タッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ検出方法
【課題】誤動作を防止し、操作感を向上させるとともに、使用メモリを削減することができるタッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ検出方法を得る。
【解決手段】タッチパネル10Aの1水平ラインにおけるRawdataを取得するRawdata取得部31と、Rawdata取得部31で取得された1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出する平均ベースライン算出部32と、タッチパネル10Aの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと平均ベースラインとを比較し、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定するタッチ検出処理部33とを備える。
【解決手段】タッチパネル10Aの1水平ラインにおけるRawdataを取得するRawdata取得部31と、Rawdata取得部31で取得された1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出する平均ベースライン算出部32と、タッチパネル10Aの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと平均ベースラインとを比較し、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定するタッチ検出処理部33とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電容量(Projected cap)方式のタッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量方式のタッチパネルは、指の接触等による静電容量の変化を測定することによってタッチ位置を検出するものであり、例えば携帯電話やタブレットPC等に適用されている。
【0003】
図6は、従来の一般的なタッチパネル装置を示すブロック構成図である。図6において、このタッチパネル装置は、タッチパネル10、タッチ制御IC(Integrated Circuit)20、MCU(Micro Control Unit)30、MCU30内にベースラインデータ(後述する)専用に割り当てられたメモリ領域であるメモリ40およびホストコントローラ50を備えている。なお、MCU30は、CPUとメモリ(1次メモリ)とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)で構成されている。
【0004】
タッチパネル10は、後述する液晶ディスプレイ(以下、「LCD(Liquid Crystal Display)」と称する)の表面に設けられ、タッチ制御IC20からの制御命令に応じて、各センサのRawdataをアナログ信号で出力する。
【0005】
タッチ制御IC20は、MCU30からの制御命令に応じて、タッチパネル10に対するセンシングの仕方等を制御するとともに、タッチパネル10からのアナログ信号のRawdataを、デジタル信号に変換して出力する。
【0006】
MCU30は、ホストコントローラ50からの制御命令に応じて、タッチ制御IC20の動作を制御するとともに、タッチ制御IC20からのデジタル信号のRawdataが入力される。また、MCU30は、メモリ40に格納されたベースラインデータを読み出すとともに、入力されたRawdataに基づいて、ベースラインデータを更新する。
【0007】
さらに、MCU30は、次回のタッチ検出処理時に使用するために、更新後のベースラインデータをメモリ40に書き込む。また、MCU30は、タッチ制御IC20からのRawdataとメモリ40から読み出したベースラインデータとの差分データに基づいて、タッチ検出処理によってタッチの有無を検出し、タッチ検出信号をホストコントローラ50に出力する。
【0008】
ホストコントローラ50は、MCU30の動作を制御するとともに、MCU30からのタッチ検出信号が入力される。また、ホストコントローラ50は、LCDのタイミングコントローラ(図示せず)に対して、LCDの液晶書き込みを行うための制御命令を出力する。
【0009】
以下、図7のフローチャートを参照しながら、図6に示したタッチパネル装置のMCU30の動作について説明する。
【0010】
まず、MCU30は、タッチパネル10およびタッチ制御IC20から、タッチパネル10の全センサ(1フレームの全センサ交点)について、Rawdataを一括して取得する(ステップS51)。
続いて、MCU30は、メモリ40に格納されたベースラインデータを読み出す(ステップS52)。
【0011】
次に、MCU30は、タッチ制御IC20からのRawdataとメモリ40から読み出したベースラインデータとを比較して、タッチパネル10の全センサについてベースラインデータを更新し、次回のタッチ検出処理時に使用するために、更新後のベースラインデータをメモリ40に書き込む(ステップS53)。
【0012】
具体的には、MCU30は、タッチパネル10の各センサについて、Rawdataがベースラインデータよりも大きい場合には、ベースラインデータをインクリメントし、Rawdataがベースラインデータよりも小さい場合には、ベースラインデータをデクリメントし、Rawdataとベースラインデータとが等しい場合には、ベースラインデータを更新しない。なお、タッチ検出時には、ベースラインデータを更新しない。
【0013】
続いて、MCU30は、タッチ制御IC20からのRawdataから、メモリ40から読み出したベースラインデータを減算し、タッチパネル10の全センサについて差分データを算出する(ステップS54)。
【0014】
次に、MCU30は、タッチ制御IC20からのRawdataとステップS54で算出した差分データとに基づいて、タッチパネル10の各センサについてタッチ検出処理を行い、タッチの有無をタッチ検出信号としてホストコントローラ50に出力して(ステップS55)、図7の処理を終了する。
【0015】
具体的には、MCU30は、タッチ検出処理において、ステップS54で算出した差分データがスレッシュホールド以上の場合にタッチ有りと判定し、差分データがスレッシュホールド以下の場合にタッチなしと判定する。
【0016】
すなわち、第M(Mは整数)フレーム時間におけるRawdataを例示した図8に表されるように、Rawdataが、ベースラインデータから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合に、タッチ有りと判定される。
【0017】
ここで、図9の断面図を参照しながら、従来の一般的なタッチパネル10を備えた液晶表示装置について説明する。図9において、この液晶表示装置は、LCD60と、LCD60の表面に設けられたタッチパネル10とから構成されている。
【0018】
LCD60は、第1偏光板61、TFT(Thin Film Transistor)側ガラス基板62、TFT側ガラス基板62の表面に形成された液晶駆動電極63、カラーフィルタ側ガラス基板64、および第2偏光板65が、層状に重ねられて構成されている。なお、液晶は、TFT側ガラス基板62と液晶駆動電極63との間に注入等されるが、図示を省略している。また、カラーフィルタおよび配向膜も、図示を省略している。
【0019】
タッチパネル10は、第2偏光板65とエアギャップを介して設けられたシールドITO(Indium Tin Oxide)11、センサ基板12、センサ基板12の表面に形成されたセンサITO13、接着剤14、および接着剤14によって接着されるカバーガラス15が、層状に重ねられて構成されている。
【0020】
一般的に、液晶表示装置においては、LCD60の液晶書き込みに伴ってノイズが発生する。以下、このノイズを「LCDノイズ」と称する。なお、最も大きなLCDノイズは、液晶駆動電極63に供給される共通電圧Vcomの変動によるノイズである。
【0021】
ここで、図9に示した液晶表示装置では、カラーフィルタ側ガラス基板64は約0.4mm、第2偏光板65は約0.2mm、エアギャップは約0.5mm、センサ基板12は約0.5mmの厚さをそれぞれ有している。
【0022】
すなわち、LCDノイズの発生源である液晶駆動電極63から、タッチパネル10のセンサITO13までは、約1.6mmの距離が確保される。また、シールドITO11が存在するとともに、シールドITO11は、グランド(GND)に接続されている。そのため、図9に示した液晶表示装置は、LCDノイズに対して強い構成となっている。
【0023】
一方、近年では、静電容量方式のタッチパネルの薄型化が進んでおり、LCD内部にセンサが取り込まれたオンセル方式のタッチパネルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0024】
図10は、従来の薄型のタッチパネルを備えた液晶表示装置を示す断面図である。図10において、この液晶表示装置は、LCD60Aと、LCD60Aの内部にセンサITO13が形成された薄型のタッチパネル10Aとから構成されている。
【0025】
LCD60Aは、第1偏光板61、TFT側ガラス基板62、TFT側ガラス基板62の表面に形成された液晶駆動電極63、カラーフィルタ側ガラス基板64、および第2偏光板65が、層状に重ねられて構成されている。なお、液晶は、TFT側ガラス基板62と液晶駆動電極63との間に注入等されるが、図示を省略している。また、カラーフィルタおよび配向膜も、図示を省略している。
【0026】
タッチパネル10Aは、カラーフィルタ側ガラス基板64の表面に形成されたセンサITO13、第2偏光板65の表面に設けられた接着剤14、および接着剤14によって接着されるカバーガラス15が、層状に重ねられて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2010−232162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
図10に示した従来の薄型のタッチパネルを備えた液晶表示装置では、カラーフィルタ側ガラス基板64が約0.4mmの厚さなので、LCDノイズの発生源である液晶駆動電極63から、タッチパネル10AのセンサITO13までの距離が、約0.4mmとなる。
【0029】
すなわち、図10に示した液晶表示装置では、図9に示した液晶表示装置と比較して、液晶駆動電極63とセンサITO13との距離が近くなる。また、図9に示したシールドITO11が省略されていることから、LCDノイズの影響を受けやすい構成となっている。そのため、薄型のタッチパネル10Aを備えたタッチパネル装置においては、LCDノイズの影響によって、Rawdataが急激に上下する場合がある。
【0030】
このとき、薄型のタッチパネル10Aを備えたタッチパネル装置について、第Mフレーム時間におけるRawdataを例示した図11に表されるように、LCDノイズの影響によってRawdataがスレッシュホールド以下に変動することにより、タッチされているにも関わらず、タッチなしと判定される場合がある。
【0031】
これは、ベースラインデータがLCDノイズの影響によるRawdataの急激な変動に追従できていないことが原因である。図12は、従来の薄型のタッチパネル装置のタッチされているポイントにおけるRawdataの変動を例示する説明図である。ここで、このポイントは、連続してタッチされ続けているものとする。
【0032】
図12において、Rawdataが急激にベースラインデータ以下となった後、次のフレーム時間で、ベースラインデータまたはスレッシュホールド以上となっている点がある。このとき、ベースラインデータは、デクリメントされた後にインクリメントされるか、またはタッチ検出時であるとして更新されないので、ほぼ一定の値を示すこととなる。
【0033】
すなわち、Rawdataが短時間に大きな変動量でベースラインデータの上下を推移する場合には、ベースラインデータがRawdataの急激な変動に追従することができず、ほぼ一定の値を示し続けることとなる。そのため、Rawdataが短時間に大きく下方に変動した場合には、タッチされているにも関わらず、タッチなしと判定される場合がある。
【0034】
したがって、LCDノイズの影響によって誤動作が生じるとともに操作感が低下し、タッチパネル装置のパフォーマンスが低下するという問題があった。
また、更新後のベースラインデータは、次回のタッチ検出処理時に使用するために、ベースラインデータ専用に割り当てられたメモリに書き込まれるので、このメモリの容量を、1フレームの全センサ交点分確保する必要があるという問題もあった。
【0035】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、LCDノイズの影響を低減することにより、誤動作を防止し、操作感を向上させるとともに、使用メモリを削減することができるタッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ検出方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
この発明に係るタッチパネル装置は、静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置であって、タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得するRawdata取得部と、Rawdata取得部で取得された1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出する平均ベースライン算出部と、タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと平均ベースラインとを比較し、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定するタッチ検出処理部と、を備えたものである。
【0037】
また、この発明に係るタッチパネルのタッチ検出方法は、静電容量方式のタッチパネルのタッチ検出方法であって、タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得するRawdata取得ステップと、Rawdata取得ステップで取得された1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出する平均ベースライン算出ステップと、タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと平均ベースラインとを比較し、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定するタッチ検出処理ステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0038】
この発明に係るタッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ検出方法によれば、Rawdata取得部は、タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得し、平均ベースライン算出部は、Rawdata取得部で取得された1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出し、タッチ検出処理部は、タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと平均ベースラインとを比較し、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定する。
そのため、LCDノイズの影響を低減することにより、タッチパネルの誤動作を防止し、操作感を向上させることができる。また、従来必要であった1フレームの全センサ交点分のメモリを不要とすることにより、使用メモリを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置のタッチパネルにおける1水平ライン上のRawdataの取得位置を示す説明図である。
【図3】(a)〜(c)は、図2に示した各取得位置における差分データを示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置のMCUの動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置の第Mフレーム時間におけるRawdataを例示する説明図である。
【図6】従来の一般的なタッチパネル装置を示すブロック構成図である。
【図7】従来の一般的なタッチパネル装置のMCUの動作を示すフローチャートである。
【図8】従来の一般的なタッチパネル装置の第Mフレーム時間におけるRawdataを例示する説明図である。
【図9】従来の一般的なタッチパネルを備えた液晶表示装置を示す断面図である。
【図10】従来の薄型のタッチパネルを備えた液晶表示装置を示す断面図である。
【図11】従来の薄型のタッチパネル装置の第Mフレーム時間におけるRawdataを例示する説明図である。
【図12】従来の薄型のタッチパネル装置のタッチされているポイントにおけるRawdataの変動を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、この発明に係るタッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ検出方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0041】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置を示すブロック構成図である。図1において、このタッチパネル装置は、タッチパネル10A、タッチ制御IC20、MCU30Aおよびホストコントローラ50を備えている。
【0042】
タッチパネル10Aは、図10に示した薄型のタッチパネルである。また、タッチパネル10Aの動作、並びにタッチ制御IC20およびホストコントローラ50の構成および動作は、上述した図6のものと同様なので、説明を省略する。
【0043】
MCU30Aは、Rawdata取得部31、平均ベースライン算出部32およびタッチ検出処理部33を有している。なお、MCU30Aは、CPUとプログラムを格納したメモリ(1次メモリ)とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)で構成されており、MCU30Aを構成する各ブロックは、メモリにソフトウェアとして記憶されている。
【0044】
ここで、図2、3を参照しながら、タッチパネル10Aに重畳するLCDノイズについて説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置のタッチパネルにおける1水平ライン上のRawdataの取得位置を示す説明図である。また、図3(a)〜(c)は、図2に示した各取得位置における差分データを示す説明図である。
【0045】
具体的には、図3(a)は、図2の取得位置N(Nは整数)における差分データ(Rawdata−ベースラインデータ)を示し、図3(b)は、図2の取得位置N+1における差分データを示し、図3(c)は、図2の取得位置N+2における差分データを示している。この図2、3では、取得位置N+2がタッチされている場合について説明する。
【0046】
図2、3において、差分データの変動は、タッチ位置のオフセット成分を除いて考えると、各取得位置で同一の形状となっていることが分かる。すなわち、タッチパネル10Aの1水平ラインについて、タッチパネル10Aに同一のLCDノイズが重畳していることが分かる。
したがって、タッチパネル10Aの1水平ライン単位で、LCDノイズの影響を低減することを考える。
【0047】
ここで、上述した図8、11を参照すると、1水平ライン上の各センサのRawdataは、ほぼ同じ値をとっていることが分かる。そこで、タッチパネル10Aの1水平ラインにおけるRawdataの平均値をベースライン(以下、「平均ベースライン」と称する)とし、Rawdataと平均ベースラインとの差分データに基づいて、タッチの有無を検出することが考えられる。
【0048】
以下、図4のフローチャートを参照しながら、図1に示したタッチパネル装置のMCU30Aの各部の動作について説明する。
まず、Rawdata取得部31は、タッチパネル10Aの1水平ラインにおけるRawdataを取得する(ステップS1)。
【0049】
続いて、平均ベースライン算出部32は、ステップS1で取得された1水平ラインのRawdataの平均値を算出する(ステップS2)。平均ベースライン算出部32は、算出したRawdataの平均値を、1水平ラインの平均ベースラインとしてMCU30A内のメモリ(1次メモリ)に記憶する。なお、この1次メモリは、汎用メモリ領域であって、別途専用に割り当てる必要のない、他でも使用可能なメモリである。
【0050】
このように、従来は、次回のタッチ検出処理時に使用するために、更新後のベースラインデータを、ベースラインデータ専用に割り当てられたメモリ(図6のメモリ40)に、1フレームの全センサ交点分書き込む必要があったが、算出した平均ベースラインをMCU30A内の1次メモリに記憶することにより、ベースラインデータを次回のタッチ検出処理まで保持する必要がなくなるので、使用メモリを削減することができる。
【0051】
ここで、平均ベースライン算出部32は、隣り合うRawdataの差分がスレッシュホールド以上である場合、すなわちタッチ検出時には、当該Rawdataを平均値の算出から除外する。これにより、タッチ未検出時の基準となる平均ベースラインを高精度に算出することができる。
【0052】
次に、タッチ検出処理部33は、タッチ制御IC20からのRawdataとステップS2で算出した平均ベースラインとに基づいて、タッチパネル10Aの1水平ラインの各センサについてタッチ検出処理を行い、タッチの有無をタッチ検出信号としてホストコントローラ50に出力して(ステップS3)、図4の処理を終了する。
【0053】
具体的には、タッチ検出処理部33は、第M(Mは整数)フレーム時間におけるRawdataを例示した図5に表されるように、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定する。
【0054】
なお、Rawdata取得部31、平均ベースライン算出部32およびタッチ検出処理部33は、続くサイクルにおいて、次の水平ラインについて、順次図4に示した処理を繰り返し実行する。
【0055】
以上のように、実施の形態1によれば、Rawdata取得部は、タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得し、平均ベースライン算出部は、Rawdata取得部で取得された1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出し、タッチ検出処理部は、タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと平均ベースラインとを比較し、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定する。
そのため、LCDノイズの影響を低減することにより、タッチパネルの誤動作を防止し、操作感を向上させることができる。また、従来必要であった1フレームの全センサ交点分のメモリを不要とすることにより、使用メモリを削減することができる。
【符号の説明】
【0056】
10、10A タッチパネル、11 シールドITO、12 センサ基板、13 センサITO、14 接着剤、15 カバーガラス、20 タッチ制御IC、30、30A MCU、31 Rawdata取得部、32 平均ベースライン算出部、33 タッチ検出処理部、40 メモリ、50 ホストコントローラ、61 第1偏光板、62 TFT側ガラス基板、63 液晶駆動電極、64 カラーフィルタ側ガラス基板、65 第2偏光板。
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電容量(Projected cap)方式のタッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静電容量方式のタッチパネルは、指の接触等による静電容量の変化を測定することによってタッチ位置を検出するものであり、例えば携帯電話やタブレットPC等に適用されている。
【0003】
図6は、従来の一般的なタッチパネル装置を示すブロック構成図である。図6において、このタッチパネル装置は、タッチパネル10、タッチ制御IC(Integrated Circuit)20、MCU(Micro Control Unit)30、MCU30内にベースラインデータ(後述する)専用に割り当てられたメモリ領域であるメモリ40およびホストコントローラ50を備えている。なお、MCU30は、CPUとメモリ(1次メモリ)とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)で構成されている。
【0004】
タッチパネル10は、後述する液晶ディスプレイ(以下、「LCD(Liquid Crystal Display)」と称する)の表面に設けられ、タッチ制御IC20からの制御命令に応じて、各センサのRawdataをアナログ信号で出力する。
【0005】
タッチ制御IC20は、MCU30からの制御命令に応じて、タッチパネル10に対するセンシングの仕方等を制御するとともに、タッチパネル10からのアナログ信号のRawdataを、デジタル信号に変換して出力する。
【0006】
MCU30は、ホストコントローラ50からの制御命令に応じて、タッチ制御IC20の動作を制御するとともに、タッチ制御IC20からのデジタル信号のRawdataが入力される。また、MCU30は、メモリ40に格納されたベースラインデータを読み出すとともに、入力されたRawdataに基づいて、ベースラインデータを更新する。
【0007】
さらに、MCU30は、次回のタッチ検出処理時に使用するために、更新後のベースラインデータをメモリ40に書き込む。また、MCU30は、タッチ制御IC20からのRawdataとメモリ40から読み出したベースラインデータとの差分データに基づいて、タッチ検出処理によってタッチの有無を検出し、タッチ検出信号をホストコントローラ50に出力する。
【0008】
ホストコントローラ50は、MCU30の動作を制御するとともに、MCU30からのタッチ検出信号が入力される。また、ホストコントローラ50は、LCDのタイミングコントローラ(図示せず)に対して、LCDの液晶書き込みを行うための制御命令を出力する。
【0009】
以下、図7のフローチャートを参照しながら、図6に示したタッチパネル装置のMCU30の動作について説明する。
【0010】
まず、MCU30は、タッチパネル10およびタッチ制御IC20から、タッチパネル10の全センサ(1フレームの全センサ交点)について、Rawdataを一括して取得する(ステップS51)。
続いて、MCU30は、メモリ40に格納されたベースラインデータを読み出す(ステップS52)。
【0011】
次に、MCU30は、タッチ制御IC20からのRawdataとメモリ40から読み出したベースラインデータとを比較して、タッチパネル10の全センサについてベースラインデータを更新し、次回のタッチ検出処理時に使用するために、更新後のベースラインデータをメモリ40に書き込む(ステップS53)。
【0012】
具体的には、MCU30は、タッチパネル10の各センサについて、Rawdataがベースラインデータよりも大きい場合には、ベースラインデータをインクリメントし、Rawdataがベースラインデータよりも小さい場合には、ベースラインデータをデクリメントし、Rawdataとベースラインデータとが等しい場合には、ベースラインデータを更新しない。なお、タッチ検出時には、ベースラインデータを更新しない。
【0013】
続いて、MCU30は、タッチ制御IC20からのRawdataから、メモリ40から読み出したベースラインデータを減算し、タッチパネル10の全センサについて差分データを算出する(ステップS54)。
【0014】
次に、MCU30は、タッチ制御IC20からのRawdataとステップS54で算出した差分データとに基づいて、タッチパネル10の各センサについてタッチ検出処理を行い、タッチの有無をタッチ検出信号としてホストコントローラ50に出力して(ステップS55)、図7の処理を終了する。
【0015】
具体的には、MCU30は、タッチ検出処理において、ステップS54で算出した差分データがスレッシュホールド以上の場合にタッチ有りと判定し、差分データがスレッシュホールド以下の場合にタッチなしと判定する。
【0016】
すなわち、第M(Mは整数)フレーム時間におけるRawdataを例示した図8に表されるように、Rawdataが、ベースラインデータから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合に、タッチ有りと判定される。
【0017】
ここで、図9の断面図を参照しながら、従来の一般的なタッチパネル10を備えた液晶表示装置について説明する。図9において、この液晶表示装置は、LCD60と、LCD60の表面に設けられたタッチパネル10とから構成されている。
【0018】
LCD60は、第1偏光板61、TFT(Thin Film Transistor)側ガラス基板62、TFT側ガラス基板62の表面に形成された液晶駆動電極63、カラーフィルタ側ガラス基板64、および第2偏光板65が、層状に重ねられて構成されている。なお、液晶は、TFT側ガラス基板62と液晶駆動電極63との間に注入等されるが、図示を省略している。また、カラーフィルタおよび配向膜も、図示を省略している。
【0019】
タッチパネル10は、第2偏光板65とエアギャップを介して設けられたシールドITO(Indium Tin Oxide)11、センサ基板12、センサ基板12の表面に形成されたセンサITO13、接着剤14、および接着剤14によって接着されるカバーガラス15が、層状に重ねられて構成されている。
【0020】
一般的に、液晶表示装置においては、LCD60の液晶書き込みに伴ってノイズが発生する。以下、このノイズを「LCDノイズ」と称する。なお、最も大きなLCDノイズは、液晶駆動電極63に供給される共通電圧Vcomの変動によるノイズである。
【0021】
ここで、図9に示した液晶表示装置では、カラーフィルタ側ガラス基板64は約0.4mm、第2偏光板65は約0.2mm、エアギャップは約0.5mm、センサ基板12は約0.5mmの厚さをそれぞれ有している。
【0022】
すなわち、LCDノイズの発生源である液晶駆動電極63から、タッチパネル10のセンサITO13までは、約1.6mmの距離が確保される。また、シールドITO11が存在するとともに、シールドITO11は、グランド(GND)に接続されている。そのため、図9に示した液晶表示装置は、LCDノイズに対して強い構成となっている。
【0023】
一方、近年では、静電容量方式のタッチパネルの薄型化が進んでおり、LCD内部にセンサが取り込まれたオンセル方式のタッチパネルが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0024】
図10は、従来の薄型のタッチパネルを備えた液晶表示装置を示す断面図である。図10において、この液晶表示装置は、LCD60Aと、LCD60Aの内部にセンサITO13が形成された薄型のタッチパネル10Aとから構成されている。
【0025】
LCD60Aは、第1偏光板61、TFT側ガラス基板62、TFT側ガラス基板62の表面に形成された液晶駆動電極63、カラーフィルタ側ガラス基板64、および第2偏光板65が、層状に重ねられて構成されている。なお、液晶は、TFT側ガラス基板62と液晶駆動電極63との間に注入等されるが、図示を省略している。また、カラーフィルタおよび配向膜も、図示を省略している。
【0026】
タッチパネル10Aは、カラーフィルタ側ガラス基板64の表面に形成されたセンサITO13、第2偏光板65の表面に設けられた接着剤14、および接着剤14によって接着されるカバーガラス15が、層状に重ねられて構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2010−232162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
図10に示した従来の薄型のタッチパネルを備えた液晶表示装置では、カラーフィルタ側ガラス基板64が約0.4mmの厚さなので、LCDノイズの発生源である液晶駆動電極63から、タッチパネル10AのセンサITO13までの距離が、約0.4mmとなる。
【0029】
すなわち、図10に示した液晶表示装置では、図9に示した液晶表示装置と比較して、液晶駆動電極63とセンサITO13との距離が近くなる。また、図9に示したシールドITO11が省略されていることから、LCDノイズの影響を受けやすい構成となっている。そのため、薄型のタッチパネル10Aを備えたタッチパネル装置においては、LCDノイズの影響によって、Rawdataが急激に上下する場合がある。
【0030】
このとき、薄型のタッチパネル10Aを備えたタッチパネル装置について、第Mフレーム時間におけるRawdataを例示した図11に表されるように、LCDノイズの影響によってRawdataがスレッシュホールド以下に変動することにより、タッチされているにも関わらず、タッチなしと判定される場合がある。
【0031】
これは、ベースラインデータがLCDノイズの影響によるRawdataの急激な変動に追従できていないことが原因である。図12は、従来の薄型のタッチパネル装置のタッチされているポイントにおけるRawdataの変動を例示する説明図である。ここで、このポイントは、連続してタッチされ続けているものとする。
【0032】
図12において、Rawdataが急激にベースラインデータ以下となった後、次のフレーム時間で、ベースラインデータまたはスレッシュホールド以上となっている点がある。このとき、ベースラインデータは、デクリメントされた後にインクリメントされるか、またはタッチ検出時であるとして更新されないので、ほぼ一定の値を示すこととなる。
【0033】
すなわち、Rawdataが短時間に大きな変動量でベースラインデータの上下を推移する場合には、ベースラインデータがRawdataの急激な変動に追従することができず、ほぼ一定の値を示し続けることとなる。そのため、Rawdataが短時間に大きく下方に変動した場合には、タッチされているにも関わらず、タッチなしと判定される場合がある。
【0034】
したがって、LCDノイズの影響によって誤動作が生じるとともに操作感が低下し、タッチパネル装置のパフォーマンスが低下するという問題があった。
また、更新後のベースラインデータは、次回のタッチ検出処理時に使用するために、ベースラインデータ専用に割り当てられたメモリに書き込まれるので、このメモリの容量を、1フレームの全センサ交点分確保する必要があるという問題もあった。
【0035】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、LCDノイズの影響を低減することにより、誤動作を防止し、操作感を向上させるとともに、使用メモリを削減することができるタッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ検出方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0036】
この発明に係るタッチパネル装置は、静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置であって、タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得するRawdata取得部と、Rawdata取得部で取得された1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出する平均ベースライン算出部と、タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと平均ベースラインとを比較し、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定するタッチ検出処理部と、を備えたものである。
【0037】
また、この発明に係るタッチパネルのタッチ検出方法は、静電容量方式のタッチパネルのタッチ検出方法であって、タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得するRawdata取得ステップと、Rawdata取得ステップで取得された1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出する平均ベースライン算出ステップと、タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと平均ベースラインとを比較し、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定するタッチ検出処理ステップと、を備えたものである。
【発明の効果】
【0038】
この発明に係るタッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ検出方法によれば、Rawdata取得部は、タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得し、平均ベースライン算出部は、Rawdata取得部で取得された1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出し、タッチ検出処理部は、タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと平均ベースラインとを比較し、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定する。
そのため、LCDノイズの影響を低減することにより、タッチパネルの誤動作を防止し、操作感を向上させることができる。また、従来必要であった1フレームの全センサ交点分のメモリを不要とすることにより、使用メモリを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置を示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置のタッチパネルにおける1水平ライン上のRawdataの取得位置を示す説明図である。
【図3】(a)〜(c)は、図2に示した各取得位置における差分データを示す説明図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置のMCUの動作を示すフローチャートである。
【図5】この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置の第Mフレーム時間におけるRawdataを例示する説明図である。
【図6】従来の一般的なタッチパネル装置を示すブロック構成図である。
【図7】従来の一般的なタッチパネル装置のMCUの動作を示すフローチャートである。
【図8】従来の一般的なタッチパネル装置の第Mフレーム時間におけるRawdataを例示する説明図である。
【図9】従来の一般的なタッチパネルを備えた液晶表示装置を示す断面図である。
【図10】従来の薄型のタッチパネルを備えた液晶表示装置を示す断面図である。
【図11】従来の薄型のタッチパネル装置の第Mフレーム時間におけるRawdataを例示する説明図である。
【図12】従来の薄型のタッチパネル装置のタッチされているポイントにおけるRawdataの変動を例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、この発明に係るタッチパネル装置およびタッチパネルのタッチ検出方法の好適な実施の形態につき図面を用いて説明するが、各図において同一、または相当する部分については、同一符号を付して説明する。
【0041】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置を示すブロック構成図である。図1において、このタッチパネル装置は、タッチパネル10A、タッチ制御IC20、MCU30Aおよびホストコントローラ50を備えている。
【0042】
タッチパネル10Aは、図10に示した薄型のタッチパネルである。また、タッチパネル10Aの動作、並びにタッチ制御IC20およびホストコントローラ50の構成および動作は、上述した図6のものと同様なので、説明を省略する。
【0043】
MCU30Aは、Rawdata取得部31、平均ベースライン算出部32およびタッチ検出処理部33を有している。なお、MCU30Aは、CPUとプログラムを格納したメモリ(1次メモリ)とを有するマイクロプロセッサ(図示せず)で構成されており、MCU30Aを構成する各ブロックは、メモリにソフトウェアとして記憶されている。
【0044】
ここで、図2、3を参照しながら、タッチパネル10Aに重畳するLCDノイズについて説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係るタッチパネル装置のタッチパネルにおける1水平ライン上のRawdataの取得位置を示す説明図である。また、図3(a)〜(c)は、図2に示した各取得位置における差分データを示す説明図である。
【0045】
具体的には、図3(a)は、図2の取得位置N(Nは整数)における差分データ(Rawdata−ベースラインデータ)を示し、図3(b)は、図2の取得位置N+1における差分データを示し、図3(c)は、図2の取得位置N+2における差分データを示している。この図2、3では、取得位置N+2がタッチされている場合について説明する。
【0046】
図2、3において、差分データの変動は、タッチ位置のオフセット成分を除いて考えると、各取得位置で同一の形状となっていることが分かる。すなわち、タッチパネル10Aの1水平ラインについて、タッチパネル10Aに同一のLCDノイズが重畳していることが分かる。
したがって、タッチパネル10Aの1水平ライン単位で、LCDノイズの影響を低減することを考える。
【0047】
ここで、上述した図8、11を参照すると、1水平ライン上の各センサのRawdataは、ほぼ同じ値をとっていることが分かる。そこで、タッチパネル10Aの1水平ラインにおけるRawdataの平均値をベースライン(以下、「平均ベースライン」と称する)とし、Rawdataと平均ベースラインとの差分データに基づいて、タッチの有無を検出することが考えられる。
【0048】
以下、図4のフローチャートを参照しながら、図1に示したタッチパネル装置のMCU30Aの各部の動作について説明する。
まず、Rawdata取得部31は、タッチパネル10Aの1水平ラインにおけるRawdataを取得する(ステップS1)。
【0049】
続いて、平均ベースライン算出部32は、ステップS1で取得された1水平ラインのRawdataの平均値を算出する(ステップS2)。平均ベースライン算出部32は、算出したRawdataの平均値を、1水平ラインの平均ベースラインとしてMCU30A内のメモリ(1次メモリ)に記憶する。なお、この1次メモリは、汎用メモリ領域であって、別途専用に割り当てる必要のない、他でも使用可能なメモリである。
【0050】
このように、従来は、次回のタッチ検出処理時に使用するために、更新後のベースラインデータを、ベースラインデータ専用に割り当てられたメモリ(図6のメモリ40)に、1フレームの全センサ交点分書き込む必要があったが、算出した平均ベースラインをMCU30A内の1次メモリに記憶することにより、ベースラインデータを次回のタッチ検出処理まで保持する必要がなくなるので、使用メモリを削減することができる。
【0051】
ここで、平均ベースライン算出部32は、隣り合うRawdataの差分がスレッシュホールド以上である場合、すなわちタッチ検出時には、当該Rawdataを平均値の算出から除外する。これにより、タッチ未検出時の基準となる平均ベースラインを高精度に算出することができる。
【0052】
次に、タッチ検出処理部33は、タッチ制御IC20からのRawdataとステップS2で算出した平均ベースラインとに基づいて、タッチパネル10Aの1水平ラインの各センサについてタッチ検出処理を行い、タッチの有無をタッチ検出信号としてホストコントローラ50に出力して(ステップS3)、図4の処理を終了する。
【0053】
具体的には、タッチ検出処理部33は、第M(Mは整数)フレーム時間におけるRawdataを例示した図5に表されるように、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定する。
【0054】
なお、Rawdata取得部31、平均ベースライン算出部32およびタッチ検出処理部33は、続くサイクルにおいて、次の水平ラインについて、順次図4に示した処理を繰り返し実行する。
【0055】
以上のように、実施の形態1によれば、Rawdata取得部は、タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得し、平均ベースライン算出部は、Rawdata取得部で取得された1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出し、タッチ検出処理部は、タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと平均ベースラインとを比較し、Rawdataが平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、Rawdataがスレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定する。
そのため、LCDノイズの影響を低減することにより、タッチパネルの誤動作を防止し、操作感を向上させることができる。また、従来必要であった1フレームの全センサ交点分のメモリを不要とすることにより、使用メモリを削減することができる。
【符号の説明】
【0056】
10、10A タッチパネル、11 シールドITO、12 センサ基板、13 センサITO、14 接着剤、15 カバーガラス、20 タッチ制御IC、30、30A MCU、31 Rawdata取得部、32 平均ベースライン算出部、33 タッチ検出処理部、40 メモリ、50 ホストコントローラ、61 第1偏光板、62 TFT側ガラス基板、63 液晶駆動電極、64 カラーフィルタ側ガラス基板、65 第2偏光板。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置であって、
前記タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得するRawdata取得部と、
前記Rawdata取得部で取得された前記1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出する平均ベースライン算出部と、
前記タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと前記平均ベースラインとを比較し、前記Rawdataが前記平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、前記Rawdataが前記スレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定するタッチ検出処理部と、
を備えたことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記平均ベースライン算出部は、隣り合うRawdataの差分が前記スレッシュホールド以上である場合には、当該Rawdataを平均値の算出から除外する
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
静電容量方式のタッチパネルのタッチ検出方法であって、
前記タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得するRawdata取得ステップと、
前記Rawdata取得ステップで取得された前記1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出する平均ベースライン算出ステップと、
前記タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと前記平均ベースラインとを比較し、前記Rawdataが前記平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、前記Rawdataが前記スレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定するタッチ検出処理ステップと、
を備えたことを特徴とするタッチパネルのタッチ検出方法。
【請求項1】
静電容量方式のタッチパネルを備えたタッチパネル装置であって、
前記タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得するRawdata取得部と、
前記Rawdata取得部で取得された前記1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出する平均ベースライン算出部と、
前記タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと前記平均ベースラインとを比較し、前記Rawdataが前記平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、前記Rawdataが前記スレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定するタッチ検出処理部と、
を備えたことを特徴とするタッチパネル装置。
【請求項2】
前記平均ベースライン算出部は、隣り合うRawdataの差分が前記スレッシュホールド以上である場合には、当該Rawdataを平均値の算出から除外する
ことを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル装置。
【請求項3】
静電容量方式のタッチパネルのタッチ検出方法であって、
前記タッチパネルの1水平ラインにおけるRawdataを取得するRawdata取得ステップと、
前記Rawdata取得ステップで取得された前記1水平ラインのRawdataの平均値を、平均ベースラインとして算出する平均ベースライン算出ステップと、
前記タッチパネルの1水平ラインの各センサについて、取得されたRawdataと前記平均ベースラインとを比較し、前記Rawdataが前記平均ベースラインから一定の距離にあるスレッシュホールド以上である場合にタッチ有りと判定し、前記Rawdataが前記スレッシュホールド以下である場合にタッチなしと判定するタッチ検出処理ステップと、
を備えたことを特徴とするタッチパネルのタッチ検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−97709(P2013−97709A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242182(P2011−242182)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(501426046)エルジー ディスプレイ カンパニー リミテッド (732)
【Fターム(参考)】
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