説明

タンク孔開け装置

【課題】シリンダ等の作動部材を設けることなく、切断の進展に伴って支持アームを徐々に拡径動作させて切断片を保持することができ、構造を簡易化すると共に小型化する。回転する切断刃による孔の形成に伴って支持アームにより貫通孔周縁を支持して切断片を保持することができ、孔形成に係る時間を短縮して作業効率を向上する。切断片外周箇所が肉薄になっても、切断片外周に対してカッタ刃を安定的に作用させて孔を高い精度で形成すると共にカッタ刃の折損を防止し、長期に亘って孔を安定的に形成する。
【解決手段】貫通孔(3d)内に小径軸部(25a)が挿通されて大径部(25b)が貫通孔(3d)周縁の上面に圧接して軸体(23)に対するホルダ(25)の係合が解除された際に、軸体(23)に対してホルダ(25)を引張り弾性部材(33)の弾性力により軸線上方へ移動することにより保持アーム(35)を拡径方向へ搖動して貫通孔(3d)周縁の下面に係合する係合部(35a)を圧接させて保持可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタンク、特に車両用燃料タンクにゲージやセンサ等の各種部品を取付けるための孔を形成するタンク孔開け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンク、特に車両用燃料タンクにゲージやセンサ等の各種部品を取付けるための孔を形成する際に、は切断片がタンク内に落下して汚れるのを防止するため、孔開け作業の終了時に切断片をタンク外へ取出すように孔開け作業する必要があるが、この取出し作業によりタンクの製造効率が悪くなっている。
【0003】
切断作業の終了時に切断片を取出すことが可能なタンク孔開け装置としては、例えば特許文献1に示すタンク孔開け装置が知られている。該タンク孔開け装置はタンクの所定個所に各種部品を装着するための孔を開穿するドリルユニットに、スピンドルを回転中心として所定距離を隔ててカッタ刃を装着すると共にスピンドルの下方部に、スピンドルの軸心に沿って上下動するピストン、該ピストンの下部に固設されたピストンロッド、該ピストンロッドを囲繞するように下向き且つ等間隔で枢着された複数のアームからなり、アームには枢着部近傍の内側に突起部を突設すると共に該アームの下端部を外側に突設して爪部が形成され、更に、前記ピストンロッドにカム溝を設けて前記アームの突起部をこのカム溝に係合し、前記ピストンの上下動によりアームの突起部が押し上げ若しくは押し下げられて、アームの下端部が縮径若しくは拡径する膨拡機構部を設け、予め前記タンクの所定位置に開穿されている下孔に膨拡機構部を挿入して貫通させると共に膨拡機構部を拡径して該下孔の下面部を支持し、スピンドルと一体に回転するカッタ刃をタンクの表面に当接して所定径の孔を開穿し、更に前記カッタ刃が切り抜いた切断片を前記膨拡機構部にて保持するように構成される。
【0004】
上記したタンク孔開け装置の膨拡機構部にあっては貫通孔の下面部を支持するアームを拡径または縮径する部材として、ピストン及びピストンロッドにより構成されるシリンダを設け、スピンドルに遊嵌されたエアーパイプから圧縮空気を供給して作動させるように構成される。
【0005】
しかし、上記孔開け装置にあっては膨拡機構部の構造が複雑化して大型化するため、ある程度の大きさの貫通孔が形成されたタンクにしか孔を形成することができなかった。即ち、タンクに小径の孔を形成するには形成される孔に応じて貫通孔も小径になるが、大型化した膨拡機構部を小径の貫通孔内に挿入することができず、従って所望の大きさの孔を形成できなかった。
【0006】
また、上記膨拡機構部のエアーパイプはスピンドルに遊嵌され、スピンドルの回転時には回転しないように構成する必要がある。このため、上記孔開け装置の膨拡機構部は、タンクの貫通孔内に挿入して貫通させた後にアームを拡径作動して貫通孔の下面部を支持させることにより回転抵抗を与え、この状態でスピンドルを回転して孔開け動作を実行しても、エアーパイプが回転しないように構成している。
【0007】
このため、タンクに孔を形成するのに先立って貫通孔に対する膨拡機構部を挿入するための動作及び膨拡機構部を作動してアームを拡径して下面部を支持する動作をそれぞれ行う必要があり、孔開け作業に時間が掛かり、作業効率が悪かった。
【0008】
更に、上記アームは回転するカッタ刃による孔の開穿時には下穴の下面を支持して切断片がタンク内に抜け落ちるのを防止しているが、特に切断終期においては、切断片外周箇所が肉薄になって強度が弱くなっている。この状態で切断を継続すると、切断片外周に対してカッタ刃が不規則に作用して孔を高い精度で形成できないと共にカッタ刃が折損し易くなる問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3618693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、従来の孔開け装置の膨拡機構部にあっては、アームを拡径動作させるシリンダ等の作動部材を必要とするため、膨拡機構部が複雑化して大型化し、小径の孔を形成することが困難な点にある。また、回転するカッタ刃により孔の形成する際にはドリルユニットのスピンドルに対して膨拡機構部を回転止めする必要があり、孔形成に先立って膨拡機構部のアームを貫通孔周縁の下面部に支持させなければならず、孔形成に時間がかかり、作業効率が悪い点にある。更に、切断片外周箇所が肉薄になって強度が弱くなり、切断片外周に対してカッタ刃が不規則に作用して孔を高い精度で形成できないと共にカッタ刃が折損し易くなる点にある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、回転駆動されるスピンドルの軸線から軸線直交方向に所要の距離をおいて設けられる切断刃を、上記スピンドルを中心に回動してタンクの部品取付け部に孔を形成するタンク孔開け装置において、上記スピンドルの軸端部に対して基端部が融点可能に軸支され、先端部にカム面が設けられた軸体と、上記軸体に対して軸線方向へ所定のストロークで移動可能に挿嵌され、部品取付け部に予め穿設された貫通孔に挿入可能な外径の小径軸部及び貫通孔周縁に当接する外径の大径部を有し、軸体が挿嵌される軸孔と連通し、大径部及び小径部にわたる軸線長さからなる少なくとも2個の収容間隙が形成されたホルダと、上記軸体に対して上記ホルダを基端部側へ移動するように付勢する引張り弾性部材と、上記ホルダの各収容間隙内にて搖動可能に軸支されると共に上記カム面及び軸体の外周面に摺接可能で、貫通孔周縁の下面に係合可能な保持部を有した少なくとも2本の保持アームと、上記軸体に対して引張り弾性部材の弾性力に抗して軸線下方へ移動されるホルダを、各保持アームがカム面に当接する位置に係脱可能に保持する係合部材とを備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、シリンダ等の作動部材を設けることなく、切断の進展に伴って支持アームを徐々に拡径動作させて切断片を保持することができ、構造を簡易化すると共に小型化することができる。また、回転する切断刃による孔の形成に伴って支持アームにより貫通孔周縁を支持して切断片を保持することができ、孔形成に係る時間を短縮して作業効率を向上することができる。更に、切断片外周箇所が肉薄になっても、切断片外周に対してカッタ刃を安定的に作用させて孔を高い精度で形成すると共にカッタ刃の折損を防止し、長期に亘って孔を安定的に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】タンク孔開け装置により孔が形成されるタンクの部品取付け部を示す部分斜視図である。
【図2】タンク孔開け装置の全体斜視図である。
【図3】タンク孔開け装置の中央縦断面図である。
【図4】貫通孔にタンク孔開け装置のホルダを挿入した状態を示す説明図である。
【図5】切断開始前におけるタンク孔開け装置による凹所下面の保持状態を示す説明図である。
【図6】切断終期における凹所下面の保持状態を示す説明図である。
【図7】切断終了時における切断片の保持状態を示す説明図である。
【図8】タンク孔開け装置から切断片を取り外す状態を示す説明図である。
【図9】実施例2に係るタンク孔開け装置のホルダを貫通孔内に挿入した状態を示す説明図である。
【図10】実施例3に係るタンク孔開け装置のホルダを貫通孔内に挿入した状態を示す説明図である。
【図11】実施例3に係るタンク孔開け装置の保持部による貫通孔下面の支持状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、貫通孔内に小径軸部が挿通されて大径部が貫通孔周縁の上面に圧接して軸体に対するホルダの係合が解除された際に、軸体に対してホルダを引張り弾性部材の弾性力により軸線上方へ移動することにより保持アームを拡径方向へ搖動して貫通孔周縁の下面に係合する係合部を圧接させて保持可能にしたことを最良の実施形態とする。
【実施例1】
【0015】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
先ず、本発明に係るタンク孔開け装置1により孔が形成されるタンクとしての車輛用燃料タンク5を説明すると、図1に示すように車輛用燃料タンク5は異なる複数枚の合成樹脂シートを積層接着又は積層融着した合成樹脂製で、その上面には該車輛用燃料タンク5に装着される、例えばゲージや各種センサ、燃料ポンプ等の各種部品に応じた個数の部品取付け部3が一体に形成される。
【0016】
上記部品取付け部3は所要の外径及び高さで外周面に雄ねじ3aが旋設され、上面が上面板3bで閉鎖された筒状部3cとして形成される。そして上記上面板3bの中央部には所要深さで、中央部に後述するホルダ25の小径軸部25aが挿入可能な内径の貫通孔3dが予め形成された凹所3eが設けられる。そして孔としての開口7は上記上面板3bを筒状部3cの内周面に沿って切除して形成される。
【0017】
図2及び図3に示すように、上記上面板3bに開口7を形成するタンク孔開け装置1は、例えば少なくとも三次元方向へ移動制御される産業用ロボットのアーム(いずれも図示せず)の先端部に取付けられ、アームを移動制御して部品取付け部3に開口7を自動的に形成する。
【0018】
上記タンク孔開け装置1の本体(図示せず)にはスピンドル9が回転可能に軸支され、該スピンドル9には本体に設けられた電動モータ11の回転軸が駆動連結される。上記スピンドル9は電動モータ11の駆動により所要の回転数で回転される。
【0019】
上記スピンドル9には回転体13が固定され、該回転体13にはスピンドル9を回転中心として放射方向へ延出する刃物取付けアーム15が設けられる。該刃物取付けアーム15の先端部には上記スピンドル9の軸線と一致する図示する下方へ延出する刃先を有した切断刃17が取付けられる。
【0020】
なお、上記刃物取付けアーム15と反対側の回転体13にはバランサ部材13aが取付けられ、スピンドル9を中心に刃物取付けアーム15側と反対側の重量が一致するように調整される。
【0021】
上記回転体13の中心部にはスピンドル9に一致する軸線を有した遊転回転体19の軸部19aが軸受21を介して遊転可能に軸支される。該軸受21としてはスラスト方向及びラジアル方向の双方の荷重を受けるアンギュラ軸受が適している。
【0022】
上記遊転回転体19の下部には所要の軸線長さで軸線方向へ延出する軸体23の基端部が固定され、該軸体23の先端部(図示する下端側)には先端に向かって徐々に小径になるカム面23aが形成される。また、上記軸体23の軸線方向中間部には軸線方向へ延びる長孔23bが形成される。該長孔23bは軸体23に対する後述するホルダ25の軸線方向への移動量に応じた軸線長さに設定される。更に、上記長孔23bの下部に応じた軸体23の外周面には3個の係合凹部23cが軸線周りに等しい間隔をおいて形成される。
【0023】
上記軸体23はホルダ25の軸孔25c内に対して軸線方向へ摺動するように挿入支持する。該ホルダ25は上記凹所3e内に挿入されて底面に当接可能な外径の大径部25b及び該大径部25bの下部に一体形成され、上記貫通孔3d内に挿入可能な外径の小径軸部25aにより構成される。上記大径部25bには上記軸体23の軸線と直交する方向に軸線を有して上記長孔23b内に挿入されて軸線方向へ移動可能に支持される支持軸27の軸両端部が固定される。また、上記ホルダ25には軸線方向へ延出する3個の収容間隙25dが軸線周りに等しい間隔をおき、上記大径部25bの下部から小径軸部25aの下部に亘る軸線長さで形成される。
【0024】
また、上記ホルダ25の大径部25bには上記軸線直交方向へ延出する3個の取付け孔25eが軸線周りに等しい間隔をおいて形成され、各取付け孔25e内には上記係合凹部23cに係合するボール、軸ピン等の係合部材29が圧縮ばね等の係合弾性部材31の弾性力により放射方向内側へ付勢された状態で装着される。
【0025】
更に、上記軸体23には一端部が基端部に固定されると共に他端部がホルダ25に固定された引張りばね等の引張り弾性部材33が装着され、該引張り弾性部材33の弾性力により上記ホルダ25を軸線上方へ移動するように付勢する。
【0026】
上記ホルダ25の各収容間隙25d内には保持部材としての保持アーム35が上記大径部25bの下部に設けられた軸25fを中心に搖動可能にそれぞれ支持される。各保持アーム33の先端部(図示する下部)には貫通孔3d周縁の凹所3e下面に係合する爪部35aが設けられる。また、各保持アーム35は上記大径部25bに形成されたばね装着孔25g内に装着された圧縮ばね等の圧縮弾性部材37の弾性力により上記爪部35aが互いに近づいて収容間隙25d内に位置する縮径方向へ搖動される。
【0027】
次に、上記のように構成されたタンク孔開け装置1による開口7の形成作用を説明する。
先ず、タンク孔開け装置1の初期状態に付いて説明すると、軸体23に対してホルダ25を引張り弾性部材33の弾性力に抗して軸線下方へ移動して係合弾性部材31の弾性力により付勢された係合部材29の先端部を係合凹部23cに係合した移動状態に保持される。このとき、各保持アーム35は圧縮弾性部材37の弾性力により軸体23のカム面23aに当接する縮径方向へ搖動するように付勢され、爪部35aが収容間隙25d内に位置される。(図3参照)
【0028】
次に、上記したタンク孔開け装置1により部品取付け部3の上面板3bに開口7を形成するには、作業ロボットのアームを移動制御してタンク孔開け装置1を、ホルダ25の小径軸部25aが凹所3eの貫通孔3d内に挿通されて下端が車輛用燃料タンク5内へ突出すると共に大径部25bの下面が凹所3eの底面に当接する位置へ移動させる。このとき、切断刃17はその刃先が上面板3bの上面に対して所要の間隔をおいて離間している。(図4参照)
【0029】
次に、上記状態にて車輛用燃料タンク5に対してタンク孔開け装置1を更に軸線下方へ移動させると、大径部25bが凹所3eの底面に当接してホルダ25の移動が規制されているため、係合弾性部材31の弾性力に抗して係合部材29を放射方向へ移動して係合凹部23cに対する係合を解除させる。これによりホルダ25に対して軸体23が軸線下方への移動を可能にされると共にホルダ25が引張り弾性部材33の弾性力により軸線上方へ移動される。
【0030】
そしてホルダ25に対する軸体23の上記移動に伴って保持アーム35をカム面23aから外周面へ摺接させることにより圧縮弾性部材37の弾性力に抗して爪部35aが収容間隙25d内から外側へ突出して貫通孔3d周縁の凹所3e下面に位置する拡径位置側へ搖動させる。上記爪部35aはホルダ25が上記のように引張り弾性部材33の弾性力により軸線上方へ付勢されるため、貫通孔3d周縁の凹所3e下面に対して圧接し、切離される切断片3fを保持可能にさせる。(図5参照)
【0031】
上記状態にてタンク孔開け装置1を更に軸線下方へ所要のストロークで移動しながら電動モータ11の駆動によりスピンドル9を中心に回転する切断刃17を上面板3bに圧接して切断する。このとき、保持アーム35は、ホルダ25に対して軸線下方へ移動する軸体23により拡径方向への搖動状態が保たれると共に引張り弾性部材33により軸線上方への付勢されることにより爪部35aによる貫通孔3d周縁の凹所3e下面の保持状態が保たれる。
なお、上記切断刃17による上面板3bの切断時においては、回転するスピンドル9に対して軸体23が遊転して一体に回転することが規制されるため、上記保持状態が保たれる。
【0032】
上記切断の終期においては、切離される切断片3fの外周個所が肉薄になって連結強度が弱くなり、切断片3fの保持状態が不安定になって暴れ易くなる。本例にあっては、切断片3fを、貫通孔3d周縁の凹所3e下面に係合する爪部35aを引張り弾性部材33の弾性力により圧接させて保持するため、切断に伴う暴れを抑制することができる。これにより切離される切断片3fの外周に対して切断刃17を常に安定した状態で作用させて切断することができ、開口7内周面を高い精度で切断形成し、切断屑の発生を低減させると共に切断刃17の折損を抑制することができる。(図6参照)
【0033】
そして上記切断作用により上面板3bに開口7が形成されると、上面板3bから切離された切断片3fはホルダ25が引張り弾性部材33の弾性力により軸線上方へ付勢されているため、貫通孔3d周縁の凹所3eの下面に係合する爪部35aにより開口7から図示する上方へ抜き出して離脱させる。このとき、保持アーム35は軸体23の外周面に対する摺接により拡径方向に対する搖動状態が保たれるため、貫通孔3d周縁の凹所3eの下面に係合する爪部35aによる切断片3fの保持状態が保たれる。(図7参照)
【0034】
上記した作用により部品取付け部3に開口7が形成された後においては、作業ロボットのアームを移動制御してタンク孔開け装置1を部品取付け部3から離脱させて切断片3fの排出位置へ移動させた後、軸体23の軸線上方へ移動したホルダ25の上面に対して平面ほぼU字型の取外し治具41の腕部41aが当接するように移動させる。
【0035】
そして上記状態にて取外し治具41に対してタンク孔開け装置1を、ホルダ25上面に腕部41aが圧接するように移動して軸体23に対してホルダ25を引張り弾性部材33の弾性力に抗して軸線下方へ移動し、係合弾性部材31の弾性力により付勢された係合部材29の先端部を係合凹部23cに係合させる。この移動により圧縮弾性部材37の弾性力により付勢された保持アーム35を軸体23の外周面からカム面23aへ摺接させることにより縮径方向へ搖動し、爪部35aを収容間隙25d内に位置させて切断片3fの保持を解除させる。(図8参照)
【0036】
本実施例は、拡径方向へ搖動する保持アーム35の爪部35aを貫通孔3d周縁の凹所3e下面に係合させた状態で引張り弾性部材33の弾性力によりホルダ35を軸線上方へ付勢して圧接させた保持状態で、回転する切断刃17により上面板3bを切断して開口7を形成するため、切断の進展に伴って切断片3fの外周個所が肉薄になった際においても、切離される切断片3fを安定的に保持して暴れを抑制することができる。
【0037】
これにより切離される切断片3fに対して切断刃17を常に安定した状態で作用させて切断することができ、開口7内周面を高い精度で切断形成し、切断屑の発生を低減させると共に切断刃17の折損を抑制することができる。
また、切断終了後においては、引張り弾性部材33の弾性力によりホルダ25が軸線上方へ付勢されているため、開口7から切断片3fを強制的に離脱させて車輛用燃料タンク5内に落下するのを防止することができる。
【実施例2】
【0038】
上記実施例1は、図5に示すようにタンク孔開け装置1におけるホルダ25の小径軸部25aを凹所3eの貫通孔3d内に挿通して貫通させて凹所3eの底面に大径部25bの下面を当接させてホルダ25に対する軸体23の移動により保持アーム35を圧縮弾性部材37の弾性力に抗して拡径側へ搖動して爪部35aを貫通孔3d周縁の凹所3e下面に当接させる構成としたが、実施例2は、図9に示すように、軸体23に対して第2係合凹部23dを係合凹部23cから軸線上方へ該軸体23の移動ストローク分、離れた個所に形成し、保持アーム35が拡径側へ搖動した際に、係合凹部23cに対する係合が解除された係合部材29を第2係合凹部23dに係合して引張り弾性部材33により付勢されたホルダ25が軸線上方に対する移動するのを規制して貫通孔3d周縁の凹所3e下面に対して爪部35aを非当接状態に保つ構成とする。
【0039】
実施例2にあっては、軸線下方に対する軸体23の移動に伴って上面板3bに切断刃17が圧接して切断を開始した後に、第2係合凹部23dに対する係合部材29の係合が解除されると、引張り弾性部材33により付勢されたホルダ25を軸線上方へ移動して貫通孔3d周縁の凹所3e下面に対して爪部35aを当接して支持させる。
【実施例3】
【0040】
実施例3は、図10に示すように、ホルダ25の小径軸部25aを凹所3eの貫通孔3d内に挿通して貫通させた際に、刃先が上面板3bに当接するように切断刃17の長さ、または刃物取付けアーム15に対する切断刃17の取付け位置を設定した構成とする。なお、切断刃17の刃先が上面板3bに当接した際には、係合凹部23cに対する係合部材29の係合状態が保持されて軸線上方に対するホルダ25の移動が規制された状態に保たれると共に縮径側に対する保持アーム35の搖動状態が保たれる。
【0041】
実施例3にあっては、図11に示すように上面板3bに対する切断刃17の圧接に伴う切断の進展に伴って係合凹部23cに対する係合部材29の係合状態が解除されると、ホルダ25に対する軸体23の移動に伴って保持アーム35を圧縮弾性部材37の弾性力に抗して拡径側へ搖動させると共に軸体23に対して引張り弾性部材33により付勢されたホルダ25を軸線上方へ移動して爪部35aを貫通孔3d周縁の凹所3e下面に圧接させる。
【0042】
上記説明は、各ばね装着孔25g内に装着されたそれぞれの圧縮弾性部材37の弾性力により各保持アーム35を、それぞれの爪部35aが互いに近づいて収容間隙25d内に位置する縮径方向へ搖動させる構成としたが、本発明においては、上記圧縮弾性部材37は必須の発明事項ではなく、ホルダ25の小径軸部25aが凹所3eの貫通孔3d内に垂直状態で進入する際に、上記爪部35aが収容間隙25d内に位置する縮径方向へ搖動するように各保持アーム35の搖動中心を設定すればよい。
【符号の説明】
【0043】
1 タンク孔開け装置
3 部品取付け部
3a 雄ねじ
3b 上面板
3c 筒状部
3d 貫通孔
3e 凹所
3f 切断片
5 タンクとしての車輛用燃料タンク
7 開口
9 スピンドル
11 電動モータ
13 回転体
13a バランサ部材
15 刃物取付けアーム
17 切断刃
19 遊転回転体
19a 軸部
21 軸受
23 軸体
23a カム面
23b 長孔
23c 係合凹部
23d 第2係合凹部
25 ホルダ
25a 小径軸部
25b 大径部
25c 軸孔
25d 収容間隙
25e 取付け孔
25f 軸
25g ばね装着孔
27 支持軸
29 係合部材
31 係合弾性部材
33 引張り弾性部材
35 保持アーム
35a 保持部としての爪部
37 圧縮弾性部材
41 取外し治具
41a 腕部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動されるスピンドルの軸線から軸線直交方向に所要の距離をおいて設けられる切断刃を、上記スピンドルを中心に回動してタンクの部品取付け部に孔を形成するタンク孔開け装置において、
上記スピンドルの軸端部に対して基端部が融点可能に軸支され、先端部にカム面が設けられた軸体と、
上記軸体に対して軸線方向へ所定のストロークで移動可能に挿嵌され、部品取付け部に予め穿設された貫通孔に挿入可能な外径の小径軸部及び貫通孔周縁に当接する外径の大径部を有し、軸体が挿嵌される軸孔と連通し、大径部及び小径部にわたる軸線長さからなる少なくとも2個の収容間隙が形成されたホルダと、
上記軸体に対して上記ホルダを基端部側へ移動するように付勢する引張り弾性部材と、
上記ホルダの各収容間隙内にて搖動可能に軸支されると共に上記カム面及び軸体の外周面に摺接可能で、貫通孔周縁の下面に係合可能な保持部を有した少なくとも2本の保持アームと、
上記軸体に対して引張り弾性部材の弾性力に抗して軸線下方へ移動されるホルダを、各保持アームがカム面に当接する位置に係脱可能に保持する係合部材と、
を備えたタンク孔開け装置。
【請求項2】
請求項1において、各保持アームには、常には係合部が上記収容間隙内の位置する縮径方向へ移動するように付勢する圧縮弾性部材を設けたタンク孔開け装置。
【請求項3】
請求項1において、ホルダには、軸体に形成された長孔内を摺動する支持軸の軸端部が固定され、軸体に対してホルダを軸線方向へ移動可能に支持するタンク孔開け装置。
【請求項4】
請求項1において、ホルダには、上記軸線と直交する方へ延出して形成された取付け孔内に装着された係合部材及び該係合部材を放射方向内側に向かって付勢する係合弾性部材を設け、軸体に対して可動体が引張り弾性部材の弾性力に抗して軸体の先端側へ移動された際に、軸体に設けられた被係合部に係合部材を係合してホルダの移動状態を保持可能にしたタンク孔開け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−115943(P2012−115943A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267589(P2010−267589)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(506329292)スターテクノ株式会社 (45)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】