タッチパネル
【課題】最大タッチ点数を多く設定しても、一定時間でタッチ検出が完了するタッチパネルを提供する。
【解決手段】X電極とY電極の各交点毎の電極間容量値に基づき、複数の座標計算アルゴリズムの中の一つを選択して、タッチパネルのタッチ位置の座標を演算する制御部を有し、前記制御部は、記憶部に格納された各交点毎の電極間容量値に基づき、タッチパネルのタッチ点を検出し、当該検出した各タッチ点の仮座標を求める手段1と、優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算したときの演算時間が、所定の時間内に処理を完了するように、各タッチ点の状態に基づき、各タッチ点の間で高い座標精度を得るための優先順位を各タッチ点毎に決定する手段2と、前記手段2で決定した優先順位に基づき、当該優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算する手段3とを有する。
【解決手段】X電極とY電極の各交点毎の電極間容量値に基づき、複数の座標計算アルゴリズムの中の一つを選択して、タッチパネルのタッチ位置の座標を演算する制御部を有し、前記制御部は、記憶部に格納された各交点毎の電極間容量値に基づき、タッチパネルのタッチ点を検出し、当該検出した各タッチ点の仮座標を求める手段1と、優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算したときの演算時間が、所定の時間内に処理を完了するように、各タッチ点の状態に基づき、各タッチ点の間で高い座標精度を得るための優先順位を各タッチ点毎に決定する手段2と、前記手段2で決定した優先順位に基づき、当該優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算する手段3とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに係わり、特に、一定時間でタッチ検出を完了するタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示画面に使用者の指またはペンなどを用いてタッチ操作(接触押圧操作、以下、単にタッチと称する)して情報を入力する装置(以下、タッチセンサ又はタッチパネルとも称する)を備えた表示装置は、PDAや携帯端末などのモバイル用電子機器、各種の家電製品、現金自動預け払い機(Automated Teller Machine)等に用いられている。このようなタッチパネルとして、タッチされた部分の抵抗値変化を検出する抵抗膜方式、あるいは容量変化を検出する静電容量方式、または光量変化を検出する光センサ方式などが知られている。
静電容量方式のタッチパネルとしては、例えば、縦横二次元マトリクス状に配置した検出用縦方向の電極(X電極)と検出用横方向の電極(Y電極)とを設け、入力処理部で各電極の容量を検出する。タッチパネルの表面に指などの導体が接触した場合には、各電極の容量が増加するため、入力処理部でこれを検知し、各電極が検知した容量変化の信号を基に入力座標(タッチ点)を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−287376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のタッチパネルでは、タッチ点数に比例してタッチ検出時間が増加する問題があった。
そのため、同時に多数のタッチが行われた場合でもタッチ検出を所定の時間内に完了させるために、最大タッチ点数を少なく設定(2〜4点程度)する必要があった。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、最大タッチ点数を多く設定しても、一定時間でタッチ検出が完了するタッチパネルを提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)複数のX電極と、複数のY電極と、前記複数のX電極と前記複数のY電極のそれぞれの交点の電極間容量を測定する測定部と、前記複数のX電極と前記複数のY電極のそれぞれの交点毎の電極間容量値を格納する記憶部と、得られる座標精度がそれぞれ異なる複数の座標計算アルゴリズムを有し、前記複数の座標計算アルゴリズムの中の一つを選択して、前記記憶部に格納された各交点毎の電極間容量値に基づき、タッチパネルのタッチ位置の座標を演算する制御部とを有するタッチパネルであって、前記制御部は、前記記憶部に格納された各交点毎の電極間容量値に基づき、タッチパネルのタッチ点を検出し、当該検出した各タッチ点の仮座標を求める手段1と、前記各タッチ点の状態に基づき、各タッチ点の間で高い座標精度を得るための優先順位を各タッチ点毎に決定する手段2と、前記手段2で決定した優先順位に基づき、当該優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算するときの演算時間を求める手段3と、前記手段3で求めた演算時間が、規定の時間内か否かを判断する手段4と、前記手段4において、前記手段3で求めた演算時間が規定の時間内でないと判断された場合に、前記手段2と前記手段3とを再度実行させる手段5と、前記手段4において、前記手段3で求めた演算時間が、規定の時間内であると判断された場合に、前記手段2で決定した優先順位に基づき、当該優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算する手段6とを有する。
【0006】
(2)(1)において、前記記憶部は、座標計算アルゴリズムの一覧と、各座標計算アルゴリズムを用いて計算を行った場合の所要時間と、得られる座標精度とが格納されているアルゴリズム情報を有し、前記制御部の前記手段3は、前記アルゴリズム情報を参照して、優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択し、各タッチ点の座標を計算したときの演算時間を求める。
(3)(1)において、前記記憶部は、同時に複数のタッチが行われた場合に座標を求めるタッチ点の総数である最大タッチ点数と、タッチ検出処理において許容される座標計算時間とが格納されているタッチ検出設定を有し、前記制御部の前記手段1は、検出したタッチ点の総数が、前記タッチ検出設定の前記最大タッチ点数を越える場合に、前記タッチ点の検出を中止し、前記制御部の前記手段4は、前記規定の時間として、前記タッチ検出設定の前記座標計算時間を用いる。
(4)(3)において、前記タッチ検出設定の前記最大タッチ点数および前記座標計算時間は、前記タッチパネルの外部から設定可能である。
(5)(1)において、前記記憶部は、タッチパネル上の特定の領域と、前記特定の領域の座標精度とが格納されている領域設定を有し、前記制御部の前記手段2は、前記領域設定の前記特定の領域内のタッチ点の優先順位として、前記特定の領域の座標精度に対応する優先順位を決定する。
(6)(5)において、前記領域設定の前記特定の領域および前記特定の領域の座標精度は、前記タッチパネルの外部から設定可能である。
【0007】
(7)(1)において、前記制御部の前記手段2は、始めに、各タッチ点に対して、最も高い座標精度を得るための優先順位を決定し、前記手段4での判断結果に基づき、各タッチ点毎の優先順位を再度決定する場合に、特定のタッチ点に高い優先度を与え、それ以外のタッチ点に低い優先度を与える。
(8)(7)において、前記制御部の前記手段2は、前記手段4での判断結果に基づき、各タッチ点毎の優先順位を再度決定する場合に、移動速度の遅いタッチ点に高い優先度を与え、移動速度の速いタッチ点に低い優先度を与える。
(9)(1)において、前記記憶部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の仮座標と、要求座標精度と、優先度と、座標計算アルゴリズムとが格納されているタッチ点管理表を有し、前記タッチ点管理表の各項目には、前記制御部の前記手段1、および前記手段2で得られた値が格納される。
(10)(1)において、前記記憶部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の座標と、座標精度とが格納されているタッチ検出結果を有し、前記タッチ検出結果の各項目には、前記制御部の前記手段1、および前記手段6で得られた値が格納される。
(11)(1)において、前記制御部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の座標と、座標精度とを、外部に通知する。
【発明の効果】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、最大タッチ点数を多く設定しても、一定時間でタッチ検出が完了するタッチパネルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例のタッチパネルの全体概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す信号値の構成と値の一例を示す図である。
【図3】図1に示すアルゴリズム情報の項目と値の一例を示す図である。
【図4】図1に示すタッチ検出設定の項目と値の一例を示す図である。
【図5】図1に示す領域設定の項目と値の一例を示す図である。
【図6】図1に示すタッチ点管理表の項目を示す図である。
【図7】本発明の実施例のタッチパネルのタッチ検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例のタッチパネルにおいて、信号値と検出されたタッチ点の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施例のタッチパネルにおいて、1つ前および現在のサイクルにおけるタッチ点の一例を示す図である。
【図10】図7のステップS2におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
【図11】図7のステップS3におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
【図12】図7のステップS4におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
【図13】図7のステップS5におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施例のタッチパネルにおいて、タッチ検出結果の項目と値の一例を示す図である。
【図15】本発明の実施例のタッチパネルにおいて、タッチ検出結果の内容をホストへ送信する際の通信プロトコルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施例は、本発明の特許請求の範囲の解釈を限定するためのものではない。
[実施例]
図1は、本発明の実施例のタッチパネルの全体概略構成を示すブロック図である。
本実施例のタッチパネルは、タッチパネル1、容量検出部2、制御部3、記憶部4、およびバス接続信号線5から構成される。
タッチパネル1には、ユーザのタッチを検出するためのセンサ端子である電極パターン(X1〜X5のX電極、およびY1〜Y5のY電極)が形成されている。
容量検出部2は、X1〜X5のX電極と、Y1〜Y5のY電極と接続されている。容量検出部2は、X1〜X5のX電極を送信電極(駆動電極)として順次パルス印加を行い、Y1〜Y5のY電極を受信電極とすることで、各電極交点における電極間容量(相互容量)を測定する。
制御部3は、容量検出部2における、電極交点における電極間容量の測定結果に基づいてタッチ検出を行い、バス接続信号線5を介して、検出結果をホストへ通知する。また、ホストからの指令をバス接続信号線5を介して受信する。ここで、制御部3は、複数の座標計算アルゴリズムを有する。
記憶部4は、制御部3がタッチ検出処理を行う過程で読み書きする作業用データとして信号値41、アルゴリズム情報42、タッチ検出設定43、領域設定44、タッチ点管理表45、およびタッチ検出結果46を格納する。
【0011】
図2は、図1に示す信号値41の構成と値の一例を示す図である。
信号値41は、X電極数を横の要素数、Y電極数を縦の要素数とする二次元配列データである。以下、X電極8本、Y電極12本の構成を例として用いる。
それぞれの信号値は、各電極交点における容量変化量を示すデジタル値である。予め記録しておいた非タッチ時の容量測定値を基準値として、その値からの差分を信号値とする。
すなわち、
信号値=容量測定値−基準値
タッチ時に信号値が正負のどちらに変化するかは容量検出・信号処理の方法による。以下、タッチ時には信号値が正の方向に変化するものとする。
図2において、値が「0」でない箇所は、タッチにより容量変化があったことを示している。
図3は、図1に示すアルゴリズム情報42の項目と値の一例を示す図である。
アルゴリズム情報42には、座標計算アルゴリズムの一覧と、各座標計算アルゴリズムを用いて計算を行った場合の所要時間、および得られる座標精度を格納しておく。これらは座標計算アルゴリズムの設計・評価段階で得られる値である。
一般に、座標計算における所要時間と座標精度はトレードオフの関係にある。座標計算では、複数の信号値を参照し、補間処理によりタッチ中心座標を求める。このとき、より多くの信号値を参照し、より複雑な補間処理を行うほど座標精度は向上するが、所要時間も増加する。
ここでは、参照する信号値の数および使用する補間処理を選択したものを、1つの座標計算アルゴリズムとしている。
【0012】
図4は、図1に示すタッチ検出設定43の項目と値の一例を示す図である。
タッチ検出設定43には、タッチ検出処理の全般に関するパラメータとして、最大タッチ点数と、座標計算時間を格納する。
最大タッチ点数は、同時に複数のタッチが行われた場合に、座標計算の対象とするタッチ点の数である。座標計算時間は、タッチ検出処理において許容する座標計算時間(全タッチ点の総計)を決めるものである。
これらのパラメータは、電源投入時に所定の値(初期値)に設定される。また、ホストからの指令により、いつでも変更可能である。
図5は、図1に示す領域設定44の項目と値の一例を示す図である。
領域設定44には、表示パネル上の特定の領域における座標精度を格納する。
ホストは、タッチパネルが取り付けられた表示パネル上にユーザインタフェースを表示する。ユーザインタフェースの種類により、必要なタッチ座標精度が規定される場合、ホストはその領域と座標精度をタッチパネルに通知する。タッチパネルは、通知されたデータにより領域設定を更新する。
図5(a)は、ユーザインタフェースの一例である。図5(a)では、表示パネルの画面上部をメニュー領域51、画面下部をボタン領域53として、要求するタッチ座標精度を規定している。
画面中央部の通常領域52においては、特にタッチ座標精度を指定していない(=なるべく良い座標精度とする)。ホストはこれらの情報をタッチパネル装置に通知する。その結果、領域設定44には、図5(b)のとおりに設定される。
図6は、図1に示すタッチ点管理表45の項目を示す図である。
タッチ点管理表45は、タッチ検出処理の過程で用いられる作業用データである。
各項目の意味については後述する。
【0013】
図7は、本発明の実施例のタッチパネルのタッチ検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
タッチパネル装置は、図7に示す手順を1サイクルとしてタッチ検出処理を行う。
図8は、本発明の実施例のタッチパネルにおいて、信号値と検出されたタッチ点の一例を示す図である。
図9は、本発明の実施例のタッチパネルにおいて、1つ前および現在のサイクルにおけるタッチ点の一例を示す図である。
図10は、図7のステップS2におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
図11は、図7のステップS3におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
図12は、図7のステップS4におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
図13は、図7のステップS5におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
図14は、本発明の実施例のタッチパネルにおいて、タッチ検出結果の項目と値の一例を示す図である。
図15は、本発明の実施例のタッチパネルにおいて、タッチ検出結果の内容をホストへ送信する際の通信プロトコルを示す図である。
以下、図7のフローチャートに従って、制御部3のタッチ検出処理を説明する。
【0014】
ステップS1;各電極交点における電極間容量(相互容量)を検出する。
X電極を送信電極(駆動電極)として順次パルス印加を行い、Y電極を受信電極とすることで、容量検出部2において、各電極交点における電極間容量(相互容量)を測定する。
容量検出の結果、得られた信号値の一例を図8に示す。図8では、信号値0の箇所は値を省略している。
ステップS2;タッチ点数および各タッチ点の仮座標を算出する。
このステップでは、信号値の配列データを参照し、極大点となるデータ位置を見つけ、タッチ点とみなす。極大点とは、周囲4近傍(上下左右)の値以上の値を持つデータ位置である。なお、極大点が複数ある場合は、その中の一つをタッチ点と見なす。
処理の途中で、タッチ点の数がタッチ検出設定43の最大タッチ点数を超えた場合、タッチ点の検出を打ち切る。
図8の例では、タッチ点1ないしタッチ点3の3つのタッチ点が検出される。各タッチ点に対応する電極交点の中心位置を、仮座標とする。以上の処理の結果を、タッチ点管理表45に格納する(図10参照)。
【0015】
ステップS3;各タッチ点の要求座標精度および優先度を決定する。
このステップでは、領域設定44を参照し、各タッチ点の仮座標に対応する要求座標精度を取得する。
図5の領域設定、および図10のタッチ点管理表によると、タッチ点3の要求座標精度は±5mmとなる。タッチ点1、タッチ点2については指定がないため、要求座標精度は最大限とする。
次に、要求座標精度が最大限であるタッチ点を対象として、優先度を設定する。この優先度は、どのタッチ点を優先して高い座標精度を割り当てるかを決めるものである。
優先度の設定方法には様々な方法が考えられる。ここでは、「移動速度の遅いタッチ点に高い優先度を与える」方法を示す。これは、「速く移動しているタッチ点では座標精度の低下が目立たない」という経験則による。
図9では、同図(a)に、1サイクル前のタッチ点(タッチ検出結果46から得られる)を、同図(b)に、現在のタッチ点(ただしまだ仮座標)を示している。両者を比較することで、各タッチ点の移動速度を概算できる。
この例では、タッチ点1よりもタッチ点2の方が早く移動しているため、タッチ点1に高い優先度を与える。
以上の処理の結果を、タッチ点管理表45に格納する(図11参照)。
次に、アルゴリズム情報42を参照し、各タッチ点の要求座標精度に対応する座標計算アルゴリズムを選択する。
図11のタッチ点管理表45に基づくと、タッチ点3の精度は±5mmであるため、座標計算アルゴリズムはCとなる。タッチ点1、タッチ点2の精度は最大限であるため、まずは最高精度の座標計算アルゴリズムAとする。
以上の結果を、タッチ点管理表45に格納する(図12参照)。
【0016】
ステップS4;座標計算時間が、規定の時間以内か否かを判断する。
このステップでは、アルゴリズム情報42を参照し、座標計算時間の見積もりを行い、見積もった座標計算時間が、タッチ検出設定43の座標計算時間以下であれば、ステップS6へ進む。条件を満たさない場合はステップ5へ進む。
この例では、
座標計算時間=Σ(タッチ点nの座標計算アルゴリズムの所要時間)
=5+5+0
=10ms
上の例では、指定値8msを超えているため、ステップS5へ進む。
ステップS5;タッチ点の座標精度を下げる。
このステップでは、タッチ点管理表45を参照し、1つのタッチ点の座標精度を下げる。すなわち、座標計算アルゴリズムを、より所要時間の短いものに変更する。
対象とするタッチ点としては、要求座標精度が未指定(=最大限)のもののうち、優先度の低いものを選択する。
これまでの例では、タッチ点2が対象となるため、その座標計算アルゴリズムをAからBへ変更する。その結果を、タッチ点管理表45に格納する(図13参照)。
【0017】
ステップS4へ戻り、座標計算時間を再計算すると、今度は8msとなり、条件を満たすこととなる。
座標計算時間=Σ(タッチ点nの座標計算アルゴリズムの所要時間)
=5+3+0
=8ms
もし条件を満たさなかった場合は、再びステップS5にて、順次タッチ点の座標計算アルゴリズムの変更を行う。
なお、タッチ点の座標計算アルゴリズムの変更において、要求座標精度が未指定(=最大限)のもののうち、優先度の低いものを順次選択した後でも、座標計算時間が、タッチ検出設定43の座標計算時間を越える場合は、優先度が高いものについても、所要時間が短い座標計算アルゴリズムに変更する。
それでも、座標計算時間が、タッチ検出設定43の座標計算時間を越える場合は、前述したような方法で、要求座標精度が未指定(=最大限)でないものも含めて、すべてのタッチ点の座標計算アルゴリズムが、所要時間が最も短い座標計算アルゴリズムになるまで、座標計算アルゴリズムを変更する。
【0018】
ステップS6;決定された座標計算アルゴリズムに基づき、各タッチ点の座標計算を行う。
このステップで得られたタッチ座標を、タッチ検出結果46へ格納する(図14参照)。タッチ検出結果46の座標精度の項目には、各タッチ点の座標計算に用いた座標計算アルゴリズムの座標精度を入れる。
タッチ検出結果46の内容を、図15に示す通信プロトコルでホストへ通知する。
本実施例は、タッチ検出結果に座標精度が含まれていることが特徴である。ホストはこの情報を、ユーザインタフェース処理に役立てることができる。
以上説明したように、本実施例では、制限時間内に処理が完了するように座標計算アルゴリズムを選択するため、タッチ点数によらず一定時間でタッチ検出が完了する。
また、本実施例では、座標計算アルゴリズムの選択肢として所要時間が非常に短いものを用意することにより、最大タッチ点数に制限がないものとすることができる。
また、一定周期でタッチ情報を取得できるため、リアルタイム性の高いユーザインタフェースを提供できる。
さらに、最大タッチ点数に限りがないため、多人数プレイのゲーム等のマルチタッチを活用したアプリケーションを実現できる。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0019】
1 タッチパネル
2 容量検出部
3 制御部
4 記憶部
5 バス接続信号線
41 信号値
42 アルゴリズム情報
43 タッチ検出設定
44 領域設定
45 タッチ点管理表
46 タッチ検出結果
X1〜X8 X電極
Y1〜Y12 Y電極
51 メニュー領域
52 通常領域
53 ボタン領域
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパネルに係わり、特に、一定時間でタッチ検出を完了するタッチパネル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
表示画面に使用者の指またはペンなどを用いてタッチ操作(接触押圧操作、以下、単にタッチと称する)して情報を入力する装置(以下、タッチセンサ又はタッチパネルとも称する)を備えた表示装置は、PDAや携帯端末などのモバイル用電子機器、各種の家電製品、現金自動預け払い機(Automated Teller Machine)等に用いられている。このようなタッチパネルとして、タッチされた部分の抵抗値変化を検出する抵抗膜方式、あるいは容量変化を検出する静電容量方式、または光量変化を検出する光センサ方式などが知られている。
静電容量方式のタッチパネルとしては、例えば、縦横二次元マトリクス状に配置した検出用縦方向の電極(X電極)と検出用横方向の電極(Y電極)とを設け、入力処理部で各電極の容量を検出する。タッチパネルの表面に指などの導体が接触した場合には、各電極の容量が増加するため、入力処理部でこれを検知し、各電極が検知した容量変化の信号を基に入力座標(タッチ点)を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−287376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のタッチパネルでは、タッチ点数に比例してタッチ検出時間が増加する問題があった。
そのため、同時に多数のタッチが行われた場合でもタッチ検出を所定の時間内に完了させるために、最大タッチ点数を少なく設定(2〜4点程度)する必要があった。
本発明は、前記従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、最大タッチ点数を多く設定しても、一定時間でタッチ検出が完了するタッチパネルを提供することにある。
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面によって明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記の通りである。
(1)複数のX電極と、複数のY電極と、前記複数のX電極と前記複数のY電極のそれぞれの交点の電極間容量を測定する測定部と、前記複数のX電極と前記複数のY電極のそれぞれの交点毎の電極間容量値を格納する記憶部と、得られる座標精度がそれぞれ異なる複数の座標計算アルゴリズムを有し、前記複数の座標計算アルゴリズムの中の一つを選択して、前記記憶部に格納された各交点毎の電極間容量値に基づき、タッチパネルのタッチ位置の座標を演算する制御部とを有するタッチパネルであって、前記制御部は、前記記憶部に格納された各交点毎の電極間容量値に基づき、タッチパネルのタッチ点を検出し、当該検出した各タッチ点の仮座標を求める手段1と、前記各タッチ点の状態に基づき、各タッチ点の間で高い座標精度を得るための優先順位を各タッチ点毎に決定する手段2と、前記手段2で決定した優先順位に基づき、当該優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算するときの演算時間を求める手段3と、前記手段3で求めた演算時間が、規定の時間内か否かを判断する手段4と、前記手段4において、前記手段3で求めた演算時間が規定の時間内でないと判断された場合に、前記手段2と前記手段3とを再度実行させる手段5と、前記手段4において、前記手段3で求めた演算時間が、規定の時間内であると判断された場合に、前記手段2で決定した優先順位に基づき、当該優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算する手段6とを有する。
【0006】
(2)(1)において、前記記憶部は、座標計算アルゴリズムの一覧と、各座標計算アルゴリズムを用いて計算を行った場合の所要時間と、得られる座標精度とが格納されているアルゴリズム情報を有し、前記制御部の前記手段3は、前記アルゴリズム情報を参照して、優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択し、各タッチ点の座標を計算したときの演算時間を求める。
(3)(1)において、前記記憶部は、同時に複数のタッチが行われた場合に座標を求めるタッチ点の総数である最大タッチ点数と、タッチ検出処理において許容される座標計算時間とが格納されているタッチ検出設定を有し、前記制御部の前記手段1は、検出したタッチ点の総数が、前記タッチ検出設定の前記最大タッチ点数を越える場合に、前記タッチ点の検出を中止し、前記制御部の前記手段4は、前記規定の時間として、前記タッチ検出設定の前記座標計算時間を用いる。
(4)(3)において、前記タッチ検出設定の前記最大タッチ点数および前記座標計算時間は、前記タッチパネルの外部から設定可能である。
(5)(1)において、前記記憶部は、タッチパネル上の特定の領域と、前記特定の領域の座標精度とが格納されている領域設定を有し、前記制御部の前記手段2は、前記領域設定の前記特定の領域内のタッチ点の優先順位として、前記特定の領域の座標精度に対応する優先順位を決定する。
(6)(5)において、前記領域設定の前記特定の領域および前記特定の領域の座標精度は、前記タッチパネルの外部から設定可能である。
【0007】
(7)(1)において、前記制御部の前記手段2は、始めに、各タッチ点に対して、最も高い座標精度を得るための優先順位を決定し、前記手段4での判断結果に基づき、各タッチ点毎の優先順位を再度決定する場合に、特定のタッチ点に高い優先度を与え、それ以外のタッチ点に低い優先度を与える。
(8)(7)において、前記制御部の前記手段2は、前記手段4での判断結果に基づき、各タッチ点毎の優先順位を再度決定する場合に、移動速度の遅いタッチ点に高い優先度を与え、移動速度の速いタッチ点に低い優先度を与える。
(9)(1)において、前記記憶部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の仮座標と、要求座標精度と、優先度と、座標計算アルゴリズムとが格納されているタッチ点管理表を有し、前記タッチ点管理表の各項目には、前記制御部の前記手段1、および前記手段2で得られた値が格納される。
(10)(1)において、前記記憶部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の座標と、座標精度とが格納されているタッチ検出結果を有し、前記タッチ検出結果の各項目には、前記制御部の前記手段1、および前記手段6で得られた値が格納される。
(11)(1)において、前記制御部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の座標と、座標精度とを、外部に通知する。
【発明の効果】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば、下記の通りである。
本発明によれば、最大タッチ点数を多く設定しても、一定時間でタッチ検出が完了するタッチパネルを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例のタッチパネルの全体概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す信号値の構成と値の一例を示す図である。
【図3】図1に示すアルゴリズム情報の項目と値の一例を示す図である。
【図4】図1に示すタッチ検出設定の項目と値の一例を示す図である。
【図5】図1に示す領域設定の項目と値の一例を示す図である。
【図6】図1に示すタッチ点管理表の項目を示す図である。
【図7】本発明の実施例のタッチパネルのタッチ検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例のタッチパネルにおいて、信号値と検出されたタッチ点の一例を示す図である。
【図9】本発明の実施例のタッチパネルにおいて、1つ前および現在のサイクルにおけるタッチ点の一例を示す図である。
【図10】図7のステップS2におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
【図11】図7のステップS3におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
【図12】図7のステップS4におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
【図13】図7のステップS5におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
【図14】本発明の実施例のタッチパネルにおいて、タッチ検出結果の項目と値の一例を示す図である。
【図15】本発明の実施例のタッチパネルにおいて、タッチ検出結果の内容をホストへ送信する際の通信プロトコルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施例は、本発明の特許請求の範囲の解釈を限定するためのものではない。
[実施例]
図1は、本発明の実施例のタッチパネルの全体概略構成を示すブロック図である。
本実施例のタッチパネルは、タッチパネル1、容量検出部2、制御部3、記憶部4、およびバス接続信号線5から構成される。
タッチパネル1には、ユーザのタッチを検出するためのセンサ端子である電極パターン(X1〜X5のX電極、およびY1〜Y5のY電極)が形成されている。
容量検出部2は、X1〜X5のX電極と、Y1〜Y5のY電極と接続されている。容量検出部2は、X1〜X5のX電極を送信電極(駆動電極)として順次パルス印加を行い、Y1〜Y5のY電極を受信電極とすることで、各電極交点における電極間容量(相互容量)を測定する。
制御部3は、容量検出部2における、電極交点における電極間容量の測定結果に基づいてタッチ検出を行い、バス接続信号線5を介して、検出結果をホストへ通知する。また、ホストからの指令をバス接続信号線5を介して受信する。ここで、制御部3は、複数の座標計算アルゴリズムを有する。
記憶部4は、制御部3がタッチ検出処理を行う過程で読み書きする作業用データとして信号値41、アルゴリズム情報42、タッチ検出設定43、領域設定44、タッチ点管理表45、およびタッチ検出結果46を格納する。
【0011】
図2は、図1に示す信号値41の構成と値の一例を示す図である。
信号値41は、X電極数を横の要素数、Y電極数を縦の要素数とする二次元配列データである。以下、X電極8本、Y電極12本の構成を例として用いる。
それぞれの信号値は、各電極交点における容量変化量を示すデジタル値である。予め記録しておいた非タッチ時の容量測定値を基準値として、その値からの差分を信号値とする。
すなわち、
信号値=容量測定値−基準値
タッチ時に信号値が正負のどちらに変化するかは容量検出・信号処理の方法による。以下、タッチ時には信号値が正の方向に変化するものとする。
図2において、値が「0」でない箇所は、タッチにより容量変化があったことを示している。
図3は、図1に示すアルゴリズム情報42の項目と値の一例を示す図である。
アルゴリズム情報42には、座標計算アルゴリズムの一覧と、各座標計算アルゴリズムを用いて計算を行った場合の所要時間、および得られる座標精度を格納しておく。これらは座標計算アルゴリズムの設計・評価段階で得られる値である。
一般に、座標計算における所要時間と座標精度はトレードオフの関係にある。座標計算では、複数の信号値を参照し、補間処理によりタッチ中心座標を求める。このとき、より多くの信号値を参照し、より複雑な補間処理を行うほど座標精度は向上するが、所要時間も増加する。
ここでは、参照する信号値の数および使用する補間処理を選択したものを、1つの座標計算アルゴリズムとしている。
【0012】
図4は、図1に示すタッチ検出設定43の項目と値の一例を示す図である。
タッチ検出設定43には、タッチ検出処理の全般に関するパラメータとして、最大タッチ点数と、座標計算時間を格納する。
最大タッチ点数は、同時に複数のタッチが行われた場合に、座標計算の対象とするタッチ点の数である。座標計算時間は、タッチ検出処理において許容する座標計算時間(全タッチ点の総計)を決めるものである。
これらのパラメータは、電源投入時に所定の値(初期値)に設定される。また、ホストからの指令により、いつでも変更可能である。
図5は、図1に示す領域設定44の項目と値の一例を示す図である。
領域設定44には、表示パネル上の特定の領域における座標精度を格納する。
ホストは、タッチパネルが取り付けられた表示パネル上にユーザインタフェースを表示する。ユーザインタフェースの種類により、必要なタッチ座標精度が規定される場合、ホストはその領域と座標精度をタッチパネルに通知する。タッチパネルは、通知されたデータにより領域設定を更新する。
図5(a)は、ユーザインタフェースの一例である。図5(a)では、表示パネルの画面上部をメニュー領域51、画面下部をボタン領域53として、要求するタッチ座標精度を規定している。
画面中央部の通常領域52においては、特にタッチ座標精度を指定していない(=なるべく良い座標精度とする)。ホストはこれらの情報をタッチパネル装置に通知する。その結果、領域設定44には、図5(b)のとおりに設定される。
図6は、図1に示すタッチ点管理表45の項目を示す図である。
タッチ点管理表45は、タッチ検出処理の過程で用いられる作業用データである。
各項目の意味については後述する。
【0013】
図7は、本発明の実施例のタッチパネルのタッチ検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
タッチパネル装置は、図7に示す手順を1サイクルとしてタッチ検出処理を行う。
図8は、本発明の実施例のタッチパネルにおいて、信号値と検出されたタッチ点の一例を示す図である。
図9は、本発明の実施例のタッチパネルにおいて、1つ前および現在のサイクルにおけるタッチ点の一例を示す図である。
図10は、図7のステップS2におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
図11は、図7のステップS3におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
図12は、図7のステップS4におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
図13は、図7のステップS5におけるタッチ点管理表の一例を示す図である。
図14は、本発明の実施例のタッチパネルにおいて、タッチ検出結果の項目と値の一例を示す図である。
図15は、本発明の実施例のタッチパネルにおいて、タッチ検出結果の内容をホストへ送信する際の通信プロトコルを示す図である。
以下、図7のフローチャートに従って、制御部3のタッチ検出処理を説明する。
【0014】
ステップS1;各電極交点における電極間容量(相互容量)を検出する。
X電極を送信電極(駆動電極)として順次パルス印加を行い、Y電極を受信電極とすることで、容量検出部2において、各電極交点における電極間容量(相互容量)を測定する。
容量検出の結果、得られた信号値の一例を図8に示す。図8では、信号値0の箇所は値を省略している。
ステップS2;タッチ点数および各タッチ点の仮座標を算出する。
このステップでは、信号値の配列データを参照し、極大点となるデータ位置を見つけ、タッチ点とみなす。極大点とは、周囲4近傍(上下左右)の値以上の値を持つデータ位置である。なお、極大点が複数ある場合は、その中の一つをタッチ点と見なす。
処理の途中で、タッチ点の数がタッチ検出設定43の最大タッチ点数を超えた場合、タッチ点の検出を打ち切る。
図8の例では、タッチ点1ないしタッチ点3の3つのタッチ点が検出される。各タッチ点に対応する電極交点の中心位置を、仮座標とする。以上の処理の結果を、タッチ点管理表45に格納する(図10参照)。
【0015】
ステップS3;各タッチ点の要求座標精度および優先度を決定する。
このステップでは、領域設定44を参照し、各タッチ点の仮座標に対応する要求座標精度を取得する。
図5の領域設定、および図10のタッチ点管理表によると、タッチ点3の要求座標精度は±5mmとなる。タッチ点1、タッチ点2については指定がないため、要求座標精度は最大限とする。
次に、要求座標精度が最大限であるタッチ点を対象として、優先度を設定する。この優先度は、どのタッチ点を優先して高い座標精度を割り当てるかを決めるものである。
優先度の設定方法には様々な方法が考えられる。ここでは、「移動速度の遅いタッチ点に高い優先度を与える」方法を示す。これは、「速く移動しているタッチ点では座標精度の低下が目立たない」という経験則による。
図9では、同図(a)に、1サイクル前のタッチ点(タッチ検出結果46から得られる)を、同図(b)に、現在のタッチ点(ただしまだ仮座標)を示している。両者を比較することで、各タッチ点の移動速度を概算できる。
この例では、タッチ点1よりもタッチ点2の方が早く移動しているため、タッチ点1に高い優先度を与える。
以上の処理の結果を、タッチ点管理表45に格納する(図11参照)。
次に、アルゴリズム情報42を参照し、各タッチ点の要求座標精度に対応する座標計算アルゴリズムを選択する。
図11のタッチ点管理表45に基づくと、タッチ点3の精度は±5mmであるため、座標計算アルゴリズムはCとなる。タッチ点1、タッチ点2の精度は最大限であるため、まずは最高精度の座標計算アルゴリズムAとする。
以上の結果を、タッチ点管理表45に格納する(図12参照)。
【0016】
ステップS4;座標計算時間が、規定の時間以内か否かを判断する。
このステップでは、アルゴリズム情報42を参照し、座標計算時間の見積もりを行い、見積もった座標計算時間が、タッチ検出設定43の座標計算時間以下であれば、ステップS6へ進む。条件を満たさない場合はステップ5へ進む。
この例では、
座標計算時間=Σ(タッチ点nの座標計算アルゴリズムの所要時間)
=5+5+0
=10ms
上の例では、指定値8msを超えているため、ステップS5へ進む。
ステップS5;タッチ点の座標精度を下げる。
このステップでは、タッチ点管理表45を参照し、1つのタッチ点の座標精度を下げる。すなわち、座標計算アルゴリズムを、より所要時間の短いものに変更する。
対象とするタッチ点としては、要求座標精度が未指定(=最大限)のもののうち、優先度の低いものを選択する。
これまでの例では、タッチ点2が対象となるため、その座標計算アルゴリズムをAからBへ変更する。その結果を、タッチ点管理表45に格納する(図13参照)。
【0017】
ステップS4へ戻り、座標計算時間を再計算すると、今度は8msとなり、条件を満たすこととなる。
座標計算時間=Σ(タッチ点nの座標計算アルゴリズムの所要時間)
=5+3+0
=8ms
もし条件を満たさなかった場合は、再びステップS5にて、順次タッチ点の座標計算アルゴリズムの変更を行う。
なお、タッチ点の座標計算アルゴリズムの変更において、要求座標精度が未指定(=最大限)のもののうち、優先度の低いものを順次選択した後でも、座標計算時間が、タッチ検出設定43の座標計算時間を越える場合は、優先度が高いものについても、所要時間が短い座標計算アルゴリズムに変更する。
それでも、座標計算時間が、タッチ検出設定43の座標計算時間を越える場合は、前述したような方法で、要求座標精度が未指定(=最大限)でないものも含めて、すべてのタッチ点の座標計算アルゴリズムが、所要時間が最も短い座標計算アルゴリズムになるまで、座標計算アルゴリズムを変更する。
【0018】
ステップS6;決定された座標計算アルゴリズムに基づき、各タッチ点の座標計算を行う。
このステップで得られたタッチ座標を、タッチ検出結果46へ格納する(図14参照)。タッチ検出結果46の座標精度の項目には、各タッチ点の座標計算に用いた座標計算アルゴリズムの座標精度を入れる。
タッチ検出結果46の内容を、図15に示す通信プロトコルでホストへ通知する。
本実施例は、タッチ検出結果に座標精度が含まれていることが特徴である。ホストはこの情報を、ユーザインタフェース処理に役立てることができる。
以上説明したように、本実施例では、制限時間内に処理が完了するように座標計算アルゴリズムを選択するため、タッチ点数によらず一定時間でタッチ検出が完了する。
また、本実施例では、座標計算アルゴリズムの選択肢として所要時間が非常に短いものを用意することにより、最大タッチ点数に制限がないものとすることができる。
また、一定周期でタッチ情報を取得できるため、リアルタイム性の高いユーザインタフェースを提供できる。
さらに、最大タッチ点数に限りがないため、多人数プレイのゲーム等のマルチタッチを活用したアプリケーションを実現できる。
以上、本発明者によってなされた発明を、前記実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0019】
1 タッチパネル
2 容量検出部
3 制御部
4 記憶部
5 バス接続信号線
41 信号値
42 アルゴリズム情報
43 タッチ検出設定
44 領域設定
45 タッチ点管理表
46 タッチ検出結果
X1〜X8 X電極
Y1〜Y12 Y電極
51 メニュー領域
52 通常領域
53 ボタン領域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のX電極と、
複数のY電極と、
前記複数のX電極と前記複数のY電極のそれぞれの交点の電極間容量を測定する測定部と、
前記複数のX電極と前記複数のY電極のそれぞれの交点毎の電極間容量値を格納する記憶部と、
得られる座標精度がそれぞれ異なる複数の座標計算アルゴリズムを有し、前記複数の座標計算アルゴリズムの中の一つを選択して、前記記憶部に格納された各交点毎の電極間容量値に基づき、タッチパネルのタッチ位置の座標を演算する制御部とを有するタッチパネルであって、
前記制御部は、前記記憶部に格納された各交点毎の電極間容量値に基づき、タッチパネルのタッチ点を検出し、当該検出した各タッチ点の仮座標を求める手段1と、
前記各タッチ点の状態に基づき、各タッチ点の間で高い座標精度を得るための優先順位を各タッチ点毎に決定する手段2と、
前記手段2で決定した優先順位に基づき、当該優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算するときの演算時間を求める手段3と、
前記手段3で求めた演算時間が、規定の時間内か否かを判断する手段4と、
前記手段4において、前記手段3で求めた演算時間が規定の時間内でないと判断された場合に、前記手段2と前記手段3とを再度実行させる手段5と、
前記手段4において、前記手段3で求めた演算時間が、規定の時間内であると判断された場合に、前記手段2で決定した優先順位に基づき、当該優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算する手段6とを有することを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記記憶部は、座標計算アルゴリズムの一覧と、各座標計算アルゴリズムを用いて計算を行った場合の所要時間と、得られる座標精度とが格納されているアルゴリズム情報を有し、
前記制御部の前記手段3は、前記アルゴリズム情報を参照して、優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択し、各タッチ点の座標を計算したときの演算時間を求めることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記記憶部は、同時に複数のタッチが行われた場合に座標を求めるタッチ点の総数である最大タッチ点数と、タッチ検出処理において許容される座標計算時間とが格納されているタッチ検出設定を有し、
前記制御部の前記手段1は、検出したタッチ点の総数が、前記タッチ検出設定の前記最大タッチ点数を越える場合に、前記タッチ点の検出を中止し、
前記制御部の前記手段4は、前記規定の時間として、前記タッチ検出設定の前記座標計算時間を用いることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記タッチ検出設定の前記最大タッチ点数および前記座標計算時間は、前記タッチパネルの外部から設定可能であることを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記記憶部は、タッチパネル上の特定の領域と、前記特定の領域の座標精度とが格納されている領域設定を有し、
前記制御部の前記手段2は、前記領域設定の前記特定の領域内のタッチ点の優先順位として、前記特定の領域の座標精度に対応する優先順位を決定することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記領域設定の前記特定の領域および前記特定の領域の座標精度は、前記タッチパネルの外部から設定可能であることを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記制御部の前記手段2は、始めに、各タッチ点に対して、最も高い座標精度を得るための優先順位を決定し、前記手段4での判断結果に基づき、各タッチ点毎の優先順位を再度決定する場合に、特定のタッチ点に高い優先度を与え、それ以外のタッチ点に低い優先度を与えることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記制御部の前記手段2は、前記手段4での判断結果に基づき、各タッチ点毎の優先順位を再度決定する場合に、移動速度の遅いタッチ点に高い優先度を与え、移動速度の速いタッチ点に低い優先度を与えることを特徴とする請求項7に記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記記憶部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の仮座標と、要求座標精度と、優先度と、座標計算アルゴリズムとが格納されているタッチ点管理表を有し、
前記タッチ点管理表の各項目には、前記制御部の前記手段1、および前記手段2で得られた値が格納されることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項10】
前記記憶部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の座標と、座標精度とが格納されているタッチ検出結果を有し、
前記タッチ検出結果の各項目には、前記制御部の前記手段1、および前記手段6で得られた値が格納されることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項11】
前記制御部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の座標と、座標精度とを、外部に通知することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項1】
複数のX電極と、
複数のY電極と、
前記複数のX電極と前記複数のY電極のそれぞれの交点の電極間容量を測定する測定部と、
前記複数のX電極と前記複数のY電極のそれぞれの交点毎の電極間容量値を格納する記憶部と、
得られる座標精度がそれぞれ異なる複数の座標計算アルゴリズムを有し、前記複数の座標計算アルゴリズムの中の一つを選択して、前記記憶部に格納された各交点毎の電極間容量値に基づき、タッチパネルのタッチ位置の座標を演算する制御部とを有するタッチパネルであって、
前記制御部は、前記記憶部に格納された各交点毎の電極間容量値に基づき、タッチパネルのタッチ点を検出し、当該検出した各タッチ点の仮座標を求める手段1と、
前記各タッチ点の状態に基づき、各タッチ点の間で高い座標精度を得るための優先順位を各タッチ点毎に決定する手段2と、
前記手段2で決定した優先順位に基づき、当該優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算するときの演算時間を求める手段3と、
前記手段3で求めた演算時間が、規定の時間内か否かを判断する手段4と、
前記手段4において、前記手段3で求めた演算時間が規定の時間内でないと判断された場合に、前記手段2と前記手段3とを再度実行させる手段5と、
前記手段4において、前記手段3で求めた演算時間が、規定の時間内であると判断された場合に、前記手段2で決定した優先順位に基づき、当該優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択して、各タッチ点の座標を計算する手段6とを有することを特徴とするタッチパネル。
【請求項2】
前記記憶部は、座標計算アルゴリズムの一覧と、各座標計算アルゴリズムを用いて計算を行った場合の所要時間と、得られる座標精度とが格納されているアルゴリズム情報を有し、
前記制御部の前記手段3は、前記アルゴリズム情報を参照して、優先順位に対応する座標計算アルゴリズムを選択し、各タッチ点の座標を計算したときの演算時間を求めることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項3】
前記記憶部は、同時に複数のタッチが行われた場合に座標を求めるタッチ点の総数である最大タッチ点数と、タッチ検出処理において許容される座標計算時間とが格納されているタッチ検出設定を有し、
前記制御部の前記手段1は、検出したタッチ点の総数が、前記タッチ検出設定の前記最大タッチ点数を越える場合に、前記タッチ点の検出を中止し、
前記制御部の前記手段4は、前記規定の時間として、前記タッチ検出設定の前記座標計算時間を用いることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項4】
前記タッチ検出設定の前記最大タッチ点数および前記座標計算時間は、前記タッチパネルの外部から設定可能であることを特徴とする請求項3に記載のタッチパネル。
【請求項5】
前記記憶部は、タッチパネル上の特定の領域と、前記特定の領域の座標精度とが格納されている領域設定を有し、
前記制御部の前記手段2は、前記領域設定の前記特定の領域内のタッチ点の優先順位として、前記特定の領域の座標精度に対応する優先順位を決定することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項6】
前記領域設定の前記特定の領域および前記特定の領域の座標精度は、前記タッチパネルの外部から設定可能であることを特徴とする請求項5に記載のタッチパネル。
【請求項7】
前記制御部の前記手段2は、始めに、各タッチ点に対して、最も高い座標精度を得るための優先順位を決定し、前記手段4での判断結果に基づき、各タッチ点毎の優先順位を再度決定する場合に、特定のタッチ点に高い優先度を与え、それ以外のタッチ点に低い優先度を与えることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項8】
前記制御部の前記手段2は、前記手段4での判断結果に基づき、各タッチ点毎の優先順位を再度決定する場合に、移動速度の遅いタッチ点に高い優先度を与え、移動速度の速いタッチ点に低い優先度を与えることを特徴とする請求項7に記載のタッチパネル。
【請求項9】
前記記憶部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の仮座標と、要求座標精度と、優先度と、座標計算アルゴリズムとが格納されているタッチ点管理表を有し、
前記タッチ点管理表の各項目には、前記制御部の前記手段1、および前記手段2で得られた値が格納されることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項10】
前記記憶部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の座標と、座標精度とが格納されているタッチ検出結果を有し、
前記タッチ検出結果の各項目には、前記制御部の前記手段1、および前記手段6で得られた値が格納されることを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【請求項11】
前記制御部は、前記制御部の前記手段1で検出したタッチ点毎に、タッチ点の座標と、座標精度とを、外部に通知することを特徴とする請求項1に記載のタッチパネル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−29971(P2013−29971A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165355(P2011−165355)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】
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