説明

タッチパネル

【課題】簡易な構成を用いて、温度や湿度の変化等によって上部フィルム基板が膨張しても、その膨張によって上部フィルム基板が不適切に変形しないことを実現したタッチパネルを提供する。
【解決手段】タッチパネル10は、下部基板12と、枠状の接着手段14を介して下部基板12に貼り付けられる上部フィルム基板16とを有する。接着手段14は、枠状の発泡体18と、発泡体18の第1の面に貼り付けられた第1の粘着層20と、発泡体18の第2の面に貼り付けられた第2の粘着層22とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電膜面を互いに対向配置した抵抗膜式のタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の抵抗膜式のタッチパネルでは、枠状の両面接着テープ又は接着剤を用いて、上側のフィルム基板と下側の基板とを貼り合わせている。図12は、そのようなタッチパネル100の概略構成を示す分解斜視図であり、図13は図12のタッチパネル100の断面図である。なお明瞭化のため、タッチパネルの厚さ方向(図13の上下方向)を実際の寸法関係より拡大している。タッチパネル100は、ガラス等の下部基板102と、枠状の粘着層104を介して下部基板102に貼り付けられるPET等の上部フィルム基板106とを有する。粘着層104としては通常、両面接着テープ又は接着剤が使用される。
【0003】
図12に示すように通常は、枠状の粘着層104によって上部フィルム基板106の全周が固定されている。温度・湿度の変化により上部フィルム基板106が膨張すると、上部フィルム基板106の方が下部基板102より膨張率が高いので、図14に示すように、上部フィルム基板106が波打つような変形をしてしまうことがある。このような変形が発生すると、所定の押圧力でタッチ操作をしても入力が検知されなかったり、逆に、上部フィルム基板106及び下部基板102にそれぞれ設けられた互いに対向する導電膜(図示せず)同士がタッチ操作をしなくても接触してしまったりする(ショート)等の機能不良が生じ得る。
【0004】
上記波打ちを防止するために、例えば特許文献1には、弾性によりフィルムに外向きの延伸力を発生させる延伸作用部を備えた情報入力表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−296023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の発明では、フィルムを外向きに引っ張る延伸力を加える延伸作用部を別途設ける必要があり、タッチパネル全体の構成が複雑化する。また、適切な角度の傾斜部13aを備えた外装部材13を設ける必要があるので、タッチパネルの厚さ方向の寸法が増加し、タッチパネルの画面面積が外装部材13によっていくらか減少する。
【0007】
また図15に示すタッチパネル200のような、FPC等の引出線202が下部基板204(ガラス)にのみ取り付けられ、枠状の粘着層206によって上部フィルム基板208の全周が固定されている形態の場合(FPCを基板間に挟み込むタイプでない場合)は、各部材間での熱膨張(熱収縮)率の違いによる他の問題も生じ得る。すなわち図15のようなタッチパネルでは、上部フィルム基板208(PETフィルム)とFPC202とを導通接続するためにガラス基板204とPETフィルム208とを導電接着部210において導電接着剤等によって接着するが、タッチパネル製造工程での熱処理後の冷却により、PETフィルム208はガラス204よりも大きく収縮する。このとき、図16に示すように、PETフィルム208の収縮によって、PETフィルム208上に形成したフィルム側電極212に破断(クラック)が生じて断線状態となることがある。
【0008】
そこで本発明は、より簡易な構成を用いて、上部フィルム基板と下部フィルム基板との膨張率の差に起因して上部フィルム基板が不適切に変形したり破断したりしないことを実現したタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、透明導電性物質を被着してなる導電膜面を各々が備えた上部フィルム基板及び下部基板を、枠状の接着手段を用いて該導電膜面が互いに対向するように貼り合わせてなるタッチパネルにおいて、前記接着手段は、枠状の発泡体と、該発泡体が有する前記下部基板に対向する第1の面に貼り合わされた第1の粘着層と、前記発泡体が有する前記上部フィルム基板に対向する第2の面に貼り合わされた第2の粘着層とから構成される、タッチパネルを提供する。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタッチパネルにおいて、前記接着手段は、発泡体を基材とする両面接着テープである、タッチパネルを提供する。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のタッチパネルにおいて、前記発泡体は、ポリウレタン系材料、ポリオレフィン系材料、又はアクリルフォームから構成される、タッチパネルを提供する。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタッチパネルにおいて、前記発泡体の厚さは0.2mm以上かつ0.6mm以下であり、前記第1及び第2の粘着層の各々の厚さは10μm以上かつ40μm以下である、タッチパネルを提供する。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタッチパネルにおいて、前記発泡体の密度は240kg/m3以上かつ700kg/m3以下であり、前記発泡体の圧縮荷重は0.008MPa以上かつ0.032MPa以下であり、前記発泡体の圧縮残留歪は2%以上かつ4%以下である、タッチパネルを提供する。
【0014】
請求項6に記載の発明は、透明導電性物質を被着してなる導電膜面を各々が備えた上部フィルム基板及び下部基板を、枠状の接着手段を用いて該導電膜面が互いに対向するように貼り合わせてなるタッチパネルにおいて、前記接着手段は、枠状のフィルムと、該枠状のフィルムが有する前記下部基板に対向する第3の面に貼り合わされた第3の粘着層と、前記枠状のフィルムが有する前記上部フィルム基板に対向する第4の面に貼り合わされた第4の粘着層とから構成され、前記枠状フィルムの線膨張係数は前記上部フィルム基板の線膨張係数と同等以上であり、かつ前記枠状フィルムは、該枠状フィルムの延伸軸が前記上部フィルム基板の延伸軸と同一方向となるように配置される、タッチパネルを提供する。
【0015】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載のタッチパネルにおいて、前記第3の粘着層の粘着力は、膨張した前記枠状フィルムが前記下部基板に対して付着した状態で面方向にずれることができる程度に設定される、タッチパネルを提供する。
【0016】
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタッチパネルにおいて、前記上部フィルム基板と前記下部基板とは導電接着剤によって電気的に接続されており、前記上部フィルム基板において、前記導電接着剤による導電接着部分とタッチ入力領域との間にスリットを設けた、タッチパネルを提供する。
【0017】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のタッチパネルにおいて、前記スリットの形状が、前記上部フィルム基板の収縮方向に略垂直な直線、曲線、十字及び2本の線が直交しない十字のいずれかを含む、タッチパネルを提供する。
【0018】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタッチパネルにおいて、前記上部フィルム基板と前記下部基板とは導電接着剤によって電気的に接続されており、前記上部フィルム基板において、前記導電接着剤による導電接着部分とタッチ入力領域との間に点線状の切り込みを設けた、タッチパネルを提供する。
【0019】
請求項11に記載の発明は、請求項8に記載のタッチパネルにおいて、前記スリットの内側近傍において、前記上部フィルム基板の導電被膜が除去されている、タッチパネルを提供する。
【0020】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載のタッチパネルにおいて、前記上部フィルム基板の前記導電被膜が、前記上部フィルム電極に形成されたフィルム側電極の延びる方向に垂直な方向に直線状に除去されている、タッチパネルを提供する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、上部フィルム基板が温度変化又は湿度変化等により膨張した場合であっても、その膨張分を適切に吸収し、上部フィルム基板に波打ち等の不適切な変形が生じることを防止できる。
【0022】
また本発明によれば、引出線が上部フィルム基板に直接接続されておらず、導電接着部分を介して間接的に接続されている形態のタッチパネルにおいて、該導電接着部分の内側にスリット又は点線状の切り込みを形成することにより、フィルムの熱収縮によるフィルム側電極の破断・破損を防止することができる。
【0023】
またスリットの内側において上部フィルム基板から導電被膜(ITO膜)を除去することにより、スリットを設けたことによるタッチ入力領域の電位の歪み(等電位線の乱れ)を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るタッチパネルの概略構成を示す分解斜視図である。
【図2】図1のタッチパネルの断面図である。
【図3】図1のタッチパネルにおいて上部フィルム基板が膨張した状態を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るタッチパネルの概略構成を示す分解斜視図である。
【図5】図4のタッチパネルの断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係るタッチパネルの概略構成を示す分解斜視図である。
【図7】図6のA部の部分拡大図である。
【図8】スリットの具体例を示す図であって、スリット形状が(a)直線の場合、(b)曲線又は円弧の場合、(c)十字の場合、及び(d)2直線が直交しない十字の場合を示す図である。
【図9】スリットの代わりに点線状の切り込みを上部フィルム基板に設けた例を示す図である。
【図10】上部フィルム基板のITO膜を部分的に除去した例を示す図である。
【図11】図10のXI−XI断面を示す図である。
【図12】従来のタッチパネルの概略構成を示す分解斜視図である。
【図13】図6のタッチパネルの断面図である。
【図14】図6のタッチパネルにおいて上部フィルム基板が膨張して変形した状態を示す断面図である。
【図15】引出線が下部基板に取り付けられた従来のタッチパネルの概略構成を示す分解斜視図である。
【図16】図15のタッチパネルにおいて、上部フィルム基板の収縮によりフィルム側電極が破損する例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明に係る第1の実施形態に係るタッチパネル10の概略構成を示す分解斜視図であり、図2は図1のタッチパネル10の断面図である。タッチパネル10は、下部基板12と、枠状の接着手段14を介して下部基板12に貼り付けられる上部フィルム基板16とを有する。下部基板12及び上部フィルム基板16はそれぞれ、透明導電性物質を被着してなる導電膜面(図示せず)を有し、下部基板12及び上部フィルム基板16はそれぞれの導電膜面が対向するように貼り合わされる。下部基板12はガラス等の線膨張係数の比較的小さい部材であり、上部フィルム基板はPETフィルム等の下部基板12より線膨張係数の大きい部材である。また図1に示すように通常は、枠状の粘着層14によって上部フィルム基板16の全周が固定されている。
【0026】
図1、図2に示すように、接着手段14は、枠状の発泡体18と、発泡体18の下面又は第1の面(すなわち下部基板12に面する面)に貼り付けられた第1の粘着層20と、発泡体18の上面又は第2の面(すなわち上部フィルム基板16に面する面)に貼り付けられた第2の粘着層22とを有する。
【0027】
ここで、タッチパネル10の雰囲気の温度及び湿度の一方又は双方の変化(上昇)により上部フィルム基板16が膨張しても、発泡体18がそれに応じて変形し、上部フィルム基板16の不適切な変形(波打ち)等が防止される。詳細には、第1の粘着層20と第2の粘着層22との間に発泡体18が介在していることにより、上部フィルム基板16が膨張しても発泡体18がその両面が互いに面方向にずれるように変形するので、第2の粘着層22が第1の粘着層20に対してフィルムの伸びる方向に変位(延伸)する。従って、上部フィルム基板16の膨張分は吸収され、上部フィルム基板16は波打つような変形をしない。従って第2の粘着層22は、上部フィルム基板16と同等以上の膨張係数を有することが好ましい。
【0028】
上述のような発泡体の両面に粘着層を貼り付けてなる接着手段は、例えば発泡体を基材とし、該発泡体の両面に粘着テープを取り付けてなる両面接着テープであり、このような両面接着テープは市販されているものでもよい。
【0029】
また発泡体18を構成する好適な材料としては、ポリウレタン系材料、ポリオレフィン系材料、及びアクリルフォームが挙げられる。また発泡体の厚さは0.2mm以上であることが好ましく、0.6mm以下であることが好ましい。また下側粘着層20及び上側粘着層22の各々の厚さは、10μm以上であることが好ましく、40μm以下であることが好ましい。
【0030】
発泡体18の密度は、240kg/m3以上であることが好ましく、700kg/m3以下であることが好ましい。また発泡体18の圧縮荷重は0.008MPa以上であることが好ましく、0.032MPa以下であることが好ましい。さらに、発泡体18の圧縮残留歪は2%以上であることが好ましく、4%以下であることが好ましい。
【0031】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るタッチパネル30の概略構成を示す分解斜視図であり、図5は図4のタッチパネル30の断面図である。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、発泡体の代わりに高線膨張係数の枠状フィルムを使用する点にある。タッチパネル30は、下部基板32と、枠状の接着手段34を介して下部基板32に貼り付けられる上部フィルム基板36とを有する。下部基板32及び上部フィルム基板36はそれぞれ、透明導電性物質を被着してなる導電膜面(図示せず)を有し、下部基板32及び上部フィルム基板36はそれぞれの導電膜面が対向するように貼り合わされる。下部基板32はガラス等の線膨張係数の比較的小さい部材であり、上部フィルム基板はPETフィルム等の下部基板32より線膨張係数の大きい部材である。また図1に示すように通常は、枠状の粘着層34によって上部フィルム基板36の全周が固定されている。
【0032】
図4、図5に示すように、接着手段34は、枠状のフィルム材料38と、フィルム材料38の下面又は第3の面(すなわち下部基板32に面する面)に貼り付けられた第3の粘着層40と、枠状フィルム38の上面又は第4の面(すなわち上部フィルム基板36に面する面に貼り付けられた第4の粘着層42とを有する。ここで枠状フィルム38の線膨張係数は上部フィルム基板36の線膨張係数と同等以上であり、かつ枠状フィルム38は、枠状フィルム38の延伸軸が上部フィルム基板36の延伸軸と同一方向となるように配置される。
【0033】
ここで、タッチパネル30の雰囲気の温度及び湿度の一方又は双方が変化(上昇)すると、タッチパネル30の各構成要素は各々の線膨張係数に基づく量だけ膨張するが、枠状フィルム38の方が下部基板32よりも線膨張係数が高いので、両者を接着する第3の粘着層40の粘着力が極めて強い場合は、枠状フィルム38は膨張に伴って波打ち等の変形をする。しかし第2の実施形態では、第3の粘着層40は例えば両面接着テープであり、第3の粘着層40の下面(下部基板32に接着する面)の粘着力は、温度又は湿度等のタッチパネル30の環境が変化したときに、膨張した枠状フィルム38が下部基板32に対して付着した状態で(すなわち剥離せずに)面方向にいくらかずれることができる程度に設定される。従って枠状フィルム38には波打ち等の変形は生じない。
【0034】
一方、上述のように枠状フィルム38の線膨張係数は上部フィルム基板36の線膨張係数と同等以上であるので、上部フィルム基板36の方が枠状フィルム38よりも大きく膨張することはない。従って結果として、タッチパネルの雰囲気の温度又は湿度が変化しても、上部フィルム基板36に波打ち等の不都合な変形は生じない。
【0035】
なお上部フィルム基板36と枠状フィルム38とを接着する第4の粘着層42の粘着力には特段の制約はないが、枠状フィルム38の線膨張係数の方が上部フィルム基板36の線膨張係数よりも相当に大きい場合は、両者が膨張したときに上部フィルム基板36に過度の引張り力が作用し得るので、第4の粘着層も、膨張した枠状フィルム38が上部フィルム基板36に対して面方向にいくらかずれることができる程度に設定されることが好ましい。
【0036】
枠状の高線膨張係数フィルム38を構成する好適な材料としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、及びアクリル樹脂が挙げられる。これらの材料は、上部フィルム基板36として多くの場合使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムよりも高い線膨張係数を有する。
【0037】
なお上記実施形態では、接着手段14及び34を枠状(すなわち矩形のフィルム基板の4辺全てに接着されるもの)として構成したが、上部フィルム基板の対向する2辺のみ、又は3辺のみに接着する構成としてもよい。
【0038】
図6は、本発明の第3の実施形態に係るタッチパネル50の上面図である。タッチパネル50は、図12に示した従来のタッチパネル200と同様、FPC等の引出線52がガラス等の下部基板(図示せず)に取り付けられており、枠状の両面接着テープ等(図示せず)によって下部基板に固定されたPETフィルム等の上部フィルム基板54には直接取り付けられていない。従って上部フィルム基板54上に形成されたフィルム側電極56は、導電接着剤により形成された導電接着部分58(図示例では略円形形状とする)において下部基板に導通接続されている。
【0039】
ここで上述のような上部フィルム基板の熱収縮によるフィルム側電極の破断・破損を防止すべく、図6の部分拡大図7に示すように、導電接着部分58からフィルム面方向内側に離れ、かつ上部フィルム基板54のタッチ入力領域60の外側の領域に、スリット62が設けられる。
【0040】
スリット62は、図7にて破線62′で示すように、上部フィルム基板54の熱収縮に伴って変形し、導電接着部分58に生じる面方向内側への力を緩和して、フィルム側電極56に破断やクラックが生じないような形状に構成される。図8はその具体例を示しており、図7に示す直角形状の他、フィルム収縮方向に略垂直な直線62a(図8(a))、曲線又は円弧62b(図8(b))、十字62c(図8(c))及び2本の線が直交しない十字62d(図8(d))等の形状が挙げられるが、いずれも上部フィルム基板54の熱収縮に伴って変形し、導電接着部分58に生じる面方向内側への力を緩和して、フィルム側電極56に破断やクラックが生じないような形状に構成されている。
【0041】
なお本願発明における「スリット」は、上部フィルム基板に設けた切込み(すなわち幅を実質有さない)の他、上部フィルム基板の一部を除去したもの(すなわち一定の幅、大きさを有する)も含むものとする。
【0042】
上部フィルム基板において導電接着部より内側にスリットを設けることにより、フィルム収縮による導電接着部でのフィルム側電極の破断を防止することができる。従ってフィルム収縮に耐え得るように導電接着部を大きくする必要はなく、故に額縁部を狭くでき、外形寸法が同じでも操作エリアの広いタッチパネルを実現することができる。
【0043】
また上述のスリットの代わりに、図9に示すように、上部フィルム基板54のタッチ入力領域60外側であって導電接着部分58のフィルム面方向内側に、点線状の切り込み64を設けてもよい。このような構成によっても、フィルム収縮による導電接着部分58への応力を軽減できる。なお点線状の切り込み64は、図9のように上部フィルム基板54の1辺の全長にわたって形成されてもよいが、導電接着部分58の近傍のみに形成されてもよい。
【0044】
なお上述のように上部フィルム基板の一部にスリットを設けた場合は、図6に示すように、タッチ入力領域60内のスリット62近傍において電位の歪み(等電位線66の歪み)が生じ、タッチ入力操作に影響を与える虞がある。そこで図10に示すように、上部フィルム基板54のITO膜等の導電被膜を部分的に除去したITO除去部分74をスリット62の内側に形成することにより、電位の歪みを防止できる。上部フィルム基板54は通常、図10のXI−XI線に沿う断面図11に示すように、PETフィルム68と、PETフィルム68の上面(操作面)に形成されたハードコート膜70と、PETフィルム68の下面に形成されたITO膜等の導電被膜72とを有し、導電被膜72の下面の一部に上述のフィルム側電極56が形成されている。ここで図10及び図11に示すように、ITO膜72を等電位線66′の延びる方向(フィルム側電極の延びる方向)に垂直な方向に、タッチ入力領域60の1辺にわたって直線状に除去してITO除去部分74を形成することにより、スリット62による等電位線への影響が排除される。従って図10に示すように、歪みのない等電位線66′を確保して精度の高いタッチ入力(位置決め)操作が可能となる。なおITO除去部分74は、タッチ入力領域60をできるだけ広く確保すべく、スリット62の直近内側に設けられることが好ましい。
【符号の説明】
【0045】
10、30、50、100、200 タッチパネル
12、32、102、204 下部基板
14、34、104、306 接着手段
16、36、54、106、208 上部フィルム基板
18 発泡体
20、22、40、42 粘着層
38 枠状高線膨張係数フィルム
52、202 引出線
58、210 導電接着部分
60 タッチ入力領域
62、62a、62b、62c、62d スリット
64 点線状切り込み
72 ITO膜
74 ITO除去部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電性物質を被着してなる導電膜面を各々が備えた上部フィルム基板及び下部基板を、枠状の接着手段を用いて該導電膜面が互いに対向するように貼り合わせてなるタッチパネルにおいて、
前記接着手段は、枠状の発泡体と、該発泡体が有する前記下部基板に対向する第1の面に貼り合わされた第1の粘着層と、前記発泡体が有する前記上部フィルム基板に対向する第2の面に貼り合わされた第2の粘着層とから構成される、タッチパネル。
【請求項2】
前記接着手段は、発泡体を基材とする両面接着テープである、請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記発泡体は、ポリウレタン系材料、ポリオレフィン系材料、又はアクリルフォームから構成される、請求項1又は2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記発泡体の厚さは0.2mm以上かつ0.6mm以下であり、前記第1及び第2の粘着層の各々の厚さは10μm以上かつ40μm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記発泡体の密度は240kg/m3以上かつ700kg/m3以下であり、前記発泡体の圧縮荷重は0.008MPa以上かつ0.032MPa以下であり、前記発泡体の圧縮残留歪は2%以上かつ4%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項6】
透明導電性物質を被着してなる導電膜面を各々が備えた上部フィルム基板及び下部基板を、枠状の接着手段を用いて該導電膜面が互いに対向するように貼り合わせてなるタッチパネルにおいて、
前記接着手段は、枠状のフィルムと、該枠状のフィルムが有する前記下部基板に対向する第3の面に貼り合わされた第3の粘着層と、前記枠状のフィルムが有する前記上部フィルム基板に対向する第4の面に貼り合わされた第4の粘着層とから構成され、
前記枠状フィルムの線膨張係数は前記上部フィルム基板の線膨張係数と同等以上であり、かつ前記枠状フィルムは、該枠状フィルムの延伸軸が前記上部フィルム基板の延伸軸と同一方向となるように配置される、タッチパネル。
【請求項7】
前記第3の粘着層の粘着力は、膨張した前記枠状フィルムが前記下部基板に対して付着した状態で面方向にずれることができる程度に設定される、請求項6に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記上部フィルム基板と前記下部基板とは導電接着剤によって電気的に接続されており、前記上部フィルム基板において、前記導電接着剤による導電接着部分とタッチ入力領域との間にスリットを設けた、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記スリットの形状が、前記上部フィルム基板の収縮方向に略垂直な直線、曲線、十字及び2本の線が直交しない十字のいずれかを含む、請求項8に記載のタッチパネル。
【請求項10】
前記上部フィルム基板と前記下部基板とは導電接着剤によって電気的に接続されており、前記上部フィルム基板において、前記導電接着剤による導電接着部分とタッチ入力領域との間に点線状の切り込みを設けた、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項11】
前記スリットの内側近傍において、前記上部フィルム基板の導電被膜が除去されている、請求項8に記載のタッチパネル。
【請求項12】
前記上部フィルム基板の前記導電被膜が、前記上部フィルム電極に形成されたフィルム側電極の延びる方向に垂直な方向に直線状に除去されている、請求項11に記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−221468(P2012−221468A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90137(P2011−90137)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(501398606)富士通コンポーネント株式会社 (848)
【Fターム(参考)】