説明

タンクローリー

【課題】タンクの防水性を高めて断熱性能の低下を防止することができるタンクローリーを提供すること。
【解決手段】タンクローリー1によれば、断熱材12と外槽13との間に防水部材14が配設されているので、防水部材14により断熱材12を防水して、タンク10の防水性を高めることができる。また、中空部材15,16,17の空洞HhにリベットRの先端が挿通された状態で隣り合う外板同士(胴板13a及び胴板13b、胴板13a及び鏡板13c、胴板13a及び鏡板13d)が接合されているので、リベットRを伝ってタンク10内に水分が侵入したとしても、かかる水分を中空部材15,16,17の空洞Hhに導くことができる。よって、断熱材12が水分を含んでしまうことを回避して、タンク10の断熱性能の低下を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクに液体を保冷しつつ貯留して輸送するタンクローリーに関し、特に、タンクの防水性を高めて断熱性能の低下を防止することができるタンクローリーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、液化ガス等の液体を輸送するための車両として、例えば、特許文献1には、液体を貯留する内槽と、その内槽の外周を覆い内槽を断熱する断熱材と、その断熱材の外周を覆う外槽とを有するタンクを備え、そのタンクに液体を保冷しつつ貯留して輸送することのできるタンクローリーが開示されている。
【0003】
また、かかる外槽は、一般に、内槽の長手方向に分割される複数の外板により構成されそれら複数の外板の隣り合う外板同士をリベットにより接合して形成されており、外板同士の接合部からタンク内に雨水などの水分が侵入するのを防止するために、リベットの周囲や外板同士の繋ぎ目にシール剤を施すことでタンクの防水対策がなされている。
【特許文献1】特開平09−142571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように構成されるタンクローリーでは、経年劣化などでシール剤に割れや剥がれが生じると、タンク内に水分が侵入して断熱材が水分を含んでしまうことで、タンクの断熱性能が低下するという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、タンクの防水性を高めて断熱性能の低下を防止することができるタンクローリーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、請求項1記載のタンクローリーは、液体を貯留する内槽と、その内槽の外周を覆い前記内槽を断熱する断熱材と、その断熱材の外周を覆うと共に前記内槽の長手方向に分割される複数の外板により構成されそれら複数の外板の隣り合う外板同士をリベットにより接合して形成される外槽とを有するタンクを備え、そのタンクに前記液体を保冷しつつ貯留して輸送するものであって、前記タンクは、前記断熱材と前記外槽との間に配設され前記断熱材の外周を覆い前記断熱材を防水するシート状の防水部材と、中空の断面を有し内部に空洞が形成されると共に前記外板の接合部に対応して前記外槽の内周側に配設される複数の中空部材とを備え、その中空部材の内部に形成された前記空洞に前記リベットの先端が挿通された状態で前記隣り合う外板同士が接合されている。
【0007】
請求項2記載のタンクローリーは、請求項1記載のタンクローリーにおいて、前記空洞と前記タンクの外部とを連通する貫通孔を重力方向下方に備えている。
【0008】
請求項3記載のタンクローリーは、請求項1又は2に記載のタンクローリーにおいて、前記防水部材は、前記複数の中空部材の隣り合う中空部材間に架設され前記中空部材に対向する縁部が前記外槽と前記中空部材との間に挟み入れられている。
【0009】
請求項4記載のタンクローリーは、請求項3記載のタンクローリーにおいて、前記複数の外板は、前記隣り合う外板同士が上下に重ね合わされた状態で接合され、前記防水部材は、上下に重ね合わされた状態において下側の外板と前記中空部材との間に前記縁部が挟み入れられている。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のタンクローリーによれば、断熱材と外槽との間に防水部材が配設されているので、防水部材により断熱材を防水して、タンクの防水性を高めることができる。よって、タンク内に雨水などの水分が侵入したとしても、断熱材が水分を含んでしまうことを回避して、タンクの断熱性能の低下を防止することができるという効果がある。
【0011】
また、本発明によれば、中空部材の内部に形成された空洞にリベットの先端が挿通された状態で隣り合う外板同士が接合されているので、リベットを伝ってタンク内に水分が侵入したとしても、かかる水分を中空部材の空洞に導くことができる。よって、断熱材が水分を含んでしまうことを回避して、タンクの断熱性能の低下を防止することができるという効果がある。
【0012】
加えて、断熱材が水分を含んでしまうことを回避することができるので、タンク内に水分が侵入することに伴う車両重量の増加を抑制して、車両重量の増加に起因する最大積載量の減少を防止することができるという効果がある。
【0013】
更に、本発明によれば、中空部材の空洞にリベットの先端が挿通された状態で隣り合う外板同士が接合されているので、中空部材によりリベットの先端を被包して、防水部材および断熱材をリベットによる損傷から保護することができるという効果がある。
【0014】
請求項2記載のタンクローリーによれば、請求項1記載のタンクローリーの奏する効果に加え、中空部材の空洞とタンクの外部とを連通する貫通孔を重力方向下方に備えているので、中空部材の空洞に導いた水分を貫通孔からタンクの外部へ排出することができるという効果がある。その結果、タンク内に水分が侵入することに伴う車両重量の増加を抑制して、車両重量の増加に起因する最大積載量の減少を防止することができるという効果がある。
【0015】
請求項3記載のタンクローリーによれば、請求項1又は2に記載のタンクローリーの奏する効果に加え、防水部材は、複数の中空部材の隣り合う中空部材間に架設され中空部材に対向する縁部が外槽と中空部材との間に挟み入れられているので、タンク内に水分が侵入したとしても、かかる水分を中空部材の空洞に導くことができる。よって、断熱材が水分を含んでしまうことを回避して、タンクの断熱性能の低下を防止することができるという効果がある。
【0016】
請求項4記載のタンクローリーによれば、請求項3記載のタンクローリーの奏する効果に加え、複数の外板は、隣り合う外板同士が上下に重ね合わされた状態で接合されているので、外板同士が重ね合わされる部分(外板同士の繋ぎ目)からタンク内に侵入する水分の侵入経路をより長く確保することができ、タンク内に水分を侵入し難くすることができるという効果がある。
【0017】
また、本発明によれば、防水部材は、上下に重ね合わされた状態において下側の外板と中空部材との間に中空部材に対向する縁部が挟み入れられているので、外板同士が重ね合わされる部分(外板同士の繋ぎ目)からタンク内に水分が侵入したとしても、かかる水分が断熱材に至るまでの経路を遮断することができるという効果がある。その結果、断熱材が水分を含んでしまうことを回避して、タンクの断熱性能の低下を防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施の形態におけるタンクローリー1の側面図である。
【0019】
まず、図1を参照して、タンクローリー1の概略構成について説明する。タンクローリー1は、液化炭酸ガス(以下、「LCO2」と称す。)を輸送するための車両であり、図1に示すように、LCO2を保冷しつつ貯留するためのタンク10と、そのタンク10を支持する車両本体2とを主に備えて構成されている。
【0020】
また、タンクローリー1は、タンク10の防水性を高めて断熱性能の低下を防止すると共に、タンク10内に雨水などの水分が侵入することに伴う車両重量の増加を抑制して、車両重量の増加に起因する最大積載量の減少を防止することができるように構成されている。
【0021】
次いで、図2及び図3を参照して、タンク10の詳細構成について説明する。図2(a)は、タンク10の上面図であり、図2(b)は、図2(a)のIIb−IIb線におけるタンク10の断面図である。図3(a)は、図2(a)のIIIa−IIIa線におけるタンク10の断面図である。また、図3(b)は、図2(b)のIIIbで示す部分を拡大したタンク10の拡大断面図であり、図3(c)は、図2(b)のIIIcで示す部分を拡大したタンク10の拡大断面図である。
【0022】
なお、本実施の形態におけるタンク10は、フレーム3(図1参照)を介して車両本体2に支持されているが、図2及び図3では、発明の理解を容易とするために、フレーム3の図示が省略されている。
【0023】
タンク10は、上述したように、LCO2を保冷しつつ貯留するためのものであり、図2に示すように、内槽11と、その内槽11の外周を覆う断熱材12と、その断熱材12の外周を覆う外槽13と、その外槽13と断熱材12との間に配設される防水部材14とを主に備えて構成されている。
【0024】
内槽11は、LCO2を貯留するためのものであり、図2に示すように、両端が塞がれた横長の略円筒状に構成され、その内部にはLCO2を貯留するための貯留空間が形成されている。
【0025】
また、図2に示すように、内槽11の上部には、金具11aが取り付けられている。金具11aは、車両本体2への架装時などタンク10を吊り上げる際にクレーン等のフックを引っ掛けるためのものであり、本実施の形態では、2個の金具11aが内槽11の前方側(図2左側)及び後方側(図2右側)にそれぞれ配設されている。
【0026】
断熱材12は、内槽11を断熱するためのものであり、断熱性能を有する材料から構成され、内槽11と外槽13との間に充填されている。これにより、内槽11を断熱して、内槽11に貯留したLCO2を保冷することができる。
【0027】
なお、本実施の形態では、断熱材12が発泡ウレタンにより構成され、内槽11の外面に断熱材12(発泡ウレタン)が吹き付けられている。但し、断熱材12は、必ずしも発泡ウレタンに限られるものではなく、例えば、グラスウールや真空断熱材などであっても良い。
【0028】
外槽13は、内槽11及び断熱材12を保護するためのものであり、図2に示すように、内槽11の長手方向(図2左右方向)に分割される合計4個の胴板13a,13b及び鏡板13c,13dにより構成されている。
【0029】
胴板13a,13bは、内槽11の前方側(図2左側)及び後方側(図2右側)に対応する部分をそれぞれ保護するものであり、横長の略円筒状に構成されている。また、鏡板13c,13dは、内槽11の前端(図2左側)及び後端(図2右側)に対応する部分をそれぞれ保護するものであり、略皿状に構成されている。
【0030】
これら胴板13a,13b及び鏡板13c,13dは、図2に示すように、胴板13aと胴板13bとが、胴板13aと鏡板13cとが、胴板13bと鏡板13dとが、それぞれリベットRにより接合されている。
【0031】
また、図2に示すように、外槽13の内周側には、胴板13aと胴板13bとの接合部、胴板13aと鏡板13cとの接合部および胴板13bと鏡板13dとの接合部の各接合部に対応して合計3個の中空部材15,16,17が配設されている。
【0032】
ここで、図3(a)及び図3(b)を参照して、中空部材15,16,17の詳細構成について説明する。なお、各中空部材15,16,17の構成はそれぞれ共通であるので、ここでは胴板13aと胴板13bとの接合部に対応して配設される中空部材15を代表例として説明する。
【0033】
中空部材15は、図3(b)に示すように、中空の断面を有するパイプ状の材料から構成され、その内部には空洞Hhが形成されている。
【0034】
また、中空部材15は、図3(a)に示すように、略円筒状に構成される胴板13a,13bの内周面に沿う円環状に形成されている。但し、中空部材15,16,17の形状は、必ずしも円環状に限られるものではなく、例えば、上述したフレーム3(図1参照)に中空部材15,16,17が干渉する場合には、フレーム3に干渉する部分を切り欠いた形状に形成しても良い。
【0035】
図2に戻って説明する。図2に示すように、外槽13の胴板13a,13bには、内槽11に取り付けられた金具11aに対向する部分を切り欠いて開口13a1,13b1が形成されると共に、その開口13a1,13b1には、蓋部材20が覆設されている。
【0036】
蓋部材20は、開口13a1,13b1を覆うためのものであり、略平板状に構成され、リベットRにより胴板13a,13bに接合されている。また、図2に示すように、外槽13の内周側には、開口13a1,13b1の周縁に沿って環状部材21,22が配設されている。なお、環状部材21,22の詳細構成については、図4を参照して後述する。
【0037】
防水部材14は、断熱材12の外周を覆い断熱材12を防水するためのものであり、防水性を有するシート状の材料(本実施の形態では、ビニル樹脂を主成分とする材料)から構成され、2枚の防水部材14が中空部材15と中空部材16との間および中空部材15と中空部材17との間にそれぞれ架設されている。
【0038】
また、防水部材14で覆われる部分以外の断熱材12、即ち、鏡板13c,13dの内側に対応する部分の断熱材12には、防水性を有する被覆剤(図示せず)が外面に施されており、被覆剤により断熱材12の外周を覆うことで、断熱材12の防水対策がなされている。
【0039】
これにより、断熱材12を防水して、タンク10の防水性を高めることができる。よって、タンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、断熱材12が水分を含んでしまうことを回避して、タンク10の断熱性能の低下を防止することができる。
【0040】
なお、防水部材14は、後述するように、胴板13a,13bの開口13a1,13b1に対応して一部が切り欠かれると共に、その切り欠かれた部分を埋めるべく、開口13a1,13b1を覆う開口防水部材23を備えている。
【0041】
次いで、図3(b)及び図3(c)を参照して、胴板13aと胴板13bとの接合部、胴板13aと鏡板13cとの接合部および胴板13bと鏡板13dとの接合部の各接合部の詳細について説明する。
【0042】
まず、図3(b)を参照して、胴板13aと胴板13bとの接合部について説明する。胴板13aと胴板13bとの接合部は、図3(b)に示すように、胴板13aと胴板13bとが上下に重ね合わされた状態でリベットRにより接合されている。
【0043】
これにより、胴板13aと胴板13bとが重ね合わされる部分(以下、「胴板13aと胴板13bとの繋ぎ目」と称す。)からタンク10内に侵入する雨水などの水分の進入経路をより長く確保することができ、タンク10内に水分を侵入し難くすることができる。
【0044】
なお、リベットRの周囲および胴板13aと胴板13bとの繋ぎ目には、隙間を埋めるためのシール剤(図示せず)が施されており、シール剤によりリベットRの周囲および胴板13aと胴板13bとの繋ぎ目の隙間を埋めることで、タンク10の防水対策がなされている。
【0045】
また、図3(b)に示すように、胴板13aと胴板13bとが接合された状態において、リベットRの先端(図3(b)上側)は、胴板13aと胴板13bとの接合部に対応して配設された中空部材15の空洞Hhに挿通されている。
【0046】
これにより、リベットRの周囲に施されたシール剤に割れや剥がれが生じ、リベットRを伝ってタンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、かかる水分を中空部材15の空洞Hhに導くことができる。よって、断熱材12が水分を含んでしまうことを回避して、タンク10の断熱性能の低下を防止することができる。
【0047】
加えて、リベットRの先端が中空部材15の空洞Hhに挿通されているので、中空部材15によりリベットRの先端を被包して、断熱材12及び防水部材14をリベットRによる損傷から保護することができる。
【0048】
なお、上下に重ね合わされた状態において下側の胴板13a(以下、単に「下側の胴板13a」と称す。)と中空部材15との当接面には、隙間を埋めるためのシール剤(図示せず)が施されており、シール剤により胴板13aと中空部材15との隙間を埋めることで、タンク10の防水対策がなされている。
【0049】
更に、図3(b)に示すように、胴板13aと胴板13bとの接合部には、貫通孔18が設けられている。貫通孔18は、中空部材15の空洞Hhとタンク10の外部とを連通するものであり、重力方向下方(本実施の形態ではタンク10の底部)に胴板13a,13bと中空部材15とを貫通して穿設されている。
【0050】
これにより、中空部材15の空洞Hhに導いた水分を貫通孔18からタンク10の外部へ排出することができる。その結果、タンク10内に水分が侵入することに伴うタンクローリー1の車両重量の増加を抑制して、車両重量の増加に起因する最大積載量の減少を防止することができる。
【0051】
胴板13aと胴板13bとの接合部において、防水部材14は、図3(b)に示すように、中空部材15に対向する縁部が下側の胴板13aと中空部材15との間に挟み入れられている。これにより、胴板13aと胴板13bとの繋ぎ目に施されたシール剤に割れや剥がれが生じ、胴板13aと胴板13bとの繋ぎ目からタンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、かかる水分が断熱材12に至るまでの経路を遮断することができる。
【0052】
加えて、防水部材14の縁部が下側の胴板13aと中空部材15との間に挟み入れられることで、かかる経路が中空部材15の空洞Hhに繋がるので、胴板13aと胴板13bとの繋ぎ目からタンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、かかる水分を中空部材15の空洞Hhに導くことができる。よって、断熱材12が水分を含んでしまうことを回避して、タンク10の断熱性能の低下を防止することができる。
【0053】
なお、下側の胴板13aと中空部材15との間に挟み入れられた防水部材14の縁部は、隙間を埋めるための接合用テープ(図示せず)により中空部材15に貼付されており、接合用テープにより防水部材14と中空部材15との隙間を埋めることで、タンク10の防水対策がなされている。
【0054】
次いで、図3(c)を参照して、胴板13aと鏡板13cとの接合部および胴板13bと鏡板13dとの接合部について説明する。なお、胴板13aと鏡板13cとの接合部および胴板13bと鏡板13dとの接合部はそれぞれ同様であるので、ここでは、胴板13aと鏡板13cとの接合部について説明し、胴板13bと鏡板13dとの接合部については説明を省略する。但し、胴板13bと鏡板13dとの接合部については、以下の説明において、胴板13aを胴板13bに、鏡板13cを鏡板13dに、中空部材16を中空部材17に、それぞれ置き換えたものに対応する。
【0055】
胴板13aと鏡板13cとの接合部は、図3(c)に示すように、胴板13aと鏡板13cとの接合部に対応して配設された中空部材16が鏡板13cに溶接され、中空部材16を介して胴板13aと鏡板13cとがリベットRにより接合されている。
【0056】
なお、リベットRの周囲および胴板13aと中空部材16との当接面には、隙間を埋めるためのシール剤(図示せず)が施されており、シール剤によりリベットRの周囲および胴板13aと中空部材16との隙間を埋めることで、タンク10の防水対策がなされている。
【0057】
また、図3(c)に示すように、胴板13aと鏡板13cとが接合された状態において、リベットRの先端(図3(c)上側)は、中空部材16の空洞Hhに挿通されている。
【0058】
これにより、リベットRの周囲に施されたシール剤に割れや剥がれが生じ、リベットRを伝ってタンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、かかる水分を中空部材16の空洞Hhに導くことができる。よって、断熱材12が水分を含んでしまうことを回避して、タンク10の断熱性能の低下を防止することができる。
【0059】
加えて、リベットRの先端が中空部材16の空洞Hhに挿通されているので、中空部材16によりリベットRの先端を被包して、断熱材12及び防水部材14をリベットRによる損傷から保護することができる。
【0060】
更に、図3(c)に示すように、胴板13aと鏡板13cとの接合部には、貫通孔19が設けられている。貫通孔19は、中空部材16の空洞Hhとタンク10の外部とを連通するものであり、重力方向下方(本実施の形態ではタンク10の底部)に胴板13aと中空部材16とを貫通して穿設されている。
【0061】
これにより、中空部材16の空洞Hhに導いた水分を貫通孔19からタンク10の外部へ排出することができる。その結果、タンク10内に水分が侵入することに伴うタンクローリー1の車両重量の増加を抑制して、車両重量の増加に起因する最大積載量の減少を防止することができる。
【0062】
胴板13aと鏡板13cとの接合部において、防水部材14は、図3(c)に示すように、中空部材16に対向する縁部が胴板13aと中空部材16との間に挟み入れられている。これにより、胴板13aと中空部材16との当接面(以下、「胴板13aと鏡板13cとの繋ぎ目」と称す。)に施されたシール剤に割れや剥がれが生じ、胴板13aと鏡板13cとの繋ぎ目からタンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、かかる水分が断熱材12に至るまでの経路を遮断することができる。
【0063】
加えて、防水部材14の縁部が胴板13aと中空部材16との間に挟み入れられることで、かかる経路が中空部材16の空洞Hhに繋がるので、胴板13aと鏡板13cとの繋ぎ目からタンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、かかる水分を中空部材16の空洞Hhに導くことができる。よって、断熱材12が水分を含んでしまうことを回避して、タンク10の断熱性能の低下を防止することができる。
【0064】
なお、胴板13aと中空部材16との間に挟み入れられた防水部材14の縁部は、隙間を埋めるための接合用テープ(図示せず)により中空部材16に貼付されており、接合用テープにより防水部材14と中空部材16との隙間を埋めることで、タンク10の防水対策がなされている。
【0065】
次いで、図4を参照して、環状部材21,22の詳細構成について説明する。図4(a)は、図2(a)のIVaで示す部分を拡大したタンク10の拡大上面図であり、図4(b)は、図2(b)のIVbで示す部分を拡大したタンク10の拡大断面図である。なお、図4(a)では、蓋部材20を取り外した状態が図示されている。
【0066】
なお、各環状部材21,22の構成はそれぞれ共通であるので、ここでは開口13a1の周縁に沿って配設される環状部材21を代表例として説明する。
【0067】
環状部材21は、図4(b)に示すように、中空の断面を有するパイプ状の材料から構成され、その内部には空洞Hrが形成されている。
【0068】
また、環状部材21は、図4(a)に示すように、開口13a1の周縁に沿う環状に形成されている。但し、環状部材21は、必ずしも1の部材から構成するに限られるものではなく、例えば、複数の部材を連結して構成しても良い。
【0069】
次いで、図4(b)を参照して、胴板13a,13bと蓋部材20との接合部の詳細について説明する。なお、胴板13aと蓋部材20との接合部および胴板13bと蓋部材20との接合部はそれぞれ同様であるので、ここでは、胴板13aと蓋部材20との接合部について説明し、胴板13bと蓋部材20と接合部については説明を省略する。但し、胴板13bと蓋部材20との接合部については、以下の説明において、胴板13aを胴板13bに、環状部材21を環状部材22に、開口13a1を開口13b1に、それぞれ置き換えたものに対応する。
【0070】
胴板13aと蓋部材20との接合部は、図4(b)に示すように、胴板13aと蓋部材20とが上下に重ね合わされた状態でリベットRにより接合されている。
【0071】
これにより、胴板13aと蓋部材20とが重ね合わされる部分(以下、「蓋部材20の接合部」と称す。)からタンク10内に侵入する雨水などの水分の進入経路をより長く確保することができ、タンク10内に水分を侵入し難くすることができる。
【0072】
なお、リベットRの周囲および蓋部材20の接合部には、隙間を埋めるためのシール剤(図示せず)が施されており、シール剤によりリベットRの周囲および蓋部材20の接合部の隙間を埋めることで、タンク10の防水対策がなされている。
【0073】
また、図4(b)に示すように、蓋部材20が胴板13aに接合された状態において、リベットRの先端(図4(b)下側)は、開口13a1の周縁に沿って配設された環状部材21の空洞Hrに挿通されている。
【0074】
これにより、リベットRの周囲に施されたシール剤に割れや剥がれが生じ、リベットRを伝ってタンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、かかる水分を環状部材21の空洞Hrに導くことができる。よって、断熱材12が水分を含んでしまうことを回避して、タンク10の断熱性能の低下を防止することができる。
【0075】
加えて、リベットRの先端が環状部材21の空洞Hrに挿通されているので、環状部材21によりリベットRの先端を被包して、断熱材12及び防水部材14をリベットRによる損傷から保護することができる。
【0076】
なお、胴板13aと環状部材21との当接面には、隙間を埋めるためのシール剤(図示せず)が施されており、シール剤により胴板13aと環状部材21との隙間を埋めることで、タンク10の防水対策がなされている。
【0077】
胴板13aと蓋部材20との接合部において、防水部材14は、図4(b)に示すように、胴板13aの開口13a1に対応して一部が切り欠かれその切り欠かれた部分の周縁が胴板13aと環状部材21との間に挟み入れられている。
【0078】
これにより、蓋部材20の接合部に施されたシール剤に割れや剥がれが生じ、蓋部材20の接合部からタンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、かかる水分が断熱材12に至るまでの経路を遮断することができる。よって、断熱材12が水分を含んでしまうことを回避して、タンク10の断熱性能の低下を防止することができる。
【0079】
なお、胴板13aと環状部材21との間に挟み入れられた防水部材14の周縁は、隙間を埋めるための接合用テープ(図示せず)により環状部材21に貼付されており、接合用テープにより防水部材14と環状部材21との隙間を埋めることで、タンク10の防水対策がなされている。
【0080】
また、図4(b)に示すように、胴板13aと蓋部材20との接合部には、開口防水部材23を備えている。開口防水部材23は、開口13a1を覆い開口13a1を防水するためのものであり、防水性を有するシート状の材料(本実施の形態では、ビニル樹脂を主成分とする材料)から構成され、環状部材21に覆設されている。
【0081】
これにより、蓋部材20の接合部に施されたシール剤に割れや剥がれが生じ、蓋部材20の接合部からタンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、かかる水分が断熱材12に至るまでの経路を遮断することができる。
【0082】
加えて、開口防水部材23が環状部材21に覆設されることで、かかる経路が環状部材21の空洞Hrに繋がるので、蓋部材20の接合部からタンク10内に雨水などの水分が侵入したとしても、かかる水分を環状部材21の空洞Hrに導くことができる。よって、断熱材12が水分を含んでしまうことを回避して、タンク10の断熱性能の低下を防止することができる。
【0083】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0084】
例えば、上記実施の形態では、タンクローリー1がタンク10を車両本体2により直接支持する構造、いわゆる単車として構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、車両本体2をトラクタ(牽引車)とそのトラクタにより牽引されるトレーラとにより構成し、タンク10をトレーラにより支持する構造、いわゆる連結車としてタンクローリー1を構成しても良い。
【0085】
上記実施の形態では、外槽13が合計4個の外板(胴板13a,13b及び鏡板13c,13d)により構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、胴板13a,13bのどちらか1つを省略して合計3個の外板により外槽13を構成しても良く、或いは、胴板13a,13bに新たな胴板を追加して合計5個以上の外板により外槽13を構成しても良い。
【0086】
上記実施の形態では、中空部材15,16,17がそれぞれ共通に構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、各中空部材15,16,17をそれぞれ異なる構成としても良く、或いは、中空部材15,16,17のいずれか1つを異なる構成としても良い。
【0087】
例えば、タンク10内に雨水などの水分が侵入し易い接合部に配設される中空部材を他の接合部に配設される中空部材よりも大きなサイズとして空洞Hhを大きく確保することで、空洞Hhに導いた水分の処理能力の向上を図ることができる。
【0088】
上記実施の形態では、防水部材14及び開口防水部材23がビニル樹脂を主成分とする材料から構成される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、アスファルトを主成分とする材料であっても良い。この場合には、アスファルトの断熱性能を利用して内槽11を断熱することができる。
【0089】
上記実施の形態では、貫通孔18,19がタンク10の底部に穿設される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、上述したように、フレーム3との干渉を避けるべく中空部材15,16,17の一部を切り欠いた形状に形成する場合には、その切り欠いた端部において中空部材15,16,17の空洞Hhとタンク10の外部とが連通するように構成しても良い。この場合には、貫通孔18,19を不要とすることができる。
【0090】
上記実施の形態では、防水部材14が中空部材15,16,17に直接貼付される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、中空部材15,16,17よりも幅広の平板を胴板13a,13bと中空部材15,16,17との間に介設し、かかる平板に防水部材14を貼付するように構成しても良い。
【0091】
また、上記実施の形態では、防水部材14及び開口防水部材23が環状部材21,22に直接貼付される場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、例えば、環状部材21,22よりも幅広の平板を胴板13a,13bと環状部材21,22との間に介設し、かかる平板に防水部材14及び開口防水部材23を貼付するように構成しても良い。
【0092】
これら場合には、かかる平板により防水部材14及び開口防水部材23の貼付代を確保することができるので、サイズの規定された既製の材料を中空部材15,16,17及び環状部材21,22として流用することができる。
【0093】
以下に本発明の変形例を示す。請求項1記載のタンクローリーにおいて、前記タンクは、前記外槽の一部を切り欠いて開口が形成され、その外槽に形成される前記開口を覆うためにリベットにより前記外槽に接合される蓋部材と、中空の断面を有し内部に空洞が形成されると共に前記開口の周縁に沿って前記外槽の内周側に配設される環状部材とを備え、その環状部材の内部に形成された前記空洞に前記リベットの先端が挿通された状態で前記蓋部材が前記外槽に接合されていることを特徴とするタンクローリーA1。
【0094】
タンクローリーA1によれば、環状部材の内部に形成された空洞にリベットの先端が挿通された状態で蓋部材が外槽に接合されているので、リベットを伝ってタンク内に水分が侵入したとしても、かかる水分を環状部材の空洞に導くことができる。よって、断熱材が水分を含んでしまうことを回避して、タンクの断熱性能の低下を防止することができる。
【0095】
加えて、断熱材が水分を含んでしまうことを回避することができるので、タンク内に水分が侵入することに伴う車両重量の増加を抑制して、車両重量の増加に起因する最大積載量の減少を防止することができる。
【0096】
更に、タンクローリーA1によれば、環状部材の空洞にリベットの先端が挿通された状態で蓋部材が外槽に接合されているので、環状部材によりリベットの先端を被包して、防水部材および断熱材をリベットによる損傷から保護することができる。
【0097】
タンクローリーA1において、前記防水部材は、前記開口に対応して一部が切り欠かれその切り欠かれた部分の周縁が前記外槽と前記環状部材との間に挟み入れられていることを特徴とするタンクローリーA2。
【0098】
タンクローリーA2によれば、防水部材は、開口に対応して一部が切り欠かれその切り欠かれた部分の周縁が外槽と環状部材との間に挟み入れられているので、タンク内に水分が侵入したとしても、かかる水分が断熱材に至るまでの経路を遮断することができる。よって、断熱材が水分を含んでしまうことを回避して、タンクの断熱性能の低下を防止することができる。
【0099】
タンクローリーA2において、前記防水部材は、前記開口を覆う開口防水部材を備え、その開口防水部材が前記環状部材に覆設されていることを特徴とするタンクローリーA3。
【0100】
タンクローリーA3によれば、防水部材は、開口を覆う開口防水部材を備えているので、蓋部材の接合部からタンク内に水分が侵入したとしても、かかる水分が断熱材に至るまでの経路を遮断することができる。
【0101】
また、タンクローリーA3によれば、かかる開口防水部材が環状部材に覆設されているので、蓋部材の接合部からタンク内に水分が侵入したとしても、かかる水分を環状部材の空洞に導くことができる。よって、断熱材が水分を含んでしまうことを回避して、タンクの断熱性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施の形態におけるタンクローリーの側面図である。
【図2】(a)は、タンクの上面図であり、(b)は、図2(a)のIIb−IIb線におけるタンクの断面図である。
【図3】(a)は、図2(a)のIIIa−IIIa線におけるタンクの断面図であり、(b)は、図2(b)のIIIbで示す部分を拡大したタンクの拡大断面図であり、(c)は、図2(b)のIIIcで示す部分を拡大したタンクの拡大断面図である。
【図4】(a)は、図2(a)のIVaで示す部分を拡大したタンクの拡大上面図であり、(b)は、図2(b)のIVbで示す部分を拡大したタンクの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0103】
1 タンクローリー
10 タンク
11 内槽
12 断熱材
13 外槽
13a,13b 胴板(外板、外槽の一部)
13c,13d 鏡板(外板、外槽の一部)
14 防水部材
15,16,17 中空部材
18,19 貫通孔
Hh 中空部材の空洞
R リベット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する内槽と、その内槽の外周を覆い前記内槽を断熱する断熱材と、その断熱材の外周を覆うと共に前記内槽の長手方向に分割される複数の外板により構成されそれら複数の外板の隣り合う外板同士をリベットにより接合して形成される外槽とを有するタンクを備え、そのタンクに前記液体を保冷しつつ貯留して輸送するタンクローリーおいて、
前記タンクは、
前記断熱材と前記外槽との間に配設され前記断熱材の外周を覆い前記断熱材を防水するシート状の防水部材と、
中空の断面を有し内部に空洞が形成されると共に前記外板の接合部に対応して前記外槽の内周側に配設される複数の中空部材とを備え、
その中空部材の内部に形成された前記空洞に前記リベットの先端が挿通された状態で前記隣り合う外板同士が接合されていることを特徴とするタンクローリー。
【請求項2】
前記空洞と前記タンクの外部とを連通する貫通孔を重力方向下方に備えていることを特徴とする請求項1記載のタンクローリー。
【請求項3】
前記防水部材は、前記複数の中空部材の隣り合う中空部材間に架設され前記中空部材に対向する縁部が前記外槽と前記中空部材との間に挟み入れられていることを特徴とする請求項1又は2に記載のタンクローリー。
【請求項4】
前記複数の外板は、前記隣り合う外板同士が上下に重ね合わされた状態で接合され、
前記防水部材は、上下に重ね合わされた状態において下側の外板と前記中空部材との間に前記縁部が挟み入れられていることを特徴とする請求項3記載のタンクローリー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−111417(P2010−111417A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285352(P2008−285352)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】