説明

タッチパネル

【課題】主に各種電子機器の操作に用いられるタッチパネルに関し、製作が容易に行え、安価で多様な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】上導電層12を上基板11下面の全面に設けると共に、略帯状で複数の下導電層14を、下基板13上面に所定間隔で配列形成することによって、上基板11下面の上導電層12にはエッチング加工等を行う必要がなく、また印刷等によって上電極等を形成する必要もないため、容易に製作が行えると共に、略帯状で複数の下導電層14によって複数の押圧位置の検出も行えるため、安価で多様な操作が可能なタッチパネルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられるタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電子カメラ等の各種電子機器の高機能化や多様化が進むなか、液晶表示素子等の表示素子の前面に光透過性のタッチパネルを装着し、このタッチパネルを通して背面の表示素子の表示を見ながら、指やペン等でタッチパネルを押圧操作することによって、機器の様々な機能の切換えを行うものが増えており、安価で、操作の行い易いものが求められている。
【0003】
このような従来のタッチパネルについて、図9及び図10を用いて説明する。
【0004】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図9は従来のタッチパネルの断面図、図10は同分解斜視図であり、同図において、1はフィルム状で光透過性の上基板、2はガラス等の光透過性の下基板で、上基板1の下面には酸化インジウム錫等の光透過性の上導電層3が、下基板2の上面には同じく下導電層4が各々形成されている。
【0006】
また、上導電層3の左右端には銀等の一対の上電極5Aと5Bが、下導電層4の上導電層3とは直交方向の前後端には、一対の下電極6Aと6Bが各々形成されると共に、この上電極5A、5Bや下電極6A、6Bの端部が、上基板1や下基板2の外周前端に各々延出している。
【0007】
そして、下導電層4上面には絶縁樹脂によって、複数のドットスペーサ(図示せず)が所定間隔で形成されると共に、上基板1と下基板2間の外周内縁には略額縁状のスペーサ7が設けられ、このスペーサ7の上下面または片面に塗布形成された接着剤(図示せず)によって、上基板1と下基板2の外周が貼り合わされ、上導電層3と下導電層4が所定の間隙を空けて対向している。
【0008】
さらに、8はフィルム状の配線基板で、片面または上下面には複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、この配線基板8の後端が、上基板1と下基板2の外周前端に挟持され、合成樹脂内に導電粒子を分散した異方導電接着剤(図示せず)等によって、各配線パターン後端が上電極5A、5Bや下電極6A、6B前端に各々接着接続されている。
【0009】
また、9はフィルム状で光透過性の表示シートで、中央部には透光部9Aが形成されると共に、下面の外周内縁には黒色や灰色等の暗色に塗装された略額縁状の加飾部9Bが設けられ、この表示シート9が下面全面に形成された接着層9Cによって、上基板1上面に貼付されてタッチパネルが構成されている。
【0010】
そして、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、配線基板8の複数の配線パターンの前端が、半田付けやコネクタ(図示せず)等によって機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0011】
以上の構成において、表示シート9の透光部9Aを通してタッチパネル背面の表示素子の表示を見ながら、所望の表示上の表示シート9上面を指或いはペン等で押圧操作すると、この下方の上基板1が撓み、押圧された箇所の上導電層3が下導電層4に接触する。
【0012】
そして、電子回路から配線基板8の複数の配線パターンを介して、一対の上電極5A、5Bや下電極6A、6Bへ順次電圧が印加され、上導電層3両端、及びこれと直交方向の下導電層4両端の電圧比によって、押圧された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行なわれる。
【0013】
つまり、タッチパネル背面の表示素子に、例えば複数のメニュー等が表示された状態で、所望のメニュー上の表示シート9上面を押圧操作すると、上電極5A、5Bや下電極6A、6Bの電圧比によって、この操作した位置を電子回路が検出し、複数のメニューの中から所望のメニューの選択等が行えるように構成されている。
【0014】
なお、以上のようなタッチパネルを製作するには、一般に先ず、下面全面に酸化インジウム錫等の薄膜が形成された上基板1や、上面全面に同じく薄膜が形成された下基板2の、中央部をマスキングして所定のエッチング溶液に浸漬し、外周内縁の不要な箇所の薄膜を除去して、上導電層3や下導電層4を形成する。
【0015】
そして、次に上基板1下面や下基板2上面に印刷等によって、上電極5A、5Bや下電極6A、6Bを形成した後、スペーサ7によって上基板1と下基板2を貼り合わせると共に、異方導電接着剤を塗布した配線基板8の後端を、上基板1と下基板2の外周前端に挟み、これを加熱加圧して、配線基板8の配線パターンを上電極5A、5Bや下電極6A、6Bに接着接続する。
【0016】
さらに、この後、透光部9Aや加飾部9Bが形成された表示シート9を、下面の接着層9Cによって上基板1上面に貼付して、タッチパネルが完成するものであった。
【0017】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2009−277121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、上記従来のタッチパネルにおいては、下面や上面の全面に上導電層3や下導電層4が形成された上基板1や下基板2を、所定のエッチング溶液に浸漬し、外周内縁の不要な箇所の上導電層3や下導電層4を除去した後、さらに上基板1下面と下基板2上面の両方に、印刷等によって上電極5A、5Bや下電極6A、6Bを形成しているため、製作に手間がかかり、高価なものになってしまうという課題があった。
【0020】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、製作が容易に行え、安価で多様な操作が可能なタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0022】
本発明の請求項1に記載の発明は、上導電層を上基板下面の全面に設けると共に、略帯状で複数の下導電層を、下基板上面に所定間隔で配列してタッチパネルを構成したものであり、上基板下面の上導電層にはエッチング加工等を行う必要がなく、また印刷等によって上電極等を形成する必要もないため、容易に製作が行えると共に、略帯状で複数の下導電層によって複数の押圧位置の検出も行えるため、安価で多様な操作が可能なタッチパネルを得ることができるという作用を有する。
【0023】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、複数の下導電層を異なる幅または間隔で形成したものであり、幅や間隔の異なる複数の下導電層を、一組にして押圧位置の検出が行えるため、短時間で操作位置の検出を行うことができるという作用を有する。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、下導電層端部に抵抗体を設けたものであり、一組の複数の下導電層端部に、各々異なる抵抗値の抵抗体を設けることによって、直交する二方向の操作位置を同時に検出できるため、操作位置の検出を短時間で行うことが可能となるという作用を有する。
【発明の効果】
【0025】
以上のように本発明によれば、製作が容易に行え、安価で多様な操作が可能なタッチパネルを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるタッチパネルの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同部分斜視図
【図4】本発明の第2の実施の形態によるタッチパネルの平面図
【図5】同他の実施の形態による平面図
【図6】同平面図
【図7】本発明の第3の実施の形態によるタッチパネルの断面図
【図8】同平面図
【図9】従来のタッチパネルの断面図
【図10】同分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図8を用いて説明する。
【0028】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0029】
(実施の形態1)
実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1記載の発明について説明する。
【0030】
図1は本発明の第1の実施の形態によるタッチパネルの断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、11はポリエチレンテレフタレートやポリエーテルサルホン、ポリカーボネート等のフィルム状で光透過性の上基板で、この上基板11下面の全面には、酸化インジウム錫や酸化錫等の光透過性の上導電層12が、スパッタ法等によって形成されている。
【0031】
そして、上基板11の中央部には透光部11Aが形成されると共に、下面の外周内縁には、ポリエステルやエポキシ等の絶縁樹脂内に顔料等を分散し、黒色や灰色等の暗色に塗装された略額縁状の加飾部11Bが設けられている。
【0032】
また、13はフィルム状またはガラス等の薄板状で光透過性の下基板で、この上面には酸化インジウム錫や酸化錫等の、略帯状で光透過性の複数の下導電層14が同じ幅、例えば1〜2mm前後の幅で、所定の間隔、例えば0.2mm前後の間隔で、スパッタ法等によって配列形成されている。
【0033】
さらに、下導電層14上面にはエポキシやシリコーン等の絶縁樹脂によって、複数のドットスペーサ(図示せず)が所定間隔で形成されると共に、上基板11と下基板13間の外周内縁には、略帯状または略額縁状でポリエステルやエポキシ、不織布等のスペーサ15が設けられ、このスペーサ15の上下面または片面に塗布形成されたアクリルやゴム等の接着剤(図示せず)によって、上基板11と下基板13の外周が貼り合わされ、上導電層12と複数の下導電層14が所定の間隙を空けて対向している。
【0034】
また、16はポリイミドやポリエチレンテレフタレート等のフィルム状の配線基板で、下面または上下面には銅箔や銀、カーボン等の複数の配線パターン(図示せず)が形成されている。
【0035】
そして、この複数の配線基板16の一端が、上基板11と下基板13の外周前端と後端に挟持され、エポキシやアクリル、ポリエステル等の合成樹脂内に、ニッケルや樹脂等に金メッキを施した複数の導電粒子を分散した異方導電接着剤(図示せず)等によって、各配線パターンが複数の下導電層14前端と後端に各々接着接続されている。
【0036】
さらに、上基板11の外形寸法は、外周が下基板13外周よりも外方へ、例えば0.5〜5mm前後突出するように形成されると共に、略額縁状の加飾部11B内周がスペーサ15内周よりも内方へ、例えば0.1〜1mm前後突出するように形成されて、タッチパネルが構成されている。
【0037】
なお、以上のようなタッチパネルを製作するには、先ず、下面全面に酸化インジウム錫等の薄膜が形成されたシート(図示せず)を所定寸法に切断して、下面全面に上導電層12が設けられた上基板11を製作し、この上基板11下面の外周内縁に印刷等によって、略額縁状で黒色や灰色等の暗色の加飾部11Bを形成する。
【0038】
また、上面全面に酸化インジウム錫等の薄膜が形成された下基板13の、複数の下導電層14を設ける箇所をマスキングして、所定のエッチング溶液に浸漬し、不要な箇所の薄膜を除去して、下基板13上面に複数の下導電層14を形成する。
【0039】
さらに、この後、スペーサ15によって上基板11と下基板13を貼り合わせると共に、下面に異方導電接着剤を塗布した配線基板16の端部を、上基板11と下基板13の外周前端と後端に挟み、これを加熱加圧して複数の配線基板16の配線パターンを、複数の下導電層14の前端と後端に接着接続して、タッチパネルが完成する。
【0040】
つまり、本発明においては、上導電層12が上基板11下面の全面に設けられているため、上基板11にはエッチング加工等を行う必要がなく、また印刷等によって上電極等を形成する必要もないため、容易に製作が行えると共に、安価にタッチパネルを構成できるようになっている。
【0041】
そして、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、配線基板16の複数の配線パターンの前端と後端が、接続用コネクタや半田付け等によって、機器の電子回路のマイコン(図示せず)等に電気的に接続されて入力装置が構成される。
【0042】
以上の構成において、上基板11の透光部11Aを通してタッチパネル背面の表示素子の表示を見ながら、所望の表示上の上基板11上面の、例えば図3の部分斜視図に示すように、矢印Aの箇所を指やペン等で押圧操作すると、上基板11が撓み、押圧された箇所の上導電層12が複数の下導電層14のうち、例えば下導電層14Aと14B後方に接触する。
【0043】
そして、この時、電子回路が配線基板16の配線パターンを介して、先ず、複数の下導電層14の隣接する二本ずつの間の抵抗値を、例えば下導電層14Aと14Bの間、下導電層14Bと14Cの間というように、各々の抵抗値を順次検出し、下導電層14Aと14Bの間から所定の抵抗値が検出された場合には、これによって押圧操作が行われ、下導電層14Aと14Bの間が上導電層12によって接続されたことを、すなわち矢印Aの左右方向の操作位置を電子回路が検出する。
【0044】
また、この後、電子回路が所定の抵抗値が検出された箇所の一方に所定の電圧を印加、例えば下導電層14Aの前後端に5Vの電圧を印加し、隣接する他方から検出された電圧、例えば下導電層14Bから検出された4Vの電圧によって、下導電層14Aと14B間の後方が押圧操作されたことを、すなわち矢印Aの前後方向の操作位置を電子回路が検出する。
【0045】
つまり、タッチパネル背面の表示素子に、例えば複数のメニュー等が表示された状態で、所望のメニュー上の上基板11上面、例えば矢印Aの箇所を押圧操作すると、上記のように、先ず複数の下導電層14間の抵抗値によって左右方向の操作位置を、次に一方に電圧を印加した場合に他方から出力された電圧によって前後方向の操作位置を、電子回路が各々検出し、複数のメニューの中から所望のメニューの選択等が行えるように構成されている。
【0046】
さらに、このように矢印Aの箇所を押圧したままで、図3に示すように、他の例えば矢印Bの箇所を押圧操作すると、この箇所の上基板11も撓み、下面の上導電層12が複数の下導電層14のうち、例えば下導電層14Dと14E前方に接触する。
【0047】
そして、この場合にも、下導電層14Dと14Eの間から検出された所定の抵抗値によって、電子回路が矢印Bの左右方向の操作位置を検出すると共に、下導電層14Dの前後端に5Vの電圧を印加し、隣接する下導電層14Eから検出された2Vの電圧によって、下導電層14Dと14E間の前方、すなわち矢印Bの前後方向の操作位置を電子回路が検出する。
【0048】
つまり、複数の略帯状の下導電層14間の抵抗値と、一方に電圧を印加した場合に他方から出力される電圧によって、左右方向と前後方向の操作位置の検出を行うことで、矢印AやBといった一箇所ずつの押圧操作に加え、矢印AもBも同時に押圧操作された場合のような、複数の押圧位置の検出も行うことが可能なように構成されている。
【0049】
すなわち、上導電層12を上基板11下面の全面に設けることによって、上基板11にはエッチング加工等を行う必要がなく、容易に製作が行え、安価にタッチパネルを形成できると共に、略帯状で複数の下導電層14を、下基板13上面に所定間隔で配列形成することによって、一箇所ずつの押圧操作に加え、複数の押圧位置の検出といった多様な操作が行えるようになっている。
【0050】
なお、上記のような操作位置の検出を行う際、先ず複数の下導電層14の間の抵抗値を検出し、これによって左右方向の操作位置を検出した後は、抵抗値が検出されなかった他の下導電層14には電圧を印加せず、抵抗値が検出された下導電層14Aや14Dにのみ電圧を印加して、下導電層14Bや14Eからの電圧のみを検出して前後方向の操作位置を検出することで、検出時間を短くし、電子回路による位置検出を簡易に行うことができる。
【0051】
また、下基板13の製作にやや手間はかかるが、複数の下導電層14両端に印刷等によって、銀やカーボン等の一対の下電極を形成し、この下電極と異方導電接着剤を介して、複数の下導電層14と配線基板16の配線パターンの接着接続を行うことによって、下導電層14と配線パターンをより確実に接続することができる。
【0052】
そして、本発明においては、上基板11下面の外周内縁に、略額縁状で暗色の加飾部11Bが一体に形成され、この上基板11と下基板13を貼り合わせるだけで、加飾部11Bを設けたタッチパネルを形成できるため、表示シート等の別部品が不要になり構成部品数が少なくなると共に、このような表示シート等を上基板11上面に貼付する手間もかからず、組み立ても容易に行え、タッチパネルを安価に構成できるようになっている。
【0053】
また、上基板11の外形寸法を下基板13外周よりもやや大きくし、外周が下基板13よりも外方へ突出するように形成することによって、この上基板11の突出した下面を電子機器の筐体(図示せず)に貼付して、タッチパネルを機器の表面に平坦な状態で装着することも可能となる。
【0054】
さらに、略額縁状の加飾部11B内周を、スペーサ15内周よりも内方へ突出するように形成することで、上基板11上方から透光部11Aを通してタッチパネル背面の表示素子を目視した際、下導電層14に接続された配線基板16の端部等が見えづらくなるため、背面の表示素子の表示が見易くなり、より操作を行い易くすることができる。
【0055】
このように本実施の形態によれば、上導電層12を上基板11下面の全面に設けると共に、略帯状で複数の下導電層14を、下基板13上面に所定間隔で配列形成することによって、上基板11下面の上導電層12にはエッチング加工等を行う必要がなく、また印刷等によって上電極等を形成する必要もないため、容易に製作が行えると共に、略帯状で複数の下導電層14によって複数の押圧位置の検出も行えるため、安価で多様な操作が可能なタッチパネルを得ることができるものである。
【0056】
(実施の形態2)
実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項2記載の発明について説明する。
【0057】
なお、実施の形態1の構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0058】
図4は本発明の第2の実施の形態によるタッチパネルの平面図であり、同図において、光透過性の下基板13上面に酸化インジウム錫や酸化錫等の、略帯状で光透過性の複数の下導電層14がスパッタ法等によって、例えば1〜2mm前後の幅で設けられていることは実施の形態1の場合と同様であるが、これらの下導電層14Aや14B、14C等は各々異なる間隔で配列形成されている。
【0059】
つまり、例えば下導電層14Aと14B間の間隔に比べ、下導電層14Bと14C間の間隔は大きく、下導電層14Cと14D間の間隔はさらに大きく形成されている。
【0060】
そして、所定本数の、例えば四本ずつの下導電層14A〜14Dが一組に形成されると共に、これらは配線基板16の配線パターン、あるいは下基板13上面に形成された下電極によって一本置きに、例えば下導電層14Aと14C前後端が配線パターン17Aと17Bによって、下導電層14Bと14D前後端が配線パターン17Cと17Dによって各々接続されている。
【0061】
なお、このような下基板13上方に、図1や図2に示したように、下面全面に酸化インジウム錫等の光透過性の上導電層12が形成された上基板11が、スペーサ15によって貼り合わされ、上導電層12と複数の下導電層14が所定の間隙を空けて対向すると共に、複数の配線基板16が前後端に接着接続されて、タッチパネルが構成されることは実施の形態1の場合と同様である。
【0062】
また、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、配線基板16の複数の配線パターンを介して、複数の下導電層14の前後端が機器の電子回路のマイコン(図示せず)等に電気的に接続されて、入力装置が構成されることも実施の形態1の場合と同様である。
【0063】
以上の構成において、上基板11上面の、例えばAの箇所を指やペン等で押圧操作すると、上基板11が撓み、押圧された箇所の上導電層12が複数の下導電層14のうち、例えば下導電層14Aと14B後方に接触し、これによって下導電層14Aと14Bが接続される。
【0064】
そして、この時、電子回路が先ず、複数の下導電層14を一本置きに接続した配線パターン間の抵抗値を、例えば下導電層14Aと14Cを接続した配線パターン17Aと、下導電層14Bと14Dを接続した配線パターン17Cの間の抵抗値、及び下導電層14E等を接続した配線パターン(図示せず)間の抵抗値を順次検出する。
【0065】
次に、この検出した抵抗値によって、四本ずつが一組となった下導電層14のどの箇所が押圧操作されたかを検出すると共に、その抵抗値の大小によって、例えば抵抗値が所定の値以下であることによって、間隔の小さな下導電層14Aと14Bの間が押圧操作されたことを、すなわち押圧箇所Aの左右方向の操作位置を電子回路が検出する。
【0066】
つまり、例えばBの箇所が押圧操作され、下導電層14Cと14Dの間が上導電層12によって接続された場合には、下導電層14Cと14D間の間隔は大きいため、配線パターン17Aと17C間の抵抗値は大きなものとなるが、Aの箇所が押圧操作され、間隔の小さな下導電層14Aと14Bの間が接続された場合には、配線パターン17Aと17C間の抵抗値は小さくなるため、この抵抗値の大小によって、押圧箇所がAであるかBであるかを電子回路が検出する。
【0067】
さらに、この後、抵抗値が検出された配線パターンの一方に電子回路が所定の電圧を印加、例えば配線パターン17Aと17Bを介して、下導電層14Aの前後端に5Vの電圧を印加し、隣接する他方から検出された電圧、例えば配線パターン17Cを介して、下導電層14Bから検出された4Vの電圧によって、下導電層14Aと14B間の後方が押圧操作されたことを、すなわち押圧箇所Aの前後方向の操作位置を電子回路が検出する。
【0068】
つまり、左右方向の操作位置の検出を行う際、すべての下導電層14の隣接する二本ずつの間の抵抗値を、順次検出する実施の形態1の場合に比べ、所定本数の、例えば四本ずつの下導電層14A〜14Dが、配線パターン17Aや17C等によって一組に形成され、これらの抵抗値によって検出が行われるようになっているため、電子回路が短時間で左右方向の操作位置の検出を行うことができるように構成されている。
【0069】
すなわち、上導電層12を上基板11下面の全面に設けることで、容易に製作が行え、安価にタッチパネルを形成できると共に、複数の下導電層14を異なる間隔で配列形成することによって、例えば下導電層14A〜14Dを一組にして押圧位置の検出が行えるため、短時間で操作位置の検出を行うことが可能なようになっている。
【0070】
なお、以上の説明では、複数の下導電層14、例えば下導電層14A〜14Dを異なる間隔で配列形成した構成について説明したが、図5の平面図に示すように、複数の下導電層14を異なる幅で形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0071】
つまり、同図において、下基板13上面に設けられた複数の下導電層14は、各々の間隔は同一であるが、幅寸法は各々異なる幅に、例えば下導電層14Fが最も大きな幅に形成され、下導電層14G、14H、14Jの順に小さな幅となるように配列形成されている。
【0072】
さらに、所定本数の、例えば四本ずつの下導電層14F〜14Jが一組に形成されると共に、これらが配線基板16の配線パターンや下電極によって一本置きに、例えば下導電層14Fと14H前後端が配線パターン17Eと17Fによって、下導電層14Gと14J前後端が配線パターン17Gと17Hによって各々接続されている。
【0073】
以上の構成において、上基板11上面の、例えばAの箇所を指やペン等で押圧操作すると、上基板11が撓み、押圧された箇所の上導電層12が複数の下導電層14のうち、例えば下導電層14Fと14G後方に接触し、これによって下導電層14Fと14Gが接続される。
【0074】
そして、電子回路が先ず、複数の下導電層14を一本置きに接続した配線パターン間の抵抗値を、例えば下導電層14Fと14H前端を接続した配線パターン17Eと、下導電層14Gと14J後端を接続した配線パターン17Hの間の抵抗値、及び下導電層14K等を接続した配線パターン(図示せず)間の抵抗値を順次検出する。
【0075】
なお、この時、下導電層14Fと14H後端を接続した配線パターン17Fと、下導電層14Gと14J前端を接続した配線パターン17Gの間の抵抗値を、電子回路が検出するようにしてもよい。
【0076】
次に、この検出した抵抗値によって、四本ずつが一組となった下導電層14のどの箇所が押圧操作されたかを検出すると共に、その抵抗値の大小によって、例えば抵抗値が所定の値以下であることによって、下導電層14Fと14Gの間が押圧操作されたことを、すなわち押圧箇所Aの左右方向の操作位置を電子回路が検出する。
【0077】
つまり、例えばBの箇所が押圧操作され、下導電層14Hと14Jの間が上導電層12によって接続された場合には、下導電層14Hや14Jの幅は小さいため、配線パターン17Eと17H間の抵抗値は大きなものとなるが、Aの箇所が押圧操作され、幅の大きな下導電層14Fと14Gの間が接続された場合には、配線パターン17Eと17H間の抵抗値は小さくなるため、この抵抗値の大小によって、押圧箇所がAであるかBであるかを電子回路が検出する。
【0078】
さらに、この後、抵抗値が検出された配線パターンの一方に電子回路が所定の電圧を印加、例えば配線パターン17Eと17Fを介して、下導電層14Fの前後端に5Vの電圧を印加し、隣接する他方から検出された電圧、例えば配線パターン17Hを介して、下導電層14Gから検出された4Vの電圧によって、下導電層14Fと14G間の後方が押圧操作されたことを、すなわち押圧箇所Aの前後方向の操作位置を電子回路が検出する。
【0079】
なお、この時、操作位置の検出を上記のように配線パターン17Eと17H間ではなく、例えば配線パターン17Eと17G間の抵抗値で行った場合には、Aの箇所が押圧され、幅の大きな下導電層14Fと14G後方が接続された場合の抵抗値と、Bの箇所が押圧され、幅の小さな下導電層14Hや14J前方が接続された場合の抵抗値が近似したものとなるため、押圧箇所がAであるかBであるかを検出することが困難となる。
【0080】
したがって、このように幅の異なる複数の下導電層14F〜14J等を同じ間隔で配列形成した場合には、前端の配線パターン17Eと17G間や、後端の17Fと17H間ではなく、前後端の配線パターン17Eと17H間、あるいは配線パターン17Gと17F間で検出を行うことで、上記のように確実な操作位置の検出を行うことが可能となる。
【0081】
つまり、上記のように幅の異なる複数の下導電層14を同じ間隔で配列形成することによっても、上述した同じ幅の複数の下導電層14を異なる間隔で配列形成した場合と同様に、所定本数の、例えば四本ずつの下導電層14F〜14Jを一組にして押圧位置の検出が行えるため、短時間で左右方向の操作位置の検出を行うことができる。
【0082】
このように本実施の形態によれば、上導電層12を上基板11下面の全面に設けることによって、容易に製作が行え、安価にタッチパネルを形成できると共に、下基板13上面の複数の下導電層14を異なる幅または間隔で形成することによって、幅や間隔の異なる複数の下導電層14F〜14Jや14A〜14Dを、一組にして押圧位置の検出が行えるため、短時間で操作位置の検出を行うことができるものである。
【0083】
なお、以上の説明では、下基板13上面に直線状の複数の下導電層14を配列形成した構成について説明したが、図6(a)の平面図に示すような、略波形状の複数の下導電層18Aや、図6(b)に示すような、略矩形状が連結されたような下導電層18B、あるいは図6(c)に示すような、略帯状と略矩形状を組み合わせたような下導電層18C等、様々な形状を略帯状に形成した構成としても、本発明の実施は可能である。
【0084】
(実施の形態3)
実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項3記載の発明について説明する。
【0085】
なお、実施の形態1や2の構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0086】
図7は本発明の第3の実施の形態によるタッチパネルの断面図、図8は同平面図であり、同図において、光透過性の下基板13上面に酸化インジウム錫や酸化錫等の、略帯状で光透過性の複数の下導電層19が同じ幅、例えば1〜2mm前後の幅で、所定の間隔、例えば0.2mm前後の間隔で、スパッタ法等によって配列形成されていることは、実施の形態1の場合と同様であるが、これらの前後方向の抵抗値が所定の値、例えば15kΩ前後の抵抗値に形成された下導電層19Aや19B、19C等の端部には、酸化インジウム錫やカーボン等によって所定の抵抗値の抵抗体20が設けられている。
【0087】
つまり、例えば下導電層19Aの前端には抵抗値が45kΩ前後の抵抗体20Aが、下導電層19Bの前端には30kΩ前後の抵抗体20B、後端には15kΩ前後の抵抗体20Cが、下導電層19Cの前端には15kΩ前後の抵抗体20Cが、後端には30kΩ前後の抵抗体20Bが、下導電層19Dの後端には45kΩ前後の抵抗体20Aが各々形成されている。
【0088】
なお、このような抵抗体20は、下導電層19端部の酸化インジウム錫等の幅を細くして所定の抵抗値が得られるように形成しても、下導電層19端部にカーボン等を印刷して形成しても、あるいは配線基板16の配線パターン等にチップ状の固定抵抗器を実装して形成してもよい。
【0089】
そして、所定本数の、例えば四本ずつの下導電層19A〜19Dが一組に形成されると共に、これらは配線基板16の配線パターン、あるいは下基板13上面に形成された下電極によって一本置きに、例えば下導電層19Aと19C前後端が配線パターン17Jと17Kによって、下導電層19Bと19D前後端が配線パターン17Lと17Mによって各々接続されている。
【0090】
なお、このような下基板13上方に、下面全面に酸化インジウム錫等の光透過性の上導電層12が形成され、外周内縁に略額縁状の加飾部11Bが設けられた上基板11が、スペーサ15によって貼り合わされ、上導電層12と複数の下導電層19が所定の間隙を空けて対向すると共に、複数の配線基板16が前後端に接着接続されて、タッチパネルが構成されることは実施の形態1や2の場合と同様である。
【0091】
また、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、配線基板16の複数の配線パターンを介して、複数の下導電層19の前後端が機器の電子回路のマイコン(図示せず)等に電気的に接続されて、入力装置が構成されることも実施の形態1や2の場合と同様である。
【0092】
以上の構成において、上基板11上面の、例えばAの箇所を指やペン等で押圧操作すると、上基板11が撓み、押圧された箇所の上導電層12が複数の下導電層19のうち、例えば下導電層19Aと19B後方に接触し、これによって下導電層19Aと19Bが接続される。
【0093】
そして、この時、電子回路が先ず、複数の下導電層19を一本置きに接続した配線パターン間の抵抗値を、例えば下導電層19Aと19C前端を接続した配線パターン17Jと、下導電層19Bと19D前端を接続した配線パターン17Lの間の抵抗値、及び下導電層19E等を接続した配線パターン(図示せず)間の抵抗値を順次検出し、この抵抗値によって、四本ずつが一組となった下導電層19のどの箇所の組が押圧操作されたかを検出する。
【0094】
また、この後、抵抗値が検出された配線パターンの一方に電子回路が所定の電圧を印加、例えば配線パターン17Jと17Kを介して、下導電層19Aの前後端に5Vの電圧を印加し、隣接する他方から検出された電圧、例えば配線パターン17Lを介して、下導電層19Bから検出された電圧によって、下導電層19Aと19B間の後方が押圧操作されたことを、すなわち押圧箇所Aの左右方向と前後方向の操作位置を電子回路が同時に検出する。
【0095】
つまり、例えばBの箇所が押圧操作され、下導電層19Cと19Dの間が上導電層12によって接続された場合には、配線パターン17Lからは、下導電層19Cとこの前後端の抵抗体20Cと20Bの抵抗値の和に対する、前端の抵抗体20Cの抵抗比が電圧として出力される。
【0096】
これに対し、Aの箇所が押圧操作された場合には、下導電層19A全体とこの前端の抵抗体20Aの抵抗値の和に対する、Aの箇所までの下導電層19Aの抵抗値と前端の抵抗体20Aの和の抵抗比が、電圧として配線パターン17Lから出力されるため、この電圧値の違いによって、押圧箇所がAであるかBであるかを、すなわち左右方向の操作位置を電子回路が検出する。
【0097】
また、例えばCの箇所が押圧操作された場合には、配線パターン17Lからは、下導電層19A全体とこの前端の抵抗体20Aの抵抗値の和に対する、前端の抵抗体20Aの抵抗比が電圧として出力されるため、この電圧差によって押圧箇所がAであるかCであるかを、すなわち前後方向の操作位置を電子回路が検出する。
【0098】
つまり、所定本数の、例えば四本ずつの下導電層19A〜19Dを、配線パターン17Jや17L等によって一組に形成し、これらの抵抗値によって電子回路が、どの組かの概略の検出を行った後、所定の下導電層19に電圧を印加し、各下導電層19自体の抵抗や、前端や後端に設けられた各抵抗体20の抵抗比から出力される電圧によって、左右方向と前後方向の操作位置を電子回路が、同時に検出するように構成されている。
【0099】
すなわち、上導電層12を上基板11下面の全面に設けることで、容易に製作が行え、安価にタッチパネルを形成できると共に、一組の複数の下導電層19A〜19D端部に、各々異なる抵抗値の抵抗体20A〜20Cを設けることによって、直交する左右方向と前後方向の二方向の操作位置を同時に検出できるため、電子回路が短時間で操作位置の検出を行うことが可能なようになっている。
【0100】
なお、以上の説明では、上基板11下面の全面にスパッタ法等によって、酸化インジウム錫や酸化錫等の上導電層12を形成した構成について説明したが、ポリチオフェンやポリアニリン等の導電性樹脂、あるいはアクリル等の紫外線硬化樹脂内に銀等の複数の導電金属細線を分散したものを用い、これらを上基板11下面に印刷や塗布して、光透過性の上導電層12を形成した構成とすれば、より安価にタッチパネルを形成することができる。
【0101】
このように本実施の形態によれば、上導電層12を上基板11下面の全面に設けることによって、容易に製作が行え、安価にタッチパネルを形成できると共に、複数の下導電層19A〜19D端部に、抵抗体20A〜20Cを設けることによって、直交する左右方向と前後方向の二方向の操作位置を同時に検出できるため、短時間で操作位置の検出を行うことができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明によるタッチパネルは、製作が容易に行え、安価で多様な操作が可能なものを得ることができるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0103】
11 上基板
11A 透光部
11B 加飾部
12 上導電層
13 下基板
14、14A〜14K 下導電層
15 スペーサ
16 配線基板
17A〜17M 配線パターン
18A〜18C 下導電層
19、19A〜19E 下導電層
20、20A〜20C 抵抗体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に上導電層が形成された上基板と、上面に上記上導電層と所定の間隙を空けて対向する下導電層が形成された下基板からなり、上記上導電層を上記上基板下面の全面に設けると共に、略帯状で複数の上記下導電層を、上記下基板上面に所定間隔で配列したタッチパネル。
【請求項2】
複数の下導電層を異なる幅または間隔で形成した請求項1記載のタッチパネル。
【請求項3】
下導電層端部に抵抗体を設けた請求項1記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−59091(P2012−59091A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202582(P2010−202582)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】