説明

タンク内洗浄装置

【課題】洗浄用の専用器具構造を有しないタンクであっても、タンク内を効果的に洗浄できるタンク内洗浄装置を提供する。
【解決手段】中空なタンクT内を洗浄するために使用される洗浄装置1であって、先端に洗浄器具を有する軸方向に沿って延びた軸状の洗浄手段10と、洗浄手段10をタンクT内に案内する案内手段20と、を備えており、案内手段20は、洗浄手段10を、貫通孔の軸方向への移動は可能であるが、貫通孔の軸方向と直交する方向への移動が固定された状態となるように保持するものである。洗浄手段10をタンクTの貫通孔の軸方向へ移動させることができるので、タンクT内全体を洗浄することができる。案内手段20によって貫通孔の軸方向と直交する方向への移動が固定された状態となるように保持されているので、洗浄器具を正確に位置決めすることができる。よって、タンクT内全体を、洗浄ムラがないように効果的に洗浄することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内洗浄装置に関する。さらに詳しくは、電気給湯機器の貯湯タンクや化学工業等における重合缶や反応缶などのタンク内を洗浄するタンク内洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気給湯機器の貯湯タンクでは、長期間使用することによってその内面に水垢や鉄成分、シリカ、亜鉛成分、銅成分等の汚れが付着してくる。かかる汚れが付着した場合には、水質の悪化や配管材の目詰まり等の問題が発生するので、汚れを除去する洗浄作業が必要となる。
【0003】
ここで、タンクは、その用途に応じて種々の形状、構造のものが採用される。
当初より比較的短期間で定期的に内部を洗浄することが予定されているものであれば、洗浄用の器具等をタンク内に挿入する開口部が設けられる場合がある。
一方、汚れが付きにくいタンク(例えば、電気給湯機器の貯湯タンクや化粧品、酒造、飲料水などの製品タンクや原料タンク等)では、頻繁にタンク内を洗浄することが想定されていないので、洗浄専用の開口部は設けられない。
【0004】
このため、汚れが付きにくいタンクについてその内面を洗浄する場合には、他の用途のために設けられている開口部から、洗浄用の器具をタンク内に挿入して洗浄作業を行わなければならない。
例えば、電気給湯機のタンクT等では、図13に示すように、洗浄用の開口がないため、タンク内を洗浄する際には、タンクの上端に設けられている出湯口Taから普通の清掃に使用される洗浄用の器具(ブラシやホース等)を挿入して洗浄を行わなければならない。
【0005】
しかるに、図13に示すようなタンクTの出湯口Taから普通の清掃に使用されるブラシやホースを入れて洗浄しても、タンクTの出湯口Taは細いため、ブラシが届く範囲や水を当てることができる範囲は限られてしまい、十分な洗浄を行うことは困難である。
【0006】
かかる不具合を解決できる洗浄用器具として特許文献1に示すような洗浄装置が開発されている。
【0007】
特許文献1には、タンクに設けられたマンホールの開口を塞ぐ曲面を備えた蓋状治具と、蓋状治具に貫通突設された中空管と、中空管内に挿通される高圧ホースとを備えたホース回転装置が開示されている。
この装置では、中空管がマンホールから挿入されるように蓋状治具を配置して、中空管をガイドとしてタンク内にノズル付ホースを入れているので、中空管の長さや中空管の先端の位置を調整すれば、ある程度、タンク内の所定の位置に水を吹き付けることができる。
【0008】
しかるに、タンクの深い位置まで洗浄するには中空管はある程度の長さが必要であるが、特許文献1の技術の中空管は、曲げることができないまっすぐな通管であるから、かかる中空管をマンホールからタンク内に挿入するには、マンホールの上方や周囲に広いスペースが必要である。すると、この洗浄装置を使用して洗浄できるタンクは、マンホール近傍に広い空間がある場所に設置されているものに限られてしまう。
【0009】
また、特許文献1には、中空管の長さが短くても、高圧ホースをタンク内に長く突出させて、ノズルの噴射圧を左右アンバランスとし、高圧ホースを回転させれば、ノズルがタンクの内壁面に沿って周回するようになるから、タンクの中間部から下部に掛けての内壁面を洗浄することができる旨が記載されている。
しかし、この方法では、ノズルの噴射圧や高圧ホースの回転速度等によってノズルが配置される位置が変わってしまう。すると、ノズルが配置される位置、つまり、水を吹き付ける位置を正確に制御することが困難であるから、洗浄ムラができたり、洗浄が不十分となったりしてしまう可能性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−302341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記事情に鑑み、タンク内を洗浄するための専用構造を有しないタンクであっても、タンク内を効果的に洗浄することができるタンク内洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明のタンク内洗浄装置は、中空なタンク内を洗浄するために使用される洗浄装置であって、先端に洗浄器具を有する軸方向に沿って延びた軸状の洗浄手段と、該洗浄手段を、前記タンクに設けられた貫通孔から該タンク内に案内する案内手段と、を備えており、該案内手段は、前記洗浄手段を、前記貫通孔の軸方向への移動は可能であるが、前記貫通孔の軸方向と直交する方向への移動が固定された状態となるように保持するものであることを特徴とする。
(可搬式装置)
第2発明のタンク内洗浄装置は、第1発明において、前記洗浄手段は、先端にノズルを有する、可撓性を有する洗浄用管と、軸方向に沿って延びた、前記洗浄用管が配置される貫通孔を有する管状の管状ガイドと、を備えており、該管状ガイドは、軸方向に沿って延びた収容溝を有する一対のガイド部材を、該収容溝によって前記貫通孔が形成されるように連結して形成されたものであり、各ガイド部材は、軸方向に沿って延びた溝を有する複数のガイドピースを、互いに屈曲可能に連結して形成されたものであることを特徴とする。
第3発明のタンク内洗浄装置は、第2発明において、前記案内手段は、前記一対のガイド部材の収容溝によって形成される貫通孔に前記洗浄用管が配置された状態となるように前記一対のガイド部材同士を連結して前記洗浄手段を形成する連結機構と、該連結機構によって形成された前記洗浄手段を前記タンクの貫通孔に向けて送る送り機構と、を備えた本体部と、前記タンクの貫通孔に対する前記本体部の移動を固定するように前記本体部を前記タンクに取り付ける固定部と、を備えていることを特徴とする。
第4発明のタンク内洗浄装置は、第3発明において、前記本体部には、前記固定部によって前記タンクに取り付けられた状態において前記タンクの貫通孔と対向する位置に、前記送り機構によって送られる前記洗浄手段を前記タンクの貫通孔に案内する排出通路が形成されており、該排出通路の軸方向と交差する方向から前記連結機構に対して前記一対のガイド部材を送る一対の導入通路が形成されており、前記連結機構は、前記一対の導入通路から供給された前記一対のガイド部材のガイドピースを、該ガイドピースの軸方向が前記排出通路の軸方向と平行となるように姿勢を変更しつつ、前記一対のガイド部材における対向するガイドピース同士を接近させて連結させる機構を備えている
ことを特徴とする。
第5発明のタンク内洗浄装置は、第2、第3または第4発明において、前記ガイドピースは、前記管状ガイドが形成された状態において、対向する前記ガイドピース同士が接近した状態を維持するように係合する係合機構を備えていることを特徴とする。
(固定式装置)
第6発明のタンク内洗浄装置は、第1発明において、前記案内手段は、前記タンクを収容し得る収容空間を有したベース部材と、該ベース部材の上方に配置された、前記洗浄手段を前記タンクに設けられた貫通孔に案内するガイド部材と、を備えており、該ガイド部材は、前記洗浄手段を、前記タンクの貫通孔の軸方向に沿って移動させる移動機構を備えていることを特徴とする。
第7発明のタンク内洗浄装置は、第6発明において、前記タンクを、前記ベース部材の収容空間に順次搬送し得る搬送手段を備えており、前記ガイド部材は、前記洗浄手段の中心軸と、前記タンクの貫通孔の中心軸とを一致させる位置決め機構を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によれば、洗浄手段をタンクの貫通孔の軸方向へ移動させることができるので、タンク内全体を洗浄することができる。しかも、案内手段によって貫通孔の軸方向と直交する方向への移動が固定された状態となるように保持されているので、洗浄手段が傾いたりせず、洗浄器具を正確に位置決めすることができる。よって、タンク内全体を、洗浄ムラがないように効果的に洗浄することができる。
(可搬式装置)
第2発明によれば、管状ガイドの貫通孔に洗浄用管を配置しているから、洗浄用管が可撓性を有していても、その先端のノズルを正確な位置に配置することができる。しかも、管状ガイドを一対のガイド部材を連結して形成しており、各ガイド部材を複数のガイドピースを互いに屈曲可能に連結して形成しているので、タンクの貫通孔に入れるまでは、一対のガイド部材を分離しかつ各ガイド部材を屈曲させておくことができる。すると、各ガイド部材を折り曲げておくなどすれば、管状ガイドとなっていない各ガイド部材を保管しておく場所を少なくできるので、タンクの貫通孔の近傍に十分な空間がなくても、洗浄手段をタンク内に挿入することができる。
第3発明によれば、本体部の連結機構によって一対のガイド部材と洗浄用管から洗浄手段を形成し、形成された洗浄手段を送り機構によってタンクの貫通孔に向けて送ることができる。しかも、固定部によってタンクの貫通孔に対する本体部の移動が固定されているので、形成された洗浄手段を安定した状態でタンクの貫通孔からタンク内に送ることができる。
第4発明によれば、一対のガイド部材のガイドピースを排出通路の軸方向と交差する方向から連結機構に対して供給するので、タンクの貫通孔の上方に十分な空間がなくても、タンク内に洗浄手段を挿入できる。
第5発明によれば、係合機構によってガイドピース同士を係合させているだけであるので、簡単な構造でかつ確実に、互いに対向するガイドピース同士が洗浄作業中に離間することを防ぐことができる。
(固定式装置)
第6発明によれば、ベース部材の収容空間にタンクを配置し、ガイド部材によって洗浄手段を案内した状態で移動機構によって洗浄手段を移動させれば、洗浄器具を、タンク内における所望の位置に安定した状態で配置することができる。
第7発明によれば、搬送手段によってタンクをベース部材の収容空間に順次搬送できるので、複数のタンクを連続して洗浄することができる。よって、タンクの洗浄効率を向上させることができる。しかも、収容空間に搬送されたタンクの貫通孔の位置が、移動機構によって洗浄手段が移動する経路からずれていても、位置決め機構によって洗浄手段の移動経路とタンクの貫通孔の中心軸とを一致させることができるから、確実に洗浄手段をタンクの貫通孔からタンク内に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1実施形態のタンク内洗浄装置1をタンクTに設置した状態の概略説明図である。
【図2】図1におけるタンク内洗浄装置1の概略拡大説明図である。
【図3】一対のガイド部材15,15から管状ガイド12を形成している状態の概略説明図である。
【図4】ガイドピース16の概略斜視図である。
【図5】ガイドピース16の概略説明図である。
【図6】案内手段20の本体部21において、一対のガイド部材15,15から管状ガイド12を形成している状態の概略説明図である。
【図7】案内手段20の本体部21の概略説明図である。
【図8】第2実施形態のタンク内洗浄装置1Bの概略正面図である。
【図9】第2実施形態のタンク内洗浄装置1BにタンクTを設置した状態における概略側面図である。
【図10】第2実施形態のタンク内洗浄装置1Bに使用する洗浄器具52の概略説明図である。
【図11】洗浄具52bの概略説明図である。
【図12】他の洗浄具52bの概略説明図である。
【図13】タンク内洗浄装置1によって内面を洗浄するタンクTの概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明のタンク内洗浄装置は、電気給湯機器の貯湯タンクや化学工業等における重合缶や反応缶などのタンク内面を洗浄するための洗浄装置であって、内部を洗浄するための専用の機構(例えば、洗浄用孔やタンク内に恒常的に設置される洗浄装置)等を有しないタンクであってもその内面を効果的に洗浄することができることに特徴を有するものである。
【0016】
以下では、代表として、図13に示すような構造を有する電気給湯機器の貯湯タンク(以下、単にタンクTという)において、出湯管Taの流路から本発明のタンク内洗浄装置の洗浄手段を挿入して、タンクTの内面を洗浄する場合について説明する。
【0017】
なお、本発明のタンク内洗浄装置は、内部を洗浄するための専用の機構を有しないタンクに用いると有効であるが、専用の機構を有するタンクも、本発明のタンク内洗浄装置が洗浄する対象とすることができる。つまり、内部と外部との間を連通する貫通孔を有し、かつ、その貫通孔を通して洗浄手段を挿入することができるタンクであれば、本発明のタンク内洗浄装置によって洗浄することができる。
また、以下では、軸方向が鉛直に配置されたタンクを洗浄する場合を説明するが、軸方向が水平となるように配置されたタンクや、軸方向が斜めに配置されたタンクの洗浄にも使用できるのは、いうまでもない。
【0018】
(タンク内洗浄装置1)
つぎに、第1実施形態のタンク内洗浄装置1を説明する。
【0019】
(洗浄手段10)
図1および図2において、符号11は、第1実施形態のタンク内洗浄装置1(以下、単にタンク内洗浄装置1という)における洗浄手段10の洗浄用管を示している。この洗浄用管11は、その先端には、洗浄器具に相当するノズル11aが取り付けられている。
一方、洗浄用管11の基端は、高圧の水を供給し得る高圧水噴射機などの高圧水供給手段に連結されている。ここでいう高圧とは、後述するようにノズル11aからタンクT内面に向けて水を噴射したときに、その水の水圧によってタンクT内面の水垢などが除去できる程度の水圧を意味している。この水圧は、例えば、15MPa以上、好ましくは30MPa以上の水圧である。とくに、30MPa以上の水圧であれば、電気給湯機器の貯湯タンク内面に付着した汚れは、水を吹き付けるだけでほぼ確実に除去することができる。
【0020】
また、符号15は、洗浄手段10の一対のガイド部材15,15を示している。この一対のガイド部材15,15は、両者を連結すると、洗浄用管11を収容し得る貫通孔を備えた管状の管状ガイド12となるものである。
なお、管状ガイド12の貫通孔は、収容した洗浄用管11がその中心軸周りに回転することができる程度の径に形成されている。
【0021】
(案内手段20)
図1および図2において、符号21は、タンク内洗浄装置1の案内手段20の本体部を示している。この本体部21は、洗浄手段10の管状ガイド12を案内するものであり、図1および図2では、特許請求の範囲にいうタンクTの貫通孔に相当する出湯管Taの流路を通して、管状ガイド12をタンクT内に供給し得るように配置されている。
【0022】
この本体部21の下面には、出湯管Taに本体部21を固定する固定部が設けられている。固定部は、本体部21がタンクTに対して出湯管Taの流路の径方向(つまり、流路の軸方向と直交する方向、図1および図2であれば左右方向や前後方向)に移動しないように固定するものである。この固定部は、上記機能を有するものであれば、どのような構造を採用してもよい。例えば、出湯管Taに配管と連結するための雄ネジが形成されている場合であれば、本体部21に出湯管Taの雄ネジと螺合する雌ネジを形成して固定部とすることができるし、本体部21にナット状部材等を設けてこのナット状部材を固定部として採用することも可能である。
【0023】
なお、本体部21の下面には複数の脚部25が設けられている。この複数の脚部25は、洗浄作業中等において、出湯管Taに対して本体部21等から力が加わって、出湯管Taが損傷することを防ぐために設けられている。
【0024】
また、案内手段20の本体部21は、洗浄手段10の洗浄用管11と一対のガイド部材15,15が供給されると、洗浄用管11を内部に収容した管状ガイド12を形成する機能を有している。具体的には、一対のガイド部材15,15を連結して中心軸に沿って貫通する貫通孔を有しかつこの貫通孔に洗浄用管11が収容された管状ガイド12を形成する機能を有している。
なお、管状ガイド12は、その先端から洗浄用管11のノズル11aが突出した状態となるように形成される。
【0025】
そして、本体部21は、形成された管状ガイド12を排出通路21h(図6参照)を通して出湯管Taの流路に向けて送り、この出湯管Taの流路を通して管状ガイド12をタンクT内に進入させる機能も有している。
【0026】
以上のごとき構成であるから、案内手段20を固定部によってタンクTの出湯管Taに取り付け、この案内手段20に対して、洗浄手段10の洗浄用管11と一対のガイド部材15,15を供給すると、洗浄用管11を貫通孔に収容した管状ガイド12が形成される。
そして、この管状ガイド12は排出通路21hと出湯管Taの流路とを通してタンクT内に向けて送られるので、管状ガイド12の先端、つまり、洗浄用管11のノズル11aをタンクT内に配置させることができる。
すると、高圧水供給手段から高圧の水を洗浄用管11に供給すれば、高圧の水をノズル11aから放出させてタンクTの内面に吹き付けることができるから、この高圧の水によってタンクTの内面を洗浄することができる。
【0027】
また、案内手段20によって、管状ガイド12をタンクT内に送る量を調整すれば、タンクTの出湯管Taの流路の軸方向におけるノズル11aの位置を調整することができる。つまり、タンクTの軸方向におけるノズル11aの位置を調整することができる。
しかも、管状ガイド12の貫通孔内で洗浄用管11をその中心軸周りに回転させることができる。すると、洗浄用管11とともにノズル11aが回転するから、タンクTの内面の周方向に沿って高圧の水を吹き付ける位置を変更することができる。
【0028】
そして、本体部21は、出湯管Taに対してその流路の径方向の移動が固定されているので、管状ガイド12をタンクTの軸方向に沿って移動させたり、洗浄用管11を回転させたりしても、出湯管Taの流路の径方向、つまり、タンクTの径方向におけるノズル11aの位置が変化しない。
したがって、高圧の水の吹き付け位置を安定した状態でタンクTの軸方向に沿って移動させることができ、高圧の水による洗浄作業中であってもノズル11aの位置を確実に固定しておくことができるから、タンクTの内面を洗浄ムラがないように効果的に洗浄することができる。
【0029】
なお、上記例では、洗浄用管11が管状ガイド12内で回転できるようになっている場合を説明したが、ノズル11aとして、水を噴射する部分が回転する機能を有するものであれば、洗浄用管11は管状ガイド12内で回転できないように保持されていてもよい。
【0030】
(各手段の詳細な説明)
つぎに、上述した洗浄手段10および案内手段20の構造を詳細に説明する。
【0031】
(洗浄手段10の詳細な説明)
図3に示すように、洗浄手段10は、上述したように、洗浄用管11と一対のガイド部材15,15とを備えている。
【0032】
まず、洗浄用管11は、可撓性を有する管であって、その先端にノズル11aが設けられたものである。洗浄用管11は、自由に湾曲させることができる程度の可撓性と、高圧水供給手段から供給される水の水圧に耐えることができる程度の強度を両方兼ね備えたものである。
【0033】
ノズル11aは、一般的に使用される市販のノズルである。例えば、水を噴出す角度(図3であれば上下方向の角度)を変えることができるノズルや、噴射される水圧によって洗浄用管11に対して水を噴射する部分が回転する機能を有するノズル等である。
なお、ノズル11aは、タンクT内面に上述したような水圧の水を吹き付けることができる機能を有するものであればよく、ノズル11aが有するその他の機能はとくに限定されない。
しかし、水を噴出す角度を変えることができる機能を有するノズルであれば、タンクT内面において水を吹き付けることができる範囲を広くできる点で好ましい。また、水を噴射する部分が回転する機能を有するノズルであれば、タンクTの内面の周方向に沿って水の吹き付け位置を移動させる場合において、洗浄用管11を回転させなくてもよくなるという利点が得られるので、好ましい。
【0034】
図3に示すように、一対のガイド部材15,15は、実質的に同じ構造を有するものであり、いずれも複数のガイドピース16を、互いに屈曲可能に連結して形成されている。
【0035】
図4および図5に示すように、ガイドピース16は、平坦面16fと円弧状面16sとを有する、軸方向に沿って延びた断面略半円形の棒状の部材である。
このガイドピース16の平坦面16fには、ガイドピース16の軸方向に沿って、その表面から凹んだ断面略半円形の溝16gが形成されている。たとえるならば、ガイドピース16は、円管をその中心軸を含む面で2等分したような形状に近似した形状に形成されているのである。
そして、溝16gは、その内面の曲率半径が洗浄用管11の半径よりも大きくなるように形成されている。具体的には、洗浄用管11の直径D1が8mm程度であれば、溝16gの内面の曲率半径は4.75mm程度となるように形成されている。
【0036】
また、ガイドピース16の両端16a,16bには連結構造が設けられており、一のガイドピース16の一端16a(図4(A)および図5では左端が相当する)と他のガイドピース16の他端16b(図4(A)および図5では右端が相当する)とが互いに屈曲可能に連結することができるようになっている。
具体的には、一のガイドピース16の一端16aに設けられている貫通孔と、他のガイドピース16の他端16bに設けられている貫通孔の位置を合わせて、両貫通孔にピン等を挿通する。すると、両ガイドピース16は、その平坦面16fが同一平面状に位置するように配置される連結姿勢(図5(A)参照)と、ピン等を支点として円弧状面16s側に曲がった屈曲姿勢(図3参照)との間で姿勢を変更できるように構成されている。
【0037】
そして、各ガイド部材15は、複数のガイドピース16を、隣接するガイドピース16同士が上記のごとき状態となるように連結して形成されている。
このため、各ガイド部材15では、複数のガイドピース16を連結姿勢とすると、複数のガイドピース16の平坦面16fが同一平面状に位置し、しかも、複数のガイドピース16の溝16gが同軸状に並んだ状態となるのである。
【0038】
なお、ガイド部材15において、複数のガイドピース16を連結姿勢としたときに、複数のガイドピース16の溝16gが同軸状に並んで形成される溝が、特許請求の範囲にいう収容溝に相当する。
【0039】
また、ガイドピース16の平坦面16fは、一対のガイド部材15,15が平坦面16f,16f同士を対向させた状態で連結されたときに面接触するように形成してもよいし、図4および図5に示すように、面接触する部分(図4および図5ではガイドピース16の軸方向の端部が相当する)と、面接触する部分から凹んだ部分(図4および図5ではガイドピース16の軸方向の中央部が相当する)とを有するようにしてもよく、とくに限定されない。
以下では、一対のガイド部材15,15が平坦面16f,16f同士を対向させた状態で連結されたときに面接触する部分を、ガイドピース16の平坦面16fという。
【0040】
以上のごとき構成であるので、一対のガイド部材15,15における複数のガイドピース16を連結姿勢とし、互いに対向するガイドピース16,16の平坦面16f,16f同士が面接触するように配置し連結する。すると、一対のガイド部材15,15の収容溝によって形成された、その中心に洗浄用管11の直径よりも太い貫通孔を有する管状ガイド12を形成することができる。
よって、一対のガイド部材15,15における複数のガイドピース16を連結姿勢として連結する際に、収容溝の間に洗浄用管11を配置しておけば、貫通孔に洗浄用管11が収容された管状ガイド12を形成することができるのである。
【0041】
そして、洗浄用管11は管状ガイド12内に収容されているので、ノズル11aの位置は管状ガイド12によって位置決めして固定することができる。よって、洗浄用管11を洗浄用管11が可撓性を有していても、ノズル11aを位置決めしておくことができるから、ノズル11aからタンクTの内面における所定の場所に高圧の水を吹き付けることができる。
【0042】
(係合機構)
また、ガイドピース16は、一対のガイド部材15,15がガイドピース16,16の平坦面16f,16f同士が対向するように配置したときに、両者が離間しないように連結する係合機構を有している。
【0043】
図4および図5に示すように、ガイドピース16の一端16aの端面には、その端面から突出した係合突起16pが設けられている。この係合突起16pは、平坦面16fよりも上方に位置し、かつ、その軸方向がガイドピース16の軸方向と平行になるように形成されている。具体的には、ガイドピース16,16の平坦面16f,16f同士が対向しかつ面接触するように配置すると、他方のガイドピース16側に位置するように係合突起16pは形成されている。
【0044】
一方、ガイドピース16の他端16bの端面であって、ガイドピース16の溝16gの中心軸を含みかつ平坦面16fと直交する直交面に対して平坦面16fと逆側に位置する端面には、その端面から凹んだ係合溝16dが設けられている。この係合溝16dは、その軸方向がガイドピース16の軸方向と平行になるように形成されている。
また、係合突起16pおよび係合溝16dは、係合突起16pの中心軸から平坦面16fまでの距離と、係合溝16dの中心軸から平坦面16fまでの距離とが同じ長さとなるように形成されている。
そして、係合突起16pおよび係合溝16dは、前記直交面から係合突起16pの中心軸までの距離と、この直交面から係合溝16dの中心軸までの距離とが同じ距離となるように形成されている。
【0045】
以上のごとき構成であるから、一対のガイド部材15,15におけるガイドピース16,16の平坦面16f,16f同士を対向させかつその軸方向が平行となるように配置し、しかも、一対のガイド部材15,15における隣接するガイドピース16,16同士を連結姿勢の状態とすれば、係合突起16pと係合溝16dとを係合させることができる。
すると、係合突起16pおよび係合溝16dは、いずれもその軸方向がガイドピース16の軸方向と平行であるから、一対のガイド部材15,15は、その対向するガイドピース16,16同士が離間する方向への移動が、係合突起16pと係合溝16dとの係合によって妨げられる。言い換えれば、一対のガイド部材15,15における対向するガイドピース16,16同士が接近した状態に維持される。
【0046】
よって、洗浄作業中などにおいて、一対のガイド部材15,15を離間させるような力が加わっても、互いに対向するガイドピース16,16同士、つまり、一対のガイド部材15,15が離間することを防ぐことができる。
しかも、係合突起16pを係合溝16dに係合させているだけであるから、ガイドピース16の構造が複雑になることを防ぐことができる。
【0047】
上記の係合突起16pと係合溝16dが、特許請求の範囲にいう係合機構に相当する。
なお、係合機構の構造は上記のごとき構成に限定されず、一対のガイド部材15,15を連結したときに、一対のガイド部材15,15の対向するガイドピース16,16同士が離間しないような構造であればよい。
【0048】
また、一対のガイド部材15,15において、隣接するガイドピース16同士は、連結姿勢よりも平坦面16f側に曲がることができるようになっていてもよいのであるが、連結姿勢よりも平坦面16f側に曲がらないようにしておくことが好ましい。
この場合、一対のガイド部材15,15は、両者が連結されている状態において、一方のガイド部材15が、他方のガイド部材15側に折れ曲がることを防ぐことができる。すると、係合機構によって一対のガイド部材15,15の対向するガイドピース16,16同士が離間する方向に移動することを防ぐことができるし、一対のガイド部材15,15同士が連結したまま折れ曲がることも無い。
よって、一対のガイド部材15,15を連結して形成された管状ガイド12は、確実に真っ直ぐな管状構造が維持されるので、管状ガイド12をより安定した状態でタンクTの軸方向に沿って移動させることができるし、高圧の水による洗浄作業中であってもノズル11aの位置を確実に固定しておくことができる。
【0049】
(案内手段20の詳細な説明)
図6および図7に示すように、本体部21は、略箱形に形成された内部に中空な空間を有する装置であって、一対のガイド部材15,15と洗浄用管11とから管状ガイド12を形成する機能と、形成された管状ガイド12をタンクTの出湯管Taに向けて送る機能とを有している。
【0050】
図6および図7に示すように、本体部21には、そのほぼ中央であって、下端と内部の中空な空間との間を連通する排出通路21hが設けられている。この排出通路21hは、上述した固定部によって本体部21をタンクTの出湯管Taと連結すると、その中心軸と出湯管Taの流路の中心軸とがほぼ一致する位置に形成されている。
【0051】
図6および図7に示すように、本体部21の上部には、排出通路21hの軸方向の上方に位置するように開口部が設けられている。この開口部の両側方(図6および図7では開口部の左右)には、開口部に対して一対のガイド部材15,15を導く一対の導入通路22a,22aがそれぞれ設けられている。
各導入通路22aは、本体部21の上部に設けられた溝状の通路であり、その幅がほぼ一対のガイド部材15,15の幅(つまり、ガイドピース16の幅)よりもわずかに広くなるように形成されている。
そして、各導入通路22aは、その底面22fにおいて内方に位置する部分が開口部に向かって下傾するように形成されている。
【0052】
図6および図7に示すように、開口部の下方には間隔をあけて配置された一対のローラ23,23が設けられている。この一対のローラ23,23は、その表面にゴム等の弾性を有する層が設けられおり、その弾性層の表面間の距離が、前記開口部の幅よりも狭く、かつ、管状ガイド12の外径よりもわずかに狭くなるように配設されている。しかも、一対のローラ23,23間の隙間の二等分線が、排出通路21hの軸方向と一致するように配設されている。
【0053】
また、この一対のローラ23,23は、モータ等の駆動手段によって回転されるように構成されている。そして、一対のローラ23,23は、両者の間に管状ガイド12が配置されると、その管状ガイド12を導入通路22aに向けて移動させるように、その回転速度や回転方向が調整されている。具体的には、図6では、右側のローラ23は反時計回りに、左側のローラ23は時計回りに回転し、かつ、両ローラ23,23が同じ回転速度で回転するように制御されている。
【0054】
(案内手段20の動作説明)
以上のごとき構成であるので、以下のようにして、案内手段20によって、洗浄手段10の管状ガイド12が形成され、管状ガイド12がタンクTの出湯管TaからタンクT内に供給されるのである。
【0055】
まず、一対のガイド部材15,15を案内手段20の本体部21に配置する前に、その先端に位置するガイドピース16同士を連結して、管状ガイド12を形成する(図3参照)。このとき、管状ガイド12の貫通孔に洗浄用管11を配置し、ノズル11aが管状ガイド12の先端から突出した状態となるように配置する。
【0056】
なお、上記状態としたときに、洗浄用管11は、管状ガイド12の軸方向に移動できないように固定されていることが好ましい。洗浄用管11の移動を固定する方法は、とくに限定されないが、以下の方法などを採用することができる。
ノズル11aと洗浄用管11との間に取付用補強管を設け、一対のガイド部材15,15の先端のガイドピース16に、この取付用補強管を挟むと、取付用補強管と密着し取付用補強管がその軸方向に移動できないように保持する先端専用ピースを設ける。かかる構成とすると、先端専用ピースによって取付用補強管を挟むと、ノズル11aが管状ガイド12の先端から突出し、かつ、洗浄用管11が管状ガイド12の軸方向に移動できないようにすることができる。
【0057】
上記のごとき状態とした管状ガイド12を、本体部21の上部の開口部から挿入し、一対のローラ23,23間に配置する(図6)。
上述したように、ガイド部材15はピン等を支点として円弧状面16s側に曲がった屈曲姿勢(図3参照)をとることができる。このため、管状ガイド12から続く一対のガイド部材15,15のガイドピース16は、その円弧状面16sが導入通路22aの底面22f上に載せられた状態となるように配置される。つまり、導入通路22aに配置されているガイドピース16は、その軸方向が管状ガイド12の軸方向と交差するように配置される。つまり、導入通路22aに配置されているガイドピース16は、その軸方向が排出通路21hの軸方向と交差するように配置される。
【0058】
管状ガイド12およびガイド部材15を上記のごとく配置すると、モータ等の駆動手段を作動させて一対のローラ23,23を回転させる。すると、一対のローラ23,23の回転に伴って管状ガイド12は排出通路21hに向かって移動する。
すると、一対のローラ23,23よりも上方に位置する一対のガイド部材15,15は一対のローラ23,23に向かって引き込まれる。つまり、一対の導入通路22a,22aに配置されているガイド部材15のガイドピース16が一対のローラ23,23に向かって引き込まれる。
【0059】
ここで、各導入通路22aの底面22fは、その内方に位置する部分が開口部に向かって下傾するように形成されている。このため、ガイドピース16は、一対のローラ23,23に向かって移動しながら、その軸方向と排出通路21hの軸方向とのなす角度が小さくなるように(その軸方向が排出通路21hの軸方向と平行に近づくように)その姿勢が変化する。
また、開口部の幅よりも一対のローラ23,23間の距離が短くなっているから、一対のローラ23,23に近づくに従って、ガイドピース16,16同士は接近する。しかも、一対のローラ23,23間の距離が管状ガイド12の外径よりも短いので、ガイドピース16,16同士はその平坦面16f同士が面接触するように連結される。
【0060】
このとき、各ガイドピース16は、その軸方向が排出通路21hの軸方向と平行になるので、管状ガイド12となっているガイドピース16に対して連結姿勢の状態となる。すると、係合機構によって、一対のガイド部材15,15のガイドピース16,16同士が連結されるので、新たに連結されたガイドピース16,16の分だけ、管状ガイド12が延長された状態となる。
なお、係合突起16pおよび係合溝16dが上述したような構成になっていれば、ガイドピース16の姿勢が変化するときに、スムースに係合突起16pと係合溝16dとを係合させることができる。
【0061】
一対のローラ23,23の回転を継続していくと、上述したような動作により、管状ガイド12は順次延長され、管状ガイド12の先端がタンクTの出湯管Taを通ってタンクT内に進入していく。
【0062】
やがて、ノズル11aが所望の深さに到達するので、その位置で一対のローラ23,23の回転を停止する。すると、管状ガイド12は一対のローラ23,23に挟まれているので、管状ガイド12の移動が固定され、ノズル11aもその位置で固定される。
【0063】
この状態で高圧水供給手段から高圧の水を洗浄用管11に供給すれば、高圧の水をノズル11aから放出させることができる。しかも、ノズル11aは管状ガイド12に固定されており、管状ガイド12も一対のローラ23,23によって保持されているので、水を放出する際の反力がノズル11aに加わってもノズル11aは移動しない。よって、タンクTの内面の所望の位置にノズル11aから水を吹き付けることができる。
【0064】
また、一対のローラ23,23を正逆回転させれば、管状ガイド12を昇降させることができるから、ノズル11aからタンクTの内面への水の噴き付けを、一対のローラ23,23によって管状ガイド12を昇降させながら行うことも可能である。
【0065】
以上のごとく、管状ガイド12を一対のガイド部材15,15を連結して形成しており、各ガイド部材15を複数のガイドピース16を互いに屈曲可能に連結して形成している。
このため、案内手段20の本体部21内で連結されるまでは、一対のガイド部材15,15を分離しかつ各ガイド部材15を屈曲させておくことができる。すると、タンクT内に挿入されていない一対のガイド部材15,15は、タンクTの側方に垂らしておいたり、タンクTの側方で丸めておいたりすることもできるから、タンクTの出湯管Taの上方だけでなく、その周囲に十分な空間がない場合でも、洗浄作業を行うことができる。
【0066】
しかも、本体部21に対して、一対のガイド部材15,15のガイドピース16を排出通路21hの軸方向と交差する方向から供給するようになっているので、タンクTの出湯管Taの側方にしか空間がないような場合でも、洗浄手段10を案内手段20によってタンクTの出湯管TaからタンクT内に挿入することができる。
【0067】
上述した本体部21の一対の導入通路22a,22a、一対のローラ23,23が特許請求の範囲にいう連結機構に相当し、本体部21の一対のローラ23,23が特許請求の範囲にいう送り機構に相当する。
【0068】
(タンク内洗浄装置1B)
つぎに、第2実施形態のタンク内洗浄装置1Bを説明する。
第2実施形態のタンク内洗浄装置1Bは、軸状の洗浄手段50を、案内手段60によってタンクTの出湯管Taの流路からタンクT内に挿入する点では共通するが、洗浄手段10として棒状の挿入軸52を備えており、この挿入軸52が屈曲しない軸部52aを採用している点で相違するものである。
【0069】
(洗浄手段50)
図8において、符号52は、洗浄手段50の挿入軸52を示している。この挿入軸52は、中空な軸本体52aと、この軸本体52aの先端に設けられた洗浄器具52bとから構成されている。この挿入軸52の軸本体52aは、その基端(図8では上端)が後述する案内手段60によって保持されており、その先端がタンクTの出湯管TaからタンクT内に挿入されるようになっている。
【0070】
挿入軸52における軸本体52aは、その基端にホースなどの洗浄用水供給管51の先端が連結されており、中空な空間と洗浄用水供給管51とが連通されている。一方、軸本体52aの先端には、中空な空間と連通するようにノズル53が設けられている(図11参照)。
そして、洗浄用水供給管51の基端は高圧水供給手段に接続されているので、高圧水供給手段から高圧の水を洗浄用水供給管51に供給すれば、高圧の水をノズル53から噴射することができるようになっている。
【0071】
また、図10に示すように、軸本体52aの基端近傍には、回転機構52cが設けられている。この回転機構52cは、後述する案内手段60の軸回転手段63によって保持されている。具体的には、軸本体52aの軸方向と後述する軸回転手段63の昇降を案内する支持柱66の軸方向とが平行となるように保持されている。
この回転機構52cは、その外周面に沿って歯が形成されており、軸回転手段63の歯車と噛み合っている。
このため、軸回転手段63を作動させれば、軸本体52aをその中心軸周りに回転させることができるのである。
なお、前述した洗浄用水供給管51は、軸本体52aが回転しても、両者間が接続した状態に維持されるように接続されている。
【0072】
そして、軸本体52aの先端には、タンクTの内面に接触して、タンクTの内面を擦って汚れを除去するブラシ等の洗浄器具52bが設けられている。
この洗浄器具52bは、例えば、図11に示すような、基端が軸本体52aの先端に揺動可能に取り付けられ、先端にブラシbが設けられた一対の軸状部材を有するものを採用することができる。かかる構造の洗浄器具52bの場合、軸本体52aが回転すると、遠心力によってブラシbが外方に移動するので(図11(B)参照)、ブラシbをタンクTの内面に接触させることができる。すると、軸本体52aの回転に伴ってブラシbがタンクTの内面を移動するので、ブラシbによってタンクTの内面を擦って汚れを除去することができる。
【0073】
以上のごとき構成であるので、ノズル53から高圧の水を噴射させながら、軸本体52aをその中心軸周りに回転させれば、水が噴きつけられたるタンクTの内面を洗浄器具52bのブラシbによって擦って、タンクTの内面に付着している汚れを除去することができる。
【0074】
なお、洗浄器具52bは上記のごとき構造に限定されず、軸本体52aの回転に伴ってタンクTの内面を移動し、タンクTの内面を擦って汚れを除去することができるようなものであればよい。
例えば、図12のように、複数本の軸状部材bからなり、基端が軸本体52aの先端に揺動可能に取り付けられ全ての軸状部材bの先端が連結部54によって連結された構造を有するものでもよい。このような構造の場合、軸状部材bとして可撓性を有するものを使用し、連結部54を軸本体52aの先端に向けて移動させる機構を設けておく。すると、連結部54を軸本体52aの先端に向けて移動させることによって、軸状部材bが外方に膨らむように撓むので、軸状部材bの外面をタンクTの内面に接触させることができる。このため、軸本体52aを回転させれば、その回転に伴って軸状部材bの外面がタンクTの内面に沿って移動するので、軸状部材bによってタンクTの内面を擦って汚れを除去することができる。この場合には、連結部54の先端にノズル53を配置しておけば、軸状部材bの影響を受けることなく、ノズル53からタンクTの内面に水を噴きつけることができる。
【0075】
(案内手段60)
図8および図9において、符号61はタンクTを収容し得る収容空間を有した案内手段60のベース部材を示している。このベース部材61は、例えばアングル材等を組み合わせて形成されたものであるが、タンクTを収容し得る収容空間を有するものであればよく、特に限定されない。
【0076】
このベース部材61の上方には、前述した洗浄手段50を案内するガイド部材62が設けられている。このガイド部材62は、その軸方向が鉛直方向に沿って配置された支持柱66を備えている。この支持柱66には、前述した軸回転手段63が、支持柱66の軸方向に沿って昇降可能に取り付けられている。
また、ガイド部材62は、支持柱66の軸方向と平行となるように配設されたネジ軸65が設けられている。このネジ軸65には、軸回転手段63に連結されたナット部材が螺合している。そして、ガイド部材62には、ネジ軸65を回転させる昇降用駆動部64も設けられている。
【0077】
すると、昇降用駆動部64を作動させれば、ネジ軸65を回転させることができ、ネジ軸65に沿ってナット部材が移動するので、ナット部材とともに軸回転手段63を支持柱66に沿って移動させることができる。すると、軸回転手段63に軸本体52aが連結されており、しかも、軸本体52aの軸方向と支持柱66の軸方向とが平行に配設されているから、軸本体52aをその軸方向に沿って昇降させることができる。そして、昇降用駆動部64の作動量を調整すれば、所定の位置に洗浄器具52bを配置して、タンクT内面における所定の位置を洗浄することができる。
【0078】
第2実施形態のタンク内洗浄装置1Bは以上のごとき構成であるから、ベース部材61の収容空間にタンクTを収容し、タンクTの出湯管Taの中心軸と軸本体52aの中心軸とを一致させれば、軸本体52aをタンクTの軸方向に移動させることができる。つまり、軸本体52aの先端に設けられている洗浄器具52bを、タンクTの出湯管Taの軸方向に沿って移動させることができる。
すると、昇降用駆動部64の作動量を調整すれば、タンクT内における所定の位置に洗浄器具52bを安定した状態で配置できる。その状態で、ノズル53からタンクT内面に水を噴きつけながら軸回転手段63によって軸本体52aを回転させれば、タンクT内面における所定の位置を洗浄することができる。
また、昇降用駆動部64による軸本体52aの昇降も同時に行えば、タンクTの内面をその軸方向に沿って順次洗浄することができる。
【0079】
(連続処理)
上述した第2実施形態のタンク内洗浄装置1Bは、既設のタンクTの周囲に設置してタンクTの洗浄を行うようにしてもよいのであるが、設備等から取り外されたタンクTを処理する場合には、既設のタンク内洗浄装置1Bのベース部材61の収容空間にタンクTを配置して、洗浄を行ってもよい。
【0080】
この場合に、ベース部材61の収容空間にタンクTを順次搬送し得る搬送手段を備えていれば、複数のタンクTを連続して洗浄することができ、タンクTの洗浄効率を向上させることができる。
【0081】
例えば、図8および図9のように、タンクTを載せて搬送する台車70などを搬送手段として採用することができるし、コンベア等によってベース部材61の収容空間にタンクTを搬入搬出するようにしてもよい。
【0082】
そして、上記のごとく、タンクTを、搬送手段によって順次既設のタンク内洗浄装置1Bにおける収容空間に配置する場合、タンクTの出湯管Taの中心軸と軸本体52aの中心軸とがズレる可能性が高いので、両者を一致させる必要がある。
【0083】
既設のタンク内洗浄装置1Bにおける収容空間にタンクTを配置する場合、タンクTの出湯管Taの中心軸と軸本体52aの中心軸とがズレれば、タンクTを移動させなければならなくなる。しかし、タンクTは重いので、両者を一致させるその作業が大変である。
【0084】
しかし、案内手段60が、軸本体52aの中心軸と、タンクTの出湯管Taの中心軸とを一致させる位置決め機構を備えていれば、この位置決め機構によってタンクTの出湯管Taの中心軸と軸本体52aの中心軸とを一致させることができるので好ましい。
例えば、上述したガイド部材62を水平方向に沿って2次元的に移動させることができるような機構を位置決め機構として採用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明のタンク内洗浄装置は、電気給湯機器の貯湯タンクや化学工業等における重合缶や反応缶などのタンク内を洗浄する装置に適している。
【符号の説明】
【0086】
1 タンク内洗浄装置
10 洗浄手段
11 洗浄用管
11a ノズル
12 管状ガイド
15 ガイド部材
16 ガイドピース
16g 溝
20 案内手段
21 本体部
21h 排出通路
22a 導入通路
50 洗浄手段
60 案内手段
61 ベース部材
T タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空なタンク内を洗浄するために使用される洗浄装置であって、
先端に洗浄器具を有する軸方向に沿って延びた軸状の洗浄手段と、
該洗浄手段を、前記タンクに設けられた貫通孔から該タンク内に案内する案内手段と、を備えており、
該案内手段は、
前記洗浄手段を、前記貫通孔の軸方向への移動は可能であるが、前記貫通孔の軸方向と直交する方向への移動が固定された状態となるように保持するものである
ことを特徴とするタンク内洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄手段は、
先端にノズルを有する、可撓性を有する洗浄用管と、
軸方向に沿って延びた、前記洗浄用管が配置される貫通孔を有する管状の管状ガイドと、を備えており、
該管状ガイドは、
軸方向に沿って延びた収容溝を有する一対のガイド部材を、該収容溝によって前記貫通孔が形成されるように連結して形成されたものであり、
各ガイド部材は、
軸方向に沿って延びた溝を有する複数のガイドピースを、互いに屈曲可能に連結して形成されたものである
ことを特徴とする請求項1記載のタンク内洗浄装置。
【請求項3】
前記案内手段は、
前記一対のガイド部材の収容溝によって形成される貫通孔に前記洗浄用管が配置された状態となるように前記一対のガイド部材同士を連結して前記洗浄手段を形成する連結機構と、
該連結機構によって形成された前記洗浄手段を前記タンクの貫通孔に向けて送る送り機構と、を備えた本体部と、
前記タンクの貫通孔に対する前記本体部の移動を固定するように、前記本体部を前記タンクに取り付ける固定部と、を備えている
ことを特徴とする請求項2記載のタンク内洗浄装置。
【請求項4】
前記本体部には、
前記固定部によって前記タンクに取り付けられた状態において前記タンクの貫通孔と対向する位置に、前記送り機構によって送られる前記洗浄手段を前記タンクの貫通孔に案内する排出通路が形成されており、
該排出通路の軸方向と交差する方向から前記連結機構に対して前記一対のガイド部材を送る一対の導入通路が形成されており、
前記連結機構は、
前記一対の導入通路から供給された前記一対のガイド部材のガイドピースを、該ガイドピースの軸方向が前記排出通路の軸方向と平行となるように姿勢を変更しつつ、前記一対のガイド部材における対向するガイドピース同士を接近させて連結させる機構を備えている
ことを特徴とする請求項3記載のタンク内洗浄装置。
【請求項5】
前記ガイドピースは、
前記管状ガイドが形成された状態において、対向する前記ガイドピース同士が接近した状態を維持するように係合する係合機構を備えている
ことを特徴とする請求項2、3または4記載のタンク内洗浄装置。
【請求項6】
前記案内手段は、
前記タンクを収容し得る収容空間を有したベース部材と、
該ベース部材の上方に配置された、前記洗浄手段を前記タンクに設けられた貫通孔に案内するガイド部材と、を備えており、
該ガイド部材は、
前記洗浄手段を、前記タンクの貫通孔の軸方向に沿って移動させる移動機構を備えている
ことを特徴とする請求項1記載のタンク内洗浄装置。
【請求項7】
前記タンクを、前記ベース部材の収容空間に順次搬送し得る搬送手段を備えており、
前記ガイド部材は、
前記洗浄手段の中心軸と、前記タンクの貫通孔の中心軸とを一致させる位置決め機構を備えている
ことを特徴とする請求項6記載のタンク内洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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