説明

タッチパネル用電極フィルム、該タッチパネル用電極フィルムの製造方法及びタッチパネル

【課題】ヘイズを低減することができ、且つ安価なタッチパネル用電極フィルム、及び該電極フィルムの製造方法、並びに該電極フィルムを用いたタッチパネルを提供する。
【解決手段】透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、複数の開口部とこれを囲繞し区画するライン部を有するアルミニウムパターン層からなる電極が設けられ、且つ、該アルミニウムパターン層の該透明接着剤層側表面のJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.4以下である、タッチパネル用電極フィルム、及び該電極フィルムの製造方法、並びに該電極フィルムを用いたタッチパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置等の画面上に配置されるタッチパネル、及び該タッチパネルに用いられる電極フィルム、並びに該電極フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の表示装置の画面上に装着された入力装置として使用されている。タッチパネルの形式は、入力位置の検出方法により、静電容量式、光学式、超音波式、薄膜抵抗式等が提案されているが、特に薄膜抵抗式のタッチパネルは、構造や検出方法が単純であることから広く普及している。一般的な薄膜抵抗式のタッチパネルは、表面にITO等の透明導電膜を形成した2枚の電極フィルムと、該電極フィルムのいずれか一方の透明導電膜側に形成された絶縁体のスペーサとを備え、それぞれの電極フィルムの透明導電膜同士を対向させ、該スペーサを介して一定間隔を隔てるように構成されている。
【0003】
従来の薄膜抵抗式のタッチパネルには、ITO等の透明導電膜が形成されているが、該透明導電膜は、脆く、曲げ等によって亀裂が生じたり、剥離したりすることがあり、十分な導電性が得られないという問題があった。また、従来の薄膜抵抗式のタッチパネルには、光の透過率を向上させるという課題があった。
これらの問題に対し、特許文献1では、透明導電膜を用いない電極フィルム、具体的には、レジスト膜で格子網目状の開口パターンを形成し、その開口パターンに無電解メッキで格子網目状の金属膜を形成してなる電極フィルムが提案されている。
上記金属膜は、格子網目状の開口パターンを有することで可撓性が付与されるため、曲げ等による亀裂の発生や剥離の問題を解消することができる。但し、無電解メッキによる金属膜の成長速度は低く、製造速度(生産効率)が低いという課題が残っていた。
【0004】
これらの課題に対し、特許文献2では、基材上に形成された透明導電膜に欠落部を設けることにより光の透過率を向上させた電極フィルムが提案されている。
【0005】
また、樹脂フィルム等透明基材上に、銅などの金属から成る金属配線パターン(金属パターン層)を形成したタッチパネルシート(電極フィルム)も提案されている(例えば、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−192093号公報
【特許文献2】特開平10−326152号公報
【特許文献3】特開2008−305036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記金属パターン層は、透明基材上に透明接着剤層を介して未加工の金属箔を積層した後、フォトリソグラフィー法によって、該金属箔をエッチング加工することにより、メッシュ状に形成される。このようにして得られた電極フィルムでは、エッチングにより金属箔が除去された開口部において、金属箔表面の微細な凹凸形状が転写された透明接着剤層の表面が剥き出しとなるため、該透明接着剤層の凹凸表面では光が散乱しやすく、該電極フィルムは不透明となり、ヘイズが高くなるという問題がある。
【0008】
近年、電極フィルムの低ヘイズ化とともに、低コスト化が求められている。
上記電極フィルムの金属パターン層に用いられる金属箔の材料としては、一般に、銅(銅箔)が多用されてきたが、該銅箔を用いることによりコスト高となる。従って、低コスト化を図るには、該銅箔よりも安価な材料を採用することが考えられる。
【0009】
本発明は、上記問題点を鑑みてなされたものであり、ヘイズを低減することができ、且つ安価なタッチパネル用電極フィルム、及び該電極フィルムの製造方法、並びに該電極フィルムを用いたタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、金属パターン層に用いられる金属箔の材料として銅よりも安価なアルミニウム(アルミニウム薄膜)を用いてタッチパネル用電極フィルムを製造することを検討した。該アルミニウム薄膜は、その作る工程で、2枚のアルミニウム箔を重ね合わせて、該アルミニウム箔を圧延ロールで延ばして薄膜化する。その際に、圧延ロールと接する面は圧延ロールの平滑面が賦形される為、この面を鏡面といい、一方、アルミニウム箔同士が接する面は、その表面が確率的揺らぎによって乱雑な微小凹凸となる為、この面を粗面という。従って、アルミニウム薄膜には鏡面と粗面がある。
また本発明者らの実験の結果、従来、金属箔表面の凹凸形状を表す一般的な指標とされてきた算術平均粗さRaや十点平均粗さRzを規定しても、必ずしも電極フィルムのヘイズを低減できるとは限らないことが分かった。
そこで、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、ある特定の範囲内にある、特定の指標を有するアルミニウム薄膜の鏡面(光散乱性の低い平滑面)を、透明基材側と向き合わせて積層することにより、得られるタッチパネル用電極フィルムのヘイズが低減することを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明に係るタッチパネル用電極フィルムは、透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、複数の開口部とこれを囲繞し区画するライン部を有するアルミニウムパターン層からなる電極が設けられ、且つ、該アルミニウムパターン層の該透明接着剤層側表面のJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.4以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明のタッチパネル用電極フィルムは、アルミニウムパターン層の透明基材側の面を、光散乱性の低い平滑面(鏡面)とすることにより(かかるアルミニウム薄膜のかかる面を選択したことにより)、該アルミニウムパターン層の開口部における透明接着剤層表面の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を上記特定の範囲とすることができ、該透明接着剤層表面が光散乱し難い形状となるため、ヘイズを低減することができる。
【0012】
また、本発明に係るタッチパネル用電極フィルムの製造方法は、透明基材の一方の面に、複数の開口部とこれを囲繞し区画するライン部を有するアルミニウムパターン層からなる電極を備えたタッチパネル用電極フィルムの製造方法であって、
(i)JIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.4以下の面を有するアルミニウム薄膜を用意する工程、
(ii)透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、前記アルミニウム薄膜を、そのRSCE/RSCIが0.4以下の面を前記透明基材と向き合わせて積層する工程、及び
(iii)前記アルミニウム薄膜を所定のパターン形状にエッチングして電極とする工程を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明のタッチパネル用電極フィルムの製造方法によれば、金属パターン層に用いられる金属箔の材料として銅よりも安価なアルミニウムを用いることにより、電極フィルムの低コスト化が図れる。
また、透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、アルミニウム薄膜の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が上記特定の範囲となる光散乱性の低い平滑面(鏡面)とすることにより、該アルミニウムパターン層の透明接着剤層側表面の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を特定の範囲とすることができる。更には、これを、該透明基材と向き合わせて積層することにより、該アルミニウム薄膜のエッチング処理後の開口部における該透明接着剤層表面も光散乱し難い形状となるため、ヘイズが低減された電極フィルムを得ることができる。
【0014】
また、本発明に係るタッチパネルは、透明基材の一方の面に透明導電性の電極を有する2枚の電極フィルムが、スペーサを介して互いに電極を対向させて配置されたタッチパネルであって、
該2枚の電極フィルムのうち少なくとも一方の電極フィルムが前記本発明に係るタッチパネル用電極フィルムであることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、タッチパネルの2枚の電極フィルムのうち少なくとも一方の電極フィルムに本発明に係るタッチパネル用電極フィルムを用いることにより、ヘイズを低減することができるタッチパネルを低コストで提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のタッチパネル用電極フィルムによれば、アルミニウムパターン層の透明基材側の面の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を特定の範囲とすることにより、該アルミニウムパターン層の開口部における透明接着剤層表面を、光散乱性の低い平滑面(鏡面)とすることができ、該透明接着剤層表面が光散乱しにくい形状となるため、ヘイズを低減することができる。
【0017】
また、本発明のタッチパネル用電極フィルムの製造方法によれば、金属パターン層に用いられる金属箔の材料として銅よりも安価なアルミニウムを用いることにより、電極フィルムの低コスト化が図れる。
また、透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、アルミニウム薄膜の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が上記特定の範囲となる光散乱性の低い平滑面(鏡面)を、該透明基材と向き合わせて積層することにより、該アルミニウム薄膜のエッチング処理後の開口部における該透明接着剤層表面が光散乱し難い形状となるため、ヘイズが低減された電極フィルムを得ることができる。更に、透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介してアルミニウム薄膜の光散乱性が低い平滑面(鏡面)を、該透明基材と向き合わせて積層するため、該アルミニウム薄膜と該透明接着剤層との間の気泡の噛み込みが抑制され、残留気泡の光散乱に起因するヘイズの上昇をも抑えることができる。
【0018】
また、タッチパネルの少なくとも一方の電極フィルムに本発明に係るタッチパネル用電極フィルムを用いることにより、ヘイズを低減することができるタッチパネルを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るタッチパネル用電極フィルムの一例を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明に係るタッチパネル用電極フィルムの他の一例を模式的に示した断面図である。
【図3】図2に示すタッチパネル用電極フィルムを入力側の電極フィルムとして配置し、図1に示すタッチパネル用電極フィルムを表示装置側の電極フィルムとして配置したタッチパネルを模式的に示した断面図である。
【図4】図2に示すタッチパネル用電極フィルムを入力側の電極フィルムとして配置したタッチパネルを模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、タッチパネル用電極フィルム(以下、単に電極フィルムともいう)、及びその製造方法、並びに該電極フィルムを用いたタッチパネルを含むものである。以下、それぞれについて詳述する。
尚、本発明においていう「粗面」、「鏡面」の語の定義であるが、金属箔メーカの業界用語であり、アルミニウム箔の外表面(表裏面)のうち、金属箔製造メーカにおいて、表面の凹凸の程度を増大せしめる物理的、或いは化学的処理を施して、相対的に凹凸の程度が増大した側の面を「粗面」と(その他、「粗化面」、或いは「マット面」とも)呼称する。一方、そうでない側の面を「鏡面」と(その他、「平滑面」、「光沢面」、或いは「ミラー面」とも)呼称する。
尚、これら、「粗面」及び「鏡面」は投錨効果による接着力の観点から形成され又評価されてきた尺度であり、後述するように、これら「粗面」或いは「鏡面」が、必ずしも接着剤層表面に転写、賦形された状態でのヘイズ値と直接相関するとは限らない。また、本発明で規定する特定の光線反射率比(RSCE/RSCI)の数値範囲とも相関しないことがわかる。
また、本発明において、透明基材の一方の面に積層したアルミニウム薄膜としては、アルミニウム箔を用いている。
【0021】
I.タッチパネル用電極フィルム
本発明に係るタッチパネル用電極フィルムは、透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、複数の開口部とこれを囲繞し区画するライン部を有するアルミニウムパターン層が電極として設けられ、且つ、該アルミニウムパターン層の該透明接着剤層側表面のJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.4以下であることを特徴とする。
【0022】
透明基材上に設けられたアルミニウムパターン層の開口部、即ち、透明接着剤層の露出面には、アルミニウム薄膜の透明基材側に向き合わせた面(光散乱性の低い平滑面)の微細な凹凸形状が転写される。そのため、該アルミニウムパターン層の開口部から露出した該透明接着剤層表面のJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)と、該アルミニウムパターン層のライン部、即ち、該アルミニウムパターン層の該透明接着剤層と接する面(光散乱性の低い平滑面)のJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)とは、同等の値になると考えられる。
従って、本発明において、該アルミニウムパターン層の開口部から露出した該透明接着剤層表面における光線反射率比(RSCE/RSCI)の数値は、電極フィルムの形態、即ち;
透明基材/透明接着剤層/アルミニウムパターン層
の積層体において、該透明基材側から測定用の光を入射し、介在する透明基材および透明接着剤層を経由し、該アルミニウムパターン層表面で反射した光によって、該(RSCE/RSCI)の数値を測定し、間接的に評価している。
【0023】
本発明者らの実験の結果、透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して貼り合わせるアルミニウム薄膜の面が滑らかで、この表面が転写された開口部に露出する接着剤層表面は光の透過が平行光線透過光主体となる場合、得られる電極フィルムのヘイズを低減させることができることが確認された。
また、後述する実施例の表1に示すように、電解銅箔では、透明接着剤層側の面が粗面と鏡面で外観上区別できるが、JIS B0601算術平均粗さRaで表わす数値には差がない。ここで、JIS B0601の算術平均粗さRaとは、粗さ曲線から、その平均線の方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を合計し、平均した値のことである。また、アルミニウム箔の粗面のRaは、電解銅箔の粗面のRaよりも大きいにもかかわらず、エッチング処理後のヘイズ値は小さくなっている。更に、アルミニウム箔において、鏡面のRaは粗面のRaより小さいが、微小範囲で測定した自乗平均粗さRqは、鏡面の方が粗面よりも大きくなっている。
上記の結果から、算術平均粗さRaと、金属箔表面の外観、及びエッチング処理後の開口部の接着剤層表面に転写されるヘイズ値の間に相関関係はみられない。従来、鏡面性の指標として用いられてきた十点平均粗さ(JIS B0601(1994年度版)で規定)と接着剤層表面に転写されるヘイズとの相関についても、同様であり、相関性は明確ではない。また、金属箔表面の凹凸形状を表す平均粗さは、測定する方法によって変化する。このことから、同じ算術平均粗さRaにおいて、凹凸の頻度が多く、凹凸の間隔が密である表面形状では、エッチング処理後のヘイズ値は大きくなり、一方、凹凸の頻度が少なく、凹凸の間隔が疎であって、平らな部分が多い表面形状では、エッチング処理後のヘイズ値は小さくなると考えられる。
即ち、従来、十点平均粗さRzと相関してエッチング処理後のヘイズが低下するとされてきたのは、金属箔表面の粗面微細凹凸形状、凸部の密度等の条件が、ある特定の範囲に限定された場合のことであり、金属箔の製法、表面の粗面微細凹凸形状や凸部の密度等が各種変化する場合の一般について、広汎に適用可能な設計基準ではないと結論される。
本発明者らは、上記検討の結果、透明接着剤層側に貼り合わせるアルミニウム箔の面を、光散乱性の低い鏡面にすることにより、相関性良くエッチング処理後のヘイズが低減されることを見出した。具体的には、透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して貼り合せるアルミニウム箔の面が、JIS Z8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.4以下の範囲である場合、その表面の算術平均粗さRaの値に関わらず、エッチング処理後のアルミニウムパターン層の開口部を透過する光のヘイズを低減させることができる。
尚、金属箔表面の凹凸形状を表す一般的な指標とされてきた算術平均粗さRaや十点平均粗さRzは、金属箔の鏡面性、更には、この表面が転写された開口部の接着剤層のヘイズと必ずしも関連するものではなかった。
【0024】
全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)は、金属箔(アルミニウム薄膜)の表面形状が光を散乱しやすいかどうかを表す指標であり、該金属箔(アルミニウム薄膜)表面の形状が、透明接着剤層に転写される場合、得られる電極フィルムの透過光のヘイズに直接影響する値である。
本発明においては、アルミニウムパターン層の透明基材側の面を、光散乱性の低い平滑面とすることにより(かかるアルミニウム薄膜のかかる面を選択したことにより)、該アルミニウムパターン層の開口部における透明接着剤層表面の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を上記特定の範囲とすることができ、該透明接着剤層表面が透過光を散乱しにくい形状となるため、ヘイズを低減することができる。
【0025】
本発明におけるアルミニウム薄膜表面のJIS Z8722−1982に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)は、JIS Z8722−1982に準拠して、分光測色計(例えば、コニカミノルタセンシング株式会社製、CM−3600d)を反射モードに設定し、光源は標準の光D65、視野2°、測定径4mmφ以上として、検出器を、反射光のうち拡散反射光と鏡面反射光の両方を総合した全反射光の(積分)強度を測定するようなSCI(Specular Component Include)モードに設定して、Y値(3刺激値XYZのY)を測定したものである。また、アルミニウム薄膜表面のJIS Z8722−1982に準拠して測定した拡散光線反射率(RSCE)は、同様に分光測色計を用いて、光源、視野、及び測定径は上記と同じにして、検出器を、反射光のうち拡散反射光のみの(積分)強度を測定するようなSCE(Specular Component Exclude)モードに設定して、Y値(3刺激値XYZのY)を測定したものである。ここで、3刺激値XYZとは、JIS Z8722−1982で規定され、理想的な環境に置かれた試料を標準光源で照明し、該試料での反射光の分光分析結果を演算することにより決定される値のことである。
【0026】
〔層構成〕
本発明によるタッチパネル用電極フィルムの層構成について図面を用いて説明する。
本発明に係る電極フィルムの一例の断面図を図1で概念的に示す。なお、図1及び図2に示す断面図において、説明の容易化のために、厚み方向(図の上下方向)の縮尺を面方向(図の左右方向)の縮尺よりも大幅に拡大誇張し、且つアルミニウムパターン層の線幅を配列周期よりも大幅に拡大誇張して図示してある。図1に示す電極フィルム10は、透明基材1の一方の面に、透明接着剤層2を介して、アルミニウムパターン層3からなる電極が積層されている。該アルミニウムパターン層3は、透明基材1側の面(透明接着剤層側の面でもある)が光散乱性の低い平滑面3a、該透明基材1側とは反対側の面が非平滑面3bとなっている。尚、本発明において必須であるのは、該アルミニウムパターン層3の透明接着剤層2側の面を平滑面3aとすることである。従って、該アルミニウムパターン層3の透明接着剤層2側とは反対側面も平滑面3aとしても良い。なお、図示しないが、該アルミニウムパターン層3は、該透明基材1側の面とは反対側の面(非平滑面3b)が黒化処理されて黒化層を有していてもよい。
また、図2に示すように、透明基材1のアルミニウムパターン層3側とは反対側の面上には、ハードコート層や反射防止層(AR層)、防眩層(AG層)等の光学機能層4が一層又は2層以上設けられていてもよい。
以下、本発明の電極フィルムについて、透明基材から順に説明する。
【0027】
(1)透明基材
本発明で用いる透明基材1は、電極フィルムを構成する一部の層であり、透明接着剤層を介してアルミニウムパターン層を積層するための基材となる層である。該透明基材としては、可視領域での透明性(光透過性)、機械的強度、及び耐熱性等の性能を適宜勘案したものを用途に応じて選択すればよい。このような、透明基材の具体例としては、樹脂等の有機材料或は硝子等の無機材料からなるシート(乃至フィルム。以下同様。)又は板が挙げられる。透明基材の透明性は高いほどよいが、好ましくは可視光域380〜780nmにおける光線透過率が70%以上、より好ましくは80%以上となる光透過性が良い。なお、光透過率の測定は、分光光度計(例えば、(株)島津製作所製 UV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いることができる。
また、上記透明基材のJIS K7105−1981に準拠したヘイズ値は、10%以下であることが好ましく、更に2.0%以下であることが好ましく、特に1.0%以下であることが好ましい。該透明基材のヘイズ値を上記範囲とすることで、本発明による効果と合わせて、本発明の電極フィルムのヘイズを低く抑えることができる。
【0028】
透明基材の材料として用いる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、テレフタル酸−イソフタル酸−エチレングリコール共重合体、テレフタル酸−シクロヘキサンジメタノール−エチレングリコール共重合体などのポリエステル系樹脂、ナイロン6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、シクロオレフィン重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体などのスチレン系樹脂、トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂、イミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0029】
なお、これらの樹脂は、単独、又は複数種類の混合樹脂(ポリマーアロイを含む)として用いられ、透明基材の層構成は、単層、又は2層以上の積層体として用いられる。また、樹脂フィルムの場合、1軸延伸や2軸延伸した延伸フィルムが機械的強度の点でより好ましい。また、これら樹脂中には、必要に応じて適宜、充填剤、可塑剤、帯電防止剤などの添加剤を加えても良い。又、硝子としては、ソーダ硝子、カリ硝子、硼珪酸硝子、石英硝子等が挙げられる。通常、硝子の場合は、厚みの有る板状で用いられる。
【0030】
透明基材の厚さは、基本的には用途に応じ選定すればよく、特に制限はないが、通常は12〜5000μm、好ましくはフィルムの場合は50〜500μm、より好ましくは50〜200μm、板の場合は500〜3000μmである。このような厚み範囲ならば、機械的強度が十分で、反り、弛み、破断などを防ぎ、連続帯状で供給して加工する事も容易である。
なお、本発明では、透明基材としては、特に、可撓性の有る樹脂フィルム或は板から成るものが、製造加工適性が良好で、重量、価格も低減できる点で好ましい。特に、これら樹脂から成る基材を透明樹脂基材と称呼する。
【0031】
透明樹脂基材の形態としては樹脂板よりは透明樹脂フィルムが好ましい。該樹脂フィルムのなかでも特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルムが、透明性、耐熱性、コスト等の点で好ましく、より好ましくは2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが最適である。
【0032】
また、樹脂フィルム等の透明基材は、適宜その表面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、予熱処理、除塵埃処理、蒸着処理、アルカリ処理、などの公知の易接着処理を行ってもよい。
【0033】
(2)アルミニウムパターン層
アルミニウムパターン層3はアルミニウム薄膜で形成したパターン層であり、タッチパネル用電極フィルムの電極を構成する。該層自体は不透明だが、開口部など該層の非形成部を設けたパターンとすることによって、タッチパネル電極として要求される導電性と光透過性とを両立させた層である。
本発明においては、アルミニウムパターン層の透明接着剤層側表面が、JIS Z8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.4以下、好ましくは0.3以下となる。全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を上記特定の反射特性を有するように最適化することで、該アルミニウムパターン層の表面性状が転写されたアルミニウムパターン層の開口部における透明接着剤層表面が光散乱し難い形状となるため、電極フィルムのヘイズを低減することができる。
なお、アルミニウムパターン層を形成するアルミニウム薄膜の圧延ロール表面の研磨度を上げることにより、上記特定の反射特性が得られる。
【0034】
アルミニウムパターン層のアルミニウムは純粋なアルミニウム単体でも良いが、アルミニウムを主成分とし、アルミニウム単体の他にアルミニウム合金でもよくこれらをまとめて本発明ではアルミニウムというが、アルミニウムの純度が低いと導電性が低下するので、純度は高導電性の点では高い方が好ましく、純度が99.0%以上のアルミニウムが好ましい。このような純度が99.0%以上のアルミニウムを利用したアルミニウムパターン層は、JIS H4160(アルミニウム及びアルミニウム合金はく)、JIS H4170(高純度アルミニウムはく)で規定されるアルミニウム箔に準じた箔を利用することで形成できる。
【0035】
本発明において、アルミニウムパターン層を形成するアルミニウム薄膜の平滑面が転写、賦形された透明接着剤層露出面のヘイズ低減の程度は、前記の如く、該アルミニウム薄膜接着面の持つ特定の光線反射率比(RSCE/RSCI)の数値に大きく依存(相関)する。そして、JIS B0601に定める算術平均粗さRaへの依存(相関)性は低い旨述べた。しかしながら、Raの値が大きくなりすぎると、一般に表面凹凸が増えることには相違ない為、やはり接着剤層露出面のヘイズは増加する傾向(弱い相関)はある。その点も考慮すると、特定の光線反射率比(RSCE/RSCI)の数値を設定することは前提の上で、Raも可能な範囲で小さいものを選定する方が好ましいと言える。通常は、Raは0.2μm以下、更に好ましくは0.15μm以下に設定される。
【0036】
アルミニウムパターン層の厚みは、導電性、加工適性、機械的強度などの点から適宜選択すればよく、具体的には1〜100μm、好ましくは5〜20μm、より好ましくは8〜15μmである。厚みが薄いと導電性、機械的強度などが低下し、厚みが厚いと加工適性が低下する。
【0037】
アルミニウムパターン層の平面視でのパターンの形状は、例えばメッシュ(格子乃至網目)形状、ストライプ(縞乃至平行線群)形状、スパイラル(螺旋乃至渦巻)などの導電性と光透過性とを両立させた公知のパターンである。なかでもメッシュ形状、それも正方格子形状が代表的であり、この他、格子形状で言えば例えば長方形格子、菱形格子、六角格子、三角格子などがある。メッシュはこれら形状からなる複数の開口部を有し、開口部間は開口部を区画するライン部(線部又は線条部)となる。ライン部は通常幅均一でライン状のものであり、また通常は開口部及び開口部間は、全て各々同一形状で同一サイズとなる。
【0038】
パターンのライン部のライン幅は例えば5〜50μm、好ましくは5〜30μmであり、ラインの繰り返し周期であるライン間隔(ピッチ)は例えば100〜500μmである。
【0039】
(3)透明接着剤層
透明接着剤層2は、アルミニウムパターン層と透明基材とを接着することが可能で十分な透明性を有する層であれば、その種類等は特に限定されるものではないが、本発明においては、上記アルミニウムパターン層を構成するアルミニウム薄膜と透明基材とを透明接着剤層を介して貼り合わせた後、アルミニウム薄膜をエッチングによりパターン状とすることから、透明接着剤層も耐エッチング性を有することが好ましい。具体的には、ポリウレタンエステル樹脂、2液硬化型ウレタン樹脂等のポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。また、本発明に用いられる透明接着剤層は、紫外線硬化型であってもよく、また熱硬化型であってもよい。特に、透明基材との密着性などの観点からポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、特に2液硬化型ウレタン樹脂が好ましい。
【0040】
透明接着剤層の膜厚は、0.5μm〜50μmの範囲内、中でも1μm〜20μmの範囲内であることが好ましい。これにより、透明基材とアルミニウムパターン層とを強固に接着することができ、また、アルミニウムパターン層を形成するエッチングの際に透明基材が酸化鉄等のエッチング液の影響を受けること等を防ぐことができるからである。
また、上記透明接着剤層の屈折率は、透明基材との屈折率差による界面反射低減の観点から1.41〜1.59の範囲内であることが好ましく、更に1.48〜1.52の範囲内であることが好ましい。
【0041】
[その他の層]
本発明の電極フィルムは、透明基材1のアルミニウムパターン層3側とは反対側の面上に防眩機能、反射防止機能等の光学機能、或いは耐擦傷機能、防汚染機能、撥水機能、帯電防止機能、抗菌機能等の其の他機能を有する機能層4が設けられていても良い。特に、光学機能を有する機能層を光学機能層とも呼称する。該機能層は、単層の他、多層として形成してもよい。
<耐擦傷機能層>
耐擦傷機能(ハードコート)層は、JISK5600−5−4(1999)で規定される鉛筆硬度試験で「H」以上の硬度を示すものであることが好ましく、このような硬度と上記透明基材と同様な透明性を実現できるものであれば、材料は特に限定されない。
耐擦傷機能(ハードコート)層は、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートプレポリマー、或いは、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレートモノマーを単独で或いはこれらの中から2種以上選択して組み合わせて配合した電離放射線硬化性樹脂を用いた塗膜として形成することができる。また、電離放射線としては、紫外線、電子線等が代表的なものであるが、電離放射線硬化性樹脂を紫外線硬化性樹脂として使用する場合には、光重合開始剤または光重合促進剤として増感剤を添加することができる。なおここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する複合的表記である。耐擦傷機能(ハードコート)は上記材料を必要に応じて溶剤で希釈して上記透明基材上に塗工等の湿式成膜法により形成することができる。
【0042】
<防眩層>
防眩層(Anti Glare層、略称してAG層)は、樹脂バインダ中にシリカなどの無機フィラーを添加した塗膜形成や、或いは賦形版の押圧等を用いた賦形加工により、層表面に外光を乱反射する微細凹凸を設けた層として形成することができる。樹脂バインダの樹脂としては、表面層として表面強度が望まれる関係上、硬化性アクリル樹脂や、前記の耐擦傷機能(ハードコート)層同様に電離放射線硬化性樹脂等が好適に使用される。
【0043】
<反射防止層>
反射防止層(Anti Reflection層、略称してAR層)は、低屈折率層の単層、或いは、低屈折率層と高屈折率層とを、当該低屈折率層が最上層に位置する様に交互に積層した多層構成が一般的であり、蒸着やスパッタ等の乾式成膜法で、或いは塗工等の湿式成膜法も利用して形成することができる。なお、低屈折率層はケイ素酸化物、フッ化マグネシウム、フッ素含有樹脂等が用いられ、高屈折率層には、酸化チタン、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ等が用いられる。尚、ここで高(低)屈折率層とは、当該層と隣接する層(例えば、低(高)屈折率層)と比較して当該層の屈折率が相対的に高(低)いという意味である。
反射防止層に更に耐擦傷機能を付与する場合には、前記の耐擦傷機能(ハードコート)層の項で記載した硬度の高い材料を適宜用いて形成する。
【0044】
本発明に係る電極フィルムのJIS K 7105−1981に準拠して測定したヘイズ値は、10%以下、更に5%以下とすることができ、電極フィルムとして十分な透明性を有する。
【0045】
本発明に係る電極フィルムのアルミニウムパターン層の表面抵抗値は、100〜1000Ω/□、更に好ましくは300〜500Ω/□とする。該表面抵抗値が上記範囲よりも小さい場合には、適宜調整し上記範囲内とする。調整方法としては、例えば、アルミニウムパターン層の膜厚を薄膜化する、アルミニウムパターン層に用いるアルミニウム箔のアルミニウム純度を低下させる(アルミニウムの合金化)、アルミニウムパターン層の細線化、及び高開口率化等が挙げられる。
尚、上記表面抵抗値は、抵抗率計・ロレスタEPMCP−T360型(三菱化学アナリテック社製)を用いて4端子4探針法で測定することができる。
【0046】
II.タッチパネル用電極フィルムの製造方法
本発明に係るタッチパネル用電極フィルムの製造方法は、透明基材の一方の面に、複数の開口部とこれを囲繞し区画するライン部を有するアルミニウムパターン層からなる電極を備えたタッチパネル用電極フィルムの製造方法であって、
(i)JIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.4以下の面を有するアルミニウム薄膜を用意する工程、
(ii)透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、前記アルミニウム薄膜を、そのRSCE/RSCIが0.4以下の面を前記透明基材と向き合わせて積層する工程、及び
(iii)前記アルミニウム薄膜を所定のパターン形状にエッチングして電極とする工程を含むことを特徴とする。
【0047】
本発明の電極フィルムの製造方法によれば、金属パターン層に用いられる金属箔の材料として銅よりも安価なアルミニウムを用いることにより、電極フィルムの低コスト化が図れる。
また、透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、アルミニウム薄膜の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が上記特定の範囲となる光散乱性の低い平滑面(鏡面)を、該透明基材と向き合わせて積層することにより、該アルミニウム薄膜のエッチング処理後の開口部における該透明接着剤層表面が光散乱し難い形状となるため、ヘイズが低減された電極フィルムを得ることができる。
【0048】
以下、各工程についてそれぞれ説明する。
(i)JIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.4以下の面を有するアルミニウム薄膜を用意する工程
本工程においては、先ずアルミニウム薄膜を用意する。
本発明で用いるアルミニウム薄膜は、上記特定の反射特性を有する面(光散乱性の低い平滑面)を有する。後述するように、該アルミニウム薄膜の平滑面を透明接着剤層を介して、透明基材の一方の面に向き合わせて積層する工程を経ることで、該アルミニウム薄膜のエッチング処理後の開口部の該透明接着剤層表面が光散乱し難い形状となるため、得られる電極フィルムの低ヘイズ化が図れる。
尚、アルミニウム薄膜は、上記「(2)アルミニウムパターン層」の項で説明したものを用いることができる。
【0049】
(ii)透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、前記アルミニウム薄膜を、そのRSCE/RSCIが0.4以下の面を前記透明基材と向き合わせて積層する工程
本工程においては、先ず透明基材を用意し、この透明基材の一方の面に、透明接着剤をコーティングして、透明接着剤層を形成する。
上記透明基材は、上記「(1)透明基材」の項で説明したものを用いることができる。
また、層形成法としては、公知の層形成法、例えば、ロールコート、コンマコート、グラビアコート、ダイコート等の塗工法、或いは、任意形状での部分形成が容易なスクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法を適宜採用することができる。
次に、上記透明基材の透明接着剤層の表面に、アルミニウム薄膜を光散乱性の低い平滑面側を向けて積層する。
【0050】
(iii)前記アルミニウム薄膜を所定のパターン形状にエッチングして電極とする工程
本工程においては、透明基材上に積層されたアルミニウム薄膜面へ、レジスト層を所定のパターン状に設け、レジスト層で覆われていない部分のアルミニウム薄膜をエッチング(腐蝕)により除去した後に、レジスト層を除去するエッチング加工法で、アルミニウムパターン層からなる電極とする。エッチング加工法の中でも、所謂フォトリソグラフィー法を採用する事が、微細加工精度の点から好ましい。
【0051】
以下、フォトリソグラフィー法について説明する。
まず、マスキングを行う。例えば、アルミニウム薄膜側の最表面へ感光性レジストを塗布し、乾燥した後に、所定のパターンを有するフォトマスクにて密着露光し、温水現像し、硬膜処理などを施し、ベーキングすることにより、所望のパターンのレジスト層を形成する。尚、感光性レジストのネガ型、ポジ型の何れも使用可能である。感光性レジストがネガ型の場合は、フォトマスクのパターンはライン部が透明なものを用いる。また、感光性レジストがポジ型の場合は、フォトマスクのパターンは開口部が透明なものを用いる。また、露光パターンとしては、電極フィルムとして所望のパターンであり、該パターンとしてメッシュ形状を採用する場合は、最低限メッシュ状領域のパターンから構成される。
【0052】
上記感光性レジストの塗布は、巻取り加工では、帯状の積層体を連続又は間歇で搬送させながら、アルミニウム薄膜面へ、カゼイン、PVA、ゼラチンなどから成るレジストをディッピング(浸漬)、カーテンコート、掛け流しなどの方法で行う。また、レジストは塗布ではなく、ドライフィルムレジストを用いてもよく、作業性を向上できる。
【0053】
マスキング後にエッチングを行う。該エッチングに用いるエッチング液としては、エッチングを連続して行う本発明には循環使用が容易にできる塩化第二鉄、又は塩化第二銅の水溶液が好ましい。また、該エッチングは、帯状で連続する鋼材、特に厚さ20〜80μmの薄板をエッチングするカラーTVのブラウン管用のシャドウマスクを製造する設備、工程と基本的に同様である。透明基材としてガラスを用いる場合の枚葉加工もより古くから行われている。エッチング後は、水洗、アルカリ液によるレジスト剥離、洗浄を行ってから乾燥すればよい。
【0054】
このようにして得られた電極フィルムのJIS K 7105:1981に準拠して測定したヘイズ値は、10%以下とすることができ、更に5%以下とすることができる。
【0055】
II.タッチパネル
本発明に係るタッチパネルは、透明基材の一方の面に透明導電性の電極を有する2枚の電極フィルムが、スペーサを介して互いに電極を対向させて配置されたタッチパネルであって、
該2枚の電極フィルムのうち少なくとも一方の電極フィルムが前記本発明に係るタッチパネル用電極フィルムであることを特徴とする。
【0056】
本発明によれば、タッチパネルの少なくとも一方の電極フィルムに上述した本発明に係る電極フィルムを用いることにより、ヘイズを低減することができるタッチパネルを低コストで提供することができる。
【0057】
本発明に係るタッチパネル50A及び50Bは、図3及び図4にその一例を示すように、2枚の電極フィルムが、スペーサ6を介して互いに電極を一定間隔Gで対向させて配置されている。該2枚の電極フィルムの少なくとも一方は、前記本発明の構成の電極フィルムからなる。特に、図3の形態においては、2枚の電極フィルムとも本発明の電極フィルムからなる。表示装置60側の電極フィルムは、透明基材1の一方の面に、透明接着剤層2を介して、電極としてアルミニウムパターン層3が積層されており、該アルミニウムパターン層3は、透明基材1側の面(透明接着剤層側の面でもある)が光散乱性の低い平滑面3a、該透明基材1側とは反対側の面が非平滑面3bである電極フィルム10となっている。また、入力ペン7が接触する入力側の電極フィルムについては、これに加えて更に、透明基材1のアルミニウムパターン層3側とは反対側の面上には、光学機能層4が積層された電極フィルム20となっている。
尚、図4に示す形態のタッチパネル50Bは、入力側の電極フィルムには光学機能層4を含む本発明の電極フィルム20を、又表示装置60側の電極フィルムには従来の電極フィルム、即ち、ITO等の透明導電膜40が透明基材1上の全面に成膜された電極フィルム30を用い、その他は図3と同様に構成したものである。
【0058】
また、日光等の外光存在下で該タッチパネルを透過して見る表示装置の表示(画像、数字等)のコントラストを向上させるために、入力側の電極フィルム10(観察者側の電極フィルム)のアルミニウムパターン層3の透明基材1側の面(平滑面3a)に黒化層を設けてもよい。
黒化層としては、公知のものを適宜採用すれば良い。例えば、黒化層としては、金属などの無機材料、黒色樹脂などの有機材料などを使用できる。無機材料としては、例えば金属乃至は合金、金属酸化物、金属硫化物などの金属化合物であり、めっき法など公知の黒化処理にて形成することができる。また、黒色樹脂としては例えばカーボンブラック等の黒色の着色剤を樹脂中に含有させた層として形成できる。
【0059】
本発明に係るタッチパネル用電極フィルム10及び20、並びにタッチパネル50A及び50Bは、小型ゲーム機の表示面、コンピュータディスプレイの表示面、TVディスプレイの表示面、電子ペーパー等の表示面、現金自動支払機の表示面、各種電子案内板やデータベースの表示面、乗車券自動販売機の表示面等に装着されるタッチパネル、又はその構成部材として好ましく使用することができる。なお、このような表示装置は、液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)、電場発光(EL)表示装置、陰極線管(CRT)表示装置、電気泳動表示装置等のいずれであってもよい。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0061】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0062】
以下、本発明の実施例及び比較例として;
透明基材/透明接着剤層/アルミニウムパターン層
の積層体からなる電極フィルムを作成した。この形態において、該透明基材側から測定光を入射し、該アルミニウムパターン層の該透明接着剤層側の面について、特定の光線反射率比(RSCE/RSCI)の数値(「アルミニウムパターン層のRSCE/RSCI」とも呼称する)、及び該電極フィルム透過光のヘイズ値を測定し、両者の関係を評価した。
又、併せて、パターン未形成の該アルミニウム薄膜自体単品について、直接、間に何も介在させずに、接着面(該透明接着剤層側に当接する面)の該光線反射率比(RSCE/RSCI)の数値(「アルミニウム薄膜自体のRSCE/RSCI」とも呼称する。該アルミニウム薄膜表面固有の物理的特性値でもある。)も測定した。
そして、両(RSCE/RSCI)の数値間の相関関係を評価した。
尚、これに先立ち、別途、参考データとして、金属薄膜について、各種表面粗さ値(Ra、Rq、及びRz)、該光線反射率比(RSCE/RSCI)、及び得られた上記構成の電極フィルムのヘイズ値との相関関係を確認する為に、各種金属薄膜について、金属薄膜自体の(RSCE/RSCI)を測ると共に、JIS規格(下記)に基づいて、Ra、Rq、及びRzの各表面粗さ値を測った。
更に、金属薄膜の表面形状が転写、賦形された透明接着剤露出面のヘイズ値が、該光線反射率比(RSCE/RSCI)の値に如何に依存するかの確認の為に、各金属薄膜を用いた前記構成の電極フィルム自体のヘイズを測った。
これらを併せて、参考試験1〜参考試験4(得られた試料を参考例1〜参考例4)として、以下に提示する。
【0063】
〔参考試験(及び参考例)〕
(参考試験1)
先ず、金属薄膜とする金属箔として、厚さ12μmで連続帯状の電解銅箔(B2X−WS:商品名、古河サーキットフォイル社製)を用意した。該電解銅箔は鏡面と粗面を有し、該電解銅箔の粗面において、全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を測定したところ、該電解銅箔粗面自体の比(RSCE/RSCI)は、1.0であった。
又、併せて、該金属薄膜の粗面について、JIS規格規定のRa、Rq、及びRzの各表面粗さ値を測定した。
また、透明基材として、片面にポリエステル樹脂系プライマー層が形成された、厚さ100μmで連続帯状の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A4300:商品名、東洋紡社製)を用意した。
次に、上記PETフィルムのプライマー層が形成された面に、乾燥時の厚さが7μmとなるように透明接着剤(主剤が平均分子量3万のポリエステルポリウレタンポリオール12質量部、及び硬化剤がキシリレンジイソシアネート系プレポリマー1質量部から成る2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤)をコーティングして、透明接着剤層を形成した。
【0064】
次に、上記PETフィルムの片面のプライマー層上に、上記透明接着剤層を介して、上記電解銅箔の粗面側がPETフィルム側(透明接着剤層側)を向くようにドライラミネートして積層し、連続帯状の積層体を得た。ドライラミネートした後、50℃、3日間養生して、該接着剤を硬化せしめた。
【0065】
次に、上記連続帯状の積層体に対して、その電解銅箔をフォトリソグラフィー法を利用したエッチングにより、開口部及びライン部とから成る金属パターン層としての銅メッシュ層を形成した。
上記エッチングは、具体的には、上記積層体の電解銅箔の露出面(この場合は鏡面)全面に感光性のネガ型エッチングレジストを塗布後、所望のメッシュパターンのマスクを密着露光し、現像、硬膜処理、ベーキングして、メッシュのライン部に相当する領域上にはレジスト層が残留し、開口部に相当する領域上にはレジスト層がないようなパターンにレジスト層を加工した後、塩化第二鉄水溶液で、レジスト層非形成領域の電解銅箔を、エッチング除去してメッシュ状の開口部を形成し、次いで、水洗、レジスト剥離、洗浄、乾燥を順次行った。
【0066】
メッシュ状領域のメッシュ形状は、その開口部が正方形で、非開口部となる線状部分のライン幅は20μm、そのライン間隔は300μm、ライン部の高さは12μmであった。このようにして、幅寸法605mmの電極フィルムシートを得た。
【0067】
(参考試験2)
参考試験1において、透明基材上に、透明接着剤層を介して、積層する電解銅箔の面を、鏡面にした以外は、前記参考試験1と同様にして電極フィルムシートを得た。
尚、上記電解銅箔の鏡面において、全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を測定したところ、該電解銅箔鏡面自体の比(RSCE/RSCI)は、0.9であった。
【0068】
(参考試験3)
参考試験1において、金属薄膜とする金属箔として、厚さ12μmで連続帯状の圧延アルミニウム箔(1N30−B1:商品名、住軽アルミ箔社製)を用い、該アルミニウム箔の圧延ローラと非接触の側の面(非平滑面)を透明基材側に向けて、該透明基材上に、透明接着剤層を介して積層した以外は、前記参考試験1と同様にして電極フィルムシートを得た。
尚、上記アルミニウム箔の非平滑面について、全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を測定したところ、該アルミニウム箔非平滑面自体の比(RSCE/RSCI)は、0.8であった。
【0069】
(参考試験4)
参考試験3において、透明基材上に、透明接着剤層を介して、積層するアルミニウム箔の面を、平滑面にした以外は、前記参考試験3と同様にして電極フィルムシートを得た。
尚、上記アルミニウム箔の平滑面について、全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を測定したところ、該アルミニウム箔平滑面自体の比(RSCE/RSCI)は、0.3であった。
【0070】
上記、各参考試験に対して、以下の点を評価した。その結果を表1に記載する。
(1)金属箔面自体の比(RSCE/RSCI
透明基材上に積層前の状態の金属箔について、透明基材側に接着される予定の面を、間に何も層を介さずに、JIS Z8722−1982に準拠して測定した該金属箔(薄膜)自体の全光線反射率(%)は、分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、CM−3600d)を反射モードに設定し、光源は標準の光D65、視野2°、測定径8mmφとして、検出器を、反射光のうち拡散反射光と鏡面反射光の両方を総合した全反射光の(積分)強度を測定するようなSCI(Specular Component Included)モードに設定して、Y値(3刺激値XYZのY)を測定した。また、金属箔の透明基材側の面のJIS Z8722−1982による拡散光線反射率(%)は、同様に分光測色計を用いて、光源、視野、及び測定径は上記と同じにして、鏡面反射光を光トラップで吸収遮断することによって、検出器が反射光のうち拡散反射光のみの(積分)強度を測定するようなSCE(Specular Component Excluded)モードに設定して、Y値(3刺激値XYZのY)を測定した。
(2)金属箔面の算術平均粗さRa
金属箔面の微細凹凸の中心線平均粗さRaをJIS B0601(1982年度版)に準じて触針式の表面粗さ計にて測定した。
(3)金属箔面の自乗平均粗さRq
金属箔面の自乗平均粗さRqは、金属箔面の微細凹凸の測定曲線(山そのもの)を自乗した平均値として触針式の表面粗さ計にて測定した。
(4)金属箔面の十点平均粗さRzJIS
金属箔面の微小凹凸は、微小凹凸の輪郭曲線に粗さ曲線を採用したときの、該輪郭曲線の十点平均粗さRzJISをJIS B0601(1994年版)に準じて触針式の表面粗さ計にて測定した。
なお、上記参考試験におけるRzの測定は、Rzとエッチング後のヘイズとの相関の有無の再確認を目的とした為、参考例1及び参考例2のみの測定に留めた。
(5)ヘイズ値
JIS K 7105−1981「プラスチックの光学的特性試験方法」に準じて、エッチング処理後の電極フィルムのヘイズ値を測定した。
【0071】
【表1】

【0072】
〔実施例及び比較例〕
(実施例1)
先ず、アルミニウム薄膜として、厚さ12μmで連続帯状の圧延アルミニウム箔(1N30−B1:商品名、住軽アルミ箔社製)を用意した。尚、該アルミニウム箔は、平滑面と非平滑面を有する。透明基材1上に積層前の状態の該アルミニウム箔(パターン未形成)は、接着される予定の平滑面において、間に何も層を介さずに、全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を測定したところ、該アルミニウム薄膜自体の比(RSCE/RSCI)は、0.3であった。
【0073】
また、透明基材1として、片面にポリエステル樹脂系プライマー層が形成された、厚さ100μmで連続帯状の無着色透明な2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A4300:商品名、東洋紡社製)を用意した。
次に、上記PETフィルムのプライマー層が形成された面に、乾燥時の厚さが7μmとなるように透明接着剤(主剤が平均分子量3万のポリエステルポリウレタンポリオール12質量部、及び硬化剤がキシリレンジイソシアネート系プレポリマー1質量部から成る2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤)をコーティングして、透明接着剤層2を形成した。
【0074】
次に、上記PETフィルムの片面のプライマー層上に、上記透明接着剤層を介して、上記アルミニウム箔の平滑面側がPETフィルム側を向くようにドライラミネートして積層し、連続帯状の積層体を得た。ドライラミネートした後、50℃、3日間養生して、該接着剤を硬化せしめた。
【0075】
次に、上記連続帯状の積層体に対して、そのアルミニウム箔をフォトリソグラフィー法を利用したエッチングにより開口部及びライン部とから成る電極としてのアルミニウムパターン層3を形成した。
上記エッチングは、具体的には、上記積層体のアルミニウム箔の露出面全面に感光性のネガ型エッチングレジストを塗布後、所望のメッシュパターンのマスクを密着露光し、現像、硬膜処理、ベーキングして、メッシュのライン部に相当する領域上にはレジスト層が残留し、開口部に相当する領域上にはレジスト層がないようなパターンにレジスト層を加工した後、塩化第二鉄水溶液で、レジスト層非形成領域のアルミニウム箔を、エッチング除去してメッシュ状の開口部を形成し、次いで、水洗、レジスト剥離、洗浄、乾燥を順次行った。
【0076】
メッシュ状領域のメッシュ形状は、その開口部が正方形で、非開口部となる線状部分のライン幅は20μm、そのライン間隔は300μm、ライン部の高さは12μmであった。このようにして、幅寸法605mmの電極フィルムシート10を得た。
【0077】
次に、上記で得られた電極フィルムシート10を長さ50mm、幅50mmの正方形形状に切断したものを試験片とした。該試験片において、透明基材側から測定光を入射し、該透明基材及び透明接着剤層を介して、アルミニウムパターン層の透明基材側の面(平滑面)の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を測定した。該アルミニウムパターン層の比(RSCE/RSCI)は、0.34であった。
尚、該アルミニウムパターン層の平滑面のJIS Z8722−1982に準拠して測定した全光線反射率(%)は、分光測色計(コニカミノルタセンシング株式会社製、CM−3600d)を反射モードに設定し、光源は標準の光D65、視野2°、測定径8mmφとして、検出器を、反射光のうち、拡散反射光と鏡面反射光の両方を総合した全反射光の(積分)強度を測定するようなSCIモードに設定して、Y値を測定した。また、該平滑面のJIS Z8722−1982による拡散光線反射率(%)は、同様に分光測色計を用いて、光源、視野、及び測定径は上記と同じにして、鏡面反射光を光トラップで吸収遮断することによって、検出器が反射光のうち拡散反射光のみの(積分)強度を測定するようなSCEモードに設定して、Y値を測定した。
【0078】
(比較例1)
前記実施例1において、透明基材上に、透明接着剤層を介して、積層するアルミニウム箔の面を、非平滑面側にした以外は、前記実施例1と同様にして電極フィルムシートを得た。尚、該アルミニウム箔の非平滑面において、透明基材上に積層前の状態(パターン未形成)の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を、間に何も層を介さずに、測定したところ、該アルミニウム薄膜の比(RSCE/RSCI)は、0.8であった。
次に、上記で得られた電極フィルムシートを長さ50mm、幅50mmの正方形形状に切断したものを試験片とした。該試験片において、透明基材側から測定光を入射し、該透明基材及び透明接着剤層を介して、アルミニウムパターン層の透明基材側の面(非平滑面)の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を測定した。該アルミニウムパターン層の比(RSCE/RSCI)は、0.72であった。
【0079】
(評価結果)
上記の実施例及び比較例において得られた電極フィルムのヘイズ値をJIS K 7105−1981「プラスチックの光学的特性試験方法」に準じて測定した。その結果を表2に記載する。
【0080】
【表2】

【0081】
(結果のまとめ)
表2より、得られた電極フィルムにおいて、透明基材側から該透明基材及び透明接着剤層を介して、アルミニウムパターン層の透明基材側の面の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を測定した結果、該アルミニウムパターン層の比(RSCE/RSCI)が0.4以下である実施例1では、ヘイズ値が6.0%以下の低ヘイズ(低い曇り度)が得られた。一方、該アルミニウムパターン層の比(RSCE/RSCI)が0.4超過である比較例1では、ヘイズ値が36.5%と高ヘイズ(高い曇り度)であった。
また、表2より、透明基材上に積層する前のアルミニウム薄膜自体の透明基材側面(積層する側の面)における比(RSCE/RSCI)と、該アルミニウム薄膜に対応するアルミニウムパターン層の透明基材側の面の比(RSCE/RSCI)は、同程度の値であり、また、比(RSCE/RSCI)とヘイズ値との間には相関性が見られる。
また、参考例1及び参考例2においては、参考例3よりも中心線平均粗さRaは小さいにもかかわらず、逆にヘイズ値は増加している。また、参考例1においては、参考例2よりも十点平均粗さRzJISは小さいにもかかわらず、逆にヘイズ値は増加している。また、参考例3においては、参考例4よりも自乗平均粗さRqは小さいにもかかわらず、逆にヘイズ値は大幅に増加している。また、参考例1乃至参考例4において、一貫して、(RSCE/RSCI)とヘイズ値との間には相関性が見られる。
故に、金属箔の積層する側の面の十点平均粗さRzJIS、自乗平均粗さRq、及び中心線平均粗さRaを特定しても、確実に電極フィルムのヘイズを低減することは困難である。これに対して、透明基材側から該透明基材及び透明接着剤層を介して、アルミニウムパターン層の透明基材側の面の全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)を0.4以下に設定することにより、確実に電極フィルムのヘイズを低減することが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 透明基材
2 透明接着剤
3 アルミニウムパターン層(電極)
3a 平滑面
3b 非平滑面
4 光学機能層
6 スペーサ
7 入力ペン
10,20,30 電極フィルム
40 透明導電膜
50A,50B タッチパネル
60 表示装置
G 2枚の電極フィルムの間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、複数の開口部とこれを囲繞し区画するライン部を有するアルミニウムパターン層からなる電極が設けられ、且つ、該アルミニウムパターン層の該透明接着剤層側表面のJIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.4以下である、タッチパネル用電極フィルム。
【請求項2】
透明基材の一方の面に、複数の開口部とこれを囲繞し区画するライン部を有するアルミニウムパターン層からなる電極を備えたタッチパネル用電極フィルムの製造方法であって、
(i)JIS Z 8722に準拠して測定した全光線反射率(RSCI)に対する拡散光線反射率(RSCE)の比(RSCE/RSCI)が0.4以下の面を有するアルミニウム薄膜を用意する工程、
(ii)透明基材の一方の面に、透明接着剤層を介して、前記アルミニウム薄膜を、そのRSCE/RSCIが0.4以下の面を前記透明基材と向き合わせて積層する工程、及び
(iii)前記アルミニウム薄膜を所定のパターン形状にエッチングして電極とする工程を含むことを特徴とする、タッチパネル用電極フィルムの製造方法。
【請求項3】
透明基材の一方の面に透明導電性の電極を有する2枚の電極フィルムが、スペーサを介して互いに電極を対向させて配置されたタッチパネルであって、
該2枚の電極フィルムのうち少なくとも一方の電極フィルムが前記請求項1に記載のタッチパネル用電極フィルムであることを特徴とする、タッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−76200(P2011−76200A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224487(P2009−224487)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】