説明

タッチパネル装置、表示装置、位置検出方法、コンピュータプログラム及び記録媒体

【課題】被接触面での複数の遮光物の同時的な接離を検出する場合であっても高速な応答性及び追従性を実現できるタッチパネル装置、表示装置、位置検出方法及びコンピュータプログラム、並びに該コンピュータプログラムが記録される記録媒体を提供する。
【解決手段】被接触面の広い範囲で走査を行う広域走査の結果に基づき、1又は複数の遮光物の位置を検出し、これによって検出された遮光物の夫々に対して前記広域走査より狭い範囲での狭域走査を行い、該狭域走査の結果に基づき、該遮光物の位置を検出する。前記広域走査の結果に基づく遮光物の位置検出と、前記狭域走査の結果に基づく該遮光物の位置検出を交互に行い、これら検出の結果に基づいて該遮光物の位置変化を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被接触面の広い範囲で走査を行う広域走査の結果、及び狭い範囲で走査を行う狭域走査の結果に基づき、前記被接触面上の遮光物の位置を検出するタッチパネル装置、表示装置、位置検出方法及びコンピュータプログラム、並びに該コンピュータプログラムが記録される記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の発光素子と、該発光素子に対応する受光素子とを備え、被接触面上の遮光物の位置を検出する、いわゆる光学式タッチパネル装置が普及している。
【0003】
例えば、特許文献1においては、遮光物に対する位置検出の初期に、表示面の幅に対応して配列された発光素子をその一端から他端に向けて全て順次点灯させて該表示面の全領域を走査する第1モードと、該第1モードで検出された座標位置を含ませて全領域の走査よりも狭い範囲内で前記発光素子を順次点灯させて走査する第2モードとを有し、走査領域を狭くすることで走査周期を短くできるため、遮光物の追従性を高める上に、線を描画した場合でも途切れが発生しない表示装置が開示されている。
【0004】
また、特許文献2においては、前記第1モードに係る第1の走査領域、及び前記第2のモードに係る第2走査領域に加え、該第1の走査領域より狭く、該第2の走査領域より広い第3の走査領域を走査する第3モードを有し、表示面で文字を書くような、頻繁に検出状態が途切れる場合であっても、検出欠落の生じない座標位置検出ができる検出装置が開示されている。
【0005】
更に、特許文献3においては、指又はペンなどの遮光物の移動が高速である場合は、発光素子における検出ビーム数を減らすことにより、走査周期を早くすることにより追従性を確保し、また、遮光物の移動が低速である場合は、発光素子における検出ビーム数を増加させ、走査時の検出ビームの軌跡を密にすることにより、一層、精度の高い座標位置情報を得ることが可能であり、複雑な文字又は図形等の描画をより正確に行うことができる座標位置検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−306241号公報
【特許文献2】特開2005−284899号公報
【特許文献3】特開2007−65767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した、特許文献1〜3においては、遮光物が単一である場合についてのみ開示されており、遮光物が複数である場合については工夫も示唆もされておらず、前記表示面に複数の遮光物が同時的に接離する場合には、事実上、対応が困難である。
【0008】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被接触面の広い範囲で走査を行う広域走査の結果に基づき、1又は複数の遮光物の位置を検出し、これによって検出された遮光物の夫々に対して前記広域走査より狭い範囲での狭域走査を行い、該狭域走査の結果に基づき、該遮光物の位置を検出する。前記広域走査の結果に基づく遮光物の位置検出と、前記狭域走査の結果に基づく該遮光物の位置検出を交互に行い、これら検出の結果に基づいて該遮光物の位置変化を検知することにより、前記被接触面での複数の遮光物の同時的な接離を検出する場合であっても高速な応答性及び追従性を実現できるタッチパネル装置、表示装置、位置検出方法及びコンピュータプログラム、並びに該コンピュータプログラムが記録される記録媒体を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るタッチパネル装置は、被接触面と、該被接触面に沿って光を走査する走査手段とを備え、前記被接触面の広い範囲で走査を行う広域走査の結果、及び狭い範囲で走査を行う狭域走査の結果に基づき、前記被接触面上の遮光物の位置を検出するタッチパネル装置において、前記広域走査の結果に基づき、1又は複数の遮光物の位置を検出する第1検出手段と、該第1検出手段によって検出された遮光物の夫々に対する前記狭域走査の結果に基づき、該遮光物の位置を検出する第2検出手段とを備えており、前記第1検出手段及び第2検出手段による検出は交互に行われ、該検出の結果に基づき、遮光物の位置変化を検知するように構成してあることを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、前記走査手段による広域走査の結果に基づき、前記第1検出手段が1又は複数の遮光物の位置を検出し、該第1検出手段によって検出された遮光物の夫々に対する前記狭域走査の結果に基づき、前記第2検出手段が該遮光物の位置を検出する。前記第1検出手段による検出と、前記第2検出手段による検出は交互に行われ、これら検出の結果に基づき、遮光物の位置変化を検知する。
【0011】
本発明に係るタッチパネル装置は、前記第1検出手段及び第2検出手段によって検出された遮光物の位置を記憶する記憶部と、前記第2検出手段によって検出された遮光物の移動速度を算出する速度算出手段とを備え、該速度算出手段の算出結果に基づき、前記狭域走査の順を定めるように構成してあることを特徴とする。
【0012】
本発明にあっては、前記記憶部に、前記第1検出手段及び第2検出手段によって検出された遮光物の位置が記憶され、前記速度算出手段は、該記憶部に記憶された遮光物の位置に基づき、前記第2検出手段によって検出された遮光物の移動速度を算出する。このような速度算出手段の算出結果に基づき、複数の遮光物の中における、前記狭域走査の順が定められる。
【0013】
本発明に係るタッチパネル装置は、前記記憶部は前記第1検出手段が検出する遮光物の数の制限を示す制限数を記憶しており、前記第2検出手段によって検出される遮光物の数が前記制限数より小さい場合、前記第1検出手段による検出が行われるように構成してあることを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、前記記憶部には前記制限数が記憶されており、例えば、前記第2検出手段によって検出される遮光物の数が前記制限数より小さい場合、前記第1検出手段による検出が行われる。
【0015】
本発明に係る表示装置は、前述の発明の何れか一つに記載のタッチパネル装置と、該タッチパネル装置の被接触面によって覆われる表示部とを備え、前記第1検出手段及び第2検出手段の検出結果から検出される遮光物の位置に基づいて、前記表示部に描画を行うようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、前記タッチパネル装置の被接触面上における、遮光物の位置変化(例えば、移動)が前記第1検出手段及び第2検出手段の検出結果から検出され、これに基づいて、該遮光物の位置変化に応じた前記表示部への描画が行われる。
【0017】
本発明に係る位置検出方法は、被接触面と、該被接触面に沿って光を走査する走査手段とを備えるタッチパネル装置で、前記被接触面の広い範囲で走査を行う広域走査の結果、及び狭い範囲で走査を行う狭域走査の結果に基づき、前記被接触面上の遮光物の位置を検出する位置検出方法において、前記広域走査の結果に基づき、1又は複数の遮光物の位置を検出する第1検出ステップと、該第1検出ステップによって検出された遮光物の夫々に対する前記狭域走査の結果に基づき、該遮光物の位置を検出する第2検出ステップと、交互に行われる前記第1検出ステップ及び第2検出ステップによる検出の結果に基づき、遮光物の位置変化を検知するステップとを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明に係るコンピュータプログラムは、被接触面と、該被接触面に沿って光を走査する走査手段とを備えるタッチパネル装置を構成するコンピュータに、前記被接触面の広い範囲で走査を行う広域走査の結果、及び狭い範囲で走査を行う狭域走査の結果に基づき、前記被接触面上の遮光物の位置を検出させるコンピュータプログラムにおいて、コンピュータに、前記広域走査の結果に基づき、1又は複数の遮光物の位置を検出させる第1検出ステップと、コンピュータに、前記第1検出ステップによって検出された遮光物の夫々に対する前記狭域走査の結果に基づき、該遮光物の位置を検出させる第2検出ステップと、コンピュータに、交互に行われる前記第1検出ステップ及び第2検出ステップによる検出の結果に基づき、遮光物の位置変化を検知させるステップとを実行させることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、前記走査手段による広域走査の結果に基づき、1又は複数の遮光物の位置が検出され、このように検出された遮光物の夫々に対する前記狭域走査の結果に基づき、該遮光物の位置が検出される。このような、広域走査の結果に基づく遮光物の位置検出と、狭域走査の結果に基づく遮光物の位置検出は交互に行われ、これら検出の結果に基づき、遮光物の位置変化が検知される。
【0020】
本発明に係る記録媒体は、前述の発明のコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、前記記録媒体に前述のコンピュータプログラムを記録する。コンピュータが前記記録媒体からコンピュータプログラムを読み出して、前述のタッチパネル装置、表示装置、及び位置検出方法がコンピュータにより実現される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、前記被接触面上に複数の遮光物が同時的に接離する場合であっても、遮光物の検出における高速な応答性及び追従性を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は本発明の実施の形態1の電子黒板装置を概念的に表示した概念図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態1の電子黒板装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1の電子黒板装置における、制御部の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1の電子黒板装置における、光の走査の処理を説明する機能ブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態1の電子黒板装置における、広域走査を説明する説明図である。
【図6】本発明の実施の形態1の電子黒板装置における、狭域走査を説明する説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1の電子黒板装置における、遮光物の検出及び描画を説明するフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態1の電子黒板装置において、表示部の表示面上を移動する遮光物の一例を示す例示図である。
【図9】本発明の実施の形態2の電子黒板装置における、制御部の要部構成を示す機能ブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態2の電子黒板装置における、遮光物の検出及び描画を説明するフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態2の電子黒板装置における、遮光物の検出及び描画を説明するフローチャートである。
【図12】本発明の実施の形態3の電子黒板装置の要部構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の実施の形態に係る、タッチパネル装置、表示装置、位置検出方法、コンピュータプログラム及び記録媒体を、いわゆる電子黒板装置に適用した場合を例として、図面に基づいて詳述する。
【0025】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の電子黒板装置100を概念的に表示した概念図であり、図2は本発明の実施の形態1の電子黒板装置100の要部構成を示す機能ブロック図である。
【0026】
本発明の実施の形態1の電子黒板装置100は、発光素子及び受光素子を備え、遮光物の位置を検出する、いわゆる光学式タッチパネル装置を備えており、例えば、USB及びHDMIを介してパーソナルコンピュータ(以下、PCと言う。)と接続されている。なお、図2中、点線によって囲まれている部分は本発明のタッチパネル装置に該当する。
【0027】
電子黒板装置100は制御部1、ROM2及びRAM3を備えている。また、電子黒板装置100は、後述する座標履歴が記憶されている記憶部4と、現時刻及び所定時刻からの時間の経過を測る計時部5と、前記PCとのデータの送受信を行うI/F部6とを備えている。
【0028】
更に、電子黒板装置100は、表示部7と、該表示部7への文字、線画等の表示を制御する表示制御部8と、後述する走査部9による走査結果に基づいて利用者から表示部7上の位置指定、文字、線画等の入力を受け付けるタッチパネル10とを備えている。
【0029】
記憶部4は、例えば、フラッシュメモリ、EEPROM、HDD、MRAM(磁気抵抗メモリ)、FeRAM(強誘電体メモリ)、又は、OUM等の不揮発性の記憶媒体により構成されている。また、記憶部4には前記座標履歴として、後述する広域走査及び狭域走査によって検出された遮光物の位置(座標)が時刻に対応付けて記憶される。更に、記憶部4には、各遮光物に対応する後述の狭域、並びに後述する遮光物の移動速度が遮光物毎に記憶される。
【0030】
表示部7は、例えばLCD又はEL(Electroluminescence)パネル等からなり、表示部7にはタッチパネル10を介して利用者から受け付ける文字、線画等が表示される。また、表示部7の表示面を覆うようにタッチパネル10が設けられている。
【0031】
表示制御部8は、DSP(Digital Signal Processor)のようなプロセッサにより構成され、表示部7への画像表示を制御する。制御部1は、走査部9による走査結果に係る座標に基づき、文字、線画等の表示を指示し、表示制御部8は、これに応じて表示部7に文字、線画等を表示させる。
【0032】
ROM2には制御プログラムが予め格納されており、RAM3はデータを一時的に記憶し、記憶順、記憶位置等に関係なく読み出すことが可能である。また、RAM3は、例えば、ROM2から読み出されたプログラム、該プログラムを実行することにより発生する各種データ等を記憶する。
【0033】
制御部1は、ROM2に予め格納されている制御プログラムをRAM3上にロードして実行することによって、バスを介して上述した各種ハードウェアの制御を行い、前記座標履歴を作成し、また、装置全体を本発明の電子黒板装置100として動作させる。
【0034】
図3は本発明の実施の形態1の電子黒板装置100における、制御部1の要部構成を示す機能ブロック図である。制御部1は、CPU11と、座標算出部12と、遮光物管理部13と、第1検出部14と、第2検出部15とを備えている。
【0035】
座標算出部12は、ペン形入力器又は指等の遮光物の表示部7の表示面上の座標を算出する。詳しくは、タッチパネル10によって、表示部7の表示面上の光遮断が検出された場合に送られる、後述する強度信号に基づき、斯かる遮光物の座標を算出する。
【0036】
遮光物管理部13は、走査部9の走査によって検出される遮光物の位置(座標)を管理する。すなわち、遮光物管理部13は、記憶部4に保存される座標履歴の生成、該座標履歴の更新等を行う。
【0037】
第1検出部14は、表示部7の表示面上における、広い領域例えば、全領域から1又は複数の遮光物の位置を検出する。詳しくは、タッチパネル10の走査部9が表示部7の表示面上の全領域に対して光の走査(以下、広域走査と言う。)を行い、タッチパネル10から取得される該広域走査の結果に係る強度信号に基づき、第1検出部14は表示部7の表示面上の遮光物の座標を検出する。
【0038】
第2検出部15は、表示部7の表示面上における、一部領域から、第1検出部14によって検出された遮光物の位置を検出する。例えば、前記広域走査の結果に基づき、第1検出部14が複数の遮光物の位置を検出した場合、CPU11は、後述するような方法によって、該遮光物を含む所定範囲の狭域を遮光物毎に設定する。タッチパネル10の走査部9は設定された各狭域に対して光の走査(以下、狭域走査と言う。)を行う。第2検出部15は、この際、タッチパネル10から取得される該狭域走査の結果に係る強度信号に基づき、第1検出部14によって検出された遮光物毎の座標を検出する。
【0039】
CPU11は、走査部9の発光素子及び受光素子を制御し、また前記狭域走査のための狭域を設定する。すなわち、CPU11は、第1検出部14によって検出された遮光物の座標に基づき、該座標を中心とする所定の走査領域(狭域)を設定する。より詳しくは、当該遮光物のX座標を中心とするX軸上の所定範囲、並びに当該遮光物のy座標を中心とするY軸上の所定範囲を設定する。
【0040】
タッチパネル10は、いわゆる光学式タッチパネルである。すなわち、ペン形入力器又は指等の先端が表示部7の表示面の直近に近づいたことにより光遮断が検出されることによって、斯かる遮光物(ペン形入力器又は指等)の位置を検出する。すなわち、走査結果に係る信号(強度信号)が制御部1に送出され、これに基づき、座標算出部12は斯かる遮光物の座標を算出する。このようにして、タッチパネル10は、利用者から表示部7上の位置指定、文字、線画等の入力を受け付ける。
【0041】
タッチパネル10は、表示部7の表示面に沿って光を走査する走査部9を備えており、走査部9は、光を照射する複数の発光素子を有する発光部91と、対応する発光素子からの光を受光する複数の受光素子を有する受光部92と、制御部1(CPU11)からの発光信号及び受光信号を夫々の発光部91及び受光部92に割り当てるアドレスデコーダ93と、受光したか否かの判断に用いられる、受光部92からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ94とを備えている。
【0042】
図4は本発明の実施の形態1の電子黒板装置100における、光の走査の処理を説明する機能ブロック図である。
【0043】
発光部91は、図示しないマルチプレクサを有しており、発光素子の夫々は該マルチプレクサに接続されている。また、受光部92は、図示しないマルチプレクサを有しており、受光素子の夫々は該マルチプレクサに接続されている。更に、発光部91の各発光素子は、受光部92の何れか一つ受光素子と対応(対向)するように構成されている。
【0044】
制御部1のCPU11は、複数の発光素子を発光させるための発光信号をアドレスデコーダ93へ出力すると共に、複数の受光素子を受光させるための受光信号をアドレスデコーダ93へ出力する。アドレスデコーダ93は、CPU11からの信号に応じて、発光素子の内、発光に係る何れかの発光素子を特定する信号を発光部91に出力し、受光素子の内で、前記特定された発光素子に対応する受光素子を特定する信号を受光部92に出力する。
【0045】
このように特定された発光素子は赤外光を発光し、該発光素子に対応する受光素子は赤外光を受光する。この際、該受光素子によって受光した赤外光の強度を電圧値で示す強度信号がA/Dコンバータ94に出力される。A/Dコンバータ94は前記強度信号を例えば、8ビットのデジタル信号に変換し、変換後の強度信号を制御部1に出力する。制御部1は、全ての受光素子からの強度信号を取得するために、各受光素子から強度信号を取得する処理を順次繰り返す。
【0046】
制御部1のCPU11は、各受光素子から取得した強度信号に基づき、該受光素子での受光量を計算する。CPU11は、計算された受光量が予め定められている閾値を超過している場合は、当該受光素子が受光する赤外光の光路は遮断されていないと判定する。また、計算された受光量が、予め定められている閾値以下である場合は、当該受光素子が受光する赤外光の光路が遮断されていると判定する。
【0047】
このようなCPU11の判定結果に基づき、座標算出部12、第1検出部14及び第2検出部15は遮光物の位置を算出する。すなわち、座標算出部12、第1検出部14及び第2検出部15は、赤外光の光路が遮断されている受光素子を特定し、特定された受光素子の位置に基づき、表示部7の表示面上の遮光物の座標を算出する処理を行う。
【0048】
上述したように、タッチパネル10は、走査部9による前記広域走査及び狭域走査の結果に係る強度信号を制御部1に送出する。前記広域走査の際は、全ての発光素子及び受光素子による光の発光・受光が行われ、前記狭域走査の際には、CPU11によって設定された各狭域に係る発光素子及び受光素子のみによる光の発光・受光が行われる。
【0049】
以下に、前記狭域走査及び広域走査について詳しく説明する。図5は本発明の実施の形態1の電子黒板装置100における、広域走査を説明する説明図であり、図6は本発明の実施の形態1の電子黒板装置100における、狭域走査を説明する説明図である。
【0050】
表示部7の表示面は矩形状であり、該表示面の図面視左側及び上側には、縁に沿って複数の発光素子911、911、…が並んで配置されている。発光素子911は、例えば、赤外光を発光する発光ダイオード(LED)である。図中には、各発光素子911が発光する赤外光の光路を実線の矢印にて示している。
【0051】
左側の複数の発光素子911、911、…は、夫々の発光素子911が発光する赤外光の光路が前記表示面に沿って互いに平行をなすように設けられており、上側の発光素子911、911、…も同様に設けられている。
【0052】
すなわち、図面視、左右方向(X軸方向)たる上側の発光素子911、911、…と、図面視、上下方向(Y軸方向)たる左側の複数の発光素子911、911、…とは、その光路が相互直交するように設けられている。
【0053】
また、表示部7の表示面上であって、発光素子911、911、…と対向する位置には、受光素子921、921、…が設けられている。
【0054】
すなわち、表示部7の表示面の図面視右側及び下側には、縁に沿って複数の発光素子921、921、…が並んで配置されている。受光素子921は、赤外光を受光する受光ダイオードである。各発光素子911からの赤外光は、対向する受光素子921によって受光されるように構成されている。
【0055】
発光素子の場合と同様に、下側の受光素子921、921、…と、右側の複数の受光素子921、921、…とは、受光すべき光路が相互直交するように設けられている。
【0056】
前記広域走査の場合、走査部9は表示部7の表示面の全体を走査して遮光物を検出する処理を行う。すなわち、X軸方向の一端から他端まで1つずつ発光素子911を順次発光させていき、表示部7の表示面の遮光物が検出する。
斯かる遮光物の検出においては、発光素子911から発せられる光のうち、直交方向の光だけに基づいて遮光物を検出するように構成しても良く、斜め方向からのものを含む光に基づいて遮光物を検出するように構成しても良い。
【0057】
また、前記狭域走査の場合は、CPU11によって設定された狭域に対してのみ走査を行う。詳しくは、例えば広域走査によって複数の遮光物が検出された場合、CPU11は夫々の遮光物に対応する狭域を設定する。該狭域は、例えば、各遮光物のX座標を中心として、発光素子911の8個分のX軸上の範囲、及び該遮光物のY座標を中心として、発光素子911の8個分のY軸上の範囲である。
【0058】
一方、1個の発光素子911が赤外光を発光し、該発光素子911に対応する受光素子921が受光したと判定する処理には約100μs程度かかる。従って、例えば、表示部7が60インチの大型ディスプレイであって、X軸方向における発光素子911の数が約300個ある場合、画面全体を走査(広域走査)するのにかかる時間は、およそ30msとなる。
【0059】
一般的な入力デバイスであるマウスの応答速度は10ms以下であることから、30msで広域走査を行うと応答性が非常に悪く、描画時に線が途切れるなど、利用者による高速な描画操作に追従することができない。
【0060】
また、狭域走査においては、応答時間は発光素子911の16個分の1.6msとなり、追従性が向上するものの、前記狭域走査のみを繰り返した場合、新たな遮光物の追加に対応することが出来ないという問題がある。
【0061】
そこで、本発明においては、前記狭域走査及び広域走査が走査を交互して行われるように構成している。すなわち、まず、前記広域走査が行われ、該広域走査によって遮光物が検出された場合、各遮光物に対して前記狭域走査を行うことにより、検出された遮光物の周辺を集中的に走査するので応答性を高める。従って、利用者による高速な描画操作及び新たな遮光物の追加にも対応することが出来る。
【0062】
このような広域走査及び狭域走査の結果に係る前記強度信号が制御部1に送られ、上述したように、該強度信号に基づき、斯かる遮光物の座標が算出され、該座標を、検出の順及び計時部5からの計時結果(時刻)に関連付けた座標履歴が生成される。生成された座標履歴は記憶部4に保存され、表示制御部8は、記憶部4に保存された座標履歴に基づき、例えば、表示部7に線画を表示する。
【0063】
更に、前記広域走査においては、制限数を設けることが好ましい。斯かる‘制限数’とは、走査部9による広域走査によって検出する遮光物の数を制限するものである。実際、広域走査において検出される遮光物の数に制限はないが、遮光物の数が多すぎる場合、広域走査及び狭域走査における所要時間が長くなることから、高い応答性を維持するためには、制限数を設け、広域走査によって検出される遮光物の数を制限することが好ましい。以下においては、前記制限数が「5」である場合を例として説明する。なお、制限数は必須ではない。
【0064】
図7は本発明の実施の形態1の電子黒板装置100における、遮光物の検出及び描画を説明するフローチャートである。説明の便宜上、図8に示すように、表示部7の表示面に5つの遮光物(ペン形入力器又は指等)が検出され、これらが図中矢印にて表示する方向に移動し、これに応じて表示部7での描画が行われるものとする。
【0065】
まず、走査部9は、表示部7の表示面上での遮光物が検出されるまで、上述の広域走査を行う(S101)。
【0066】
この際、走査部9による広域走査の結果に係る強度信号に基づき、CPU11は遮光物が検出されたか否かを判定する(S102)。CPU11は遮光物が検出されなかったと判定した場合(S102:NO)、処理をS101に戻し、再び広域走査が行われる。
【0067】
一方、CPU11が、遮光物が検出されたと判定した場合(S102:YES)、第1検出部14が前記広域走査の結果に係る強度信号に基づき、上述した方法により遮光物の座標を検出する。上述したように、広域走査における制限数は「5」であるので、最大5つの遮光物の検出が可能である。このようにして検出された5つの遮光物(P1、P2、P3、P4、P5)の座標は記憶部4に記憶される(S103)。但し、該広域走査の際、制限数たる5つの遮光物が検出され次第、走査部9は広域走査を中止する。
【0068】
この際、遮光物管理部13は上述した方法により、検出順に遮光物毎の座標及び時刻を対応付けた座標履歴を生成し、生成された座標履歴が記憶部4に記憶される。また、表示制御部8は該座標履歴に基づき、表示部7に描画を行い、以降においても、該座標履歴の追加、更新、削除などに応じて表示部7への描画を行う。
【0069】
次いで、CPU11はM個の狭域を設定する。すなわち、前記広域走査にて検出された遮光物は5つであるので、CPU11は、上述した方法により、夫々の遮光物に対応する5つの狭域を設定する(S104)。以下、説明の便宜上、設定された5つの狭域は、X座標順に「1番目狭域」、「2番目狭域」、…「5番目狭域」と言う。例えば、P1には「1番目狭域」が対応し、P2には「2番目狭域」が対応する。
【0070】
以降、走査部9はCPU11によって設定された各狭域に対して狭域走査を行う。
詳しくは、CPU11は、「T」に「1」を代入し(S105)、“T番目”の狭域に対する狭域走査を走査部9に指示する。CPU11の指示に応じて走査部9は、“T番目”の狭域に対する狭域走査を行うが(S106)、「T」は「1」であるので、“1番目”の狭域に対する狭域走査を行う。
【0071】
次いで、1番目の狭域に対する狭域走査の結果に係る強度信号に基づき、第2検出部15は該1番目の狭域における遮光物(P1)の座標を検出する。また、CPU11は第2検出部15による検出結果に基づき、該1番目の狭域における遮光物(P1)の有無を判定する(S107)。
【0072】
第2検出部15によって遮光物の座標が検出され、CPU11が前記1番目の狭域に遮光物が有ると判定した場合(S107:YES)、第2検出部15によって検出された座標が記憶部4に記憶される(S109)。すなわち、遮光物管理部13は、第2検出部15によって検出された座標を、記憶部4に記憶されている座標履歴に書き込む。これによって、P1が移動した場合、移動後のP1の座標が記憶され、該座標に基づく描画が行われる。従って、高い応答性にて遮光物の移動(位置変化)に応じた描画が可能となる。
【0073】
一方、第2検出部15による座標の検出が失敗した場合、例えば、P1が表示部7の表示面から離反された場合、CPU11は前記1番目の狭域に遮光物がないと判定し(S107:NO)、遮光物管理部13は記憶部4に記憶されている座標履歴からP1の座標を削除する(S108)。
【0074】
この後、CPU11は前記「M」の数が「T」の数と同一であるか否かを判定する(S110)。ここで「T」は“1”であり、「M」は“5”である(S104参照)。従って、CPU11は前記「M」の数が「T」の数と同一でないと判定し(S110:NO)、「T+1」を「T」に代入し(S111)、再びS106の処理に戻る。すなわち、ここで、「T」は“1”であるので、“2”が新たに「T」に代入されてS106の処理が実行される。
【0075】
このような処理は、S110で前記「M」の数が「T」の数と同一であると判定されるまで、すなわち、「T」が“5”となるまで繰り返される。換言すれば、5つの狭域に対する狭域走査が完了するまで、S106からS111までの処理が繰り返される。
【0076】
例えば、“5番目”の狭域に対する狭域走査を終了した場合、CPU11は前記「M」の数が「T」の数と同一であると判定し(S110:YES)、記憶部4に記憶されている座標履歴に基づき、現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が制限数たる「5」未満であるか否かを判定する(S112)。
【0077】
CPU11は現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が制限数未満でないと判定した場合(S112:NO)、すなわち、以上の処理において、第2検出部15による座標の検出が失敗して前記座標履歴からその座標が削除された遮光物がない場合、処理をS105に戻し、S105からS111までの処理を繰り返す。
【0078】
CPU11は現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が制限数未満であると判定した場合(S112:YES)、すなわち、以上の処理において、第2検出部15による座標の検出が失敗して前記座標履歴からその座標が削除された遮光物が存在した場合、現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が「0」であるか否かを判定する(S113)。
【0079】
CPU11は、現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が「0」でないと判定した場合(S113:NO)、処理をS101に戻し、再び、走査部9によって広域走査が行われ、各遮光物に対する狭域走査の間における、新たな遮光物の追加に対応する。
【0080】
一方、CPU11は、現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が「0」であると判定した場合(S113:YES)、例えば、表示部7の表示面から全ての遮光物が離反した場合、表示制御部8に描画の中止を指示する。表示制御部8はCPU11の指示に応じて、表示部7への描画を中止する(S114)。
【0081】
以上のように、本発明に係る電子黒板装置100においては、広域走査及び狭域走査が交互に行われるので、高い応答性を維持しながら、複数の遮光物の検出ができ、かつ表示部7の表示面と遮光物の接離に素早く対応できる。
【0082】
なお、本発明は以上の記載に限るものでない。例えば、広域走査後における狭域走査によって遮光物の座標が検出され、かつ、該遮光物の位置(座標)が変化していた場合、該位置変化後の遮光物の位置が当該狭域の中心に位置するように、その都度、CPU11が該狭域を設定し直すように構成しても良い。
【0083】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る電子黒板装置100は、実施の形態1に係る電子黒板装置100と略同様の構成を有するが、制御部1の構成において、実施の形態1と異なる。
【0084】
図9は本発明の実施の形態2の電子黒板装置100における、制御部1の要部構成を示す機能ブロック図である。本発明の実施の形態2の電子黒板装置100において、制御部1は、実施の形態1と同様に、CPU11と、座標算出部12と、遮光物管理部13と、第1検出部14と、第2検出部15とを備えており、更に速度算出部16を備えている。
【0085】
速度算出部16は表示部7の表示面上を遮光物が移動する場合、記憶部4に記憶された座標履歴に基づき、該遮光物の移動速度を算出する。例えば、速度算出部16は、前回の狭域走査の結果に係る、所定の遮光物に対応する座標及び時刻と、今回の狭域走査の結果に係る、該遮光物に対応する座標及び時刻とに基づき、該遮光物の移動速度を算出する。
【0086】
このように、速度算出部16によって算出された遮光物の移動速度は、遮光物毎に関連付けられ、記憶部4に記憶される。また、これに限るものでない。前回の狭域走査の結果に係る座標及び時刻の代わりに、当該狭域走査の直前に施された広域走査の結果に係る座標及び時刻を用いても良い。
【0087】
本発明の実施の形態2に係る電子黒板装置100は、以上の構成を有し、算出された各遮光物の移動速度に基づき、前記狭域走査の順序が定められる。すなわち、各遮光物の移動速度に応じて、複数の遮光物に対してどのような順に前記狭域走査を施すかが定められ、定められた結果に基づき、走査部9が狭域走査を行う。
【0088】
更に、本発明の実施の形態2においては、後述する低速グループに属する何れかの遮光物を指定するための指定番号「N」が記憶部4に記憶される。該指定番号「N」は、デフォルトとして「0」が記憶されている。
【0089】
図10及び図11は本発明の実施の形態2の電子黒板装置100における、遮光物の検出及び描画を説明するフローチャートである。説明の便宜上、図8に示すように、表示部7の表示面に5つの遮光物(ペン形入力器又は指等)が検出され、これらが図中矢印にて表示する方向に移動し、これに応じて表示部7での描画が行われるものとし、広域走査における前記制限数は、実施の形態1と同様に「5」であるとする。
【0090】
まず、走査部9は、表示部7の表示面上での遮光物が検出されるまで、上述の広域走査を行う(S201)。
【0091】
この際、走査部9による広域走査の結果に係る強度信号に基づき、CPU11は遮光物が検出されたか否かを判定する(S202)。CPU11は遮光物が検出されなかったと判定した場合(S202:NO)、処理をS201に戻し、再び広域走査が行われる。
【0092】
一方、CPU11が、遮光物が検出されたと判定した場合(S202:YES)、第1検出部14が前記広域走査の結果に係る強度信号に基づき、上述した方法により遮光物の座標を検出する。上述したように、最大5つの遮光物の検出が可能である。このようにして検出された5つの遮光物(P1、P2、P3、P4、P5)の座標は記憶部4に記憶される(S203)。但し、該広域走査の際、制限数たる5つの遮光物が検出され次第、走査部9は広域走査を中止する。
【0093】
すなわち、遮光物管理部13が座標履歴を生成し、生成された座標履歴が記憶部4に記憶される。この際、表示制御部8は該座標履歴に基づき、表示部7に描画を行い、以降においても、該座標履歴の追加、更新、削除などに応じて表示部7への描画を行う。
【0094】
次いで、CPU11はM個の狭域を設定する。すなわち、前記広域走査にて検出された遮光物は5つであるので、CPU11は夫々の遮光物に対応する5つの狭域を設定する(S204)。斯かる狭域の設定については既に説明しており、詳しい説明を省略する。以下、P1、P2、P3、P4及びP5に対応する狭域を、夫々P1対応狭域、P2対応狭域、P3対応狭域、P4対応狭域及びP5対応狭域と言う。
【0095】
次に、CPU11は検出された5つの遮光物に対して、移動速度に基づくグルーピングを行う(S205)。該グルーピングは、例えば、遮光物を高速と低速との2つのグループに定義する。また、該定義は、速度算出部16による算出結果に基づいて行われる。例えば、CPU11は、所定の遮光物の移動速度が10cm/s以上である場合、該遮光物を高速グループに割り当て、10cm/s以下である場合、該遮光物を低速グループに割り当てる。
【0096】
一方、最初の広域走査の後のように、速度算出部16による移動速度の算出ができない場合は、デフォルトとして高速グループに割り当てるように構成する。以下においては、説明の便宜上、P1、P2、P3、P4、P5の順に移動速度が速く、P1及びP2が高速グループに割り当てられ、P3、P4及びP5が低速グループに割り当てられた場合を例に説明する。
【0097】
この際、遮光物管理部13はグループ毎に遮光物を再記憶し、所定の割当番号を付する。例えば、高速グループのP1及びP2には夫々「1」及び「2」の割当番号が付され、低速グループのP3、P4及びP5には夫々「1」、「2」及び「3」の割当番号が付される。
【0098】
以上のように、移動速度に基づくグルーピングの後、まず高速グループに対する狭域走査が行われる。
【0099】
詳しくは、CPU11は前記グルーピングの結果に基づき、高速グループに属する遮光物があるか否かを判定する(S206)。CPU11が高速グループに属する遮光物がないと判定した場合(S206:NO)、処理はS213に進む。
【0100】
一方、CPU11は高速グループに属する遮光物があると判定した場合(S206:YES)、走査部9に狭域走査の実行を指示する。CPU11の指示に応じて、走査部9は高速グループに属する各遮光物に対応する狭域に対して狭域走査を行う。
【0101】
斯かる高速グループに対する狭域走査においても、走査部9は、例えば、遮光物の移動速度に基づいて狭域走査を行う。上述したように、P1がP2より移動速度が速いので、走査部9による狭域走査は、P1対応狭域において先に施される(S207)。
【0102】
次いで、該P1対応狭域に対する狭域走査の結果に係る強度信号に基づき、第2検出部15は該P1対応狭域における遮光物(P1)の座標を検出する。また、CPU11は第2検出部15による検出結果に基づき、該P1対応狭域における遮光物(P1)の有無を判定する(S208)。
【0103】
第2検出部15によって遮光物の座標が検出され、CPU11が前記P1対応狭域に遮光物が有ると判定した場合(S208:YES)、第2検出部15によって検出された座標が記憶部4に記憶される(S209)。すなわち、遮光物管理部13は、第2検出部15によって検出された座標を、記憶部4に記憶されている座標履歴に書き込む。これによって、P1が移動した場合、移動後のP1の座標が記憶され、該座標に基づく描画が行われる。従って、高い応答性にて遮光物の移動(位置変化)に応じた描画が可能となる。更に、移動速度が一番早いP1に対する狭域走査を先に行うので、遮光物の高速移動にも対応することが出来る。
【0104】
次いで、速度算出部16は記憶部4に記憶されている座標履歴に基づき、上述した方法によって、P1の移動速度を算出し(S210)、算出された移動速度は再び記憶部4に記憶される。
【0105】
一方、第2検出部15による座標の検出が失敗した場合、例えば、P1が表示部7の表示面から離反された場合、CPU11は前記P1対応狭域に遮光物がないと判定し(S208:NO)、遮光物管理部13は記憶部4に記憶されている座標履歴からP1の座標を削除する(S211)。
【0106】
S210又はS211の処理の後、CPU11は前記グルーピングの結果に基づき、高速グループに属する全ての遮光物に対する狭域走査が終了したか否か判定する(S212)。以上の記載例においては、P1(P1対応狭域)に対する狭域走査のみが行われているので、CPU11は高速グループに属する全ての遮光物に対する狭域走査が終了していないと判定し(S212:NO)、処理をS207に戻す。
【0107】
以降、P2(P2対応狭域)に対しても、上述したS207からS211までの処理が行われた場合、CPU11は高速グループに属する全ての遮光物に対する狭域走査が終了したと判定し(S212:YES)、処理はS213に進む。
【0108】
このように、S212にて高速グループに属する全ての遮光物に対する狭域走査が終了したと判定した場合、又は前記S206にて高速グループに属する遮光物がないと判定した場合、CPU11は前記グルーピングの結果に基づき、低速グループに属する遮光物があるか否かを判定する(S213)。
【0109】
CPU11が低速グループに属する遮光物がないと判定した場合(S213:NO)、処理はS222に進む。一方、CPU11は低速グループに属する遮光物があると判定した場合(S213:YES)、低速グループに属する遮光物に対する狭域走査が1回目であるか否かを判定する(S214)。
【0110】
斯かる判定は、記憶部4に記憶されている指定番号「N」に基づいて行われる。例えば、指定番号「N」が「0」である場合、CPU11は低速グループに係る狭域走査が1回目であると判定し、指定番号「N」が「0」でない場合、狭域走査が1回目でないと判定する。
【0111】
CPU11は狭域走査が1回目でないと判定した場合(S214:NO)、指定番号「N」に対応する遮光物に対する狭域走査を走査部9に指示する。詳しくは、CPU11は低速グループに属する遮光物の中、前記割当番号が該指定番号「N」と同一である遮光物に対する狭域走査を指示する。
【0112】
CPU11の指示に応じて、走査部9は、前記割当番号が「N」である遮光物に対応する狭域に対して狭域走査を行う(S215)。
【0113】
一方、CPU11は低速グループに係る狭域走査が1回目であると判定した場合(S214:YES)、指定番号「N」に「1」を代入して(S216)、低速グループに属する遮光物の中、前記割当番号が該指定番号「N」と同一である遮光物、すなわち、前記割当番号が「1」である遮光物に対する狭域走査を指示する。この場合、走査部9は、前記割当番号が「1」である遮光物に対応する狭域に対して狭域走査を行う(S215)。
【0114】
上述したように前記割当番号が「1」であるP3に対する狭域走査が施された場合、P3対応狭域に対する狭域走査の結果に係る強度信号に基づき、第2検出部15は該P3対応狭域における遮光物(P3)の座標を検出する。また、CPU11は第2検出部15による検出結果に基づき、該P3対応狭域における遮光物(P3)の有無を判定する(S217)。
【0115】
第2検出部15によって遮光物の座標が検出され、CPU11が前記P3対応狭域に遮光物が有ると判定した場合(S217:YES)、第2検出部15によって検出された座標が記憶部4に記憶される(S218)。すなわち、遮光物管理部13は、第2検出部15によって検出された座標を、記憶部4に記憶されている座標履歴に書き込む。これによって、P3が移動した場合、移動後のP3の座標が記憶され、該座標に基づく描画が行われる。
【0116】
次いで、速度算出部16は記憶部4に記憶されている座標履歴に基づき、上述した方法によって、P3の移動速度を算出し(S219)、算出された移動速度は再び記憶部4に記憶される。
【0117】
一方、第2検出部15による座標の検出が失敗した場合、例えば、P3が表示部7の表示面から離反された場合、CPU11は前記P3対応狭域に遮光物がないと判定し(S217:NO)、遮光物管理部13は記憶部4に記憶されている座標履歴からP3の座標を削除する(S220)。
【0118】
S219又はS220の処理の後、CPU11は前記グルーピングの結果に基づき、低速グループに属する全ての遮光物に対する狭域走査が終了したか否か判定する(S221)。
【0119】
以上の記載例においては、P3(P3対応狭域)に対する狭域走査のみが行われているので、CPU11は低速グループに属する全ての遮光物に対する狭域走査が終了していないと判定し(S221:NO)、指定番号「N」として「N+1」を代入する(S225)。すなわち、現在、「N」は「1」であるので、「N」には「2」が代入され、記憶部4に記憶される。従って、次回には指定番号が「2」(割当番号が「2」)であるP4が狭域走査の対象となる。以降、処理はS206に戻る。
【0120】
しかし、ここで処理はS206に戻るので、再び高速グループに属する遮光物に対する狭域走査が施されることになる。すなわち、低速グループに属する遮光物の中、1つ(P3)に対しての狭域走査のみが終了した時点で、再び高速グループに属する遮光物に対する狭域走査が施され、高速グループに属する遮光物に対する狭域走査が終了した後に、低速グループのP4に対する狭域走査が施される。
【0121】
換言すれば、P1、P2、P3の順に狭域走査が施された後、P1、P2、P4の順に狭域走査が施され、続いてP1、P2、P5の順に狭域走査が施される。このように、本発明の実施の形態2に係る電子黒板装置100においては、移動が速い遮光物(高速グループ)に対する狭域走査の優先度を高めて、該遮光物に対する追従性を高める。
【0122】
上述したようにして、P1、P2、P5の順の狭域走査が終了した場合、すなわち、P5(P5対応狭域)に対しても、上述したS215からS220までの処理が行われた場合、CPU11は低速グループに属する全ての遮光物に対する狭域走査が終了したと判定し(S221:YES)、処理はS222に進む。
【0123】
このように、S221にて低速グループに属する全ての遮光物に対する狭域走査が終了したと判定した場合、又は前記S213にて低速グループに属する遮光物がないと判定した場合、CPU11は記憶部4に記憶されている座標履歴に基づき、現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が制限数たる「5」未満であるか否かを判定する(S222)。
【0124】
CPU11は現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が制限数未満でないと判定した場合(S222:NO)、すなわち、以上の処理において、第2検出部15による座標の検出が失敗して前記座標履歴からその座標が削除された遮光物がない場合、処理をS205に戻し、この際、記憶部4に記憶されている指定番号「N」をリセットする。
【0125】
CPU11は現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が制限数未満であると判定した場合(S222:YES)、すなわち、以上の処理において、第2検出部15による座標の検出が失敗して前記座標履歴からその座標が削除された遮光物が存在した場合、現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が「0」であるか否かを判定する(S223)。
【0126】
CPU11は、現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が「0」でないと判定した場合(S223:NO)、処理をS201に戻し、再び、走査部9によって広域走査が行われ、各遮光物に対する狭域走査の間における、新たな遮光物の追加に対応する。
【0127】
一方、CPU11は、現在の表示部7の表示面上の遮光物の数が「0」であると判定した場合(S223:YES)、例えば、表示部7の表示面から全ての遮光物が離反した場合、表示制御部8に描画の中止を指示する。表示制御部8はCPU11の指示に応じて、表示部7への描画を中止する(S224)。
【0128】
以上のように、本発明に係る電子黒板装置100においては、遮光物の移動速度に基づいて狭域走査を行うので、遮光物に対する追従性を高めると共に、遮光物が高速に移動する場合においても、該遮光物の移動に応じて描画を行うことが出来る。
【0129】
一方、遮光物の移動速度が速いことから、次回の狭域走査の前に当該狭域を超えて移動してしまう場合が想定される。このような場合は、交互に行われる広域走査によって新たな遮光物として検出されるので、適当な対応が可能となる。
【0130】
以上の記載においては、グルーピングの処理を行う場合を例として説明したがこれに限るものでない。例えば、該グルーピングを行わず、速度算出部16によって算出された移動速度に基づき、移動速度の速い順に、当該遮光物に対応する狭域に対して、走査部9が狭域走査を行うように構成しても良い。
【0131】
なお、本発明は以上の記載に限るものでない。例えば、上述したような、制御部1、記憶部4及び計時部5にて行われる処理が、本発明に係る電子黒板装置100と接続しているPCにて行われるように構成してもよい。
【0132】
更に、以上の記載においては、低速グループに属する各遮光物に対して狭域走査を施す間に、高速グループに属する遮光物に対して狭域走査を施すことにより、移動が速い遮光物に対応する場合を例にあげて説明したが、これに限るものでない。例えば、高速グループに対する狭域走査の場合は、低速グループに対する狭域走査に比べて、その走査の範囲を広くするように構成しても良い。
【0133】
すなわち、上述した例においては、狭域走査の際、発光素子911の8個分の範囲にて走査が行われ、これは高速グループ及び低速グループに対して同一である場合を例に挙げている。しかし、これに限るものでなく、高速グループに対する狭域走査の場合は、斯かる走査範囲を、発光素子911の16個分の範囲に広げて走査が行われるように構成しても良い。
【0134】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0135】
(実施の形態3)
図12は本発明の実施の形態3の電子黒板装置100の要部構成を示す機能ブロック図である。実施の形態3の電子黒板装置100は、動作を行うためのコンピュータプログラムが、I/F部6を介してCD−ROM等の可搬型記録媒体Aで提供することも可能であるように構成されている。さらに、実施の形態3の電子黒板装置100は、前記コンピュータプログラムを、図示しない外部装置から通信部20を介してダウンロードすることも可能であるように構成されている。以下に、その内容を説明する。
【0136】
実施の形態3の電子黒板装置100は外装(又は内装)の記録媒体読み取り装置(図示せず)を備えており、該記録媒体読み取り装置に、前記広域走査の結果に基づき、1又は複数の遮光物の位置を検出(第2検出)させ、検出された遮光物の夫々に対する前記狭域走査の結果に基づき、該遮光物の位置を検出(第2検出)させ、交互に行われる前記第1検出ステップ及び第2検出ステップによる検出の結果に基づき、遮光物の位置変化を検知させるプログラム等が記録された可搬型記録媒体Aを挿入して、例えば、CPU11がROM2にこのプログラムをインストールする。かかるプログラムはRAM3にロードして実行される。これにより、実施の形態1の本発明の電子黒板装置100として機能する。
【0137】
前記記録媒体としては、いわゆるプログラムメディアであっても良く、磁気テープ及びカセットテープ等のテープ系、フレキシブルディスク及びハードディスク等の磁気ディスク並びにCD−ROM/MO/MD/DVD等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM、EPROM、EEPROM、フラッシュROM等による半導体メモリを含めた固定的にプログラムコードを担持する媒体であっても良い。
【0138】
通信部20を介してネットワークからプログラムコードをダウンロードするように流動的にプログラムコードを担持する媒体であっても良い。なお、このように通信ネットワークからプログラムをダウンロードする場合には、そのダウンロード用のプログラムは予め本体装置に格納しておくか、あるいは別な記録媒体からインストールされるものであっても良い。なお、本発明は、前記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0139】
実施の形態1と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0140】
1 制御部
4 記憶部
7 表示部
9 走査部
10 タッチパネル
11 CPU
14 第1検出部
15 第2検出部
16 速度算出部
100 電子黒板装置
A 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接触面と、該被接触面に沿って光を走査する走査手段とを備え、前記被接触面の広い範囲で走査を行う広域走査の結果、及び狭い範囲で走査を行う狭域走査の結果に基づき、前記被接触面上の遮光物の位置を検出するタッチパネル装置において、
前記広域走査の結果に基づき、1又は複数の遮光物の位置を検出する第1検出手段と、
該第1検出手段によって検出された遮光物の夫々に対する前記狭域走査の結果に基づき、該遮光物の位置を検出する第2検出手段とを備えており、
前記第1検出手段及び第2検出手段による検出は交互に行われ、該検出の結果に基づき、遮光物の位置変化を検知するように構成してあることを備えることを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記第1検出手段及び第2検出手段によって検出された遮光物の位置を記憶する記憶部と、
前記第2検出手段によって検出された遮光物の移動速度を算出する速度算出手段とを備え、
該速度算出手段の算出結果に基づき、前記狭域走査の順を定めるように構成してあることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
前記記憶部は前記第1検出手段が検出する遮光物の数の制限を示す制限数を記憶しており、
前記第2検出手段によって検出される遮光物の数が前記制限数より小さい場合、前記第1検出手段による検出が行われるように構成してあることを特徴とする請求項2に記載のタッチパネル装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れかに記載のタッチパネル装置と、
該タッチパネル装置の被接触面によって覆われる表示部とを備え、
前記第1検出手段及び第2検出手段の検出結果から検出される遮光物の位置に基づいて、前記表示部に描画を行うようにしてあることを特徴とする表示装置。
【請求項5】
被接触面と、該被接触面に沿って光を走査する走査手段とを備えるタッチパネル装置で、前記被接触面の広い範囲で走査を行う広域走査の結果、及び狭い範囲で走査を行う狭域走査の結果に基づき、前記被接触面上の遮光物の位置を検出する位置検出方法において、
前記広域走査の結果に基づき、1又は複数の遮光物の位置を検出する第1検出ステップと、
該第1検出ステップによって検出された遮光物の夫々に対する前記狭域走査の結果に基づき、該遮光物の位置を検出する第2検出ステップと、
交互に行われる前記第1検出ステップ及び第2検出ステップによる検出の結果に基づき、遮光物の位置変化を検知するステップと
を含むことを特徴とする位置検出方法。
【請求項6】
被接触面と、該被接触面に沿って光を走査する走査手段とを備えるタッチパネル装置を構成するコンピュータに、前記被接触面の広い範囲で走査を行う広域走査の結果、及び狭い範囲で走査を行う狭域走査の結果に基づき、前記被接触面上の遮光物の位置を検出させるコンピュータプログラムにおいて、
コンピュータに、前記広域走査の結果に基づき、1又は複数の遮光物の位置を検出させる第1検出ステップと、
コンピュータに、前記第1検出ステップによって検出された遮光物の夫々に対する前記狭域走査の結果に基づき、該遮光物の位置を検出させる第2検出ステップと、
コンピュータに、交互に行われる前記第1検出ステップ及び第2検出ステップによる検出の結果に基づき、遮光物の位置変化を検知させるステップと
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のコンピュータプログラムを記録してあることを特徴とするコンピュータでの読み取りが可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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