説明

タッチパネル部材、タッチパネル付き表示装置およびタッチパネル

【課題】絶縁層を十分に密着させた状態を形成することが可能なタッチパネル部材を提供する。
【解決手段】ガラス基板2面上に、所定のパターンで形成された透明電極層3及びシロキサン骨格を有する感光性樹脂組成物の硬化物を含み所定のパターンで形成された絶縁層4を形成してなる積層構造5を備え、且つ、タッチ位置を検出可能な位置検出領域Rを、透明電極層3の形成された領域の少なくとも一部に重なる所定の領域に形成してなるタッチパネル部材1について、前記積層構造5は、少なくとも1層の透明電極層3をガラス基板2面上に形成し、且つ、タッチパネル部材1の平面視上、透明電極層3の少なくとも一部を被覆するように、絶縁層4をガラス基板2面上に形成されており、対ガラス基板接触領域18の面積が、タッチパネル部材1の平面視上、前記向合い面14の面積の1%以上15%以下であることで、絶縁層4を十分に密着させた状態を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネル部材、タッチパネル付き表示装置およびタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル付き表示装置は、それ単独で使用されるほか、様々な物品に組み込まれて様々な用途で使用される。例えば、タッチパネル付き表示装置は、携帯電話などの携帯端末の表示部や、パーソナルコンピュータの表示部として組み込まれる装置の用途で使用される。タッチパネル付き表示装置としては、液晶表示装置や有機EL(Electro−Luminescence)表示装置等の表示装置にタッチパネルを設けたものが知られている。表示装置にタッチパネルを設ける形態としては、表示装置を構成する一部にタッチパネルを組み込んだ形態や、表示装置の表示面上にタッチパネルを貼り付けた形態などが知られている。
【0003】
タッチパネルとしては、タッチパネル部材を備えてタッチ位置を検出可能な走査可能エリアを有するパネルスクリーンを形成するとともに、パネルスクリーン内の所定領域における座標位置を検出する位置検出装置をパネルスクリーンに電気的に接続してなるものが知られている。タッチパネルは、パネルスクリーンにタッチされた位置を位置検出装置で特定することでタッチ位置の検出を行う。タッチパネルには、タッチ位置の検出方法の違いに応じて様々な種類が存在しており、なかでも、タッチ位置を静電容量変化に基づき検出する静電容量方式のタッチパネルが様々な産業分野で採用されている。
【0004】
静電容量型のタッチパネルでは、パネルスクリーンに用いられるタッチパネル部材は、ガラス基板などの基板を備えており、且つ、その基板面内の所定領域内の座標位置を検出するための透明電極部を設けて構成されている。透明電極部については、タッチパネル部材の平面視上互いに交差する第1電極と第2電極とを備えて構成される。多くの場合、第1電極と第2電極は、それぞれパターン形成された透明電極層を有して構成される。
【0005】
タッチパネル部材においては、少なくともタッチパネル部材の平面視上第1電極と第2電極との交差部分には、絶縁層が形成されており、絶縁層は、第1電極と第2電極の絶縁性を確保する機能を発揮する。また、絶縁層は、透明電極部の表面上にも形成され、タッチパネル部材外部に対し透明電極部の絶縁性を確保する機能を発揮する。透明電極部の表面上に形成さる絶縁層は、透明電極部の露出を抑制して透明電極部を保護する表面保護層としても機能する。ここで、第1電極及び/又は第2電極は、パターン形成された透明電極層で構成されるので、絶縁層は、その少なくとも一部領域を透明電極層上に形成される。
【0006】
タッチパネル部材においては、絶縁層として、シロキサン系のフォトレジストなどのシロキサン結合を形成可能なシロキサン系組成物の硬化物からなる層や、アクリル系、エポキシ系のフォトレジストといったケイ素非含有フォトレジストの硬化物からなる有機樹脂層を採用することが提案されている(特許文献1)。シロキサン系組成物の硬化物からなる層は、有機樹脂層に比べて、耐熱性に優れている点で利点を有する。この利点は、特に、表示装置を構成する部材としてタッチパネル部材を組み込む場合に特に有利に作用する。これは、表示装置を製造する工程においては高温処理が実施されることが多く、シロキサン系組成物の硬化物からなる層を絶縁層として採用した場合にそうした高温処理にも耐えられる絶縁層を得ることができるためである。
【0007】
シロキサン結合を有する硬化物を形成可能なシロキサン系組成物としては、SOG(Spin On Glass)が知られている。また、SOGには、シロキサン系のフォトレジストとして感光性を有するものである感光性SOGが知られている。そこで、感光性SOGを用いて表面保護層及び/又は絶縁層を形成することが検討される。
【0008】
感光性SOGは、シロキサン骨格を有する感光性化合物を含む感光性樹脂組成物である。SOGには次のような利点が挙げられている。SOGは、スピンコート法など塗布法を適宜適用して効率的に塗布膜を形成することができるものである。なかでも、感光性SOGについては、加熱および光照射により容易に硬化物となるものであり、その硬化物は耐熱性と堅牢性に優れるほか、細やかにパターン形成された層を容易に形成することができるものである。これらの利点から、感光性SOGの硬化物を含む層を絶縁層として形成することは、絶縁層を、効率的に耐熱性と堅牢性に優れた層且つ細やかにパターニング形成された層とすることができる点で有効であり、タッチパネル部材の製造効率と耐熱性と堅牢性を向上させる点では有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−165333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、感光性SOGの硬化物を含む層は、上記したケイ素非含有フォトレジストからなる有機樹脂層に比べて、透明電極層に対する密着性が弱く、SOGの硬化物を含む層が透明電極層から剥離してしまうという問題がある。そして、このことは、感光性SOGの硬化物を含む層が絶縁層として構成された場合に、絶縁層が、透明電極層から剥離しやすくなり、第1電極及び/又は第2電極から剥離しやすくなってしまうという問題を生じることを示す。
【0011】
本発明は、感光性SOGの硬化物を含む層が絶縁層として構成されても、絶縁層を透明電極層に十分に密着させた状態を形成することが可能なタッチパネル部材を提供することを目的とし、そのようなタッチパネル部材を設けたタッチパネルおよびタッチパネル付き表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、(1)ガラス基板を備えるとともに、該ガラス基板面上に、所定のパターンで形成された透明電極層及びシロキサン骨格を有する感光性樹脂組成物の硬化物を含み所定のパターンで形成された絶縁層を形成してなる積層構造を備え、且つ、タッチ位置を検出可能な位置検出領域を、透明電極層の形成された領域の少なくとも一部に重なる所定の領域に形成してなるタッチパネル部材であって、
前記積層構造は、少なくとも1層の透明電極層をガラス基板面上に形成し、且つ、タッチパネル部材の平面視上、透明電極層の少なくとも一部を被覆するように、少なくとも1層の絶縁層をガラス基板面上に形成しており、
前記位置検出領域内では、
少なくとも1層の絶縁層は、該絶縁層の表面のうち前記ガラス基板面側に向けられた向合い面における一部の領域が前記透明電極層に直接接触して対透明電極層接触領域を形成するとともに、前記向合い面における対透明電極層接触領域を除く領域の少なくとも一部が前記ガラス基板面に直接接触して対ガラス基板接触領域を形成するように、パターン形成されており、且つ、対ガラス基板接触領域の面積が、タッチパネル部材の平面視上、前記向合い面の面積の1%以上15%以下である、ことを特徴とするタッチパネル部材、
(2)前記積層構造は、絶縁層として、第1の絶縁層および第2の絶縁層を備えており、
位置検出領域内では、
前記第1の絶縁層と第2の絶縁層の少なくともいずれか一方の絶縁層は、少なくとも一部を透明電極層に接して対透明電極層接触領域を形成するとともに、ガラス基板面に直接接して対ガラス基板接触領域を形成しており、且つ、対ガラス基板接触領域の面積が、タッチパネル部材の平面視上、前記向合い面の面積の1%以上15%以下となる、ように構成されている、上記(1)に記載のタッチパネル部材、
(3)ガラス基板の一方面側に、透明電極層及び絶縁層を形成してなる積層構造を備え、ガラス基板の他方面側に、複数の画素片からなる画素群を形成してなる、上記(1)または(2)に記載のタッチパネル部材、
(4)画像を表示可能な表示面を有する表示パネルを備え、表示パネルでは、シール材を介して第1のパネル基板と第2のパネル基板とが張り合わされ、第1のパネル基板と第2のパネル基板の間に表示媒体が設けられ、第1のパネル基板に表示面が形成されている表示装置であって、
第1のパネル基板に、上記(1)から(3)のいずれかに記載のタッチパネル部材が組み込まれている、タッチパネル付き表示装置、
(5)パネルスクリーンを備えるとともに、パネルスクリーン内の所定領域における座標位置を検出する位置検出装置をパネルスクリーンに電気的に接続してなるタッチパネルであって、
パネルスクリーンが、上記(1)から(3)のいずれかに記載のタッチパネル部材の積層構造上に、更に光透過性を有するカバー基板を積層してなる、ことを特徴とするタッチパネル、を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、感光性SOGのようなシロキサン骨格を有する感光性樹脂組成物の硬化物を含む層が絶縁層として構成されても、絶縁層を透明電極層に十分に密着させた状態を形成することが可能なタッチパネル部材を提供することができ、そのようなタッチパネル部材を設けたタッチパネルおよびタッチパネル付き表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(1A)本発明のタッチパネル部材の実施例の1つを模式的に示す概略平面模式図である。(1B)絶縁層の形成パターンの実施例の1つを模式的に示して対ガラス基板接触領域を説明するための概略平面模式図である。(1C)図1AのI−I線縦断面の状態を模式的に示す概略断面模式図である。
【図2】(2A)図1Aの領域S1の部分を拡大して模式的に示す概略部分拡大図である。(2B)図2AのA−A線縦断面の状態を模式的に示す概略縦断面模式図である。(2C)図2AのB−B線縦断面の状態を模式的に示す概略縦断面模式図である。
【図3】(3A)本発明のタッチパネル部材の他の実施例において図1Aの領域S1の部分に対応する部分を拡大して模式的に示す概略部分拡大図である。(3B)図3AのC−C線縦断面の状態を模式的に示す概略縦断面模式図である。(3C)図3AのD−D線縦断面の状態を模式的に示す概略縦断面模式図である。(3D)図3Aの領域Tの部分を拡大して模式的に示す図面であり、且つ、第1の絶縁層4aと第1の透明電極層3aの形成パターンを説明するための概略部分拡大模式図である。
【図4】(4A)本発明のタッチパネル部材の他の実施例において図1Aの領域S1の部分に対応する部分を拡大して模式的に示す概略部分拡大図である。(4B)図4AのE−E線縦断面の状態を模式的に示す概略縦断面模式図である。(4C)図4AのF−F線縦断面の状態を模式的に示す概略縦断面模式図である。
【図5】(5A)図1Bの領域S2の部分を拡大して模式的に示す概略部分拡大図である。(5B)本発明のタッチパネル部材の他の実施例において図1Bの領域S2の部分に対応する部分を拡大して模式的に示す概略部分拡大図である。
【図6】本発明のタッチパネル部材の他の実施例を説明するための概略断面模式図である。
【図7】(7A)図1Aの領域S3の部分を拡大して模式的に示す概略部分拡大図である。(7B)本発明のタッチパネル部材の他の実施例において図1Aの領域S3の部分に対応する部分を拡大して模式的に示す概略部分拡大図である。
【図8】本発明のタッチパネル部材の他の実施例を説明するための概略断面模式図である。
【図9】本発明のタッチパネル部材の他の実施例を説明するための概略断面模式図である。
【図10】タッチパネル部材を用いたタッチパネルの1実施例を模式的に示す概略斜視模式図である。
【図11】(11A)本発明のタッチパネル付き表示装置の1実施例を示すための概略斜視模式図である。(11B)図11AのII−II線縦断面の状態を模式的に示す概略断面模式図である。
【図12】実施例1で作製されるタッチパネル部材について、取出電極部の形成パターンを模式的に示す概略平面模式図である。
【図13】実施例1で作製されるタッチパネル部材について、第1の透明電極層をパターン形成した状態を模式的に示す概略平面模式図である。
【図14】図13の領域SE1の部分を模式的に示す部分拡大平面模式図である。
【図15】実施例1で作製されるタッチパネル部材について、第1の絶縁層をパターン形成した状態を模式的に示す概略平面模式図である。
【図16】実施例1で作製されるタッチパネル部材について、第2の透明電極層をパターン形成した状態を模式的に示す概略平面模式図である。
【図17】図16の領域SE2の部分を模式的に示す部分拡大平面模式図である。
【図18】実施例4で作製されるタッチパネル部材について、取出電極部と第1の連結部と第1の絶縁層の形成パターンを模式的に示す概略平面模式図である。
【図19】実施例4で作製されるタッチパネル部材について、透明電極層をパターン形成した状態を示す図であって、図13の領域SE1の部分に対応する部分を模式的に示す部分拡大平面模式図である。
【図20】実施例1で作製されるタッチパネル部材について、第2の絶縁層をパターン形成した状態を模式的に示す概略平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
タッチパネル部材1について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、ここでは、タッチパネル部材1が、投影型静電容量方式のタッチパネルに用いられるタッチパネル部材である場合を例として説明する。
【0016】
[タッチパネル部材1]
タッチパネル部材1は、図1A、図1C,図2Aから図2Cに示すように、ガラス基板2を備えるとともに、ガラス基板2面上に透明電極層3と絶縁層4を形成してなる積層構造5を備えている。なお、図1Aでは、説明の便宜上、絶縁層4の一部の記載を省略する。
【0017】
(ガラス基板2)
ガラス基板2は、光透過性を有するものであれば特に限定されることなく適宜選択されてよい。例えば、ガラス基板2としては、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラスなどを挙げることができる。
【0018】
ガラス基板2の厚みは、適宜選択可能である。ガラス基板2は、タッチパネル部材1の製造工程時におけるガラス基板2の取り扱いの容易性を維持する観点で、厚みが0.3mm以上1.5mm以下程度のものを好ましく用いられることが多い。
【0019】
[積層構造5]
積層構造5は、ガラス基板2の面56の少なくとも一方面56a側に、少なくとも1層の透明電極層3と、少なくとも1層の絶縁層4とを積層して形成される。積層構造5において、少なくとも1層の透明電極層3と、少なくとも1層の絶縁層4は、この順にガラス基板2の同面側に形成される。このとき、積層構造5は、少なくとも一層の透明電極層3を、ガラス基板2の一方面56a側にその透明電極層3の少なくとも一部を直接当接させるように形成し、更に、タッチパネル部材1の平面視上、透明電極層3の1層の少なくとも一部を被覆するように、絶縁層4をガラス基板2面上に形成している。タッチパネル部材1の平面視上とは、タッチパネル部材1の厚み方向に沿った方向を視線方向としてタッチパネル部材1を見た場合の状態を示す。
【0020】
積層構造5の例として、図2Aから図2Cに示す積層構造5aを用いて具体的に説明する。なお、説明の便宜上、図2Aから図2Cでは、取出電極部30の記載を省略している。積層構造5aの例では、ガラス基板2の一方面56a側に、透明電極層3として、第1の透明電極層3aと第2の透明電極層3bとが形成されている。そして、積層構造5aでは、ガラス基板2の一方面56a側に第1の透明電極層3aが直接形成されており、更に、タッチパネル部材1の平面視上、第1の透明電極層3aの少なくとも一部を被覆するように、絶縁層4がガラス基板2面上に形成されている。さらに、積層構造5aでは、第2の透明電極層3bが形成されるが、第1の透明電極層3aと絶縁層4の積層体の表面の少なくとも一部の上に、第2の透明電極層3bの少なくとも一部が積層され、第1の透明電極層3aと絶縁層4をこの順に積層した構造が少なくとも一部に形成される。
【0021】
(透明電極層3)
透明電極層3は、透明導電性材料からなる層である。透明導電性材料としては、例えば、インジウム錫オキサイド(ITO)、酸化インジウム、インジウム亜鉛オキサイド(IZO)、酸化錫(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)等の透明導電性金属酸化物、ポリアニリン、ポリアセチレン等の透明導電性高分子等を挙げることができる。透明電極層3を耐熱性に優れたものとする点で、透明導電性材料が好ましく用いられ、さらに、高透明性の点で、透明導電性材料のなかでもITOが好ましく用いられる。
【0022】
透明電極層3の厚みは適宜選択可能である。透明電極層3として、第1の透明電極層3a、第2の透明電極層3bというように複数の層が形成されている場合、その厚みは、それぞれ個別に適宜選択可能であるが、透明性の確保と製膜性の点で、それぞれ、その厚みを15nm以上500nm以下程度とされることが多い。
【0023】
(透明電極層3の形成領域)
透明電極層3は、タッチパネル部材1の平面視上、ガラス基板2の面内における所定領域として設定され、タッチ位置を検出するために用いる位置検出領域、図1の例では、タッチパネル部材1において破線で囲まれた所定の部分で特定される領域R、で区画される部分である位置検出エリア形成部6に少なくとも形成される。なお、位置検出領域Rは、位置検出機構によりタッチ位置の座標位置を検出可能な領域として指定されるものであり、透明電極層の形成された領域の少なくとも一部に重なる所定の領域であり、位置検出エリア形成部6は、このようにタッチパネル部材1においてタッチ位置の検出可能な領域を区画する部分として設定されるものである。位置検出領域Rは、図1の例では、タッチパネル部材1において長方形状の領域として形成されているが、設計仕様に応じて適宜設定可能である。また、座標位置とは、タッチパネル部材1の表面のうち位置検出領域Rで区画される部分の面に沿う平面を想定した場合に、その平面内に貼られる互いに直交するX軸とY軸で張られるX−Y2次元平面座標を想定した場合における、X座標とY座標とを組み合わせて特定される位置を示す。
【0024】
(透明電極層3の形成パターン)
透明電極層3の形成パターンについては、タッチパネル部材1を組み込むタッチパネルの位置検出機構の内容や、タッチパネル部材1の規格に応じて適宜設定される。図1、2の例のように、積層構造5aが、透明電極層3として、第1の透明電極層3aと第2の透明電極層3bの2層を備える場合、それぞれ、タッチパネル部材1の規格に応じて要請される透明電極層3の形成パターンにて、第1の透明電極層3aと第2の透明電極層3bが形成される。
【0025】
第1の透明電極層3aの形成パターンは、第1の電極パターン7と、その第1の電極パターン7に交差する第2の電極パターン8のうち第2の連結部12bを除いたパターンとをあわせたパターンである。
【0026】
第1の電極パターン7は、第1の電極単位パターン9を、ガラス基板2面上に沿った所定方向である第1の方向に所定間隔をあけて並べて形成されるパターンである。図1の例では、第1の方向は、図1A中、矢印Y方向に沿った方向であり、位置検出領域Rの長手方向である。第1の電極単位パターン9は、両端に三角形状の電極パッド11(11a)を配するとともに、三角形状の電極パッド11aの間にひし形の電極パッド11(11b)を一列に配し、且つ、図2Aに示すように隣り合う電極パッド11を連結する連結部12である第1の連結部12aを形成して構成される構造に対応するパターンである。
【0027】
第2の電極パターン8は、第2の電極単位パターン10を、ガラス基板2面上に沿った所定方向であってタッチパネル部材1の平面視上第1の方向に交差する方向である第2の方向に所定間隔をあけて並べて形成されるパターンである。図1の例では、第2の方向は、図1A中、矢印X方向に沿った方向であり、位置検出領域Rの短手方向である。なお、矢印X方向と矢印Y方向は直交する。第2の電極単位パターン10は、両端に三角形状の電極パッド11(11c)を配するとともに、三角形状の電極パッド11cの間にひし形の電極パッド11(11d)を一列に配し、且つ、図2Aに示すように隣り合う電極パッド11を連結する連結部12である第2の連結部12bを形成して構成される構造に対応するパターンである。第2の電極パターン8のうち第2の連結部12bを除いたパターンは、電極パッド11(11c、11d)を配列してなる構造に対応するパターンとなる。
【0028】
第2の透明電極層3bは、絶縁層4の上に積層され、また、後述の絶縁層4の孔部15内にも形成される。このとき、第2の透明電極層3bは、図2Bに示すように第2の電極パターン8の電極パッド11に直接接触するとともに隣り合う電極パッド11間を連結する連結部12である第2の連結部12bを、構成する。
【0029】
したがって、第2の透明電極層3bの形成パターンは、第2の連結部12bの配設構造に対応するパターン、すなわちタッチパネル部材1の平面視上、第2の電極パターン8を構成する電極パッド11,11同士を連結するように構成されるパターンであることとなる。
【0030】
ところで、第1の透明電極層3aの形成パターンは、第1の電極パターン7を形成する要素となる第1の連結部12を、第2の電極パターン8を形成する要素となる隣り合う電極パッド11,11の間に位置させている。また、図2Aに示すように、タッチパネル部材1の平面視上、第1の連結部12aと第2の連結部12bは、互いに少なくとも一部で重なりあうように交差して、第1の電極パターンと第2の電極パターンが交差している。ところが、第1の連結部12aと第2の連結部12bについてみるに、両者の間には絶縁層4が介在しており、両者の間で絶縁性が保たれる。そして、図2Aに示すように、第1の電極パターン8を構成する電極パッド11の配置パターンと、第2の電極パターン7を構成する電極パッド11の配置パターンは、互いに重なり合わず、隙間13が存在する。したがって、第1の電極パターンを構成する電極パッドと、第2の電極パターンを構成する電極パッドとの間で絶縁性が保たれる。こうして、第1の透明電極層3a、第2の透明電極層3bは、第1の電極パターン7と第2の電極パターン8とをパターン形成しつつも、両者の絶縁性を保つようにパターン形成される。
【0031】
(透明電極層3の調製方法)
透明電極層3は、次のように形成できる。
【0032】
透明電極層3を構成する透明導電性材料を下地面上にスパッタリングして導電膜を得る。透明電極層3は、適宜定められる下地面の上に調製される。例えば、第1の透明電極層3aでは、下地面は、ガラス基板2の一方面である。これにより、ガラス基板2の一方面上に導電膜が一面形成される。
【0033】
次に、導電膜上に、感光性材料を塗工して感光性膜を形成して積層体(感光性膜付積層体)を得る。感光性材料としては、フォトリソグラフィー法を実施する際に使用可能なポジ型レジスト材料、ネガ型レジスト材料などが、適宜選択されてよい。
【0034】
フォトマスクとして、透明電極層3の形成パターンに対応した所定のパターンを有するフォトマスクを準備する。フォトマスクを感光性膜付積層体の感光性膜上の所定位置に配置し、フォトマスクの外側位置から感光性膜付積層体に向けて所定波長の光を照射して露光処理を施す。照射光は、紫外線光など、感光性材料の特性に応じて適宜定められる。露光処理の後、フォトマスクを取り除き、現像処理を施す。このように、いわゆるフォトリソグラフィー法を用いることで、感光性膜を、透明電極層の形成パターンに応じてパターニングする。
【0035】
その後、感光性膜付積層体にエッチングを施す。エッチングの際に使用されるエッチング液は、導電膜を構成する透明導電性材料の種類に応じて適宜選択される。例えば、透明導電性材料がITOである場合には、シュウ酸系溶液を用いることができ、具体的に、ITO−07N(商標)(関東化学社製)やITO−Echant(商標)(和光純薬工業社製)を例示することができる。これにより、導電膜は、透明電極層の形成パターンに応じてエッチング除去され、導電膜のパターニングが実現される。エッチングの実施後、更に感光性膜付積層体の感光性膜を剥離する剥離処理を施し、感光性膜付積層体から感光性膜を除去する。剥離処理は、強アルカリ溶液や有機溶媒など公知の感光性樹脂の剥離液で感光性膜付積層体を洗浄することなどといった公知方法を適宜用いることができる。こうして、ガラス基板2の一方面上に、所定のパターンにてパターニングされた導電膜が形成されて、透明電極層3をなす。
【0036】
なお、透明電極層3の形成方法は、上記のようなフォトリソグラフィー法を用いる方法に限定されず、印刷法、特にスクリーン印刷法も有効に採用可能である。スクリーン印刷法は、一般的に、露光処理や現像処理が不要であるうえフォトマスクの準備が不要であり、低コストで形成することが可能な方法である。また、印刷法は、現像処理を不要とすることができる方法であることから、現像処理に使用した現像液の処理を不要とすることができる方法であり、環境面からの利点が大きい方法である。
【0037】
(絶縁層4)
絶縁層4は、シロキサン骨格を有する層である。絶縁層4は、シロキサン骨格を形成可能な感光性樹脂組成物の硬化物を含んで構成される。より具体的には、絶縁層4は、感光性シロキサン樹脂を含有する感光性シロキサン樹脂組成物を感光性樹脂組成物として用いて形成される感光性シロキサン樹脂層である。
【0038】
感光性シロキサン樹脂組成物は、上記のようにシロキサン樹脂を含む樹脂組成物であり、且つ、感光性を有するもの、すなわち電離放射線硬化性を有するもの、である。さらに、感光性シロキサン樹脂組成物には、フォトリソグラフィー法により所定のパターンにパターニングされた層構造を形成可能なシロキサン樹脂が好適に含まれる。このような感光性のシロキサン樹脂であれば、従来公知の材料を適宜選択し、絶縁層4をなす感光性シロキサン樹脂層を調製するために使用することが可能である。
【0039】
例えば、感光性シロキサン樹脂組成物は、特許第3821165号に開示される放射線硬化性樹脂組成物、即ち、シロキサン樹脂(ただし、フェノール基を有する水性塩基可溶性シリコン含有ポリマーを除く。)、光酸発生剤又は光塩基発生剤、及び、上記シロキサン樹脂を溶解可能であり、非プロトン性溶媒(即ち、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−ジ−n−プロピルエーテル、ジ−iso−プロピルエーテル、メチルテトラヒドロフラン、ジメチルジオキサン、などのエーテル系溶媒を1種以上含む非プロトン性溶媒)を含有してなり、放射線の照射により硬化する放射線硬化性組成物を、好適に用いることができる。
【0040】
また、感光性シロキサン樹脂組成物は、特許第3758669号に開示される放射線硬化性樹脂組成物、即ち、シロキサン樹脂、露光する工程で使用される特定波長の放射線を照射することにより、酸性活性物質を放出する光酸発生剤、又は塩基性活性物質を放出する光塩基発生剤、上記シロキサン樹脂成分を溶解可能な溶媒、及び、上記特定波長の放射線を照射しても酸性活性物質及び塩基性活性物質を放出しない硬化促進触媒を含有してなる放射線硬化性組成物を、好適に用いることができる。
【0041】
さらに、フォトリソグラフィー法によりパターニングされた層構造を形成可能なシロキサン樹脂の例としては、下記一般式(1)で表される化合物を加水分解反応させた後に得られるシラノールを脱水縮合させて得られる樹脂等が挙げられる。
【0042】
【化1】

【0043】
上記一般式(1)中、Rは、水素(H)原子若しくはフッ素(F)原子、又はホウ素(B)原子、窒素(N)原子、アルミニウム(Al)原子、リン(P)原子、ケイ素(Si)原子、ゲルマニウム(Ge)原子若しくはチタン(Ti)原子を含む基、又は炭素数1以上20以下の有機基を示し、Xは加水分解性基を示し、nは0以上2以下の整数を示し、nが2のとき、各Rは同一でも異なっていてもよく、nが0以上2以下のとき、各Xは同一でも異なっていてもよい。
【0044】
この、感光性シロキサン樹脂層は、1種の感光性シロキサン樹脂から形成されてもよく、あるいは、異なる構造式で表わされる2種以上の感光性シロキサン樹脂の任意の組み合わせから形成されてもよい。例えば、上記一般式(1)において示される感光性シロキサン樹脂であって、側鎖が異なる2種以上の感光性シロキサン樹脂を任意に組み合わせて、感光性シロキサン樹脂層を形成してもよい。
【0045】
(絶縁層4の形成位置と形成パターン)
絶縁層4は、ガラス基板2の面のうち透明電極層3を積層された方の面と同側の面上に、所定のパターンで形成される。
【0046】
絶縁層4の形成パターンは、タッチパネル部材1の規格に応じて適宜設定される。図2Aの例では、絶縁層4の形成パターンは、透明電極層3aのうち第2の電極パターンを構成する電極パッド11の形成領域に対向する部分の一部に、複数の孔部15を形成したパターンとなっている。孔部15は、絶縁層4をその厚み方向に貫通して形成されており、第2の電極パターン8におけるひし形の電極パッド11dの部分1箇所に対して向かい合う位置に、2つずつ設けられ、三角形の電極パッド11cの部分1箇所に対して向かい合う位置に、1つずつ設けられる。
【0047】
(絶縁層4とその他の層との接触)
タッチパネル部材1において、位置検出領域R内の部分とは、すなわち位置検出領域Rで区画される部分である位置検出エリア形成部6を示すが、そうした位置検出領域R内の部分では、少なくとも一層の絶縁層4は、その絶縁層4の表面のうちガラス基板2面側に向けられた向合い面14における一部の領域を透明電極層3aに直接接触させており、絶縁層4の少なくとも一部が透明電極層3aの少なくとも一部を被覆する。このとき、図5Aにも示すように、位置検出領域R内において、タッチパネル部材1の平面視上、絶縁層4の向合い面14の領域17のうち透明電極層3に直接接触して形成される領域を、対透明電極層接触領域16とする。
【0048】
また、位置検出エリア形成部6についてみるに、少なくとも一層の絶縁層4は、位置検出領域R内において、向合い面14における対透明電極層接触領域16を除く領域の少なくとも一部がガラス基板2面に直接接触するように形成される。このとき、図1Bや図5Aに示すように、位置検出領域R内において、タッチパネル部材1の平面視上、絶縁層4の向合い面14のうちガラス基板2面に直接接触して形成される領域を、対ガラス基板接触領域18とする。なお、図1Bにおいては、斜線を付した領域が対ガラス基板接触領域18に対応する。位置検出領域Rにおいて、向合い面14の領域17は、図5Aに示すように、対透明電極層接触領域16と対ガラス基板接触領域18とを合わせた領域となる。なお、位置検出領域Rに金属配線32の形成領域19が入り込んで、入り込み領域19aが形成される場合には、対ガラス基板接触領域18にはその入り込み領域19aが含まれない。
【0049】
なお、絶縁層4は、少なくとも一部の領域を位置検出領域Rの外側まで形成されていてもよい。図7Bの例に示すような、絶縁層4がタッチパネルの位置検出エリア形成部6の外周に設けられた金属配線を被覆するように形成されている場合にあっても、対ガラス基板接触領域18は位置検出領域Rの内側の領域で定義される。
【0050】
タッチパネル部材1において、少なくとも1層の絶縁層4は、対ガラス基板接触領域18の面積が次に示すような条件を満たすように形成される。
【0051】
(絶縁層4の対ガラス基板接触領域18の面積)
位置検出領域R内において、対ガラス基板接触領域18の面積は、タッチパネル部材1の平面視上、向合い面14の面積の1%以上15%以下である。
【0052】
位置検出領域R内において、対ガラス基板接触面積18が向合い面14の面積の1%以上であることで、絶縁層4がタッチパネル部材1から剥離する虞を抑制することができるという効果を得ることができ、対ガラス基板接触面積18が向合い面14の面積の15%以下であることで、ガラス基板2の歪みが生じる虞を低減することができるという効果を得ることができるようになる。
【0053】
対ガラス基板接触領域18の面積とは、位置検出領域R内で特定される面積であり、タッチパネル部材1の平面視上特定される対ガラス基板接触領域18の面積を示し、具体的には、位置検出領域R内で、対ガラス基板接触領域18を、ガラス基板2面に対して平行な平面上に平行投影して得られる平行投影像の面積を示す。
【0054】
また、向合い面14の面積とは、位置検出領域R内で特定される面積であり、タッチパネル部材1の平面視上特定される向合い面14の面積を示しており、具体的には、位置検出領域R内で、向合い面14をガラス基板2面に対して平行な平面上に平行投影して得られる平行投影像の面積を示す。位置検出領域Rと同形もしくは位置検出領域Rの内側に絶縁層4の全体が形成されている場合、向合い面14の輪郭は、絶縁層4の輪郭に対応したものとなり、位置検出領域Rの内側のみならず外側まで絶縁層4が形成されている場合、向合い面14の輪郭は、位置検出領域Rの輪郭に対応したものとなる。
【0055】
対ガラス基板接触領域18の面積及び向合い面14の面積は、隣り合う電極パッド11,11間の隙間13の広狭、電極パッドの形状、絶縁層4の形成パターン等に応じて変更可能である。
【0056】
(対ガラス基板接触領域18の面積及び向合い面14の面積の特定方法)
対ガラス基板接触領域18および向合い面14の面積は、次のように特定することができる。すなわち、タッチパネル部材1を平面視した状態の画像を撮影し、得られた平面視画像に基づき、対ガラス基板接触領域18および向合い面14の面積を算出することで特定することができる。対ガラス基板接触領域18および向合い面14の面積の算出にあたっては、画像処理装置を適宜用いられてよい。具体的には、タッチパネル部材1を平面視した状態の画像をデジタルカメラ等の撮影装置で撮影し、タッチパネル部材1の平面視画像についての画像データを得る。画像処理システム(ニレコ(株)製:LUZEX(登録商標) AP等)に画像データを入力し、その画像データに基づく画像処理を行って、対ガラス基板接触領域18および向合い面14の面積が求められる。
【0057】
(絶縁層4の形成パターンと対ガラス基板接触領域18の面積の関係)
対ガラス基板接触領域18の面積が上記したような条件を満たすことは、図1のように絶縁層4を少なくとも位置検出領域R内で一体の層をなしつつパターン形成されているタッチパネル部材1においては、特に大きな課題を解決する貢献をもたらす。すなわち、タッチパネル部材1において、少なくとも1層の絶縁層4が一体の層としてパターン形成されている場合にあっては、そのように一体の層として形成されている絶縁層4は、一部に剥離が生じると全面にわたって剥離を生じやすくなるため、飛び地上に絶縁層4が形成されている場合に比べて、剥離の抑制が特に大きな課題とされる。この大きな課題が、対ガラス基板接触領域18の面積が上記したような条件を満たすことで、効果的に解決される。
【0058】
(絶縁層4の積層数の他例)
絶縁層4は、少なくとも1層形成されていればよく、図1,2のタッチパネル部材1の例では、絶縁層4が1層であったが、2層以上形成されてもよい。すなわち、例えば、図6に示すように、絶縁層4として、第1の絶縁層4aと、第2の絶縁層4bとが形成されていてもよい。
【0059】
この場合、タッチパネル部材1は、絶縁層4のうち、少なくとも第1の絶縁層4aについて、位置検出領域R内において、対ガラス基板接触領域18の面積が、タッチパネル部材1の平面視上、向合い面14の面積の1%以上15%以下であるように、形成されていればよい。図6の例に示すタッチパネル部材1において、ガラス基板2と第1の透明電極層3aの両方に接着しているのは、複数の絶縁層4のうち第1の絶縁層4aであるためである。
【0060】
また、この場合、タッチパネル部材1の平面視上、透明電極層3の1層の少なくとも一部を被覆するように、第1の絶縁層4aがガラス基板2面上に形成されている。さらに、積層構造5では、第1の絶縁層4aと第1の透明電極層3aの少なくとも一部を被覆するように、第2の透明電極層3bが形成されている。そして、少なくとも第2の透明電極層3bを被覆するように第2の絶縁層4bが形成されている。第1の透明電極層3bの一部に第1の絶縁層に覆われていない部分がある場合には、第2の絶縁層4bは、その部分および第2の透明電極層3bを覆うように形成される。積層構造5は、図6に示すように、ガラス基板2面に近いほうから、第1の透明電極層3a、第1の絶縁層4a、第2の透明電極層3b、第2の絶縁層4bの順に積層された構造を少なくとも一部に有するように構成されている。
【0061】
(第2の絶縁層4bの機能)
第2の絶縁層4bは、タッチパネル部材1外部に対し透明電極層3の絶縁性を確保する機能を発揮する。また、第2の絶縁層4bは、透明電極層3の外部露出を抑制して透明電極層3を保護する表面保護層としても機能する。
【0062】
(絶縁層4の調製方法)
絶縁層4は、例えば、その絶縁層4の下地をなす面上に次に示すように感光性シロキサン樹脂層を形成することで調製できる。下地をなす面は、基板2面および透明電極層3等で構成される。
【0063】
感光性シロキサン樹脂層を構成する感光性化合物を含む感光性樹脂組成物を調製する。
【0064】
(感光性樹脂組成物の調製)
感光性樹脂組成物には、感光性化合物と、感光性化合物にあたる感光性シロキサン樹脂の重合硬化を促進させるゾル・ゲル反応触媒とを含む材料組成物が用いられてよく、例えば感光性SOG(Spin On Glass)が挙げられる。また、感光性樹脂組成物として、より具体的には、例えば上記したような感光性シロキサン樹脂組成物が用いられてよい。感光性樹脂組成物は、通常、シロキサン樹脂と、ゾル・ゲル反応触媒と、溶媒とを混合してなる液状の組成物として調製される。
【0065】
感光性化合物をなすシロキサン樹脂は、上記一般式(1)に示すような樹脂などを挙げることができる。
【0066】
ゾル・ゲル反応触媒としては、熱酸発生剤、光酸発生剤を挙げることができる。熱酸発生剤と光酸発生剤は、それぞれ熱を受けて酸を生じるもの、光を受けて酸を生じるものであるが、従前より公知なものを適宜用いることができる。また、感光性樹脂組成物に含まれるゾル・ゲル反応触媒としては、少なくとも光酸発生剤を用いられればよいが、これら両者を組み合わせて用いられるほうが好ましい。熱酸発生剤と光酸発生剤が併用されることで、感光性樹脂組成物の硬化膜をより一層耐熱性に優れたものとすることができる。また、感光性樹脂組成物には、熱酸発生剤と光酸発生剤の両者の性質を併せ持つ化合物がゾル・ゲル反応触媒として用いられてもよい。
【0067】
ゾル・ゲル反応触媒としては、芳香族ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルフォニウム塩、トリアリールセレニウム塩等の各種オニウム塩系化合物、スルフォン酸エステル、ハロゲン化合物等があげられる。
【0068】
溶媒としては、感光性化合物などの固形成分を溶解することが可能な溶剤であれば特に限定されるものではなく、ベンゼン、トルエン、キシレン、n−ブチルベンゼン、ジエチルベンゼンなどを具体的に例示できる。
【0069】
感光性樹脂組成物としては、ネガ型のものとポジ型のものを適宜調製することができる。ここに、ネガ型の感光性樹脂組成物は、その感光性樹脂組成物の塗膜へ光照射を行った場合に光照射された部分に感光性化合物のゾル・ゲル反応の効率的進行が認められるタイプのものである。ネガ型の感光性樹脂組成物は、例えば、上記一般式(1)のRが炭素数2以下の官能基であるような感光性化合物と、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタンのような強酸を発生させる光酸発生剤を含有する組成物として、具体的に調製することができる。
【0070】
ポジ型の感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物の塗膜へ光照射を行った場合に光照射された部分について感光性化合物の現像処理によって除去可能となるようなものである。ポジ型の感光性樹脂組成物は、例えば、上記一般式(1)のRが炭素数3以上の官能基であるような感光性化合物と、ナフトキノンジアジドのような弱酸を発生させる光酸発生剤とを含有する組成物として、具体的に調製することができる。
【0071】
(感光性樹脂組成物の添加物)
感光性樹脂組成物には、絶縁層4の機能と本発明の趣旨を没却しない限度で添加物が適宜添加されてもよい。添加物としては、粘度調整剤、界面活性剤、着色剤、ガラス質形成剤などが挙げられる。
【0072】
上記のように調製された感光性樹脂組成物を用い、次のように絶縁層4が形成できる。まず、感光性樹脂組成物がネガ型である場合について説明する。
【0073】
(感光性樹脂組成物の塗布)
感光性樹脂組成物を、下地面の上に塗布して、非硬化状態の塗布膜を形成する。塗布膜の形成には、スピンコート法などの塗布方法を適宜用いることができる。
【0074】
(塗布膜の減圧乾燥)
感光性樹脂組成物を下地面上に塗布して形成された塗布膜は、20Pa以上100Pa以下の範囲で減圧乾燥され、絶縁層4において不要となる溶媒を少なくとも部分的に除去されて乾燥膜とされる。減圧乾燥においては、塗布膜の周囲の圧力が低いほど、塗布膜の乾燥速度を高めることができることから、減圧乾燥時の圧力が100Pa以下であることが好ましく、塗布膜の突沸や、乾燥ムラの発生を抑制する点で、減圧乾燥時の圧力が20Pa以上であることが好ましい。
【0075】
(乾燥膜の焼成(第1の焼成)及び光照射)
第1の焼成では、乾燥膜は、焼成温度が70℃以上120℃以下、時間が30秒以上3分以下の条件下で、焼成される。第1の焼成は、下地面に対する乾燥膜の密着性を向上させる処理であり、焼成温度と時間は、乾燥膜のうち、絶縁層4においてパターニング形成されない部分(非パターニング部分)となることを予定される部分に、ゾル・ゲル反応が起こらない範囲で、適宜調整される。第1の焼成後、さらに、焼成された乾燥膜にフォトマスクを介して照射エネルギーが50mJ/cm以上500mJ/cm以下で光を照射することによって乾燥膜は硬化準備膜とされる。照射エネルギーについて、それが10mJ/cm未満となると光酸発生剤が不十分となる虞を生じ、ゾル・ゲル反応を触媒する酸の発生量が十分ではなくなる虞がある。一方、照射エネルギーが500mJ/cm超過となると、パターン太りが大きくなり、十分な精度でパターンニングされた層を形成することが困難になる虞がある。
【0076】
第1の焼成に引き続き実施される光照射は、絶縁層4がネガ型の感光性樹脂組成物を用いて形成される場合、乾燥膜の硬化反応を促進する酸触媒を発生させるための処理であり、照射エネルギーは酸触媒を発生させる範囲で適宜調整される。
【0077】
また第1の焼成に引き続き実施される光照射は、所定のパターンを形成したフォトマスクを介して乾燥膜に向けて光を照射することで実施される。このとき、例えば、図1,2の例に示すような絶縁層4を形成する場合、且つ、ネガ型の感光性樹脂組成物を用いる場合には、フォトマスクとしては、孔部15に対応する部分を遮光するようにパターンを形成したフォトマスクが具体的に準備される。
【0078】
(第2の焼成)
次に硬化準備膜は、第2の焼成を施されるのが好適である。第2の焼成は、焼成温度が70℃以上120℃以下、時間が1分以上10分以下の条件下で、硬化準備膜を焼成する工程である。このとき、硬化準備膜は、仮硬化膜とされる。第2の焼成は、硬化準備膜において絶縁層4においてパターニング形成される部分(パターニング部分)となることを予定される部分でゾル・ゲル反応を十分に進行させる工程である。すなわち、第2の焼成の前に行われた光照射によって、絶縁層4においてパターニング部分となることを予定される部分では、ゾル・ゲル反応が開始しており、その反応が第2の焼成で一層進むことになる。なお、非パターニング部分となることを予定される部分では、ゾル・ゲル反応が開始されず、硬化が抑制されている。第2の焼成において、焼成温度と時間は、非パターニング部分となることを予定される部分でのゾル・ゲル反応が進まず、且つ、パターニング部分となることを予定される部分でゾル・ゲル反応を促進させるべく、上記に示すような範囲で適宜調整される。適宜第2の焼成を施した後、仮硬化膜に対して次に説明する現像工程を施す。
【0079】
(現像工程)
現像工程では仮硬化膜が現像され、これによりパターン形成されたパターン化膜が形成される。現像に使用する現像液は、感光性樹脂組成物に応じて適宜選択可能であるが、現像工程時に生じる廃液の処理が容易であるという理由から、例えば、無機アルカリ系の現像液や、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等の有機アミン系の現像液等が好ましく選択される。
【0080】
(後焼成工程)
現像工程が実施された後、パターン化膜にはさらに焼成が施され、パターン形成されるとともに十分に硬化された感光性シロキサン樹脂層が調製される。そして、この感光性シロキサン樹脂層が、絶縁層4をなす。後焼成工程について、焼成温度は、200℃以上500℃以下の範囲で設定される。焼成時間は、30分以上60分以下の範囲に設定される。なお、焼成温度が200℃未満である場合には、パターン化膜に含まれる感光性化合物の硬化反応が不十分となる虞が生じる。焼成時間が30分未満である場合についても、焼成温度が200℃未満である場合と同様の虞が生じる。焼成温度が500℃を超えると、焼成時にパターン化膜に割れやヒビ、いわゆるクラック、が発生する虞が生じてくる。焼成時間が1時間を超える場合についても、焼成温度が500℃を超える場合と同様の虞が生じる。
【0081】
ポジ型の感光性樹脂組成物を用いた場合、上記ネガ型の感光性樹脂組成物を用いた場合と同様に感光性樹脂組成物の塗布、第1の焼成及び光照射という各工程を実施する。ただし、絶縁層4がポジ型の感光性樹脂組成物を用いて形成される場合については、上述の光照射は現像可能な反応性基を発生させるための処理であり、照射エネルギーは現像可能な反応性基を発生させる範囲で適宜調整される。また、光照射を実施する際に使用されるフォトマスクについて、図1,2の例に示すような絶縁層4を形成する場合、且つ、ポジ型の感光性樹脂組成物を用いる場合には、フォトマスクとしては、孔部15に対応する部分を開口部としてその周囲の所定領域を遮光するようにパターンを形成したフォトマスクが準備される。その後、ポジ型の感光性樹脂組成物を用いた場合には、ネガ型の感光性樹脂組成物を用いた場合の上記第2の焼成を省略して硬化準備膜に対して現像工程及び後焼成工程が施される。現像工程及び後焼成工程は、上記ネガ型の感光性樹脂組成物を用いた場合の現像工程及び後焼成工程と同じ工程でよい。ただし、現像工程においては、現像液としては、水酸化テトラメチルアンモニウム等の有機アミン系の現像液が好ましく選択される。
【0082】
[積層構造5の機能]
積層構造5は、タッチパネル部材1において透明電極部20として機能する。ここで、図1に示すように、透明電極部20は、ガラス基板2面に沿った第1の方向に間隔をあけて配置される複数の第1電極片21からなる第1電極22と、ガラス基板2面に沿った方向であって第1の方向とは異なる第2の方向に間隔をあけて配置される複数の第2電極片23からなる第2電極24とを有してなる。第1電極22と第2電極24は互いに絶縁されている。
【0083】
第1電極22は、積層構造5における第1の電極パターン7を形成する電極パッド11(11a、11b)と第1の連結部12aで構成され、第2電極24は、第2の電極パターン8を形成する電極パッド11(11c、11d)と第2の連結部12bとで構成される。そして、絶縁層4は、第1の連結部12aをまたぐように第2の連結部12bを形成させることができるように形成され、第1電極22と第2電極24とを互いに絶縁させた状態を維持させる。なお、第1電極片21は、第1の電極単位パターン9を形成する電極パッド11(11a、11b)と第1の連結部12aで構成され、第2電極片23は、第2の電極単位パターン10を形成する電極パッド11(11c、11d)と第2の連結部12bとで構成される。
【0084】
なお、透明電極部20は、第1電極片21と第2電極片23において、第2の連結部12bは第1の連結部12aをまたぐように形成されているが、これは一例であり、第1の連結部12aが第2の連結部12bをまたぐように形成されてもよい。その場合には、タッチパネル部材1は、第2の透明電極層で第1の連結部12aを形成し、第1の透明電極層のパターンに第2の連結部12bのパターンが組み込まれるように構成されることになる。
【0085】
[タッチパネル部材1の製造方法]
タッチパネル部材1は、積層構造5の形成により製造される。
【0086】
(積層構造5の調製)
積層構造5は、次のように調製することができる。すなわち、ガラス基板2の所定の領域に第1の透明電極層3aをパターン形成し、次に絶縁層4をパターン形成し、さらに、第2の透明電極層3bをパターン形成することで、積層構造5を調製することができるとともに、タッチパネル部材1が調製される。なお、第1の透明電極層3aと第2の透明電極層3bの形成には、上記した透明電極層3の調製方法が適宜用いられ、絶縁層4の形成には、上記した絶縁層4の調製方法が適宜用いられればよい。
【0087】
[タッチパネル部材1における積層構造5の他の形態]
タッチパネル部材1は、積層構造5として、図2のように構成された積層構造5aを備える場合に限定されない。例えば、タッチパネル部材1は、積層構造5として、次に示す他の形態1から3で記載されているようなものを備えるものであってもよい。
【0088】
(他の形態1)
タッチパネル部材1は、積層構造5として、図8に示すような積層構造5cを備えるものでもよい。積層構造5cは、積層構造5aにおける第2の透明電極層3bを、透明導電性材料とは異なる金属材料からなる金属層25に変更してなる構成となっている。金属層25は、積層構造5aにおける第2の透明電極層3bと同じ位置に同じ形成パターンにて形成される。このとき、金属層25を構成する金属材料としては、後述の取出電極部の金属配線に使用される材料を用いることができる。また、この場合、タッチパネル部材1は、ガラス基板2面上に透明電極層3と絶縁層4をそれぞれ1層設けて構成されることになり、透明電極層3を一層にて形成することができ、タッチパネル部材1の製造工程数を削減できる。
【0089】
(他の形態2)
タッチパネル部材1は、図2Aから図2Cに示すように構成された積層構造5aを備えるものに限定されず、図3Aから図3Dに示すように構成された積層構造5bを備えるものであってもよい。図3Aは、積層構造5bの部分拡大図である。この図において積層構造5bの拡大部分は、積層構造5aでは図2Aに示される部分に対応した部分である。
【0090】
(積層構造5b)
積層構造5bは、図3Aから図3Dに示すように、ガラス基板2の面56のうち一方面56a側に、透明電極層3として、第1の透明電極層3aと第2の透明電極層3bとが形成され、絶縁層4として、第1の絶縁層4aと第2の絶縁層4bとが形成されている。そして、積層構造5bは、ガラス基板2の一方面56a側に第1の透明電極層3aが直接形成されており、更に、タッチパネル部材1の平面視上、第1の透明電極層3aの少なくとも一部を被覆するように、第1の絶縁層4aがガラス基板2面の一方面56a側に形成されている。また、第2の透明電極層3bが、タッチパネル部材1の平面視上、第1の絶縁層4aの少なくとも一部を被覆するように、ガラス基板2面の一方面56a側に形成され、さらに、第2の絶縁層4bが、第2の透明電極層3bを少なくとも被覆するように形成される。積層構造5bは、ガラス基板2面に近いほうから、第1の透明電極層3a、第1の絶縁層4a、第2の透明電極層3b、第2の絶縁層4bの順に積層された構造を少なくとも一部に有するように構成されている。なお、説明の便宜上、図3Aから図3Cでは、取出電極部30の記載を省略しており、図3Dでは、第2の透明電極層3bおよび第2の絶縁層4bの記載を省略する。
【0091】
積層構造5bについて、透明電極層3、絶縁層4を構成する材料と調製方法は、積層構造5aと同様の材料と調製方法を採用されてよい。
【0092】
積層構造5bでは、第1の透明電極層3a、第2の透明電極層3b、第1の絶縁層4a、第2の絶縁層4bの形成パターンは次のようなパターンとなっている。
【0093】
(透明電極層3の形成パターン)
第1の透明電極層3aの形成パターンは、第1の電極パターン26からなる。ここに、この第1の電極パターン26は、積層構造5aの第1の透明電極層3aにおける第1の電極パターン7と同様のパターンである。したがって、積層構造5bにおける第1の透明電極層3aは、電極パッド11(11a、11b)と、隣り合う電極パッド11を連結する連結部12をなす第1の連結部12aとを形成している。
【0094】
積層構造5bにおいて、第2の透明電極層3bの形成パターンは、第2の電極パターン27からなる。ここに、積層構造5bにおける第2の電極パターン27は、積層構造5aの第1の透明電極層3aにおける第2の電極パターン8から第2の連結部12bを除いたパターンと同様のパターンと、隣り合う電極パッド11を連結する連結部12をなす第2の連結部28の形成パターンとをあわせて構成されるパターンである。第2の連結部28の形成パターンは、隣り合う電極パッド11の互いに向かい合わせの頂点間を連結するように形成されるパターンである。したがって、積層構造5bにおける第2の透明電極層3bは、電極パッド11(11c、11d)と、隣り合う電極パッド11を連結する連結部12をなす第2の連結部28とを形成している。
【0095】
(絶縁層4の形成パターン)
第1の絶縁層4aは、タッチパネル部材1の平面視上、第1の透明絶縁層3aのうち第1の連結部12aと、第2の透明電極層3bのうちの第2の連結部28との交差する部分には、少なくとも形成されており、また、第1の絶縁層4aは、タッチパネル部材1の平面視上、飛び地状に形成される。なお、第1の絶縁層4aは、交差する部分をはみ出して外側まで形成されてもよい。この場合、第1の絶縁層4aは、第1の透明電極層3aと第2の透明絶縁層3bとの間の絶縁性をより確実にする。
【0096】
第2の絶縁層4bは、タッチパネル部材1の平面視上、ガラス基板2の一方面側に第1の透明絶縁層3aと第1の絶縁層4aと第2の透明絶縁層3bとを積層した積層体における、ガラス基板2の一方面側の表面を覆うように、形成されている。第2の絶縁層4bは、少なくとも位置検出領域R内においてまとまった1つの層、すなわち一体の層をなして形成されている。第2の絶縁層4bは、タッチパネル部材1外部に対し透明電極層3の絶縁性を確保する機能を発揮する。また、第2の絶縁層4bは、透明電極層3の外部露出を抑制して透明電極層3を保護する表面保護層としても機能する。
【0097】
(絶縁層4の対ガラス基板接触領域の面積)
ところで、積層構造5bを備えるタッチパネル部材1の位置検出領域R内において、一体の層として形成された絶縁層4は、対ガラス基板接触領域18の面積が、タッチパネル部材1の平面視上、前記向合い面14の面積の1%以上15%以下である、という条件を満たすように形成されていることが好ましい。したがって、積層構造5bを有するタッチパネル部材1では、絶縁層4のうち少なくとも第2の絶縁層4bが、位置検出領域Rにおいて一体の層として形成されていることから、この第2の絶縁層4bが上記の条件を満たすように構成されることが好ましい。
【0098】
タッチパネル部材1において、位置検出領域R内では、第2の絶縁層4bは、その第2の絶縁層4の表面のうちガラス基板2面側に向けられた向合い面14における一部の領域を透明電極層3に直接接触させており、第2の絶縁層4bの少なくとも一部が透明電極層3の1層の少なくとも一部を被覆する。このとき、図5Bに示すように、位置検出領域R内において、タッチパネル部材1の平面視上、絶縁層4の向合い面14の領域17のうち透明電極層3に直接接触して形成される領域を、対透明電極層接触領域16とする。
【0099】
なお、第2の絶縁層4bは、少なくとも一部の領域を位置検出領域Rの外側まで形成されていてもよい。絶縁層4がタッチパネルの位置検出エリア形成部6の外周に設けられた金属配線を被覆するように形成されている場合にあっても、位置検出領域Rの内側の領域では、対ガラス基板接触領域18が形成される。
【0100】
積層構造5bにおいては、上記したように第1の絶縁層4aが、第1の連結部12aと第2の連結部28との交差する部分をはみ出して外側まで形成されてはみ出し領域29を形成している場合がある。その場合、対ガラス基板接触領域18には、はみ出し領域29が含まれない。このことは、位置検出領域Rに金属配線の形成領域19が入り込んで、入り込み領域19aが形成される場合についても同じであり、対ガラス基板接触領域18にはその入り込み領域19aは含まれない。なお、積層構造5bのように、第2の絶縁層4bが、第1の透明電極層3a、第2の透明電極層3bの両方に対して同面側で接触している場合、それぞれに対する接触領域が、対透明電極層接触領域16a、16bとされる。そして、積層構造5bについて、上記対ガラス基板接触領域18の特定の際に対透明電極層接触領域16として取り除かれる領域は、対透明電極層接触領域16aおよび対透明電極層接触領域16bとされる。なお、図5Bは、タッチパネル部材1の積層構造5が積層構造5bである場合について、図1Bの領域S2の部分に対応する部分を模式的に示す図であり拡大して示す概略部分拡大平面図である。
【0101】
(他の形態3)
タッチパネル部材1は、積層構造5として、積層構造5aや積層構造5bに示すもの備えるものに限らず、図4Aから図4Cに示すような積層構造5dを備えるものであってもよい。図4Aは、積層構造5dの部分拡大図である。この図において積層構造5bの拡大部分は、積層構造5aでは図2Aに示される部分に対応した部分である。
【0102】
(積層構造5d)
積層構造5dは、図4Aから図4Cに示すように、ガラス基板2の面56のうち一方面56a側に、導電性金属層57が形成されており、絶縁層4として、第1の絶縁層4aと第2の絶縁層4bとが形成されている。また、積層構造5dには、1層の透明電極層3がパターン形成される。
【0103】
より詳しくは、積層構造5bは、ガラス基板2の一方面56a側に導電性金属層57がパターン形成されており、更に、タッチパネル部材1の平面視上、導電性金属層57の少なくとも一部を被覆するように、第1の絶縁層4aがガラス基板2面の一方面56a側に形成されている。また、透明電極層3が、タッチパネル部材1の平面視上、第1の絶縁層4aの少なくとも一部を被覆するように、ガラス基板2面の一方面56a側に形成される。透明電極層3の少なくとも一部は、ガラス基板2面に直接接している。また、第2の絶縁層4bが、透明電極層3を少なくとも被覆するように形成される。積層構造5bは、ガラス基板2面に近いほうから、導電性金属層57、第1の絶縁層4a、透明電極層3、第2の絶縁層4bの順に積層された構造を少なくとも一部に有するように構成されている。なお、説明の便宜上、図4Aから図4Cでは、取出電極部30の記載を省略する。
【0104】
導電性金属層57は、第1の電極パターン58を構成する電極パッド11を連結する連結部12としての第1の連結部59を形成する。導電性金属層57は、透明電極層3とは異なる導電性材料から形成されており、透明電極層3の形成に使用された透明導電性材料を除く金属材料から形成できる。第1の連結部59の形成パターンは、積層構造5aの第1の連結部12aと同様のパターンである。
【0105】
積層構造5dについて、透明電極層3、絶縁層4を構成する材料と調製方法は、積層構造5a、5bと同様の材料と調製方法を採用されてよい。
【0106】
積層構造5dでは、透明電極層3、第1の絶縁層4a、第2の絶縁層4bの形成パターンは次のようなパターンとなっている。
【0107】
(透明電極層3の形成パターン)
透明電極層3の形成パターンは、第1の電極パターン58から第1の連結部59のパターンを除くパターンと、第2の電極パターン60をあわせたパターンからなる。ここに、この第1の電極パターン58から第1の連結部59のパターンを除くパターンは、積層構造5aの第1の透明電極層3aにおける第1の電極パターン7から第1の連結部12aのパターンを除くパターンと同様のパターンである。したがって、第1の電極パターン58から第1の連結部59のパターンを除くパターンは、電極パッド11(11a、11b)の形成パターンに対応するパターンとなる。
【0108】
積層構造5dにおける第2の電極パターン60は、積層構造5bの第2の電極パターン27と同様に、積層構造5aの第1の透明電極層3aにおける第2の電極パターン8から第2の連結部12bを除いたパターンと同様のパターンと、第2の電極パターン8を構成し隣り合う電極パッド11,11を連結する連結部12をなす第2の連結部28の形成パターンとをあわせて構成されるパターンである。
【0109】
(絶縁層4の形成パターン)
第1の絶縁層4aは、前述した積層構造5bにおける第1の絶縁層4aと同様のパターンにパターン形成される。第2の絶縁層4bについても、前述した積層構造5bにおける第1の絶縁層4aと同様のパターンにパターン形成される。
【0110】
(絶縁層4の対ガラス基板接触領域の面積)
積層構造5dにおいて絶縁層4の対ガラス基板接触領域として特定される領域及びその面積の好ましい条件は、積層構造5bと同様である。すなわち、まず対ガラス基板接触領域18は、第2の絶縁層4bの向合い面14の領域17から対透明電極層接触領域16を除いた領域となり、さらに、はみ出し領域29や入り込み領域19aが形成される場合には、そのはみ出し領域29や入り込み領域19aを含まない。また、図4の例に示す積層構造5dの場合、対透明電極層接触領域16は、電極パッド11の形成領域と第2の連結部28の形成領域を合わせた領域となっている。
【0111】
また、対ガラス基板接触領域18の面積についてみるに、積層構造5dは、第2の絶縁層4bについて、対ガラス基板接触領域18の面積が、タッチパネル部材1の平面視上、前記向合い面14の面積の1%以上15%以下である、という条件を満たすように形成されていることが好ましい。この理由についても、前述した積層構造5bの場合と同様である。
【0112】
なお、上記に示したように、タッチパネル部材1においては、積層構造5aについて絶縁層として第1の絶縁層4aと第2の絶縁層4bという2層が形成されていてよく、その場合に、第1の絶縁層4aが、位置検出領域R内において、対ガラス基板接触領域18の面積が、タッチパネル部材1の平面視上、向合い面14の面積の1%以上15%以下であるように、形成されていればよい。また、上記他の形態2、3に示すように、タッチパネル部材1においては、積層構造5b、5dが備えられる場合には、絶縁層として第1の絶縁層4aと第2の絶縁層4bという2層が形成されており、その場合に、第2の絶縁層4bが、位置検出領域R内において、対ガラス基板接触領域18の面積が、タッチパネル部材1の平面視上、向合い面14の面積の1%以上15%以下であるように、形成されていればよい。したがって、次のような技術的思想が読み取られる。すなわち、タッチパネル部材1において、積層構造5は、絶縁層4として第1の絶縁層4aおよび第2の絶縁層4bとを備え、前記位置検出領域内では、前記第1の絶縁層4aと第2の絶縁層4bの少なくともいずれか一方が、少なくとも一部を透明電極層3に接して対透明電極層接触領域を形成するとともに、ガラス基板2面に直接接して対ガラス基板接触領域を形成しており、且つ、対ガラス基板接触領域の面積が、タッチパネル部材1の平面視上、前記向合い面の面積の1%以上15%以下となるように、構成されている。
【0113】
絶縁層が2層形成される場合には、絶縁層が1層である場合に比して、絶縁層の層数が多いため、タッチパネル部材1から絶縁層の剥離の虞は高く、したがって、絶縁層の剥離抑制の要請は高い。特に、絶縁層同士が一部で直接接する場合には、絶縁層同士の接触部分の密着性が強く、互いに連動した動きをしやすくなる。すなわち、1つの絶縁層に剥離が生じると、それに連動してその絶縁層に接する他の絶縁層も剥離が生じやすくなり、互いに接触する絶縁層が一緒になって剥離してしまう虞が生じる。こうしたことから、本願のタッチパネル部材1は、絶縁層4として第1の絶縁層4aおよび第2の絶縁層4bとを備える場合に、大きな貢献をもたらす。
【0114】
[タッチパネル部材1の追加構成]
タッチパネル部材1には、必要に応じて次に示すような取出電極部30や画素群31などといった他の構成が設けられてよい。
【0115】
(取出電極部30)
取出電極部30は、図1A、図1C、図7に示すように、透明電極層3に対して電気的に接続されて配設される。図1の例では、取出電極部30は、第1の透明電極層3aに連結するようにパターン形成されている。取出電極部30の形成パターンは、第1の電極パターン7を形成する電極パッド11に接続される金属配線32のパターンである第1の取出電極パターン33と、第2の電極パターン8を形成する電極パッド11に接続される金属配線32のパターンである第2の取出電極パターン34とをあわせたパターンとなっている。ただし、図1Cでは、図1のI−I線の位置での断面に対応する断面が図示される都合上、第2の取出電極部パターン34を形成する金属配線32のみが記載される。
【0116】
取出電極部30は、金属配線32をガラス基板2の上に所定パターンで配設されることで設けられる。このとき、金属配線32は、透明電極層3aに対して電気的に接続されて配設される。金属配線32は、タッチパネル部材2の平面視上、透明電極層3の端縁位置、図1の例では、それぞれ第1電極片21,第2電極片23の端にある電極パッド11の端縁位置から、位置検出領域Rの外側に向かって延びるようにガラス基板2面上に形成され、透明電極層3の形成パターンに応じて適宜のパターンで配設される。金属配線32は、ガラス基板2の端縁位置まで延在して、その端縁位置で端子35を形成している。なお、端子35は、所定のパターンにてパターン形成され、金属配線32を更に延在させて金属配線32の一部として形成される場合に限らず、金属配線32とは別体にて形成されてもよい。
【0117】
金属配線32を構成する材料としては、細線化が容易である点と低抵抗化が容易である点から、イオン化可能な金属元素が含有される物質が好ましく用いられ、すなわち金属物質が好ましく用いられる。金属配線32を構成する金属物質としては、金属単体や、金属の複合体や、金属と金属化合物の複合体のほか、金属合金を挙げることができる。金属単体としては、銀、金、銅、クロム、プラチナ、アルミニウムの単体などを例示することができる。金属の複合体としては、MAMなどを挙げることができ、金属と金属化合物の複合体としては、酸化クロム/クロム積層体などを例示することができる。金属合金としては、銀合金や銅合金が汎用される。また、金属合金としては、APCなどを例示することができる。なお、MAMは、Mo−Al−Moの3層構造体、すなわちモリブデン・アルミニウム・モリブデンの3層構造体を示しており、APCは、Au・Pd・Cu、すなわち銀・パラジウム・銅の合金を示す。
【0118】
タッチパネル部材1に取出電極部30が設けられていると、透明電極層3から金属配線32および端子35を通じてタッチパネル部材1の外部へと電圧や電流などの電気的情報を効率的に伝えることが容易となる。
【0119】
取出電極部30は、図7Aに示すように、透明電極層3に金属配線32を直接に接続して構成されてもよいし、図7Bに示すように、透明電極層3に一体的に形成される接続部36を備えて、接続部36を介して金属配線32を透明電極層3に接続して構成されてもよい。接続部36は、透明電極層3を構成する導電性材料を用い、透明電極層3の端部から位置検出領域Rの外側に導電性材料の層を延設して形成される。その接続部36上に金属配線32の少なくとも一部が重ねられる。このように取出電極部30が金属配線32と接続部36とを備えて構成されることで、金属配線32と透明電極層3との接続を確実にしつつ、金属配線32が位置検出領域R内に入り込むことを効果的に規制することが可能となる。
【0120】
(画素群31)
タッチパネル部材1は、図9に示すように、ガラス基板2の一方面56a側に、透明電極層3及び絶縁層4を形成し、ガラス基板2の他方面56b側に、複数の画素片37からなる画素群31を形成してなるものでもよい。
【0121】
画素片37は、光透過性を有する所定色の着色層39から形成される。着色層39は、ガラス基板2の他方面56b側に、所定形状でパターン形成してなる。着色層39は、短冊状など適宜形状にパターン形成される。また、着色層39が所定のパターンで多数形成されることで、多数の画素片37が形成され、これらの多数の画素片37で画素群31が構成される。なお、着色層39の色は、適宜設定可能である。図9の例では、着色層39の色として、R(Red、赤)G(Green、緑)B(Blue、青)の3色が用いられ、それぞれ着色層39a、着色層39b、着色層39cとして、ガラス基板2の他方面56b側に所定形状でパターン形成されている。このとき、着色層39は、タッチパネル部材1の平面視上、所定のパターンで区画され、着色層39のうちその区画された1区画で定められる領域部分が画素片37をなす。
【0122】
なお、ガラス基板2の他方面56b側に、遮光性のブラックマトリクスの層38が縦横格子状などの所定のパターンに塗工形成されてもよい。このとき、ブラックマトリクスの層38の形成部分に囲まれた非形成領域が形成されて開口部をなし、この開口部が格子状に多数配置形成される。そして、これらの開口部を覆うように三色の着色層39(39a、39b、39c)が短冊状に配列されてもよい。この場合、着色層39のうち1つの開口部に対応する領域に形成された部分が1つの画素片37を構成することになる。ガラス基板2の他方面30b側には多数の開口部が形成されており、これら多数の開口部を覆うように着色層39が形成されるから、多数の画素片37が形成されて画素群31が形成されることとなる。
【0123】
ブラックマトリクスの層38が形成されていると、ブラックマトリクスで格子状に区画された領域内に着色層39が形成され、着色層39同士の混色を抑制することができる。
【0124】
タッチパネル部材1が画素群31を形成してなるものである場合、画素群31を形成する着色層39が設けられることになるため、着色層39の内部応力によって、ガラス基板2に反りや歪みが生じやすい。するとタッチパネル部材1において、少なくとも1層の絶縁層4が一体の層としてパターン形成されている場合にあっては、そのように一体の層として形成されている絶縁層4が、ガラス基板2の反りによって一層剥離しやすくなっている。上記したように対ガラス基板接触領域18の面積が上記したような条件を満たして絶縁層4の剥離の問題を解決することは、図1のように絶縁層4を一体の層をなしつつパターン形成され且つ画素群31を形成しているタッチパネル部材1において、大きな課題を解決する貢献をもたらす。
【0125】
タッチパネル部材1を用いたタッチパネル40について説明する。
【0126】
[タッチパネル40]
タッチパネル40は、図10に示すように、パネルスクリーン41を備えるとともに、パネルスクリーン41内の所定領域における座標位置を検出する位置検出装置42を、パネルスクリーン41に電気的に接続してなる。パネルスクリーン41は、通常、タッチ位置を検出可能な走査可能エリア41aを形成している。
【0127】
図10中、符号43は、パネルスクリーン41と位置検出装置42を電気的に結ぶフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits ;FPC)を示す。このFPC43は、パネルスクリーン41と位置検出装置42の両方に対して接合される。なお、タッチパネル40においては、パネルスクリーン41と位置検出装置42を電気的に結ぶ構造としては、FPCに限定されず、配線であってもよい。
【0128】
パネルスクリーン41は、タッチパネル部材1の積層構造5上に光透過性を有するカバー基板44を積層してなる。カバー基板44は、樹脂板のほか、カバーガラスを挙げることができる。
【0129】
カバー基板44として使用可能な樹脂板は、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ノルボルネン樹脂、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などの透明樹脂を板状に成形することで得られる。
【0130】
カバー基板44がカバーガラスである場合には、強度の点で、特に強化ガラスであることが好ましい。強化ガラスとしては、ゴリラガラス(ゴリラは商標)(コーニング社製)、ドラゴントレイルガラス(ドラゴントレイルは商標)(旭硝子社製)を挙げることができる。
【0131】
位置検出装置42としては、公知の位置検出機構を備えた装置などを適宜用いることが可能である。位置検出装置42は、パネルスクリーン41を構成するタッチパネル部材1の端子35に電気的に接続されており、位置検出領域Rにおけるタッチ位置を電気的に検出する。
【0132】
[タッチパネル付き表示装置50]
タッチパネル付き表示装置50は、図11A、図11Bに示すように、画像を表示する表示面51aを有する表示パネル51を備える。
【0133】
[表示パネル51]
表示パネル51は、従前より公知な液晶ディスプレイ用の液晶パネルや、有機ELディスプレイ用のELパネルなど、視覚情報を表示可能な表示パネルを適宜用いることができる。
【0134】
表示面51aとしては、例えば、従前より公知な液晶パネルや有機ELパネルなどの表示画面をなす領域を挙げることができる。
【0135】
表示パネル51では、表示面51aに画像などの視覚情報を表示させる表示機構を形成する表示モジュールが形成されている。表示モジュールは、具体的に、従前より公知な液晶パネルを構成する液晶表示用モジュールや、有機ELパネルを構成する有機EL表示用モジュールなどを挙げることができる。
【0136】
具体的に、表示パネル51では、シール材54を介して第1のパネル基板52と第2のパネル基板53とが貼り合わされ、第1のパネル基板52と第2のパネル基板53の間に表示媒体55が設けられ、第1のパネル基板52に表示面51aが形成されている。
【0137】
表示媒体55としては、液晶や、EL素子などを挙げることができる。例えば、表示媒体55が液晶である場合には、表示媒体55は、第1のパネル基板52と第2のパネル基板53の間に液晶を封入してなる液晶層となり、この液晶層は、印加電圧に応じて液晶の配向制御が可能であるように構成される。また、表示媒体55がEL素子である場合、第1のパネル基板52と第2のパネル基板53の間にEL素子が配置されることになる。
【0138】
[タッチパネル部材1を用いる利点]
タッチパネル部材1は、タッチパネル付き表示装置50が有機ELディスプレイである場合に、特に有効性が高まる。
【0139】
有機ELディスプレイを製造する際、シール材を第1のパネル基板52と第2のパネル基板53と間に塗りつけた構造物を焼成するという焼成工程が実施されることで、シール材で第1のパネル基板52と第2のパネル基板53とが貼り合わされる。この焼成工程は、通常、400℃程度といった極めて高温条件下で実施される。第1のパネル基板52にタッチパネル部材を用いるには、タッチパネル部材を構成する透明電極層などといった各構成部についても上記焼成工程に耐えられるものであることが要請される。そこで、有機ELディスプレイでは、特に、タッチパネル部材の絶縁層として、シロキサン骨格を有する感光性化合物を含む感光性樹脂組成物の硬化物からなる層が好ましく用いられることになる。ところが、絶縁層は、透明電極層の少なくとも一部を覆うように形成されるものであり、その一方でシロキサン骨格を有する感光性化合物を含む感光性樹脂組成物の硬化物からなる層は、透明電極層に対する密着性が優れているとまではいえない。このように、絶縁層の剥離の問題は、タッチパネル部材を組み込んだ有機ELディスプレイで極めて重大化しやすい。ところで、絶縁層4は、対ガラス基板接触領域18の面積がタッチパネル部材1の平面視上、前記向合い面14の面積の1%以上15%以下であるように構成されるので、タッチパネル部材1は、絶縁層4が透明電極層3から剥離してしまうという虞の抑制されたものとなる。すなわち、タッチパネル部材1は、それが有機ELディスプレイに組み込まれる場合に極めて重大化しやすい問題を解決することができるものである。
【0140】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【実施例】
【0141】
(タッチパネル部材)
実施例1
(基板の準備)
タッチパネル部材の基板の原板として、ガラス基板(無アルカリガラス、NHテクノグラス社製、NA35)(縦550mm×横650mm)を準備し、超純水に界面活性剤(株式会社環境科学センター製 ディポッシュL)を加えた溶液に浸漬する界面活性剤処理し、引き続き超音波洗浄処理により洗浄した。尚、上記原板に、タッチパネル部材を構成する透明電極層や絶縁層といった各層を形成するためのタッチパネル形成用エリアを50箇所設定し、原板からタッチパネル部材50個が形成されるように設定することで多面取り設計を行った。多面取り設計した後、以下のとおりタッチパネル部材を構成する各層を調製した。
【0142】
(取出電極部の調製)
取出電極部30を構成する金属配線32を次のようにして図12に示すようなパターンにパターン形成した。金属配線32は、その一方端部に端子35を形成している。金属材料としてAPCを用い、APCをガラス基板全面にスパッタリングすることにより、厚さが30nmの配線形成用金属膜をガラス基板面上に形成した。次いで、ポジ型レジスト材料としてポジ感光性材料(AZマテリアルズ社製)を用い、配線形成用金属膜面上にポジ感光性材料を塗布し、金属配線の形成パターンのパターンに応じた所定のパターンを形成したフォトマスクを用いて露光及び現像を施した。こうして、ガラス基板面上で位置検出領域の外側の領域に、端子とともに金属配線の形成パターンとをあわせたパターンに、感光性層が形成されて、積層体が形成された。感光性層の非形成部分では、配線形成用金属膜が露出している。さらに、この積層体をエッチングした。エッチング液としてリン酸と硝酸と酢酸の混合溶液を用いた。配線形成用金属膜のうち露出している部分がエッチングによって除去された。その後、感光性層を苛性ソーダで剥離し、図12に示すように、端子35とともに金属配線32がパターン形成され、金属配線付ガラス基板が得られた。このとき、金属配線32は、位置検出用領域Rよりも内部には入り込まずにその領域Rの境界位置まで形成される。なお、図12には、多面付け設計された基板原板のうち、1つのタッチパネル部材に対応するエリアを抜き出して表示している。これは、図13、15,16,18,20についても同じである。
【0143】
(第1の透明電極層の調製)
金属配線付ガラス基板面上に図13及び図14に示すようなパターンの第1の透明電極層3aを、次のようにパターン形成した。図14は、図13の領域SE1の部分を模式的に示す部分拡大平面模式図である。第1の透明電極層3aは、金属配線付ガラス基板面のうち金属配線32のパターンが形成された面側を下地面として、その下地面上に次のように形成された。第1の透明電極層3aを構成する透明導電性材料としてITOを用い、ITOを金属配線付ガラス基板面全面にスパッタリングすることにより、導電膜として厚さが30nmのITO膜を形成した。そして、取出電極部の調製時に用いられたものと同様のポジ感光性材料を用い、ITO膜上にポジ感光性材料を塗布し、第1の透明電極層のパターンに応じた所定のパターンを形成したフォトマスクを用いて露光及び現像を施した。これにより、ガラス基板面上で位置検出領域Rの内側の領域に、所定のパターンに感光性層が形成されて、積層体が形成された。感光性層のパターンは、第1の電極パターンと、第2の電極パターンから第2の連結部を除いたパターンとをあわせたパターンに形成されている。感光性層の非形成部分では、ITO膜が露出している。さらに、この積層体をエッチングした。エッチング液としてシュウ酸系溶液を用いた。ITO膜のうち露出している部分がエッチングによって除去された。その後、感光性層を苛性ソーダで剥離し、第1の透明電極層がパターン形成され、第1の透明電極層付ガラス基板が得られた。
【0144】
第1の透明電極層付ガラス基板において、第1の透明電極層3aは、上記のように図13及び図14に示すような構成を有する層となっている。第1の透明電極層3aでは、複数のひし形状の電極パッド11,11が互いに独立にして所定方向(X方向)に一列に整列し、ひし形の電極パッドを整列配置した構成の両端位置に、三角形状の電極パッドをさらに配置したパターンを有し、且つ、隣り合う電極パッド11,11同士が直線状の第1の連結部12aで連結されたパターンを有して第1の電極単位パターン9を形成するとともに、所定の方向(Y方向)に、第1の電極単位パターン9が間隔をあけて多数列並んで第1の電極パターン7を形成している。また、第1の透明電極層3aでは、複数のひし形状の電極パッド11,11が互いに独立にして所定方向(Y方向)一列に整列し更にひし形の電極パッドを整列配置した構成の両端位置に、三角形状の電極パッドをさらに配置されている電極パッド列が、所定の方向(X方向)に、間隔をあけて多数列並んで電極パッド群を構成している。この電極パッド群の形成パターンが、第2の電極パターン8の一部を構成するパターンであり、すなわち第2の電極パターン8から第2の連結部12bを除くパターンに対応する。そして電極パッド列の形成パターンは、第2の電極単位パターン10から第2の連結部12bの形成パターンを除いたパターンに対応する。第1の電極パターン7を構成する電極パッド11と第2の電極パターンを構成する電極パッド11との間には隙間13が形成されている。なお、図13では、説明の便宜上、連結部12の記載を省略している。
【0145】
実施例1については、隙間13の幅W1は、26μm程度に設定され、第1の接続部12aは、幅W2が26μm程度に設定された。また、個々の電極パッド11については、1辺の長さW3が5000μm程度の正方形状とし、かつ、その2本の対角線がそれぞれX方向とY方向に沿う配置となるように設定された。ただし、第1の電極単位パターンにおいて両端に配置される電極パッドは、上記正方形状の電極パッドの対角線の1つに沿って2分割してなる形状の3角形に対応するサイズに形成される。これは、第2の電極単位パターンについても同じである。
【0146】
(絶縁層の調製)
第1の透明電極層付ガラス基板面上に、図15のような絶縁層4として第1の絶縁層4aを次のようにパターン形成した。この絶縁層は、第1の透明電極層付ガラス基板面のうち第1の透明電極層のパターンが形成された面側を下地面として、その下地面上に次のように形成された。
【0147】
絶縁層を形成するにあたり、まずパターニングが可能な感光性シロキサン樹脂を感光性化合物として調製し、感光性樹脂組成物を調製した。ここでは、感光性樹脂組成物として、特許第3821165号公報に記載された放射線硬化性組成物を調製した。より具体的に、放射線硬化性組成物は、次のように調製されたものである。
【0148】
テトラエトキシシラン317.9gとメチルトリエトキシシラン247.9gとをジエチレングリコールジメチルエーテル1116.7gに溶解させた溶液中に、0.644重量%に調製した硝酸167.5gを攪拌下で30分間かけて滴下して反応用溶液を調製する。滴下終了後、反応用溶液を3時間反応させた後、減圧下、温浴中で生成したエタノールおよびジエチレングリコールジメチルエーテルの一部を留去して、ポリシロキサン溶液1077.0gを得る。
【0149】
ポリシロキサン溶液のうち525.1gをとって、これにジエチレングリコールジメチルエーテル53.0g、2.38重量%に調製されたテトラメチルアンモニウム硝酸塩水溶液(pH3.6)及び水3.0gを添加し、室温(25℃)で30分間攪拌溶解して放射線硬化性組成物用ポリシロキサン溶液を得る。なお、GPC法(溶離液:テトラヒドロフラン(THF)、測定温度:23℃、流速:1.75mL/分、測定時間:45分)によりポリシロキサンの重量平均分子量を測定すると、830である。このポリシロキサンが感光性化合物に対応する化合物である。トラメチルアンモニウム硝酸塩は、既述した光酸発生剤のようなゾル・ゲル反応触媒とは異なる硬化促進剤として、好ましく添加されるものである。
【0150】
放射線硬化性組成物用ポリシロキサン溶液10.0gに、ゾル・ゲル反応触媒として光酸発生剤(PAI−1001、みどり化学社製)0.193gを配合し、放射線硬化性組成物が調製された。なお、感光性化合物となるシロキサン成分の使用量は放射線硬化性組成物総量に対して15重量%であり、光酸発生剤成分の使用量は放射線硬化性組成物総量に対して1.9重量%であり、硬化促進剤成分の使用量は放射線硬化性組成物総量に対して0.075重量%であった。
【0151】
感光性樹脂組成物を、第1の透明電極層付ガラス基板の下地面上に塗布して、塗布膜を形成した、塗布膜は、一部が第1の透明電極層面上に直接に形成され、一部がガラス基板面上に直接形成される。なお、塗布法には、スピンコート法が用いられた。塗布膜を形成したガラス基板は、減圧乾燥装置内に置かれ、減圧乾燥装置内を27Paに減圧することで塗布膜に含まれる溶媒を部分的に除去し、ホットプレート上で加熱(プリベーク)して、完全に溶媒成分を除去して塗布膜を乾燥膜となした。なお、このとき、加熱条件については、加熱温度が90℃、加熱時間が45秒間とされた。なお、溶媒は、ジエチレングリコールジメチルエーテルと水である。
【0152】
乾燥膜を形成したガラス基板を室温まで冷却した後、絶縁層の形成パターンに対応した所定のパターンを形成したフォトマスクを用いて、乾燥膜上の所定位置にフォトマスクを適用し、プロキシアライナーにより波長365nmの紫外光を用いて200mJ/cmの露光量にて乾燥膜に向けた光照射を施した。
【0153】
絶縁層4(4a)の形成パターンは、図15に示すように、所定の第1の透明電極層3aにおける第2の電極パターン8の電極パッド11の部分に対して向き合う所定の位置に、孔部15を形成するようなパターンである。後に第2の透明電極層3bが形成される際、第2の透明電極層3bを構成する透明導電性材料が孔部15内にも入り、第2の透明電極層3bと第1の透明電極層3aとの接触部を形成するとともに、第2の電極パターン8を構成する第2の連結部12bの形成がなされることになる。
【0154】
フォトマスクのマスクパターンは、上記したような絶縁層4の形成パターンを考慮したパターンにパターン形成されており、すなわち絶縁層4の孔部15の形成パターンに対応した部分を、光の透過を遮蔽する遮光部とすることで形成される。
【0155】
さて、乾燥膜に対して光照射処理が施されてその膜にゾル・ゲル反応の進行が認められた後、乾燥膜を現像した。現像液には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド2.38wt%(TMAH、東京応化工業社製:NMD−3)が用いられ、現像方法は、現像液中にガラス基板ごと浸漬するディップ現像法が用いられた。これにより、乾燥膜のうち未露光部分が除去され、絶縁層の形成パターンに対応したパターンを形成したパターン化膜が得られた。さらに、パターン化膜を形成したガラス基板を加熱炉(アドバンテスト社製、FUW210PA)中で加熱(ポストベーク)した。このとき、加熱条件については、大気雰囲気下で加熱温度を500℃、加熱時間を1時間とした。この加熱炉での加熱により、パターン化膜に含まれる感光性化合物の重縮合反応がより一層進行して架橋構造を有する硬化物を形成し、パターン化膜はより硬化されることとなり、これが絶縁層をなす。
【0156】
こうして、図15に示すような孔部15を有するパターンにパターニングされた絶縁層4を第1の透明電極層3aの形成面側上に形成し、絶縁層付ガラス基板を得た。調製された絶縁層4は、厚みが1.5μmであり、また、孔部15について、個々の孔部15の形状は、図17にも示すように、一辺の長さWHが50μm程度の平面視正方形状に形成された。図17は、後述する図16の領域SE2の部分を模式的に示す部分拡大平面模式図である。また、孔部15については、1つの位置検出領域R中に168個形成された。
【0157】
(第2の透明電極層の調製)
絶縁層付ガラス基板面上に第2の透明電極層3bを次のようにパターン形成した。第2の透明電極層3bは、絶縁層付ガラス基板面のうち絶縁層4が形成された面側を下地面として、その下地面上に形成された。絶縁層付ガラス基板面上にITO膜が形成された点、ITO膜の厚みを50nmとした点、フォトマスクとして第2の透明電極層3bの形成パターンに対応するパターンを形成したものを用いた点のほかは、第1の透明電極層の調製と同じ工程を用いてITO膜を所定のパターンにパターニング形成して第2の透明電極層が形成された。第2の透明電極層の形成パターンは、図16,図17に示すような第2の連結部12bの形成パターンに対応したパターンとなっている。なお、個々の第2の連結部12bは、孔部15を介して第1の透明電極層3aの電極パッド11に繋がっており、隣り合う電極パッド11同士を連結するように構成される。こうして、第2の透明電極層付ガラス基板が形成される。
【0158】
第1の透明電極層3aと第2の透明電極層3bのパターン形成がなされたことにより、第1の電極部22と第2の電極部24を有する透明電極部20が形成される。この実施例においては、第1の電極部22は、第1の透明電極層3aにおける第1の電極パターン7に対応する部分で構成される。第2の電極部24は、第1の透明電極層3aにおける、第2の電極パターン10から第2の連結部12bのパターンを除くパターンに対応する部分と、第2の透明電極層3bで構成される。なお、個々の第2の連結部12bは、U字状に形成されており、2箇所で屈曲してその第2の連結部12bの端部に向かって孔部15の空間部分に進出させて第1の透明電極層3aに接触させて2つの進出部12b1,12b1を形成しており、2つの進出部12b1,12b1を繋ぐ繋ぎ部12b2を形成して構成されている。第2の連結部12bの繋ぎ部12b2については、図17にも示すように、幅W5が26μm程度の線状に形成されるが、進出部12b1,12b1に繋がる両端部分については、一辺の長さW4が70μm程度の平面視正方形状に形成されている。
【0159】
(第2の絶縁層の調製)
第2の透明電極層付ガラス基板面上に第2の絶縁層4bを、次に示すようにして、図20に示すようなパターンにパターン形成した。第2の絶縁層4bは、第2の透明電極層付ガラス基板面のうち第2の透明電極層が形成された面側を下地面として、その下地面上に形成された。第2の透明電極層付ガラス基板面上に塗布膜が形成された点、フォトマスクとして第2の絶縁層4bの形成パターンに対応するパターンを形成したものを用いた点のほかは、第1の絶縁層4aの調製と同じ工程を用いて塗布膜を所定のパターンにパターニング形成された硬化膜となして第2の絶縁層4bが形成された。図20に示すように第2の絶縁層4bの形成パターンは、第2の透明電極層付ガラス基板面上、端子35の形成されたエリアを除く全領域を覆いつくすパターンである。したがって、第2の絶縁層4bは、第1の透明電極層3aと第2の透明電極層3bの両層の形成領域を覆いつくすように形成されることなり、表面保護層として機能しうる層をなす。なお、第2の絶縁層は、厚さが1.5μmであった。
【0160】
上記した取出電極部と透明電極層及び絶縁層は、50箇所のタッチパネル形成用エリアのそれぞれについて形成された。そして、タッチパネル形成用エリアごとの分離が行われて、タッチパネル部材が調製された。タッチパネル部材が50個調製された。このうちから任意に1つを選択し、実施例1のタッチパネル部材とした。
【0161】
(向合い面の領域の面積及び対ガラス基板接触領域の面積の測定)
第1の絶縁層4aは、位置検出領域R内において、第1の透明電極層3a及びガラス基板2の両方に当接しており、向き合い面の領域17、対透明電極層接触領域16、及び対ガラス基板接触領域18を定義される層である。第1の絶縁層4aにつき、これら各領域の面積を計測した。まず、得られたタッチパネル部材の位置検出領域Rの面積は約4243mmであった。ここで、実施例1のタッチパネル部材1の位置検出領域Rにおける孔部15の形成領域の合計面積が約0.4mm程度であると算出されることから、位置検出領域R内における第1の絶縁層4の面積にあたる向合い面の領域17の面積は、位置検出領域Rの面積と略一致しており、約4243mmと算出された。また、位置検出領域において第1の絶縁層のうちガラス基板2に接触している部分の領域である対ガラス基板接触領域18について、その面積は43mm(面積比1%)であった。ここに面積比とは、向合い面の領域17の面積に対する、対ガラス基板接触領域18の面積の比率(%)を示す。なお、向合い面の領域17の面積が位置検出領域Rの面積と略一致していることは、実施例2,3、比較例1,2についても同様である。これは、実施例1,2,3および比較例1.2について、後述のように個々の孔部15の寸法・形成数を同じくしていることに要因がある。
【0162】
上記した位置検出領域の面積、対ガラス基板接触領域の面積等、各面積の測定は、次のように実施された。すなわち、タッチパネル部材を平面視した状態の画像をデジタルカメラで撮影し、タッチパネル部材の平面視画像についての画像データを得る。画像処理システム(ニレコ(株)製:LUZEX AP)にその画像データを入力し、その画像データの画像処理に基づき、位置検出領域、対ガラス基板接触領域が計測された。また、向合い面の面積についても画像データの画像処理に基づき計測され、上記算出値に一致した。
【0163】
(タッチパネル部材における絶縁層の密着性評価)
調製されたタッチパネル部材を用いて、次に示す評価1,2によりタッチパネル部材における絶縁層の密着力を評価した。評価1では、密着性の物理的な強さが調べられ、評価2では、密着性の持続性が調べられる。
【0164】
(評価1)
評価1は、テープ剥離試験の結果に基づき密着性を評価することで実施された。テープ剥離試験は、タッチパネル部材の表面に形成されている第2の絶縁層4b上に粘着テープ(日東電工社製 セロハンテープNo.29(幅15mm×長さ70mm))を貼り付け、粘着テープをタッチパネル部材の表面に対して垂直方向に引き剥がす。このとき、タッチパネル部材において粘着テープが引き剥されて形成される引き剥がし部のうち幅及び長さ方向の中心部に縦1cm×横1cmの矩形エリアを評価用のエリアとして選択して、その矩形エリアの状態を目視にて確認し、確認されたその状態に応じて次のように密着性を評価した。
【0165】
矩形エリア中に絶縁層の剥がれが認められない・・・ ○(密着性は良好)
矩形エリア中に絶縁層の剥がれが認められるが、剥がれた面積が矩形エリアの10%未満の面積に留まる ・・・ △(密着性は普通)
矩形エリア中に絶縁層の剥がれが認められ、さらに剥がれた面積が矩形エリアの10%以上の面積に及ぶ ・・・ ×(密着性は不良)
【0166】
実施例1のタッチパネル部材について、評価1の結果は、○(密着性は良好)であると評価された。
【0167】
なお、上記の評価1では、粘着テープは、第2の絶縁層4bに貼り付けられるが、第2の絶縁層4bは、部分的に第1の絶縁層4aに接触しており、第1の絶縁層4aと第2の絶縁層4bの密着性が第1の絶縁層4aと第1の透明電極層3aとの密着性よりもきわめて大きいことから、粘着テープが第2の絶縁層4bに貼り付けてられても、第1の絶縁層4aと第1の透明電極層3bとの密着性を評価することができる。すなわち、粘着テープを剥離する際、第1の絶縁層4aと第1の透明電極層3aとの密着性が物理的に弱ければ、第1の絶縁層4aと第2の絶縁層4bが一緒に剥がされることとなり、第1の絶縁層4aと第1の透明電極層3aとの密着性が物理的に強ければ、粘着テープを剥離した際に、第1の絶縁層4aと第2の絶縁層4bのいずれも剥離しにくくいということになる。
【0168】
(評価2)
評価2は、プレッシャークッカー試験の結果に基づき密着性を評価することで実施された。プレッシャークッカー試験は、タッチパネル部材を2気圧下、温度121℃、湿度95%で50時間晒した後、絶縁層の状態を目視にて確認し、確認されたその状態に応じて次のように密着性を評価した。
【0169】
絶縁層に変化が認められない ・・・○(密着性の維持力は良好)
絶縁層に浮きが認められる ・・・△(密着性の維持力が普通)
絶縁層に剥がれ落ちが認められる ・・・×(密着性の維持力が極めて弱い)
【0170】
なお、絶縁層に浮きが認められる場合とは、基板と絶縁層膜との間に部分的に隙間が生じてしまっているが、剥がれ落ちずに基板上に留まっている状態を示し、絶縁層にはがれ落ちが認められる場合とは、絶縁層の少なくとも一部に基板から剥がれ落ちてしまっている部分が存在する状態を示すものとする。
【0171】
実施例1のタッチパネル部材について、評価2の結果は、○(密着性は良好)であると評価された。
【0172】
実施例2,3
実施例2,3については、実施例1における透明電極層と絶縁層の調製に用いたフォトマスクを、それぞれ実施例2,3のタッチパネル部材の透明電極層と絶縁層の形成パターンに対応するものに変更したほかは、実施例1と同様の工程を実施して、実施例2,3のタッチパネル部材を作製した。
【0173】
実施例2のタッチパネル部材につき、透明電極層と絶縁層の形成パターンは次のとおりである。まず、透明電極層のパターンに関し、第1の透明電極層の形成パターンについては、電極パッド11の形成数と外観形状のパターンは実施例1と同様のパターンである。また、隙間13の幅W1は、220μm程度に設定され、第1の接続部12aは、幅W2が26μm程度に設定された。三角形状の電極パッド間に配置される矩形状の個々の電極パッド11について、1辺の長さW3が5000μm程度の正方形状とし、かつ、その2本の対角線がそれぞれX方向とY方向に沿う配置となるように設定された。
【0174】
第2の透明電極層の形成パターンについては、第2の接続部12bのパターンは実施例1と同様に繋ぎ部12b2と進出部12b1,12b1を有するパターンである。第2の連結部12bの繋ぎ部12b2については、幅W5が26μm程度の線状に形成され、進出部12b1,12b1に繋がる両端部分について、一辺の長さW4が70μm程度の平面視正方形状に形成される。
【0175】
絶縁層4のパターンに関し、第1の絶縁層4aの形成パターンについて、孔部15の形成数と外観形状のパターンは実施例1と同様のパターンに設定された。また、個々の孔部15の形状は、一辺の長さWHが50μm程度の平面視正方形状に形成された。第2の絶縁層4bの形成パターンは、実施例1と同様である。
【0176】
実施例3のタッチパネル部材について、透明電極層と絶縁層の形成パターンは、隙間13の幅W1が、424μm程度に設定された以外、実施例2のタッチパネル部材と同様のパターンに形成された。具体的に、第1の接続部12aの幅W2、正方形状の個々の電極パッド11の1辺の長さW3、第2の連結部12bについて繋ぎ部12b2の幅W5および進出部12b1,12b1に繋がる両端部分についての一辺の長さW4、平面視正方形状に形成された孔部15の一辺の長さWHのそれぞれの値について、実施例2のタッチパネル部材と同様の値とされた。
【0177】
実施例2,3のタッチパネル部材を用いて、実施例1と同様にして、向合い面の領域17の面積及び対ガラス基板接触領域18の面積の測定を行うとともに、実施例1と同様に評価1,2を用いてタッチパネル部材における絶縁層の密着性を評価した。
【0178】
(向合い面の面積及び対ガラス基板接触領域の面積の測定)
実施例2で得られたタッチパネル部材の位置検出領域Rの面積は4578mmであった。また、向合い面の領域17の面積は、位置検出領域Rの面積に略一致し、4578mmと算出された。また、位置検出領域Rにおいて第1の絶縁層のうちガラス基板に接触している部分の領域である対ガラス基板接触領域18について、その面積は378mm(面積比8.3%)であった。
【0179】
実施例3で得られたタッチパネル部材の位置検出領域Rの面積は4943mmであった。また、向合い面の領域17の面積は、位置検出領域Rの面積に略一致し、4943mmと算出された。また、対ガラス基板接触領域18について、その面積は743mm(面積比15%)であった。
【0180】
(タッチパネル部材における絶縁層の密着性評価)
実施例2,3のタッチパネル部材を用いて、実施例1と同様に評価1,2の評価を行った。その結果、実施例2,3のタッチパネル部材は、いずれについても、評価1および評価2ともに○であった。
【0181】
実施例4
(基板の準備)
実施例1と同様に、タッチパネル部材の基板の原板として、ガラス基板(無アルカリガラス、NHテクノグラス社製、NA35)(縦550mm×横650mm)を準備し、これを界面活性剤処理し、引き続き超音波洗浄処理により洗浄した。また、実施例1と同様に、タッチパネル形成用エリアを50箇所設定し、原板からタッチパネル部材50個が形成されるように多面取り設定した。
【0182】
(取出電極部及び第1の連結部の調製)
取出電極部30を構成する金属配線32のパターンと、連結部12をなす第1の連結部59のパターンとを、図18に示すようなパターンにて、次のようにしてガラス基板2面上にパターン形成した。ここに、金属配線32は、その一方端部に端子35を形成している。第1の連結部59を構成する導電性金属層57としては、金属配線32と同じ材料が用いられた。すなわち、金属配線32のパターンと、連結部12をなす第1の連結部59のパターンとをあわせたパターンを、同じ材料で形成した。具体的に金属配線32と端子35と第1の連結部59を構成する金属材料としてAPCを用い、APCをガラス基板全面にスパッタリングすることにより、厚さが30nmの配線形成用金属膜を製膜した。その後、端子35を一端に形成した金属配線32と第1の連結部59のパターンをあわせたパターンに応じた所定のパターンを形成したフォトマスクを用いたほかは、実施例1の取出電極部30の調製と同様の工程を実施して、図18に示すように、端子35とともに金属配線32及び第1の連結部59がパターン形成され、金属配線付ガラス基板が得られた。個々の第1の連結部59は、図19に示すように、幅W6が10μmで、所定長さの線状に形成される。また、第1の連結部59の形成パターンは、位置検出領域R内に、多数の第1の連結部59が縦横(図19においてX方向、Y方向)に所定の間隔をあけて整列配置されて形成されるパターンである。図19は、実施例4のタッチパネル部材を形成するにあたり後述の透明絶縁層を形成した状態について、図13の領域SE1の部分に対応する部分を模式的に示す部分拡大平面模式図である。
【0183】
(第1の絶縁層の調製)
金属配線付ガラス基板面上に、絶縁層4として第1の絶縁層4aを次のようにパターン形成した。この絶縁層4は、金属配線付ガラス基板面のうち金属配線32と端子35及び第1の連結部59のパターンが形成された面側を下地面として、その下地面上に次のように形成された。
【0184】
絶縁層を形成するにあたり、実施例1と同様にして感光性樹脂組成物が調製された。
【0185】
感光性樹脂組成物を、実施例1と同様に下地面上に塗布して、塗布膜を形成した。その後、次に示すような絶縁層4の形成パターンに対応したパターンを有するフォトマスクを用いたほかは実施例1と同様の工程を実施して、絶縁層4が図19に示すようにパターン形成され、絶縁層付ガラス基板を得た。
【0186】
第1の絶縁層4aの形成パターンは、図18、19に示すように、第1の連結部59の部分に対して向き合う所定の位置に、個々の第1の連結部59を部分的に被覆するパターンであり、飛び地状のパターンである。絶縁層4を構成する飛び地状のパターンの1区画に対応する部分は、幅W7が20μmの線状に形成されている。また、このとき、個々の第1の連結部59は、その長手方向両端部を除く部分を第1の絶縁層4aで被覆される。
【0187】
フォトマスクのマスクパターンは、上記したような第1の絶縁層4の形成パターンを考慮したパターンにパターン形成されており、すなわち絶縁層の形成される領域に対応する部分を、光の透過可能な開口部とすることで形成される。
【0188】
(透明電極層の調製)
絶縁層付ガラス基板面上に透明電極層3を次のようにパターン形成した。透明電極層3は、絶縁層付ガラス基板面のうち絶縁層が形成された面側を下地面として、その下地面上に形成された。絶縁層付ガラス基板面上にITO膜が形成された点、フォトマスクとして実施例4の透明電極層の形成パターンに対応するパターンを形成したものを用いた点のほかは、実施例1の第1の透明電極層の調製と同じ工程を用いてITO膜を所定のパターンにパターニング形成して透明電極層が形成され、透明電極層付ガラス基板を得た。
【0189】
透明電極層3は、図19に示すような構成を有する層となっており、タッチパネル部材1つの全体を平面視した場合には、図13に示すような外観を呈している。透明電極層3では、複数のひし形状の電極パッド11,11が互いに独立にして所定方向(X方向)に一列に整列するとともにひし形の電極パッドを整列配置した構成の両端位置に、三角形状の電極パッドをさらに配置してなる電極パッド列が、所定の方向(Y方向)に、間隔をあけて多数列並んで第1の電極パッド群を構成している。この第1の電極パッド群の形成パターンは、第1の電極パターン58から第1の連結部59の形成パターンを除くパターンに対応する。また、透明電極層3では、複数のひし形状の電極パッド11,11が互いに独立にして所定方向(Y方向)一列に整列するとともにひし形の電極パッドを整列配置した構成の両端位置に、三角形状の電極パッドをさらに配置してなる電極パッド列が、所定の方向(X方向)に、間隔をあけて多数列並んで第2の電極パッド群が構成されている。さらに、透明電極層3では、連結部12をなす線状の第2の連結部28がパターン形成されており、第2の電極パッド群における個々の電極パッド列において、隣り合う電極パッド同士を第2の連結部28が連結する。第2の電極パッド群と第2の連結部28の形成パターンをあわせたパターンは、第2の電極パターン60に対応する。
【0190】
なお、個々の電極パッド11のサイズについては、1辺の長さW3が5000μmの正方形状とし、かつ、その2本の対角線がそれぞれX方向とY方向に沿う配置となるように設定された。また、第1の電極単位パターンにおいて、両端に配置される電極パッドのサイズについては、上記正方形状の電極パッドの対角線の1つに沿って2分割してなる3角形に対応するサイズとなっている。これは、第2の電極単位パターンについても同じである。
【0191】
また、第2の連結部28のサイズについては、幅W8が26μmの線状に形成された。
【0192】
第1の連結部59と透明電極層3のパターン形成がなされたことにより、図13に示すように第1の電極部22と第2の電極部24を有する透明電極部20が形成される。第1の電極部22は、第1の連結部59と、透明電極層3における第1の電極パッド群に対応する部分で構成される。第2の電極部24は、透明電極層3における、第2の電極パターン60に対応する部分で構成される。
【0193】
(第2の絶縁層の調製)
透明電極層付ガラス基板面上に第2の絶縁層を次のようにパターン形成した。第2の絶縁層は、透明電極層付ガラス基板面のうち透明電極層が形成された面側を下地面として、その下地面上に形成された。透明電極層付ガラス基板面上に塗布膜が形成された点、フォトマスクとして実施例4の第2の絶縁層の形成パターンに対応するパターンを形成したものを用いた点のほかは、実施例1の第2の絶縁層の調製と同じ工程を用いて、実施例4の第2の絶縁層が形成された。実施例4の第2の絶縁層4bの形成パターンは、実施例1で形成された第2の絶縁層4bと同様のパターンであり、すなわち図20に示すように透明電極層3を覆いつくすようなパターンであり、表面保護層として機能しうる層である。なお、第2の絶縁層は、厚さが1.5μmであった。
【0194】
上記した取出電極部と透明電極層及び絶縁層は、50箇所のタッチパネル形成用エリアのそれぞれについて形成された。そして、タッチパネル形成用エリアごとの分離が行われて、タッチパネル部材が調製された。タッチパネル部材が50個調製された。このうちから任意に1つを選択し、実施例4のタッチパネル部材とした。
【0195】
(向合い面の面積及び対ガラス基板接触領域の面積の測定)
実施例4のタッチパネル部材については、第2の絶縁層4bが、位置検出領域R内において、透明電極層3及びガラス基板2の両方に当接しており、これが向き合い面の領域17、対透明電極層接触領域16、及び対ガラス基板接触領域18を定義される層に対応する。第2の絶縁層4bにつき、これら各領域の面積を計測した。まず、得られたタッチパネル部材の位置検出領域Rの面積は4244mmであった。そして、位置検出領域R内における第2の絶縁層4bの面積にあたる向合い面の領域17の面積は4244mmであった。また、位置検出領域Rにおいて第2の絶縁層4bのうちガラス基板2に接触している部分の領域である対ガラス基板接触領域18について、その面積は44mm(面積比1%)であった。なお、位置検出領域Rの面積、向合い面の領域17の面積、対ガラス基板接触領域18の面積等、各面積の測定は、実施例1と同様に画像データの画像分析により実施された。
【0196】
(タッチパネル部材における絶縁層の密着性評価)
実施例4のタッチパネル部材を用いて、実施例1と同様に評価1,2の評価を行った。その結果、実施例4のタッチパネル部材は、評価1および評価2ともに○であった。
【0197】
実施例5,6
実施例5,6について、実施例4における透明電極層と絶縁層の調製に用いたフォトマスクを、それぞれ実施例5,6のタッチパネル部材の第1の連結部59と透明電極層3と絶縁層4の形成パターンに対応するものに変更したほかは、実施例4と同様の工程を実施して、実施例5,6のタッチパネル部材を作製した。
【0198】
実施例5のタッチパネル部材につき、第1の連結部59と透明電極層3と絶縁層4の形成パターンは次のとおりである。第1の連結部59は、その形成数と位置について実施例4と同様のパターンで形成される。個々の第1の連結部59は、幅W6が10μmの線状に形成される。
【0199】
透明電極層3のパターンについては、電極パッド11の形成数と外観形状のパターンは実施例4と同様のパターンである。また、隙間13の幅W1は、220μm程度に設定され、第2の接続部28は、幅W8が26μm程度に設定された。三角形状の電極パッド間に配置される矩形状の個々の電極パッド11について、1辺の長さW3が5000μm程度の正方形状とし、かつ、その2本の対角線がそれぞれX方向とY方向に沿う配置となるように設定された。
【0200】
第1の絶縁層4aの形成パターンについて、飛び地状に形成して個々の第1の連結部59を部分的に被覆するパターンは、実施例4と同様である。第1の絶縁層4aを構成する飛び地状に形成された1区画については、幅W7が20μm程度の線状に形成される。第2の絶縁層4bの形成パターンは、実施例4と同様である。
【0201】
実施例6のタッチパネル部材について、透明電極層と絶縁層の形成パターンは、隙間13の幅W1が、425μm程度に設定された以外、実施例5のタッチパネル部材と同様のパターンに形成された。具体的に、正方形状の個々の電極パッド11の1辺の長さW3、第1の連結部59の幅W6、第2の連結部28の幅W8、1の絶縁層を構成する飛び地状に形成された線状の1区画についての幅W7のそれぞれの値について、実施例5のタッチパネル部材と同様の値とされた。
【0202】
実施例5,6のタッチパネル部材を用いて、実施例4と同様にして、向合い面の面積及び対ガラス基板接触領域の面積の測定を行うとともに、実施例1,4と同様に評価1,2を用いてタッチパネル部材における絶縁層の密着性を評価した。
【0203】
(向合い面の面積及び対ガラス基板接触領域の面積の測定)
実施例5で得られたタッチパネル部材の位置検出領域Rの面積は4578mmであった。そして、位置検出領域R内における第2の絶縁層4bの面積にあたる向合い面の領域17の面積は4578mmであった。また、位置検出領域Rにおいて第2の絶縁層4bのうちガラス基板2に接触している部分の領域である対ガラス基板接触領域18について、その面積は376mm(面積比8.3%)であった。
【0204】
実施例6で得られたタッチパネル部材の位置検出領域の面積は4944mmであった。そして、位置検出領域内における第2の絶縁層4bの面積にあたる向合い面の面積は4944mmであった。また、位置検出領域において第2の絶縁層のうちガラス基板に接触している部分の領域である対ガラス基板接触領域について、その面積は742mm(面積比15%)であった。
【0205】
(タッチパネル部材における絶縁層の密着性評価)
実施例5,6のタッチパネル部材を用いて、実施例1と同様に評価1,2の評価を行った。その結果、実施例5,6のタッチパネル部材は、いずれについても、評価1および評価2ともに○であった。
【0206】
比較例1,2
比較例1,2について、実施例1における透明電極層と絶縁層の調製に用いたフォトマスクを、それぞれ比較例1,2のタッチパネル部材の透明電極層と絶縁層の形成パターンに対応するものに変更したほかは、実施例1と同様の工程を実施して、比較例1,2のタッチパネル部材を作製した。
【0207】
比較例1のタッチパネル部材につき、透明電極層と絶縁層の形成パターンは次のとおりである。まず、透明電極層のパターンに関し、第1の透明電極層の形成パターンについては、電極パッド11の形成数と外観形状のパターンは実施例1と同様のパターンである。また、隙間13の幅W1は、10μm程度に設定され、第1の接続部12aは、幅W2が10μm程度に設定された。三角形状の電極パッド間に配置される矩形状の個々の電極パッド11について、1辺の長さW3が5000μm程度の正方形状とし、かつ、その2本の対角線がそれぞれX方向とY方向に沿う配置となるように設定された。
【0208】
第2の透明電極層の形成パターンについては、第2の接続部12bのパターンであり、このパターンは実施例1と同様に繋ぎ部12b2と進出部12b1,12b1を有するパターンである。第2の連結部12bの繋ぎ部12b2については、幅W5が26μm程度の線状に形成され、進出部12b1,12b1に繋がる両端部分について、一辺の長さW4が70μm程度の平面視正方形状に形成される。
【0209】
絶縁層4のパターンに関し、第1の絶縁層4aの形成パターンについて、孔部15の形成数と外観形状のパターンは実施例1と同様のパターンに設定された。また、個々の孔部15の形状は、一辺の長さWHが50μm程度の平面視正方形状に形成された。第2の絶縁層4bの形成パターンは、実施例1と同様である。
【0210】
比較例2のタッチパネル部材について、透明電極層と絶縁層の形成パターンは、隙間13の幅W1が、425μm程度に設定され、第1の接続部12aの幅W2が26μm程度に設定された以外、比較例1のタッチパネル部材と同様のパターンに形成された。具体的に、正方形状の個々の電極パッド11の1辺の長さW3、第2の連結部12bについて繋ぎ部12b2の幅W5および進出部12b1,12b1に繋がる両端部分についての一辺の長さW4、平面視正方形状に形成された孔部15の一辺の長さWHのそれぞれの値について、実施例2のタッチパネル部材と同様の値とされた。
【0211】
比較例1,2のタッチパネル部材を用いて、実施例1と同様にして、向合い面の領域17の面積及び対ガラス基板接触領域18の面積の測定を行うとともに、実施例1と同様に評価1,2を用いてタッチパネル部材における絶縁層の密着性を評価した。
【0212】
(向合い面の面積及び対ガラス基板接触領域の面積の測定)
比較例1で得られたタッチパネル部材の位置検出領域の面積は4217mmであった。また向合い面の面積は、位置検出領域の面積に略一致し、4217mmと算出された。また、位置検出領域において第1の絶縁層のうちガラス基板に接触している部分の領域である対ガラス基板接触領域について、その面積は17mm(面積比0.4%)であった。
【0213】
比較例2で得られたタッチパネル部材の位置検出領域の面積は5008mmであった。また、向合い面の面積は、位置検出領域の面積に略一致し、5008mmと算出された。また、位置検出領域において第1の絶縁層のうちガラス基板に接触している部分の領域である対ガラス基板接触領域について、その面積は808mm(面積比16.1%)であった。
【0214】
(タッチパネル部材における絶縁層の密着性評価)
比較例1,2のタッチパネル部材を用いて、それぞれ実施例1と同様に評価1,2の評価を行った。その結果、比較例1のタッチパネル部材は、評価1および評価2ともに×であった。比較例2のタッチパネル部材は、評価1および評価2ともに△であった。
【0215】
比較例3,4
比較例3,4について、実施例4における透明電極層と絶縁層の調製に用いたフォトマスクを、それぞれ比較例3,4のタッチパネル部材の第1の連結部59と透明電極層3と絶縁層4の形成パターンに対応するものに変更したほかは、実施例4と同様の工程を実施して、比較例3,4のタッチパネル部材を作製した。
【0216】
比較例3のタッチパネル部材につき、第1の連結部59と透明電極層3と絶縁層4の形成パターンは次のとおりである。第1の連結部59は、その形成数と位置について実施例4と同様のパターンで形成される。個々の第1の連結部59は、幅W6が10μmの線状に形成される。
【0217】
透明電極層3のパターンについては、電極パッド11の形成数と外観形状のパターンは実施例4と同様のパターンである。また、隙間13の幅W1は、10μm程度に設定され、第2の接続部28は、幅W8が26μm程度に設定された。三角形状の電極パッド間に配置される矩形状の個々の電極パッド11について、1辺の長さW3が5000μm程度の正方形状とし、かつ、その2本の対角線がそれぞれX方向とY方向に沿う配置となるように設定された。
【0218】
第1の絶縁層の形成パターンについて、飛び地状に形成して個々の第1の連結部59を部分的に被覆するパターンは、実施例4と同様である。第1の絶縁層を構成する飛び地状に形成された1区画については、幅W7が20μm程度の線状に形成される。第2の絶縁層4bの形成パターンは、実施例4と同様である。
【0219】
比較例4のタッチパネル部材について、透明電極層と絶縁層の形成パターンは、隙間13の幅W1が460μm程度に設定された以外、比較例3のタッチパネル部材と同様のパターンに形成された。具体的に、正方形状の個々の電極パッド11の1辺の長さW3、第1の連結部59の幅W6、第2の連結部28の幅W8、1の絶縁層を構成する飛び地状に形成された線状の1区画についての幅W7のそれぞれの値について、比較例4のタッチパネル部材と同様の値とされた。
【0220】
比較例3,4のタッチパネル部材を用いて、それぞれ実施例4と同様にして、向合い面の面積及び対ガラス基板接触領域の面積の測定を行うとともに、実施例1,4と同様に評価1,2を用いてタッチパネル部材における絶縁層の密着性を評価した。
【0221】
(向合い面の面積及び対ガラス基板接触領域の面積の測定)
比較例3で得られたタッチパネル部材の位置検出領域の面積は4217mmであった。そして、位置検出領域内における第2の絶縁層の面積にあたる向合い面の面積は4217mmであった。また、位置検出領域において第2の絶縁層のうちガラス基板に接触している部分の領域である対ガラス基板接触領域について、その面積は17mm(面積比0.4%)であった。
【0222】
比較例4で得られたタッチパネル部材の位置検出領域の面積は5008mmであった。そして、位置検出領域内における第2の絶縁層の面積にあたる向合い面の面積は5008mmであった。また、位置検出領域において第2の絶縁層のうちガラス基板に接触している部分の領域である対ガラス基板接触領域について、その面積は806mm(面積比16.1%)であった。
【0223】
(タッチパネル部材における絶縁層の密着性評価)
比較例3,4のタッチパネル部材を用いて、それぞれ実施例1と同様に評価1,2の評価を行った。その結果、比較例3のタッチパネル部材は、評価1および評価2ともに×であった。比較例4のタッチパネル部材は、評価1および評価2ともに△であった。
【0224】
参考例1
実施例1における第1の透明電極層に用いたITOをIZOに変更したほかは、実施例1のタッチパネル部材と同じ構成を有するタッチパネル部材を作製した。すなわち、第1の透明電極層の形成パターンを実施する際に使用した透明導電性材料としてIZOを用いたほかは、実施例1と同様の工程を実施して、タッチパネル部材を作製した。このタッチパネル部材を用いて、実施例1と同様にして、向合い面の面積及び対ガラス基板接触領域の面積の測定を行うとともに、実施例1と同様に評価1,2を用いてタッチパネル部材における絶縁層の密着性を評価した。
【0225】
(向合い面の面積及び対ガラス基板接触領域の面積の測定)
得られたタッチパネル部材の位置検出領域の面積は4243mmであった。また向合い面の面積は、位置検出領域の面積に略一致し、4243mmであった。また、位置検出領域において第1の絶縁層のうちガラス基板に接触している部分の領域である対ガラス基板接触領域について、その面積は43mm(面積比1%)であった。
【0226】
(タッチパネル部材における絶縁層の密着性評価)
参考例1のタッチパネル部材を用いて、実施例1と同様に評価1,2の評価を行った。その結果、参考例1のタッチパネル部材は、評価1および評価2ともに○であった。
【0227】
(着色層付きタッチパネル部材)
実施例7
実施例1のタッチパネル部材を用い、ガラス基板面のうち透明電極および絶縁層を形成した面とは逆側の面、次のように着色層を積層して画素群を形成した。タッチパネル部材においては、画素群は、ブラックマトリクスにて各画素片に区画された。なお、着色層として、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)という3色の着色層を形成した。
【0228】
(着色層の調製)
着色層の調製にあたり、各色の着色層について、着色層の形成に使用する着色材料分散液を調製した。
【0229】
(着色材料分散液の調製)
ブラックマトリクス(BM)及び赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の着色層を形成するための着色材料分散液として、顔料分散型フォトレジストを用いた。顔料分散型フォトレジストは、着色材料として顔料を用い、分散液組成物(顔料、分散剤及び溶剤を含有する)にビーズを加え、分散機で3時間分散させ、その後ビーズを取り除いた分散液とクリアレジスト組成物(ポリマー、モノマー、添加剤、開始剤及び溶剤を含有する)とを混合することにより得られた。なお、分散機としては、ペイントシェーカー(浅田鉄工社製)を用いた。以下では、ブラックマトリクス(BM)及び赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の着色層を形成するための顔料分散型フォトレジストは、それぞれブラックマトリクス用組成物、赤色着色層用組成物、緑色着色層用組成物、青色着色層用組成物と呼ぶ。
【0230】
(ブラックマトリクス用組成物)
・カーボンブラック 61重量部
・画素形成用感光性樹脂組成物 39重量部
・メトキシブチルアセテート 300重量部
【0231】
上記した画素形成用感光性樹脂組成物は、下記組成を有するものである。このことは、以下に用いられる画素形成用感光性樹脂組成物についても、同様である。
【0232】
(画素形成用感光性樹脂組成物)
・アクリル樹脂 32重量部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 42重量部
・エピコート180S70(三菱油化シェル(株)社製) 18重量部
・Irg.907(チバスペシャリティケミカルズ(株)社製) 8重量部
【0233】
(赤色着色層用組成物の組成)
・PR254分散液 33重量部
・画素形成用感光性樹脂組成物 67重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 400重量部
【0234】
(緑色着色層用組成物の組成)
・PG36/PY150分散液 34重量部
・画素形成用感光性樹脂組成物 66重量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 400重量部
【0235】
(青色着色層用組成物の組成)
・PB15:6/PV23分散液 17重量部
・画素形成用感光性樹脂組成物 83重量部
・プロピレングリコールモノメチルアセテート 400重量部
【0236】
(ブラックマトリクスのパターン形成)
実施例1のタッチパネル部材を用い、ガラス基板面のうち透明電極および絶縁層を形成した面とは逆側の面に、ブラックマトリクス用組成物をスピンコート法で塗布し、90℃、3分間の条件でプリベーク(予備焼成)し、所定のパターンに形成されたマスクを用いて、紫外線で露光(100mJ/cm)し、続いて0.05%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、30分間ポストベーク(焼成)して、厚さが1.2μmのブラックマトリクスをパターン形成したガラス基板であるBM基板を作製した。ブラックマトリクスは格子状のパターンに形成され、ブラックマトリクスで囲まれた開口部が多数形成されて開口部群が形成された。
【0237】
(着色層のパターン形成)
次に、赤色着色層用組成物を上記BM基板のBM形成面側上にスピンコート法で塗布し、80℃、3分間の条件でプリベークし、所定の赤色の着色層の形成パターンに対応するパターンを有するフォトマスクを用いて、紫外線で露光(200mJ/cm)した。さらに、0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、200℃、30分間ポストベーク(焼成)し、BM形成面上に、BMの形成パターンに対して所定の位置に赤色の着色層がパターン形成された。赤色の着色層は、開口部群のうち所定の開口部を覆うように形成された。赤色の着色層は、厚さが1.2μmに形成された。
【0238】
続いて、上記赤色の着色層の形成方法と同様の方法を用いて、緑色の着色層、青色の着色層それぞれが、所定のパターンで形成された。このとき、個々開口部には着色層が積層されて画素片が形成された。こうして、タッチパネル部材として、ガラス基板の一方面側に、透明電極層及び絶縁層を形成し、基板の他方面側に、複数の画素片からなる画素群を形成してなるものが得られた。こうして得られたタッチパネル部材を着色層付タッチパネル部材と呼ぶ。
【0239】
(着色層付きタッチパネル部材における絶縁層の密着性評価)
実施例7のタッチパネル部材を用いて、実施例1と同様に評価1,2の評価を行った。その結果、実施例7のタッチパネル部材は、評価1および評価2ともに○であった。
【0240】
実施例8
実施例2のタッチパネル部材を用いた以外は実施例7と同様にして着色層付きタッチパネルを作製した。実施例7と同様に絶縁層の密着性を評価したところ、評価1および評価2ともに○であった。
【0241】
実施例9
実施例3のタッチパネル部材を用いた以外は実施例7と同様にして着色層付きタッチパネルを作製した。実施例7と同様に絶縁層の密着性を評価したところ、評価1および評価2ともに○であった。
【0242】
実施例10
実施例4のタッチパネル部材を用いた以外は実施例7と同様にして着色層付きタッチパネルを作製した。実施例7と同様に絶縁層の密着性を評価したところ、評価1および評価2ともに○であった。
【0243】
比較例5
比較例1のタッチパネル部材を用いた以外は実施例7と同様にして着色層付きタッチパネルを作製した。実施例7と同様に絶縁層の密着性を評価したところ、評価1および評価2ともに×であった。
【0244】
比較例6
比較例2のタッチパネル部材を用いた以外は実施例7と同様にして着色層付きタッチパネルを作製した。実施例7と同様に絶縁層の密着性を評価したところ、評価1および評価2ともに△であった。
【0245】
比較例7
比較例3のタッチパネル部材を用いた以外は実施例7と同様にして着色層付きタッチパネルを作製した。実施例7と同様に絶縁層の密着性を評価したところ、評価1および評価2ともに×であった。
【0246】
比較例8
比較例4のタッチパネル部材を用いた以外は実施例7と同様にして着色層付きタッチパネルを作製した。実施例7と同様に絶縁層の密着性を評価したところ、評価1および評価2ともに△であった。
【0247】
(タッチパネル付表示装置)
実施例11
(液晶表示装置の組み立て)
実施例7で作製した着色層つきタッチパネル部材を用いて、次に示すように表示装置を組み立てた。表示装置としては、透過型の液晶表示装置が採用された。液晶表示装置は、画像を表示する表示面を有する表示パネルを備えるものである。また、表示パネルでは、シール材を介して第1のパネル基板と第2のパネル基板とが張り合わされ、第1のパネル基板と第2のパネル基板の間に表示媒体が設けられ、第1のパネル基板に表示面が形成される。そこで、液晶表示装置を構成する表示パネルの調製を行った。
【0248】
(表示パネルの調製)
まず、次のように第1のパネル基板を調製した。
【0249】
(第1のパネル基板の調製)
着色層付タッチパネル部材を用い、画素群を覆うように、表示装置用の透明電極層を形成し、光学素子を得た。表示装置用の透明電極層としては、ITOからなる層が用いられた。表示装置用の透明電極層は、直流(DC)マグネトロンスパッタリング法を用いることで形成した。DCマグネトロンスパッタリング法の実施条件は、ガラス基板温度200℃でアルゴンと酸素を放電ガスとし、ITOをターゲットとする条件で行われた。
【0250】
上記にて得られた光学素子を用いて、次に示すように柱と配向膜の形成を行った。ここに、柱は、液晶表示装置において第1のパネル基板と第2のパネル基板との間のギャップ(セルギャップ)を保持するための部材として機能する。柱の形成にあたっては、次のような組成の柱レジストが調製された。
【0251】
(柱レジストの調製)
・ポリマー(P) ・・・・・・・・・・・ 13.5重量部
(ただし、ポリマー(P)は、メタクリル酸とベンジルメタクリレートとの共重合体[メタクリル酸:ベンジルメタクリレート=30:70(モル比)、酸価=113mgKOH/g、ポリスチレン換算重量平均分子量=30000]を使用した。)
・多官能モノマー ・・・・・・・・ 12.0重量部
(多官能モノマーは、サートマー(株)製、SR399を使用した。)
・光重合開始剤1 ・・・・・・・・・ 1.5重量部
(光重合開始剤1は、チバガイギー社製、イルガキュアー907を使用した。)
・溶媒 ・・・・・・・・・・・・・ 70.0重量部
(溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
・エポキシ樹脂 ・・・・・・・・・・ 3.0重量部
(エポキシ樹脂は、ダイセル化学工業社製、エポリードGT401を使用した。)
【0252】
(柱の形成)
調製した柱レジストを用い、着色層付きタッチパネル部材の所定の位置に柱を形成した。すなわち、柱レジストをスピンコート法で光学素子に対して所定の領域に塗布し、さらに、80℃、3分間の条件でプリベークし、柱の形成パターンに対応した所定のパターンを有するフォトマスクを用いて、紫外線露光(200mJ/cm)した。さらに、0.1%KOH水溶液を用いたスプレー現像を60秒行った後、230℃、30分間ポストベーク(焼成)し、BMの形成パターンに対して所定の位置に多数の柱がパターン形成された。個々の柱は、高さ3.2μmの横断面円形状に形成された。具体的に、光学素子の平面視上、BMの形成部分と重なる所定位置に、柱がパターン形成された。
【0253】
(配向膜の形成)
光学素子の面のうち、柱の形成されたほうの面側の全面に、配向膜形成用組成物を塗布して塗布膜を形成し、塗布膜を固化させて固化膜の表面をラビングして配向膜となした。配向膜形成用組成物としては、ポリイミドを含む配向膜形成用組成物(日産化学社製のSE−7511)が用いられた。
【0254】
こうして、第1のパネル基板が調製された。
【0255】
なお、第1のパネル基板には、予めフレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuits ;FPC)が次のように接合された。なお、FPCには、タッチパネル部材の透明電極部と位置検出装置との間で電気信号のやり取りを行うための電気回路が形成されている。FPCには、タッチパネル部材に接続可能な端子と、位置検出装置に接続可能な端子が形成されており、それらは電気回路につながっている。
【0256】
(FPCの接合)
第1のパネル基板におけるタッチパネル部材は、金属配線の端部で連結される端子にFPCの端子を向かい合わせて接続して、この端子同士の向かい合う部分を含む所定の領域に異方性導電性フィルムをあてがい、タッチパネル部材にFPCを熱圧着することで、第1のパネル基板にFPCが接合された。
【0257】
(第2のパネル基板の準備)
次に、第2のパネル基板が準備された。第2のパネル基板は、第2のパネル基板用に準備しておいたガラス基板面上に複数の薄膜トランジスタ(TFT)を所定のパターンで形成され、さらにそのガラス基板面のTFT形成面側上に、配向膜を形成したものが用いられた。すなわち、第2のパネル基板は、特許第4216092号に記載されている方法により作製されたアレイ基板を用いられた。また、第2のパネル基板における、配向膜にはラビング処理が施されている。
【0258】
(表示パネルの組み立て)
第2のパネル基板面のTFT形成面上に、駆動液晶としてTN(Twisted Nematic)液晶(メルク社製 ZLI−4792;屈折率異方性Δn=0.088)を15mL滴下し、第1のパネル基板を、その配向膜の形成面側をTN液晶の滴下面に向けつつ、第1のパネル基板と第2のパネル基板とを、TN液晶を挟むように重ね合わせた。このとき、TN液晶が第1のパネル基板と第2のパネル基板の間から外部に漏れ出さないように第1のパネル基板と第2のパネル基板の端縁部に沿ってシール材を塗布し、常温下(23℃下)で第1のパネル基板と第2のパネル基板の積層体の厚み方向に0.3kg/cmの圧力をかけながら400mJ/cmの照射量で露光した。シール材には、紫外線硬化性樹脂が用いられた。これにより、第1のパネル基板と第2のパネル基板とが接合され、第1のパネル基板と第2のパネル基板との間に液晶の層が形成されるとともにシール材で第1のパネル基板と第2のパネル基板との間の空間に液晶が内封され表示パネル用液晶セルが形成された。この表示パネル用液晶セルに対して、第1のパネル基板の外面側に、偏光板を、その透過軸が第1のパネル基板の配向膜のラビング方向に一致するように配置した。また、第2のパネル基板の外側面に、偏光板を、その透過軸が第2のパネル基板の配向膜のラビング方向とでそれぞれ一致するように配置した。こうして表示パネルが形成得られた。
【0259】
表示パネルに組み込まれたタッチパネル部材に接合したFPCを位置検出装置と駆動回路に接続された状態となし、所定の位置にバックライトを配備して、タッチパネル付き表示装置としての液晶表示装置が組み立てられた。なお、FPCを位置検出装置と駆動回路に対して接続した状態は、位置検出装置との接続可能な端子を位置検出装置につなげられることで行われる。位置検出装置には、位置検出用ICチップと駆動用ICチップを接地されたプリント基板が搭載されており、FPCの端子は、位置検出用ICチップに電気的に接続される。このとき、タッチパネル部材がFPCを介して位置検出装置に接続されて位置検出機構が形成され、タッチパネルが形成される。
【0260】
(タッチパネル付き表示装置の評価)
調製されたタッチパネル付き表示装置を用いて、次に示す評価3によりタッチパネル付き表示装置の性能を評価した。評価3では、タッチパネル付き表示装置のタッチパネルにおいて、過酷な環境下でもクラックが抑制されて第2電極中の連結部に断線が発生していないかが検証される。なお、クラックは、過酷な環境下による絶縁層の密着性悪化により発生率が高められるものである点で、絶縁層の密着性に関連する。
【0261】
(評価3)
評価3は、高温高湿通電試験の結果に基づき配線抵抗の変化を評価することで実施された。すなわち、上記にて作製された液晶表示装置を、温度60℃、湿度85%の環境下におき、この液晶表示装置のタッチパネルの透明電極部に±5Vの矩形交流電圧を、60Hzの周期で100時間印加した。そして、試験前後、すなわち矩形交流電圧の印加前後でタッチパネルの第2電極の配線抵抗の変化有無を、テスターを用いて観測した。
【0262】
実施例11の液晶表示装置を用いて高温高湿通電試験を実施した結果については、試験前後ともに第2電極の配線抵抗が10KΩであり、試験前後で第2電極の配線抵抗に変化は認められなかった。また、絶縁層にクラックの拡大が認められる等といった絶縁層の劣化・変化は認められず、したがって、第2電極中の連結部に断線が発生していないことが確認された。
【0263】
実施例12
実施例10で作製されたタッチパネル部材を用いた以外は実施例7と同様にしてタッチパネル付き表示装置としての液晶表示装置を作製した。
【0264】
実施例12の液晶表示装置を用い、実施例11と同様に評価3の評価を行った。結果、試験前後ともに第2電極の配線抵抗が8KΩであり、第2電極の配線抵抗に変化は認められなかった。また、絶縁層にクラックの拡大が認められる等といった絶縁層の劣化・変化は認められず、したがって、第2電極中の連結部に断線が発生していないことが確認された。
【0265】
比較例9
比較例5で作製したタッチパネル部材を用いた以外は実施例7と同様にしてタッチパネル付き表示装置としての液晶表示装置を作製した。
【0266】
比較例9の液晶表示装置を用い、実施例11と同様に評価3の評価を行った。結果、試験前の第2電極の配線抵抗が10KΩであったのに対して、試験後の第2電極の配線抵抗は、テスターの抵抗値表示がOVER表示(断線状態を示す)となってしまい、測定不能であった。試験後のタッチパネル部材につき、第2電極において電極パッド間を繋ぐ第2の連結部を光学顕微鏡で観察したところ、第2の連結部の周囲にある絶縁層にクラックが発生しており、第2の連結部が切断されていることが認められた。
【0267】
比較例10
比較例8で作製したタッチパネル部材を用いた以外は実施例7と同様に液晶表示装置を作製した。
【0268】
比較例10の液晶表示装置を用い、実施例11と同様に評価3の評価を行った。結果、試験前の第2電極の配線抵抗が8KΩであったのに対して試験後の第2電極の配線抵抗は20KΩであり、配線抵抗の変化が認められた。試験後のタッチパネル部材につき、第2電極において電極パッド間を繋ぐ第2の連結部を光学顕微鏡で観察したところ、第2の連結部の周囲にある絶縁層にクラックが発生しており、第2の連結部の一部に亀裂が入っていることが認められた。
【0269】
(カバー基板付きタッチパネル付表示装置)
実施例13
実施例11のタッチパネル付き表示装置を用い、その第1のパネル基板に組み込まれたタッチパネル部材の表面に、次のようにカバー基板を取り付けた。カバー基板としては、強化ガラス(コーニング社製、ゴリラガラス)が準備された。そして、実施例11のタッチパネル付き表示装置の第1のパネル基板に組み込まれたタッチパネル部材の表面に光学粘着シートOCA(Optically Clear Adhesive)を貼り付け、さらにOCA上に、カバー基板を貼り付けた。こうしてカバー基板付きタッチパネル付き表示装置を作製した。
【0270】
(評価4)
カバー基板付きタッチパネル付き表示装置を用い、評価3の矩形交流電圧の印加時間を1000時間に延長したほかは実施例11の評価3と同様に試験を行って実施例11の評価3と同様に配線抵抗変化の評価を行った。この評価を評価4とする。実施例13のカバー基板付きタッチパネル付き表示装置について、この評価4に基づく評価を行った結果、試験前後で配線抵抗に変化は見られず、また、第2電極について亀裂及び断線のいずれも発生していないと認められた。
【0271】
実施例14
実施例12のタッチパネル付き表示装置を用いた以外は実施例13と同様にカバー基板付きタッチパネル付き表示装置を作製した。
【0272】
実施例14のカバー基板付きタッチパネル付き表示装置を用い、実施例13と同様に評価4を行った。結果、試験前後で配線抵抗に変化は見られず、また、第2電極について亀裂及び断線のいずれも発生していないと認められた。
【0273】
比較例11
比較例9のタッチパネル付き表示装置を用いた以外は実施例13と同様にカバー基板付きタッチパネル付き表示装置を作製した。
【0274】
比較例11のカバー基板付きタッチパネル付き表示装置を用い、実施例13と同様に評価4を行った。結果、試験前の第1電極の配線抵抗が10KΩであったのに対して試験後の第2電極の配線抵抗は測定不能であり、配線抵抗の変化が認められた。また、試験後においては、液晶表示装置のタッチパネルにおいて、第2電極の第2の連結部の周囲にある絶縁層の部分にクラックが発生し、第2電極の第2の連結部に断線の発生が認められた。
【0275】
比較例12
比較例10のタッチパネル付き表示装置を用いた以外は実施例13と同様にカバー基板付きタッチパネル付き表示装置を作製した。
【0276】
比較例12のカバー基板付きタッチパネル付き表示装置を用い、実施例13と同様に評価4を行った。結果、試験前の第1電極の配線抵抗が8KΩであったのに対して試験後の第1電極の配線抵抗は20KΩであり、配線抵抗の変化が認められた。また、試験後においては、液晶表示装置のタッチパネルにおいて、第2電極の第2の連結部の周囲にある絶縁層の部分にクラックが発生し、第2電極の第2の連結部の一部に亀裂の発生が認められた。
【符号の説明】
【0277】
1 タッチパネル部材
2 ガラス基板
3 透明電極層
3a、3b
4 絶縁層
4a、4b
5 積層構造
5a、5b
6 位置検出エリア形成部
7 第1の電極パターン
8 第2の電極パターン
9 第1の電極単位パターン
10 第2の電極単位パターン
11,11a,11b,11c,11d 電極パッド
12 連結部
12a 第1の連結部
12b 第2の連結部
13 隙間
14 向合い面
15 孔部
16 対透明電極層接触領域
17 向合い面の領域
18 対ガラス基板接触領域
19 金属配線の形成領域
19a 入り込み領域
20 透明電極部
21 第1電極片
22 第1電極
23 第2電極片
24 第2電極
25 金属層
26 第1の電極パターン
27 第2の電極パターン
28 第2の連結部
29 はみ出し領域
30 取出電極部
31 画素群
32 金属配線
33 第1の取出電極パターン
34 第2の取出電極パターン
35 端子
36 接続部
37 画素片
38 ブラックマトリクスの層
39 着色層
40 タッチパネル
41 パネルスクリーン
41a 走査可能エリア
42 位置検出装置
43 FPC
44 カバー基板
50 タッチパネル付き表示装置
50a 表示面
56、56a、56b 面
57 導電性金属層
58 第1の電極パターン
59 第1の連結部
60 第2の電極パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板を備えるとともに、該ガラス基板面上に、所定のパターンで形成された透明電極層及びシロキサン骨格を有し感光性樹脂組成物の硬化物を含み所定のパターンで形成された絶縁層を形成してなる積層構造を備え、且つ、タッチ位置を検出可能な位置検出領域を、透明電極層の形成された領域の少なくとも一部に重なる所定の領域に形成してなるタッチパネル部材であって、
前記積層構造は、少なくとも1層の透明電極層をガラス基板面上に形成し、且つ、タッチパネル部材の平面視上、透明電極層の少なくとも一部を被覆するように、少なくとも1層の絶縁層をガラス基板面上に形成しており、
前記位置検出領域内では、
少なくとも1層の絶縁層は、該絶縁層の表面のうち前記ガラス基板面側に向けられた向合い面における一部の領域が前記透明電極層に直接接触して対透明電極層接触領域を形成するとともに、前記向合い面における対透明電極層接触領域を除く領域の少なくとも一部が前記ガラス基板面に直接接触して対ガラス基板接触領域を形成するように、パターン形成されており、且つ、対ガラス基板接触領域の面積が、タッチパネル部材の平面視上、前記向合い面の面積の1%以上15%以下である、ことを特徴とするタッチパネル部材。
【請求項2】
前記積層構造は、絶縁層として、第1の絶縁層および第2の絶縁層を備えており、
位置検出領域内では、
前記第1の絶縁層と第2の絶縁層の少なくともいずれか一方の絶縁層は、少なくとも一部を透明電極層に接して対透明電極層接触領域を形成するとともに、ガラス基板面に直接接して対ガラス基板接触領域を形成しており、且つ、対ガラス基板接触領域の面積が、タッチパネル部材の平面視上、前記向合い面の面積の1%以上15%以下となる、ように構成されている、請求項1に記載のタッチパネル部材。
【請求項3】
ガラス基板の一方面側に、透明電極層及び絶縁層を形成してなる積層構造を備え、ガラス基板の他方面側に、複数の画素片からなる画素群を形成してなる、請求項1または2に記載のタッチパネル部材。
【請求項4】
画像を表示可能な表示面を有する表示パネルを備え、表示パネルでは、シール材を介して第1のパネル基板と第2のパネル基板とが貼り合わされ、第1のパネル基板と第2のパネル基板の間に表示媒体が設けられ、第1のパネル基板に表示面が形成されている表示装置であって、
第1のパネル基板に、請求項1から3のいずれかに記載のタッチパネル部材が組み込まれている、タッチパネル付き表示装置。
【請求項5】
パネルスクリーンを備えるとともに、パネルスクリーン内の所定領域における座標位置を検出する位置検出装置をパネルスクリーンに電気的に接続してなるタッチパネルであって、
パネルスクリーンが、請求項1から3のいずれかに記載のタッチパネル部材の積層構造上に、更に光透過性を有するカバー基板を積層してなる、ことを特徴とするタッチパネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図14】
image rotate

【図17】
image rotate

【図19】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図18】
image rotate

【図20】
image rotate


【公開番号】特開2013−41470(P2013−41470A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178587(P2011−178587)
【出願日】平成23年8月17日(2011.8.17)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】