説明

タッチパネル

【課題】静電気印加に対して高い耐性を有する高信頼性のタッチパネルを提供する。
【解決手段】タッチパネルは静電容量方式であり、透光性の基板の一方の面で第1の方向および第2の方向に延在する透光性の複数の第1電極および第2の電極を有する。第1電極と第2電極の交差部分では、第1電極および第2電極のうちの一方の電極は繋がり、他方の電極は途切れている。交差部分における一方の電極の上層には透光性の層間絶縁膜が形成され、層間絶縁膜の上層には、交差部分で途切れた他方の電極同士を接続するブリッジ電極が形成される。ブリッジ電極は、金属材料からなり、交差部分で途切れた他方の電極の部位同士それぞれの上に配置される接続部と、その接続部の間を繋ぐブリッジ部とを有し、他方の電極からブリッジ部に流れる電流の方向と垂直な方向の長さが、接続部はブリッジ部より長くなるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やスマートフォンやPDA(パーソナルデジタルアシスタント)などの電子機器では、画面の大型化への要求が大きく、スイッチやテンキーなどの入力装置を配置できる領域が少なくなっている。また、液晶ディスプレイ等の表示素子に表示された画像を参照しながら表示画像に触れ、分かりやすく情報の入力ができる情報入力方法の実現が求められている。
こうしたことから、最近タッチパネル付きの表示装置への要求が高まっている。
【0003】
タッチパネルは、上述した液晶ディスプレイなどの表示素子の上に配置され、操作者が指やペンなどで操作面に触れた場合、そのタッチ位置を検出する入力装置の総称である。接触位置検出の方式としては、抵抗膜方式や静電容量方式などがある。
抵抗膜方式は、表面に透明電極の配設された2枚の基板を、互いの透明電極が対向するように離間して配置する。すなわち2枚の基板を必要として薄型化は難しい。そして、従来の抵抗膜方式タッチパネルでは、基板を押して対向する電極間をショートさせる構造のため、摩耗などを生じて耐久性に乏しい。
【0004】
静電容量方式は、使用する基板を一枚として薄型化することも可能であり、特に携帯電子機器には好適な方式である。そして、この方式において近年盛んに使用されているのが、投影型静電容量方式である。
投影型静電容量方式は、人間が導体であり、操作者の指がグランドとして機能することを利用する。すなわち、タッチパネルの基板上に配置されたセンシング用の電極に指が近づくと、指と電極との間に容量が形成され、そうした変化を制御回路等により検知する。このとき、容量変化によって、操作者の指の接近を感知するため、直接に指がセンシング用の電極に触れる必要は無い。
【0005】
このような投影型静電容量方式では、センシングのためにセンシング用の透明電極のパターニングが必要となる。最近では、透明基板の一の面にX方向に伸びたX電極と、Y方向に伸びたY電極とを設け、それらを格子状に配置する技術が盛んに用いられている。
特許文献1には、ガラスなどの透明基板上に複数のX側透明導電線路(X電極)と複数のY側透明導電線路(Y電極)とを、絶縁膜を介し、互いに絶縁して配置した静電容量方式のタッチパネル技術が開示されている。
【0006】
投影型静電容量方式では、特許文献1に示すように、タッチパネルを構成するガラス基板上において、ある電極とある電極とを交差させて配置する必要がある。
このような場合における電極間の接続構造に関して、例えば、特許文献2には、静電容量型入力装置の構成例として、透光性基板の一方の面に第1の透光性電極パターンと、第2の透光性電極パターンとが形成され、交差部分で途切れている第2の透光性電極パターンが、層間絶縁膜の上層に形成された中継電極によって電気的に接続される構成が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭60−75927号公報
【特許文献2】特開2008−310550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば、特許文献2には、層間絶縁膜が感光性樹脂からなること、また、透光性電極パターンおよび中継電極としてITO(Indium Tin Oxide)を用いることが記載されている。しかし、本発明者は、層間絶縁膜に樹脂を用いた場合には、その材料の性質によっては、透光性電極パターンおよび中継電極として用いられるITO(Indium Tin Oxide)等との接着性において問題が生じることを見出した。
【0009】
すなわち、このような接続構造においては、ITOに対する樹脂製の層間絶縁膜の密着力が弱いために、ITO電極から層間絶縁膜が剥がれ、浮いてしまうことがある。その場合、層間絶縁膜の上層に設けられた中継電極でも浮きが生じ、電極間での接続がとれなくなるという問題があった。こうした中継する電極が浮く問題は、操作者の指が操作面に触れた場合、その押圧によって助長されることになる。投影型静電容量方式では、人の指の操作面への接触がなくとも感知は可能であるが、指が触れることも多く、問題となる。
【0010】
また、操作者がタッチパネルに触れる際、タッチパネルに静電気が印加されてしまう場合もある。そうした場合、タッチパネルの電極には大電流が流れることになる。したがって、タッチパネルは、静電気の印加による大電流に耐えることのできる、高信頼性の電極構造を有する必要がある。
【0011】
本発明は、以上のタッチパネルにおける、ITOを用いた電極の問題、および静電気による大電流に対応できる電極構造の要求に基づいてなされたものである。
すなわち、本発明の目的は、ITO電極の有する問題点や静電気印加に対する耐性の問題が回避された高信頼性のタッチパネルを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的および利点は、以下の記載から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の態様は、透光性の基板と、
その基板の一方の面で第1の方向に延在する透光性の複数の第1電極と、
基板の第1電極の在る面で、第1の方向と交差する第2の方向に延在する透光性の複数の第2電極とを有し、
第1電極と第2電極の交差部分では、第1電極および第2電極のうちの一方の電極は繋がり、他方の電極は途切れており、その途切れた他方の電極同士がブリッジ電極で接続されており、
交差部分において、ブリッジ電極と一方の電極との間に層間絶縁膜が形成される静電容量方式のタッチパネルであって、
ブリッジ電極は、金属材料からなり、交差部分で途切れた他方の電極の部位同士それぞれの位置に配置される接続部と、その接続部の間を繋ぐブリッジ部とを有し、
他方の電極からブリッジ部に流れる電流の方向と垂直な方向の長さが、接続部はブリッジ部より長いことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の態様において、接続部は、他方の電極からブリッジ部に流れる電流の方向に対して垂直な方向に長軸を有する形状であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の態様において、接続部は、他方の電極からブリッジ部に流れる電流の方向と垂直な方向の長さが40μm以上であることが好ましい。
【0016】
本発明の態様において、ブリッジ電極は、交差部分で途切れた他方の電極の部位同士それぞれの上に配置される2つの接続部と、この2つの接続部の間を繋ぐブリッジ部とからなり、
2つの接続部はそれぞれ、他方の電極からブリッジ部に流れる電流の方向に対して垂直な方向に長軸を有する短冊状の形状を有するとともに、互いに対向する側の側面とは反対の側にある側面の角部分が角R加工されていることが好ましい。ここで角R(半径)は9μm以上とすることが好ましい。
【0017】
本発明の態様において、交差部分における一方の電極上の層間絶縁膜と他方の電極との間には隙間が形成されており、層間絶縁膜上に形成されたブリッジ電極は、その隙間を通じて、基板と接着することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ITO電極の有する問題点や静電気印加に対する耐性の問題が回避された高信頼性のタッチパネルが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施の形態のタッチパネルの概略構成を説明する平面図である。
【図2】本実施の形態のタッチパネルの概略構成を説明する断面図である。
【図3】本実施の形態のタッチパネルの交差部の構造を説明する図である。
【図4】ブリッジ電極の接続部の好ましい先端形状を拡大して示す模式図である。
【図5】ブリッジ電極の接続部の別の例を示す模式図である。
【図6】第1電極と第2電極の形成された状態の透明基板を示す平面図である。
【図7】交差部に層間絶縁膜が形成された状態の透明基板を示す平面図である。
【図8】本実施の形態のタッチパネルを用いたタッチパネル機能付き表示装置の構造を示す模式的な断面図である。
【図9】金属製のブリッジ電極を有するタッチパネルの概略構造を説明する平面図である。
【図10】図9に示すタッチパネルのブリッジ電極部分を拡大して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
上述のように、投影型静電容量方式のタッチパネルでは、センシングのためにセンシング用の透明電極のパターニングを行い、一枚のガラスなどの透明基板上に格子状に配置された複数の透明なX電極とY電極とを設ける。そして、交差部分で途切れているX電極またはY電極は、層間絶縁膜の上層に設けられた中継用のブリッジ電極によって電気的接続を行う。
【0021】
このとき、樹脂製の層間絶縁膜に対し、ITOによってブリッジ電極を形成しようとする場合、上述の問題が生じてしまう。そこで、本発明者は、タッチパネルの電極構造において、より基板に対する接着性の高い材料、例えば金属によってブリッジ電極を構成する新たな構造の検討を行った。
【0022】
図9は、金属製のブリッジ電極を有するタッチパネルの概略構造を説明する平面図である。図10は、図9に示すタッチパネルのブリッジ電極部分を拡大して説明する図である。
【0023】
図9に示すタッチパネル200は、ガラス基板等の透明基板202の一方の面に、交差するX軸とY軸の2軸それぞれの方向に伸びるX電極205とY電極204とが設けられている。X電極205とY電極204は、それらが交差する交差部208において、絶縁性の層間絶縁膜203を介して配置され、電気的に非接触(独立)な状態となっている。
図10に示すように、交差部208でX電極205の電極パターンは接続しているが、Y電極204の電極パターンは途切れている。Y電極204は層間絶縁膜203の上層に形成されたブリッジ電極206によって電気的に接続されている。
【0024】
ブリッジ電極206は金属製の電極であり、図10に示すように、Y電極204からブリッジ電極206に流れる電流に対し、平行な方向に長軸を有する短冊状の形状を有する。金属電極は光を反射し、透過光量を減少することがある。よって、ブリッジ電極206は大きさを極力小さくすることが望ましく、幅を細くし、長さも短くすることが好ましい。こうして、タッチパネル200では、ブリッジ電極206が目立って見栄えを低下させることを防止する。
【0025】
しかしながら、タッチパネル200において、上述のように、静電気が印加されることがあり、ブリッジ電極206に大電流が流れる場合がある。このとき、ブリッジ電極206とY電極204の接続部分の面積が小さいと、電流の集中が起きて発熱する。こうした現象は、ブリッジ電極206とY電極204との接続部分の断線を引き起こすことがある。
【0026】
そこで本発明においては、交差部で途切れたY電極またはX電極を接続するブリッジ電極を金属で構成する。そして、ブリッジ電極の形状を改善し、静電気による大電流に対して耐性を有するタッチパネルを提供する。
【0027】
以下、本発明の実施の形態のタッチパネルを、図面を参照して説明する。
図1は、本実施の形態のタッチパネルの概略構成を説明する平面図である。図2は、本実施の形態のタッチパネルの概略構成を説明する断面図である。図3は、本実施の形態のタッチパネルの交差部の構造を説明する図である。
【0028】
図1および図2に示すタッチパネル1は、透光性の基板である透明基板2の一方の面に複数の第1電極4および第2電極5を有する。第1電極4および第2電極5は、図9に示したタッチパネルのY電極204およびX電極205に相当する。
透明基板2は、電気絶縁性の基板であって、例えば、ガラス基板や、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、PC(ポリカードネート)フィルムなどの使用が可能である。ガラス基板の場合、厚さを0.3mm〜3.0mmとすることが可能である。
【0029】
第1電極4と第2電極5はいずれも同様の透光性の電極(以下、透明電極とも言う)であり、タッチパネル1の操作面に相当する領域に形成される。第1電極4および第2電極5は、可視光に対する高い透過率と導電性を有する透明な材料を用いて構成される。例えば、ITO(酸化インジウム錫、Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、ZnO(酸化亜鉛)を用いて構成することができる。
【0030】
そして、図1に示すように、透明基板2上で第1電極4はY方向に延在し、第2電極5はY方向と直交するX方向に延在する。それらは、透明基板2上でマトリクス状に配置される。複数の第1電極4はタッチパネル1の操作面をX方向に複数の領域に分離してX方向の座標を検出する。複数の第2電極5は同様にY方向の座標を検出する。尚、タッチパネル1では、タッチ位置を検出できるよう、後述するように、第1電極4と第2電極5とは電気的に互いに独立している。
【0031】
図1に示すように、第1電極4および第2電極5は、菱形の電極パット9を複数、Y方向およびX方向に並べた形状を有する。そして、図3に拡大して示すように、第2電極5は、第1電極4と第2電極5との交差部分である交差部8で繋がるように電極のパターニングがなされ、第1電極4は途切れた状態の電極パターニングがなされている。すなわち、図3に示すように、第2電極5は電気的に接続しているが、第1電極4は途切れている。交差部8での第1電極4の途切れた部分同士の電気的な接続は、後述するように、ブリッジ電極6によって実現されている。
【0032】
尚、第1電極4および第2電極5は、タッチパネル1における感度を高めるよう菱形の電極パッド9を有する。しかし、本発明では、電極パッド9の形状は菱形に限られることはなく、六角形や八角形など多様な形状を選ぶことができる。また、第1電極4および第2電極5の本数がここで示したものに限定されるわけではない。電極の形状や数は、操作面の大きさと要求される検出位置の精度に応じて決定することができる。
【0033】
図1に示す本実施の形態のタッチパネル1では、上述のように、第1電極4と第2電極5が透明基板2の同一面上に同一層により形成されている。したがって、第1電極4と第2電極5との交差部分である交差部8が複数、存在する。交差部8においては、繋がるようにパターニングされた第2電極5の上層に層間絶縁膜3が形成されている。そして、層間絶縁膜3の上層に形成されたブリッジ電極6によって第1電極4の途切れた部位同士の電気的な接続が実現されている。すなわち、交差部8においてブリッジ電極6と第2電極5との間に層間絶縁膜3が設けられていることになる。また、層間絶縁膜3はブリッジ電極6が形成される交差部8だけに配置されている。
【0034】
層間絶縁膜3は光透過性の絶縁性材料から構成され、透光性を有することが好ましい。例えば、SiOなどの無機材料や、感光性のアクリル樹脂などの有機材料を用いることができる。SiOを用いる場合、スパッタリング法によりマスクを利用してパターニングされた絶縁層を容易に得ることができる。感光性のアクリル樹脂などを使用して層間絶縁膜を形成する場合、フォトリソグラフィー技術の利用によってパターニングされた樹脂製の層間絶縁膜3を得ることができる。
【0035】
特に、透明基板2がガラス基板の場合には、ガラス基板の表面に生ずるシラノール基と反応する基を有する感光性樹脂が好ましい。そのような感光性樹脂を使用することにより、ガラス基板と感光性樹脂との間で化学結合が生じて密着力の高い絶縁層を形成することができる。例えば、上述した感光性のアクリル樹脂のほか、感光性メタクリル樹脂、感光性ポリイミド樹脂、感光性ポリシロキサン樹脂、感光性ポリビニールアルコール樹脂、アクリルウレタン系感光性樹脂などの使用が好ましい。尚、遮光性の絶縁性材料であってもよい。遮光性の絶縁性材料を採用する場合は、層間絶縁膜3の形成領域は視認性の観点から小さいほど好ましい。
【0036】
本実施の形態のブリッジ電極6は、金属材料を用いて構成されることが好ましい。金属材料は、透明基板2に対して高い密着力を有するため好適な材料である。透明基板2がガラス基板の場合、金属材料の中で、ガラス基板に対して密着力が高く、ITOより導電性が高く、耐久性、耐摩耗性にも優れた材料の使用が望ましい。具体的には、Mo、Mo合金、Al、Al合金、Au、Au合金などの金属材料を用いることができる。より耐食性を高めた合金としては、例えば、Mo−Nb系合金、Al−Nd系合金などが好ましい。
【0037】
上述のブリッジ電極6は2層または3層などの多層構造としてもよい。例えば、Mo層/Al層/Mo層の3層構造が挙げられる。
以上のような金属材料からなるブリッジ電極6は、ITOを使用する場合に比べ、電極幅を細くでき、また電極長を長くできる。そしてさらに、電極の膜厚を薄くすることができる。このようなブリッジ電極6は、電極構造の設計の自由度を高め、また外観を良くすることができる。
【0038】
本実施の形態のブリッジ電極6は、ブリッジ部12と接続部11とを有して構成されることが好ましい。例えば、後述する図3に示す構造とすることが好ましい。
ブリッジ電極6のブリッジ部12は、第1電極4における途切れた部分を架橋する。接続部11は、第1電極4の電極パッド9上に配置され、ブリッジ電極6と第1電極4とを接続する。すなわち、接続部11は、交差部8で途切れた第1電極4の電極パッド9同士それぞれの上に配置されている。そして、ブリッジ部12は、この2つの接続部11を繋いでいる。ブリッジ電極6は、交差部8で途切れた第1電極4の上に配置された2つの接続部11とそれらを繋ぐブリッジ部12とを有する。
【0039】
ブリッジ電極6が接続部11を有することで、第1電極4とブリッジ電極6との接続面積を大きくすることができる。そして、第1電極4とブリッジ電極6との間を流れる電流が、それらの接続部分に集中することを防止できる。したがって、接続部分での発熱や断線を防止し、一方でブリッジ電極6の面積、特にブリッジ部12の面積を小さくすることができる。
【0040】
ブリッジ電極6は以上のような構成と機能を有するが、接続部11などの各部の形状は多様なものを選択することができる。
具体的には、ブリッジ電極6のブリッジ部12と接続部11において、第1電極4からブリッジ部12に流れる電流の方向(以下、電流方向と称する)と垂直な方向の長さが、ブリッジ部12より接続部11の方で長くなるように形状を選択することが好ましい。
【0041】
例えば、ブリッジ電極6のブリッジ部12は、電流方向と平行な方向に長軸を持つ形状であることが好ましい。そして、接続部11は、その電流方向に対して垂直な方向に長軸を持つ形状であることが好ましい。そして、接続部11は、電流方向に対して垂直な方向の長さを調整することで、第1電極4とブリッジ電極6との接続部分への電流の集中を制御することができる。具体的には、接続部11の長軸方向の長さは40μm以上であることが好ましい。その場合、短軸方向の長さは20μm以下であることが好ましい。
【0042】
以上より、ブリッジ電極6の具体的な形状は、例えば、図3に示す形状を選択することができる。尚、本実施の形態において、ブリッジ電極6の形状は図3に示した例に限られることは無い。
【0043】
図3に示すように、ブリッジ電極6では、ブリッジ部12が、電流方向と平行な方向に伸びる形状を有する。そして、接続部11は、第1電極4上に配置されて、電流方向と垂直な方向に伸びる形状を有する。
より具体的には、ブリッジ電極6のブリッジ部12は、電流方向に対して平行な方向に長軸を持つ短冊状の形状を有する。そして、接続部11も短冊状の形状を有し、電流方向に対して垂直な方向に長軸を有する。
【0044】
そして、図3に示すように、ブリッジ電極6では、接続部11とブリッジ部12とが組み合わされて、全体形状がアルファベットの文字Hを90°回転したようなH字形状を有している。ブリッジ電極6はブリッジ部12に接続部11を組み合わせることで、ブリッジ部12を細い形状とすることができる。
その結果、タッチパネル1では、金属製のブリッジ電極6が目立つことを抑制し、一方で、第1電極4とブリッジ電極6との接続部分の面積を大きくすることが可能となる。そして、静電気印加による大電流が流れた場合にも、第1電極4とブリッジ電極6との接続部分に電流が集中することを防止し、接続部分での発熱、ひいては断線を防止することができる。
【0045】
ブリッジ電極6の接続部11の形状については、Y方向側(図3では上下方向)の先端に尖った部分を有しない形状とすることが好ましい。Y方向側の先端に尖った部分があると、そこに電流が集中し、上述した問題が発生する懸念がある。
【0046】
図4は、ブリッジ電極の接続部の好ましい先端形状を拡大して示す模式図である。
【0047】
ブリッジ電極6は、図4に示すように、電極パッド9上にある接続部11において、2つの接続部11が互いに対向する側の側面とは反対の側にある側面の角部分が、角R加工されていることが好ましい。すなわち、層間絶縁膜3に対向する側と反対側にある先端の角部分16(以下、先端角部分16と称する。)が、角R加工されていることが好ましい。このような加工をすることで、接続部11は、Y方向に尖った部分を有しないようになる。尚、図4に示すブリッジ電極6においては、接続部11の層間絶縁膜3と対向する側の角部分も同様に角R加工されている。
【0048】
本発明者は、図4に示す金属製のブリッジ電極6について、電流が流れる際の電流密度の評価を行った。その結果、先端角部分16の角R加工として、角にR(半径)9μm以上を付けることが好ましいことがわかった。R(半径)9μm以上とすることにより、当該部分近傍を流れる電流密度をより均一に分布させることができる。
したがって、接続部分11の一部に電流が集中することを防止するためには、先端角部分16にR(半径)9μm以上の角R加工をすることが好ましい。
【0049】
また、図5は、ブリッジ電極の接続部の別の例を示す模式図である。尚、図5において、図4と共通する部分の符号は同じ符号を用いて説明する。
【0050】
電極パッド9上にある接続部13において、層間絶縁膜3に対向する側と反対側にある側面部分15は、直線状ではなく、丸みを帯びるよう加工されている。すなわち、上記の図4に示す例では、接続部11が短冊状の形状を有し、層間絶縁膜3に対向する側と反対側の側面部分14は、電流方向と垂直な直線状となっている。
それに対し、図5に示す例では、接続部13の、層間絶縁膜3に対向する側と反対側にある側面部分15は、直線状ではなく、電流方向に膨らんだ、丸みを帯びた形状を有する。このような加工をすることにより、接続部13を流れる電流密度をより均一に分布させることができる。
【0051】
次に、図3に示すように、本実施の形態のタッチパネル1では、交差部8において、層間絶縁膜3が第2電極5上に設けられている。層間絶縁膜3は、第1電極4の2つの電極パッド9a、9bのそれぞれと接触しないように形成されている。そして、ブリッジ電極6は、層間絶縁膜3を跨いで、Y方向(図3では上下方向)の2つの電極パッド9a、9b間を接続する。この状態でブリッジ電極6は、層間絶縁膜3と各電極パッド9a、9bとの間に露出している透明基板2に対し、直接に密着している。
【0052】
すなわち、ブリッジ電極6を金属製とすることにより、ITOの場合と比べて、ブリッジ電極6と透明基板2との密着力をより高めることができる。そして、交差部8において、ブリッジ電極6と透明基板2との密着力を利用し、より強固にブリッジ電極6と第1電極4とを接続させることができる。その結果、金属製のブリッジ電極6が透明基板2と直接に密着することにより、層間絶縁膜3の剥がれによる、ブリッジ電極6と第1電極4のとの間の接続の不具合を抑えることができる。
【0053】
図1に示すタッチパネル1においては、第1電極4と第2電極5の端部に、それぞれ端子(図示されない)が設けられており、その端子から複数の引き出し配線17が接続される。引き出し配線17は金属配線とすることができる。そして、引き出し配線17を構成する金属材料は、ブリッジ電極6を構成する材料と同一とすることができる。
【0054】
次に、本実施の形態のタッチパネル1の製造方法について説明する。
図6は、第1電極と第2電極の形成された状態の透明基板を示す平面図である。
まず、図6に示すように、透明基板2の片側の面に、第1電極4と第2電極5を形成する。例えば、スパッタリング法などを用いて透明基板2上にITOを成膜する。次いで、成膜したITO膜を、フォトリソグラフィー技術などを利用して加工し、所定形状の第1電極4と第2電極5の電極パターンを形成する。
【0055】
図7は、交差部に層間絶縁膜が形成された状態の透明基板を示す平面図である。
次に、図7に示すように、第1電極4と第2電極5との交差部8において、第2電極5の電極パッド9間の接続部分を覆う層間絶縁膜3を形成する。層間絶縁膜3の形成は、フォトリソグラフィー技術を利用する。すなわち、透明基板2上の第1電極4と第2電極5の上層に感光性のアクリル樹脂をコーティングし、所定パターンのマスクを用いて露光し、次いでエッチングを行う。このとき、交差部8において、層間絶縁膜3とその上下にある第1電極4の電極パッド9との間には隙間が開けられおり、層間絶縁膜3と第1電極4とは接触していない。
【0056】
次に、各交差部8に設けた層間絶縁膜3の上を跨いで、途切れた第1電極4の電極パッド9の間を接続させるようブリッジ電極6を形成する。すなわち、層間絶縁膜3が形成されている透明基板2の面に対してスパッタリング法などを用いて金属膜を形成する。この金属膜をフォトリソグラフィー法によりパターニングして、層間絶縁膜3上に所定形状を有するブリッジ電極6を形成する。
【0057】
尚、上記したブリッジ電極6を形成する工程において、金属膜をパターニングする際、この金属膜を用いて、同時に、引き出し配線17をパターニングして形成することも可能である。これにより、引き出し配線17の低抵抗化が可能となる。
こうして、図1に示すタッチパネル1が得られる。
【0058】
また、図1に示すタッチパネル1は、第1電極4および第2電極5を介して静電容量を監視する回路部(図示しない)を備えている。この回路部は、例えば、引き出し配線17の端子部(図示されない)とフレキシブルフィルム等を介して接続されていればよい。なお、引き出し配線の端子部(図示されない)と接続されるフレキシブルフィルムに直接ICチップを搭載して回路部を構成してもよい。
【0059】
図8は、本実施の形態のタッチパネルを用いたタッチパネル機能付き表示装置の構造を示す模式的な断面図である。
本実施の形態のタッチパネル1を用いたタッチパネル機能付き表示装置100は、タッチパネル1と表示パネル101とを有する。
【0060】
表示パネル101は、液晶表示パネルである。表示パネル101は、対向する一対の透明基板102、103との間に液晶104を挟持する。離間する透明基板102、103は、シール材107により互いに固定される。透明基板102、103の液晶104を挟持する面にはそれぞれ、液晶104を駆動するための透明電極108が配置されている。また、透明基板102、103の液晶104を挟持する面と反対の面には、それぞれ偏光板105、106が配設されている。透明基板103上に設けられた透明電極108は、シール材107により区画された領域の内部から外の周囲にまで伸びている。そして、駆動IC109が取り付けられている。
【0061】
タッチパネル1の第1電極4および第2電極5が形成された面と、表示パネル101の視認側の面(偏光板105の表面に相当する)とが、UV硬化性樹脂等による接着層(図示されない)を介して重ね合わせられ、タッチパネル機能付き表示装置100が提供される。
【実施例】
【0062】
以下、実施例に従い、本発明のタッチパネルの静電気に対する耐性について説明する。
図1に示す本実施の形態のタッチパネル1と、図9に示す金属製のブリッジ電極206を有するタッチパネル200を準備し、静電破壊検査を行った。
【0063】
準備したタッチパネル1は、0.55mm厚のガラス基板からなる。縦4cm×横4cmの操作面を有し、膜厚20nmのITOからなる第1電極4と第2電極5とをそれぞれ4列ずつ有している。層間絶縁膜3は、感光性のアクリル樹脂をフォトリソグラフィー技術によってパターニングしたものである。ブリッジ電極6は、引き出し配線17と同様、ガラス基板側からNb含有のMo層とNd含有のAl層とNb含有のMo層とを順次積層した3層構造の金属膜から構成されたものである。タッチパネル200もブリッジ電極206の形状が異なる以外同様の構成を有している。
【0064】
検査は、静電気をエミュレート(模倣)した高電圧をタッチパネル1とタッチパネル200に印加し、静電気耐性を試験した。
静電破壊検査の方法は、ヒューマンボディモデル(人体帯電モデル)法(容量成分:100pF、抵抗成分:1.5kΩ)による。ヒューマンボディモデル(人体帯電モデル)法は、帯電した人体が検査対象に触れることが原因で静電破壊することをエミュレートする検査方法である。
【0065】
測定装置には、Noisenken社製のESS−2000型帯電装置を使用し、金属板上に厚さ50mmの絶縁体を置き、その上で試験を行った。測定ガン先形状は剣先タイプとし、温度25℃で湿度53〜56%の条件の下、印加する高電圧を5kV、10kVおよび15kVの3レベルとし、各条件2サンプルずつの試験を行った。
【0066】
以上の静電破壊試験の結果、本実施の形態のタッチパネル1では、15kVの高電圧が印加されても、第1電極4とブリッジ電極6の接続部11との間の断線等は発生せず、何ら不具合は生じなかった。
【0067】
一方、図9に示す金属製のブリッジ電極206を有するタッチパネル200では、5kVおよび10kV印加の試験では不具合の発生はなかったものの、15kV印加試験ではブリッジ電極206と第1電極204との間に断線が生じた。
以上の試験結果から、本実施の形態のタッチパネル1は、静電気の印加による大電流に対し、高い耐性を有することがわかった。
【0068】
尚、前記実施の形態では、第1電極および第2電極を形成した後、金属製のブリッジ電極を形成したが、金属製のブリッジ電極を形成した後に、第1電極、第2電極を形成してもよい。この場合、ブリッジ電極の上に層間絶縁膜を配置し、その後に、第1電極、第2電極を形成することとなる。
【符号の説明】
【0069】
1、200 タッチパネル
2、102、103、202 透明基板
3、203 層間絶縁膜
4 第1電極
5 第2電極
6、206 ブリッジ電極
8、208 交差部
9、9a、9b 電極パッド
11、13 接続部
12 ブリッジ部
14、15 側面部分
16 先端角部分
17 引き出し配線
100 タッチパネル機能付き表示装置
101 表示パネル
104 液晶
105、106 偏光板
107 シール材
108 透明電極
109 駆動IC
204 Y電極
205 X電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性の基板と、
前記基板の一方の面で第1の方向に延在する透光性の複数の第1電極と、
前記基板の前記第1電極の在る面で、前記第1の方向と交差する第2の方向に延在する透光性の複数の第2電極とを有し、
前記第1電極と前記第2電極の交差部分では、前記第1電極および前記第2電極のうちの一方の電極は繋がり、他方の電極は途切れており、該途切れた他方の電極同士がブリッジ電極で接続されており、
前記交差部分において、前記ブリッジ電極と前記一方の電極との間に層間絶縁膜が形成される静電容量方式のタッチパネルであって、
前記ブリッジ電極は、金属材料からなり、前記交差部分で途切れた前記他方の電極の部位同士それぞれの位置に配置される接続部と、前記接続部の間を繋ぐブリッジ部とを有し、
前記他方の電極から前記ブリッジ部に流れる電流の方向と垂直な方向の長さが、前記接続部は前記ブリッジ部より長いことを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記接続部は、前記他方の電極から前記ブリッジ部に流れる電流の方向に対して垂直な方向に長軸を有する形状であることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記接続部は、前記他方の電極から前記ブリッジ部に流れる電流の方向と垂直な方向の長さが40μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記ブリッジ電極は、前記交差部分で途切れた前記他方の電極の部位同士それぞれの上に配置される2つの接続部と、前記2つの接続部の間を繋ぐブリッジ部とからなり、
前記2つの接続部はそれぞれ、前記他方の電極から前記ブリッジ部に流れる電流の方向に対して垂直な方向に長軸を有する短冊状の形状を有するとともに、互いに対向する側の側面とは反対の側にある側面の角部分が角R加工されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記交差部分における前記一方の電極上の前記層間絶縁膜と前記他方の電極との間には隙間が形成されており、前記層間絶縁膜上に形成された前記ブリッジ電極は、当該隙間を通じて、前記基板と接着することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−79134(P2012−79134A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224404(P2010−224404)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】