説明

タッチパネル

【課題】各種電子機器に用いられるタッチパネルに関し、背面の表示素子の表示が見易く、操作の行い易いものを提供することを目的とする。
【解決手段】略帯状で複数の上導電層12をカバー基板7下面に硬化性接着層11を介して設けると共に、上導電層12と直交方向に配列された略帯状で複数の下導電層15を、上導電層12下面に硬化性接着層11Aを介して形成することによって、フィルム状の上基板や下基板を用いず、カバー基板7下面に硬化性接着層11や11Aを介して、上導電層12と下導電層15を設けることで、全体の光透過率を大きなものとすることができるため、タッチパネル背面の表示素子の表示が見易く、容易で確実な操作が可能なタッチパネルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられるタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電子カメラ等の各種電子機器の高機能化や多様化が進むに伴い、液晶表示素子等の表示素子の前面に光透過性のタッチパネルを装着し、このタッチパネルを通して背面の表示素子の表示を見ながら、指等でタッチパネルに触れ操作することによって、機器の様々な機能の切換えを行うものが増えており、見易く確実な操作の行えるものが求められている。
【0003】
このような従来のタッチパネルについて、図6を用いて説明する。
【0004】
なお、この図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図6は従来のタッチパネルの分解斜視図であり、同図において、1は厚さ50〜125μm前後の、フィルム状で光透過性の上基板で、上面には酸化インジウム錫等の光透過性で略帯状の、複数の上導電層2が左右方向に配列形成されると共に、一端が上導電層2端部に連結され他端が外周前端に延出する銀やカーボン等の複数の上電極3が、上導電層2とは直交方向の前後方向に延出形成されている。
【0006】
また、4は同じく厚さ50〜125μm前後のフィルム状で光透過性の下基板で、上面には酸化インジウム錫等の光透過性で略帯状の複数の下導電層5が、上導電層2とは直交方向の前後方向に配列形成されると共に、一端が下導電層5端部に連結され他端が外周前端に延出する銀やカーボン等の複数の下電極6が、下導電層5と平行方向の前後方向に延出形成されている。
【0007】
さらに、7は厚さ0.3〜2mm前後の、板状またはフィルム状で光透過性のカバー基板で、下基板4上面に上基板1、上基板1上面にカバー基板7が重ねられると共に、これらが各々接着剤(図示せず)等によって貼り合わされて、タッチパネルが構成されている。
【0008】
そして、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、外周前端に延出した複数の上電極3や下電極6がフレキシブル配線板やコネクタ(図示せず)等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0009】
以上の構成において、電子回路から複数の上電極3と下電極6へ順次電圧が印加された状態で、タッチパネル背面の表示素子の表示に応じて、カバー基板7上面を指等で触れて操作すると、この操作した箇所の上導電層2と下導電層5の間の静電容量が変化するため、これによって操作された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0010】
つまり、例えば複数のメニュー等が背面の表示素子に表示された状態で、所望のメニュー上のカバー基板7上面に指等を触れると、この指に電荷の一部が導電して、操作した箇所のタッチパネルの上導電層2と下導電層5の間の容量が変化し、これを電子回路が検出することによって、所望のメニューの選択等が行えるように構成されているものであった。
【0011】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−93397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記従来のタッチパネルにおいては、カバー基板7の下面にフィルム状の上基板1と、同じくフィルム状の下基板4が重ねて形成されているため、全体の厚さが厚くなってしまうと共に、光透過率も87%前後となり、背面の表示素子のメニュー等の表示が見づらいものとなってしまうという課題があった。
【0014】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、背面の表示素子の表示が見易く、操作の行い易いタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0016】
本発明の請求項1に記載の発明は、略帯状で複数の上導電層をカバー基板下面に接着層を介して設けると共に、上導電層と直交方向に配列された略帯状で複数の下導電層を、上導電層下面に接着層を介して形成してタッチパネルを構成したものであり、フィルム状の上基板や下基板を用いず、カバー基板下面に接着層を介して上導電層を、この下面に接着層を介して下導電層を設けることによって、全体の光透過率を大きなものとすることができるため、タッチパネル背面の表示素子の表示が見易く、容易で確実な操作が可能なタッチパネルを得ることができるという作用を有する。
【0017】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、下面に微細な凹凸部が形成された無反射層を、下導電層の下面に設けたものであり、無反射層によって外部光等の反射を防ぐことができるため、タッチパネルの光透過率をさらに大きくし、より見易く、操作の行い易いものとすることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0018】
以上のように本発明によれば、背面の表示素子の表示が見易く、容易で確実な操作が可能なタッチパネルを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分断面図
【図4】同部分断面図
【図5】同部分断面図
【図6】従来のタッチパネルの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図5を用いて説明する。
【0021】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0022】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0023】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、7はガラスやポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の板状またはフィルム状で、厚さ0.3〜2mm前後の光透過性のカバー基板で、この下面には紫外線硬化性のアクリレート系や熱硬化性のエポキシ系等の、厚さ10〜50μm前後の硬化性接着層11が設けられている。
【0024】
また、カバー基板7下面には硬化性接着層11を介して、酸化インジウム錫や酸化錫等の光透過性で略帯状の、複数の上導電層12が左右方向に配列形成されると共に、一端が上導電層12端部に連結され他端が外周前端に延出する、酸化インジウム錫や酸化錫等の上に蒸着等によって銅等の金属箔が重ねられた複数の上電極13が、上導電層12とは直交方向の前後方向に延出形成されている。
【0025】
そして、この上導電層12下面には同じく硬化性接着層11Aが積層形成されると共に、硬化性接着層11A下面には、酸化インジウム錫や酸化錫等の光透過性で略帯状の複数の下導電層15が、上導電層12とは直交方向の前後方向に配列形成され、酸化インジウム錫や酸化錫等の上に銅等の金属箔が重ねられた複数の下電極16が、一端が下導電層15端部に連結され他端が外周前端に延出するように、下導電層15と平行方向の前後方向に延出形成されている。
【0026】
なお、この複数の上導電層12と下導電層15は、複数の方形部が帯状に連結されて形成されると共に、これらの間には、略方形の複数の空隙部が設けられ、上導電層12と下導電層15が硬化性接着層11Aを介して、所定の間隙を空けて対向した状態では、各々の方形部が各々の空隙部に上下で交互に重なるように形成されている。
【0027】
さらに、17はアクリルやシクロオレフィン、ポリカーボネート等の無反射層で、下面には100〜350nm前後の高さと間隔で微細な凹凸部が形成されると共に、この無反射層17が下導電層15下面に形成されて、タッチパネルが構成されている。
【0028】
そして、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、外周右端に延出した複数の上電極13や下電極16がフレキシブル配線板やコネクタ(図示せず)等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0029】
以上の構成において、電子回路から複数の上電極13と下電極16へ順次電圧が印加された状態で、タッチパネル背面の表示素子の表示に応じて、カバー基板7上面に指等を近接、あるいはカバー基板7上面に触れて操作すると、この操作した箇所の上導電層12と下導電層15の間の静電容量が変化するため、これによって操作された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0030】
つまり、例えば複数のメニュー等が背面の表示素子に表示された状態で、所望のメニュー上のカバー基板7上面に指等を近接、あるいは触れると、この指に電荷の一部が導電して、操作した箇所のタッチパネルの上導電層12と下導電層15の間の容量が変化し、これを電子回路が検出することによって、所望のメニューの選択等が行えるように構成されている。
【0031】
なお、このようなタッチパネルを製作するには、図3(a)の部分断面図に示すように、先ず、上面全面に酸化インジウム錫の薄膜12A上に銅箔13Aが積層された、ポリエチレンテレフタレート等のフィルム状の基材20の、銅箔13A上面にフォトレジスト法等によって露光・現像を行い、上電極13のパターンをドライフィルム等の絶縁樹脂製の被膜でマスキングした後、この上電極13をエッチング液に浸漬して、不要な箇所の銅箔13Aを溶融除去する。
【0032】
そして、この後、酸化インジウム錫の薄膜12A上面にフォトレジスト法等によって、上導電層12のパターンを覆う被膜を形成した後、上記とは異なるエッチング液に浸漬し、不要な箇所の薄膜12Aを溶融除去して、図3(b)に示すように、基材20上面に略帯状の複数の上導電層12と、一端がこれらの端部に連結され他端が外周前端に延出する、酸化インジウム錫の上に銅箔が重ねられた、複数の上電極13を形成する。
【0033】
さらに、この後、複数の上導電層12や上電極13を覆うように、基材20上面全面に硬化性接着層11を貼付して、図3(c)に示すような、上面に複数の上導電層12や複数の上電極13、硬化性接着層11が形成された基材20を作製する。
【0034】
また、同様に、図4(a)の部分断面図に示すように、上面全面に酸化インジウム錫の薄膜15A上に銅箔16Aが積層された基材20Aに、エッチング加工を行って、図4(b)に示すように、基材20A上面に複数の下導電層15と下電極16を形成した後、この上面全面に硬化性接着層11Aを貼付して、図4(c)に示すような、上面に複数の下導電層15や下電極16、硬化性接着層11Aが形成された基材20Aを作製する。
【0035】
さらに、この上導電層12や上電極13が形成された基材20を、図5(a)の部分断面図に示すように、カバー基板7下面に硬化性接着層11によって貼り合わせた後、これに紫外線を照射、あるいは加熱加圧して、硬化性接着層11を硬化させる。
【0036】
次に、図5(b)に示すように、基材20を剥離して、上導電層12や上電極13を硬化性接着層11下面に転写した後、この下面に図5(c)に示すように、下導電層15や下電極16が形成された基材20Aを、硬化性接着層11Aによって貼り合わせ、同様に紫外線を照射、あるいは加熱加圧して、硬化性接着層11Aを硬化させる。
【0037】
そして、図5(d)に示すように、基材20Aを剥離し、下導電層15や下電極16を硬化性接着層11A下面に転写して、カバー基板7下面に硬化性接着層11を介して上導電層12や上電極13が形成され、この上導電層12下面に硬化性接着層11Aを介して下導電層15や下電極16が設けられたタッチパネルが完成する。
【0038】
また、この下面にシート等を貼付し、下導電層15下面に微細な凹凸部が形成された無反射層17を設けて、図1に示すような、タッチパネルが製作される。
【0039】
つまり、本発明においては、略帯状で複数の上導電層12を、カバー基板7下面に硬化性接着層11を介して設けると共に、上導電層12と直交方向に配列された略帯状で複数の下導電層15を、上導電層12下面に硬化性接着層11Aを介して重ねて形成することによって、光透過率の大きなタッチパネルが得られるように構成されている。
【0040】
すなわち、背景技術の項で説明したような、厚さが50〜125μm前後と厚いフィルム状の上基板1や下基板4を用いることなく、厚さが10〜50μm前後と薄い硬化性接着層11や11Aを介して、カバー基板7下面に上導電層12を、この上導電層12下面に下導電層15を各々形成することで、光透過率を91%前後の大きなものとすることができるため、タッチパネル背面の表示素子の表示が見易く、容易で確実な操作が行えるようになっている。
【0041】
さらに、下面に微細な凹凸部が形成された無反射層17を、下導電層15下面に設けることによって、この無反射層17によって外部光等の反射を防ぐことができるため、光透過率をさらに大きくすることが可能となる。
【0042】
つまり、光の波長の400〜750nm前後よりもはるかに小さな、100〜350nm前後の高さと間隔の微細な凹凸部が下面に形成された無反射層17を、下導電層15下面に設けることで、この無反射層17によって外部光等の反射を防ぎ、光透過率を96%前後の大きなものとすることができるため、タッチパネルをより見易く、操作の行い易いものとすることができる。
【0043】
なお、複数の上電極13や下電極16は、銀やカーボン等を用いて印刷によって基材20や20A上面に形成し、これを硬化性接着層11や11A下面に転写して形成しても本発明の実施は可能であるが、上記のように酸化インジウム錫や酸化錫等の上に銅等の金属箔が重ねられたものとすることで、銅等の金属箔によって上電極13や下電極16のにじみやかすれ等のない、低く安定した抵抗値が保たれると共に、線幅や線間が0.03〜0.05mm前後の、細線化や狭間隔化を図った上電極13や下電極16を形成することも可能となる。
【0044】
また、以上の説明では、上導電層12や下導電層15を、酸化インジウム錫や酸化錫等で形成した構成について説明したが、ポリチオフェン等の導電性ポリマーや、カーボンや銀等のナノチューブを分散させた光透過性の樹脂によって、略帯状の上導電層12や下導電層15を形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0045】
このように本実施の形態によれば、略帯状で複数の上導電層12をカバー基板7下面に硬化性接着層11を介して設けると共に、上導電層12と直交方向に配列された略帯状で複数の下導電層15を、上導電層12下面に硬化性接着層11Aを介して形成することによって、フィルム状の上基板や下基板を用いず、カバー基板7下面に硬化性接着層11や11Aを介して、上導電層12と下導電層15を設けることで、全体の光透過率を大きなものとすることができるため、タッチパネル背面の表示素子の表示が見易く、容易で確実な操作が可能なタッチパネルを得ることができるものである。
【0046】
また、下面に微細な凹凸部が形成された無反射層17を、下導電層15下面に設けることで、無反射層17によって外部光等の反射を防ぐことができるため、タッチパネルの光透過率をさらに大きくし、より見易く、操作の行い易いものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によるタッチパネルは、背面の表示素子の表示が見易く、容易で確実な操作が可能なものを得ることができるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0048】
7 カバー基板
11、11A 硬化性接着層
12 上導電層
12A 薄膜
13 上電極
13A 銅箔
15 下導電層
15A 薄膜
16 下電極
16A 銅箔
17 無反射層
20、20A 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に配列された略帯状で複数の上導電層と、この上導電層と所定の間隙を空けて直交方向に配列された略帯状で複数の下導電層からなり、上記上導電層をカバー基板下面に接着層を介して設けると共に、上記下導電層を上記上導電層下面に接着層を介して形成したタッチパネル。
【請求項2】
下面に微細な凹凸部が形成された無反射層を、下導電層下面に設けた請求項1記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−118762(P2012−118762A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267983(P2010−267983)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】