説明

タッチセンサパネル部材、タッチセンサパネル部材を備えた表示装置、及びタッチセンサパネル部材の製造方法

【課題】電極間における絶縁性を向上するとともに、製造時のコストを低減する。
【解決手段】透明基板2上に直接形成された第1の透明電極4と、透明基板2上に直接又は間接に、第1の透明電極4と直交する方向に形成された第2の透明電極5と、第1の透明電極4と第2の透明電極5とを電気的に絶縁する絶縁層と、を備え、この絶縁層は、第1の絶縁層6と、第1の絶縁層6上に積層された第2の絶縁層7とから構成されており、これら第1の絶縁層6と第2の絶縁層7は、感光性シロキサン樹脂により形成され、第2の絶縁層7の厚さが第1の絶縁層6よりも厚くなるように形成されていることを特徴とするタッチセンサパネル部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサパネル部材、タッチセンサパネル部材を備えた表示装置、及びタッチセンサパネル部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチセンサパネルは、表示装置と座標検出装置を組み合わせた入力装置として注目されている。タッチセンサパネルは、携帯電話、携帯音楽再生装置、携帯ゲーム機、自動販売機、ATM等のように、限られたスペースでより多くの情報入力をすることが必要な小型の電子機器等に多く用いられており、指やペン等で触れた箇所に応じてキーの機能を変化させることができるように構成されている。タッチセンサパネルは、表示画面上に表示された画像等を見ながら指等で直接触れて入力することができ、より直感的な操作をすることが可能になるため、最近では、上記した電子機器のみならず、パーソナルコンピュータの画面にも採用されており、その用途はますます拡大する傾向にある。
【0003】
タッチセンサパネルを構成するタッチセンサパネル部材は、センシング方式により、抵抗膜方式、静電容量方式、赤外線方式、超音波方式、及び電磁誘導結合方式等に分類される。これらのタッチセンサパネル部材は、それぞれの方式毎にメリット及びデメリットがあり、使用する用途に応じて、適する方式のものが適宜使い分けられている。
【0004】
このうち、抵抗膜方式のタッチセンサパネル部材は、一般的には、絶縁層を間に挟む形で一対の透明電極を配置し、透明電極同士が接触して導通した際の抵抗値の変化や、各電極に印加されている電圧の変化等に基づいて、指等が外部から接触した位置を検出できるように構成されている。抵抗膜方式のタッチセンサパネル部材に関しては、従来から種々検討されており、例えばゲル状のシロキサン樹脂を絶縁層に使用することでドットスペーサを省略したものや(特許文献1)、絶縁性樹脂材料を塗布することによって絶縁層を形成したもの(特許文献2)が知られている。
【0005】
近年は、他の方式に比べて透過率が高く耐久性がある点、及び多点検出が可能で複雑な操作が可能になる点から、静電容量方式のタッチセンサパネル部材が特に注目されている。静電容量方式のタッチセンサパネル部材は、一般的に、絶縁層を介して、パターニングされた第1の透明電極及び第2の透明電極が積層配置されており、指先等の外部導体が接触した位置における静電容量の変化を検知して、位置検出を行うように構成されている(例えば、特許文献3)。なお、静電容量型のタッチセンサパネル部材の場合には、第1の透明電極がパターニングされた基板と、第2の透明電極がパターニングされた基板のそれぞれを積層したものや、一つの基板上に第1の透明電極及び第2の透明電極を形成する単層の透明電極層がパターニングされ、さらにその上面に表面保護層が積層されるものなど、積層の仕方に複数の態様がある。
【0006】
このように構成されたタッチセンサパネル部材は、最終的には有機EL表示装置などの表示装置に取り付けられて、タッチセンサパネル部材を備えた表示装置が構成される。近年は、表示装置においても薄型化や軽量化が継続的な課題となっている。この課題を解決するために、表示装置全体として薄型化を図るべく、有機EL表示装置に空気の浸入を防ぐ目的で設置されるカバーガラスにタッチセンサパネル機能を統合すること等の各種試みも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−12517号公報
【特許文献2】特開平11−224157号公報
【特許文献3】特開2007−47990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、特にモバイル形態端末の技術分野では、タッチセンサパネル部材の利用が拡大する傾向にあり、特に有機ELを用いた表示装置にタッチセンサパネル部材を搭載するための研究が行われている。一般に、タッチセンサパネル部材を用いた有機EL表示装置は、該有機EL表示装置とタッチセンサパネル部材との一体化を図るため、タッチセンサパネル部材における絶縁層を有機EL表示基板の発光側に設置し、タッチセンサパネル部材の透明基板が有機EL表示装置のカバーガラスとなるように組み合わせて構成される。しかし、このように構成する場合、タッチセンサパネル部材側から発光層側に脱ガスが発生し、これによって有機EL表示装置の電気信頼性が低下するおそれがあった。この脱ガスの発生を防止するためには、タッチセンサパネル部材を有機EL表示基板に設置する前に、予め400℃以上の高温で加熱処理を行い、タッチセンサパネル部材から強制的に低分子量の不純物成分を除去する処理を行うことが望ましい。
【0009】
また、有機EL表示装置にタッチセンサパネル部材を搭載する場合には、ガラス封止と呼ばれる処理を行うことが必要とされる。ガラス封止の作業は、一般的には、有機EL表示装置と接する面に予め塗布した低融点ガラスを溶解させるために420℃程度の高温で加熱したタッチセンサパネル部材を、該タッチセンサパネル部材と接する面の外周部をYAGレーザー等で加熱して局所的に溶解させた有機EL表示装置の表面に積層させることにより行われる。このようにして積層されたタッチセンサパネル部材と有機EL表示装置との間は、周囲がガラスで封止され、タッチセンサパネル部材の外部から外気が流入することなどを防止できる。
【0010】
しかしながら、従来の特許文献1及び2に記載されているような不特定の樹脂材料や絶縁性樹脂材料、感光性材料で形成される絶縁層の耐熱性は230℃程度であり、400℃以上の加熱処理に耐えることができないため、上記した脱ガス防止のための加熱処理を実施することができなかった。
【0011】
そのため、タッチセンサパネル部材の技術分野とは異なる半導体の技術分野において一般的に用いられているシリコン系SOG(Spin On Glass)からなる絶縁膜を用いることが行われている。シリコン系SOGは、耐熱性が高く、400℃以上の加熱処理にも耐えることが可能な絶縁膜である。しかし、半導体の技術分野とタッチセンサパネル部材の技術分野とでは、使用環境の苛酷性、要求される精密度などが全く異なり、技術的な背景が相違することから、半導体の技術分野における絶縁膜をそのままタッチセンサパネル部材の技術分野に適用することができず、異なる材料によって新たに絶縁膜を形成しなければならなかった。
【0012】
また、シリコン系SOGは、それ自体ではパターニング機能を有していない。そのため、シリコン系SOG材料を用いてパターニング層を形成するためには、まず、全面に上記シリコン系SOG材料をベタ製膜した後に、その上面の所望の領域にポジ感光性材料を積層し、フォトリソグラフィ法によりパターニングし、次いでフッ酸などの酸溶剤によるウェットエッチングにより不要部を除去する必要がある。そして、エッチング完了後、不要となったポジ感光性材料を除去することによりパターニングを完遂する。以上の通り、シリコン系SOG材料を用いた場合には、ポジ感光性材料の製版/剥離が必要であり、かつ、取扱いが難しい酸溶剤を使用してウェットエッチングを実施しなくてはならないなど、従来、タッチセンサパネル部材において用いていた感光性材料に比べて、製造工程が複雑化し、生産性に大きな問題があった。
【0013】
しかも、ウェットエッチングにおいて酸溶剤を用いた場合に、形成される絶縁層又は表面保護層の下面に位置する透明電極層に該酸溶剤が接触し、これによって透明電極の一部が荒れてしまい、電気信頼性が低下するおそれもあった。また、上記ウェットエッチングの代わりに、気相によるドライエッチングを採用することも可能ではあるものの、この場合には真空プロセスが必要となり、従来の設備では容易に実施することができない場合があり問題であった。
【0014】
また、静電容量型のタッチセンサパネル部材は、各透明電極に所定の電圧を印加しておき、これら透明電極間における静電容量の変化により位置を検出するため、外部導体が触れる際に発生する静電気の影響を受けやすいという問題があった。
【0015】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、電極間の耐絶縁性及び加熱処理時における耐熱性を向上させるとともに、製造コストを低減することが可能なタッチセンサパネル部材、このタッチセンサパネル部材を一体化した表示装置、及びこのタッチセンサパネル部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、
(1)透明基板上に直接形成された第1の透明電極と、前記透明基板上に直接又は間接に、前記第1の透明電極と直交する方向に形成された第2の透明電極と、前記第1の透明電極と第2の透明電極とを電気的に絶縁する絶縁層と、を備え、前記絶縁層は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に積層された第2の絶縁層とから構成されており、これら第1の絶縁層と第2の絶縁層は、感光性シロキサン樹脂により形成され、前記第2の絶縁層の厚さが前記第1の絶縁層よりも厚くなるように形成されていることを特徴とするタッチセンサパネル部材、
(2)前記第2の透明電極は、前記透明基板上に直接形成されており、第1の透明電極と第2の透明電極のいずれか一方は、他方の透明電極を跨ぐブリッジ電極を有し、前記ブリッジ電極のうち、前記他方の透明電極と交差する部分が前記第1の絶縁層上に位置することを特徴とする上記(1)記載のタッチセンサパネル部材。
(3)前記第2の透明電極は、前記第1の絶縁層上に形成されていることを特徴とする上記(1)記載のタッチセンサパネル部材、
(4)前記第1の絶縁層と第2の絶縁層は、少なくとも2.5MV/cmの耐電圧性能を有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のタッチセンサパネル部材、
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のタッチセンサパネル部材が組み合わされている表示装置であって、前記タッチセンサパネル部材は、該タッチセンサパネルの透明基板が前記表示装置の基板ともなるように組み合わされていることを特徴とする表示装置、
(6)第1の透明電極と第2の透明電極によって物体の接触する位置を検出するタッチセンサパネル部材の製造方法であって、透明基板上に少なくとも第1の透明電極を直接形成し、感光性シロキサン樹脂により形成された第1の絶縁層を形成し、前記シロキサン樹脂により形成された第2の絶縁層を、前記第2の絶縁層の厚さが前記第1の絶縁層よりも厚くなるような厚さで形成することを特徴とするタッチセンサパネル部材の製造方法、
(7)前記第2の透明電極を前記第1の絶縁層上に形成することを特徴とする上記(6)記載のタッチセンサパネル部材の製造方法。
(8)前記第2の透明電極を前記第1の透明電極と共に前記透明基板上に形成し、前記第1の絶縁層を形成した後に、前記第1の透明電極又は第2の透明電極のいずれか一方に対して、他方の透明電極を跨ぐブリッジ電極を接続することを特徴とする上記(6)記載のタッチセンサパネル部材の製造方法、
を要旨とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るタッチセンサパネル部材によれば、感光性シロキサン樹脂を絶縁層に用いるので、400℃〜500℃といった高温に耐え得る耐熱性を示す絶縁層を形成することができる。したがって、タッチセンサパネル部材の製造時又は製造後に400℃〜500℃程度の高温で加熱する処理を行う場合があっても、絶縁層を損傷することがない。また、本発明に係るタッチセンサパネル部材によれば、絶縁層を第1の絶縁層と第2の絶縁層とから構成し、第2の絶縁層の厚さが第1の絶縁層よりも厚くなるように形成するので、第1の透明電極と第2の透明電極との間隔をあけつつ、さらに第2の透明電極とタッチセンサパネル部材の外部との距離をも大きく確保することができる。したがって、これら透明電極間の絶縁性を確保しつつ、タッチセンサパネル部材の外部からの静電気の影響を受けないようにすることができ、また良好な電気信頼性を維持することが可能になる。
【0018】
しかも、本発明に係るタッチセンサパネル部材の製造方法によれば、感光性シロキサン樹脂を用いた絶縁層を形成する場合には、従来の感光性樹脂材料を使用する場合と同様の製造設備で形成可能であるため、従来に比べて製造工程を大幅に減少することができ、製造コストを大幅に低減することが可能になる。さらに、シリコン系SOGを使用する場合のように、酸溶剤によるウェットエッチングが不要であるので、酸溶剤で透明電極層を荒らすこともなく、より良好な電気信頼性を維持することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の積層態様にて積層されたタッチセンサパネル部材の概略断面図である。
【図2】第1の透明電極、第2の透明電極および絶縁層の第1の積層態様を示す上面図である。
【図3】第2の積層態様にて積層されたタッチセンサパネル部材の概略断面図である。
【図4】第1の透明電極、第2の透明電極および絶縁層の第2の積層態様を示す上面図である。
【図5】第1の透明電極、第2の透明電極および絶縁層の第3の積層態様を示す上面図である。
【図6】タッチセンサパネル部材一体型の本発明の有機EL表示装置の一態様を示す概略断面図である。
【図7】タッチセンサパネル部材の製造方法を説明するための説明図である。
【図8】タッチセンサパネル部材の製造方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明のタッチセンサパネル部材およびタッチセンサパネル部材一体型の有機EL表示装置の構成を、図面を用いて説明する。
【0021】
本発明のタッチセンサパネル部材は、特に静電容量方式のタッチセンサパネル部材として望ましく用いることができる。
【0022】
[タッチセンサパネル部材]
(実施態様1)
図1は、本発明の一実施態様を示すタッチセンサパネル部材を、透明基板に対し略垂直方向に切断した際の、概略断面図である。なお、本明細書における「物体の接触する」状態は、物体が直接接触した状態のみならず、物体が接触したことをタッチセンサパネル部材が検知できる程度にまで、該物体が近接した状態をも含むものとする。
【0023】
タッチセンサパネル部材1は、透明基板2上に、取り出し電極3が形成され、さらに第1の透明電極4および第2の透明電極5のそれぞれが形成された2層の透明電極層を備える。タッチセンサパネル部材1は、第1の透明電極4および第2の透明電極5の間に第1の絶縁層6を設け、また第2の透明電極5の上に第2の絶縁層7を設けて構成されている。したがって、タッチセンサパネル部材1の透明基板2とは反対側の表面は、第2の絶縁層7が露出しており、第2の絶縁層7の露出面上にはOCA(Opticel Clear Adhesive)テープを介してカバーガラス8が積層配置されている。
【0024】
透明基板2は、タッチセンサパネル部材1を形成するための基材である。透明基板2には、一般的にはガラス基板が用いられるが、これに限定されず、タッチセンサパネル部材用透明基板あるいは表示装置用透明基板として用いられる透明基板であれば、適宜選択して使用することができる。また、上記した第1の透明電極4及び第2の透明電極5、それぞれタッチセンサパネル部材における透明電極を形成するための材料として一般的に知られる材料を適宜選択して形成することができ、例えばITOやIZOなどが望ましく使用される。また、後述するブリッジ電極は、金属材料で形成してもよい。また第1の透明電極4および第2の透明電極5の厚みは特に限定されないが、一般的には、それぞれ10nm〜100nm程度である。
【0025】
尚、図示はしないが、本発明のタッチセンサパネル部材1には、第2の絶縁層7上に表面保護層を形成してもよい。例えば、この場合には、タッチセンサパネル部材1において、第2の絶縁層7とカバーガラス8との間に表面保護層が介在する。
【0026】
第1の透明電極、第2の透明電極、および絶縁層の積層態様:
本発明において、第1の透明電極4、第2の透明電極5、第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7は、静電容量方式において、タッチセンサパネル部材の表面を指先で触れた際の電気容量の変化を検出できるようそれぞれパターニングされて形成される。より具体的に、これらの積層態様の例を示すため、透明基板2上に、第1の透明電極4、第2の透明電極5および第1の絶縁層6が積層された状態の上面図を図2、図4及び図5に示し、図4に示す態様のタッチセンサパネル部材の断面図を図3に示す。尚、図2、図4及び図5に示す積層体の最下層には透明基板2が存在し、第1の絶縁層6の上には第2の絶縁層7が存在するが、ここでは図示を省略する。
【0027】
図2は、第1の透明電極4が透明基板上に直接形成され、第2の透明電極5が透明基板上に間接に形成された第1の態様である。この態様では、透明基板上に整列する複数のダイヤ形状がx方向に直線状に連結される複数列の第1の透明電極4と、第1の透明電極4を覆って設けられる第1の絶縁層6と、第1の絶縁層6上において整列する複数のダイヤ形状がy方向に直線状に連結される複数行の第2の透明電極5とにより構成される。上記第1の絶縁層6は、第1の透明電極4の全面を覆い、且つ、透明基板上において設けられる取り出し電極や、後述する金属配線上部を被覆しないようパターニングされる。第1の絶縁層6が取り出し電極や金属配線を被覆しないようパターニングされる点については、図4および図5に示す第1の絶縁層6も同様である。
【0028】
図3及び図4は、第1の透明電極4及び第2の透明電極5が透明基板上に直接形成されており、第2の透明電極がブリッジ電極を有している第2の態様である。この態様では、透明基板上に整列する複数のダイヤ形状が、x方向において、独立に整列する列と、x方向に直線状に連結された列とが交互に形成されて構成されており、x方向に直線状に連結された列は第1の透明電極4を形成している。また、それぞれ独立に整列するダイヤ形状は、y方向に連結するための複数のブリッジ電極9により接続されており、第2の透明電極5を形成している。上記第1の絶縁層6は、上記ブリッジ電極9と、第1の透明電極4のダイヤ形状とが所定の位置で接触可能となるように、部分的に穴あきとなるようパターニングされる。
【0029】
図5に示す第3の態様は、ちょうど、図2に示す第1の透明電極4と第2の透明電極5とを入れ替えたパターンとして構成されている。
【0030】
上述する積層態様は本発明を何ら限定するものではなく、上記パターンにおいてx方向とy方向とが入れ替えられる積層態様、ダイヤ形状の代わりに直線状の電極が採用される積層態様など、静電容量方式のタッチセンサパネル部材において知られる透明電極と絶縁層とのパターニングの態様を適宜採用することができる。
【0031】
また、本発明のタッチセンサパネル部材において、2層以上の透明電極層を備える場合に、上述のとおり透明基板の一方側の面に2層の透明電極層がパターニングされて積層される態様に限定されるものではない。たとえば、2層以上の透明電極層が透明基板の両面にパターニングされて形成される態様であってもよい。より具体的な例としては、ITO透明電極層、透明ガラス基板、ITO透明電極層の順で構成され、さらに上記ITO透明電極層の少なくともいずれか一方側の上面に、感光性シロキサン樹脂層が形成されて本発明のタッチセンサパネル部材が構成されてもよい。本態様においても、ITO透明電極層の上面に感光性シロキサン樹脂層が形成されることにより、感光性シロキサン樹脂層表面の傷の発生を良好に防止することがきる。また必要に応じてタッチセンサパネル部材の製造時、あるいは製造後に400℃〜500℃程度の高温で加熱する場合があっても、感光性シロキサン樹脂層の表面を損傷することがない。
【0032】
絶縁層(感光性シロキサン樹脂層):
絶縁層は、第1の透明電極4と第2の透明電極5との間、又は第1の透明電極4と第2の透明電極5のブリッジ電極9との間での絶縁性を確保するとともに、ブリッジ電極9の上端側においてタッチセンサパネル部材1の外部との間での絶縁性を確保するためのものである。この絶縁層は、感光性シロキサン樹脂を用いて形成されている。本発明者らは、鋭意検討により、感光性シロキサン樹脂を用いて絶縁層を形成すれば、タッチセンサパネル部材における透明電極層上に形成した際に、耐熱性が非常に好ましく、第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7を構成する望ましい樹脂層としてタッチセンサパネル部材の中に設けることができることを見出した。
【0033】
上記感光性シロキサン樹脂材料は、構成樹脂としてシロキサン樹脂を含む感光性(即ち、電離放射線硬化性)材料であって、それ自体において、フォトリソグラフィ法によりパターニング可能なシロキサン樹脂材料を意味する。このような感光性のシロキサン樹脂材料であれば、従来公知の材料を適宜選択し、本発明を製造するために使用することが可能である。中でも、特許第3821165号に開示される放射線硬化性樹脂組成物、即ち、シロキサン樹脂(ただし、フェノール基を有する水性塩基可溶性シリコン含有ポリマーを除く。)光酸発生剤又は光塩基発生剤、及び、上記シロキサン樹脂を溶解可能であり、非プロトン性溶媒(即ち、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ジ−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルジオキサン、などの当該公報請求項1に列挙されるエーテル系溶媒を1種以上含む非プロトン性溶媒)を含有してなり、放射線の照射により硬化する放射線硬化性組成物を、本発明における感光性シロキサン樹脂層の構成材料として好適に用いることができる。あるいはまた、特許第3758669号に開示される放射線硬化性樹脂組成物、即ち、シロキサン樹脂、露光する工程で使用される特定波長の放射線を照射することにより、酸性活性物質を放出する光酸発生剤、又は塩基性活性物質を放出する光塩基発生剤、上記シロキサン樹脂成分を溶解可能な溶媒、及び、上記特定波長の放射線を照射しても酸性活性物質及び塩基性活性物質を放出しない硬化促進触媒を含有してなる放射線硬化性組成物を、本発明の感光性シロキサン樹脂材料として好適に用いることができる。尚、フォトリソグラフィ法によりパターニング可能なシロキサン樹脂の例としては、下記一般式(1)で表される化合物を加水分解縮合して得られる樹脂等が挙げられる。
(式1) RSiX4−n (1)
(式中、Rは、H原子若しくはF原子、又はB原子、N原子、Al原子、P原子、Si原子、Ge原子若しくはTi原子を含む基、又は炭素数1〜20の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0〜2の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0〜2のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。)
尚、本発明における感光性シロキサン樹脂層は、1種の感光性シロキサン樹脂から形成されてもよく、あるいは、異なる構造式で表わされる2種以上の感光性シロキサン樹脂の任意の組み合わせから形成されてもよい。例えば、上記式1において示される感光性シロキサン樹脂であって、側鎖が異なる2種以上の感光性シロキサン樹脂を任意に組み合わせて、感光性シロキサン樹脂層を形成してもよい。
【0034】
また、本発明に係る絶縁層に使用されるシロキサン樹脂は、耐熱性を有するものであることが特徴である。これは、絶縁層を形成する際には、100℃前後の比較的低温で加熱してシロキサン樹脂を半硬化させるプリベークをする工程と、プリベーク後に約220℃〜500℃程度の範囲から適宜決定される高温で加熱してシロキサン樹脂を硬化させるポストベークを行う必要があり、さらにタッチセンサパネル部材1を有機EL表示装置へ搭載する際にも420℃程度の高温で加熱する必要があるからで、本発明において使用されるシロキサン樹脂としては、400℃〜500℃程度の高温での加熱にも耐えうる耐熱性を有することが望ましい。また、本発明に係る絶縁層にシロキサン樹脂は、絶縁層として形成した時に、少なくとも2.5MV/cmの耐電圧性能を有することが好ましい。この耐電圧性を有することにより、さらにより良好な電気信頼性を維持することが可能になる。
【0035】
また、上記感光性シロキサン樹脂層が、タッチセンサパネル部材中に2層以上形成される場合には、成分の異なるシロキサン樹脂が含有される感光性シロキサン樹脂材料を用いて、それぞれの層を形成してもよい。
但し、タッチセンサパネル部材中に2層以上の感光性シロキサン樹脂層を形成する場合に、各層を同一成分の感光性シロキサン樹脂により形成することによれば、各層の収縮率を同じくすることできるため、設計通りのタッチセンサパネル部材を容易に製造し易く、また各層の屈折率が同じになるため、光学的に反射の発生を防止することができ、望ましい。尚、本発明において「第1の絶縁層である感光性シロキサン樹脂層と、第2の絶縁層である感光性シロキサン樹脂層が、同一成分の感光性シロキサン樹脂を用いて形成されている」とは、第1の絶縁層及び第2の絶縁層が、それぞれ1種の感光性シロキサン樹脂から形成される場合には、それぞれの層を形成する感光性シロキサン樹脂の構造式が同一であることを意味する。一方、第1の絶縁層及び第2の絶縁層がそれぞれ2種以上の感光性シロキサン樹脂の組み合わせで形成される場合には、それぞれの層における感光性シロキサン樹脂の組み合わせが同一であることを意味し、組み合わされる感光性シロキサン樹脂の含有比率までは、その同一性を問わない。
【0036】
本発明における感光性シロキサン樹脂層は、上記感光性シロキサン樹脂材料を用い、従来の絶縁層の製造工程、即ち、アクリル系感光性材料を用いた絶縁層の製造工程と同様の製造工程で形成することができる。
より具体的には、感光性シロキサン樹脂材料を準備し、基材面上に塗工して塗膜を形成する。塗工方法は、感光性シロキサン樹脂材料を、基材面に略均一な膜厚で塗工が可能な塗工方法であればいずれの方法を採用しても良く、例えば、スピンコート法、ダイコート法、スリットコート法、グラビアコート法、あるいはこれらの方法を組み合わせた塗工方式、あるいはインクジェット法を適宜選択して実施することができる。
【0037】
そして、必要に応じて減圧乾燥処理した後、適当な温度で加熱(プリベーク)し、次いで所望のパターンのフォトマスクを介して紫外線などの電離放射線を照射して露光し露光部分を硬化させ、次いで、マスクをはずして未露光部分をアルカリ現像液で現像し、必要に応じて加熱(ポストベーク)することによって、感光性シロキサン樹脂層を形成することができる。ただし、アクリル系感光性材料と異なる点は、感光性シロキサン樹脂材料に含まれる感光性シロキサン樹脂は、加熱工程における加熱温度が、約220℃〜500℃程度の範囲から適宜決定できる点にある。一般的には、感光性シロキサン樹脂材料を用いた場合、プリベーク時には、100℃前後の比較的に低温で加熱して樹脂を半硬化させ、ポストベーク時において、約220℃〜500℃程度の温度範囲において求められる表面硬度が発揮されるよう加熱温度を選択することができる。
【0038】
尚、本発明に関し、電離放射線とは、紫外線などを含む電磁波、及び電子線などを含み分子を重合し得るエネルギー量子を有する粒子線のいずれをも含む。また感光性、あるいは電離放射線硬化性、というときは、上記電離放射線により硬化可能であることを意味する。
【0039】
上記の通り詳述したシロキサン樹脂を用いて形成された絶縁層は、第1の絶縁層6と第2の絶縁層7とから構成される。これら第1の絶縁層6と第2の絶縁層7は、第1の絶縁層6の上に第2の絶縁層7が積層されるように形成されており、これら第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7の中にブリッジ電極9が埋め込まれるように形成されている。また、ブリッジ電極9で囲まれた空間の内部にもシロキサン樹脂が存在しており、この空間内部のシロキサン樹脂も本発明における第1の絶縁層6を構成する。図1に示すように、第2の透明電極5は、第1の絶縁層6の上であって第2の絶縁層7の内部に位置する。また、図3に示すように、第1の透明電極4と第2の透明電極5の積層態様が上記した第2の態様の場合には、これら第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7の厚さとブリッジ電極9の高さは、少なくとも、ブリッジ電極9のうちの第1の透明電極と交差する部分が第1の絶縁層6の上に突出するような位置関係にある。また、第2の絶縁層7は、第1の絶縁層6上に積層されているため、ブリッジ電極9のうちの第1の透明電極と交差する部分は、第2の絶縁層7の内部に位置するように構成される。
【0040】
第2の絶縁層7は、第1の絶縁層6の厚さよりも厚くなるように形成されている。すなわち、第1の絶縁層6の厚さをD1とし、第2の絶縁層7の厚さをD2とすると、これらD1とD2の間にはD1<D2の関係がある。第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7の全体の膜厚D3は、該絶縁層において第1の透明電極4と第2の透明電極5との間の絶縁性を確保することができ、かつ絶縁層に割れ等が生じる限度となるクラック限界を超えない程度の厚さとなるように形成されることが好ましい。具体的には、膜厚D3は、0.8μm〜2.3μmであることが好ましい。膜厚D3をこの範囲で確保することで、タッチセンサパネル部材1の外部との絶縁耐圧を500V程度まで向上させることが可能になる。また、第1の絶縁層6の膜厚D1は、絶縁層の膜厚D3が決定されている範囲内において、できるだけ第1の透明電極4と第2の透明電極5との間の絶縁性を確保し、かつ第1の絶縁層6のクラック限界を超えない程度の厚さとすることが好ましい。具体的には、膜厚D1は、0.3μm〜0.5μmであることが好ましい。膜厚D1をこの範囲で確保することで、第1の透明電極4と第2の透明電極5との間の絶縁耐圧を75V〜125V程度とすることができる。さらに、第2の絶縁層7の膜厚D2は、絶縁層の膜厚D3が決定されている範囲内において、タッチセンサパネル部材1の外部との間における絶縁性、特に事後的な静電気による破壊などを防止することができる厚さとすることが好ましい。具体的には、膜厚D2は、0.5μm〜2μmであることが好ましい。
【0041】
第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7は、全可視光領域での透過率が高く、ほぼ無色透明ではあるが、若干ながら可視光領域の短波長領域に吸収帯を有するため、わずかに黄色く着色する場合がある。このような着色は、タッチセンサパネル部材においては好ましくない。また、絶縁層の膜厚を大きく設定するほど、上記したクラック限界の問題のほかに、露光の際の回折光の影響により露光エリアが増大し、結果としてパターン太りを招いて解像度が悪化するといった問題も生じ得る。したがって、このような着色の問題及び解像度の悪化の問題を回避するために、絶縁層は上記した絶縁耐圧を満足する範囲で必要最低限の膜厚で形成されることが好ましい。
【0042】
ここでさらに、本発明者らの鋭意検討により、半導体分野で使用されるシリコン系SOGによって形成された樹脂層(あるいは、その形成工程)では発揮されない、感光性シロキサン樹脂層に特有の有利な点があることがわかった。
【0043】
第一に、感光性シロキサン樹脂層を形成する際の加熱温度に選択可能な範囲を有する点が挙げられる。即ち、シリコン系SOGを用いて絶縁膜を形成する場合には、基材面に上記シリコン系SOGを用いてベタ製膜し、ポジレジストを積層する前に、400℃〜500℃程度の高温で充分に焼き固める必要がある。かかる加熱により、製膜されたSOGの表面硬度は充分に硬くなるものの、基材に既に設けられている他層において耐熱温度が400℃未満の部材が存在した場合には、当該部材を加熱により損傷する恐れがあった。これに対し、感光性シロキサン樹脂層を形成する場合には、露光処理後に樹脂を硬化させるためにポストベークを実施するが、このときの加熱温度は、220℃〜500℃程度の範囲で選択可能である。しかも、かかる温度範囲であれば感光性シロキサン樹脂が充分に硬化することが分かった。したがって、基材面に既に形成されている他層の耐熱性を勘案し、加熱温度を決定することができる。
【0044】
したがって本発明のタッチセンサパネル部材1における第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7は、タッチセンサパネル部材自体の態様、使用方法、あるいは表示装置との組み合わせなどによって、加熱温度を任意に選択可能であるという有利な性質を有している。
【0045】
第二に、感光性シロキサン樹脂材料を用いて絶縁層あるいは表面保護層を製造する場合には、シリコン系SOGを用いる場合に比べて、製造工程を短縮可能であるという点を挙げることができる。
一般的に、タッチセンサパネル部材1における第1の透明電極4及び第2の透明電極5は、ITOを用いて形成される。ITO、中でも低温製膜型のITOを用いた場合には、まず基板上にITO膜を製膜し、次いで所望の領域にポジレジストを積層し、酸でエッチングした後、加熱処理を実施して焼き固め、これによってパターニングされた第1の透明電極4及び第2の透明電極5が形成される。
ここで、第1の透明電極4及び第2の透明電極5上に第1の絶縁層6や第2の絶縁層7を形成する場合であって、その材料として感光性シロキサン樹脂材料を用いる場合には、ITO膜を酸でエッチングした後の加熱処理を省略し、続く絶縁層製造工程、あるいは表面保護層製造工程における加熱処理を実施する際に、同時、ITO膜を加熱して焼き固めて透明電極層を形成することが可能であることがわかった。
【0046】
一方、シリコン系SOGを用いる場合に、上述と同様にITO膜の加熱処理を省略すると、ITO膜の表面が荒れてしまい、電気抵抗値が上昇し電気信頼性が低下するという不具合が発生した。この不具合の発生は、シリコン系SOGを用いて絶縁膜を形成する工程における、酸溶剤を用いたウェットエッチングによるものであることが推察された。即ち、上述のとおり、シリコン系SOGは、それ自体ではパターニング機能を有していないため、ポジ感光性材料を用いて製版/剥離が必要であり、このときに使用する酸溶剤が透明電極層に接触すると、その表面が荒れる可能性がある。しかもITO膜をしっかりと加熱して焼き固める前に、上記酸溶剤が該ITO膜に接触すると、特にダメージが大きいものと考えられた。これに対し、第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7の形成工程は、酸溶剤は使用されず、アルカリ現像液が使用されるので、焼き固める前の透明電極層(ITO膜)に該アルカリ現像液が接触した場合であっても、電気信頼性を低下させるほどにITO膜にダメージを与えることがないため、上述のとおり加熱処理を省略することができると考えられた。特に、第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7を2層に積層させる場合には、各層の製造工程ごとに上記加熱処理を省略可能であるため、製造工程の短縮化においてメリットが大きい。また、生成されるタッチセンサパネル部材自体についても、できるだけ加熱工程を少なくする方が、全体の熱によるダメージを低下させ品質の良好なタッチセンサパネル部材を提供することができるため、望ましい。
【0047】
第三に、感光性シロキサン樹脂材料を用いて形成された第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7は、大型基板を用いて多面取り用に形成される場合であっても、良好な面内均一性が得られるという点が挙げられる。
即ち、半導体分野における基板(ウェハー)は、一般的に直径300mm以下であり、比較的小さい基板面における製膜性が確保されれば充分である。一方、近年の表示用部材およびこれに用いられるタッチセンサパネル部材では、例えば、300cm×300cmといった大型の基板において多面取りして製造される傾向にある。小さい基板面において良好な製膜性を示す材料が、同様に、大型の基板面上においても、良好な製膜性を示し得るかは不明である。そこで、本発明者らが、半導体分野で用いられるシリコン系SOGを用いて、大型基板で複数の基板の多面とりを検討した。その結果、シリコン系SOGを用いて、大型基板で、半導体プロセスと同様にドライエッチングやウェットエッチング工程を実施した場合には、面内均一性が確保できず、シリコン系SOGを用いて形成される膜の良好な面内均一性が得られないことが推察された。これに対し、感光性シロキサン樹脂材料であれば、フラットパネルディスプレイの製造によって確立された技術を駆使して膜を形成することができ、大型の基板を用いた場合であっても、絶縁層および/または表面保護層の面内均一性が充分に確保される。
【0048】
金属配線:
本発明のタッチセンサパネル部材における透明基板上には必要に応じて、有効表示領域の外周に金属配線を設け、電気の低抵抗化を図ることができる。上記金属配線は、一般的には、透明電極層の外周側と接続され、静電容量方式によって発生した電気信号を容易に取り出し、取り出し電極まで該信号を導くよう構成される。
【0049】
上記金属配線を構成する材料としては、銀合金や銅合金が汎用されるが、あるいは、銀、金、銅、クロム、プラチナ、アルミニウム、APC(Au・Pd・Cu、銀・パラジウム・銅)、MAM(Mo−Nb・Al−Nd・Mo−Nb、モリブデン合金・アルミニウム合金・モリブデン合金)、酸化クロム/クロム積層体などであってもよい。また、複数の異なる金属を積層構成させて金属配線を構成してもよい。
【0050】
以上に、図面に示されるタッチセンサパネル部材を用いて本発明の態様を説明したが、本発明のタッチセンサパネル部材は、これに限定されるものではない。本発明において、透明電極層上に、感光性シロキサン樹脂で形成された第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7が形成され、第1の絶縁層6の厚さD1が第2の絶縁層7の厚さD2よりも大きくなるように形成されていることが重要であって、これによって本発明の所期の目的が良好に解決されることが重要である。
したがって、本発明のタッチセンサパネル部材は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、適宜変更することができる。
【0051】
[表示装置]
以上に、説明する本発明のタッチセンサパネル部材は、さらに、表示装置と一体的に組み合わせることによって、タッチセンサパネル部材一体型の表示装置を提供することができる。本発明において「タッチセンサパネル部材と表示装置とを一体的に組み合わせる」とは、上述する本発明のタッチセンサパネル部材の透明基板が、表示装置における対面する2枚の基板の一方側の基板ともなるよう、タッチセンサパネル部材と表示装置の一方側の基板における機能を一枚の基板に統合することを意味する。この結果、従来のタッチセンサパネル部材の基板を表示装置の一方側の基板に張り合わせるなどして搭載する態様に比べて基板数を減らすことができ、表示装置の薄型化、軽量化を図ることができる。
【0052】
タッチセンサパネル部材と一体的に組み合わされる表示装置は、一方側の基板に表示媒体として有機EL素子を介して2層の電極層が形成され、一方側の基板に対面して他方の基板(カバーガラス8)が設置される有機EL表示装置がある。
【0053】
(実施態様3)
タッチセンサパネル部材一体型の本発明の表示装置の実施態様として、タッチセンサパネル部材一体型の有機EL表示装置を用い、これを基板面に略垂直方向に切断した際の概略断面図を図6として示す。図6に示すタッチセンサパネル部材一体型の有機EL表示装置31を製造するためには、図1に示すタッチセンサパネル部材1と同様に形成されたタッチセンサパネル部材32を準備する(図中、取り出し電極3は図示省略する)。一方、透明基板33上に有機EL素子34が設けられた有機EL用基板35を準備する。そして、タッチセンサパネル部材32における第2の透明電極5と、有機EL用基板35における有機EL素子34とが向かい合う向きで互いに組み合わせることにより製造することができる。このとき両基板間は、スペーサ36により適当な距離で保たれる。
【0054】
有機EL素子34は、一般的には、透明基板33上にTFTを備える駆動用回路が形成され、必要に応じて駆動用回路上に平坦化膜や保護膜が設けられた後、Al、Ag、Auなどの有機EL素子における金属電極として公知の材料を用いて金属電極が形成され、次いで、発光層を備える有機層が公知の材料から形成された後、さらに金属電極が形成されることによって構成される。ただし、本発明における有機EL素子、あるいはこれを備える有機EL基板の構成はこれに限定されず、従来公知の有機EL用基板を適宜選択し、タッチセンサパネル部材と一体的に組み合わせてよい。尚、タッチセンサパネル部材側に形成される金属電極は、光取り出しのために、金属酸化物からなる透明導電膜などの透明電極として形成される。
【0055】
なお、本実施の形態の有機EL表示装置では、有機EL用基板に対向して透明基板2が設置されるが、カバーガラス8をタッチセンサパネル部材32における透明基板2と兼用してもよい。これにより、表示装置全体としての薄膜化、軽量化を図ることが可能になる。
尚、本発明のタッチセンサパネル部材では、第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7のいずれも、耐熱性が高く、400℃以上の加熱処理にも耐えられるため、タッチセンサパネル部材の製造工程中に、400℃以上の加熱で第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7を形成するか、あるいは製造されたタッチセンサパネル部材に、400℃以上の加熱処理を実施することによって、従来の課題であった、脱ガスの問題を解消することができる。
【0056】
(実施態様4)
また、本発明のタッチセンサパネル部材は、表示装置と一体型に組み合わせるために用いるだけでなく、独立のタッチセンサパネル部材を製造するために用いることもできる。
【0057】
本発明のタッチセンサパネル部材は、図1に示すタッチセンサパネル部材を用い、透明電極層などを介して、透明基板に対向する第二基板を設置して製造される。第二基板としては、透明ガラス基板や、透明フィルム基板などが好ましく用いられるが、これに限定されるものではない。尚、透明基板と第二基板とは、表示領域を外れる基板の縁に設けられるスペーサによって互いの距離が確保されている。
【0058】
一方、液晶表示装置は、表示側基板と電極基板とを対向させ、シール部材で両基板間に空間を設けた状態で密着させ、当該空間に駆動用液晶材料を充填させ構成されている。表示側基板は、透明基板上に、ブラックマトリクスを設け、次いで、赤色着色画素、緑色着色画素、青色着画素からなる着色層を設け、さらに駆動用液晶材料用配向膜を着色層上に設けて構成されている。また電極基板は、図示省略する液晶駆動用回路および液晶駆動用電極などを透明基板上に設けて構成されている。液晶表示装置は、単なる例示であり、一般的に駆動用液晶材料を用いてなる液晶表示装置として理解される装置であれば、その表示側基板を構成する透明基板と、本発明のタッチセンサパネル部材の透明基板とが直接または間接に重なるよう、本発明のタッチセンサパネル部材を搭載することができる。また同様に、有機EL表示装置などの他の表示装置においても、同様に表示側基板と、本発明のタッチセンサパネル部材の透明基板とが直接または間接に重なるよう、本発明のタッチセンサパネル部材を貼り付けることによって搭載することができる。
【0059】
尚、実施態様4では、第二基板が指でタッチされる面側となるよう、本発明にタッチセンサパネル部材を使用する例を示したが、本発明のタッチセンサパネル部材におけるタッチ面はこれに限定されない。本発明のタッチセンサパネル部材搭載液晶表示装置におけるタッチセンサパネル部材を上下に回転させ、第二基板と、透明基板とが当接させてもよい。このように、タッチセンサパネル部材を液晶表示装置に搭載させることによって、透明基板をタッチ面側として、タッチセンサパネル部材搭載液晶表示装置を構成することもできる。
【0060】
[タッチセンサパネル部材の製造方法]
次に、本実施の形態に係るタッチセンサパネル部材の製造方法を図7及び図8に基づいて説明する。図7及び図8は、タッチセンサパネル部材の製造工程を説明するための説明図であり、図7は、上記した図1に示す態様のタッチセンサパネル部材の製造方法を表したもので、図8は上記した図3に示す態様のタッチセンサパネル部材の製造方法を表したものである。
【0061】
図1に示す態様のタッチセンサパネル部材を製造する場合には、まず透明基板としてのガラス基板2を用意する。このガラス基板2は、超純水等による界面活性処理や超音波洗浄処理によって洗浄することが好ましい。次に、図7に示すように、APCをガラス基板2の全面にスパッタリングにより製膜して、金属配線層41を積層する(図7(a))。そして、ポジ感光性材料を用いて、フォトリソグラフィプロセスにより、有効表示エリア外に金属配線パターンと電極取り出し部のパターンを焼き付ける。さらに、エッチャントを用いて不要部分を除去し、その後不要となったポジ感光性材料を剥離して、金属配線パターンを形成する(図7(b))。
【0062】
次に、ガラス基板2上にITOをスパッタリングにより製膜して、第1の透明電極層42を積層する(図7(c))。そして、ポジ感光性材料を用いて、フォトリソグラフィプロセスにより、X方向に直線状に連結された列が形成されるパターンを焼き付ける。さらに、エッチャントを用いて不要部分を除去し、その後不要となったポジ感光性材料を剥離して第1の透明電極4を形成する(図7(d))。
【0063】
次に、感光性シロキサン樹脂材料を第1の透明電極4上、及びガラス基板2上に塗工する(図7(e))。この感光性シロキサン樹脂材料の塗工は、スピンコート法、ダイコート法、スリットコート法、グラビアコート法、あるいはこれらの方法を組み合わせた塗工方式、あるいはインクジェット法を適宜選択して実施することができる。このとき、第1の絶縁層6は、膜厚がD1となるように形成する。そして、必要に応じて減圧乾燥処理した後、適当な温度でプリベークし、次いで所望のパターンのフォトマスクを介して紫外線などの電離放射線を照射して露光し露光部分を硬化させる。そして、マスクをはずして未露光部分をアルカリ現像液で現像し、必要に応じてポストベークすることによって、感光性シロキサン樹脂材料を硬化させて、第1の絶縁層6を形成する。なお、図7(e)には図示していないが、フレキシブル基板(以下、単にFPCと言う。)を接続する箇所のように、第1の絶縁層6を形成しない箇所においては、フォトリソグラフィプロセスにより感光性シロキサン樹脂材料を硬化させる工程を行う際に、該感光性シロキサン樹脂材料は取り除かれる。
【0064】
次に、第1の絶縁層6上に、ITOをスパッタリングにより製膜して、第2の透明電極層43を積層する(図7(f))。そして、ポジ感光性材料を用いて、フォトリソグラフィプロセスにより、Y方向に直線状に連結された列が形成されるパターンを焼き付ける。さらに、エッチャントを用いて不要部分を除去し、その後不要となったポジ感光性材料を剥離して第2の透明電極5を形成する(図7(g))。
【0065】
次に、感光性シロキサン樹脂材料を第2の透明電極5の上、及び第1の絶縁層6の上に塗工して、第2の絶縁層7を形成する(図7(h))。第2の絶縁層7を形成する方法は、第1の絶縁層6と同様、スピンコート法、ダイコート法、スリットコート法、グラビアコート法、あるいはこれらの方法を組み合わせた塗工方式、あるいはインクジェット法を適宜選択して実施することができる。このとき、第2の絶縁層7は、膜厚がD2となるように形成する。上記した通り、膜厚D2は、D2>D1の関係となるように形成される。そして、必要に応じて減圧乾燥処理した後、適当な温度でプリベークし、次いで所望のパターンのフォトマスクを介して紫外線などの電離放射線を照射して露光し露光部分を硬化させる。そして、マスクをはずして未露光部分をアルカリ現像液で現像し、必要に応じてポストベークすることによって、感光性シロキサン樹脂材料を硬化させて、第2の絶縁層7を形成する。なお、先に説明したのと同様、FPCを接続する箇所のように、第2の絶縁層7を形成しない箇所においては、フォトリソグラフィプロセスにより感光性シロキサン樹脂材料を硬化させる工程を行う際に、該感光性シロキサン樹脂材料は取り除かれる。
【0066】
次に、第2の絶縁層7上にOCAテープを貼付して、その上にカバーガラス8を積層して、図1に示す態様のタッチセンサパネル部材が形成される(図7(i))。
【0067】
次に、本実施の形態において図3に示す態様のタッチセンサパネル部材の製造方法について説明する。
【0068】
図3に示す態様のタッチセンサパネル部材を製造する場合には、まず透明基板としてのガラス基板2を用意する。このガラス基板2は、超純水等による界面活性処理や超音波洗浄処理によって洗浄することが好ましい。次に、図8に示すように、APCをガラス基板2の全面にスパッタリングにより製膜して、金属配線層41を積層する(図8(a))。そして、ポジ感光性材料を用いて、フォトリソグラフィプロセスにより、有効表示エリア外に金属配線パターンと電極取り出し部のパターンを焼き付ける。さらに、エッチャントを用いて不要部分を除去し、その後不要となったポジ感光性材料を剥離して、金属配線パターンを形成する(図8(b))。
【0069】
次に、ガラス基板2上にITOをスパッタリングにより製膜して、透明電極層を積層する(図8(c))。そしてポジ感光性材料を用いて、フォトリソグラフィプロセスにより、整列する複数のダイヤ形状が、X方向において独立に整列する列と、X方向に直線状に連結された列とが交互に形成されるパターンで透明電極を形成する(図8(d))。なお、ここでX方向に直線状に連結された列は第1の透明電極4となり、X方向において独立に整列して形成されている電極は第2の透明電極5となる。
【0070】
次に、感光性シロキサン樹脂材料を第1の透明電極4、第2の透明電極5及びガラス基板2上に塗工する(図8(e))。この感光性シロキサン樹脂材料の塗工は、スピンコート法、ダイコート法、スリットコート法、グラビアコート法、あるいはこれらの方法を組み合わせた塗工方式、あるいはインクジェット法を適宜選択して実施することができる。このとき、第1の絶縁層6は、膜厚がD1となるように形成する。そして、必要に応じて減圧乾燥処理した後、適当な温度でプリベークし、次いで所望のパターンのフォトマスクを介して紫外線などの電離放射線を照射して露光し露光部分を硬化させる。そして、マスクをはずして未露光部分をアルカリ現像液で現像し、必要に応じてポストベークすることによって、感光性シロキサン樹脂材料を硬化させて、第1の絶縁層6を形成する。図8(e)に示すように、この態様では、第1の絶縁層6を形成する際に、該第1の絶縁層6の上面から第1の透明電極4の上面に通じる孔が形成されている。この孔は、ブリッジ電極を接続するためのものである。なお、図8(e)には図示していないが、FPCを接続する箇所のように、第1の絶縁層6を形成しない箇所においては、フォトリソグラフィプロセスにより感光性シロキサン樹脂材料を硬化させる工程を行う際に、該感光性シロキサン樹脂材料は取り除かれる。
【0071】
次に、x方向において独立に整列する列を構成する電極と電極との間をブリッジ電極で接続する(図8(f))。図8(f)に示すように、ブリッジ電極は、コ字形に形成されており、脚部が第1の絶縁層6に形成されている孔に挿入できるように構成されている。ブリッジ電極は、先のプロセスで形成された孔に脚部を挿入し、第2の透明電極5を構成する電極同士を電気的に接続することができるように構成されている。このとき、ブリッジ電極の内側には、上記した第1の絶縁層6を構成する感光性シロキサン樹脂材料が介在するので、ブリッジ電極と第1の透明電極4との絶縁性が確保される。
【0072】
次に、感光性シロキサン樹脂材料をブリッジ電極上、及び第1の絶縁層6上に塗工して、第2の絶縁層7を形成する(図8(g))。第2の絶縁層7を形成する方法は、第1の絶縁層6と同様、スピンコート法、ダイコート法、スリットコート法、グラビアコート法、あるいはこれらの方法を組み合わせた塗工方式、あるいはインクジェット法を適宜選択して実施することができる。このとき、第2の絶縁層7は、膜厚がD2となるように形成する。上記した通り、膜厚D2は、D2>D1の関係となるように形成される。そして、必要に応じて減圧乾燥処理した後、適当な温度でプリベークし、次いで所望のパターンのフォトマスクを介して紫外線などの電離放射線を照射して露光し露光部分を硬化させる。そして、マスクをはずして未露光部分をアルカリ現像液で現像し、必要に応じてポストベークすることによって、感光性シロキサン樹脂材料を硬化させて、第2の絶縁層7を形成する。なお、先に説明したのと同様、FPCを接続する箇所のように、第2の絶縁層7を形成しない箇所においては、フォトリソグラフィプロセスにより感光性シロキサン樹脂材料を硬化させる工程を行う際に、該感光性シロキサン樹脂材料は取り除かれる。
【0073】
次に、第2の絶縁層7上にOCAテープ貼付して、その上にカバーガラス8を積層して、図3に示す態様のタッチセンサパネル部材が形成される(図8(h))。
【0074】
本実施の形態に係るタッチセンサパネル部材の製造方法によれば、感光性シロキサン樹脂材料を用いて第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7を形成したので、感光性シロキサン樹脂材料を塗工し、紫外線硬化させることのみによって、これら第1の絶縁層6及び第2の絶縁層7を形成することができる。そのため、真空装置内で行うプロセスが不要となるため、タッチセンサパネル部材の製造効率を大幅に向上させることが可能になる。
【実施例】
【0075】
(実施例1)
(下地基板の準備)
まず、透明基板としてのガラス基板(無アルカリガラス、NHテクノグラス社製、(型番:NA35))550mm×650mmを準備し、超純水を用いて界面活性剤処理し、引き続き超音波洗浄処理により洗浄した。尚、上記透明基板に、タッチセンサパネル部材が50面取りできるよう設計して以下のとおり作成し、そのうちの任意の一面を実施例1とした。
【0076】
(金属配線の製版)
外周配線部の抵抗を補助する金属配線として、APCを上記ガラス基板全面にスパッタにより200nmの厚さで製膜した。引き続き、ポジ感光性材料(ロームアンドハース社製)を用い、フォトリソグラフィプロセスにより、有効表示エリア外に金属配線パターンと電極取り出し部のパターンを焼き付けた。さらにエッチャントとしてリン酸、硝酸、酢酸系混合溶液を用い、不要部分を除去し、引き続いて不要となったポジ感光性材料を苛性ソーダで剥離して金属配線パターンを形成した。
【0077】
(第1の透明電極の製膜)
次に、金属配線が製版された上記ガラス基板上に、第1の透明電極及び第2の透明電極を形成するために、スパッタにより全面に20nmの厚さでITOを製膜した。そして、金属配線と同様のポジ感光性材料を用いてフォトリソグラフィの手法により、整列する複数のダイヤ形状が、x方向において、独立に整列する列と、x方向に直線状に連結された列とが交互に形成されるパターンで第1の透明電極及び第2の透明電極を形成した。ITOのエッチャントとしてはシュウ酸系溶液を用いた。尚、本実施例においてガラス基板上に形成する第1の透明電極、第2の透明電極、第1の絶縁層及び第2の絶縁層は、図3で示す積層態様を採用した。なお、x方向に直線状に連結された列の電極は第1の透明電極4となり、x方向において独立に整列して形成されている電極は第2の透明電極5となる。
【0078】
(第1の絶縁層の製膜)
特許第3821165号公報の実施例2記載(同公報段落0125)の手法、即ち「テトラエトキシシラン317.9gとメチルトリエトキシシラン247.9gとをジエチレングリコールジメチルエーテル1116.7gに溶解させた溶液中に、0.644重量%に調製した硝酸167.5gを攪拌下で30分間かけて滴下した。滴下終了後3時間反応させた後、減圧下、温浴中で生成エタノールおよびジエチレングリコールジメチルエーテルの一部を留去して、ポリシロキサン溶液1077.0gを得た。このポリシロキサン溶液525.1gにジエチレングリコールジメチルエーテル53.0g、2.38重量%に調製したテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液(pH3.6)及び水3.0gを添加し、室温(25℃)で30分間攪拌溶解して放射線硬化性組成物用ポリシロキサン溶液を得た。GPC法によりポリシロキサンの重量平均分子量を測定すると、830であった。この放射線硬化性組成物用ポリシロキサン溶液10.0gに光酸発生剤(PAI−1001、みどり化学社製)0.193gを配合し、放射線硬化性組成物を調製した。なお、(a)成分の使用量は放射線硬化性組成物総量に対して15重量%であり、(b)成分の使用量は放射線硬化性組成物総量に対して1.9重量%であり、(d)成分の使用量は放射線硬化性組成物総量に対して0.075重量%であった。」なる記載に倣い、パターニングが可能な感光性シロキサン樹脂材料を調製した。
【0079】
上記感光性シロキサン樹脂材料を、上述のとおり製膜した第1の透明電極及び第2の透明電極を備えるガラス透明基板上であって、該第1の透明電極及び第2の透明電極の面に直接に、スピンコート法により塗工して塗膜を形成した。引き続き減圧乾燥装置にて20Paまで減圧して溶剤を部分的に除去し、さらに90℃のホットプレート上で45秒間加熱(プリベーク)して、完全に溶剤成分を除去した。基板を室温まで冷却した後、後工程で形成予定のブリッジ電極を接続するためのコンタクトホールを設置したパターンのフォトマスクを適用し、プロキシアライナーにより365nmで200mJの露光量で露光処理した。
上述のとおり露光処理が終了した塗膜面を、現像液であるテトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38wt%(TMAH、東京応化工業社製:型番NMD−3)でディップ現像し、未露光部分を除去してパターンを形成した。さらに露光後の基板は加熱炉中、大気雰囲気下で420℃で1時間加熱(ポストベーク)して硬化させ、膜厚0.3μmのパターニングされた第1の絶縁層を、ガラス基板、第1の透明電極及び第2の透明電極上に形成した。
【0080】
(ブリッジ電極の形成)
さらに、上記第1の絶縁層上から、該第1の絶縁層に形成されたコンタクトホールにコ字形の電極部材を差し込んで、第2の透明電極同士を電気的に接続した。第2の透明電極同士を接続したコ字形の電極部材をブリッジ電極とした。
【0081】
(第2の絶縁層の製膜)
第1の絶縁層を形成する際に調製した感光性シロキサン樹脂層と同様のものを用い、最表面層用のパターン向けのフォトマスクに変更した以外は、該第1の絶縁層と同様の製膜手法により、第1の透明電極及び第2の透明電極の面上に厚さ1.0μmの第2の絶縁層を製膜した。
【0082】
センシング動作評価:
実施例1を用いて容量センシング評価を実施した。センシング評価は、タッチセンサパネル部材をFPCと接続し、さらにドライバを介してFPCを静電容量センサ(Cypress社製PSoC(型番:CY3240−I2USB))と接続した。そして、指を該タッチセンサパネル部材に接触させたときの静電容量の変化を図ることにより行った。本動作評価の結果として、静電容量の変化が検出されて接触した位置を検出することができればセンシング動作結果は良好、接触した位置が検出されなければセンシング動作結果は不良とした。このような動作評価を行った結果、実施例1に係るタッチセンサパネル部材のセンシング動作結果は良好であることが確認された。
【0083】
(実施例2)
第1絶縁層の厚さを0.3μmとし、第2の絶縁層の厚さを2.0μmとした以外は実施例1と同様の材料、手法を用いてタッチセンサパネル部材を製造し、これを実施例2とした。そして、実施例2を用い、センシング動作評価を行った。その結果、実施例2に係るタッチセンサパネル部材のセンシング動作結果は良好であることが確認された。
【0084】
(比較例1)
比較例1では、実施例1における第1の絶縁層の厚さを0.3μmとし、第2の絶縁層の厚さを0.3μmとした以外は実施例1と同様の材料、手法を用いてタッチセンサパネル部材を製造し、実施例1と同様にセンシング動作評価を行った。その結果、比較例1に係るタッチセンサパネル部材のセンシング動作結果は、絶縁不良に起因した動作不良を起こし、センシングできず、不良であることが確認された。
【0085】
上述の通り得られた実施例1、2及び比較例1の結果を表1にまとめて示す。
【0086】
表1に示すとおり、実施例1、2では、タッチセンサパネル部材として良好な動作を示していることが確認された。一方、比較例1では十分な絶縁性が確保できず、センシング動作は不良であることが確認された。
【0087】
以上の結果から、本発明のタッチセンサパネル部材では、高耐熱性の感光性シロキサン樹脂を適用する事で、有機EL用のタッチセンサパネル部材を低スループットで形成可能であり、安価で絶縁信頼性に優れたパネルを提供できる事が確認された。
【0088】
【表1】

【符号の説明】
【0089】
1,11,32 タッチセンサパネル部材
2 透明基板
3 取り出し電極
4 第1の透明電極
5 第2の透明電極
6 第1の絶縁層
7 第2の絶縁層
8 カバーガラス
9 ブリッジ電極
33 透明基板
34 有機EL素子
35 有機EL用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に直接形成された第1の透明電極と、
前記透明基板上に直接又は間接に、前記第1の透明電極と直交する方向に形成された第2の透明電極と、
前記第1の透明電極と第2の透明電極とを電気的に絶縁する絶縁層と、を備え、
前記絶縁層は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層上に積層された第2の絶縁層とから構成されており、
これら第1の絶縁層と第2の絶縁層は、感光性シロキサン樹脂により形成され、前記第2の絶縁層の厚さが前記第1の絶縁層よりも厚くなるように形成されていることを特徴とするタッチセンサパネル部材。
【請求項2】
前記第2の透明電極は、前記透明基板上に直接形成されており、
第1の透明電極と第2の透明電極のいずれか一方は、他方の透明電極を跨ぐブリッジ電極を有し、
前記ブリッジ電極のうち、前記他方の透明電極と交差する部分が前記第1の絶縁層上に位置することを特徴とする請求項1記載のタッチセンサパネル部材。
【請求項3】
前記第2の透明電極は、前記第1の絶縁層上に形成されていることを特徴とする請求項1記載のタッチセンサパネル部材。
【請求項4】
前記第1の絶縁層と第2の絶縁層は、少なくとも2.5MV/cmの耐電圧性能を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のタッチセンサパネル部材。
【請求項5】
上記請求項1〜4のいずれかに記載のタッチセンサパネル部材が組み合わされている表示装置であって、
前記タッチセンサパネル部材は、該タッチセンサパネルの透明基板が前記表示装置の基板ともなるように組み合わされていることを特徴とする表示装置。
【請求項6】
第1の透明電極と第2の透明電極によって物体の接触する位置を検出するタッチセンサパネル部材の製造方法であって、
透明基板上に少なくとも第1の透明電極を直接形成し、
感光性シロキサン樹脂により形成された第1の絶縁層を形成し、
前記シロキサン樹脂により形成された第2の絶縁層を、前記第2の絶縁層の厚さが前記第1の絶縁層よりも厚くなるような厚さで形成することを特徴とするタッチセンサパネル部材の製造方法。
【請求項7】
前記第2の透明電極を前記第1の絶縁層上に形成することを特徴とする請求項6記載のタッチセンサパネル部材の製造方法。
【請求項8】
前記第2の透明電極を前記第1の透明電極と共に前記透明基板上に形成し、
前記第1の絶縁層を形成した後に、前記第1の透明電極又は第2の透明電極のいずれか一方に対して、他方の透明電極を跨ぐブリッジ電極を接続することを特徴とする請求項6記載のタッチセンサパネル部材の製造方法。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−20529(P2013−20529A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154638(P2011−154638)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】