説明

タッチパネル入力装置

【課題】 電極面積等が小さくなっても検知精度が極端に低下しないように改良する。
【構成】 パネル10の表面側にX列電極20が、裏面にY列電極30(他方電極)が平面的に位置ずれして配設され、パネル10の表面上におけるX列電極20とY列電極30との間の付近に指が触れられたか否かを検知する構成になっており、Y列電極30の面積をX列電極20に比べて大きくする方法、パネル10及びコート40の材質や厚みを選定する方法により、静電容量Cf1と静電容量Cf2とが同一となるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパネルの表面上の所定位置に指がタッチされたか否かを検知する静電容量型のタッチパネル入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のタッチパネル入力装置は、パネルとしてガラスやPEN(PolyethyleneNaphthalate)等を重ね合わせたものが使用されることが多く、パネルの内部の表面側・裏面側にX列電極・Y列電極が平面的に位置ずれして配設され、パネルの表面上におけるX列電極とY列電極との間の付近に指が触れられたか否かを検知する基本構成になっていた(例えば、特許文献1等)。
【特許文献1】特開平8−44493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来例による場合、高分解能の要請に伴ってX列電極・Y列電極の面積やピッチ間隔が小さくなると、指を触れた際に出力される静電容量の変化量が小さく、検知精度が極端に低下する。そうすると、出力信号に対して増幅やフィルタ等の信号処理を施すことが必要になり、その分だけコスト高になる。
【0004】
本発明は上記した背景の下で創作されたものであって、電極面積等が小さくなっても検知精度が極端に低下しないように改良したタッチパネル入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るタッチパネル入力装置は、パネルの表面側に一方電極が、裏面側に他方電極が平面的に位置ずれして配設され、パネルの表面上における一方電極と他方電極との間の付近に指が触れられたか否かを検知する装置であって、一方電極、他方電極と指との間にそれぞれ発生する静電容量を同一レベルにするために、他方電極が一方電極に比べて大きくされている。又は、パネルの材質及び/又は厚みが選定されている。
【0006】
好ましくは、パネルとして1枚の透明シートを使用し、一方電極及び他方電極として透明電極を使用することが望ましい。この場合、パネルの表面上に一方電極を設け、裏面上に他方電極を設け、必要に応じて、パネルの表面上を透明な素材でハードコート処理すると良い。また、パネルは一次曲面に沿って曲げ可能にするために柔軟性を有した基材で構成すると良い。
【発明の効果】
【0007】
本発明の請求項1又は2に係るタッチパネル入力装置による場合、指を触れた際の一方電極、他方電極と指との間に各々発生する静電容量が同一になるように構成されているので、指を触れた際に出力される静電容量の変化量が大きく、高分解能の要請に伴って電極面積やピッチ間隔が小さくなっても検知精度が極端に低下することがない。よって、増幅やフィルタ等の信号処理を施すことが不要になり、低コスト化を図ることが可能になる。
【0008】
本発明の請求項3、4、5又は6に係るタッチパネル入力装置による場合、パネルとして1枚の透明板等を使用した構成となっているので、透明性が高い上にニュートンリングが発生せず、曲げも容易であり、低コスト及び軽量化を図ることも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のタッチパネル入力装置の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は同装置の模式的正面図、図2は同装置の模式的側面図、図3は指をタッチした際にX列電極、Y列電極との間に各々発生する静電容量を併せて示す同装置の模式的断面図である。
【0010】
ここに掲げるタッチパネル入力装置は、フレキシブルディスプレイパネルに使用される静電容量型の透明のタッチセンサであって、パネル10の表面側にX列電極20(一方電極)が、裏面にY列電極30(他方電極)が平面的に位置ずれして配設され、パネル10の表面上におけるX列電極20とY列電極30との間の付近に指が触れられたか否かを検知する構成になっている。
【0011】
パネル10については、透明であり且つ一次曲面に沿って曲げ可能にするために透過性及び柔軟性を有した基材で構成されている。具体的には、従来のように複数枚の透明板を貼り合わせたものを使用せず、1枚の透明板を使用し、材質はガラス、PET、PEN又はPC等、厚みは数μm〜数mmにしている。
【0012】
同装置のタッチ面であるパネル10の表面には、その耐久性を高めるために透明な素材、例えばUV系透明ハードコートを用いてハードコート処理されている。これを図中コート40として示している。コート40によりパネル10の表面の全てが覆われている。
【0013】
X列電極20及びY列電極30については、パネル10の表面及び裏面に蒸着又は塗布された透明電極であり、図1中に示されているように4列(I〜IV)×2行(i〜ii)のマトリックス状に配置されている。その材質はITO(酸化インジウム+酸化錫)、IZO(酸化インジウム+酸化亜鉛)、AZO(AIドープ酸化亜鉛)、導電性高分子(PEDOT)又はPSS等である。
【0014】
X列電極20、Y列電極30の電極リード21、31については、パネル10の裏面の縁部に取り付けられた図外のコネクタに接続されている。
【0015】
同コネクタには図外のタッチパネルの信号処理装置が電気接続される。同装置により、X列電極20とY列電極30の入出力信号を時分割で制御する一方、X列電極20とY列電極30との間の静電容量の変化量を測定し、この結果、パネル10の表面上に触れた際の指の位置を特定するようになっている。
【0016】
例えば、パネル10の表面上の図1中に併せて示すア又はイの辺りを指で触れると、図3に示すようにI 列のX列電極20と指との間に静電容量Cf1が、i 行のY列電極30と指との間に静電容量Cf2が各々発生し、これに伴って、I 列のX列電極20とi 行のY列電極30との間の静電容量が他に比べて高くなり、この結果、指の位置が特定されるようになっている。
【0017】
本装置において最も特徴的であるのは、静電容量Cf1と静電容量Cf2とが同一となるように構成されている点である。具体的には、(a)Y列電極30の面積をX列電極20に比べて大きくする方法、(b)パネル10及びコート40の材質や厚みを選定する方法により実現している。
【0018】
(a)の方法においては、Y列電極30の面積を大きくすると、これに応じて静電容量Cf2が大きくなる。(b)の方法においては、パネル10、コート40の誘電率ε1、ε2を大きくし、パネル10、コート40の厚みt1、t2を小さくすると、静電容量Cf2が大きくなる。このような方法又はこれらを組み合わせることにより、静電容量Cf1と静電容量Cf2とを同一にすると良い。
【0019】
このように静電容量Cf1と静電容量Cf2とが同一となるように構成されていることから、従来例にによる場合に比べてパネル10の表面を指で触った際にX列電極20とY列電極30との間に発生する静電容量の変化量が大きくなる。これは、X列電極20、指、Y列電極30から構成される直列回路の容量値が静電容量Cf1と静電容量Cf2とが同一であるときに最大になることに基づいている。
【0020】
この点、従来例による場合、静電容量Cf1に比べて静電容量Cf2が小さく、高分解能の要請に伴って、X列電極20とY列電極30の面積やピッチ間隔が小さくなると、両者の差が益々大きくなり、検知精度が極端に低下する大きな原因になっていた。
【0021】
これに対して、本装置の場合、X列電極20とY列電極30の面積やピッチ間隔が小さくなっても、パネル10の表面を指で触った際にX列電極20とY列電極30との間に発生する静電容量の変化量が依然として大きく、検知精度が極端に低下しない。よって、従来例による場合とは異なり、タッチパネルの信号処理装置において、増幅やフィルタ等の信号処理を施すことが不要になり、この点で低コスト化を図ることが可能になる。
【0022】
また、パネル10として1枚の透明板を使用してるいることから、透明性が高い上にニュートンリングが発生せず、曲げも容易であり、低コスト化及び軽量化を図ることも可能になる。
【0023】
なお、本発明に係るタッチパネル入力装置は、携帯電話タッチパネル、NAVI用タッチパネル、ATMタッチパネル、音楽携帯用タッチパネル等にも当然に適用可能であり、パネルの表面側に一方電極が、裏面側に他方電極が平面的に位置ずれして配設され、パネルの表面上における一方電極と他方電極との間の付近に指が触れられたか否かを検知する構成である限り、パネルの材質、枚数、電極の形状等については本実施形態に限定されない。また、耐久性を考慮する必要がなければ、パネルの表面上のコーティングを省略することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るタッチパネル入力装置の実施の形態を説明するための図であって、同装置の模式的正面図である。
【図2】同装置の模式的側面図である。
【図3】指をタッチした際にX列電極、Y列電極との間に各々発生する静電容量を併せて示す同装置の模式的断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 パネル
20 X列電極
30 Y列電極
40 コート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルの表面側に一方電極が、裏面側に他方電極が平面的に位置ずれして配設され、パネルの表面上における一方電極と他方電極との間の付近に指が触れられたか否かを検知する静電容量型のタッチパネル入力装置において、一方電極、他方電極と指との間にそれぞれ発生する静電容量を同一レベルにするために、他方電極が一方電極に比べて大きくされていることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項2】
パネルの表面側に一方電極が、裏面側に他方電極が平面的に位置ずれして配設され、パネルの表面上における一方電極と他方電極との間の付近に指が触れられたか否かを検知する静電容量型のタッチパネル入力装置において、一方電極、他方電極と指との間にそれぞれ発生する静電容量を同一レベルにするために、パネルの材質及び/又は厚みが選定されていることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のタッチパネル入力装置において、パネルとして1枚の透明板が使用され、一方電極及び他方電極として透明電極が使用されていることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項4】
請求項3記載のタッチパネル入力装置において、パネルの表面上に一方電極が設けられており、裏面上に他方電極が設けられていることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項5】
請求項4記載のタッチパネル入力装置において、パネルの表面上が透明な素材でハードコート処理されていることを特徴とするタッチパネル入力装置。
【請求項6】
請求項3記載のタッチパネル入力装置において、パネルは一次曲面に沿って曲げ可能にするために柔軟性を有した基材で構成されていることを特徴とするタッチパネル入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−97283(P2008−97283A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−277808(P2006−277808)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】