説明

タッチパネルおよびその入力判定方法

【課題】
お手つきや非操作入力を高精度に判定することができるタッチパネルおよびその入力判定方法を提供する。
【解決手段】
対向する反射電極15と検出電極18とからなる電極対をマトリックス状に配置してなるタッチパネル1であって、タッチパネル1は対向して配置されたタッチ側電極板3と非タッチ側電極板4とを有し、タッチ側電極板3には反射電極15が取り付けられ、非タッチ側電極板4には検出電極18が取り付けられかつ駆動電極17が取り付けられ、駆動電極17に接続する高周波信号源と検出電極18に接続する検出部23とを有し、タッチ側電極板3が押し圧力の加除によって非タッチ側電極板4に対して撓みまたは変位するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はタッチパネルおよびタッチパネルにおける入力判定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パネル状のキーボードに手指を接触させて入力を行うタッチパネルは、パソコン、現金取り扱い機、券売機等において広く使用されている。
【0003】
タッチパネルとしては抵抗膜式や静電容量式等の各種のものが開発されている。
例えば抵抗膜式タッチパネルは図6に示すように間隔をドットスペーサ104によって保っている抵抗膜シート102、103を備えていて、一対の抵抗膜シート102、103は手指等による入力がなされない限りドットスペーサによって隔てられているが、入力操作があると抵抗膜シートが接触して、電圧変化が生じ、入力が行われる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−54977
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらのタッチパネルについては多くの開発がなされて来たが、技術的開発の主要点としては誤入力を判定する技術である。タッチパネルを手掌で押したときに多点入力の状態になってアドレスが特定できないことを防止する、いわゆるお手つき防止技術やタッチパネル上に物を置いた場合のように入力操作でない原因でタッチパネルが押された場合に、それを入力操作ではない非操作入力と判定する技術についての開発が進められているが現在まで満足すべき結果が得られておらず、タッチパネルの性能を落とす要因の一つとなっている。
【0006】
この発明は上記の如き事情に鑑みてなされたものであって、お手つきや非操作入力を高精度に判定することができるタッチパネルおよびその入力判定方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的に対応して、この発明のタッチパネルは、対向する反射電極と検出電極とからなる電極対をマトリックス状に配置してなるタッチパネルであって、前記タッチパネルは対向して配置されたタッチ側電極板と非タッチ側電極板とを有し、前記タッチ側電極板には前記反射電極が取り付けられ、前記非タッチ側電極板には前記検出電極が取り付けられかつ駆動電極が取り付けられ、前記駆動電極に接続する高周波信号源と前記検出電極に接続する受信部とを有し、前記タッチ側電極板が押し圧力の加除によって非タッチ側電極板に対して変位するように構成されたことを特徴としている。
【0008】
またこの発明のタッチパネルの入力判定方法は、対向する反射電極と検出電極とからなる電極対をマトリックス状に配置してなるタッチパネルであって、前記タッチパネルは対向して配置されたタッチ側電極板と非タッチ側電極板とを有し、前記タッチ側電極板には前記反射電極が取り付けられ、前記非タッチ側電極板には前記検出電極が取り付けられかつ駆動電極が取り付けられ、前記駆動電極に接続する高周波信号源と前記検出電極に接続する受信部とを有し、前記タッチ側電極板が押し圧力の加除によって非タッチ側電極板に対して変位するように構成されたタッチパネルにおいて、
前記タッチ側電極板に接近したもしくは接触した導電体を通る高周波電流の流出を検出して前記マトリックスのアドレスを特定しかつ前記反射電極と前記検出電極との間の静電容量の変化により前記タッチ側電極板の押し込みを判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
この発明のタッチパネルでは、多数のスイッチ群を構成する個々のスイッチ素子は、非接触方式となっている。これはスイッチに関して、大きな課題とされている接触不良や経年劣化の問題を一挙に解決するものである。
【0010】
また個々のスイッチ素子は、高周波誘導方式を採用している。この方式により、スイッチ回路のON/OFF動作とアドレスの決定すなわちスイッチ位置の選択が別個に出来るため、スイッチの点数にかかわらずすべてのON/OFF機構を共有できる(ON/OFF機構は1個だけですむ)。これは本発明を可能ならしめるための必須条件でもある。具体的には、多数のマトリックススイッチ群の中で、目的とするスイッチの位置に指を近づけるだけで其のスイッチが選択され、指が触れてからさらにこれを押し下げれば、全てのスイッチ群に対して、ONの条件が成立するが、選択されていない他のスイッチに対しては、すべて無効となるため、目的のスイッチのみがONと判断され、タッチパネルで課題とされている“お手つき”による誤動作を防止する事が出来る。
【0011】
さらに、目的とするスイッチの位置の決定がされないまま、タッチパネルが押し下げられれば、それはタッチパネルを手指で押し下げたのではなく、タッチパネルの上に荷物などが置かれたことを現す信号となり、信号処理が無効にされる。
【0012】
またタッチパネルのアドレスの特定とタッチパネルの押し下げの動作は検出装置で検出される高周波電流の連続的な変化で判定することができるので、1個のメモリー内の積算結果によって判定することができるので、判定のための演算量を少なくすることができ、メモリーの容量も小さくてよい。
【0013】
請求項1に記載した発明によれば、タッチ側電極板に対する手指の接近、接触の情報とタッチ側電極板の電極と非タッチ側電極板の電極との間の静電容量の情報とが得られるので、アドレスの特定と意識的なタッチ側電極板の押し込みを判定することができ、誤入力を防ぐことができる。
【0014】
請求項2に記載した発明によれば、タッチ側電極板と非タッチ側電極板との間には周辺部において弾性材を介在させるので、タッチ側電極板の動作を円滑、高精度にし、かつ透明性を損うことがないので高精度のタッチパネルを得ることができる。
【0015】
請求項3に記載した発明によれば、高周波電流の流出を検出することによってアドレスの特定が可能であり、また静電容量の変化を検出して、タッチ側パネルの押し込みを検出して誤入力を容易に防ぐことができる。
【0016】
請求項4に記載した発明によれば、タッチ側電極板に接近したもしくは接触した導体を通る高周波電流の流出を検出してマトリックスのアドレスの特定を判定し、反射電極と検出電極との間の静電容量の変化によりタッチ側電極板の押し込みを判定するので入力操作の判定を迅速にすることができる。
【0017】
請求項5に記載した発明によれば、タッチ側電極板へのアドレスの判定と押し込みを検出電極で検出される信号の変化特性から判定するので、迅速な判定が可能である。
【0018】
請求項6に記載した発明によればタッチ側電極板へのアドレスの判定と押し下げを検出電極からの高周波電流の積算結果で判定するので、迅速な判定が可能であり、メモリーの容量も小さくてよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】タッチパネルの平面説明図
【図2】タッチパネルの部分断面説明図
【図3】反射電極と入出力電極を示す斜視説明図
【図4】タッチパネルにおける入力時の等価回路を示す回路図
【図5】電圧の変化を示すグラフ
【図6】従来の抵抗膜式タッチパネルを示す断面説明図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の一実施態様を図面を参照しつつ説明する。
図1から図3において1はタッチ入力装置用のタッチパネルである。タッチパネル1は対向板体2を有する。対向板体2はタッチ側電極板3及び非タッチ側電極板4を一定の間隔で対向させて配置して構成されている。タッチ側電極板3は平板9に反射電極15を設けて構成され、非タッチ側電極板4は平板10に入出力電極16と駆動電極17とを設けて構成されている。この実施態様では2枚の板体として平板9、10を使用する。すなわち、対向板体2は2枚の平板9、及び10から成っている。平板9及び10は対向して配置され平板9は平板10に対して対向する方向に撓みまたは変位が可能である。平板2と平板4の間隔は周辺部分において弾性材製の枠状のスペーサ6によって保たれる。
【0021】
図2に示すように対向板体2の2枚の平板9、10のうち、一方の平板9の内面にはマトリックス24状に配置された多数の反射電極15が配設されている。それぞれの反射電極15に対応して、ほぼ対向した位置での他方の平板10の内面に入出力電極16が配置されている。この入出力電極16は駆動電極17と検出電極18とを組み合わせたものである。駆動電極17のうちマトリックスの同じ行または列上に配置されているもの同士はその行または列に接続され、検出電極18のうちの同じ列または行に配置されているもの同士ははその列また行に接続されている。
【0022】
駆動電極17には高周波信号源22が接続し、検出電極18には検出部23が接続する。
【0023】
対向板体2の2枚の平板9、10はガラスまたはプラスチック等の透明な材料で構成され、駆動電極17及び検出電極18も透明な材料で構成される。一例として、反射電極15、駆動電極17、検出電極18は酸化インジウムをスパッタリングして形成することができる。他方の平板10の行方向及び列方向に張りめぐらされる入出力用電極16をシールドするために、反射電極15が設けられている一方の平板9では、反射電極15を配置する部分を窓状に除外して、他の残りの全面にシールドが施される。
【0024】
他方の平板10の各行及び列の共通接続線は外部に引き出され、高周波信号源22及び検出部23に接続される。
【0025】
このように構成されたタッチパネル1の作用は次の通りである。
タッチ入力操作として夫々のタッチ側電極板3の反射電極15に手指が接近することにより、駆動電極17から反射電極15に達した高周波電流の一部が、手指21を通してアースに流出するため、等価回路は図4(b)で示すようになりその位置の検出電極18の受信信号レベルが負の方向に変化して(図5(c)の1〜5の変化)、これによりまずX、Yの座標位置を特定し、手指がタッチ側電極板3に触れた後、更にタッチ側電極板3を押下げる事により反射電極15が非タッチ側電極板4の入出力電極16に接近して、等価回路では図4(c)で示すようになり、駆動電極17から検出電極18への高周波電流が増大するために生じる信号レベルの正の方向の変化(図5(c)の5〜7の変化)を測定し、その電極対の座標位置についてのみON動作を特定する。この二段階の特定動作により、タッチパネルで起こるいわゆる「お手つき」の誤動作を防止することが出来る。
【0026】
このように構成されたタッチパネル1の動作における等価回路と高周波電流の変化は次の通りである。
タッチ入力操作として夫々のタッチ側電極板3の反射電極15に指が接近することにより、図4(a)、(b)、(c)に示すように高周波電流Iの一部が手指のインピーダンスZを通じてIとしてアースに流出し、更に残りはIとして検出器に流入する。Zは手指が反射電極から離れている時は∞としパネルにタッチした時点でほぼ0になると考えるとI、Iは次の様に表せる。
(1)Zが∞の時 I=0
=(1/2)jωce=1
(2)Zが0の時 I=jωCe
(指がタッチ直後) I=(1/2)jωCe−I=−(1/2)I
(3)指が押圧Pで押し込む I=KPjωCe
=−(1/2)I+KPjωCe
(4)指を戻して離す I=0
=(1/2)jωCe−I
(1)に同じ
K:単位押圧当たりのC増加率
P:指圧
の変化の模様を図5に模式的に示す。この1サイクルが終了した時点で押されたタッチパネルのアドレスと確実に押されたことの確認を専用のワンチップマイコンで行う。この様な変化はタッチパネル全体を形成するマトリックス全てのポイントのいずれかで起こる可能性があるので順次繰り返してチェックしている必要がある。従って各ポイントでの波形は出来るだけ少ないサンプリング数で目的を達することが求められる。そのため全ての波形をそのまま読み込んでいたのでは到底間に合わない。そこで次のような工夫を行った。図5に示すように先ずこの原波形を近似的に正弦波とみなすとこれは
y=−Sinxとなる(図5(b))。
マトリックス各点のサンプリング値を夫々に対応するメモリーに加算していくと入力の原波形の積分となり次式で表される(図5(c))
∫ydy=∫(−Sinx)dx=Cosx−1
この図を用いて0〜πまでの区間の変化(1〜5)で押されようとしているアドレスを特定し、(3/2)πまでの区間の変化(5〜7)でスイッチが押されたことを判断する。この場合押されようとしているアドレス以外は変化が無いので読み込みを中止してこのアドレスのみの読み込みに集中する。これは読み込み時間を節約しようとする手段でありタッチパネルが多点の場合には高応答性が求められるので必要なことである。このようにアドレスの特定と押されたことの判断を別々に行うことで大きな問題となっている「お手つき」を防止できる。例えば手のひらをタッチパネル上に載せてしまった場合は先ず前述のアドレスを特定するための変化が複数箇所に現れるのでこの場合は「お手つき」としての処理を行うことが出来る。
またタッチパネル上に物をおいた場合には前述の手指のインピーダンスZに相当する値が∞となっているため高周波誘導による変化は起こらず何も認識されないためこれは無視される。この方式の更に大きな長所はこれら全ての動作が手指を通じての高周波誘導によって行われ接点等の機構を介さないため接触不良などの誤動作を全く排除できることである。
【0027】
このようにこの発明によればお手つきや非操作入力を高精度に判定することができるタッチパネルおよびその入力判定方法を得ることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 タッチパネル
2 対向板体
3 タッチ側電極板
4 非タッチ側電極板
6 スペーサ
9 平板
10 平板
15 反射電極
16 入力電極
17 駆動電極
18 検出電極
21 手指
22 高周波信号源
23 検出部
24 マトリックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する反射電極と検出電極とからなる電極対をマトリックス状に配置してなるタッチパネルであって、前記タッチパネルは対向して配置されたタッチ側電極板と非タッチ側電極板とを有し、前記タッチ側電極板には前記反射電極が取り付けられ、前記非タッチ側電極板には前記検出電極が取り付けられかつ駆動電極が取り付けられ、前記駆動電極に接続する高周波信号源と前記検出電極に接続する検出部とを有し、前記タッチ側電極板が押し圧力の加除によって非タッチ側電極板に対して変位するように構成されたことを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記一方の電極板と前記他方の電極板は周辺部分で弾性材からなるスペーサで相互に相対変位可能に支持されていることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記タッチ側電極板に接近したもしくは接触した導電体を通る高周波電流の流出を検出可能であり、かつ前記反射電極と前記検出電極との間の静電容量の変化を検出可能であることを特徴とする請求項1記載のタッチパネル。
【請求項4】
マトリックス状に反射電極が配置されているタッチ側電極板と前記反射電極に対応する位置に駆動電極と検出電極を有する非タッチ側電極板とを対向して配置し、前記駆動電極に接続する高周波信号源と前記検出電極に接続する検出部とを有し、前記タッチ側電極板が押し圧力の加除によって非タッチ側電極板に対して変位するように構成されたタッチパネルにおいて、
前記タッチ側電極板に接近したもしくは接触した導電体を通る高周波電流の流出を検出して前記マトリックスのアドレスを特定しかつ前記反射電極と前記検出電極との間の静電容量の変化により前記タッチ側電極板の押し込みを判定することを特徴とするタッチパネルにおける入力判定方法
【請求項5】
前記検出電極で検出される信号の変化特性から前記マトリックスのアドレス特定および前記タッチ側電極板の押し下げを判定することを特徴とする請求項4記載のタッチパネルにおける入力判定方法
【請求項6】
前記検出電極で検出される高周波電流を積算したメモリー内の積算結果によって前記アドレスの特定と前記タッチ側電極板の押し下げの動作を判定することを特徴とする請求項4記載のタッチパネル

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43029(P2012−43029A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181284(P2010−181284)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(398043746)株式会社横浜システム研究所 (2)
【Fターム(参考)】