説明

タマネギ含有飲料

【課題】タマネギ含有飲料を提供する。
【解決手段】品温80℃以上の条件で破砕したタマネギを、野菜汁及び/又は果汁と混合することにより得られるタマネギ含有飲料。当該飲料は飲みやすく且つ機能性成分の損失が少ないことを特徴とする。さらに当該飲料は血流改善効果を有するので機能性食品として好適に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タマネギ含有飲料に関する。より詳細には、所定の加熱条件で破砕することによって得られ、血流改善効果を有するタマネギ含有飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の健康志向の高まりに伴い、血流改善作用を有する医薬品や機能性飲食品の意義が高まっている。タマネギを多く食べることによって、血小板の働きが抑制されて血液の流れが良くなることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。また、タマネギの乳酸菌発酵物の血流改善効果や、タマネギに多く含まれているケルセチンが血流改善効果を有することも知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
タマネギは、ネギ属の野菜であって、ケルセチン配糖体や含硫化合物を多く含むことから、様々な生理活性が期待されている。ケルセチン配糖体は優れた抗酸化活性を示し,ビタミンP様作用、血小板凝集抑制作用、抗炎症作用等を有することが知られている。
【0004】
タマネギに含まれている主な機能性成分は、ケルセチン3,4’−O−グリコシドやケルセチン4’−O−グリコシドなどのケルセチン配糖体、イソアリインなどの含硫アミノ酸の、γ−グルタミルペプチドである。ケルセチンは、降圧作用やコレステロール低下作用など様々な機能性を有することが知られている。ケルセチン配糖体も同様の機能性を有し、摂取後の吸収が優れている。また、イソアリインは血糖上昇抑制などの作用を有し、γ−グルタミルペプチドは抗骨粗しょう症などの作用を有している。
しかしながら、タマネギを加工する場合、切断後に酵素C−Sリア−ゼの働きにより、含硫アミノ酸から独特のタマネギ臭や催涙性を有する揮発性の硫化化合物が生成し、血糖上昇抑制作用などの機能性を有する含硫アミノ酸が消失するという問題があった。
【非特許文献1】HortScience Vol.31 No.5、1996年9月、p.874
【特許文献1】特開2006−256969号公報
【特許文献2】特開2004−26739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、飲みやすく且つ機能性成分の損失が少ないタマネギ含有飲料の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、品温80℃以上の条件で破砕したタマネギを用いることにより、飲みやすく且つ機能性成分の損失が少ないタマネギ含有飲料が得られることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は、以下に関する。
(1)品温80℃以上の条件で破砕したタマネギを含有するタマネギ含有飲料。
(2)品温80℃以上の条件で破砕されたタマネギと、野菜汁及び/又は果汁とを含有するタマネギ含有飲料。
(3)血流改善用として使用されることを特徴とする、上記(1)又は(2)記載のタマネギ含有飲料。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、タマネギ含有飲料が提供された。該タマネギ含有飲料は、血流改善用として好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、品温80℃以上の条件で破砕したタマネギを含有するタマネギ含有飲料に関する。
原料となるタマネギは、特に限定されず、黄タマネギや赤タマネギ、具体的には例えば、クエルリッチ、スーパー北もみじ、北もみじ、ターザン、ターボ、オホーツクなどの品種が使用できる。原料タマネギは、残留農薬や呈味、テクスチャーの理由から、剥皮したものを使用することが好ましい。
【0009】
タマネギの破砕は、タマネギに含有される酵素が失活する条件、具体的には品温80℃以上、好ましくは品温95〜110℃、より好ましくは品温95〜100℃で実施される。品温80℃以上で破砕することにより、タマネギに含有されるC−Sリア−ゼ等の酵素を失活するので、含硫アミノ酸から揮発性の硫化化合物が生成することを抑制することができ、タマネギ特有の香りや揮発性催涙物質が著しく低減するという効果が得られる。また、上記温度条件でタマネギを破砕することにより、苦味や辛味が低減されるという効果も得られる。本発明では、タマネギを破砕すると同時に加熱できる装置、例えば、ヒートクラッシャー、ピンミル、ハンマークラッシャー、ミクログレイダー、ダイサー、コミトロール等が好適に使用できる。これらの装置は、原料タマネギを0.1〜100mm程度の大きさに破砕すると同時に蒸気、通電、マイクロウェーブ等の方法によって加熱することができる。
【0010】
加熱時間は特に限定されないが、できるだけ短時間、例えば、0.1秒から1分、好ましくは0.1〜1秒、更に好ましくは0.1〜0.5秒とすることにより、機能性成分の熱分解による損失や、加熱臭の発生を防ぐことができる。
ヒートクラッシャーは、原料投入口を回転型のシールバルブで密閉系を作り、その密閉系を蒸気により一定雰囲気温度を保ち、投入された原料を一定温度下にてピンミル型の破砕機で破砕することにより、破砕と同時に破砕物を目的温度に維持する装置である。ヒートクラッシャーは、本発明の飲料製造のために特に好適に使用できる。
品温95℃以上の条件で破砕されたタマネギを、そのまま本発明のタマネギ含有飲料としてもよいが、飲料として飲みやすくするため、他の飲料、例えば、水、野菜汁、果汁等と混合しても良い。
【0011】
野菜汁としてはトマト、人参、ピーマン、セルリー、ほうれん草、パセリ、ケール、小松菜、キャベツ、アスパラガス、かぼちゃ等を原料とするものが使用できる。また、果汁としては、レモン、オレンジ、りんご、ブドウ、パインアップル、バナナ等を原料とするものが使用できる。タマネギと、野菜汁及び/又は果汁との混合比は、特に限定されないが、例えば、1:1〜1:10である。
【0012】
本発明では、他の飲料に加え、さらに、糖類、安定化剤、乳化剤等を添加しても良い。糖類としては砂糖、蜂蜜、液糖が使用できる。
【0013】
品温80℃以上の条件で破砕されたタマネギは、ケルセチン配糖体等の化合物を含有しており、実施例に示す通り、血流改善効果を示す。従って、本発明の飲料は、血流改善用として好適に使用できる。タマネギと他の飲料とを混合して本発明の飲料とし、これを血流改善用に使用する場合、血流改善効果を発揮し且つ飲みやすい飲料を得るための好適な混合比は、例えば1:1〜1:4である。
【実施例1】
【0014】
〔タマネギピューレの調製法〕
外皮と茎盤を除いたタマネギのりん茎部を洗浄し、原料タマネギとした。ヒートクラッシャー(キッコーマン社製)にて原料タマネギを破砕すると同時に品温95〜100℃の範囲で約0.3秒間の条件で瞬間蒸気加熱した後、コミトロールにて微細化し、タマネギピューレを得た。タマネギピューレは100gあたりにケルセチン3,4’−O−グリコシドを52mg、ケルセチン4'−O−グリコシドを24.4mg含有していた。
【実施例2】
【0015】
〔血流改善試験〕
実施例1で調製したタマネギピューレ、又は当該タマネギピューレ100gを凍結乾燥して得られた13.2gの凍結乾燥粉末を用いて、以下の血流改善試験を行った。なお、血流量は、レーザードップラー血流計(PrescanPIM II、Integral社製)を用いて測定した。
【0016】
(1)正常マウスによる血流量増加作用
タマネギピューレ凍結乾燥粉末を、正常マウス(ICRマウス、6週令、オス、n=6)に、5日間連続強制経口投与した。ネンブタール麻酔下、投与前と5日間連続投与後の血流を測定した結果を図1に示した。260mg/kg凍結乾燥粉末(ケルセチン配糖体類1.5 mg/kg含有)投与5日目の血流は有意に上昇していた。
【0017】
(2)冷え性モデルマウスによる血流量低減抑制作用
正常マウス(ICRマウス、6週令、オス、n=6)にタマネギピューレ凍結乾燥粉末を経口投与し、45分放置後ネンブタールを腹腔内投与して麻酔をかけた。麻酔投与10分後に血流を測定(投与前血流量)、その後、マウスを5℃で15分放置したのち血流を測定(冷却直後)、さらに室温に15分放置後血流を測定した(冷却終了15分後)。結果は図2に示した。凍結乾燥粉末1.2g/kg(ケルセチン配糖体類7mg/kg含有)投与群は、対照群(蒸留水)に対して、冷却による血流量低減を有意に抑制していた。
【0018】
(3)ヒトによる血流改善作用
被験者8名に対して試験を行った。各被験者は、タマネギピューレとミネラルウオーター摂取時の血流変化を測定した。各測定には3時間以上の間隔をあけ、時間帯や順序による影響が出ないようにサンプルを割り付けた。まず、食事後2時間経過後20分安静にした後に各被験者の左手人指の血流を測定し、摂取前の血流量とした。
タマネギピューレの摂取によるヒトの血流量の変化を測定するため、タマネギピューレ40g(ケルセチン配糖体類30mg含有)とミネラルウオーター120gの混合物を摂取させた。一方、タマネギピューレ非摂取時の血流変化を見る試験では、ミネラルウオーター160gを摂取させた。
摂取後、15、30、60分後の血流量を測定した。ついで左手首まで14℃の冷水に5分浸すことにより負荷を与え、負荷終了直後、5、15、30、60分後に血流量を測定した。血流量は、摂取前の血流量を100%として計算した。
結果は図3に示した。タマネギピューレ摂取60分後の血流量は、対照群に比べて有意に上昇していた。また、タマネギピューレ摂取時は、ミネラルウオーター摂取時に比べて冷水負荷後の血流量の回復が早く、高い血流回復作用を示すことがわかった。
【実施例3】
【0019】
〔タマネギ含有飲料の配合例〕
実施例1で得られたタマネギピューレ250gと、りんごジュース200g及び異性化糖50g、水を混合して1000gの調合液とし、レモン果汁で酸度を調整した。98℃で殺菌して容器に充填した。得られた飲料のpHは3.9、屈折糖度(Bx)は9.5°であった。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明により、飲みやすく且つ機能性成分の損失が少ないタマネギ含有飲料が提供された。該飲料は血流改善効果を有するので機能性食品として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例2(1)記載の血流量増加作用試験の結果を示す図である。
【図2】実施例2(2)記載の血流量低減抑制作用試験の結果を示す図である。
【図3】実施例2(3)記載の血流改善作用試験の結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
品温80℃以上の条件で破砕したタマネギを含有するタマネギ含有飲料。
【請求項2】
品温80℃以上の条件で破砕したタマネギと、野菜汁及び/又は果汁とを含有するタマネギ含有飲料。
【請求項3】
血流改善用として使用されることを特徴とする、請求項1又は2記載のタマネギ含有飲料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−253223(P2008−253223A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−101608(P2007−101608)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000004477)キッコーマン株式会社 (212)
【出願人】(000104559)日本デルモンテ株式会社 (44)
【Fターム(参考)】