説明

タンク固定具及びタンク固定構造

【課題】タンクを設置面に固定してタンクの転倒を防止することができ、設置状態におけるタンクを転倒し難い低い位置に配置できると共に、平面視においてタンクから大きく突出することなく邪魔になり難いタンク固定具及びこのタンク固定具を用いたタンク固定構造を提供する。
【解決手段】タンク固定具1が、設置面3に固定される被固定部(第一被固定片部39、第二被固定片部44)を備える。また、タンク2の周壁部10下部に形成された凹み部(凹部18、凹段部22)の外面に沿って配置され、凹み部に取り付けられる被取付部(第一被取付片部37、第二被取付片部42)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクを設置面に固定するためのタンク固定具とタンク固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、雨水を利用するシステムにおいて、竪樋から導入された雨水を貯留するためのタンクが開示されている。このタンクは、設置面上に設置される筒状の支持体と、支持体の上部に挿入されて連結されるタンク本体を備えている。ところが、前記設置面上に設置されたタンクは転倒する恐れがある。
【0003】
一方、特許文献2には、脚を備えた貯湯式電気温水器が開示されている。前記脚は貯湯式電気温水器の下面に設けられており、この脚を取付用ベースに設けたアンカーボルトに固定できるようになっている。しかし、この貯湯式電気温水器は下面に脚を取り付ける分だけ、設置状態における貯湯式電気温水器は転倒しやすい高い位置に配置されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−6911号公報
【特許文献2】特開平9−178271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、タンクを設置面に固定してタンクの転倒を防止することができ、設置状態におけるタンクを転倒し難い低い位置に配置でき、しかも、平面視においてタンクから大きく突出せず邪魔になり難いタンク固定具及びこのタンク固定具を用いたタンク固定構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明のタンク固定具は、設置面に固定される被固定部と、タンクの周壁部下部に形成された凹み部の外面に沿って配置され、前記凹み部に取り付けられる被取付部を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、前記被固定部が前記凹み部の外面側に形成された凹所に配置されるものであることが好ましい。
【0008】
また、本発明のタンク固定構造は、前記タンク固定具を用いたタンク固定構造であって、前記タンクの凹み部の外面に沿って前記タンク固定具の被取付部が配置され、この被取付部が前記タンクの凹み部に取り付けられると共に、前記タンク固定具の被固定部が前記設置面に固定されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のタンク固定具及びタンク固定構造にあっては、タンクを設置面に固定してタンクの転倒を防止することができる。また、設置状態におけるタンクを転倒し難い低い位置に配置でき、また、タンク固定具が平面視においてタンクから大きく突出することなく邪魔になり難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の一例のタンク固定具とタンクを示す分解斜視図である。
【図2】同上のタンクの設置状態を示す背面図である。
【図3】同上のタンクにタンク固定具を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】同上のタンクの縦断面図である。
【図5】同上のタンク本体の斜視図である。
【図6】同上のタンク本体の背面図である。
【図7】同上のタンク固定具を示す斜視図である。
【図8】同上のタンク固定具を示し、(a)は正面図、(b)は底面図、(c)は右側面図、(d)は左側面図、(e)は平面図である。
【図9】同上のタンク固定具の被固定片部の設置面に対する固定構造を示す断面図である。
【図10】同上のタンク固定具の被取付片部のタンク本体に対する取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面に基づいて説明する。まず、本実施形態のタンク固定具1により設置面3に固定されるタンク2は液体貯留用のタンクであって、まずタンク2について説明する。
【0012】
タンク2は、図2のようにコンクリート等からなる設置面3の上に設置されて竪樋4から導入された雨水を貯留するための大型の雨水タンクであり、タンク2内に貯留された雨水は散水等に利用される。
【0013】
タンク2は平面視で左右方向に長形で且つ縦長のものであって、タンク状部分をなすタンク本体5と、タンク本体5の上端部に着脱自在に被せ付けられる蓋体7を備えており、蓋体7はタンク本体5の上端部に形成された開口部6(図5参照)を閉塞する。
【0014】
タンク本体5は高密度ポリエチレン樹脂等からなる合成樹脂製であって、ブロー成形により左右対称形状に成形された一体成形品である。
【0015】
図5に示されるように、タンク本体5の底面部の左右両側部分は下方に突出し、各突出部分は設置面3上に設置される脚部9を構成している。なお、雨水は脚部9の内部にも溜められるようになっている。
【0016】
タンク本体5の周壁部10は平面視略楕円形の筒状に形成されている。図6のように周壁部10の後面部11の上端部には、一方の側端部に給水口としての接続口12が設けられており、他方の側端部にオーバーフロー口13が形成されている。
【0017】
図2のように、接続口12には、竪樋4から分岐した給水路14の下流端が接続される。これにより竪樋4を流れる雨水を給水路14を介して接続口12からタンク本体5に流入させることができる。また、図5のようにタンク本体5の上面部の左右両側には第二の給水口として前記開口部6が形成されており、タンク本体5には接続口12からだけでなく各開口部6からも給水できるようになっている。
【0018】
図2のように、オーバーフロー口13には排水路15の上流端が接続され、排水路15の下流端は竪樋4の給水路14が分岐した箇所よりも下流側に接続される。これにより、タンク本体5内の雨水が所定量を超えた場合に、その超過した雨水をオーバーフロー口13から排水路15を介して竪樋4に排出することができる。
【0019】
図5に示されるように、タンク本体5の前面部16下部の左右方向中央部には、後方に凹んだ凹部17が形成されている。また、図1のように後面部11の下部において前記凹部17に対応する左右方向中央部には、凹み部として前方に凹んだ凹部18が形成されている。このように、タンク本体5の前面部16及び後面部11にタンク2の内方に向かって凹んだ凹部17,18を形成することで、タンク2下部の前面部16及び後面部11を補強することができる。このため、タンク2内に雨水が溜まったときに、タンク2の下部に水圧が加わってタンク2が変形することを防止できる。
【0020】
各凹部17,18は前面部16,後面部11の中間の高さ位置から脚部9の下端に至るまで形成されており、前側の凹部17の外面側には前方及び下方に開口する凹所21が形成され、後側の凹部24の外面側には後方及び下方に開口する凹所24が形成されている。
【0021】
図4のように、前側の凹部17の奥面部の上部には、吐水口としての蛇口20が設けられている。凹所21の下部には、じょうろやバケツ等の容器を蛇口20の下方に位置するように配置でき、これにより、蛇口20から下方に吐出した雨水を容器内に容易に入れることができる。また、後側の凹部18の奥面部は前方に向かって突となる弧状に形成されている。
【0022】
図6に示されるように、各脚部9の左右方向における外側端部には、第二の凹み部として、脚部9の後面部を前方に凹ませてなる凹段部22が形成されている。各凹段部22の外面側には後方、外側方、及び下方に開口する凹所41が形成されている。
【0023】
後側の凹部18の上面部及び各凹段部22の外側方を向く側面部の夫々には、取付孔28が形成されている(各凹段部22の取付孔28については図1等参照)。各取付孔28は、図10に示すように内面に雌ねじ部54が形成されており、この雌ねじ部54にねじ込まれた止水栓31により閉塞される。
【0024】
なお、タンク固定具1を用いずにタンク2を設置する場合、各取付孔28はタンク2の吐水口として利用したり、シャワーホース等の散水可能な散水装置を直接又は接続体を介して着脱自在に接続できるようにしても構わない。
【0025】
次にタンク固定具1について説明する。タンク固定具1は図3に示されるようにタンク2に取り付けられ、このタンク固定具1を設置面3に固定することで、タンク2はタンク固定具1を介して設置面3に固定される。
【0026】
図7に示されるように、タンク固定具1は金属板を折曲加工して形成したものであり、タンク本体5の後面部11の下部外面に沿って配置される前板部35を備えている。前板部35は、左右方向中央部に形成された第一被嵌込部36と、第一被嵌込部36を挟んで左右両側に位置する沿面部38とで構成されている。
【0027】
第一被嵌込部36は、水平断面が前方に突となる弧状となって両側が沿面部38に接続された弧状面部29を有している。また、第一被嵌込部36は、図1のように、弧状面部29の下縁から後方に向かって一体に突出する第一被固定片部39(第一の被固定部)と、弧状面部29の上縁の前部から後方に向かって一体に突出する第一被取付片部37(第一の被取付部)を有している。そして、弧状面部29、第一被固定片部39、及び第一被取付片部37により、第一被嵌込部36が構成されている。
【0028】
前板部35の両側縁の下端部には第二被嵌込部26が形成されている。第二被嵌込部26は、前板部35の側縁(沿面部38の外側縁)の下端部から前方に向かって一体に突出する第二被取付片部42(第二の被取付部)を有している。また、第二被嵌込部26は、第二被取付片部42の前縁から外側方に向かって一体に突出する沿片部43と、第二被取付片部42の下縁から外側方に向かって突出する第二被固定片部44(第二の被固定部)を有し、第二被固定片部44の前縁は沿片部43の下縁に接続されている。そして、第二被取付片部42、沿片部43、及び第二被固定片部44で第二被嵌込部26が構成されている。
【0029】
図8(e)に示されるように、第一被固定片部39の後縁、この両側に配置される両沿面部38の下縁、及びこの両側に配置される各第二被固定片部44の外縁は連続して、タンク固定具1の平面視略半楕円弧状をなす下端後縁46を構成する。
【0030】
図8(b)に示されるように、第一被固定片部39の左右両側部分及び各第二被固定片部44の中央部には、固定具を構成する芯棒打ち込み式のアンカーボルト47(図9参照)を挿通するための固定用孔48が夫々形成されている。また、図7のように、第一被取付片部37及び各第二被取付片部42には、取付具を構成する止水栓31(図10参照)を挿通するための取付用孔50が夫々形成されている。
【0031】
タンク固定具1を用いてタンク2をコンクリートからなる設置面3上に設置する場合、例えば以下のように行われる。
【0032】
まず、タンク固定具1にタンク2を取り付ける。これには、まず、図3に示すように、タンク固定具1の中央部に形成された第一被嵌込部36をタンク本体5の凹部18に嵌め込むと共に、タンク固定具1の両端部に設けられた第二被嵌込部26をタンク本体5の対応する凹段部22に嵌め込む。これにより、第一被嵌込部36の弧状面部29及び第一被取付片部37を、タンク2の凹部18の奥面部及び上面部の夫々に沿わせる。また、各第二被嵌込部26の第二被取付片部42及び沿片部43を、タンク2の対応する凹段部22側面部及び奥面部に沿わせる。そしてこの状態で、タンク固定具1の第一被取付片部37をタンク本体5の凹部18の上面部に取り付けると共に、タンク固定具1の各第二被取付片部42をタンク本体5の対応する凹段部22の側面部に取り付ける。
【0033】
第一被取付片部37及び各第二被取付片部42のタンク本体5への取り付けには、前記止水栓31が用いられる。図10に示すように、各止水栓31は、操作部52と、操作部52の中央部から突出した雄ねじ部53で構成されている。
【0034】
止水栓31を用いて第一被取付片部37や第二被取付片部42をタンク本体5に取り付けるには、操作部52を回転操作して、図10のように雄ねじ部53を取付孔28の雌ねじ部54にねじ込み、操作部52の外周部とタンク本体5の外面部の間に第一被取付片部37や第二被取付片部42を挟み込む。また、この際、操作部52とタンク本体5の外面部の間に雄ねじ部54を囲む環状のパッキン55を挟み込んで、操作部52とタンク本体5の外面部の間をシールしておく。このようにタンク固定具1をタンク本体5に取り付けると、タンク固定具1の下端後縁46は平面視においてタンク本体5の略半楕円弧状の前面部16に沿う。
【0035】
そして、上記のようにタンク固定具1を取り付けたタンク本体5の両脚部9を設置面3上に設置すると共に、タンク固定具1を設置面3上に設置固定する。タンク固定具1の設置面3への固定は、まず、設置面3において各固定用孔48に対応する箇所に図9に示されるようにアンカーボルト47を設け、次に各固定用孔48に対応するアンカーボルト47を挿通して、第一被固定片部39及び各第二被固定片部44を設置面3上に載置する。この後、各アンカーボルト47の設置面3上に突出した上端部にナット51を嵌め着け、各ナット51と設置面3の間に第一被固定片部39や第二被固定片部44を挟持する。これによって、タンク固定具1は設置面3上に固定され、タンク2は転倒が防止された状態で設置面3に固定される。
【0036】
また、本実施形態のタンク本体5の後面部11の上端部にはチェーン通し部25が設けられており、これにより図示しないチェーンをチェーン通し部25に通して、このチェーンを設置面3に設けたアンカーボルト等に固定することで、タンク本体5の上端部を設置面3に対して固定できるようになっている。このようにタンク2の上端部をチェーンにより固定することで、タンク2の転倒を一層確実に防止することができる。
【0037】
なお、上記ではタンク固定具1にタンク2を取り付けた後にタンク固定具1を設置面3に固定したが、タンク固定具1を設置面3に固定した後にタンク固定具1にタンク2を取り付けても構わない。
【0038】
以上説明した本実施形態のタンク固定具1は、第一被取付片部37及び第二被取付片部42をタンク2に取り付け、第一被固定片部39及び第二被固定片部44を設置面3に固定することで、タンク2を設置面3に強固に固定してタンク2の転倒を防止できる。また、第一被取付片部37や第二被取付片部42はタンク2の周壁部に形成された凹部18や凹段部22に取り付けられるので、タンク固定具1をタンク2の底面部に取り付ける場合と比較して、設置状態におけるタンク2を転倒し難い低い位置に配置できる。また、第一被取付片部37や第二被取付片部42は、タンク2の水圧に伴う変形を防止するために形成された凹部18や凹段部22に収めることができる。このため、第一被取付片部37や各第二被取付片部42を平面視でタンク2から大きく突出しないように配置することができ、タンク2の設置状態において第一被取付片部37や各第二被取付片部42が邪魔になり難い。
【0039】
また、第一被固定片部39や第二被固定片部44は凹部18や凹段部22の外面側に形成された凹所24や凹所41に配置することができるので、設置状態におけるタンク2を一層低い位置に配置することができる。また、第一被固定片部39や第二被固定片部44も凹部18や凹段部22に収めることができる。このため、第一被固定片部39及び各第二被固定片部44も平面視でタンク2から大きく突出しないように配置することができ、設置状態においてタンク固定具1が邪魔になり難い。
【符号の説明】
【0040】
1 タンク固定具
2 タンク
3 設置面
10 周壁部
18 凹部(凹み部)
22 凹段部(凹み部)
37 第一被取付片部(被取付部)
39 第一被固定片部(被固定部)
42 第二被取付片部(被取付部)
44 第二被固定片部(被固定部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面に固定される被固定部と、タンクの周壁部下部に形成された凹み部の外面に沿って配置され、前記凹み部に取り付けられる被取付部を備えたことを特徴とするタンク固定具。
【請求項2】
前記被固定部が前記凹み部の外面側に形成された凹所に配置されて前記設置面に設けられた固着具に固着されるものであることを特徴とする請求項1に記載のタンク固定具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のタンク固定具を用いたタンク固定構造であって、前記タンクの凹み部の外面に沿って前記タンク固定具の被取付部が配置され、この被取付部が前記タンクの凹み部に取り付けられると共に、前記タンク固定具の被固定部が前記設置面に固定されたことを特徴とするタンク固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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