説明

タッチパネル

【課題】各種電子機器に用いられるタッチパネルに関し、腐食を防ぎ、確実な操作が可能なものを提供することを目的とする。
【解決手段】上電極3の端部3Aまたは下電極6の端部6Aの少なくとも一方に、導電金属製のめっき層13や16を形成することによって、上電極3や下電極6の端部3Aや6Aが、銀や金等の厚い導電金属製のめっき層13や16で覆われ、高温高湿中で使用された場合でも、端部3Aや6Aの腐食を防ぐことができるため、確実で安定した操作が可能なタッチパネルを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いられるタッチパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や電子カメラ等の各種電子機器の高機能化や多様化が進むなか、液晶表示素子等の表示素子の前面に光透過性のタッチパネルを装着し、このタッチパネルを通して背面の表示素子の表示を見ながら、指等でタッチパネルに触れ操作することによって、機器の様々な機能の切換えを行うものが増えており、使い易く確実な操作を行えるものが求められている。
【0003】
このような従来のタッチパネルについて、図3を用いて説明する。
【0004】
なお、この図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0005】
図3は従来のタッチパネルの分解斜視図であり、同図において、1はフィルム状で光透過性の上基板で、上面には酸化インジウム錫等の光透過性で略帯状の、複数の上導電層2が前後方向に配列形成されると共に、この上導電層2の前端または後端に連結され、端部3Aが上基板1の外周右端に延出する銅箔製の複数の上電極3が、上導電層2とは直交方向の左右方向に延出形成されている。
【0006】
また、4は同じくフィルム状で光透過性の下基板で、上面には酸化インジウム錫等の光透過性で略帯状の複数の下導電層5が、上導電層2とは直交方向の左右方向に配列形成されると共に、この下導電層5右端に連結され端部6Aが下基板4の外周右端に延出する、上電極3と同様の複数の下電極6が、下導電層5と平行方向の左右方向に延出形成されている。
【0007】
さらに、7はフィルム状で光透過性のカバー基板で、下基板4上面に上基板1、上基板1上面にカバー基板7が重ねられると共に、これらが各々接着剤(図示せず)等によって貼り合わされて、タッチパネルが構成されている。
【0008】
なお、このようなタッチパネルの上基板1や下基板4は、一般に、上基板1や下基板4上面全面に、酸化インジウム錫と銅箔の薄膜をスパッタ法等によって重ねて形成した後、上導電層2と上電極3、下導電層5と下電極6を形成する箇所をドライフィルム等の絶縁樹脂製の被膜でマスキングし、所定のエッチング液に浸漬して、不要な箇所の酸化インジウム錫と銅を溶融除去して、上面に複数の上導電層2と上電極3、下導電層5と下電極6が形成された上基板1や下基板4が作製される。
【0009】
そして、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、外周右端に延出した複数の上電極3や下電極6の端部3Aや6Aが、フレキシブル配線板やコネクタ(図示せず)等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0010】
以上の構成において、電子回路から複数の上電極3と下電極6へ順次電圧が印加された状態で、タッチパネル背面の表示素子の表示に応じて、カバー基板7上面を指等で触れて操作すると、この操作した箇所の上導電層2と下導電層5の間の静電容量が変化するため、これによって操作された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0011】
つまり、例えば複数のメニュー等が背面の表示素子に表示された状態で、所望のメニュー上のカバー基板7上面に指等を触れると、この指に電荷の一部が導電して、操作した箇所のタッチパネルの上導電層2と下導電層5の間の容量が変化し、これを電子回路が検出することによって、所望のメニューの選択等が行われるように構成されているものであった。
【0012】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−93397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記従来のタッチパネルにおいては、上基板1や下基板4上面に延出形成された銅箔製の複数の上電極3や下電極6は、一般にスパッタ法等によって、厚さが50〜200nm前後の薄膜状に形成されているため、高温高湿中で長期間使用されると、特に接着剤等に覆われていない上電極3や下電極6の端部3Aや6Aに腐食が発生し、抵抗値の増加が生じたり接続が不安定なものになってしまう場合があるという課題があった。
【0015】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、腐食を防ぎ、確実な操作が可能なタッチパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために本発明は、上電極または下電極の少なくとも一方の端部に、導電金属製のめっき層を形成してタッチパネルを構成したものであり、上電極や下電極の端部が銀や金等の厚い導電金属製のめっき層で覆われ、高温高湿中で使用された場合でも、上電極や下電極端部の腐食を防ぐことができるため、確実で安定した操作が可能なタッチパネルを得ることができるという作用を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によれば、腐食を防ぎ、確実な操作が可能なタッチパネルを実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】従来のタッチパネルの分解斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。
【0020】
なお、これらの図面は構成を判り易くするために、部分的に寸法を拡大して表している。
【0021】
また、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0022】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態によるタッチパネルの断面図、図2は同分解斜視図であり、同図において、1はポリエチレンテレフタレートやポリエーテルサルホン、ポリカーボネート等のフィルム状で光透過性の上基板で、この上面には厚さ10〜100nm前後で、酸化インジウム錫や酸化錫等の光透過性で略帯状の複数の上導電層2が、スパッタ法等によって前後方向に配列形成されている。
【0023】
そして、3は上導電層2の前端または後端に連結された上電極で、酸化インジウム錫等の上に蒸着等によって厚さ50〜200nm前後の銅箔が重ねられ、端部3Aが上基板1の外周右端に延出する複数の上電極3が、上導電層2とは直交方向の左右方向に延出形成されている。
【0024】
さらに、この複数の上電極3の端部3Aには、厚さ0.5〜20μm前後で銀や金、銅、ニッケル等の、上電極3の倍以上の厚さの導電金属製のめっき層13が、端部3Aの上面や側面を覆うように形成されている。
【0025】
また、4は同じくフィルム状で光透過性の下基板で、上面には酸化インジウム錫等の光透過性で略帯状の複数の下導電層5が、上導電層2とは直交方向の左右方向に配列形成されると共に、この下導電層5右端に連結され端部6Aが下基板4の外周右端に延出する、上電極3と同様の複数の下電極6が、下導電層5と平行方向の左右方向に延出形成されている。
【0026】
そして、この複数の下電極6の端部6Aにも、めっき層13と同様の導電金属製のめっき層16が、端部6Aの上面や側面を覆うように形成されている。
【0027】
なお、複数の上導電層2と下導電層5は、複数の方形部が帯状に連結されて形成されると共に、これらの間には、略方形の複数の空隙部が設けられ、上基板1と下基板4が積重された状態では、各々の方形部が各々の空隙部に上下で交互に重なるように形成されている。
【0028】
さらに、7はフィルム状で光透過性のカバー基板で、下基板4上面に上基板1、上基板1上面にカバー基板7が重ねられると共に、これらが各々アクリルやゴム等の接着層18によって貼り合わされて、タッチパネルが構成されている。
【0029】
つまり、本実施の形態においては、前後方向に配列形成された複数の上導電層2と、これとは直交方向の左右方向に配列形成された下導電層5が、上基板1やこの下面の接着層18を介して、所定の間隙を空けて対向配置された構成となっている。
【0030】
なお、このようなタッチパネルの上基板1や下基板4を作製するには、先ず、上基板1や下基板4上面全面にスパッタ法等によって、厚さ10〜100nm前後の酸化インジウム錫等の薄膜を形成した後、この上面全面に同じくスパッタ法等によって、厚さ50〜200nm前後の銅箔の薄膜を重ねて形成する。
【0031】
次に、この銅箔の薄膜上面にフォトレジスト法等によって露光・現像して、上電極3や下電極6を形成する箇所をドライフィルム等の絶縁樹脂製の被膜でマスキングした後、上基板1や下基板4を所定のエッチング液に浸漬し、不要な箇所の銅を溶融除去して、酸化インジウム錫等の薄膜上面に、銅箔の複数の上電極3や下電極6を形成する。
【0032】
そして、この後、酸化インジウム錫等の薄膜上面の上導電層2や下導電層5を形成する箇所を、同じくマスキングして所定のエッチング液に浸漬し、不要な箇所の酸化インジウム錫等を溶融除去して、上基板1や下基板4上面に略帯状の複数の上導電層2や下導電層5、及び酸化インジウム錫等の上に銅箔が重ねられた複数の上電極3や下電極6が形成される。
【0033】
さらに、この後、上導電層2や下導電層5の端部3Aや6Aに、電解めっき等によって厚さ0.5〜20μm前後で、銀や金、銅、ニッケル等の導電金属製のめっき層13や16を形成して、端部3Aや6Aの上面や側面がめっき層13や16に覆われた、上基板1や下基板4が製作される。
【0034】
また、この上基板1や下基板4の端部3Aや6Aを除く上面全面に、接着層18を印刷等によって形成すると共に、下基板4上面に上基板1、上基板1上面にカバー基板7を重ね、これらを接着層18によって貼り合わせて、タッチパネルが完成する。
【0035】
そして、このように構成されたタッチパネルが、液晶表示素子等の表示素子の前面に配置されて電子機器に装着されると共に、外周右端に延出した複数の上電極3や下電極6の端部3Aや6Aが、フレキシブル配線板やコネクタ(図示せず)等を介して、機器の電子回路(図示せず)に電気的に接続される。
【0036】
以上の構成において、電子回路から複数の上電極3と下電極6へ順次電圧が印加された状態で、タッチパネル背面の表示素子の表示に応じて、カバー基板7上面を指等で触れて操作すると、この操作した箇所の上導電層2と下導電層5の間の静電容量が変化するため、これによって操作された箇所を電子回路が検出し、機器の様々な機能の切換えが行われる。
【0037】
つまり、例えば複数のメニュー等が背面の表示素子に表示された状態で、所望のメニュー上のカバー基板7上面に指等を触れると、この指に電荷の一部が導電して、操作した箇所のタッチパネルの上導電層2と下導電層5の間の容量が変化し、これを電子回路が検出することによって、所望のメニューの選択等が行われるように構成されている。
【0038】
そして、上基板1や下基板4上面の上電極3や下電極6は、上記のようにスパッタ法等によって、厚さ10〜100nm前後の酸化インジウム錫等の上に、厚さ50〜200nm前後の銅箔が重ねられて、薄膜状に形成されているが、上電極3や下電極6の接着層18に覆われていない端部3Aや6Aには、これらを覆う厚さ0.5〜20μm前後の導電金属製のめっき層13や16が設けられているため、高温高湿中で長期間使用された場合でも、端部3Aや6Aの腐食を防ぐことができるようになっている。
【0039】
すなわち、上電極3や下電極6の接着層18に覆われていない端部3Aや6Aに、上電極3や下電極6の銅箔の厚さの、倍以上の厚さの導電金属製のめっき層13や16を形成し、これによって端部3Aや6Aの上面や側面を覆うことで、高温高湿中で使用された場合でも、湿気や水分による端部3Aや6Aの腐食やこれによる流失を防ぎ、フレキシブル配線板等との安定した接続を保つことが可能なように構成されている。
【0040】
なお、以上の説明では、上電極3と下電極6の端部3Aと6Aの両方に、導電金属製のめっき層13と16を形成した構成について説明したが、いずれか一方にのみ設けた構成としても、本発明の実施は可能である。
【0041】
このように本実施の形態によれば、上電極3の端部3Aまたは下電極6の端部6Aの少なくとも一方に、導電金属製のめっき層13や16を形成することによって、上電極3や下電極6の端部3Aや6Aが、銀や金等の厚い導電金属製のめっき層13や16で覆われ、高温高湿中で使用された場合でも、端部3Aや6Aの腐食を防ぐことができるため、確実で安定した操作が可能なタッチパネルを得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によるタッチパネルは、腐食を防ぎ、確実な操作が可能なものを得ることができるという有利な効果を有し、主に各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 上基板
2 上導電層
3 上電極
3A、6A 端部
4 下基板
5 下導電層
6 下電極
7 カバー基板
13、16 めっき層
18 接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に配列された略帯状で複数の上導電層と、この上導電層に連結され端部が外周に延出する複数の銅箔製の上電極と、上記上導電層と所定の間隙を空けて直交方向に配列された略帯状で複数の下導電層と、この下導電層に連結され端部が外周に延出する複数の銅箔製の下電極からなり、上記上電極または下電極の少なくとも一方の端部に、導電金属製のめっき層を形成したタッチパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−50778(P2013−50778A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187198(P2011−187198)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】