いることができる。分散させる材料としては、例えば、インジウムの他、天然若しくは合成雲母に酸化チタンあるいは酸化鉄等の金属酸化物を被覆した顔料(パール顔料)を好適に用いることができる。反射層123の好適な厚さは、0.1〜10μmである。反射層123を構成する無機顔料粒子あるいは金属粒子は、密接状態で存在していても、また島状に分散していても良い。
【0054】
隠蔽層124は、LED171の消灯時において、凹凸領域131の存在を操作面側から視認できないように隠蔽するための層である。隠蔽層124は、所定の光量の光を吸収できるため、光量が少ない場合には光を透過しない。一方、光量が多い場合には、隠蔽層124は、吸収可能な光量を超えた分の光を透過する。すなわち、隠蔽層124は、光半透過機能を有する層である。隠蔽層124は、例えば、全光線透過率が約20%になるよう調整された、黒色あるいは黒色に白色を混合した灰色等のインクによって好適に構成される。なお、内部光源の光の強度に合わせてその黒色の濃度を調整することで、全光線透過率を調整することが望ましい。また、黒色の顔料としては、例えば、カーボンブラックのような微粒子状の炭素材料を用いることができ、その含有量および分散状態の制御により、所望の透過率に調整することができる。隠蔽層124の好適な厚さは、0.1〜10μmである。隠蔽層124も、反射層123と同様、その構成粒子を密接状態で存在させても、また島状に分散させても良い。
【0055】
図16は、図10に示すタッチパッドを構成する操作板上から操作する状況を、操作板上から透過的に示す図である。
【0056】
タッチセンサ1’による押圧位置の検出方法は、先に説明したタッチセンサ1のそれと共通する。このため、タッチパッド100は、図7に示す制御部30と同様の制御部を有する。タッチパッド100の操作板120上に2本の指を接触させ(接触領域G1,G2)、その位置から互いに2本の指を近づける方向に移動させると、電極群21’への接触箇所が互いに近づく方向に移動する。この結果、CPU31は、かかる2本の指の動きを検出することができる。同様に、操作板120上に2本の指を接触させ(接触領域H1,H2)、その位置から互いに2本の指を遠ざける方向に移動させると、電極群21’への接触箇所が互いに遠ざかる方向に移動する。この結果、CPU31は、かかる2本の指の動きを検出することができる。2点の座標の動きによって、画像の表示方式を変えるようにプログラミングした場合、例えば、2本の指を近づける場合には画像の縮小を行い、2本の指を遠ざける場合には画像の拡大を行うようにすることも可能である。基板20’には、多くの電極群21’が分散配置されているので、操作板120上からの押圧箇所が2か所以上あっても、それらの押圧位置を正確に検出可能である。
【0057】
3.その他の実施の形態
本発明のタッチセンサおよびタッチパッドは、上述の実施の形態に限定されず、例えば、次のような変形実施も可能である。
【0058】
タッチセンサ1,1’を構成するシートセンサ10,10’は、上述の実施の形態では、突出部11を除き平板形状であるが、基板20,20’と対向する面に、基板20,20’上の電極群21,21’の位置に対応して各電極群21,21’に向けて突出する導電性突出部を備えたものでも良い。その場合、シートセンサ10,10’上から押圧していないときに、当該導電性突出部が電極群21,21’に接触しないように、シートセンサ10,10’の基板20,20’との対向面に、絶縁性の突出部11を備えるのが好ましい。かかる場合、突出部11は、シートセンサ10,10’の基板20,20’との対向面の周囲に形成されるだけでも良い。また、電極群21,21’の略中央部分に、電極21a,21bを形成していない絶縁領域を形成しておき、シートセンサ10,10’上から押圧していないときに導電性突出部の先端が基板20,20’に接触しても、電極群21,21’を構成する電極21a,21b間を導通しないようにしても良い。
【0059】
シートセンサ10,10’における基板20,20’との対向面と反対側の面が黒色でない場合、導光板130とシートセンサ10,10’との間に、LED171からの光をシートセンサ10,10’側に透過させない隠蔽層124を配置するのが好ましい。一方、シートセンサ10,10’の上記反対側の面が黒色である場合には、必ずしも、隠蔽層124を配置することを要しない。例えば、シートセンサ10,10’自体がカーボンブラックを分散させた抵抗性材料で構成されているような場合には、別途、隠蔽層124を配置しなくても、LED171からの光をシートセンサ10,10’側に透過させないようにできるからである。ハードコート層121は、透明基材122をガラスにて構成する場合には、必ずしも要しない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電子機器の操作を行う操作機器またはその主要部として利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1,1’ タッチセンサ
10,10’ シートセンサ
11 突出部
20,20’ 基板
21a,21b 電極
21,21’ 電極群
100 タッチパッド(電子機器用タッチパッド)
120 操作板
130 導光板
131 凹凸領域
171 LED(外部光源)
200 電子機器
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗膜方式のタッチセンサおよびそのタッチセンサを備える電子機器用タッチパッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ディスプレイへのタッチ操作にて入力を実行するタッチセンサが知られている。タッチセンサは、相対座標入力方式であるマウス形状のポインティングデバイスと異なり、ディスプレイ上の絶対座標を入力できるため、操作が簡単で、かつ操作者の感覚に適合した入力が可能である。このため、タッチセンサは、駅などの券売機、液晶ディスプレイを備える携帯型のゲーム機器や携帯通信機器の多くに搭載されている。タッチセンサは、その検出方法により、抵抗膜方式、静電容量方式、光学方式、超音波表面弾性波方式、電磁誘導方式などの多くのタイプに分けられるが、代表的なタッチセンサとして、抵抗膜方式および静電容量方式が挙げられる。
【0003】
抵抗膜方式タッチセンサの一例は、2枚の絶縁基板の各対向面に、ITO等による透明導電膜を形成し、電位勾配が形成された一方の透明導電膜と、他方の透明導電膜とが非接触状態となっている。一方から押圧すると、当該一方の透明導電膜と他方の透明導電膜とが接触し、他方の面側にて検出した電圧値に基づき、押圧された面上の絶対座標が特定される。このような抵抗膜方式タッチセンサは、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
一方、静電容量方式タッチセンサは、表面型静電容量方式、インナー型静電容量方式、投影型静電容量方式などのいくつかの方式に分けられるが、いずれも、センサ側の電極と、操作者の指(もう一方の電極に相当)との間の静電容量の変化に基づき、操作位置の絶対座標が特定される。これらの中でも、投影型静電容量方式のタッチセンサは、最近、注目を集めており、操作者が2本の指にて操作面上の2点を押圧したときに、その両座標を特定できる工夫がなされ、2本の指を使った画像の拡大若しくは縮小の操作が可能なものが知られている。このようなマルチタッチを可能とする静電容量方式タッチセンサは、例えば、特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−039667
【特許文献2】特開2002−501271
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抵抗膜方式タッチセンサは、一般的に、操作媒体を選ばず、スタイラスペン、指など如何なる入力媒体を用いた操作であっても検出できる。また、価格の面でも、抵抗膜方式タッチセンサは、静電容量方式タッチセンサと比べて安価である。しかし、その反面、抵抗膜方式タッチセンサは、異なる2点の操作(いわゆる、マルチタッチ)を行っても、それを検出することはできない、あるいは極めて特殊な構成を採らない限り検出困難である。このため、2本の指を使って、例えば、指を互いに反対方向に離し、あるいは互いに近づけるような操作を検出することは難しい。
【0007】
これに対して、静電容量方式タッチセンサの場合には、マルチタッチへの対応が可能なものも開発されており、操作者の操作感覚と検出後の出力結果とを近づけることが可能である。しかし、その反面、操作者が指若しくは導電性の高い特殊なペンを用いて操作する必要がある。このため、例えば、操作者が手袋(絶縁性のもの)をはめて操作する場合には、検出が困難になりやすい。
【0008】
また、押圧方向の強さを検出する点に関して、抵抗膜方式タッチセンサでは押圧方向の強さを検出できない。静電容量方式タッチセンサでは、押圧の強さに応じて、一方の電極である指とセンサ内部の電極との距離が変化するため、理論的には、その変化に基づき押圧の強さを検出可能ではあるが、押圧の強さに基づく静電容量の変化は極めて微弱であるため、その検出は困難である。
【0009】
本発明は、入力媒体を選ばず、複数の操作点を検出可能であって、押圧方向の強さを容易に検出可能なタッチセンサおよびそれを備えるタッチパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するため、本発明の一形態は、絶縁性の基板と、当該基板と対向配置されるシートセンサとを備え、基板には、シートセンサと対向する面に、複数の電極を近接させて構成される電極群を複数配置し、シートセンサを、基板と反対側からの押圧を受けて、1または2以上の電極群に接触し、その電極群を構成する電極間を導通可能に構成するタッチセンサである。
【0011】
本発明の別の形態は、さらに、基板およびシートセンサの少なくともいずれか一方に、シートセンサから押圧操作しないときに基板上の電極群とシートセンサとが接触して電極間が導通するのを防止する絶縁性の突出部を備えるタッチセンサである。
【0012】
本発明の別の形態は、さらに、シートセンサの基板と対向する面あるいは全体を、電極間を導通させる抵抗性材料にて構成するタッチセンサである。
【0013】
本発明の別の形態は、さらに、電極群を、複数の歯を持つ電極を互いに接触しないように噛み合わせた形態を持つ構成としたタッチセンサである。
【0014】
本発明の一形態は、電子機器を操作する電子機器用タッチパッドであって、ハーフミラーとして機能し、表側から面操作可能な操作板と、当該操作板の裏側に配置されると共に、外部光源からの光を導光して当該操作板に向けて照光可能な導光板と、当該導光板の裏側に配置され、操作板上での面操作によって操作位置を特定可能なタッチセンサとを積層して備え、タッチセンサには、絶縁性の基板と、当該基板と対向配置されるシートセンサとを備え、基板には、シートセンサと対向する面に、複数の電極を近接させて構成される電極群を複数配置し、シートセンサを、基板と反対側からの押圧を受けて、1または2以上の電極群に接触し、その電極群を構成する電極間を導通可能に構成する電子機器用タッチパッドである。
【0015】
本発明の別の形態は、さらに、基板およびシートセンサの少なくともいずれか一方に、シートセンサから押圧操作しないときに基板上の電極群とシートセンサとが接触して電極間が導通するのを防止する絶縁性の突出部を備える電子機器用タッチパッドである。
【0016】
本発明の別の形態は、さらに、シートセンサの基板と対向する面あるいは全体を、電極間を導通させる抵抗性材料にて構成する電子機器用タッチパッドである。
【0017】
本発明の別の形態は、さらに、導光板の一部に、操作板の方向に導光しやすい凹凸領域を形成した電子機器用タッチパッドである。
【0018】
本発明の別の形態は、さらに、凹凸領域を、導光板のタッチセンサ側の面に形成した電子機器用タッチパッドである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、タッチセンサおよびそれを備える電子機器用タッチパッドを、入力媒体を選ばず、複数の操作点を検出可能であって、押圧方向の強さを容易に検出可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の実施の形態に係るタッチセンサの斜視図である。
【図2】図2は、図1に示すタッチセンサを構成する基板から、当該基板と対向配置されるシートセンサを分離し、当該シートセンサを裏返した状態を示す斜視図である。
【図3】図3は、図2に示すシートセンサのA部分を拡大して示す拡大図である。
【図4】図4は、図2に示す基板のB部分を拡大して示す拡大図である。
【図5】図5は、図1に示すタッチセンサの一部の断面を示す断面図である。
【図6】図6は、図1に示すシートセンサの上から基板に向かって押圧したときの状況を、シートセンサ側から透過的に示す図である。
【図7】図7は、図2に示す基板上の各電極群からの信号に基づいて押圧位置を検出する制御部の基本構成を模式的に示す図である。
【図8】図8は、図6に基づいて説明した押圧位置の検出方法と異なる別の検出方法を説明するための図である。
【図9】図9は、図1に示すタッチセンサを構成するシートセンサ上から操作する状況を、シートセンサ上から透過的に示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態に係る電子機器用タッチパッドと、当該タッチパッドからの操作を受け付けて画像の表示を変える電子機器とを示す概略図である。
【図11】図11は、図10に示すタッチパッドの斜視図である。
【図12】図12は、図10に示すタッチパッドの平面図である。
【図13】図13は、図10に示すタッチパッドの分解斜視図である。
【図14】図14は、図12に示すタッチパッドのF−F線断面図である。
【図15】図15は、図14に示す操作板の詳細な構成を示す断面図である。
【図16】図16は、図10に示すタッチパッドを構成する操作板上から操作する状況を、操作板上から透過的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明に係るタッチセンサおよびそれを備える電子機器用タッチパッドの実施の形態について説明する。
【0022】
1.タッチセンサ
図1は、本発明の実施の形態に係るタッチセンサの斜視図である。図2は、図1に示すタッチセンサを構成する基板から、当該基板と対向配置されるシートセンサを分離し、当該シートセンサを裏返した状態を示す斜視図である。図3は、図2に示すシートセンサのA部分を拡大して示す拡大図である。図4は、図2に示す基板のB部分を拡大して示す拡大図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係るタッチセンサ1は、矩形の平面を有する薄板状のセンサであって、薄いシート状のシートセンサ10と、これと対向配置される絶縁性の基板20とから、主に構成される。
【0024】
シートセンサ10は、その母材として柔軟性に富む材料、好適には、熱可塑性エラストマーあるいは熱硬化性エラストマー、より好ましくはシリコーンゴムで構成されている。また、シートセンサ10の母材中には、シリコーンゴムに導電性を付与して所望の抵抗性を有する抵抗性材料とするために、導電性材料が分散されている。導電性材料としては、カーボンブラック、金属等を例示できるが、径の小さな粒子(ナノレベルの粒子)の製造が容易で、取り扱いも容易なカーボンブラックが、より好ましい。導電性材料の混合量は、導電性を高めかつシートセンサ10の弾性を維持する観点から、母材と当該導電性材料の総重量に対して5〜50重量%であるのが好ましく、さらには、15〜35重量%がより好ましい。シートセンサ10は、これと対向する基板20との接触抵抗として、好ましくは、100〜1700オーム、より好ましくは170〜1000オームの範囲の電気抵抗を有する。なお、シートセンサ10を複数の層から成る基材とし、基板20との対向面側の層を、導電性を付与した抵抗性材料で形成し、そこに絶縁材料から構成される層を貼付しても良い。
【0025】
また、シートセンサ10は、基板20と対向する面に、多くの絶縁性の突出部11を分散して備える。突出部11は、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂の他、エラストマー等から好適に構成され、例えば、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、シリコーンゴムから、より好適に構成される。突出部11は、例えば、絶縁性樹脂製の塗料から成るインクをドット状にパターン印刷した後に乾燥および硬化させることにより、好適に形成できる。なお、突出部11は、シートセンサ10との接着性を確保できるのであれば、上記以外の材料として、例えば、ガラス、セラミックス等から構成しても良い。突出部11は、シートセンサ10から押圧操作しないときに、基板20上の電極群21(後述する)とシートセンサ10とが接触して、電極群21を構成する電極21,21b間が導通するのを防止するためのスペーサーである。突出部11は、その突出面を基板20側に向けた略半球形状を有し、この実施の形態では、直径0.1mm、高さ0.03mmの薄い半球体である。ただし、突出部11の形状、大きさは、適宜変更可能であり、また、複数分散させずに、ルート状若しくは網目状につながっていても良い。なお、突出部11は、シートセンサ10側に形成せず、基板20側に形成しても良い。
【0026】
基板20は、上記シートセンサ10に比べて剛性の高い材料で構成され、好適には、ガラス繊維で編んだクロスにエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ製の基板である。ただし、基板20は、ガラスコンポジット基板、アルミナ等から成るセラミックス基板であっても良い。基板20は、シートセンサ10と対向する面に、複数の電極を近接して構成した多数の電極群21を備える。この実施の形態では、電極群21は、図4に示すように、複数の歯を持つ略櫛型の電極21a,21bを2つ備え、それら電極21a,21bを互いに接触しないように噛み合わせた形態を有する。電極21a,21bは、銅、銀等の導電性に優れた材料から成る薄膜であって、蒸着、印刷等の手段にて好適に形成可能である。電極群21は、シートセンサ10を基板20と対向配置させた際に、シートセンサ10に形成した突出部11が電極群21の周囲に存在するように、基板20上において格子の角部の位置に形成されている。この実施の形態では、電極群21の仮想外接円の直径は、約3mmであって、縦若しくは横方向に隣接する電極群21との距離は、約0.1mmであるが、これらの数値に限定されるものではない。また、必ずしも、電極群21は、格子の角部の位置に配置されなくても良い。
【0027】
図5は、図1に示すタッチセンサの一部の断面を示す断面図である。
【0028】
シートセンサ10の上方から矢印方向に押圧すると、当該押圧される位置にて、シートセンサ10の基板20との対向面が電極群21と接触し、当該電極群21を構成する電極21aと電極21bとが電気的に接続する。この結果、押圧した位置を特定することが可能となる。
【0029】
図6は、図1に示すシートセンサの上から基板に向かって押圧したときの状況を、シートセンサ側から透過的に示す図である。
【0030】
シートセンサ10からの押圧面積が電極群21の面積に対して極めて大きい場合、シートセンサ10は、複数の電極群21に接触し得る。図6に示す例は、シートセンサ10が4個の電極群21と、それぞれ、接触領域12、13、14および15にて接触した例である。この実施の形態では、4個の接触領域の内、接触領域12の面積が最も大きく、接触領域13、接触領域14、接触領域15の順に面積が小さくなっていく例で説明する。最も簡便な位置検出方法は、最も面積の大きな接触領域12の位置にある電極群21にて押圧されたものと決定することである。この検出方法を採用すると、例えば、指でシートセンサ10を押圧操作した場合に、接触領域が複数存在していても、最も面積が大きく、その結果、最も検出電圧が小さくなった電極群21の位置を押圧位置と決定することになる。したがって、シートセンサ10が他の電極群21に接触していても、その位置は無視される。
【0031】
図7は、図2に示す基板上の各電極群からの信号に基づいて押圧位置を検出する制御部の基本構成を模式的に示す図である。
【0032】
図7に示す制御部30は、中央処理装置(CPU)31と、読み書き可能なメモリ(RAM)32と、アナログ・デジタル変換器(A/Dコンバータ)33とを備える。制御部30は、基板20上あるいは基板20以外のいずれに設けても良い。CPU31は、シートセンサ10と電極群21との接触により変化する電極21a,21b間の電気抵抗値、あるいは当該電気抵抗値により変化する電圧値(この実施の形態では、代表して、「電圧値」とする)に基づき、シートセンサ10上の押圧位置を特定する。さらに具体的には、電圧値が所定の閾値を超えると押圧されたものと判定され、超えていなければ押圧されていないものと判定される。この結果、一点のみならず多点の検出が可能である。RAM32は、基板20上の複数の電極群21に対して、その位置情報(例えば、X−Y座標)を対応づけて記憶している記憶部である。CPU31は、電圧値に基づき特定の電極群21を選ぶと、RAM32内に記憶される情報を参照することにより、その電極群21の座標を決定することができる。A/Dコンバータ33は、アナログ信号をデジタル信号に変換する部分である。制御部30は、抵抗R1と抵抗R2とを直列につなぐ回路を有する。抵抗R1は、可変抵抗34であり、実際には、電極群21に相当する。抵抗R2は、固定の抵抗値を持つ抵抗35である。ある電極群21を一例に挙げると、電極群21を構成する電極21a,21b間の電圧(VOut)は、A/Dコンバータ33にてデジタル値に変換される。CPU31は、RAM32内の情報を参照して、押圧位置を特定する。
【0033】
図8は、図6に基づいて説明した押圧位置の検出方法と異なる別の検出方法を説明するための図である。
【0034】
図8では、4個の電極群21に、(X1,Y1)、(X2,Y1)、(X1,Y2)、(X2,Y2)の各座標が対応し、座標(X1,Y2)に対応する電極群21にてシートセンサ10と接触する接触領域12が最も大きな面積を有し、座標(X2,Y2)に対応する電極群21での接触領域13、座標(X1,Y1)に対応する電極群21での接触領域14、座標(X2,Y1)での接触領域15の順に、面積が小さくなっていく例で説明する。接触領域12の面積、接触領域13の面積、接触領域14の面積、接触領域15の面積を、それぞれ、S12、S13、S14、S15とし、S12:S13:S14:S15=0.5:0.2:0.16:0.14とする。このとき、CPU31が決定する押圧位置の座標(X,Y)は、上記4か所の座標にそれぞれの接触面積の比率を掛け合わせて、4か所の座標に重みづけを行い算出される。すなわち、X=X1*0.5+X2*0.2+X1*0.16+X2*0.14であり、Y=Y2*0.5+Y2*0.2+Y1*0.16+Y1*0.14である。この結果、指でシートセンサ10を押圧操作した場合に、接触領域が複数存在した場合、各接触面積の大きさを考慮し、接触面積の大きな位置に近い座標を、押圧位置と決定することができる。すなわち、先に説明したような最も接触領域の面積が大きな位置を押圧位置と決定する場合と異なり、アナログ的に、電極群21ごとに割り当てられた座標以外の座標を、押圧位置と決定することが可能になる。
【0035】
図9は、図1に示すタッチセンサを構成するシートセンサ上から操作する状況を、シートセンサ上から透過的に示す図である。
【0036】
シートセンサ10上に2本の指を接触させ(接触領域C1,C2)、その位置から互いに2本の指を近づける方向に移動させると、電極群21への接触箇所が互いに近づく方向に移動する。この結果、CPU31は、かかる2本の指の動きを検出することができる。同様に、シートセンサ10上に2本の指を接触させ(接触領域D1,D2)、その位置から互いに2本の指を遠ざける方向に移動させると、電極群21への接触箇所が互いに遠ざかる方向に移動する。この結果、CPU31は、かかる2本の指の動きを検出することができる。2点の座標の動きによって、画像の表示方式を変えるようにプログラミングした場合、例えば、2本の指を近づける場合には画像の縮小を行い、2本の指を遠ざける場合には画像の拡大を行うようにすることも可能である。基板20には、多くの電極群21が分散配置されているので、シートセンサ10上からの押圧箇所が2か所以上あっても、それらの押圧位置を正確に検出可能である。
【0037】
2.タッチパッド
次に、本発明の実施の形態に係る電子機器用タッチパッドについて、図面を参照しながら説明する。
【0038】
図10は、本発明の実施の形態に係る電子機器用タッチパッドと、当該タッチパッドからの操作を受け付けて画像の表示を変える電子機器とを示す概略図である。
【0039】
電子機器用タッチパッド(以後、単に、「タッチパッド」という)100は、有線若しくは無線にて電子機器200に操作信号を送信することができる操作機器であって、電子機器200と別体にて構成されている。例えば、タッチパッド100の操作面上を右斜め上方(Eで示す方向)に操作すると、電子機器200のディスプレイ210に表示されるオブジェクト211は、表示211aの状態(図10にて点線で表示)から、右斜め上方(Eで示す方向)の表示211bへと移動する。このように、電子機器200に表示される画像は、タッチパッド100からの操作を受け付けて、移動、さらには回転、拡大・縮小、選択等も可能である。
【0040】
図11は、図10に示すタッチパッドの斜視図である。図12は、図10に示すタッチパッドの平面図である。図13は、図10に示すタッチパッドの分解斜視図である。
【0041】
タッチパッド100は、上側ハウジング110と下側ハウジング160を、互いの開口面を合わせて形成される空間に、上側ハウジング110側から順に、操作板120、導光板130、タッチセンサ1’(シートセンサ10’および基板20’)を積層して備える。
【0042】
上側ハウジング110は、好適にはポリプロピレン等の硬質樹脂から構成される薄型で矩形のケースであって、その面内略中央に矩形の貫通孔111を有する。貫通孔111の周囲には、上側ハウジング110の上面から貫通孔111に向かって緩やかに下方傾斜する傾斜部112が形成されている。また、上側ハウジング110の一側面は、小さな貫通孔113を有しており、貫通孔113から内部に光を入れることができるようになっている。
【0043】
下側ハウジング160は、上側ハウジング110とほぼ同じ開口面積を有し、好適にはポリプロピレン等の硬質樹脂から構成される薄型で矩形のケースであって、その面内略中央に矩形の貫通孔161を有する。貫通孔161は、タッチセンサ1’と、外部の回路基板や電源等と電気的に接続するための孔である。
【0044】
操作板120は、ハーフミラーとして機能し、タッチパッド100の表側から面操作可能である。操作板120は、後述するように、樹脂製若しくはガラス製の透明板に膜を形成した多層の板である。操作板120は、その表側から指等でタッチ操作したときに、その操作を内部に伝達可能なレベルに薄く形成されている。例えば、操作板120の好適な厚さは、80〜150μmである。
【0045】
導光板130は、操作板120の裏側に配置されると共に、外部光源からの光を導光して操作板120に向けて照光可能な部材である。導光板130は、透明性の高い樹脂、例えば、アクリル樹脂から好適に構成されている。ただし、導光板130をガラスにて構成しても良い。導光板130は、操作板120の方向からの操作を裏側に伝達可能なレベルに薄く形成されている。例えば、導光板130の好適な厚さは、100〜150μmである。導光板130は、その一部に、操作板120の方向に導光しやすく形成される凹凸領域131を備える。凹凸領域131は、この実施の形態では、平面視にて文字「P」の形状に、導光板130の裏側の面に形成されている。ただし、凹凸領域131は、導光板130の表側の面あるいは内部に形成されていても良い。凹凸領域131の凹凸面の粗さは、光源からの光量、導光板130の透明度、操作板120からの距離などにより適宜変更できるが、一例として、凹凸の山谷間の高さにて1〜20μm程度の範囲が好ましい。凹凸領域131は、金型の転写、レーザーエッチング等にて好適に形成できる。導光板130の表側の面の外周には、突状の接着領域132が形成されている。当該接着領域132は、例えば、両面テープなどで好適に形成可能である。接着領域132を形成することにより、操作板120と導光板130との間に空気層を形成することができ、その結果、凹凸領域131にて反射した光を、操作板120から見やすくすることができる。
【0046】
タッチセンサ1’を構成するシートセンサ10’は、先に説明したシートセンサ10とほぼ同じ構成である。タッチセンサ1’を構成する基板20’は、先に説明した基板20と異なり、縦7列、横7行の合計49個の電極群が基板20’上の中央部分に集中配置した構成を有する。基板20’の他の構成は、基板20と共通する。基板20上の電極群21よりも数を減らし、かつそれら電極群を基板20’の中央に集めて配置したのは、上側ハウジング110の貫通孔11の領域に電極群が存在すれば、操作上の支障が無く、無駄な電極群を形成しなくて済むからである。
【0047】
図14は、図12に示すタッチパッドのF−F線断面図である。
【0048】
図14に示すように、上側ハウジング110の一側面に形成される貫通孔113は、導光板130の側端面の高さに形成されている。貫通孔113には、外部に配置される回路基板170上に固定される外部光源(この実施の形態では、LED)171が挿入されている。この結果、LED171からの光は、導光板130の側端面から入光し、凹凸領域131にて反射され、操作板120側へと向かうことができる。なお、貫通孔113は、下側ハウジング160側に形成されていても良い。
【0049】
図14では、見やすさを考慮して、シートセンサ10’の基板20’との対向面に形成される突出部は省略されているが、シートセンサ10’の上方からの押圧がない状態において、シートセンサ10’の当該対向面は、多くの突出部をスペーサーとして、どの電極群21’とも非接触状態に保持されている。
【0050】
図15は、図14に示す操作板の詳細な構成を示す断面図である。
【0051】
操作板120は、その表側から順に、ハードコート層121、透明基材122、反射層123、隠蔽層124を積層して構成される。ハードコート層121は、操作時に透明基材122を傷から守るために形成される層であり、例えば、UV硬化型アクリル系樹脂、あるいはメラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂などから好適に形成される。ハードコート層121の好適な厚さは、1〜20μmである。
【0052】
透明基材122は、好適には、PET系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂とポリエステル系樹脂からなるポリマーアロイ、ABS系樹脂、AS系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、あるいは塩化ビニル系樹脂から成り、特に、PET系樹脂により好適に構成される。透明基材122の好適な厚さは、80〜100μmである。
【0053】
反射層123は、LED171の消灯時において、表側からの光を反射して、透光領域の輪郭が薄く見えることを防ぐ機能を有する。また、反射層123が設けられることにより、使用面を平滑かつ光沢を有する平面に見せることができるため、より好ましい。反射層123には、無機顔料粒子あるいは金属粒子を分散させた樹脂バインダを用いることができる。分散させる材料としては、例えば、インジウムの他、天然若しくは合成雲母に酸化チタンあるいは酸化鉄等の金属酸化物を被覆した顔料(パール顔料)を好適に用いることができる。反射層123の好適な厚さは、0.1〜10μmである。反射層123を構成する無機顔料粒子あるいは金属粒子は、密接状態で存在していても、また島状に分散していても良い。
【0054】
隠蔽層124は、LED171の消灯時において、凹凸領域131の存在を操作面側から視認できないように隠蔽するための層である。隠蔽層124は、所定の光量の光を吸収できるため、光量が少ない場合には光を透過しない。一方、光量が多い場合には、隠蔽層124は、吸収可能な光量を超えた分の光を透過する。すなわち、隠蔽層124は、光半透過機能を有する層である。隠蔽層124は、例えば、全光線透過率が約20%になるよう調整された、黒色あるいは黒色に白色を混合した灰色等のインクによって好適に構成される。なお、内部光源の光の強度に合わせてその黒色の濃度を調整することで、全光線透過率を調整することが望ましい。また、黒色の顔料としては、例えば、カーボンブラックのような微粒子状の炭素材料を用いることができ、その含有量および分散状態の制御により、所望の透過率に調整することができる。隠蔽層124の好適な厚さは、0.1〜10μmである。隠蔽層124も、反射層123と同様、その構成粒子を密接状態で存在させても、また島状に分散させても良い。
【0055】
図16は、図10に示すタッチパッドを構成する操作板上から操作する状況を、操作板上から透過的に示す図である。
【0056】
タッチセンサ1’による押圧位置の検出方法は、先に説明したタッチセンサ1のそれと共通する。このため、タッチパッド100は、図7に示す制御部30と同様の制御部を有する。タッチパッド100の操作板120上に2本の指を接触させ(接触領域G1,G2)、その位置から互いに2本の指を近づける方向に移動させると、電極群21’への接触箇所が互いに近づく方向に移動する。この結果、CPU31は、かかる2本の指の動きを検出することができる。同様に、操作板120上に2本の指を接触させ(接触領域H1,H2)、その位置から互いに2本の指を遠ざける方向に移動させると、電極群21’への接触箇所が互いに遠ざかる方向に移動する。この結果、CPU31は、かかる2本の指の動きを検出することができる。2点の座標の動きによって、画像の表示方式を変えるようにプログラミングした場合、例えば、2本の指を近づける場合には画像の縮小を行い、2本の指を遠ざける場合には画像の拡大を行うようにすることも可能である。基板20’には、多くの電極群21’が分散配置されているので、操作板120上からの押圧箇所が2か所以上あっても、それらの押圧位置を正確に検出可能である。
【0057】
3.その他の実施の形態
本発明のタッチセンサおよびタッチパッドは、上述の実施の形態に限定されず、例えば、次のような変形実施も可能である。
【0058】
タッチセンサ1,1’を構成するシートセンサ10,10’は、上述の実施の形態では、突出部11を除き平板形状であるが、基板20,20’と対向する面に、基板20,20’上の電極群21,21’の位置に対応して各電極群21,21’に向けて突出する導電性突出部を備えたものでも良い。その場合、シートセンサ10,10’上から押圧していないときに、当該導電性突出部が電極群21,21’に接触しないように、シートセンサ10,10’の基板20,20’との対向面に、絶縁性の突出部11を備えるのが好ましい。かかる場合、突出部11は、シートセンサ10,10’の基板20,20’との対向面の周囲に形成されるだけでも良い。また、電極群21,21’の略中央部分に、電極21a,21bを形成していない絶縁領域を形成しておき、シートセンサ10,10’上から押圧していないときに導電性突出部の先端が基板20,20’に接触しても、電極群21,21’を構成する電極21a,21b間を導通しないようにしても良い。
【0059】
シートセンサ10,10’における基板20,20’との対向面と反対側の面が黒色でない場合、導光板130とシートセンサ10,10’との間に、LED171からの光をシートセンサ10,10’側に透過させない隠蔽層124を配置するのが好ましい。一方、シートセンサ10,10’の上記反対側の面が黒色である場合には、必ずしも、隠蔽層124を配置することを要しない。例えば、シートセンサ10,10’自体がカーボンブラックを分散させた抵抗性材料で構成されているような場合には、別途、隠蔽層124を配置しなくても、LED171からの光をシートセンサ10,10’側に透過させないようにできるからである。ハードコート層121は、透明基材122をガラスにて構成する場合には、必ずしも要しない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、電子機器の操作を行う操作機器またはその主要部として利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1,1’ タッチセンサ
10,10’ シートセンサ
11 突出部
20,20’ 基板
21a,21b 電極
21,21’ 電極群
100 タッチパッド(電子機器用タッチパッド)
120 操作板
130 導光板
131 凹凸領域
171 LED(外部光源)
200 電子機器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基板と、
当該基板と対向配置されるシートセンサと
を備え、
上記基板は、上記シートセンサと対向する面に、複数の電極を近接させて構成される電極群を複数配置し、
上記シートセンサは、上記基板と反対側からの押圧を受けて、1または2以上の上記電極群に接触し、その電極群を構成する上記電極間を導通可能に構成されることを特徴とするタッチセンサ。
【請求項2】
前記基板および前記シートセンサの少なくともいずれか一方に、前記シートセンサから押圧操作しないときに前記基板上の前記電極群と前記シートセンサとが接触して前記電極間が導通するのを防止する絶縁性の突出部を備えることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記シートセンサは、前記基板と対向する面あるいは全体を、前記電極間を導通させる抵抗性材料にて構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記電極群は、複数の歯を持つ前記電極を互いに接触しないように噛み合わせた形態を持つことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタッチセンサ。
【請求項5】
電子機器を操作する電子機器用タッチパッドであって、
ハーフミラーとして機能し、表側から面操作可能な操作板と、
当該操作板の裏側に配置されると共に、外部光源からの光を導光して当該操作板に向けて照光可能な導光板と、
当該導光板の裏側に配置され、上記操作板上での面操作によって操作位置を特定可能なタッチセンサと、
を積層して備え、
上記タッチセンサは、絶縁性の基板と、当該基板と対向配置されるシートセンサとを備え、
上記基板は、上記シートセンサと対向する面に、複数の電極を近接させて構成される電極群を複数配置し、
上記シートセンサは、上記基板と反対側からの押圧を受けて、1または2以上の上記電極群に接触し、その電極群を構成する上記電極間を導通可能に構成されることを特徴とする電子機器用タッチパッド。
【請求項6】
前記基板および前記シートセンサの少なくともいずれか一方に、前記シートセンサから押圧操作していないときに前記基板上の前記電極群と前記シートセンサとが接触して前記電極間が導通するのを防止する絶縁性の突出部を備えることを特徴とする請求項5に記載の電子機器用タッチパッド。
【請求項7】
前記シートセンサは、前記基板と対向する面あるいは全体を、前記電極間を導通させる抵抗性材料にて構成されることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電子機器用タッチパッド。
【請求項8】
前記導光板の一部に、前記操作板の方向に導光しやすい凹凸領域を形成していることを特徴とする請求項5から請求項7に記載の電子機器用タッチパッド。
【請求項9】
前記凹凸領域は、前記導光板の前記タッチセンサ側の面に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の電子機器用タッチパッド。
【請求項1】
絶縁性の基板と、
当該基板と対向配置されるシートセンサと
を備え、
上記基板は、上記シートセンサと対向する面に、複数の電極を近接させて構成される電極群を複数配置し、
上記シートセンサは、上記基板と反対側からの押圧を受けて、1または2以上の上記電極群に接触し、その電極群を構成する上記電極間を導通可能に構成されることを特徴とするタッチセンサ。
【請求項2】
前記基板および前記シートセンサの少なくともいずれか一方に、前記シートセンサから押圧操作しないときに前記基板上の前記電極群と前記シートセンサとが接触して前記電極間が導通するのを防止する絶縁性の突出部を備えることを特徴とする請求項1に記載のタッチセンサ。
【請求項3】
前記シートセンサは、前記基板と対向する面あるいは全体を、前記電極間を導通させる抵抗性材料にて構成されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のタッチセンサ。
【請求項4】
前記電極群は、複数の歯を持つ前記電極を互いに接触しないように噛み合わせた形態を持つことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタッチセンサ。
【請求項5】
電子機器を操作する電子機器用タッチパッドであって、
ハーフミラーとして機能し、表側から面操作可能な操作板と、
当該操作板の裏側に配置されると共に、外部光源からの光を導光して当該操作板に向けて照光可能な導光板と、
当該導光板の裏側に配置され、上記操作板上での面操作によって操作位置を特定可能なタッチセンサと、
を積層して備え、
上記タッチセンサは、絶縁性の基板と、当該基板と対向配置されるシートセンサとを備え、
上記基板は、上記シートセンサと対向する面に、複数の電極を近接させて構成される電極群を複数配置し、
上記シートセンサは、上記基板と反対側からの押圧を受けて、1または2以上の上記電極群に接触し、その電極群を構成する上記電極間を導通可能に構成されることを特徴とする電子機器用タッチパッド。
【請求項6】
前記基板および前記シートセンサの少なくともいずれか一方に、前記シートセンサから押圧操作していないときに前記基板上の前記電極群と前記シートセンサとが接触して前記電極間が導通するのを防止する絶縁性の突出部を備えることを特徴とする請求項5に記載の電子機器用タッチパッド。
【請求項7】
前記シートセンサは、前記基板と対向する面あるいは全体を、前記電極間を導通させる抵抗性材料にて構成されることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の電子機器用タッチパッド。
【請求項8】
前記導光板の一部に、前記操作板の方向に導光しやすい凹凸領域を形成していることを特徴とする請求項5から請求項7に記載の電子機器用タッチパッド。
【請求項9】
前記凹凸領域は、前記導光板の前記タッチセンサ側の面に形成されていることを特徴とする請求項8に記載の電子機器用タッチパッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−48472(P2012−48472A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189629(P2010−189629)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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