説明

タッチ式入力装置

【課題】タッチ式入力装置において、仮想的なスイッチ間の境界に対するタッチ操作位置を、より確実にユーザに認識させることができる。
【解決手段】タッチパッド13に対する接触面積の重心座標が、境界L1,L2を中心として設定される振動領域D1,D2にあるとき、重心座標と境界L1,L2との距離に応じた振動の強度でタッチパッド13が振動させられる。よって、スイッチA〜Cの境界L1,L2に対するタッチ操作位置を、ユーザに確実に認識させることができる。その結果、操作精度を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タッチ式入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タッチパッドをタッチ操作することで、ディスプレイに表示されたマウスポインタの操作を行うタッチ式入力装置が知られている。
ここで、図9に示すように、従来一般的な機械的スイッチにおいては各スイッチA〜C間に境界(隙間)が生じる。従って、例えば、ユーザが指をスイッチAに接触させた状態から、その指をスイッチBにスライドさせた場合には、ユーザは触覚を通じてスイッチA,B間の境界を認識することができる。このため、ユーザは自身の指が現在何れのスイッチA〜Cに接触しているのかを認識することができる。
【0003】
この点、上記タッチ式入力装置においては、図10(a)に示すように、タッチパッドに仮想的にスイッチA〜Cの領域が区画されているにすぎず、上記のように、各スイッチA〜C間に境界(隙間)が生じることはない。
【0004】
このため、タッチパッドの振動を通じて、ユーザにタッチ操作位置を通知する構成が考えられている(例えば、特許文献1参照)。本構成を各スイッチA〜C間の境界の通知に適用した場合、図10(b)に示すように、各時刻t1〜t7(一定時間毎)にタッチ操作位置が検出される。本例では、時刻t4において、タッチ操作位置がスイッチA,B間の境界と一致したとき、タッチパッドを振動させる。これにより、ユーザはスイッチA,B間の境界を認識することができる。なお、ユーザは、何れかのスイッチA〜Cに接触した状態から、そのスイッチを指で叩くことで、そのスイッチに応じた機能を発揮させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−9321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記タッチ式入力装置においては、スイッチA〜C間の境界で一度振動するだけである。従って、ユーザは、自身の指が各スイッチA〜Cにおいてどこに位置しているかを認識することができない。従って、例えば、指がスイッチAにおける、スイッチA,B間の境界付近に接触している状態から上記叩く操作を行うと、叩く位置がずれることで、スイッチBが操作される、すなわち所望の操作が行えないおそれもある。
【0007】
これは、上記タッチパッドを備えたタッチ式入力装置に限らず、タッチパッド(タッチパネル)とディスプレイとが組み合わされて、ディスプレイ上をタッチ操作する構成においても同様である。
【0008】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、仮想的なスイッチ間の境界に対するタッチ操作位置を、より確実にユーザに認識させることができるタッチ式入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、操作面に対するユーザのタッチ操作を検出する検出手段と、前記操作面を振動させる振動子と、前記操作面に仮想操作領域を設定し、前記操作面における前記仮想操作領域と、それ以外の領域との境界を基準として、前記仮想操作領域側に振動領域を設定するとともに、前記検出手段の検出結果に基づきタッチ操作位置を認識し、そのタッチ操作位置が前記振動領域にある旨判断したとき、前記タッチ操作位置と前記境界との距離に応じて前記振動の強度を変化させる制御手段と、を備えたことをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、操作面に対するタッチ操作位置が、仮想操作領域の境界から仮想操作領域側に設定される振動領域にあるとき、タッチ操作位置と境界との距離に応じた振動の強度で操作面が振動させられる。よって、仮想操作領域の境界に対するタッチ操作位置を、ユーザに確実に認識させることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタッチ式入力装置において、前記制御手段は、前記タッチ操作位置として前記操作面に対するユーザの接触面積の重心座標を認識し、その重心座標が前記振動領域にある旨判断したとき、前記重心座標と前記境界との距離に応じて振動の強度を変化させることをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、接触面積の重心座標が振動領域にあるとき、重心座標と境界との距離に応じた振動の強度で操作面が振動させられる。よって、ユーザの指の中心が境界に近づいたときに操作面を振動させることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のタッチ式入力装置において、前記制御手段は、前記操作面に互いに隣接する複数の前記仮想操作領域を設定し、この互いに隣接する仮想操作領域間の境界を基準として両側に前記振動領域を設定することをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、仮想操作領域は互いに隣接するように複数設定されている。この場合、互いに隣接する仮想操作領域間の境界を基準として両側に振動領域が設定される。よって、ユーザは互いに隣接する仮想操作領域間をタッチ操作する場合であっても、何れの仮想操作領域にタッチ操作しているかを認識することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のタッチ式入力装置において、前記制御手段は、前記接触面積が前記隣接する2つの仮想操作領域間の境界に接した旨判断したとき、前記重心座標及び前記境界間の距離を有する前記振動領域を前記境界を基準として両側に設定することをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、接触面積が境界に接した旨判断されたときに振動領域が設定される。この振動領域は、重心座標及び境界間の距離と同一の距離を有するとともに、両仮想操作領域間の境界を中心として両側に設定される。よって、ユーザの指の大きさ等によって接触面積が異なる場合であっても、そのときの接触面積に応じて振動制御が行われる。これにより、ユーザの指が境界に接しているときには、より確実に操作面を振動させることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載のタッチ式入力装置において、前記制御手段は、前記タッチ操作位置と前記境界との距離が小さいほど、前記振動の強度を増大させることをその要旨としている。
【0018】
同構成によれば、タッチ操作位置と境界との距離が小さいほど操作面の振動が増大される。よって、ユーザは、振動の大きさを通じて、指がどの程度境界に接近しているかを認識することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、タッチ式入力装置において、仮想的なスイッチ間の境界に対するタッチ操作位置を、より確実にユーザに認識させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1の実施形態における車両に搭載されるタッチパッド及びディスプレイを示す斜視図。
【図2】第1の実施形態におけるタッチ式入力装置の構成を示すブロック図。
【図3】第1の実施形態における(a)タッチパッドにおける仮想的なスイッチを示す平面図、(b)タッチパッドにおけるX方向の位置と振動強度との関係を示したグラフ。
【図4】第1の実施形態におけるタッチパッドへの接触面積及び重心座標を示す平面図。
【図5】第1の実施形態における制御回路によるタッチパッドの振動制御に係る処理手順を示すフローチャート。
【図6】第2の実施形態における(a)タッチパッドにおける仮想的なスイッチを示す平面図、(b)タッチパッドにおけるX方向の位置と振動強度との関係を示したグラフ。
【図7】第2の実施形態における制御回路によるタッチパッドの振動制御に係る処理手順を示すフローチャート。
【図8】他の実施形態におけるタッチパッド上の重心座標と2つの境界との距離を示すタッチパッドの平面図。
【図9】背景技術における機械的スイッチの平面図。
【図10】背景技術における(a)タッチパッドにおける仮想的なスイッチを示す平面図、(b)タッチ操作位置と境界との位置関係を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明のタッチ式入力装置を車両に搭載した第1の実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0022】
図1に示すように、ダッシュボード1の中央部(センタークラスタ)にはディスプレイ5が嵌め込まれている。センターコンソール2には、シフトレバー3が設けられ、その手前側にタッチパッド13がその表面(操作面)を露出させる態様で設けられている。
【0023】
ユーザは、タッチパッド13のタッチ操作を通じて、ディスプレイ5に表示された所望の機能項目の選択及び決定を行うことで、エアコンディショナ又はカーナビゲーション等の車載機器の制御を行う。
【0024】
図2に示すように、タッチ式入力装置10は、上記タッチパッド13に加え、制御回路11と、タッチセンサ14と、圧電素子15と、駆動回路17とを備える。
タッチセンサ14は、タッチパッド13の操作面と反対側に設けられるとともに、タッチパッド13に指が触れたことに伴う静電容量の変化を検出し、その検出結果を制御回路11に出力する。
【0025】
圧電素子15は、タッチセンサ14のタッチパッド13と反対側に固定される。制御回路11は、駆動回路17を通じて圧電素子15に交流電圧を印加する。これにより、圧電素子15は高周波振動する。なお、制御回路11は、圧電素子15に印加する電圧値(振幅値)に基づき振動の強度を変化させることができる。この振動はタッチセンサ14を介してタッチパッド13に伝播する。よって、ユーザは指をタッチパッド13に接触させた状態で、圧電素子15の振動を認識することができる。なお、圧電素子15は振動子に相当する。
【0026】
制御回路11は、上記ディスプレイ5の画面を制御する。例えば、図1に示すように、制御回路11は、ディスプレイ5に選択スイッチ5aを表示する。ユーザは、タッチパッド13のタッチ操作を通じて、選択スイッチ5aの何れかを選択して決定する。これにより、選択された所望の機能が発揮される。
【0027】
詳しくは、制御回路11は、ディスプレイ5に選択スイッチ5aを表示する際に、図3(a)に示すように、タッチパッド13の操作面に仮想的にスイッチA〜Cを区画する。この区画されたスイッチA〜Cは、仮想操作領域に相当する。各スイッチA〜Cは、正方形で、かつ横に隣接する態様で設定されている。このスイッチA〜Cは、タッチパッド13において、ディスプレイ5の選択スイッチ5aに対応する位置に区画されている。
【0028】
図3(a)に示すように、両スイッチA,B間の境界L1を中心としてX方向に振動領域D1が設定される。この振動領域D1は、X方向において、座標Xa1と座標Xb1との間に設定される。同様に、両スイッチB,C間の境界L2を中心としてX方向に振動領域D2が設定される。この振動領域D2は、X方向において、座標Xa2と座標Xb2との間に設定される。
【0029】
制御回路11は、一定周期毎にタッチセンサ14の検出結果に基づき、指のタッチパッド13への接触の有無を認識し、指のタッチパッド13への接触がある旨認識したときにはその接触面積Sを算出する。図4に示すように、制御回路11は、接触面積Sを算出すると、その接触面積Sの重心座標G1を算出する。
【0030】
制御回路11は、重心座標G1(正確にはそのX座標、以下同様)が、振動領域D1,D2内となると、圧電素子15を通じてタッチパッド13を振動させる。制御回路11は、図3(b)に示すように、重心座標G1の位置に応じて振動強度を変化させる。この図3(b)の振動強度に係る曲線は正規分布曲線である。例えば、制御回路11は、重心座標G1が境界L1にあるとき振動強度を最大とする。
【0031】
制御回路11は、タッチ操作を通じて何れかのスイッチA〜Cが選択されている旨認識している状態で、タッチセンサ14を通じてタッチパッド13を指で叩く操作がされた旨判断したとき、そのスイッチA〜Cに対応した車載機器の機能を発揮させる。
【0032】
なお、タッチセンサ14は検出手段に相当し、制御回路11は制御手段に相当する。
次に、制御回路11によるタッチパッド13の振動制御に係る処理手順について、図5のフローチャートを参照しつつ説明する。このフローチャートは、タッチセンサ14を通じてタッチ操作がある旨判断されたとき開始される。
【0033】
制御回路11は、接触面積Sに基づき重心座標G1を算出する(S101)。そして、制御回路11は、重心座標G1が振動領域D1,D2内となるか否かを判断する(S102)。制御回路11は、重心座標G1が振動領域D1,D2内となる旨判断したとき(S102でYES)、図3(b)に示した振動特性に従った振動強度にて、圧電素子15を通じてタッチパッド13を振動させる(S103)。そして、ステップS101の処理に戻る。すなわち、重心座標G1が振動領域D1,D2内に存在する限り、タッチパッド13の振動は継続される。
【0034】
制御回路11は、重心座標G1が振動領域D1,D2内とならない旨判断したとき(S102でNO)、処理を終了する。
以下、ユーザがその指をスイッチAの略中央に接触させた状態からスイッチBへスライドさせた場合について説明する。
【0035】
図3(a),(b)に示すように、接触させた指のスイッチB側へのスライドに伴い、重心座標G1が座標Xa1に達したときからタッチパッド13の振動が開始され、重心座標G1が境界L1に近づくにつれて振動強度が徐々に大きくなる。これにより、ユーザは、タッチ操作位置が境界L1に近づいていること、並びにスイッチAにおけるおおよそのタッチ操作位置を認識できる。そして、重心座標G1が境界L1に達した時点でタッチパッド13の振動が最大となって、重心座標G1が境界L1からスイッチB方向に離れるにつれて振動強度が徐々に小さくなる。これにより、ユーザは、タッチ操作位置が境界L1を越えてスイッチBに達したこと、並びにスイッチBにおけるおおよそのタッチ操作位置を認識できる。
【0036】
以上、説明した実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)タッチパッド13に対する接触面積Sの重心座標G1が、境界L1,L2を中心として設定される振動領域D1,D2にあるとき、重心座標G1と境界L1,L2との距離に応じた振動の強度でタッチパッド13が振動させられる。よって、スイッチA〜Cの境界L1,L2に対するタッチ操作位置を、ユーザに確実に認識させることができる。その結果、操作精度を向上させることができる。
【0037】
(2)接触面積Sの重心座標G1はユーザの指の中心であると想定される。よって、重心座標G1をタッチ操作位置とすることで、ユーザの指の中心が境界L1,L2に近づいたときにタッチパッド13を振動させることができる。
【0038】
(3)重心座標G1と境界L1,L2との距離が小さいほどタッチパッド13の振動が増大される。よって、ユーザは、振動の増加を通じて、指がどの程度境界L1,L2に接近しているかを認識することができる。
【0039】
(4)図3(b)に示すように、振動強度に係る曲線は正規分布曲線に設定されている。このため、振動強度の増加率(傾き)を境界L1,L2に近づくほど大きくすることができる。よって、ユーザは、振動強度の増加率に基づき、指の接触位置が境界L1,L2に近づいていることを、より確実に認識することができる。
【0040】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図6及び図7を参照して説明する。この実施形態は、指の接触面積に適した振動態様が設定される点を除き、上記第1の実施形態と同様に構成される。以下、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0041】
図6(a)に示すように、制御回路11は、接触面積SにおいてX座標が最大となる最大座標Xmと、X座標が最小となる最小座標Xsとを認識する。ここでは、指が接触した状態でスイッチAからスイッチBにスライド操作された場合について説明する。制御回路11は、この最大座標Xmが境界L1に達した旨判断したとき、そのときの重心座標G1を座標Xa1とする。次に、制御回路11は、最大座標Xmと座標Xa1との差から振動領域Rを算出する。そして、制御回路11は、この振動領域Rを、境界L1を中心として両側に設定する。スイッチBにおける振動領域Rの最大が座標Xb1となる。
【0042】
そして、図6(b)に示すように、制御回路11は、座標Xa1と座標Xb1との間に第1の実施形態と同様の振動強度に係る曲線を設定し、その曲線における重心座標G1の位置に応じた振動強度にてタッチパッド13を振動させる。すなわち、制御回路11は、重心座標G1が境界L1に一致したとき、振動強度を最大とする。本例では、最大となる振動強度は予め設定されている。この場合には、振動領域Rが大きくなるにつれて、座標Xa1又は座標Xb1から境界L1までの上記曲線の傾きの平均値は小さくなる。すなわち、指が境界L1に近づくことに伴う振動強度の増加の度合いが緩やかになる。
【0043】
指が接触した状態でスイッチBからスイッチAにスライド操作された場合も上記と同様である。すなわち、制御回路11は、最小座標Xsが境界L1に一致した旨判断したとき、そのときの重心座標G1を座標Xb1とする。この重心座標G1及び座標Xb1間の距離が振動領域Rとなる。以下、制御回路11は、上記同様に、境界L1の両側に振動領域Rを設定し、これら振動領域Rに、振動強度に係る曲線を設定する。
【0044】
なお、上記では境界L1付近について説明したが、境界L2付近についても同様に、座標Xa2又は座標Xb2を認識した後に振動領域Rが設定され、さらには振動強度に係る曲線が設定される。
【0045】
次に、制御回路11によるタッチパッド13の振動制御に係る処理手順について、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。このフローチャートは、タッチセンサ14を通じてタッチ操作がある旨判断されたとき開始される。
【0046】
制御回路11は、接触面積Sに基づき重心座標G1と、最大座標Xmと、最小座標Xsとを算出する(S201)。そして、制御回路11は、最大座標Xm又は最小座標Xsが境界L1,L2に一致するか否かを判断する(S202)。制御回路11は、最大座標Xm又は最小座標Xsが境界L1,L2に一致しない旨判断したとき(S202でNO)、ステップS201の処理に戻る。制御回路11は、最大座標Xm又は最小座標Xsが境界L1,L2に一致する旨判断したとき(S202でYES)、座標Xa1,Xb1又は座標Xa2,Xb2を認識する(S203)。そして、制御回路11は、境界L1,L2の両側に振動領域Rを設定し、それら振動領域R間に振動強度に係る曲線を設定する(S204)。制御回路11は、この曲線に従った振動強度にてタッチパッド13を振動させる(S205)。以上で、処理を終了する。
【0047】
以上、説明した実施形態によれば、第1の実施形態の(1)〜(4)の効果に加え、以下の効果を奏することができる。
(5)接触面積Sが境界L1,L2に接した旨判断されたときに振動領域Rが設定される。この振動領域Rは、重心座標G1及び境界L1,L2間の距離と同一の距離を有するとともに、境界L1,L2を中心として両側に設定される。本構成によれば、ユーザの指の大きさ、又は指のタッチパッド13に対する接触圧力等によって接触面積Sがタッチ操作毎に異なる場合であっても、そのときの接触面積Sに応じた振動制御が行われる。これにより、ユーザの指が境界L1,L2に接しているときには、より確実にタッチパッド13を振動させることができる。
【0048】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
・第2の実施形態においては、振動強度に係る曲線において、最大となる振動強度が予め設定されていた。しかし、振動領域Rが大きくなるにつれて最大となる振動強度が大きくなるように上記曲線が設定されてもよい。
【0049】
・上記両実施形態においては、図3(b)及び図6(b)に示すように、振動強度に係る曲線は正規分布曲線であったが、これに限らず、例えば、2次曲線であってもよい。この場合にも、境界L1,L2にて振動強度が最大(傾きがゼロ)となるように設定される。また、曲線に限らず、座標Xa1又は座標Xb1から境界L1に向かうにつれて振動強度が大きくなるような直線であってもよい。
【0050】
また、逆に、重心座標G1が座標Xa1又は座標Xb1から境界L1に向かうにつれて振動強度が小さくなって、重心座標G1が境界L1に達したときに振動が停止される構成であってもよい。この場合であっても、ユーザは振動強度の変化に基づきタッチ操作位置を認識できる。
【0051】
また、重心座標G1が境界L1に達したときに、振動及び振動停止が周期的に繰り返されてもよい。これにより、タッチ操作位置が境界にあることを、より確実にユーザに認識させることができる。
【0052】
・第1の実施形態においては、重心座標G1が振動領域D1,D2内となったとき、タッチパッド13の振動を開始していた。しかし、重心座標G1に限らず、接触面積Sの最大座標Xm又は最小座標Xsが振動領域D1,D2内となったときタッチパッド13の振動を開始してもよい。
【0053】
また、制御回路11は、接触面積Sを囲む最小面積となる正方形又は長方形を認識し、その正方形又は長方形の2つの対角線が交わる点を中心座標としてもよい。この中心座標は重心座標G1に代えて振動制御に利用される。
【0054】
また、接触面積Sの一定割合(例えば50%)以上が振動領域D1,D2,R内となったときタッチパッド13の振動を開始させ、その割合が増えるにつれて振動強度を増大させてもよい。
【0055】
・上記各実施形態においては、振動子として圧電素子が採用されていたが、タッチパッド13を振動させることができれば圧電素子に限らず、モータ等を利用してもよい。
・上記両実施形態においては、タッチパッド13に対して指を接触させた状態で、X方向へ指を移動させたときのみ振動強度を変化させていたが、Y方向へ移動させたときも同様に振動強度を変化させてもよい。具体的には、図8に示すように、制御回路11は、重心座標G1を認識すると、重心座標G1と境界L1とのX方向における距離Lxと、重心座標G1と境界L3(スイッチAの下辺)とのY方向における距離Lyとを算出する。Y方向においても、図3(b)のX方向と同様に、境界L3に近づくにつれて、振動強度が大きくなるように振動強度に係る曲線が設定される。
【0056】
そして、例えば、制御回路11は、両距離Lx,Lyのうち小さい方を選択し、その距離に応じた振動強度でタッチパッド13を振動させる。スイッチAの上辺の境界、スイッチB,Cの上下辺の境界についても同様である。なお、Y方向において、スイッチAから境界L3を越えると振動は停止される。また、両距離Lx,Lyを足し合わせた値が小さくなるほど、振動強度が大きくなるように振動強度に係る曲線が設定されてもよい。この場合、両境界L1,L3がなす角部付近で振動強度が最大となる。上記構成によれば、ユーザは、Y方向も含めたスイッチにおけるタッチ操作位置を認識することができる。
【0057】
また、スイッチAにおけるスイッチBと反対側の境界に接近した場合にも、タッチパッド13を振動させてもよい。この場合にも上記同様に、境界に近づくにつれて振動強度は増大される。スイッチCにおけるスイッチBと反対側の境界に接近した場合も同様である。
【0058】
・上記両実施形態においては、タッチパッド13において3つのスイッチA〜Cが仮想的に区画されていた。しかし、仮想的なスイッチの数は3つに限らない。すなわち、4つ以上であってもよいし、1つであってもよい。スイッチが1つの場合には、そのスイッチに指が接触した状態から境界に向かうにつれて振動の強度が増大し、その境界を越えたときに振動が停止される。また、スイッチの配置方法も適宜変更可能であって、例えば、スイッチがマトリックス状に配置されてもよい。
【0059】
・上記両実施形態におけるタッチパッド13の位置は上記実施形態に限らず、例えば、ステアリング又はダッシュボード1に設けられていてもよい。
・上記両実施形態におけるタッチ式入力装置10を車両以外の電気機器に適用してもよい。
【0060】
・上記両実施形態においては、タッチパッド13とディスプレイ5とは別体で構成されていたが、タッチパッド13とディスプレイ5とは一体で構成されてもよい。この場合には、ディスプレイ5上に表示されるスイッチA〜Cに対してタッチ操作することになる。
【0061】
・上記各実施形態において、タッチパッド13に仮想的に区画されるスイッチA〜Cは正方形であったが、その形は正方形に限らず、円、三角形又は六角形等であってもよい。
・上記両実施形態においては、タッチセンサ14として静電容量方式が採用されていたが、その他、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式又は電磁誘導方式を採用してもよい。
【0062】
次に、前記実施形態から把握できる技術的思想をその効果と共に記載する。
(イ)請求項1〜4のいずれか一項に記載のタッチ式入力装置において、前記制御手段は、前記検出手段を通じたタッチ操作に基づき、車載機器を制御するタッチ式入力装置。
【符号の説明】
【0063】
5…ディスプレイ、10…タッチ式入力装置、11…制御回路(制御手段)、13…タッチパッド、14…タッチセンサ(検出手段)、15…圧電素子(振動子)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作面に対するユーザのタッチ操作を検出する検出手段と、
前記操作面を振動させる振動子と、
前記操作面に仮想操作領域を設定し、前記操作面における前記仮想操作領域と、それ以外の領域との境界を基準として、前記仮想操作領域側に振動領域を設定するとともに、前記検出手段の検出結果に基づきタッチ操作位置を認識し、そのタッチ操作位置が前記振動領域にある旨判断したとき、前記タッチ操作位置と前記境界との距離に応じて前記振動の強度を変化させる制御手段と、を備えたタッチ式入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載のタッチ式入力装置において、
前記制御手段は、前記タッチ操作位置として前記操作面に対するユーザの接触面積の重心座標を認識し、その重心座標が前記振動領域にある旨判断したとき、前記重心座標と前記境界との距離に応じて振動の強度を変化させるタッチ式入力装置。
【請求項3】
請求項2に記載のタッチ式入力装置において、
前記制御手段は、前記操作面に互いに隣接する複数の前記仮想操作領域を設定し、この互いに隣接する仮想操作領域間の境界を基準として両側に前記振動領域を設定するタッチ式入力装置。
【請求項4】
請求項3に記載のタッチ式入力装置において、
前記制御手段は、前記接触面積が前記隣接する2つの仮想操作領域間の境界に接した旨判断したとき、前記重心座標及び前記境界間の距離を有する前記振動領域を前記境界を基準として両側に設定するタッチ式入力装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のタッチ式入力装置において、
前記制御手段は、前記タッチ操作位置と前記境界との距離が小さいほど、前記振動の強度を増大させるタッチ式入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−97600(P2013−97600A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240338(P2011−240338)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】