説明

タッチパネル座標指定方法およびタッチパネル座標指定装置

【課題】画面の枠近傍や細かい表示画面において、指だけでもカーソル指定座標を容易に指定できるタッチパネルの座標指定方法を提供する。
【解決手段】座標指定方法は、表示部4の表示画面上に配置されたタッチパネル1の座標をポインティング部3で指定するタッチパネル座標指定方法において、ポインティング部3が最初に押したタッチパネル位置の下に不動支点4aの図形を描く不動支点表示工程と、ポインティング部3がタッチパネル1とのタッチ状態を保って押す位置を移動させたときの現在タッチ位置の前記不動支点4aに対する方向と反対方向位置にカーソル図形4bを描くカーソル表示工程と、現在のカーソル図形4bが示す座標でパネル座標指定工程により実行される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はタッチパネルに表示された項目を座標で指定するときの座標指定方法および座標指定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯情報機器やナビゲーション機器等では、メニュー項目の指定をタッチパネル座標指定で行うものが多い。このような、タッチパネル座標指定では指先で直接画面を触れるか、スタイラスペンのような専用のペンを用いて行われている。
【0003】
しかし、タッチパネルの画面上を指先で位置指定する場合には、細かな位置指定が困難となることが多い。また、細かい画像上の位置を指定する場合の他、画面の枠の近傍を指定するときに指が枠に遮られて任意の位置を指定しにくくなることがある。
【0004】
その場合、スタイラスペンを使用するとよいが、一々本体等に収容されているスタイラスペンを取り出さなければならない。また、ナビゲーション機器のようにスタイラスペンを備えてないものもある。
【0005】
指先でタッチパネルの画面の位置指定が容易に行える方法として特開平5−298025号公報に開示された情報処理装置は、タッチパネル上に特定の領域を設け、この領域を指でこすることによりカーソル移動方向および移動量を決定し、カーソル位置の微調整が可能となる。なお、最初にタッチパネルがタッチされると、その位置にカーソルを表示すると共に前記特定の領域を表示する。
【0006】
次に特定の領域がタッチされた場合は、指が動かされた方向に微調整倍率でカーソルが移動される。この方法によると、画面の枠近傍等を細かくカーソル位置を移動させることができるが、特定の領域を表示するために、タッチパネルの画面の表示が制限される。また、最初にこれを利用する人は取扱説明書を読んだり試行錯誤して利用方法を理解しなければならない。
【0007】
特開平11−24841号公報に開示された情報処理装置では、タッチパネルのタッチ位置を基端とし、所定方向に延びる矢印の先端をカーソル指定座標とし、前記所定方向はタッチ位置のタッチパネルの前もって決定されているエリアで決定される。
【0008】
この情報処理装置では、画面の枠近傍にカーソル指定座標を容易に指定できるが、最初にこれを利用する人はタッチ位置とカーソル矢印が延びる方向との関係が分かりにくく、利用しにくいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−298025号公報、段落0008〜段落0021および図4
【特許文献2】特開平11−24841号公報、段落0039〜段落0041および図2〜図12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、画面の枠近傍や細かい表示画面において、指だけでもカーソル指定座標を容易に指定できる座標指定方法および座標指定装置を提供することにある。
【0011】
この発明の他の目的は、最初にこれを使用する人でも、使用方法を直ちに理解することができる座標指定方法および座標指定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のタッチパネル座標指定方法は、表示手段の表示画面上に配置されたタッチパネルの座標をポインティング手段で指定するタッチパネル座標指定方法において、前記ポインティング手段が最初に押したタッチパネル位置の下に不動支点の図形を描く不動支点表示工程と、前記ポインティング手段がタッチパネルとのタッチ状態を保って押す位置を移動させたときの現在タッチ位置の前記不動支点に対する方向と反対方向位置にカーソル図形を描くカーソル表示工程と、現在のカーソル図形が示す座標でパネル座標を指定する座標指定工程とを含むものである。
【0013】
また、前記タッチパネル座標指定方法において、前記座標指定工程は前記ポインティング手段が前記タッチパネルから離されたときのカーソル図形上のタッチパネル座標を指定座標とするものである。
【0014】
また、前記各タッチパネル座標指定方法において、前記不動支点とカーソル図形上のタッチパネル座標との距離と前記不動支点と前記現在タッチ位置との距離との比を一定とするものである。
【0015】
また、前記各タッチパネル座標指定方法において、前記不動支点と前記現在タッチ位置との距離が所定値を越えたときに前記不動支点を無効として不動支点の図形を消去するものである。
【0016】
さらに、本発明のタッチパネル座標指定装置は、表示手段の表示画面上に配置されたタッチパネルの座標をポインティング手段で指定するタッチパネル座標指定装置において、前記ポインティング手段が最初に押したタッチパネル位置の下に不動支点の図形を描く不動支点表示手段と、前記ポインティング手段がタッチパネルとのタッチ状態を保って押す位置を移動させたときの現在タッチ位置の前記不動支点に対する方向と反対方向位置にカーソル図形を描くカーソル表示手段と、現在のカーソル図形が示す座標でパネル座標を指定する座標指定手段とを含むものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明のタッチパネル座標指定方法および座標指定装置によれば、画面の枠近傍や細かい表示画面において、指だけでもカーソル指定座標を容易に指定できる。また、メニュー項目指定画面を見て、タッチパネル上を指で触れて動かすと、直ちにカーソル移動の方法が理解できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例であるタッチパネル座標指定装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同タッチパネル座標指定装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】同タッチパネル座標指定装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】同タッチパネル座標指定装置の動作を示す概略図である。
【図5】同タッチパネル座標指定装置の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下この発明を実施するための形態を実施例に即して説明する。図1は本発明の実施例であるタッチパネル座標指定装置の構成を示すブロック図である。図1に示すタッチパネル1は透明シート状に形成され、液晶ディスプレー4の上に載置されており液晶ディスプレー4に描画されたメニュー項目をカーソルで指定して選択する。
【0020】
2はCPU、プログラムを記憶したROM、データを一時記憶するRAM等により構成されたプロセッサであり、前記プログラムにより後述するタッチパネル座標指定動作の制御を実行し、さらに、タッチパネル座標指定動作のプログラム以外の他のプログラムを実行する。
【0021】
座標取得部8はインターフェースやプログラムの一部で構成されており、ポインティング部3がタッチパネル1を押しているとの情報および押している位置の座標データを時分割処理部5を介してプロセッサ2に出力する。ポインティング部3としてこの例では指が使用されている。
【0022】
GUI(Grahical User Interface)アプリケーション7は座標取得部8からの情報やプロセッサ2で生成された情報を時分割処理部5を介して得て、液晶ディスプレー4に描く情報を生成し時分割処理部5を介してプロセッサ2に出力するプログラムである。
【0023】
表示処理部6はプログラムおよび液晶ディスプレー駆動回路で構成されており、時分割処理部5を介してプロセッサ2で制御され画像信号を生成し液晶ディスプレー4に画像を描く。図1では不動支点図形4aとカーソル図形4bが描かれている。
【0024】
時分割処理部5は、タイマーおよびプログムで構成されており、表示処理部6、GUIアプリケーション7、座標取得部8の稼働を指定し、さらに、タッチパネル座標指定動作以外に関与するプログムの作動時間を管理する。
【0025】
次に、図2および図3を参照してタッチパネル座標指定の動作を説明する。時分割処理部5により座標取得部8が指定されると、先ず、ステップS201において、一定時間タッチパネル1がポインティング部3でタッチされているか否かが判定され、タッチされていればステップS202に移行し、そうでなければこのルーチンを終了する。
【0026】
ステップS202では図5に示すタッチパネル1がタッチされた位置のタッチ座標T(Xt , Yt )を取得して支点座標F(Xf 、Yf )およびカーソル座標Cとして保存する。なお、支点座標Fが既に保存されているときは、ステップS202で新たな支点座標Fおよびカーソル座標Cは保存されない。
【0027】
次に、ステップS203において、液晶ディスプレー4に支点座標Fを中心として不動支点図形4aを描き、また、カーソル図形4bを描く。カーソル図形の4bの矢印の先端がカーソル座標C(Xc 、Yc )となっている。カーソル座標Cの位置は、図5(a)に示すように、支点座標Fに対してタッチ座標Tと点対称位置にあり、距離EとDは等しい。なお、距離EとDとの比を図5(b)に示すように1対2としてもよい。このようにすることによりカーソル座標Cの位置を微調整することができる。
【0028】
次に、ステップS204に移行してポインティング部3が離されたか否かを判断し、離されていればステップS212に移行し、離されていなければ、ステップS205に移行する。
【0029】
ステップS205では現在のタッチ座標Tを取得し、次に、ステップS206に移行してタッチ座標Tと支点座標Fとの間の自乗距離Ds が計算される。
【0030】
自乗距離Ds は、Ds =(Xt −Xf 2 +(Yt −Yf 2 の式で計算される。なお、Ds の平方根であるタッチ座標Tと支点座標Fとの間の距離を算出してもよいが、所定値と比較するだけに用いられるので計算を簡単にするため自乗距離Ds を算出する。
【0031】
次に、ステップS207に移行し支点座標Fに対してタッチ座標Tと反対方向に所定距離比E/D=αに位置するカーソル座標C(Xc 、Yc )が求められる。
【0032】
座標C(Xc 、Yc )はXc =Xf −α(Xt −Xf ) Yc =Yf −α(Yt −Yf )の式で求められ、図5(a)に示す例は、α=1とした場合であり、図5(b)に示す例は、α=1/2とした場合である。
【0033】
次に、ステップS208に移行し、支点座標Fとタッチ座標Tとの自乗距離Ds が最大自乗距離Ds max より大きいか否かが判断される。Ds max としては例えば画面の短辺の自乗距離の1/8が設定される。そして自乗距離Ds が自乗距離Ds max より大きい場合はステップS211に移行し、大きくない場合はステップS209に移行する。
【0034】
ステップS209では、支点座標Fに不動支点図形4aを再描画する。この不動支点図形4aの再描画は本来不要であるが、ステップS203でカーソル図形4bを描いた際に不動支点図形4aが消される場合があるために実行される。次に、ステップS210に移行して現在のカーソル座標Cにカーソル図形4bを移動させ、その後ステップS204以下が繰り返される。
【0035】
ステップS204からステップS210の動作が繰り返される間にポインティング部3の移動に対応してカーソル図形4bが移動される。その状態が図5に移動前および移動後のポインティング部3を夫々点線および実線で描くことにより示されている。これらの図形のデータはGUIアプリケーション7により生成され、その図形のデータに基づき表示処理部が液晶ディスプレー4を駆動して図形が描画される。
【0036】
ステップS212以降の工程では、タッチパネル座標を指定座標とする座標指定工程が実行される。先ず、ステップS212において、現在描画されているカーソル図形4bと不動支点図形4aが消去され、次にステップS213で図3に示すサブルーチンが実行される。
【0037】
このサブルーチンにおいて、先ず、ステップS301において、カーソル座標C(カーソル図形4bは消去されたがカーソル座標Cは保存されている。)をタッチ座標Tとし、次に、ステップS302において、座標Tが指定するメニュー項目を実行する。すなわちクリックイベントを発生させる。このサブルーチンの実行により、ステップS201から開始されたタッチパネル座標指定の工程の終了となる。
【0038】
ステップS211以降の工程は一旦開始されたタッチパネル座標指定の工程がタッチパネル座標指定を行うことなく終了する工程であり、先ずステップS211において、描画されているカーソル図形4bおよび不動支点図形4aを消去すると共に、これら座標データの記憶も消去してステップS201から開始されたルーチンを終了させる。このようにして、タッチ座標Tを所定距離だけ移動させてポインティング部3を放す簡単な操作で一旦開始したタッチパネル座標指定の工程の動作をキャンセルできる。
【0039】
上記したようにしてタッチパネル座標指定が行われると時分割管理部5はこれにより指定されたメニュー項目の実行の工程を選択して実行させる。
【0040】
図4に上記実施例の変形例示す。図4(a)〜図4(c)は前記した動作中の表示画面の例を説明する図である。図4(d)は上記したステップS205〜S210を実行してカーソル座標Cを移動させているときにカーソル座標Cがメニュー項目の図形であるアイコン4c上に位置したときに情報ウインド4eが表示されることを示している。この変形例によるとメニュー項目の選択により実行される工程を理解しやすくなる。なお、図5に示されている画像ボタン4dも選択可能なメニュー項目である。
【0041】
実施例は以上のように構成されているが発明はこれに限られず、例えば、『実行ボタン』や『戻るボタン』を設け『実行ボタン』を押すことによりタッチパネルのカーソル座標C位置のメニュー項目が選択され、また、『戻るボタン』を押すことにより実行中のタッチパネル座標指定動作をキャンセルするようにしてもよい。このような構成により初めて装置を使用する人がさらに使用方法を理解しやすくなる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のタッチパネルの座標指定方法では画面の枠近傍や細かい表示画面において、指だけでもカーソル指定座標を容易に指定でき、さらに、最初にこれを使用する人でも、使用方法を直ちに理解できるのでレンタルカーのナビゲーション装置に好適である。
【符号の説明】
【0043】
1 タッチパネル
2 プロセッサ
3 ポインティング部
4 液晶ディスプレー、4a 不動支点図形、4b カーソル図形、4c アイコン
4d 画像ボタン、4e 情報ウインドウ
5 時分割管理部
6 表示処理部
7 GUIアプリケーション
8 座標取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示手段の表示画面上に配置されたタッチパネルの座標をポインティング手段で指定するタッチパネル座標指定方法において、
前記ポインティング手段が最初に押したタッチパネル位置の下に不動支点の図形を描く不動支点表示工程と、
前記ポインティング手段がタッチパネルとのタッチ状態を保って押す位置を移動させたときの現在タッチ位置の前記不動支点に対する方向と反対方向位置にカーソル図形を描くカーソル表示工程と、
現在のカーソル図形が示す座標でパネル座標を指定する座標指定工程とを含むタッチパネル座標指定方法。
【請求項2】
請求項1のタッチパネル座標指定方法において、
前記座標指定工程は前記ポインティング手段が前記タッチパネルから離されたときのカーソル図形上のタッチパネル座標を指定座標とするタッチパネル座標指定方法。
【請求項3】
請求項1または2のタッチパネル座標指定方法において、
前記不動支点とカーソル図形上のタッチパネル座標との距離と前記不動支点と前記現在タッチ位置との距離との比が一定であるタッチパネル座標指定方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載されたタッチパネル座標指定方法において、
前記不動支点と前記現在タッチ位置との距離が所定値を越えたときに前記不動支点を無効として不動支点の図形を消去するタッチパネル座標指定方法。
【請求項5】
表示手段の表示画面上に配置されたタッチパネルの座標をポインティング手段で指定するタッチパネル座標指定装置において、
前記ポインティング手段が最初に押したタッチパネル位置の下に不動支点の図形を描く不動支点表示手段と、
前記ポインティング手段がタッチパネルとのタッチ状態を保って押す位置を移動させたときの現在タッチ位置の前記不動支点に対する方向と反対方向位置にカーソル図形を描くカーソル表示手段と、
現在のカーソル図形が示す座標でパネル座標を指定する座標指定手段とを含むタッチパネル座標指定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−211352(P2010−211352A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54497(P2009−54497)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】