説明

タッチ・パネルを備える電子機器をウェイク・アップする方法および電子機器

【課題】タッチ・スクリーンに対する操作感覚でパワー・ステートを遷移させることができる携帯式電子機器を提供する。
【解決手段】待機状態201ではタッチ・パネルの電力が停止し、加速度センサに出力が供給される。待機状態においてタッチ・パネルに対して行われたタップ操作により生成された振動パターンに応答してタッチ操作待ち状態203に遷移する。タッチ操作待ち状態ではタッチ・パネルに電力が供給される。タッチ操作待ち状態に遷移してから所定の時間内にタッチ・パネルが所定のタッチ操作を検出すると使用状態207に遷移する。待機状態から使用状態にまで機械式のスイッチを使用しないでタップ&タッチ操作だけで遷移させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタッチ・パネルを備える電子機器がウェイク・アップする際の操作性を向上する技術に関し、さらに詳細には待機電力の増大を抑制しながらタッチ・パネルを利用してウェイク・アップする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タブレット・コンピュータ(スレート・コンピュータともいう。)、PDA、または高機能携帯電話(スマートフォン)などの携帯式電子機器では、有機ELや液晶などのディスプレイと指やスタイラス・ペンで入力するタッチ・パネルを備えた設計が主流になりつつある。タッチ・パネルは、透明の電極で形成されディスプレイに重ねて配置されたり、インセル(In-Cell)タッチ・パネルとして液晶パネルに組み込まれたりする。以下、ディスプレイとタッチ・パネルが組み合わせられた複合体をタッチ・スクリーンという。ユーザが、ディスプレイに表示されたオブジェクトにタッチ操作をすると、タッチ・パネルのドライバがタッチされた位置の座標を計算してアプリケーション・プログラム(アプリケーション)やオペレーティング・システム(OS)に通知する。
【0003】
タッチ・スクリーンを備える携帯式電子機器では、一般に文字の入力はディスプレイに表示されたソフトウエア・キーボードから行い、アプリケーションの起動および操作、表示画面の変更、およびデバイスの操作などは画面上のオブジェクトに対するタッチ操作で行う。つまりこのような携帯式電子機器のユーザは、タッチ・スクリーンに対する直感的なタッチ操作に慣れ親しむことになる。
【0004】
ところで、多くの電子機器では、一定の時間ユーザ入力や情報出力の必要がない場合に、不要な消費電力を削減するため、必要のないデバイスの電源を停止ないしは低消費電力モードにする待機状態の設定を採用することが一般的である。待機状態での電力卯削減は、電池で駆動する携帯式電子機器では特に重要な課題である。待機状態においてもユーザ入力を受け取ってウェイク・アップ・イベントを生成させるためのデバイスは常にオンにしておく必要がある。デジタル・カメラには、ユーザがカメラの側面を特定のパターンでたたき、加速度センサにより本体に加えられた軽い衝撃のパターンを検出して操作をするいわゆるタップ・コントロールという手法を採用するものがある。
【0005】
特許文献1は、電子機器を休眠状態から動作状態に移行させるためのウェイク・アップ信号を出力するタッチ入力装置を開示する。このタッチ入力装置は、タッチ・センサ・プレートに複数の振動センサを設けて、タッチ操作が生成する振動センサの出力と閾値を比較して意図的なタッチであると判断したときは電子機器にウェイク・アップ信号を出力する。
【0006】
特許文献2は、省電力モードからの復帰操作を、誤操作を防ぎながらタッチ・センサに対する入力で行う技術を開示する。省電力モードでは、バックライトの電力が停止しアプリケーションが動作してタッチ操作無効化ウインドウが表示される。タッチ操作無効化ウインドウは、省電力モードで行われたタッチ・センサに対するタッチ操作を無効にし、かつ、当該タッチ操作により電源状態を省電力モードから通常モードに復帰させる。通常モードに復帰したあとにタッチ操作無効化ウインドウの表示が消え、タッチ・センサに対するタッチ操作が有効になる。
【0007】
特許文献3は、タッチ・センサおよび加速度センサといった複数のセンサが搭載され、表示出力装置として電子ペーパーが搭載された情報処理装置において、センサ間の連携による電源OFF/ONでの省電力化、および電子ペーパー特性に応じた最適な表示出力制御を行う方法を開示する。情報処理装置は、所定時間加速度センサによる変位がない場合、加速度センサの電源をOFFにする。また、タッチ・センサに変位があった場合には、電源OFFになっている加速度センサの電源をONにすることによって加速度センサの省電力化を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2008−107906号公報
【特許文献2】特開2008−107906号公報
【特許文献3】特開2011−13735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
近年タッチ・スクリーンには、応答速度が速い、あるいはマルチタッチ操作に都合がよいなどの理由で静電容量式のタッチ・パネルが使用されるようになってきた。しかし、静電容量式のタッチ・パネルは比較的消費電力が大きいため、電池の消耗を避けるためには待機状態で動作させることは望ましくない。こういった理由もあって、現在のところ、タッチ・スクリーンを備える携帯式電子機器では、ウェイク・アップさせるためのデバイスとして待機電力を消費しない機械式スイッチを筐体の側面または表面に設けている。
【0010】
しかし、携帯式電子機器ではユーザが筐体を保持する方向に応じて画面が回転して表示されたり、機械式スイッチが小さくて側面に設けている場合は表面方向からは見えにくかったりすることもあって機械式スイッチを探して操作するのが煩わしいという不都合があった。また、ユーザは、タッチ・パネルに対するタッチ操作が身についているためにウェイク・アップもタッチ操作だけで行いたいという希望もあった。
【0011】
タッチ・スクリーンを備える携帯式電子機器では、通常、待機状態から使用状態に遷移する際に、意図しないで復帰スイッチが押下され続いてタッチ・パネルに意図しない入力が行われることを防ぐためなどの目的で、復帰スイッチが操作されたときには画面が一旦ロック解除待ち状態に遷移する。そしてロック解除待ち状態から使用状態に遷移するために、ディスプレイで指示されたタッチ・パネルの所定の位置に対する指のスワイプやその他のタッチ操作が必要となる。
【0012】
このとき、片手で筐体を保持しているときには、復帰スイッチの近辺を保持することになるが、復帰スイッチを操作した手の指でスワイプできない位置にスワイプの要求オブジェクトが表示されることがある。特に、タブレット・コンピュータは比較的画面も大きく、保持した位置から離れている画面上の位置まで指が届かないことがある。さらに、スワイプの方向はあらかじめ決められているため、そのときの筐体の保持の仕方で操作し易い方向にスワイプの要求が行われるとは限らない。
【0013】
1つの解決策として前述のタップ・コントロールのように、タッチ・スクリーンよりも待機時の消費電力が少ない加速度センサを利用して振動によりウェイク・アップさせる方法が考えられる。しかし加速度センサが検出した振動だけで、ウェイク・アップを意図する加速度信号とそれ以外のノイズとなる加速度信号を識別することは容易ではない。たとえば、振動の振幅に対する閾値を下げるとノイズにより頻繁にウェイク・アップすることになり、また閾値を上げるとウェイク・アップを意図する振動を生成するために強い振動を与える必要があったり検出できなかったりすることになる。あるいは、モールス信号のような複雑な振動パターンを要求すると操作が機械式スイッチよりも煩わしくなる。
【0014】
特許文献1の方法でも同様に意図的なタッチ操作による振動をノイズから識別することは容易ではなく、精度を向上するには多くの加速度センサを設けたり複雑なパターン認識技術を導入したりする必要がある。特許文献2の方法では、省電力モードでタッチ・センサ、アプリケーションを動作させるためのプロセッサおよびメイン・メモリなどに電力を供給する必要がある。したがって、特許文献2の方法は、省電力モードでの待機電力を十分に低減できない。特許文献3の方法は、タッチ・センサと加速度センサの連携によって一方のデバイスを停止させるものであるが、ウェイク・アップのために加速度センサとタッチ・センサに連携動作をさせることまでは教示していない。
【0015】
そこで本発明の目的は、簡単な操作でウェイク・アップさせることができる電子機器を提供することにある。さらに本発明の目的は、待機電力の増大を抑制しながらウェイク・アップさせることができる電子機器を提供することにある。さらに本発明の目的は、タッチ・パネルに対する操作だけでウェイク・アップさせることができる電子機器を提供することにある。さらに本発明の目的は、そのような電子機器に適用するウェイク・アップの方法およびパワー・ステートを遷移させる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、タッチ・パネルを備える電子機器のパワー・ステートをタップ&タッチ操作で遷移させる方法を提供する。電子機器は、筐体の振動を検出する振動センサとディスプレイとタッチ・パネルを備える。待機状態においては、タッチ・パネルに供給する電力を停止する。電子機器は、待機状態において振動センサが検出した振動データから生成された所定の振動パターンに応答して第1のウェイク・アップ信号を出力する。電子機器は、第1のウェイク・アップ信号に応答してタッチ・パネルに電力を供給し使用状態より消費電力の少ないタッチ操作待ち状態に遷移する。電子機器は、タッチ操作待ち状態に遷移してから所定の時間内にタッチ・パネルに対して行われた所定のタッチ操作に応答して第2のウェイク・アップ信号を出力する。電子機器は、第2のウェイク・アップ信号に応答して使用状態に遷移する。
【0017】
振動センサは、筐体の振動を直接検出する加速度センサまたは筐体の振動を音響を通じて検出することができる音響センサとすることができる。所定の振動パターンは、タッチ・パネルに対して指で行われるタップ操作により生成することができる。ここにタップ操作とは、タッチ・パネルを軽く叩いて筐体を振動させる操作をいう。タップ操作は、タッチ・パネルを叩くように指を接触させてディスプレイに表示されたアイコンを指示する際にも行われるので、ユーザは振動を生じさせるタップ操作もこれに似たような感覚で行うことができる。
【0018】
ユーザは、機械式スイッチの位置を探したり操作したりする煩わしさから解放され、慣れ親しんだタッチ操作の感覚で待機状態から使用状態に遷移させることができる。待機状態では、比較的消費電力の小さい振動センサには電力を供給するが、消費電力の大きいタッチ・パネルの電力は停止するので、タップ&タッチ操作を利用するために必要な待機電力は小さい。所定の振動パターンは、振動データの振幅を2値化したパルス信号の時間軸上のパターンとすることができる。
【0019】
所定のタップ操作または所定のタッチ操作のいずれかだけでウェイク・アップをさせる場合には、意図しない遷移を防ぐために各操作にノイズから区別できるような厳格な情報を組み込んだり、強い振動や複雑な操作を要求したりする必要があり、それは、操作性の低下につながる。本発明では電子機器が、一連の所定のタップ操作と所定のタッチ操作であるタップ&タッチ操作で意図するウェイク・アップ・イベントが生成したことを認識するので、タップ操作またはタッチ操作のそれぞれを簡単な操作にすることができる。
【0020】
2値化してパルス信号を生成して所定の振動パターンを生成したり、振動パターンを登録された振動パターンと比較したりすることは消費電力の小さいハードウエア回路で行うことができるので、振動パターンを認識するために消費電力の大きいプロセッサを動作させる必要はない。所定の振動パターンは、複数のパルス信号間の時間または所定の時間内におけるパルス信号の数などで特定することができる。
【0021】
所定のタッチ操作を、タッチ・スクリーンに最後にタップ操作をした指がスワイプしたときの座標パターンで特定するように構成すれば、タップ&タッチ操作を短時間で行ってウェイク・アップさせることができる。また、タップ操作からタッチ操作に遷移する際に指をディスプレイの指示に従って移動させる必要がないので操作し易くなる。スワイプは、3個以上の特徴点の座標を備えるジェスチャが形成する座標パターンとすることができる。
【0022】
スワイプは、タッチ・パネルの4隅のような特定の座標領域で終了したときの座標パターンで特定されるようにしてもよい。さらに所定のタッチ操作は、所定の座標領域を示す座標パターンで特定されるようにしてもよい。この場合、タップ操作は当該所定の座標領域で行われてもよい。タッチ操作待ち状態において短い所定の時間内に所定のタッチ操作がない場合に、待機状態に遷移させることができる。したがって、意図しない振動を検出してタッチ操作待ち状態に遷移したときには短時間で待機状態に戻すことができるので、消費電力の増大を防ぐことができる。
【0023】
タッチ操作待ち状態でディスプレイに電力を供給し、タッチ操作を促すプロンプト画面を表示するようにしてもよい。このときディスプレイの輝度は使用状態よりも低くすることが望ましい。パスコードが設定されている場合は、第2のウェイク・アップ信号に応答してディスプレイに電力を供給しタッチ操作待ち状態からパスコード入力待ち状態に遷移するようにしてもよい。この場合、パスコードが認証されたときに使用状態に遷移することになる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、簡単な操作でウェイク・アップさせることができる電子機器を提供することができた。さらに本発明により、待機電力の増大を抑制しながらウェイク・アップさせることができる電子機器を提供することができた。さらに本発明により、タッチ・パネルに対する操作だけでウェイク・アップさせることができる電子機器を提供することができた。さらに本発明により、そのような電子機器に適用するウェイク・アップの方法およびパワー・ステートを遷移させる方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用したスマートフォンの外形を示す平面図である。
【図2】スマートフォンの概略の構成を示す機能ブロック図である。
【図3】スマートフォンのパワー・ステートを示す状態遷移図である。
【図4】スマートフォンをタップ&タッチ操作でウェイク・アップさせる手順を説明するフローチャートである。
【図5】加速度センサが検出した振動データから2値化した振動パターンを生成する様子を説明する図である。
【図6】第1のウェイク・アップ信号を生成する有効なタップ操作の例を説明する図である。
【図7】第2のウェイク・アップ信号を生成する有効なタッチ操作の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[携帯式電子機器の構成]
図1は、本発明を適用したスマートフォンの外形を示す平面図である。スマートフォンは、タッチ・スクリーンを搭載するタブレット・コンピュータ、PDA、携帯電話、または携帯式ゲーム機器などの携帯式電子機器の一例である。スマートフォン100は、筐体の外側からアクセスできる位置にタッチ・スクリーン101および機械式スイッチ103を含む。さらに、図示しないUSBポート、ヘッドフォン・ジャック、およびボリューム・スイッチなどを含む。図1(A)は、パワー・ステートが使用状態(システム・オン状態)に遷移した状態で、タッチ・スクリーン101にはデスクトップ画面に複数のアイコンが表示されている。図1(B)は待機状態(スタンバイ状態)に遷移した状態で、タッチ・スクリーン101はバックライトが消えて動作が停止している。
【0027】
図2は、スマートフォン100の概略の構成を示す機能ブロック図である。図2に示すブロック図は、スマートフォンの概略の構成を示しており、実際にはカメラやリムーバル・メディアなどのさらに多くの機能を含んでいる場合がある。また、これらの機能のいくつかを1つの半導体チップに統合したり個別の半導体チップに分割したりすることができる。I/Oインターフェース113には、CPU111、ディスプレイ115、およびメイン・メモリ117が接続されている。I/Oインターフェース113は、ディスプレイ115を含む周辺装置、CPU111およびメイン・メモリ117の相互間のデータ転送を制御する。
【0028】
ディスプレイ115は、非発光型の液晶表示装置(LCD)で構成され、LEDで製作したバックライトを含む。バックライトの輝度はLEDの電流を制御して調整できるようになっている。メイン・メモリ117は、CPU111が実行するプログラムを記憶する揮発性のメモリである。無線回路119は、電話通信、データ通信、およびGPS信号の受信などのために内部の電気信号と外部の電波信号を変換するインターフェースを提供する。オーディ回路121は、マイクロフォン/スピーカ123に対するインターフェースを提供する。オーディ回路121はさらに、図示しないヘッドフォン・ジャックを含む。
【0029】
フラッシュ・メモリ125は、CPU111が実行するプログラムおよびデータを格納する不揮発性のメモリである。本実施の形態では、タッチ・パネル・コントローラ127から受け取った座標情報から有効なタッチ操作があったか否かを認識するためにCPU111が実行するウェイク・アップ・プログラムは、フラッシュ・メモリ125に格納されている。タッチ・パネル129は指またはスタイラス・ペンによる接触または接近(以後、この操作をタッチ操作という。)により指示された位置の座標を検知する透明のパネルで、ディスプレイ115の表面に配置されている。
【0030】
本実施の形態では、タッチ・パネル129の原理に静電容量式、抵抗膜式、または電磁誘導式などを採用することができる。静電容量式のタッチ・パネルはマルチタッチ操作に適用しやすくかつ応答速度が速いなどの利点があるが消費電力が大きいという欠点がある。本実施の形態では、一連のタップ操作とタッチ操作によりウェイク・アップさせるために、使用状態以外のパワー・ステートでタッチ・パネル129とタッチ・パネル・コントローラ127に電力を供給する時間を最小限に留めることができるので、操作性に優れた静電容量式のタッチ・パネルを採用することが望ましい。ディスプレイ115とタッチ・パネル129の複合体は、タッチ・スクリーン101(図1)を構成する。
【0031】
タッチ・パネル・コントローラ127は、タッチ操作により指示されたタッチ・パネル129上の座標情報を生成してシステムに送る。この場合のシステムは主としてCPU111、メイン・メモリ117およびCPU111が実行するウェイク・アップ・プログラムで構成される。システムは、タッチ・パネル・コントローラ127から受け取った座標情報から認識したタッチ操作の始点座標、中間座標、および終点座標またはそれらのいずれかに基づいて座標パターンを生成し、あらかじめ設定された座標パターンと比較して合致したときにパワー・マネジメント・ユニット(PMU)135に第2のウェイク・アップ信号を出力する。
【0032】
加速度センサ133は、スマートフォン100の筐体に発生した振動から加速度を検出してアナログの加速度データをタップ検出回路131に出力する。加速度センサ133は、直交する3つの検出軸(X軸、Y軸、Z軸)を備えており、各検出軸は重力加速度の分力成分およびスマートフォン100の筐体に加えられた衝撃による加速度を検出して出力する。本実施の形態で必要な振動パターンを生成する加速度センサの他の例では、検出軸を1軸または2軸とすることもできる。
【0033】
加速度センサ133の出力は、スマートフォン100のパワー・ステートが待機状態のときはタップ検出回路131で処理され、使用状態のときはタップ検出回路131を通過してシステムで処理される。本実施の形態では、タップ操作を認識する加速度センサと画面の表示方向を設定するための加速度センサを共用する。ただし、タップ操作のための専用の加速度センサを設けることもできる。使用状態でCPU111は加速度データを処理するプログラムを実行し、各検出軸が検出した重力加速度の分力成分から各検出軸の重力方向に対する傾斜角度を計算する。CPU111は、各検出軸の傾斜角度に基づいてタッチ・スクリーン101の上下方向を判断し、ディスプレイ115に表示される画面の方向を変更する。
【0034】
待機状態でタップ検出回路131は、本実施の形態にかかるウェイク・アップのための意図的なタップ操作が行われたことを検知したときはPMU135に第1のウェイク・アップ信号を出力する。ここに本実施の形態におけるタップ操作とは、スマートフォン100の筐体またはタッチ・パネル129を指で軽く叩いて振動を与える操作をいい、さらにはタッチ・パネルの動作が停止している間に筐体に振動を与える操作をいう。
【0035】
タップ検出回路131は、加速度センサ133から受け取ったアナログの加速度データから振動パターンを生成しあらかじめ設定された振動パターンと比較して合致したときにPMU135に第1のウェイク・アップ信号を出力する。タップ検出回路131は、スマートフォン100が待機状態201のときに動作して加速度センサ129の信号を処理する必要があるので、演算増幅器、論理回路、タイマなどを含む消費電力の少ないハードウエア回路で構成することが望ましい。他の例ではタップ検出回路131を低消費電力のプロセッサで構成することもできる。
【0036】
PMU135には、機械式スイッチ103、USBポート137、および充電式の電池139が接続されている。PMU135は、電池139を充電する充電器、パワー・ステートに応じて各デバイスまたは半導体チップの所定の機能ブロックへの電力供給を制御する電力制御回路、およびUSBインターフェース回路などを含む。機械式スイッチ103は、ユーザがスマートフォン100のパワー・ステートを変更する際に目的に応じて長時間または短時間押下される。USBポート137は、ホスト・コンピュータまたは外部充電アダプタに接続するために使用する。
【0037】
図3は、スマートフォン100のパワー・ステートを示す状態遷移図である。待機状態201は、電話呼び出し(発呼)の受信だけが可能でタッチ・スクリーン101からの入力を受け付けない状態である。待機状態201のときに所定のタップ操作が行われると、タッチ操作待ち状態203に遷移する。また、発呼があると使用状態207に遷移する。待機状態201は、停止状態209を除いて最も消費電力が小さい状態である。
【0038】
待機状態201では少なくともパワー・ステートを遷移させるために必要なPMU135の一部の機能ブロック、タップ検出回路131、加速度センサ133および無線回路119のなかで電話の発呼をPMU135に通知する機能ブロックに電力が供給される。したがって待機状態201では、CPU111、ディスプレイ115、タッチ・パネル129、およびタッチ・パネル・コントローラ127の電力は停止する。
【0039】
待機状態201では、ディスプレイ115のバックライトは完全に消えて画面は暗くなっている。また、使用状態207のときのCPU111およびメイン・メモリ117のコンテキストは、待機状態201に遷移する際にOSによりフラッシュ・メモリ125に記憶されている。したがって、待機状態201からタッチ操作待ち状態203へは短時間で復帰することができる。
【0040】
タッチ操作待ち状態203は、タップ操作とタッチ操作でウェイク・アップさせる際に、待機状態201での待機電力の増大を抑制しかつ意図しない擬似的なタップ操作とタッチ操作でウェイク・アップすることを防ぐために設けた使用状態207より消費電力の小さい中間状態である。以後、ウェイク・アップを目的とする一連のタップ操作とタッチ操作をタップ&タッチ操作ということにする。ここに一連とは、タップ操作の開始からタッチ操作の終了まで所定の短い時間の間に終了することを意味する。あるいは、一連とはユーザの自然な速度においてタップ操作からタッチ操作に連続した操作で移行していくことを意味する。
【0041】
タッチ操作待ち状態203では、待機状態201のときに電力が供給されるデバイスに加えて、タッチ・パネル129、タッチ・パネル・コントローラ127およびCPU111に電力が供給される。他の例ではタッチ操作待ち状態203でタッチ操作を促すプロンプト画面を表示するためにディスプレイ115に電力を供給してもよい。タッチ操作待ち状態203におけるCPU111は所定のタッチ操作があったことを判断してPMU135に通知するためだけに動作するので、他の例ではそのような処理をする専用のデバイスを設けてCPU111の電力を停止しておくこともできる。
【0042】
タッチ操作待ち状態に遷移してから所定の時間内にタッチ・パネル129に所定のタッチ操作が行われたときは使用状態207に遷移し、所定の時間内に所定のタッチ操作が行われないときは待機状態201に戻る。パスコードが設定されているときは、タッチ操作待ち状態に遷移してから所定の時間内の所定のタッチ操作により使用状態207に代えてパスコード入力待ち状態205に遷移する。従来のスマートフォンでは、パスコードが設定された待機状態のときに機械式スイッチを操作するとディスプレイが動作してロック解除を促す画面が表示されていた(ロック解除待ち状態)。
【0043】
そして、タッチ操作によりロック解除をするとパスコード入力を促すパスコード入力待ち状態に遷移した。ここに、ロック解除待ち状態は、誤って機械式スイッチが動作して使用状態に遷移することを防止する役割も果たしていた。タッチ操作待ち状態203を新たに定義すると、従来のロック解除待ち状態を設ける必要がなくなる。タッチ操作待ち状態203は少なくとも、タップ操作で遷移することとディスプレイを動作させる必要がない点で従来のロック解除待ち状態とは異なっている。
【0044】
パスコード入力待ち状態205では、ディスプレイ115にパスコード入力画面が表示される。パスコード入力待ち状態205に遷移してからディスプレイ115に表示されたパスコード入力のプロンプト画面に従って所定の時間内にユーザが正しいパスコードを入力すると使用状態207に遷移し、所定時間内に入力しないときまたは機械式スイッチ103を短時間押下したときは待機状態201に遷移する。パスコード入力待ち状態205で電力が供給されるデバイスは、タッチ操作待ち状態203で電力が供給されるデバイスと同じであるが、ディスプレイ115には必ず電力を供給する必要があり、多くの場合パスコードを認識するためにCPU111にも電力を供給する必要がある。
【0045】
使用状態207はスマートフォン100のすべてのデバイスに電力が供給されすべての機能を利用できる状態である。使用状態207のときに所定の時間の間タッチ・パネル129に入力がない場合および機械式スイッチ103が短時間押下された場合は待機状態201に遷移する。また、機械式スイッチ103が長時間押下されたときは停止状態(パワー・オフ状態)209に遷移する。停止状態209は、時計回路を除くほとんどすべてのデバイスの電力が停止し、機械式スイッチ103が長時間押下されたときまたはUSBポート137にUSBケーブルが接続されたときに、使用状態207またはパスワード入力待ち状態205に遷移する。
【0046】
〔ウェイク・アップの手順〕
図4は、スマートフォン100をタップ&タッチ操作でウェイク・アップさせる手順を説明するフローチャートである。ブロック301ではスマートフォン100が使用状態207で動作し、タッチ・スクリーン101に対して所定の時間入力がないか、スイッチ103の短時間の押下によりブロック303で待機状態201に遷移する。このとき、CPU111およびメイン・メモリ117のコンテキストはフラッシュ・メモリ125に記憶される。
【0047】
ブロック305では、ユーザは指でタッチ・スクリーン101に対してタップ操作をして筐体に振動を与える。筐体に振動を与えるためには筐体の裏側にタップ操作をしたり筐体を机に軽くぶつけたりしてもよいが、タッチ・スクリーン101に対するタップ操作は、タッチ・パネル129に入力するときに行うタッチ操作の感覚で行うことができるためユーザにとっては慣れ親しんだ操作方法となる。
【0048】
タップ操作は、タッチ操作待ち状態203に遷移させる意図を示す情報を含む。タップ操作はまた、タップ検出回路131が通常の扱いの中でスマートフォン100に発生する振動(ノイズ)から区別できる特有の振動パターンを生成する操作でもある。特有の振動パターンは、ノイズと区別できる大きさの振動またはノイズも含むような大きさの振動を2値化して生成したパルスの時間軸上での振動パターンで特定することができる。本実施の形態では、振動の振幅だけでノイズから区別するのではなく、パルスの時間軸上の振動パターンで区別する方法を採用している。
【0049】
タップ検出回路131は、一例として加速度センサ133が検出した加速度データの振幅を所定の閾値で2値化してタップ回数を検出して時間軸上での振動パターンを生成する。そして、生成した振動パターンとあらかじめ定めた振動パターンと比較する。振動パターンを生成する他の例としては、タップ操作の固有の振動周波数を検出することも可能である。タップ検出回路131は、あらかじめ定めた振動パターンを検出したときに第1のウェイク・アップ信号をPMU135に出力する。
【0050】
ブロック307では、第1のウェイク・アップ信号を受け取ったPMU135は、タッチ操作待ち状態203に遷移させるためにタッチ・パネル129、タッチ・パネル・コントローラ127およびCPU111などに電力を供給する。第1のウェイク・アップ信号を受け取ったPMU135はさらに、タイマを動作させてタッチ操作待ち状態203に遷移してからの経過時間を計測する。PMU135は、待機状態201に遷移する直前のフラッシュ・メモリ125に記憶されたCPU111およびメイン・メモリ117のコンテキストを設定する。CPU135はウェイク・アップ・プログラムを実行する。ブロック309でPMU135は、ブロック307でタイマを動作させてから数秒間といった所定の時間が経過しても所定のタッチ操作を検出しないときは、ブロック303に戻って待機状態201に遷移させる。
【0051】
本実施の形態では操作性の観点から、比較的弱い振動を与えかつ少ない回数のタップ操作でタッチ操作待ち状態203に遷移させるので、ノイズによる遷移も予定している。ノイズにより遷移する場合には、タッチ操作待ち状態203において無駄な電力を消費することになるので、できるだけ短時間で待機状態201に戻ることが望ましい。タッチ操作はタップ操作に続く短時間のうちに行われたときに有効になるようにすることで、ノイズの場合に待機状態201に戻るまでの所定の時間を短くすることができる。
【0052】
タッチ操作は、使用状態207またはパスコード入力待ち状態205に遷移させる意図を示す情報を含む。タッチ操作はまた、通常の扱いの中でタッチ・パネル129に偶然に入力される座標(ノイズ)から区別できる特有の座標パターンを生成する操作でもある。特有の座標パターンは、タッチ操作待ち状態203に遷移してから所定の時間内において指が指示したタッチ・パネル129上の座標で構成される。
【0053】
他の例では、タッチ操作待ち状態203のときにディスプレイ115にも電力を供給して、ユーザに要求するタッチ操作のプロンプト画面を表示することができる。プロンプト画面は、たとえば、タッチ操作が所定の方向へのスワイプの場合はその方向への矢印やスワイプを示す文字とすることができる。ここにスワイプとは、タッチ・パネル129に指を接触させながら移動させる行為をいい、通常のタッチ操作におけるドラッグと同義である。タッチ操作が後に説明するような特定の座標領域への指の接触の場合はディスプレイ115にその接触領域を表示することができる。タッチ操作の座標パターンについては後に詳しく説明する。なお、なおプロンプト画面を表示するときのディスプレイ115のバックライトの輝度は使用状態207での輝度より低く設定することが望ましい。
【0054】
ブロック307で電力の供給を受けたCPU111は、ブロック309でウェイク・アップ・プログラムを実行して座標情報の処理をする。ウェイク・アップ・プログラムは、タッチ・パネル・コントローラ127から受け取った座標情報から座標パターンを生成し、あらかじめ設定された座標パターンと比較する処理をするコードおよびパスコードの設定の有無を判断するコードを含む。CPU111はブロック311でパスコードが設定されていると判断したときは、ブロック313でディスプレイ115にパスコード入力画面を表示する。
【0055】
CPU111は、パスコードが設定されていないと判断したときはブロック317に移行して、PMU135に第2のウェイク・アップ信号を送って使用状態207に遷移させる。CPU111は、待機状態201に遷移する直前の使用状態207の環境で動作を開始する。ブロック315では、PMU135はパスワード入力待ち状態205に遷移してから所定の時間が経過しても正しいパスコードが入力されないと判断したときは、ブロック303に戻って、CPU111およびタッチ・パネル129、さらに必要に応じてディスプレイ115の電力を停止して待機状態201に遷移させる。所定の時間内にパスコードが入力されたと判断するとCPU111はPMU135に通知してブロック317で使用状態207に遷移させる。
【0056】
以上の手順では、待機状態201からタッチ操作待ち状態203に遷移させるタップ操作と、タッチ操作待ち状態203から使用状態207に遷移させるタッチ操作の論理積からなる一連の操作であるタップ&タッチ操作でウェイク・アップさせている。したがって、ノイズによるウェイク・アップを防ぐためにタップ操作およびタッチ操作またはいずれか一方に複雑なパターンを含ませたり強く叩くことを要求したりする必要がないため、ウェイク・アップ操作のためのユーザの負担を軽減することができる。
【0057】
また、機械式スイッチの操作に比べてユーザが操作し易いタップ&タッチ操作でウェイク・アップさせることができるので、ウェイク・アップの頻度が増えてもユーザは快適に操作することができる。よって、使用状態207において入力がないときに待機状態201に遷移するまでの時間を短くして無駄な電力を抑制することができる。また、機械式スイッチでウェイク・アップさせる場合に比べて、待機状態201で増加する消費電力は加速度センサ133およびタップ検出回路131だけであるため、実用上は問題になることがない。さらに、タッチ操作待ち状態203でディスプレイ115を停止させる場合はさらに待機電力の増大を抑制することができる。
【0058】
〔タップ操作の認識〕
図5は、加速度センサが検出した振動データから2値化した振動パターンを生成する様子を説明する図である。タップ検出回路131は、タッチ・パネル129に対するタップ操作により発生した振動から加速度センサ133が生成した加速度データにより振動パターンを生成する。タップ検出回路131は生成した振動パターンとあらかじめ登録された振動パターンを比較して有効なタップ操作の有無を認識する。ライン401は、連続してタップ操作が4回行われたときのアナログの加速度信号を示している。ライン403、407は加速度信号401に対するプラス側の閾値で、ライン405、409はマイナス側の閾値を示している。
【0059】
一例ではタップ検出回路131は、プラス側とマイナス側の加速度信号401をそれぞれ所定の時間幅で積分して閾値403、405と比較する。タップ検出回路131は、プラス側の加速度信号401の積分値が閾値403を越えたとき、またはマイナス側の加速度信号401の積分値(絶対値)が閾値405(絶対値)を超えたときに2値化されたタップ信号411を生成する。他の例では、タップ検出回路131は、加速度信号のピーク値を検出して閾値407、409と比較する。タップ検出回路131は、プラス側の加速度信号401のピーク値が閾値407を越えたとき、またはマイナス側の加速度信号401のピーク値(絶対値)が閾値409(絶対値)を越えたときに一定のパルス幅のタップ信号413を生成する。
【0060】
タップ検出回路131は、タップ信号の振動パターンをあらかじめ設定された振動パターンと比較して、合致したときに第1のウェイク・アップ信号を出力する。前述のように、本実施の形態では、タップ操作とタッチ操作の論理積でウェイク・アップさせるので、2値化するときの閾値をノイズと区別するためにユーザの負担が過大になる程度まで大きくする必要はない。
【0061】
図6は、第1のウェイク・アップ信号を生成する有効なタップ操作の例を説明する図である。図6(A)は、2個のタップ信号から第1のウェイク・アップ信号を生成する例を示す。待機状態201のときにタップ検出回路131は、1個目のタップ信号421を生成したときは常にその立ち上がりエッジの発生時刻から時間t1後に時間幅twのタイムウインドウ425を設定する。
【0062】
タップ検出回路131は、立ち上がりエッジがタイムウインドウ425の中に含まれる2個目のタップ信号423を検出したときは、有効な振動パターンであると判断してただちに第1のウェイク・アップ信号を出力する。タップ検出回路131は、タイムウインドウ425の中に立ち上がりエッジが存在するタップ信号を検出しないときは有効なタップ操作が行われないと判断して、タイムウインドウ425が経過した時点でタイムウインドウ425をリセットして1個目のタップ信号の生成を待つ。
【0063】
図6(B)は、3個のタップ信号から第1のウェイク・アップ信号を生成する例を示す。待機状態201のときにタップ検出回路131は、1個目のタップ信号431を生成したときにその立ち上がりエッジの発生時刻から時間t1後に時間幅twのタイムウインドウ437を設定する。タップ検出回路131は、タイムウインドウ437の中に立ち上がりエッジが存在するタップ信号を検出しないときは、有効なタップ操作が行われないと判断してタイムウインドウ437をリセットして1個目のタップ信号の生成を待つ。タップ検出回路131は立ち上がりエッジがタイムウインドウ437の中に存在するタップ信号433を検出したときは有効な2個目のタップ操作があったと認識して3個目のタップ信号を待つ。
【0064】
タップ検出回路131は、立ち上がりエッジがタイムウインドウ437の中に含まれる2個目のタップ信号433を生成したときは、その立ち上がりエッジから時間t2後に時間幅twのタイムウインドウ439を設定する。タップ検出回路131は、タイムウインドウ439の中に立ち上がりエッジが存在するタップ信号を検出しないときは、有効なタップ操作が行われないと判断してタイムウインドウ437、439をリセットして1個目のタップ信号の生成を待つ。
【0065】
タップ検出回路131は、立ち上がりエッジがタイムウインドウ439の中に含まれる3個目のタップ信号435を生成したときは有効なタップ操作が行われたと判断して第1のウェイク・アップ信号を出力する。他の例では、タップ検出回路131は、1個目のタップ信号431を生成したときは常に1個目のタップ信号431の立ち上がりエッジの発生時刻から時間t1後にタイムウインドウ437を設定し、さらに時間t3(t3>t1)後にタイムウインドウ439を設定するようにしてもよい。
【0066】
図6(C)は、3個のタップ信号から第1のウェイク・アップ信号を生成する他の例を示す。待機状態201のときにタップ検出回路131は、1個目のタップ信号441を生成したときは常に1個目のタップ信号431の立ち上がりエッジに基づいて時間幅twのタイムウインドウ447を設定する。タップ検出回路131はタイムウインドウ447が設定されている間に生成した新たなタップ信号の立ち上がりエッジの数をカウントする。
【0067】
タップ検出回路131は、立ち上がりエッジがタイムウインドウ447の中に含まれる3個のタップ信号441、443、445を検出したときは、有効なタップ操作であると判断して3個目のタップ信号の立ち上がりエッジに基づいて第1のウェイク・アップ信号を出力する。タップ検出回路131は、タイムウインドウ447の中に立ち上がりエッジが存在する3個のタップ信号を検出しないときは有効なタップ操作が行われないと判断して、タイムウインドウ447が経過した時点でタイムウインドウ447をリセットして1個目のタップ信号の生成を待つ。
【0068】
なお、タイムウインドウ447に含まれる有効なタップ信号の数は3個に限定されるものではない。また、タップ検出回路131は、タイムウインドウ447が経過する時点であらかじめ定めておいた所定の数のタップ信号を生成したか否かを判断してもよい。その場合は、2個のタップ信号を設定していたときに、タイムウインドウ447の中に3個のタップ信号を検出したときは、有効なタップ操作が行われないと判断することができる。
【0069】
〔タッチ操作の認識〕
図7は、第2のウェイク・アップ信号を生成する有効なタッチ操作の例を説明する図である。CPU11は、タッチ・パネル129に対するタッチ操作で生成された座標情報をタッチ・パネル・コントローラ127から受け取り座標パターンを生成する。CPU111は生成した座標パターンとあらかじめフラッシュ・メモリ125に記憶していた座標パターンを比較して有効なタッチ操作の有無を認識する。
【0070】
図7(A)は、座標情報が有効なタップ操作をした最後の指により生成される例を示す。ユーザはタッチ・パネル129の位置501に最後のタップ操作し、位置501から最後の指で矢印の方向にスワイプ503をする。このときユーザはタップ操作をした最後の指をタッチ・パネル129から離さないでかつ最後のタップ操作から時間をおかないでスワイプ503をする。このときCPU111は第1のウェイク・アップ信号が生成されてから短時間のうちに電力が供給されて動作を開始する。CPU111が動作を開始する前にスワイプ503が始まっていてもよい。
【0071】
動作を開始したCPU111はからタッチ・パネル・コントローラ127から受け取った座標情報の処理を開始する。CPU111は最初に受け取った座標情報をスワイプ503の始点座標として認識する。CPU111は、座標情報を連続して受け取る間スワイプが継続していると認識し、座標情報の入力が停止したときにスワイプが終了したと認識する。CPU111はスワイプが終了した時点の座標を終点座標として認識する。CPU111は、始点座標と終点座標の間の距離が所定値以上の座標パターンを生成したときに有効なタッチ操作であると認識することができる。この場合は、始点座標が第1の特徴点で終点座標が第2の特徴点となって、第1の特徴点と第2の特徴点の距離が座標パターンとなる。
【0072】
図7(B)は、スワイプ505が直線以外のジェスチャを形成する例を示す。ここでは、円弧のジェスチャを例示している。CPU111は、図7(A)の場合と同様にスワイプ505の始点座標と終点座座標を認識し、さらに始点座標と終点座標を結ぶ直線から最も離れたスワイプ505上の座標を第3の特徴点とする座標パターンを生成する。
【0073】
この場合は、始点座標である第1の特徴点と終点座標である第2の特徴点を結ぶ直線からの第3の特徴点までの距離が座標パターンとなる。ジェスチャは、円弧に限定するものではなく、4個以上の特徴点を備える形状にすることも可能である。特徴点の数が多いジェスチャであるほど生成した座標パターンをノイズから区別し易くなるが、認識の失敗やタッチ操作が難しくなるといった問題が生ずる。本実施の形態では、タップ操作との論理積を条件としてウェイク・アップさせるため、誤ったウェイク・アップを回避するために座標パターンを必要以上に複雑にする必要はない。
【0074】
図7(C)は、2本の指でタップ&タッチ操作をする例を示す。位置501が有効なタップ操作をした最後の指の位置となっている。位置507には最後の指とは異なる指がタップ操作後に最初に接触する。たとえば、人差し指で位置501にタップ操作をし、中指で位置507からスワイプをする場合がこの操作に該当する。スワイプ509のジェスチャは、図7(B)と同様にさまざまな形状とすることができる。
【0075】
図7(D)では、タッチ・パネル129の4隅に領域521〜527が設定されている例を示す。CPU111は、最後にタップ操作をした指によるスワイプの終点座標が領域521〜527のいずれかに入ったときは、有効なタッチ操作を認識することができる。この場合の座標パターンは、所定の距離以上のスワイプとスワイプの終点座標となる。領域521〜527は4隅には限定されず、4辺の周辺に設定してもよい。また、タッチ操作待ち状態203のときにディスプレイ115を表示させるときは、ディスプレイ115にスワイプの終点座標が設定された領域を表示するようにしてもよい。
【0076】
図7(E)は、1本の指でタップ操作をし、他の指ではスワイプをしないでタップ操作の完了後に最初に領域521〜527のいずれかの位置507にタッチ操作をする例である。CPU111は、4つの領域521〜527のいずれかに含まれる座標情報を受け取ったときは、有効なタッチ操作があったと認識することができる。このときタップ操作をする位置は、領域521〜527のいずれかであってもよい。あるいは、タップ操作をする位置とタッチ操作をする位置がともにいずれかの同一の領域521〜527であってもよい。
【0077】
これまでタップ操作のパターンを加速度センサ133が生成した加速度データにより振動パターンとして生成する例を説明した。本発明は、タップ操作のパターンはタップの際の衝撃により筐体に発生する衝突音をマイクロフォン123で検出して音響パターンとして生成することもできる。この場合、タップ検出回路131とほぼ同じ校正の検出回路が、マイクロフォン123が出力するアナログの音響データから音響パターンを生成し、あらかじめ設定された音響パターンと比較して第1のウェイク・アップ信号を出力することができる。なお、この場合の音響パターンは、筐体の振動に対応するものであるため、タップ操作による振動パターンということもできる。マイクロフォン123および検出回路は消費電力を小さくすることができるので、加速度センサ133の場合と同様に待機電力を低減することができる。
【0078】
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0079】
100…スマートフォン
101…タッチ・スクリーン
103…スイッチ
411、413、431、433、435、441、443、445…タッチ信号
425、437、439、447…タイムウインドウ
501…最後にタップ操作した位置
507…最後にタップ操作した指とは異なる指が最初にタッチ操作をした位置
503、505、509…ジェスチャ
521、523、525、527…タッチ・パネル上の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の振動を検出する振動センサとディスプレイとタッチ・パネルを備える電子機器が待機状態から使用状態にウェイク・アップする方法であって、
前記待機状態において前記タッチ・パネルに供給する電力を停止するステップと、
前記待機状態において前記振動センサが検出した振動データから生成された所定の振動パターンに応答して第1のウェイク・アップ信号を出力するステップと、
前記第1のウェイク・アップ信号に応答して前記タッチ・パネルに電力を供給し前記使用状態より消費電力の少ないタッチ操作待ち状態に遷移するステップと、
前記タッチ操作待ち状態に遷移してから所定の時間内に前記タッチ・パネルに対して行われた所定のタッチ操作に応答して第2のウェイク・アップ信号を出力するステップと、
前記第2のウェイク・アップ信号に応答して前記使用状態に遷移するステップと
を有する方法。
【請求項2】
前記振動センサが加速度センサである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記振動センサが音響センサである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記所定の振動パターンが前記タッチ・パネルに対して指で行われるタップ操作により生成される請求項1から請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記所定の振動パターンが、前記振動データの振幅を2値化したパルス信号の時間軸上のパターンである請求項1から請求項4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記所定の振動パターンが、前記パルス信号間の時間で特定される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記所定の振動パターンが、所定の時間内における前記パルス信号の数で特定される請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記所定のタッチ操作が、前記タッチ・スクリーンに最後にタップ操作をした指によるスワイプの座標パターンで特定される請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記スワイプの座標パターンが、3個以上の特徴点の座標を備えるジェスチャを形成する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記スワイプの座標パターンが、特定の座標領域で終了したときに特定される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記所定のタッチ操作が、所定の座標領域を示す座標パターンで特定される請求項1から請求項7のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記タッチ操作待ち状態において前記所定の時間内に前記所定のタッチ操作がない場合に、前記待機状態に遷移するステップを有する請求項1から請求項11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記タッチ操作待ち状態で前記ディスプレイに電力を供給するステップと、
前記タッチ操作を促すプロンプト画面を表示するステップと
を有する請求項1から請求項12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
パスコードを設定するステップと、
前記パスコードが設定されているときに前記第2のウェイク・アップ信号に応答して前記ディスプレイに電力を供給しパスワード入力待ち状態に遷移するステップと
を有する請求項1から請求項13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
タッチ・パネルを備える電子機器がパワー・ステートを変更する方法であって、
第1のパワー・ステートにおいてタップ操作により発生した振動に基づいて振動パターンを生成するステップと、
前記タップ操作に続いて前記タッチ・パネルに対して行われたタッチ操作に基づいて座標パターンを生成するステップと、
所定の前記振動パターンが生成されてから所定の時間内に所定の前記座標パターンが生成されたことに応答して前記第1のパワー・ステートより消費電力の大きい第2のパワー・ステートに遷移するステップと
を有する方法。
【請求項16】
前記タップ操作と前記タッチ操作が前記タッチ・パネルに対する同一の指で行われる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のパワー・ステートにおいて所定の時間前記タッチ・パネルに対するタッチ操作がないときに前記第1のパワー・ステートに遷移するステップを有する請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のパワー・ステートが前記タッチ・パネルの電力が停止する待機状態で、前記第2のパワー・ステートがすべてのデバイスに電力が供給される使用状態である請求項15から請求項17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
使用状態と待機状態のパワー・ステートを備える電子機器であって、
前記待機状態で電力の供給が停止するディスプレイと、
前記待機状態で電力の供給が停止するタッチ・パネルと、
前記待機状態で検出した振動から振動パターンを生成する振動パターン生成部と、
所定の前記振動パターンに応答して前記タッチ・パネルに電力を供給し、前記タッチ・パネルに対する入力から生成した所定の座標パターンに応答して前記使用状態に遷移させる電源ユニットと
を有する電子機器。
【請求項20】
前記振動パターン生成部が、筐体の姿勢に応じて前記ディスプレイに表示される画面の表示方向を制御する加速度センサと、該加速度センサの出力から振動パターンを生成するハードウエア回路を含む請求項19に記載の電子機器。
【請求項21】
前記振動パターン生成部が、前記筐体の振動により発生した音響から音響データを生成する音響センサと、前記音響データから振動パターンを生成するハードウエア回路を含む請求項19に記載の電子機器。
【請求項22】
前記電源ユニットは、所定の前記振動パターンが生成されてから所定の時間内に前記所定の座標パターンが生成されないときに前記タッチ・パネルの電力を停止する請求項19から請求項21のいずれかに記載の電子機器。
【請求項23】
前記電源ユニットは前記所定の振動パターンに応答して前記ディスプレイに電力を供給し、前記ディスプレイは前記タッチ・パネルに対するタッチ操作を促すプロンプト画面を表示する請求項19から請求項22のいずれかに記載の電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−221435(P2012−221435A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89687(P2011−89687)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】